(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766461
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】軸受への給油を制限できる圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20201005BHJP
F04C 18/02 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
F04C29/02 361A
F04C18/02 311Y
F04C29/02 311D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-118490(P2016-118490)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-223150(P2017-223150A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和田 遼介
(72)【発明者】
【氏名】横山 知巳
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−036409(JP,A)
【文献】
特開2013−060899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/02
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧流体が収容される低圧空間(61)と、高圧流体が収容される高圧空間(62)とを内部に有するケーシング(11)と、
圧縮室(53)を有し、前記圧縮室内の前記低圧流体を圧縮することで生じた前記高圧流体を前記高圧空間へ吐出する圧縮要素(50)と、
前記高圧空間に設けられ、主軸部(31)および前記主軸部から偏心した偏心部(32)を有するクランク軸(30)と、
前記高圧空間に設けられ、前記主軸部を支持する第1軸受(41)と、
前記高圧空間に設けられ、前記偏心部を支持する第2軸受(42)と、
前記第1軸受を支持し、かつ前記ケーシングに固定される支持部材(70)と、
前記第1軸受の下に設けられ、かつ前記支持部材とは分離した油保持部(91)と、
前記高圧空間に設けられ、油を貯留する油貯留部(18)と、
前記油貯留部に貯留されている前記油を前記第2軸受へ供給する第1給油経路(36)と、
前記第2軸受に供給された前記油の一部を前記第1軸受に到達させる第2給油経路(45)と、
前記高圧空間と前記圧縮室の圧力差を利用して、前記第1軸受に到達した前記油の少なくとも一部を前記圧縮室または前記圧縮室の近傍(54)へ導く第3給油経路(81)と、
を備える、圧縮機(10)。
【請求項2】
前記油保持部はリング部材を含む、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記第3給油経路は、前記油の前記少なくとも一部を前記油保持部から前記圧縮室または前記圧縮室の前記近傍へ導く、
請求項1または請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記第2軸受から前記第1軸受へ到達する前記油の量を制限するために前記第2給油経路に設けられた給油量制限部材(46)と、
前記第2軸受に供給された前記油の一部を前記ケーシングの内面へ向かわせる排油経路(93)と、
をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項5】
前記第3給油経路には、前記油に抵抗を与える絞部材(82)が設けられている、
請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記圧縮要素は、
前記ケーシングに固定された固定スクロール(51)と、
前記固定スクロールに対して移動できる可動スクロール(52)と、
を有し、
前記圧縮室は前記固定スクロールおよび前記可動スクロールによって規定され、
前記可動スクロールは、スラスト面(54)において、前記固定スクロールに対して押し付けられるように配置されており、
前記第3給油経路は、前記スラスト面に前記油を供給する、
