(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐熱ガラス押え板を最外部に取り付けることにより、ホットミラー押え板のギヤ状突起をガラスホルダー長手方向に弾性変形させた弾性力によりホットミラーと耐熱ガラスの動きが抑制されていることを特徴とする請求項1に記載の高温部観察窓。
【背景技術】
【0002】
たとえば、石炭を乾留して鉄鋼製錬に使用するためのコークスを製造するためのコークス炉は、耐火煉瓦により構成された炭化室と燃焼室が交互に配置される構成となっている。燃焼室で発生させた熱が、耐火煉瓦を通して炭化室に伝わり、炭化室内に装入したコークスの原料である石炭を加熱乾留してコークスが製造される。
【0003】
このコークス炉の炭化室、燃焼室を構成する耐火煉瓦等の耐火物は、長年使用することにより、高温加熱を繰り返す熱負荷、高温の炉内雰囲気に耐える化学的負荷、建築物である炉を構成する機械構造物としての機械的負荷により劣化する。たとえば、1000℃以上の高温で長時間保持されることで炉壁耐火物の一部が変質したり、炉内に装入した石炭の揮発成分等により炉壁耐火物が侵食されたり、原料である石炭の装入時や、乾留完成品であるコークスを取り出す際の押し出し時の衝撃により炉壁が損傷するので、炉壁耐火物が劣化する。
【0004】
コークス炉等の炉構造物の炉壁の劣化は、放置すると生産効率の低下や、最も深刻な場合は、炉の損傷や倒壊を引き起こすため、炉壁の劣化等の状態について、内部を観察し、詳細に把握する必要がある。また、炉内の被加熱物(被処理物、コークス炉の場合は赤熱コークス)の状態を把握するためにも炉内を観察する必要がある。
【0005】
たとえば、特許文献1〜3には、燃焼室の天井部に設けられた、開口径60〜120mm程度のフリュー孔と呼ばれる孔から燃焼室内部をカメラで観察する技術が開示されている。
【0006】
このように、コークス炉炭化室内の炉壁などの高温部をカメラで観察する際に、炉の内部から放射される熱や雰囲気からカメラを保護し、かつ明瞭な画像を得るために耐熱性、赤外線遮断などの特性を有したガラスでカメラの前面に観察窓を設ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この観察窓にはホットミラーが使用されており、観察はホットミラーを通して行われる。ホットミラーは、赤外線のみを反射させ、可視光を透過させるため、観察窓にホットミラーを使用することにより、炉壁からの多量の赤外線による輻射伝熱を防ぎつつ、内部を観察することができる。
しかしながら、カメラと観察対象の高温部の距離が近い場合、放射される熱量が大きく、ホットミラーをその間に一枚設けても、一枚のホットミラーで減少できる赤外線には限界があるためカメラへの十分な断熱が行われない。そこで、ホットミラーを複数枚重ねて、赤外線による入熱を大幅に減少させる必要がある。
【0009】
しかし、単にホットミラーを重ねるかパッキンをはさんで重ねても熱の滞留、蓄積でホットミラーの割れや赤外線反射用のコーティングがはがれるという問題が発生した。また、コークス詰り除去装置や、
図7に示したコークス炉補修装置34などに、観察窓およびカメラを内蔵する観察装置32を設置する場合では、狭いスペースに観察装置32を設置する必要があるため、高温部観察窓の構造を簡略化しコンパクトにする必要がある。
さらに、観察窓自体の断熱性および耐熱性が向上すれば、測定対象と観察窓、ひいてはカメラとの距離を近づけることができる。また、観察窓の厚さを薄く、構造を簡略化しコンパクトとすることによっても、観察窓が薄くなった分だけカメラを観察対象に近づけることができる。カメラを観察対象に近づけることができれば、正確な観察を行うことができ、観察視野の大きさを確保することもできる。
