特許第6766443号(P6766443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766443
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   F02P 11/00 20060101AFI20201005BHJP
   F02P 3/055 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   F02P11/00 Z
   F02P3/055 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-101643(P2016-101643)
(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公開番号】特開2017-207042(P2017-207042A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年4月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】特許業務法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小▲浜▼ 考徳
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−172572(JP,A)
【文献】 特開2014−238024(JP,A)
【文献】 特開平01−153966(JP,A)
【文献】 特開平11−041700(JP,A)
【文献】 特開2015−012540(JP,A)
【文献】 特開2006−352230(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0144993(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0030717(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0215431(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0001380(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 11/00
F02P 3/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワースイッチをオン/オフ制御する制御信号を入力し、前記制御信号が所定時間を超えて前記パワースイッチのオン制御が継続したときに、値が所定値から漸減する基準電圧を出力するソフト遮断回路と、
前記パワースイッチをオン制御する前記制御信号が入力されたときから前記所定時間をカウントするとともに、前記所定時間のカウントを終了後に、前記基準電圧を漸減するソフト遮断時間をカウントするタイマ回路と、
前記パワースイッチに流れる電流を入力信号として検出する電流検出回路と、
前記制御信号に基づいて前記パワースイッチをオン/オフ制御するとともに、前記基準電圧と前記電流検出回路が検出した電流に相当するセンス電圧とに基づいて前記パワースイッチに流れる電流を制限する駆動信号を出力する駆動回路と、
を備え、
前記タイマ回路は、前記所定時間をカウントするのに必要な多段構成のカウンタ回路と、前記カウンタ回路のカウント終了時に、前記カウンタ回路をリセットして、前記ソフト遮断時間をカウントするリセット回路とを有し、
前記カウンタ回路は、クロック回路と、前記クロック回路の出力を受けてカウント動作を行う複数段直列接続のフリップフロップと、最終段の前記フリップフロップの出力を受けて出力状態を保持するラッチ回路とを有し、
前記リセット回路は、前記パワースイッチをオフ制御する前記制御信号が入力されたときに前記クロック回路、前記フリップフロップおよび前記ラッチ回路をリセットする信号を出力し、前記パワースイッチをオン制御する前記制御信号が入力されたときに前記クロック回路、前記フリップフロップおよび前記ラッチ回路のリセットを解除する信号を出力する第1のナンド回路と、前記ラッチ回路から前記所定時間のカウント終了を示す信号を受けて短時間の遅延を行う遅延回路と、前記遅延回路の出力信号を論理反転するインバータ回路と、前記所定時間のカウント終了を示す信号および前記インバータ回路の出力信号を受けて前記第1のナンド回路に対し前記遅延回路による遅延時間の間のみリセットする信号を出力させる第2のナンド回路とを有する、半導体集積回路。