請求項1から5のいずれか1つに記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受への給油を制限できる圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の圧縮機は、回転するクランク軸を軸支するために軸受を有する。クランク軸と軸受には、焼き付きを防止するために潤滑油、すなわち摺動箇所を潤滑するための油が供給される。油は、圧縮機の下部にある油貯留部から汲み上げられ、まず、上方に設置されたすべり軸受に供給される。すべり軸受を潤滑して流出した油は、次に転がり軸受を潤滑する。最後に、転がり軸受から流出した油は下方に落下する。このとき、油の一部はモータの回転子によって撒き散らされて飛沫となり、ケーシング内を旋回するガス冷媒と混合する。これは、圧縮機から吐出される高圧冷媒と共に油が圧縮機外へ排出される「油上がり」という好ましくない現象の原因となる。そこで、特許文献1(特開2013−002350号公報)に開示される圧縮機では、転がり軸受から流出した油を直接的に油貯留部へ降ろすための配管を設けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
使用済みの油を単に降ろす目的だけのために大掛かりな専用配管を設置するという油上がり防止策は、費用上昇に対する性能への寄与が少ない。
【0004】
本発明の課題は、軸受の潤滑を終えた油を他の用途に有効利用することにより、費用性能比をさほど低下させることなく油上がりの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る圧縮機は、ケーシングと、圧縮要素と、クランク軸と、第1軸受と、第2軸受と、油貯留部と、第1給油経路と、第2給油経路と、第3給油経路と、を備える。ケーシングは、低圧流体が収容される低圧空間と、高圧流体が収容される高圧空間とを内部に有する。圧縮要素は、圧縮室を有し、圧縮室内の低圧流体を圧縮することで生じた高圧流体を高圧空間へ吐出する。クランク軸は、高圧空間に設けられ、主軸部および主軸部から偏心した偏心部を有する。第1軸受は、高圧空間に設けられ、主軸部を支持する。第2軸受は、高圧空間に設けられ、偏心部を支持する。油貯留部は、高圧空間に設けられ、油を貯留する。第1給油経路は、油貯留部に貯留されている油を第2軸受へ供給する。第2給油経路は、第2軸受に供給された油の一部を第1軸受に到達させる。第3給油経路は、高圧空間と圧縮室の圧力差を利用して、第1軸受に到達した油の少なくとも一部を圧縮室または圧縮室の近傍へ導く。
【0006】
この構成によれば、第3給油経路が、第1軸受に到達した油の少なくとも一部を圧縮室または圧縮室の近傍へ導く。したがって、第1軸受の潤滑を終えた油は圧縮要素の潤滑に利用されるので、費用性能比をさほど低下させることなく油上がりの発生を抑制できる。
【0007】
本発明の第2観点に係る圧縮機は、第1観点に係る圧縮機において、第1軸受の下に設けられた油保持部、をさらに備える。
【0008】
この構成によれば、第1軸受の下に油保持部が設けられる。したがって、第1軸受の潤滑を終えた油を保持することができる。
【0009】
本発明の第3観点に係る圧縮機は、第2観点に係る圧縮機において、油保持部が油回収リングを含む。
【0010】
この構成によれば、油保持部はリング部材を含む。したがって、リング部材の内径を適切に設計することによりにより、油保持部から落下する油の量を制限することができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る圧縮機は、第2観点または第3観点に係る圧縮機において、第3給油経路が、油の少なくとも一部を油保持部から圧縮室または圧縮室の近傍へ導く。
【0012】
この構成によれば、第3給油経路は、溜まり構造に貯留された油を圧縮要素へ導く。したがって、油保持部に貯留された油を圧縮要素の潤滑に利用できる。
【0013】
本発明の第5観点に係る圧縮機は、第1観点から第4観点のいずれか1つに係る圧縮機において、給油量制限部材と、排油経路と、をさらに備える。給油量制限部材は、第2軸受から第1軸受へ到達する油の量を制限するために第2給油経路に設けられている。排油経路は、第2軸受に供給された油の一部をケーシングの内面へ向かわせる。
【0014】
この構成によれば、第2軸受から流出する油は、第1軸受へ至る第2給油経路と、ケーシングの内面へ至る排油経路の2つの経路へ分岐する。加えて、第2給油経路の流量は給油量制限部材によって制限される。したがって、第1軸受けから流出する油の量を少なくできる。