【0010】
特許文献1〜3には、観察用のカメラを冷却する構造については開示されているものの、観察窓そのものの耐熱性を向上させることや、観察窓をコンパクトにする記載や示唆はされていない。そもそも、観察窓そのものの耐熱性や構造に関する課題も提示されていない。
【0011】
一方、光を透過させる目的で使用する光学透過体(レーザ加工機のレーザ発振機用レンズ)を冷却する構造として、特許文献4、5に開示の技術が公知である。
特許文献4には、レーザ装置に使用されるレンズホルダに関し、レンズを保持するレンズホルダ内のレンズ固定部の円周に設けられた所定角度の孔から冷却用空気を噴出する構造が記載されている。しかしながら、特許文献4の技術では、レンズホルダの厚さが必要であり、多数のレンズを長手方向に配置する場合は、かなりの長さが必要となり、コンパクトな構造にはできない。また、薄いガラスを狭い間隔で配置することができない。
特許文献5には、レーザ装置に使用されるレンズホルダに関し、孔から長手方向に空気を噴出す構造が記載されている。しかしながら、特許文献5の技術では、狭い間隔で配置したガラスの全面を冷却するには不向きである。
【0012】
そもそも、高出力レーザを必ず透過させなければならない特許文献4、5に記載のレンズとは異なり、炉内から漏れ出る赤外線を防止する観察窓のホットミラーは、強制冷却の必要性や、ホットミラーの割れや赤外線反射用のコーティングがはがれるという課題自体が認識されていなかった。
【0013】
本発明は、上記のようなことから、ホットミラーの本体およびホットミラーのコーティングを熱から保護し、狭い間隔で配置したホットミラーのガラスの全面の表面、裏面を冷却気体である空気が層流で流れるように冷却でき、構造を簡略化しコンパクトとした高温部観察窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)金属製で筒状のガラスホルダーにおいて、
前記ガラスホルダーの筒状断面内に、ミラー面がカメラの視野軸の長手方向とほぼ垂直になるよう設けられ、赤外線のみを反射させ、可視光を透過させる2枚以上のホットミラーと、
前記ガラスホルダーの筒状断面内に、前記ホットミラーと交互に同数配置され、リング状で外周にギヤ状突起を有し、リング面がカメラの視野軸の長手方向とほぼ垂直になるよう設けられ、カメラの視野軸の長手方向に前記ギヤ状突起を一定角度折曲げた、前記ホットミラーを
押えるホットミラー押え板と、
前記ガラスホルダーの筒状断面内に、ガラス面がカメラの視野軸の長手方向とほぼ垂直になるよう設けられ、
前記ホットミラーおよび
前記ホットミラー押え板よりも観察対象側に設けられた耐熱ガラスと、
前記ガラスホルダーの観察対象側の最外部に取り付けられた耐熱ガラス押え板
と
を備え、
前記2枚以上のホットミラーの間には、前記ホットミラー押え板の前記ギヤ状突起により空間が設けられており、
前記ガラスホルダーには、冷却用の冷却気体供給口が設けられ、
前記ガラスホルダーの内壁には、
前記冷却気体供給口から冷却気体供給通路を経由して、最も観察側のホットミラーから耐熱ガラスが設けられた外側まで連通している冷却気体供給通路溝が設けられ、
前記ガラスホルダーの内壁の、前記冷却気体供給通路溝に対向する位置には、最も観察側のホットミラーから耐熱ガラスが設けられた外側まで連通している冷却用の冷却気体排出通路溝が設けられ、
前記冷却気体供給通路溝および前記冷却気体排出通路溝と、前記空間とは、それぞれ、前記ギヤ状突起間の開孔部により連通しており、
前記耐熱ガラス押え板は、前記冷却気体供給通路溝および
前記冷却気体排出通路溝から、耐熱ガラスが設けられた外側まで流通した冷却気体の流れを、
前記耐熱ガラス
