(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766476
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
B23K20/12 362
B23K20/12 310
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-131490(P2016-131490)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-1213(P2018-1213A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−284704(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0215675(US,A1)
【文献】
特開2016−87650(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/107716(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0106123(US,A1)
【文献】
特開2016−215206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材及び第二金属部材を接合する接合方法であって、
前記第一金属部材の端面から突出する突出部を形成するとともに、前記第二金属部材の裏面に孔部を形成する準備工程と、
前記第一金属部材の端面と前記第二金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成するとともに、前記孔部に前記突出部を挿入して前記孔部と前記突出部とが突き合わされた突合せ部を形成する突合せ工程と、
前記第二金属部材の表面側から回転する前記回転ツールの攪拌ピンを挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第二金属部材、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材に接触させた状態で前記突合せ部を摩擦攪拌接合して第一塑性化領域を形成する第一摩擦攪拌工程と、
前記重合部を摩擦攪拌接合する第二摩擦攪拌工程と、を含み、
前記第二摩擦攪拌工程では、前記第一塑性化領域を通るように前記回転ツールの移動ルートを設定することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材及び第二金属部材を接合する接合方法であって、
前記第一金属部材の表面から突出する突出部を形成するとともに、前記第二金属部材の裏面に孔部を形成する準備工程と、
前記第一金属部材の表面と前記第二金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成するとともに、前記孔部に前記突出部を挿入して前記孔部と前記突出部とが突き合わされた突合せ部を形成する重合工程と、
前記第二金属部材の表面側から回転する前記回転ツールの攪拌ピンを挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第二金属部材、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材に接触させた状態で前記突合せ部を摩擦攪拌接合して第一塑性化領域を形成する第一摩擦攪拌工程と、
前記重合部を摩擦攪拌接合する第二摩擦攪拌工程と、を含み、
前記第二摩擦攪拌工程では、前記第一塑性化領域を通るように前記回転ツールの移動ルートを設定することを特徴とする接合方法。
【請求項3】
前記重合工程の前に、前記第一金属部材の表面及び前記第二金属部材の裏面の少なくとも一方に溝又は凹部を形成することを特徴とする請求項2に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材同士を摩擦攪拌接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、金属部材同士を正面視T字状に突き合わせ、突合せ部を摩擦攪拌接合する技術が開示されている。当該従来技術は、第一金属部材の端面を、第二金属部材の裏面に形成された溝部に挿入した後、第二金属部材の表面側から回転ツールを挿入して突合せ部を摩擦攪拌接合するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3947271号公報
【特許文献2】特許第4056587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術であると、第一金属部材の端面を第二金属部材の溝部に挿入する形態であるため、第一金属部材の長手方向に両部材が相対移動する。これにより、金属部材同士の位置決めが困難になるという問題がある。また、従来技術であると回転ツールのショルダ部を第二金属部材の表面に接触させて摩擦攪拌を行うため、摩擦攪拌装置にかかる負荷が大きくなるという問題がある。
【0005】