【請求項2】
前記タイマ回路は、多段構成の前記カウンタ回路の少なくとも一部を用いて前記ソフト遮断時間のカウントを行う、請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記ソフト遮断回路は、前記タイマ回路の前記カウンタ回路が出力したデジタル信号をアナログの前記基準電圧に変換するD/Aコンバータを有している、請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記D/Aコンバータは、抵抗ラダー回路で構成されている、請求項3記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記抵抗ラダー回路は、抵抗をデプレッション形のMOSトランジスタで構成している、請求項4記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体集積回路に関し、特に車両用内燃機関の点火装置において、長時間の通電信号の印加に対して半導体のパワースイッチをソフト遮断する保護機能を備えた半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関の点火装置は、電気火花を発生させて燃料と空気との混合気を点火させるスパークプラグと、このスパークプラグに印加する高電圧を発生させるイグニッションコイルと、このイグニッションコイルを駆動するイグナイタとを備えている。イグナイタは、イグニッションコイルを駆動するパワースイッチと、エンジン制御装置(ECU)からの制御信号に基づいてパワースイッチをオン/オフ制御し、かつ、パワースイッチを保護する機能を有する制御IC(Integrated Circuit)とを備えている。制御ICは、パワースイッチを保護する機能の1つに、パワースイッチにある一定時間以上継続してオン信号が印加された場合に、パワースイッチをオフ制御してパワースイッチに流れる電流を強制的に遮断する保護機能が備えられている。
【0003】
このパワースイッチを遮断する保護機能は、イグナイタが備える保護機能であり、エンジン制御装置からの制御信号による遮断動作とは無関係に動作する。このため、エンジン制御装置による点火タイミングとは異なるタイミングでパワースイッチを遮断してしまうことがある。このような点火時期の異常が生じてしまうと、エンジンは、バックファイアやノッキングといった異常燃焼を引き起こす。
【0004】
したがって、パワースイッチを遮断するときには、スパークプラグが電気火花を発生させない程度にパワースイッチに流れる電流を緩やかに遮断する電流遮断動作、いわゆるソフト遮断が行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1では、ソフト遮断は、パワースイッチを制御する出力部が有する抵抗要素とともに抵抗分圧回路を構成する可変抵抗をパワースイッチのゲート端子に接続することで実現している。ソフト遮断を行うときには、可変抵抗の抵抗値を段階的に小さくなるように切り換える。これにより、パワースイッチのゲート端子の電圧が緩やかに低下していき、パワースイッチに流れる電流が緩やかに遮断される。このとき、スパークプラグは、点火することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−238024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1におけるソフト遮断の回路は、パワースイッチの過電流保護を行う電流制限部とは回路的に独立しているため、パワースイッチの温度特性によりソフト遮断する時間にばらつきが発生するという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、パワースイッチの温度(個体ばらつき、温度変化を含む)によらず一定のソフト遮断時間を確保できる半導体集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記の課題を解決するために、半導体集積回路が提供される。