押え板にぶつけることにより冷却気体の流れを筒中心方向に変える機構を有する
ことを特徴とする高温部観察窓。
(2)前記耐熱ガラス押え板を最外部に取り付けることにより、ホットミラー押え板のギヤ状突起をガラスホルダー長手方向に弾性変形させた弾性力によりホットミラーと耐熱ガラスの動きが抑制されていることを特徴とする(1)に記載の高温部観察窓。
(3)前記ガラスホルダーは、
前記冷却気体供給通路から分岐し、
前記冷却気体供給通路溝とは独立して
前記耐熱ガラス押え板に前記
冷却気体供給口から取り込んだ冷却気体を当てる横孔と、
前記冷却気体排出通路溝から分岐して
前記耐熱ガラス押え板にホットミラーを冷却した冷却気体を当てる横孔とを有し、
前記耐熱ガラス
押え板は、前記冷却気体の流れを筒中心方向に変える機構として、
前記冷却気体供給通路
溝、
前記冷却気体排出通路
溝および前記横孔から、耐熱ガラスが設けられた外側まで流通した冷却気体の流れを、
前記耐熱ガラス
押え板に当てることより耐熱ガラスの観察対象側の面に向ける溝を有することを特徴とする(1)または(2)に記載の高温部観察窓。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、1000℃を超え最高1300℃のコークス炉炭化室内の炉壁、もしくは赤熱コークスを耐用温度40℃程度のカメラでの観察をする場合に、ホットミラーを複数枚数重ねて、ミラーもしくは同表面のコーティングを壊すことなく使用できる。また、長さ50mm程度の狭い空間で大容量の輻射伝熱を防ぐことができるので、コークス炉のみならず加熱炉をカメラで観察する場合に有効かつ、安価に実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の高温部観察窓について具体的に述べる。
本発明における高温部観察窓とは、カメラの耐熱温度以上となる部分を観察するための窓である。カメラの耐熱温度とは、現在通常使用されるCCD等のデジタルカメラやカメラレンズの耐熱温度である40℃程度とする。また、カメラにより観察する観察窓だけでなく、目視により観察する観察窓も本発明を適用できる。典型的な高温部観察窓は加熱炉内部の観察窓である。観察窓は炉に直接設置してもよいし、所定の高温部観察用の観察装置に取り付けてもよい。
【0018】
図1〜4を参照し、本発明の高温部観察窓33の必須構成を説明する。
図1(A)は、本発明の高温部観察窓33を構成する各部品の形状、配置、および、矢印により内部を流れる冷却気体の流れ19を示した断面図である。冷却気体は典型的には空気であるが、窒素ガス等不活性ガスであってもよい。
図1(B)、
図1(C)は、それぞれ、
図1(A)のB−B矢視部分断面図、C−C矢視部分断面図である。また、
図2(A)は、本発明の高温部観察窓33を構成する各部品の形状、配置を示す分解透視図、
図2(B)は、冷却気体の流れ19をホットミラー8、ホットミラー押え板9、耐熱ガラス押え板11で示した図である。なお、
図2(A)は、各部品の形状を理解しやすいように、ガラスホルダー1を長手方向に引き伸ばした図であり、ガラスホルダー1の実際の長手方向の長さは短い。11については、
図2(A)、
図4において、ガラスホルダー1に取り付けられる側から見た図とその反対側から見た図の両方を示している。また、
図2(A)は、ホットミラー8と、ホットミラー押え板9の形状が理解しやすいようにそれぞれ引き離して表記しているが、使用時には各々密着している。
図3は、ホットミラー押え板9の構造を示した図面、そのうち
図3(B)の左図はB−B矢視部分断面図、右はその拡大図、
図4は、耐熱ガラス押え板11の構造を示した図面、そのうち、
図4(A)はガラスホルダー1に取り付けられる側から見た斜視図、
図4(B)はその反対側から見た斜視図、