このような観点から、本発明は、金属部材同士の位置決めが容易であるとともに、摩擦攪拌装置にかかる負荷を小さくすることができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材及び第二金属部材を接合する接合方法であって、前記第一金属部材の端面から突出する突出部を形成するとともに、前記第二金属部材の裏面に孔部を形成する準備工程と、前記第一金属部材の端面と前記第二金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成するとともに、前記孔部に前記突出部を挿入して前記孔部と前記突出部とが突き合わされた突合せ部を形成する突合せ工程と、前記第二金属部材の表面側から回転する前記回転ツールの攪拌ピンを挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第二金属部材、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材に接触させた状態で前記突合せ部を摩擦攪拌接合
して第一塑性化領域を形成する第一摩擦攪拌工程と、
前記重合部を摩擦攪拌接合する第二摩擦攪拌工程と、を含み、前記第二摩擦攪拌工程では、前記第一塑性化領域を通るように前記回転ツールの移動ルートを設定することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材及び第二金属部材を接合する接合方法であって、前記第一金属部材の表面から突出する突出部を形成するとともに、前記第二金属部材の裏面に孔部を形成する準備工程と、前記第一金属部材の表面と前記第二金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成するとともに、前記孔部に前記突出部を挿入して前記孔部と前記突出部とが突き合わされた突合せ部を形成する重合工程と、前記第二金属部材の表面側から回転する前記回転ツールの攪拌ピンを挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第二金属部材、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材に接触させた状態で前記突合せ部を摩擦攪拌接合
して第一塑性化領域を形成する第一摩擦攪拌工程と、
前記重合部を摩擦攪拌接合する第二摩擦攪拌工程と、を含み、前記第二摩擦攪拌工程では、前記第一塑性化領域を通るように前記回転ツールの移動ルートを設定することを特徴とする。
【0008】
かかる接合方法によれば、孔部に突出部を嵌め合わせると、第一金属部材に対して第二金属部材が移動不能となる。つまり、孔部及び突出部によって両金属部材を容易に位置決めすることができる。また、回転ツールの攪拌ピンのみを、第二金属部材、又は、第一金属部材及び第二金属部材に接触させた状態で突合せ部を摩擦攪拌接合するため、摩擦攪拌装置に作用する負荷を小さくすることができる。
また、かかる接合方法によれば、第一金属部材と第二金属部材との接合強度を高めることができる。
【0010】
また、前記重合工程の前に、前記第一金属部材の表面及び前記第二金属部材の裏面の少なくとも一方に溝又は凹部を形成することが好ましい。かかる接合方法によれば、第一金属部材と第二金属部材の内部に中空部を形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る接合方法によれば、金属部材同士の位置決めが容易になるとともに、摩擦攪拌装置にかかる負荷を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る接合方法の準備工程を示す斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係る接合方法の突合せ工程を示す断面図である。
【
図3】第一実施形態に係る接合方法の第一摩擦攪拌工程を示す斜視図である。
【
図4】第一実施形態に係る接合方法の第一摩擦攪拌工程を示す断面図である。
【
図5】第一実施形態に係る接合方法の第二摩擦攪拌工程を示す断面図である。
【
図6】本発明の第二実施形態に係る接合方法の重合工程を示す斜視図である。
【
図7】第二実施形態に係る接合方法の重合工程を示す断面図である。
【
図8】第二実施形態に係る接合方法の第一摩擦攪拌工程を示す断面図である。
【
図9】本発明の第三実施形態に係る接合方法の準備工程を示す斜視図である。
【
図10】第三実施形態に係る接合方法の重合工程を示す断面図である。
【
図11】第三実施形態に係る接合方法の第一摩擦攪拌工程を示す断面図である。
【
図12】第三実施形態に係る接合方法の第二摩擦攪拌工程を示す斜視図である。
【
図13】第三実施形態に係る接合方法の第二摩擦攪拌工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る接合方法について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る接合方法では、第一金属部材1と第二金属部材2とを正面視T字状に突合せて摩擦攪拌により接合する。本実施形態に係る接合方法では、準備工程と、突合せ工程と、第一摩擦攪拌工程と、第二摩擦攪拌工程と、を行う。なお、説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を意味する。
【0014】
準備工程は、第一金属部材1及び第二金属部材2を準備する工程である。第一金属部材1及び第二金属部材2は、いずれも板状を呈する。第一金属部材1及び第二金属部材2は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等の摩擦攪拌可能な金属から適宜選択される。
【0015】
第一金属部材1の端面1aには、複数の突出部10(本実施形態では3つ)が形成されている。突出部10の個数は制限されるものではない。突出部10は単数でも良い。突出部10の形状は特に制限されないが本実施形態では円柱状を呈する。突出部10の高さ寸法は、第二金属部材2の板厚寸法の半分程度になっている。