この半導体集積回路は、パワースイッチをオン/オフ制御する制御信号を入力し、前記制御信号が所定時間を超えて前記パワースイッチのオン制御が継続したときに、値が所定値から漸減する基準電圧を出力するソフト遮断回路と、前記パワースイッチをオン制御する前記制御信号が入力されたときから前記所定時間をカウントするとともに、前記所定時間のカウントを終了後に、前記基準電圧を漸減するソフト遮断時間をカウントするタイマ回路と、前記パワースイッチに流れる電流を入力信号として検出する電流検出回路と、前記制御信号に基づいて前記パワースイッチをオン/オフ制御するとともに、前記基準電圧と前記電流検出回路が検出した電流に相当するセンス電圧とに基づいて前記パワースイッチに流れる電流を制限する駆動信号を出力する駆動回路と、を備え、前記タイマ回路は、前記所定時間をカウントするのに必要な多段構成のカウンタ回路と、前記カウンタ回路のカウント終了時に、前記カウンタ回路をリセットして、前記ソフト遮断時間をカウントするリセット回路とを有し、前記カウンタ回路は、クロック回路と、前記クロック回路の出力を受けてカウント動作を行う複数段直列接続のフリップフロップと、最終段の前記フリップフロップの出力を受けて出力状態を保持するラッチ回路とを有し、前記リセット回路は、前記パワースイッチをオフ制御する前記制御信号が入力されたときに前記クロック回路、前記フリップフロップおよび前記ラッチ回路をリセットする信号を出力し、前記パワースイッチをオン制御する前記制御信号が入力されたときに前記クロック回路、前記フリップフロップおよび前記ラッチ回路のリセットを解除する信号を出力する第1のナンド回路と、前記ラッチ回路から前記所定時間のカウント終了を示す信号を受けて短時間の遅延を行う遅延回路と、前記遅延回路の出力信号を論理反転するインバータ回路と、前記所定時間のカウント終了を示す信号および前記インバータ回路の出力信号を受けて前記第1のナンド回路に対し前記遅延回路による遅延時間の間のみリセットする信号を出力させる第2のナンド回路とを有している。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の半導体集積回路は、パワースイッチの電流をモニタしながらソフト遮断を行うので、パワースイッチの閾値温度特性のばらつきに対しても、一定のソフト遮断時間を確保できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る半導体集積回路を用いた車両用内燃機関の点火装置を示す図である。
図2】第2の実施の形態に係る半導体集積回路を用いた車両用内燃機関の点火装置を示す図である。
図3】タイマ回路およびソフト遮断回路の構成例を示す図である。
図4】タイマ回路の構成例を示す図である。
図5】ソフト遮断回路のロジック回路の構成例を示す図である。
図6】駆動回路の構成例を示す図である。
図7】タイマ回路およびソフト遮断回路の動作を説明する要部波形図である。
図8】点火装置の動作を説明する要部波形図である。
図9】第3の実施の形態に係る半導体集積回路のソフト遮断回路におけるD/Aコンバータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、車両用内燃機関の点火装置におけるイグナイタに適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。なお、各実施の形態は、矛盾のない範囲で複数の実施の形態を部分的に組み合わせて実施することができる。
【0013】
図1は第1の実施の形態に係る半導体集積回路を用いた車両用内燃機関の点火装置を示す図である。
車両用内燃機関の点火装置は、イグナイタ1を備えており、このイグナイタ1は、制御IC10と、パワースイッチとしてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)2とを有している。なお、ここでは、パワースイッチとしてIGBT2を使用しているが、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)のような他のパワースイッチを用いることもできる。
【0014】
制御IC10は、エンジン制御装置からの制御信号に同期した信号Sin(以下、単に制御信号Sinと呼ぶ)を入力して、IGBT2を制御するゲート電圧Vgを出力するもので、制御回路17と、基準電圧源12と、駆動回路13と、センス抵抗Rsnsとを有している。
【0015】
制御回路17は、制御信号Sinおよび基準電圧源12を入力し、通常時は、基準電圧源12の電圧Voに基づく所定値の基準電圧Vrefを出力し、ソフト遮断時は、所定値から漸減する値の基準電圧Vrefを出力する。
【0016】
駆動回路13は、制御信号Sin、基準電圧Vrefおよびセンス抵抗Rsnsのセンス電圧Vsnsを入力し、IGBT2を制御するゲート電圧Vgを出力する。このゲート電圧Vgは、通常時は、制御信号Sinに基づいてIGBT2をオン/オフ制御するとともに、オン制御時には、センス電圧Vsnsによる過電流保護を行う信号となる。ゲート電圧Vgは、また、ソフト遮断時に、センス電圧Vsnsによる過電流保護を行いながらソフト遮断を行う信号となる。
【0017】