図4(C)は、ガラスホルダー1に取り付けられる側から見た平面図である。
ガラスホルダー1の開口部のカメラ18を設置する側、あるいは観察者が窓を覗く側を観察側29、炉内内部等の観察したい対象がある側を観察対象側28と呼ぶことにする。
【0019】
本発明の高温部観察窓33は、
図1(A)に示したように、ガラスホルダー1の内部に、観察側29から、耐熱パッキン7、複数のホットミラー8、ホットミラー8と交互に同数でホットミラー押え板9、耐熱ガラス10を備える。また、ガラスホルダー1の観察対象側28の最外面には、耐熱ガラス押え板11を備える。
以下、各々の部品とその配置について説明する。
【0020】
ガラスホルダー1は、
図2(A)に示したように金属製の筒状である。この筒状となる断面の外形および内形の形状は、
図1(B)、
図2(A)においては円形であるが、円形、楕円形、角形、矩形等、特に制限されない。内形は、ガラスホルダー1内部を通して観察対象を観察できる形状および大きさであればよい。この内形断面形状は、ホットミラー8、耐熱ガラス10の外形と一部を除いて略同一である。この略同一でない一部は後述するが、ガラスホルダー内部壁20内に設けられた冷却気体供給通路溝16および冷却気体排出通路溝17の部分である。
図1(A)、
図2(A)に示したように、ガラスホルダー1には、冷却気体を導入する冷却気体供給口2が観察側29に設けられ、冷却気体供給口2より連通して、冷却気体供給通路3が設けられている。さらに、ガラスホルダー内部壁20には、冷却気体供給通路溝16および冷却気体排出通路溝17が設けられている。冷却気体供給通路溝16は、冷却気体供給通路3と連通し、最も観察側のホットミラー設置位置から耐熱ガラスが設けられた外側の冷却気体供給通路溝出口5まで連通している。一方、冷却気体排出通路溝17は、冷却気体供給通路溝16の点対称側のガラスホルダー内部壁20に設けられ、最も観察側のホットミラー設置位置から耐熱ガラスが設けられた外側の冷却気体排出通路溝出口6まで連通している。これら冷却気体供給通路溝16、冷却気体排出通路溝17は、ホットミラー8、耐熱ガラス10をガラスホルダー内部壁20にはめ込むことにより、
図1(B)の16、17として示したように、ホットミラー8、耐熱ガラス10とガラスホルダー内部壁20の間に冷却気体の通る隙間を形成する。冷却気体供給通路溝16および冷却気体排出通路溝17同士を対向した位置に配置するのは、両者の位置を離すためであり、冷却気体供給と排出の位置が近いと、16から17へと短絡した経路で、冷却気体が排出されてホットミラー8の冷却が不十分になるためである。また、対向した、とは、ほぼ点対称に配置することであり、円形の場合は中心点を対称点とするものであり、円形以外の場合は、断面図形の重心を対称点とするものである。
なお、
図1(B)では、冷却気体供給通路溝16、冷却気体供給通路溝出口5、冷却気体排出通路溝17、冷却気体排出通路溝出口6の溝断面は半月状であるが、断面形状は半月状に限られるものではない。また、
図1(A)、
図2(A)において、冷却気体供給通路溝16、冷却気体排出通路溝17は長手方向に直線的に設けてあるが、らせん状等、溝を曲げて形成しても構わない。その場合、一方の溝のらせん形状に対応するように点対称に他方の溝をらせん形状に形成する。
【0021】
図1(A)、