【0015】
本発明の第6観点に係る圧縮機は、第5観点に係る圧縮機において、第3給油経路には、油に抵抗を与える絞部材が設けられている。
【0016】
この構成によれば、第3給油経路では絞部材が油に抵抗を与える。したがって、絞部材を適切に設計することにより、圧縮要素に供給される油の量を最適化できる。
【0017】
本発明の第7観点に係る圧縮機は、第1観点から第6観点のいずれか1つに係る圧縮機において、圧縮要素が、固定スクロールと、可動スクロールと、を有する。固定スクロールは、ケーシングに固定されている。可動スクロールは、固定スクロールに対して移動できる。圧縮室は固定スクロールおよび可動スクロールによって規定される。可動スクロールは、スラスト面において、固定スクロールに対して押し付けられるように配置されている。第3給油経路は、スラスト面に油を供給する。
【0018】
この構成によれば、スラスト面に油が供給される。したがって、固定スクロールと可動スクロールの間の摺動が円滑化されるとともに、それらの密閉性が確保される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る圧縮機によれば、油上がりの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧縮機10の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る空気調和装置の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明にかかる空気調和装置の具体的な構成は、下記の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0022】
(1)全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る圧縮機10を示す。圧縮機10は、空気調和機の冷媒回路に搭載されるものであり、流体である低圧冷媒を吸入して圧縮し、高圧冷媒を吐出する。圧縮機10は、ケーシング11、モータ20、クランク軸30、圧縮要素50、第1軸受41、第2軸受42、第3軸受43、上側支持部材70、下側支持部材79を有する。
【0023】
(2)詳細構成
(2−1)ケーシング11
ケーシング11は、圧縮機10の構成部品および冷媒を収容するものであり、冷媒の高圧に耐えうる強度を有する。ケーシング11には、低圧冷媒を吸入する吸入管15、および高圧冷媒を吐出する吐出管16が取り付けられている。ケーシング11の底部には潤滑油、すなわち摺動箇所の潤滑に用いられる油を貯留するための油貯留部18が設けられている。ケーシング11の内部空間は、低圧冷媒が充満する低圧空間61と、高圧冷媒が充満する高圧空間62とを含む。低圧空間61と高圧空間62は隔離部材63によって隔てられている。
【0024】
(2−2)モータ20
モータ20は、電力の供給を受けて、圧縮要素50のための動力を発生させるものである。モータ20は、ステータ21とロータ22を有する。ステータ21は、ケーシング11に直接的または間接的に固定されている。ロータ22は、ステータ21と磁気的な相互作用を行うことによって、回転することができる。
【0025】
(2−3)クランク軸30
クランク軸30は、モータ20が発生させた動力を伝達して圧縮要素50を駆動するものである。クランク軸30はロータ22に固定されており、ロータ22と共に回転する。クランク軸30は、主軸部31と偏心部32を有する。主軸部31は、クランク軸30の回転軸線を中心とする円柱の形状を有する。偏心部32は、クランク軸30の回転軸線に対して偏心している。
【0026】
クランク軸30には油リフト機構34が設けられている。油リフト機構34は、油を圧縮機10の各部へ供給するものである。油リフト機構34は、油汲み上げ機構35および第1給油経路36を含む。
【0027】
油汲み上げ機構35は、クランク軸30の下部に設けられている。油汲み上げ機構35は、油貯留部18から油を汲み上げるための機構である。油汲み上げ機構35は、汲み上げ動作のためにクランク軸30の回転を利用する。
【0028】
第1給油経路36は、クランク軸30の内部に形成された油の通路である。油汲み上げ機構35によって汲み上げられた油は、第1給油経路36を通って上昇する。
【0029】