制御IC10が出力するゲート電圧Vgは、IGBT2のゲート端子に印加される。IGBT2は、同一チップ内に形成された電流センス領域と電流センス端子とを有している。この電流センス端子は、制御IC10にてIGBT2の電流検出回路を構成するセンス抵抗Rsnsの一方の端子に接続され、センス抵抗Rsnsの他方の端子は、グランドに接続されている。IGBT2の電流センス端子には、メインのエミッタ領域と電流センスエミッタ領域との面積比に応じた電流がセンス抵抗Rsnsを介してグランドに流れることで、センス抵抗Rsnsの両端には、エミッタ電流に比例したセンス電圧Vsnsが生起される。このセンス電圧Vsnsは、制御IC10の駆動回路13に帰還され、IGBT2に流れる電流を制限するのに使用される。
【0018】
IGBT2のエミッタ端子は、グランドに接続され、IGBT2のコレクタ端子は、イグニッションコイル3の一次コイルの一方の端子に接続されている。イグニッションコイル3の二次コイルの一方の端子は、スパークプラグ4の一方の端子に接続され、スパークプラグ4の他方の端子は、グランドに接続されている。イグニッションコイル3の一次コイルおよび二次コイルの他方の端子は、バッテリ5の正極電極に接続され、バッテリ5の負極電極は、グランドに接続されている。
【0019】
以上の構成の点火装置によれば、エンジン制御装置からハイ(H)レベルの制御信号Sinが入力されると、駆動回路13は、IGBT2をオン制御する。これにより、バッテリ5から供給された電流がイグニッションコイル3の一次コイルおよびIGBT2を介してグランドに流れ、一次コイルに磁界が生じ、コアを通じて二次コイルにも磁界が発生する。このとき、駆動回路13は、IGBT2を流れる電流を間接的に検出し、IGBT2に過電流が流れないよう電流制限機能が働いている。
【0020】
次に、所定のタイミングでIGBT2がオフ制御されると、自己誘導作用により一次コイルに電圧が発生し、相互誘導により二次コイルに高電圧が発生する。この高電圧は、スパークプラグ4に供給され、スパークプラグ4のギャップ間に火花を発生させる。
【0021】
ここで、IGBT2のゲート端子に印加されるオン制御のゲート電圧が通常のオン時間よりも長い時間継続してしまうと、制御IC10の制御回路17が働き、駆動回路13に供給する基準電圧Vrefを漸減させる。このとき、駆動回路13は、上記の電流制限機能に加え、基準電圧Vrefの漸減によって、イグニッションコイル3の二次コイルに発生する電圧がスパークプラグ4のギャップ間に火花を発生させる電圧よりも高い電圧になることはなくなる。これにより、この点火装置は、不要なタイミングでスパークプラグ4のギャップ間に火花を発生させることなく、IGBT2を流れる電流をソフト遮断時間の間にゼロまで低減することになる。
【0022】
このソフト遮断時間の間では、駆動回路13は、IGBT2の電流をモニタしながらソフト遮断を行うので、IGBT2の閾値温度特性のばらつきに対しても、一定のソフト遮断時間を確保できるという利点がある。
【0023】
図2は第2の実施の形態に係る半導体集積回路を用いた車両用内燃機関の点火装置を示す図である。この図2において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0024】
第2の実施の形態では、制御IC10がソフト遮断回路11およびタイマ回路14を有し、タイマ回路14に、ソフト遮断を開始するまでの時間とソフト遮断回路11がソフト遮断を行うソフト遮断時間とをそれぞれカウントする機能を持たせている。
【0025】
すなわち、制御IC10は、エンジン制御装置からHレベルの制御信号Sinが入力されることによってカウント動作を開始し、通常時は、タイマ回路14がタイムアップする前にロー(L)レベルの制御信号Sinが入力されて、カウント動作を終了する。
【0026】
タイマ回路14のカウント動作がタイムアップしてもHレベルの制御信号Sinの入力が継続している場合、タイマ回路14は、リセットし、今度は、ソフト遮断時間を得るためのカウント動作を開始する。ソフト遮断回路11は、タイマ回路14によって設定されたソフト遮断時間の間に、IGBT2を流れる電流をゼロまで低減するよう制御する基準電圧Vrefを生成し、駆動回路13に印加する。駆動回路13は、ソフト遮断時間の間に、IGBT2を流れる電流をゼロまで低減するゲート電圧Vgを生成し、IGBT2のゲート端子に印加する。このとき、ソフト遮断回路11は、タイマ回路14がカウントした値を基にソフト遮断時間を確保しているので、ソフト遮断時間をばらつくことなく常に正確に得ることができる。また、タイマ回路14は、ソフト遮断を開始するまでの時間のカウント動作とソフト遮断時間のカウント動作とを兼用するように構成したので、制御IC10のチップを小型化することができる。