図2(A)に示したように、ガラスホルダー1の筒状断面内部には、カメラ18のある観察側29から順に、耐熱パッキン7、ホットミラー8、ホットミラー押え板9、ホットミラー8、ホットミラー押え板9、耐熱ガラス10が配置される。これらのうち、ホットミラー8、耐熱ガラス10は、各々の外縁が、冷却気体供給通路溝16、冷却気体排出通路溝17以外の場所ではガラスホルダー内部壁20に密着するように設ける。ホットミラー8、耐熱ガラス10は、それぞれ、ミラー面、ガラス面がカメラの視野軸の長手方向と略垂直になるよう設けられ、ホットミラー押え板9は、リング面23がカメラの視野軸の長手方向と略垂直になるよう設けられる。ホットミラー押え板9は、各々、両側に配置されるホットミラー8、耐熱ガラス10に両側で密着している。また、ガラスホルダー1の観察対象側28の最外部には、耐熱ガラス押え板11が設けられ、観察対象側の最外部側面からガラスホルダー1に耐熱ガラス押え板のボルト孔14を通してガラスホルダーの雌ネジ部にボルトを用いてネジ止めすることで固定される。
【0022】
耐熱パッキン7は、最も観察側に配置されたホットミラー8とガラスホルダー1のガラスホルダー内部壁20とのシーリングのために設けられる。耐熱パッキン7の位置は十分に観察対象の高温部から断熱されているため、シーリングできれば、通常の物でもよくパッキンの材質は特に耐熱性に優れたものに限定されるものではない。しかしながら、使用寿命の観点からは耐熱性に優れたシリコンゴムを用いることが好ましい。
【0023】
ホットミラー8は、赤外線を反射し、可視光を透過するガラスで構成されている。可視光を透過することで、ホットミラー8を通しての高温部の観察が可能となり、赤外線を反射することで、高温部の熱がカメラ18に達することを防止できる。ホットミラー8としては、ガラスに赤外線反射膜をコーティングした市販のものを用いればよい。
【0024】
ホットミラー押え板9について、
図3に示し説明する。
ホットミラー押え板9は、リング状であり、リングの外周部にギヤ状突起22を有している。このギヤ状突起22は、ギヤ状突起22の根本において、リングの外周円に沿ってリング面23から一定の角度で折り曲げられている(
図3の側面図、A部詳細参照)。二つのホットミラー8の間にホットミラー押え板9を設けてガラスホルダー1を組み立てた際には、片側のホットミラー8には、ギヤ状突起22の先が接し、反対側のホットミラー8には、リング面23が接する。そのため、ホットミラー押え板9を挟んだ二つのホットミラー8の間には、ホットミラー押え板9のギヤ状突起22のために空間が設けられ、また、ギヤ状突起開孔部21のために円周方向に穴の空いた空間を設けられる。冷却気体供給通路溝16より、冷却気体が供給されると、このギヤ状突起開孔部21を通じて、8と9の間の空間に導入されてホットミラー8を冷却できる。冷却済みの冷却気体は、冷却気体供給通路溝16とは点対称側のギヤ状突起開孔部21を通じて冷却気体排出通路溝17へと排出することができる(
図1(A)、
図2(B)参照)。この冷却気体を流通させることができるためにホットミラー8の熱による損傷を防止することができる。また、ホットミラー押え板9を、このような形状とすることにより、狭い間隔で配置したホットミラー8のガラスの全面の表面、裏面を冷却気体が層流で流れるので、冷却気体の流れに遅滞がなく、効率よく冷却できる。
【0025】
ホットミラー抑え板9は、ある程度の耐熱性を有することが好ましい。また、折り曲げたギヤ状突起22、ホットミラー抑え板9は、リング面垂直方向に押し込んだ際にある程度の弾性力を有することが好ましい。これは、測定する際に観察側からの熱により、高温部観察窓33が観察時に熱で熱膨張し、ホットミラー8や耐熱ガラス10がガラスホルダー1より緩むことがあるが、予め、弾性力を付与して取り付けておけば、その弾性力により付勢され、保持されるためである。以上のような性質を付与するためには、ホットミラー抑え板9は、金属で構成することが好ましい。特に、耐熱性と強度を兼備するステンレス製が好ましい。
【0026】