(2−4)圧縮要素50
圧縮要素50は、流体の冷媒を圧縮する機構である。圧縮要素50は、固定スクロール51および可動スクロール52を有する。固定スクロール51はケーシング11に固定されている。可動スクロール52は固定スクロールに対して公転可能である。
【0030】
固定スクロール51と可動スクロール52によって圧縮室53が規定されている。可動スクロール52が公転運動をすることによって、圧縮室53の容積が変動し、冷媒が圧縮される。圧縮工程を経た高圧冷媒は、圧縮要素50から高圧空間62へ吐出される。
【0031】
(2−5)第1軸受41、上側支持部材70
第1軸受41は、主軸部31を軸支する転がり軸受である。第1軸受41は、上側支持部材70に支持されている。上側支持部材70は金属製であり、ケーシング11に直接的または間接的に固定されている。上側支持部材70は、固定スクロール51を直接的または間接的に支持する。
【0032】
(2−6)第2軸受42
第2軸受42は、偏心部32を軸支するすべり軸受である。第2軸受42は、可動スクロール52に設置されている。偏心部32が第2軸受42と摺動しながら偏心回転することによって、可動スクロール52は公転運動をすることができる。
【0033】
(2−7)第3軸受43、下側支持部材79
第3軸受43は、第1軸受41と同様に主軸部31を軸支する転がり軸受である。第3軸受43は、下側支持部材79に支持されている。下側支持部材79は金属製であり、ケーシング11に直接的または間接的に固定されている。
【0034】
(3)給油経路群
図2は、圧縮機10の拡大断面図であり、給油経路群を示す。給油経路群は、圧縮機10の各所に存在する機械的摺動箇所を潤滑するものである。給油経路群は、第1給油経路36、給油量制限部材46、排油経路93、第2給油経路45、第3給油経路90を含む。
【0035】
(3−1)第1給油経路36
第1給油経路36は、油を油貯留部18から汲み上げて第2軸受42へ供給する。
【0036】
(3−2)給油量制限部材46
給油量制限部材46は、第2軸受42を潤滑し終えた油を受け取り、予め決められた分配比率で油を排油経路93と第2給油経路45とに分配する。排油経路93と第2給油経路45の分配比率は、例えば9対1である。
【0037】
給油量制限部材46は、第2給油経路45へ向かう油の量を制限するリング状の部材である。リング部材の外径は、実質的に上側支持部材70と接触している。リング部材の内径は、クランク軸30との間に油の通過を許す隙間を生じるように設定されている。内径および隙間を適切に設計することによりにより、油保持部から第1軸受41へ向かう油の量を、油上がりの抑制に効果的である程度に制限することができる。
【0038】
(3−3)排油経路93
排油経路93は給油量制限部材46から不要な油を排出する。具体的には、排油経路93は油を給油量制限部材46からケーシング11の内面へ送る。その後、油はケーシング11の内面を伝って油貯留部18へ降下する。
【0039】
(3−4)第2給油経路45
第2給油経路45は、油を給油量制限部材46から第1軸受41まで案内する。
【0040】
(3−5)第3給油経路90
第3給油経路90は、第1軸受41を潤滑し終えた油を受け取り、圧縮要素50まで移動させる。第3給油経路90は、油保持部91と、それに続く油供給機構80とを含む。
【0041】
(3−5−1)油保持部91
油保持部91は一定量の油を保持する。油保持部91は、油保持部91から落下する油の量を制限する部材である。油保持部91の油の保持能力は、油上がりの抑制に効果的である程度に十分に大きい。
【0042】
(3−5−2)油供給機構80
油供給機構80は、給油路81と、絞部材82とを有する。
【0043】
給油路81は、油保持部91に保持されている油を圧縮要素50まで移動させるための通路である。給油路81は、上側支持部材70に設けられた支持部材通路75と、固定スクロール51に設けられた固定スクロール通路55とを含む。支持部材通路75と固定スクロール通路55は連通している。
【0044】
固定スクロール通路55には、絞部材82が設けられている。絞部材82は、給油路81を流れる油に作用する抵抗の大きさを決定する部材である。絞部材82は、例えばスパイラルシャフト、すなわち、概ね細長い円柱の形状を有するとともに表面に螺旋溝が形成されている部材である。螺旋溝の流路断面積が小さいので、螺旋溝を通過する油は抵抗を受ける。絞部材82の長さ、螺旋溝の太さなどを適切に設計することにより、所望の抵抗を実現できる。