【0016】
第二金属部材2の裏面2cには、孔部11が形成されている。孔部11は、円柱状の中空部になっており、突出部10に対応する位置に形成されている。孔部11は、突出部10が概ね隙間なく嵌め合わされる大きさになっている。
【0017】
突合せ工程は、
図2に示すように、第一金属部材1の端面1aと第二金属部材2の裏面2cとを重ね合わせるとともに、孔部11に突出部10を挿入する工程である。突出部10の外周面と孔部11の孔壁とが突き合わされることにより突合せ部J1が形成される。また、第一金属部材1の端面1aと第二金属部材2の裏面2cとが重ね合わされて重合部J2が形成される。
【0018】
第一摩擦攪拌工程は、
図3及び
図4に示すように、第二金属部材2の表面2b側から回転する接合用回転ツールFを挿入し、突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。接合用回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。連結部F1は、図示しない摩擦攪拌装置に取り付けられる部位であって、円柱状を呈する。
【0019】
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。
【0020】
なお、接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(第一金属部材1、第二金属部材2)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
【0021】
第一摩擦攪拌工程では、
図3及び
図4に示すように、第二金属部材2の表面2bから突合せ部J1に右回転させた攪拌ピンF2を挿入する。第一摩擦攪拌工程では、攪拌ピンF2のみと第一金属部材1及び第二金属部材2とを接触させた状態で突合せ部J1に沿って(突出部10の外周側面に沿って)接合用回転ツールFを相対移動させる。つまり、攪拌ピンF2の基端側を露出させた状態で突合せ部J1を摩擦攪拌接合する。接合用回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域W1が形成される。第一摩擦攪拌工程では、塑性化領域W1の始端と終端とがオーバーラップするように設定することが好ましい。第一摩擦攪拌工程では、突出部10及び孔部11で形成された他の突合せ部J1に対しても同様に摩擦攪拌接合を行う。
【0022】
なお、第一摩擦攪拌工程では、攪拌ピンF2のみと第二金属部材2のみとを接触させた状態で、突合せ部J1を摩擦攪拌接合してもよい。この場合は、攪拌ピンF2と第二金属部材2との摩擦熱により突合せ部J1が塑性流動化して接合される。
【0023】
第二摩擦攪拌稿工程は、
図5に示すように、第二金属部材2の表面2b側から回転する接合用回転ツールFを挿入し、重合部J2を摩擦攪拌接合する工程である。第二摩擦攪拌工程では、攪拌ピンF2が第一金属部材1の端面1aに達するように設定し、重合部J2の長手方向に相対移動させる。接合用回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域W2が形成される。
【0024】
第二摩擦攪拌工程が終了したら、第二金属部材2の表面2bに発生したバリを除去するバリ除去工程を行うことが好ましい。これにより、第二金属部材2の表面2bをきれいに仕上げることができる。
【0025】
以上説明した本実施形態に係る接合方法によれば、突出部10を孔部11に嵌め合わせると、第一金属部材1に対して第二金属部材2が移動不能となる。つまり、突出部10及び孔部11によって両金属部材を位置決めすることができる。また、第一摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2のみを第一金属部材1及び第二金属部材2に接触させた状態、又は、第二金属部材2のみに接触させた状態で突合せ部J1を摩擦攪拌接合するため、摩擦攪拌装置に作用する負荷を小さくすることができる。
【0026】
また、本実施形態のように、突出部10及び孔部11を複数個設けるとともに各突合せ部J1に対して摩擦攪拌接合を行うことにより、被接合金属部材の接合強度を高めることができる。
【0027】
また、第二摩擦攪拌工程では、重合部J2も摩擦攪拌接合するため、第一金属部材1と第二金属部材2の接合強度を高めることができる。また、第二摩擦攪拌工程でも、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2のみを第一金属部材1及び第二金属部材2に接触させた状態で重合部J2を摩擦攪拌接合するため、摩擦攪拌装置に作用する負荷を小さくすることができる。
【0028】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る接合方法について説明する。
図6及び
図7に示すように、第二実施形態に係る接合方法では、第一金属部材1Aと第二金属部材2とを接合する。第二実施形態に係る接合方法では、準備工程と、重合工程と、第一摩擦攪拌工程と、第二摩擦攪拌工程と、を行う。
【0029】
準備工程は、第一金属部材1Aと第二金属部材2とを用意する工程である。第二金属部材2は、第一実施形態と同一である。第一金属部材1Aは、摩擦攪拌可能な金属で形成されており、板状を呈する。第一金属部材1Aの表面1bの中央には、突出部10が形成されている。突出部10の個数は制限されないが、本実施形態では3つ形成されている。