【0027】
次に、制御IC10の具体的な構成例について説明する。
図3はタイマ回路およびソフト遮断回路の構成例を示す図、図4はタイマ回路の構成例を示す図、図5はソフト遮断回路のロジック回路の構成例を示す図、図6は駆動回路の構成例を示す図である。
【0028】
図3には、制御IC10の中のタイマ回路14およびソフト遮断回路11が示されている。タイマ回路14は、エンジン制御装置からの制御信号Sinを入力し、(n+1)個の信号T1−Tn+1とリセット信号RSTとを出力する。タイマ回路14は、また、電源ラインvdcとグランドラインgndとに接続されている。
【0029】
ソフト遮断回路11は、ロジック回路15と抵抗ラダー回路16とを備え、ロジック回路15は、タイマ回路14からの信号T1−Tn+1とリセット信号RSTとを入力し、信号L1−Lnを出力する。ロジック回路15は、また、電源ラインvdcと、基準電圧源12の電圧Voと、グランドラインgndとに接続されている。
【0030】
抵抗ラダー回路16は、ロジック回路15からの信号L1−Lnを入力し、基準電圧Vrefを出力し、抵抗ラダー回路16の基準電圧Vrefは、駆動回路13に供給される。抵抗ラダー回路16は、また、グランドラインgndにも接続されている。
【0031】
タイマ回路14は、図4に示したように、カウンタ回路14aとリセット回路14bとを有している。カウンタ回路14aは、クロック回路CLKと、N個のDフリップフロップDFF1−DFFNと、ラッチ回路LTCとを直列に接続して構成され、ここでは、DフリップフロップDFF1−DFFNを直列にN段接続して、Nビットのカウンタを構成している。すなわち、クロック回路CLKの出力は、DフリップフロップDFF1のクロック入力端子に接続されている。DフリップフロップDFF1では、その出力端子信号T1を出力する出力端子と、次段のDフリップフロップDFF2のクロック入力端子とに接続され、反転出力端子は、自身のD入力端子に接続されている。2段目のDフリップフロップDFF2からN−1段目のDフリップフロップDFFN−1も同様の構成になっている。最終段目のDフリップフロップDFFNについては、その出力端子が信号TNを出力する出力端子と、次段のラッチ回路LTCの入力端子とに接続され、反転出力端子は、自身のD入力端子に接続されている。ラッチ回路LTCの出力端子は、カウンタ回路14aの出力端子を構成し、信号TTMRを出力する。また、カウンタ回路14aのクロック回路CLK、DフリップフロップDFF1−DFFNおよびラッチ回路LTCは、タイマリセット信号RST−TMRを受けるリセット入力端子をそれぞれ有している。このカウンタ回路14aは、ソフト遮断回路11がソフト遮断を開始するまでの時間をカウントするのに必要な段数に設定されている。
【0032】
なお、ソフト遮断回路11がソフト遮断を開始するまでの時間とソフト遮断を行うソフト遮断時間とが同じである場合(N=n+1)、DフリップフロップDFF1−DFFNの各出力端子から出力される信号が信号T1−Tn+1として使用される。つまり、この場合、DフリップフロップDFFNは、その出力端子から信号Tn+1が出力される。
【0033】
ソフト遮断回路11がソフト遮断を開始するまでの時間よりもソフト遮断を行うソフト遮断時間の方が短い場合(N>n+1)、N段のDフリップフロップDFF1−DFFNのうち、(n+1)段のDフリップフロップDFF1−DFFn+1が使われる。
【0034】
リセット回路14bは、ナンド回路NAND1,NAND2と、遅延回路DLYと、インバータ回路INV01,INV02とを有している。ナンド回路NAND1は、その一方の入力端子にエンジン制御装置からの制御信号Sinを入力し、他方の入力端子は、ナンド回路NAND2の出力端子に接続されている。ナンド回路NAND2の一方の入力端子は、カウンタ回路14aが出力する信号TTMRを受けており、この信号TTMRは、また、遅延回路DLYの入力端子にも入力されている。遅延回路DLYの出力端子は、インバータ回路INV01の入力端子に接続され、インバータ回路INV01の出力端子は、ナンド回路NAND2の他方の入力端子に接続されるとともに、インバータ回路INV02の入力端子に接続されている。インバータ回路INV02の出力端子は、このリセット回路14bの出力端子を構成し、リセット信号RSTを出力する。
【0035】