【0045】
(4)給油動作
各部位への油の供給は下記の動作により行われる。
【0046】
(4−1)油貯留部18からの油のリフト
油は、
図1に示す油汲み上げ機構35によって油貯留部18から汲み上げられ、第1給油経路36の中を上昇する。油は、
図2に示すようにクランク軸30の上端に達し、偏心部32の外周へ向かう。
【0047】
(4−2)第2軸受42の潤滑
油は第2軸受42を潤滑しながら降下する。
【0048】
(4−3)分岐
油は、給油量制限部材46に一時的に貯留される。その後、油は、第2給油経路45と排油経路93の2つの経路に分岐する。排油経路93に入る油はケーシング11の内面へ行き、その後、ケーシング11の内面を伝って油貯留部18へ降下する。
【0049】
(4−5)第1軸受41の潤滑
給油量制限部材46から第2給油経路45に入る油は、第1軸受41へ向かう。その後、油は第1軸受41を潤滑しながら下降する。
【0050】
(4−6)保持
第1軸受41から下降する油は、油保持部91に一時的に保持され、それから第3給油経路90の一端である支持部材通路75へ入る。油保持部91の油の上限保持量は、油上がりの抑制に効果的となる大きさである。しかしながら、油保持部91の上限保持量を超過する量の油の流入があった場合には、油は下方へ落下する。
【0051】
(4−7)圧縮要素50の潤滑
上側支持部材70は高圧空間62に配置されている。圧縮室53の中の冷媒の圧力は、高圧空間62の中の冷媒の圧力よりも概して低い。したがって、支持部材通路75の中に油が存在する場合、高圧空間62と圧縮室53の圧力差により、その油は第3給油経路90を通過して、圧縮室53およびその近傍にあるスラスト面54へと到達し、そこで圧縮要素50を潤滑する。
【0052】
(5)特徴
(5−1)
第3給油経路90が、第1軸受41に到達した油の少なくとも一部を圧縮室53またはその近傍のスラスト面54へ導く。したがって、第1軸受41の潤滑を終えた油は圧縮要素50の潤滑に利用されるので、費用性能比をさほど低下させることなく油上がりの発生を抑制できる。
【0053】
(5−2)
第1軸受41の下に油保持部91が設けられる。したがって、第1軸受41の潤滑を終えた油を保持することができる。
【0054】
(5−3)
油保持部91はリング部材を含む。したがって、リング部材の内径を適切に設計することによりにより、油保持部91から落下する油の量を制限することができる。
【0055】
(5−4)
第3給油経路90が、油の少なくとも一部を油保持部91から圧縮室53またはその近傍のスラスト面54へ導く。したがって、油保持部91に貯留された油を圧縮要素50の潤滑に利用できる。
【0056】
(5−5)
第2軸受42から流出する油は、第1軸受41へ至る第2給油経路45と、ケーシング11の内面へ至る排油経路93の2つの経路へ分岐する。加えて、第2給油経路45の流量は給油量制限部材46によって制限される。したがって、第1軸受41から流出する油の量を少なくできる。
【0057】
(5−6)
第3給油経路90では絞部材82が油に抵抗を与える。したがって、絞部材82を適切に設計することにより、圧縮要素50に供給される油の量を最適化できる。
【0058】
(5−7)
スラスト面54に油が供給される。したがって、固定スクロール51と可動スクロール52の間の摺動が円滑化されるとともに、それらの密閉性が確保される。
【符号の説明】
【0059】
10 圧縮機
11 ケーシング
15 吸入管
16 吐出管
18 油貯留部
20 モータ
21 ステータ
22 ロータ
30 クランク軸
31 主軸部
32 偏心部
34 油リフト機構
35 油汲み上げ機構
36 第1給油経路
41 第1軸受(転がり軸受)
42 第2軸受(すべり軸受)
43 第3軸受(転がり軸受)
45 第2給油経路
46 給油量制限部材
50 圧縮要素
51 固定スクロール
52 可動スクロール
53 圧縮室
54 スラスト面
55 固定スクロール通路
61 低圧空間
62 高圧空間
63 隔離部材
70 上側支持部材
75 支持部材通路
79 下側支持部材
80 給油機構
81 第3給油経路
82 絞部材
91 油保持部
93 排油経路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2013−002350号公報