【0030】
重合工程は、第一金属部材1Aの表面1bと第二金属部材2の裏面2cとを重ね合わせて重合部J3を形成するとともに、孔部11に突出部10を挿入して孔部11と突出部10とが突き合わされた突合せ部J1を形成する工程である。
【0031】
第一摩擦攪拌工程は、
図8に示すように、第二金属部材2の表面2b側から回転する接合用回転ツールFの攪拌ピンF2を挿入し、攪拌ピンF2のみを第二金属部材2、又は、第一金属部材1A及び第二金属部材2に接触させた状態で突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。第一摩擦攪拌工程は、第一実施形態の第一摩擦攪拌工程と同等であるため詳細な説明は省略する。
【0032】
第二摩擦攪拌工程は、重合部J3を摩擦攪拌接合する工程である。具体的な図示は省略するが、接合用回転ツールFの攪拌ピンのみを、第一金属部材1A及び第二金属部材2に接触させた状態で、重合部J3に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。接合用回転ツールFの移動ルートは特に制限されないが、例えば、各塑性化領域W1を通過するように直線状に設定してもよいし、第二金属部材2の周縁に沿って閉ループ状に設定してもよい。
【0033】
以上説明した本実施形態に係る接合方法によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。
【0034】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態に係る接合方法について説明する。
図9に示すように、第三実施形態に係る接合方法では、準備工程と、重合工程と、第一摩擦攪拌工程と、第二摩擦攪拌工程と、を行う。
【0035】
準備工程は、第一金属部材1Bと、第二金属部材2Bとを用意する工程である。第一金属部材1Bは、摩擦攪拌可能な金属で形成されており板状を呈する。第一金属部材1Bの表面1Bbには、凹溝12が形成されている。凹溝12は、平面視U字状、断面矩形を呈する。表面1Bbの四隅には、4つの突出部10が形成されている。
【0036】
第二金属部材2Bは、摩擦攪拌可能な金属で形成されており板状を呈する。第二金属部材2Bの裏面2Bcの四隅には、孔部11が形成されている。孔部11は、突出部10と対応する位置に形成されている。突出部10及び孔部11は、隙間なく嵌め合わされる形状になっている。
【0037】
重合工程は、
図10に示すように、第一金属部材1Bの表面1Bbと第二金属部材2Bの裏面2Bcとを重ね合わせて重合部J4を形成するとともに、孔部11に突出部10を挿入して孔部11と突出部10とが突き合わされた突合せ部J1を形成する工程である。
【0038】
第一摩擦攪拌工程は、
図11に示すように、第二金属部材2Bの表面2Bb側から回転する接合用回転ツールFの攪拌ピンF2を挿入し、攪拌ピンF2のみを第二金属部材2B、又は、第一金属部材1B及び第二金属部材2Bに接触させた状態で突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。第一摩擦攪拌工程は、第一実施形態の第一摩擦攪拌工程と同等であるため詳細な説明は省略する。
【0039】
第二摩擦攪拌工程は、
図12及び
図13に示すように、重合部J4を摩擦攪拌接合する工程である。
図12に示すように、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2を第二金属部材2Bの表面2Bbに設定したSpに挿入し、第二金属部材2Bの外周縁に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。つまり、第二金属部材2Bの四隅にある塑性化領域W1を通るように、接合用回転ツールFの移動ルートを設定し、相対移動させる。第二摩擦攪拌工程では、攪拌ピンF2のみを第一金属部材1B及び第二金属部材2Bに接触させた状態で重合部J4に対して摩擦攪拌接合を行う。第二摩擦攪拌工程では、塑性化領域W2の始端と終端とをオーバーラップさせ、塑性化領域W2が閉ループとなるようにする。
【0040】
以上説明した第三実施形態に係る接合方法によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、第三実施形態に係る接合方法によれば内部に中空部を備えた構造物を形成することができる。また、塑性化領域W2をオーバーラップさせることにより、構造物の水密性及び気密性を高めることができる。
【0041】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、第一摩擦攪拌工程では、攪拌ピンF2が第一金属部材1の端面1a、第一金属部材1Aの表面1b又は第一金属部材1Bの表面1Bbに達するように挿入深さを設定してもよい。また、例えば、第三実施形態では、凹溝12を第一金属部材1Bに形成したが、第一金属部材1B及び第二金属部材2Bの少なくとも一方に凹溝を形成すればよい。また、第一金属部材1B及び第二金属部材2Bの少なくとも一方に凹部を形成してもよい。また、第一摩擦攪拌工程及び第二摩擦攪拌工程は、どちらを先に行ってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 第一金属部材
2 第二金属部材
10 突出部
11 孔部
12 凹溝
F 接合用回転ツール
F1 連結部
F2 攪拌ピン
J1 突合せ部
J2 重合部
W1 塑性化領域