ソフト遮断回路11のロジック回路15は、図5に示したように、(n+1)個のアンド回路AND1−ANDn+1とn個のインバータ回路INV1−INVnとを有している。アンド回路AND1−ANDnは、その一方の入力端子にタイマ回路14のカウンタ回路14aから出力された信号T1−Tnをそれぞれ入力し、他方の入力端子には、アンド回路ANDn+1の出力端子から出力されたセット信号SETが入力されている。アンド回路ANDn+1の入力端子には、タイマ回路14のリセット回路14bから出力されたリセット信号RSTが入力され、アンド回路ANDn+1の反転入力端子には、タイマ回路14から出力された信号Tn+1が入力されている。アンド回路AND1−ANDnの出力端子は、それぞれインバータ回路INV1−INVnの入力端子に接続され、インバータ回路INV1−INVnの出力端子は、このロジック回路15の出力端子を構成し、信号L1−Lnを出力する。インバータ回路INV1−INVnは、その電源として基準電圧源12の電圧Voを受けており、電圧Voまたはグランドの電位とする2値の信号L1−Lnを出力する。
【0036】
抵抗ラダー回路16は、図3に示したように、抵抗をはしご状に構成してなるD/A(Digital to Analog)コンバータである。すなわち、抵抗R1の一方の端子は、信号L1を受け、他方の端子は、抵抗R11を介してグランドに接続されている。抵抗R2の一方の端子は、信号L2を受け、他方の端子は、抵抗R12を介して抵抗R1と抵抗R11との接続点に接続されている。この抵抗R2,R12の構成は、抵抗Rnまで同様にして繰り返される。抵抗Rnと抵抗R1nとの接続点は、この抵抗ラダー回路16の出力端子を構成し、駆動回路13に抵抗ラダー回路16で生成された基準電圧Vrefを供給する。ここで、抵抗R1−Rn,R11は、2Rの抵抗値を有し、抵抗R12−R1nは、Rの抵抗値を有している。
【0037】
駆動回路13は、図6に示したように、一方の端子が電源ラインvdcに接続された定電流源Iccsを備えている。定電流源Iccsの他方の端子は、スイッチSW1の一方の端子に接続され、スイッチSW1の他方の端子は、トランジスタQのソース端子およびスイッチSW2の一方の端子に接続されている。トランジスタQは、ここでは、PチャネルのMOSFETとしている。トランジスタQのドレイン端子およびスイッチSW2の他方の端子は、グランドラインgndに接続されている。スイッチSW2の制御入力端子には、インバータ回路INV11の出力端子が接続されている。このインバータ回路INV11の入力端子およびスイッチSW1の制御入力端子には、エンジン制御装置からの制御信号Sinが入力される。スイッチSW1の他方の端子、トランジスタQのソース端子およびスイッチSW2の一方の端子は、この駆動回路13の出力端子を構成し、IGBT2のゲート電圧Vgを出力する。
【0038】
トランジスタQのゲート端子は、オペアンプOPAの出力端子に接続されている。オペアンプOPAの非反転力端子には、ソフト遮断回路11の抵抗ラダー回路16によって出力された基準電圧Vrefが入力される。オペアンプOPAの反転力端子は、抵抗R21,R22の一方の端子による共通の接続点に接続されている。抵抗R21の他方の端子には、センス抵抗Rsnsによって検出されたセンス電圧Vsnsが入力され、抵抗R22の他方の端子は、オペアンプOPAの出力端子に接続されている。
【0039】
このオペアンプOPAは、センス電圧Vsnsを受けてIGBT2を流れる電流が所定値を超えたときにIGBT2を流れる電流を制限するとともに、可変の基準電圧Vrefを受けてIGBT2を流れる電流を制限する機能を有している。
【0040】
次に、以上の構成による車両用内燃機関の点火装置の動作について説明する。
図7はタイマ回路およびソフト遮断回路の動作を説明する要部波形図であり、図8は点火装置の動作を説明する要部波形図である。
【0041】
まず、エンジン制御装置から与えられる制御信号Sinは、図7に示したように、IGBT2をオフ制御するとき、Lレベル、IGBT2をオン制御するときには、Hレベルとなる。
【0042】
ここで、エンジン制御装置からLレベルの制御信号Sinが入力されているとき、タイマ回路14では、リセット回路14bのナンド回路NAND1にLレベルの制御信号Sinが入力される。これによって、リセット回路14bは、Hレベルのタイマリセット信号RST−TMRを出力し、カウンタ回路14aをリセットしている。このため、カウンタ回路14aが出力する信号T1−Tn+1は、すべてLレベルである。
【0043】
ソフト遮断回路11では、Lレベルの信号T1−Tnを受けたロジック回路15のアンド回路AND1−ANDnは、Lレベルの信号を出力するので、インバータ回路INV1−INVnは、電圧Voを出力する。これにより、抵抗ラダー回路16は、最大値の基準電圧Vrefを出力する。この場合の基準電圧Vrefは、Vo(1−1/2^n)である。
【0044】
Lレベルの制御信号Sinを受ける駆動回路13では、スイッチSW1がオフ(遮断)し、スイッチSW2はオン(導通)となるので、ゲート電圧Vgは、グランドレベルになっている。このとき、センス電圧Vsnsはグランドレベルであり、オペアンプOPAの非反転入力端子に入力される基準電圧Vrefは、その最大値であることから、オペアンプOPAは、電源電圧に近い電圧信号を出力し、トランジスタQをオフ(遮断)状態にしている。
【0045】
次に、制御信号SinがHレベルになると、タイマ回路14では、リセット回路14bのナンド回路NAND1は、Lレベルのタイマリセット信号RST−TMRを出力し、カウンタ回路14aのリセットが解除されてカウントを開始する。すなわち、クロック回路CLKから出力されたクロック信号は、N段のDフリップフロップDFF1−DFFNによって順次分周されていく。
【0046】
ここで、制御信号SinのHレベルが正常動作時の点火時期を超えてもなお継続していると、カウンタ回路14aは、そのうちにタイムアップする。カウンタ回路14aがタイムアップすると、信号TTMRがHレベルになり、タイマリセット信号RST−TMRもHレベルになる。これにより、タイマ回路14はリセットされ、今度は、ソフト遮断時間のカウントに移行する。
【0047】
信号TTMRがHレベルになって遅延回路DLYにより設定された遅延時間の後、タイマリセット信号RST−TMRがLレベルに移行すると同時にリセット信号RSTがHレベルとなる。
【0048】
これにより、ソフト遮断回路11のロジック回路15では、アンド回路ANDn+1は、Hレベルのリセット信号RSTとカウント開始直後でまだLレベルの信号Tn+1とを受ける。信号Tn+1は、アンド回路ANDn+1の論理反転入力端子に受けているので、アンド回路ANDn+1は、Hレベルのセット信号SETを出力し、信号T1−Tnの通過を許可する。
【0049】
すると、カウンタ回路14aにてクロック信号を分周してできたnビットの信号T1−Tnは、インバータ回路INV1−INVnにより反転同期した信号L1−Lnとなって抵抗ラダー回路16に供給される。
【0050】
抵抗ラダー回路16では、信号L1−Lnを受けてD/A変換され、基準電圧Vrefを出力する。この基準電圧Vrefは、カウンタ回路14aがタイムアップするまでは、その初期値のVo(1−1/2^n)である。カウンタ回路14aがタイムアップして、ソフト遮断時間のカウントを開始すると、基準電圧Vrefは、クロック周期ごとにVo(1/2^n)ずつ下降していく。
【0051】
ロジック回路15では、アンド回路ANDn+1がリセット信号RSTを受けてから信号Tn+1を受けるまでHレベルのセット信号SETを出力しており、この期間がソフト遮断時間となる。
【0052】
次に、ソフト遮断動作時の点火装置の動作について、図8を参照しながら説明する。
まず、エンジン制御装置からLレベルの制御信号Sinが入力されているとき、IGBT2のゲート電圧Vgおよびコレクタ電流Icは、ゼロであり、コレクタ電圧Vcは、バッテリ5の電圧VBと同じ電圧である。また、IGBT2は、オフ(遮断)なので、その電流を電圧に変換したセンス電圧Vsnsはゼロであり、スパークプラグ4に印加される電圧V2もゼロである。このとき、ソフト遮断回路11が出力する基準電圧Vrefは、その初期値のVo(1−1/2^n)である。
【0053】
時刻t0にてHレベルの制御信号Sinが入力されると、ゲート電圧Vgが高くなり、IGBT2は、オン(導通)となる。これにより、IGBT2のコレクタ電圧Vcが低下し、コレクタ電流Icが上昇していく。ただし、IGBT2の負荷は、コイルなので、コレクタ電流Icは、ある傾きを以て上昇していく。これに伴い、センス電圧Vsnsも同じように上昇していく。通常は、このコレクタ電流Icが上昇していく過程でIGBT2をオフ(遮断)し、そのタイミングで、スパークプラグ4のギャップ間に火花を発生させる。しかし、ここでは、IGBT2は、そのコレクタ電流Icの上昇過程でオフされることなく通電状態が継続しているとする。
【0054】
コレクタ電流Icの上昇過程で、イグニッションコイル3が磁気飽和を起こすと、イグニッションコイル3のインピーダンスが下がり、コレクタ電流が急激に上昇し、センス電圧Vsnsも同じように上昇する。
【0055】
このセンス電圧Vsnsは、基準電圧Vrefと比較されていて、基準電圧Vrefの近傍まで上昇すると、ゲート電圧Vgが下げられていき、IGBT2は、コレクタ電流Icがそれ以上流れないように電流制限がかけられる。
【0056】
その後、時刻t1にてタイマ回路14のN段のカウンタ回路14aがタイムアップすると、今度は、カウンタ回路14aの(n+1)段のDフリップフロップDFF1−DFFn+1を使ってソフト遮断時間をカウントする。このとき、ソフト遮断回路11は、カウンタ回路14aが出力する信号T1−Tnに応じたアナログ値の基準電圧Vrefを出力する。この基準電圧Vrefは、カウントアップするごとに値が小さくなるので、それに伴いオペアンプOPAの出力も値が小さくなり、トランジスタQのオン抵抗が小さくなって、ゲート電圧Vgが漸減していく。
【0057】
ゲート電圧Vgが漸減していくことでコレクタ電流Icが絞られ、コレクタ電圧Vcが上昇していく。このコレクタ電流Icの制限は、時間をかけて緩やかに行っているので、コレクタ電圧Vcの上昇およびスパークプラグ4に印加される電圧V2の低下が緩やかになる。この結果、コレクタ電圧Vcの急激な上昇およびスパークプラグ4に印加される電圧V2の急峻な低下が抑制され、火花放電せずにエネルギの放出が可能になることから、スパークプラグ4は、放電することがなくなる。
【0058】
なお、このソフト遮断は、IGBT2の電流をモニタしながら行っているので、IGBT2の閾値温度特性のばらつきに対しても、一定のソフト遮断時間を確保することができる。
【0059】
次に、時刻t2にてゲート電圧VgがIGBT2の閾値電圧よりも低くなると、IGBT2は、オフするので、コレクタ電流Icがゼロになり、コレクタ電圧Vcがバッテリ5の電圧VBと等しくなり、スパークプラグ4に印加される電圧V2がゼロになる。
【0060】
なお、電流制限の手法は、メインのIGBT2に直列に抵抗接続されるシャント抵抗方式や、IGBT2と構成を同じくするセンスIGBTに抵抗接続されるセンス抵抗方式にこだわるものではない。
【0061】
また、可変抵抗として小分解能に特化した抵抗ラダー回路16にて論じたが、抵抗値の可変の手法は限定されるものではない。
さらに、この制御IC10では、抵抗ラダー回路16、タイマ回路14のリセット回路14b、各回路をつなぐ信号配線が追加になるが、カウンタ回路14aの再利用とデジタル回路構成で小型化が容易である。また、デジタル回路を用いることで、良好なベースクロックを使用すれば、温度依存性および電源電圧依存性において、精度良く安定した特性が見込める。
【0062】
図9は第3の実施の形態に係る半導体集積回路のソフト遮断回路におけるD/Aコンバータを示す回路図である。
このD/Aコンバータ16aは、第2の実施の形態に係る半導体集積回路のソフト遮断回路11が備える抵抗ラダー回路16に代わるものである。すなわち、このD/Aコンバータ16aは、抵抗ラダー回路16の抵抗R1−Rn,R11−R1nの領域をMOSトランジスタQ1−Qn,Q11−Q1n,Q21−Q2n+1で形成している。これらのMOSトランジスタQ1−Qn,Q11−Q1n,Q21−Q2n+1は、デプレッション形のものを使用して所定のオン抵抗を作り出しており、しかも、すべて同じ構成にされている。したがって、2Rの抵抗値に相当する抵抗は、MOSトランジスタQ1−Qn,Q11−Q1nを2個直列に配置することによって実現され、Rの抵抗値に相当する抵抗は、1個のMOSトランジスタQ21−Q2n+1によって実現される。
【0063】
このMOSトランジスタQ1−Qn,Q11−Q1n,Q21−Q2n+1の半導体チップ上の領域は、抵抗を形成する場合の領域に比べて占有面積の小さいD/Aコンバータ16aを作ることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 イグナイタ
2 IGBT(パワースイッチ)
3 イグニッションコイル
4 スパークプラグ
5 バッテリ
10 制御IC
11 ソフト遮断回路
12 基準電圧源
13 駆動回路
14 タイマ回路
14a カウンタ回路
14b リセット回路
15 ロジック回路
16 抵抗ラダー回路
16a D/Aコンバータ
17 制御回路
AND1−ANDn+1 アンド回路
CLK クロック回路
DFF1−DFFN,DFFn+1 Dフリップフロップ
DLY 遅延回路
INV01,INV02,INV1−INVn,INV11 インバータ回路
Iccs 定電流源
LTC ラッチ回路
NAND1,NAND2 ナンド回路
OPA オペアンプ
Q トランジスタ
Q1−Qn,Q11−Q1n,Q21−Q2n+1 MOSトランジスタ
R1−Rn,R11−R1n,R21,R22 抵抗
Rsns センス抵抗(電流検出回路)
SW1,SW2 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9