冷却気体を流通させる都合上、ギヤ状突起22の突起長さ25(折り曲げた根本地点から先端までの長さ)は、3〜10mmが好ましく、ギヤ状突起22の幅およびギヤ状突起開孔部21の幅(ギヤ状突起22の間隔)は、4〜12mmが好ましい。また、ギヤ状突起22の折り曲げ幅24は、ホットミラー押え板9を設置した際に、ホットミラー8同士に2〜5mmの間隔を設けられるよう折り曲げることが好ましい。また、ホットミラー押え板9自体の板の厚さは、省スペースの観点からは、薄いほどよいが、強度や材質との兼ね合いで、適宜決定できる。好ましい厚さは、0.1〜1mmである。リングの孔は、視野が広くなるので、大きいほど好ましい。
ホットミラー8とホットミラー押え板9は、交互に同数で二組以上配置され、
図2(A)には二組しか図示されておらず、
図1(A)においては5組であるが、3〜7組程度が好ましい。少なすぎると耐熱、断熱性が不十分となり、多すぎるとスペースが必要となり高温部観察窓33をコンパクトにすることができない。
【0027】
耐熱ガラス10は、高温の観察対象側から対流してくる熱から、ホットミラー8を保護するために設けられる。材質としては、たとえば、1000℃での耐熱性を有する石英ガラスを用いることができる。また、耐熱ガラス10は、内部を観察できるよう、透明もしくは無色透明である。
【0028】
耐熱ガラス押え板11について、
図4に示し説明する。
耐熱ガラス押え板11は、リング状であり、リングの孔の大きさは、ガラスホルダー1の内径よりもやや小さく、耐熱ガラス押え板11の内径が、ガラスホルダー1に組み付けた際に筒の中心方向に張り出しているよう構成されている。この張り出しにより、耐熱ガラス10が外れるのを抑える。また、耐熱ガラス押え板11は、ガラスホルダー1に組み立てた際に観察側(耐熱ガラス側)となる面に、冷却気体供給通路溝出口5、冷却気体排出通路溝出口6から流出してくる冷却気体がぶつかって流れを筒中心方向に変える機構を有する。具体的には、耐熱ガラス押え板溝A(12)、耐熱ガラス押え板溝B(13)が設けられている。耐熱ガラス押え板溝A(12)、耐熱ガラス押え板溝B(13)は、それぞれ、ガラスホルダー1に組み付けた際に、冷却気体供給通路溝出口5、冷却気体排出通路溝出口6から流出してくる冷却気体の流れが当たる位置に設けられている。そして、流出してくる冷却気体の流れを直角方向に変更する形状、位置となっている。冷却気体の流れにより、耐熱ガラス10の前面に冷却気体膜を設けられるので、高温部からの熱風等が耐熱ガラス10へと当たることを防止することができる。また、流出した冷却気体が、耐熱ガラス10表面に吹き付けられることにより耐熱ガラス10を冷却するとともに、耐熱ガラス表面に付着した異物を排除することができる。溝12、13の形状としては、必ずしも限定されるものではないが、冷却気体供給通路溝出口5、冷却気体排出通路溝出口6の位置から、扇状に広がる形状が好ましく、冷却気体供給通路溝出口5、冷却気体排出通路溝出口6の位置から深くなるよう形成することが好ましい。扇状とすることで、耐熱ガラス10の面全体に冷却気体が広がり、熱風を遮断することができる。
なお、冷却気体供給通路溝出口5、冷却気体排出通路溝出口6から流出してくる冷却気体がぶつかって流れを筒中心方向に変える機構は、溝を例示したが、冷却気体の流れを筒中心方向に変えられればどのような機構でもよく、角度をつけた板等であってもよい。さらに、溝がなくとも位置関係や、耐熱ガラス押え板11の大きさから、耐熱ガラス押え板11に冷却気体がぶつかって中心方向に流れを変えられるのであれば、必ずしも溝は必要ない。
【0029】
以上の部品を組み立てた本発明の高温部観察窓33の側面断面図が
図1(A)である。また、
図1(A)、
図2(B)には、冷却用冷却気体の流れ19を矢印で示した。
図1(A)の例では、ホットミラー8とホットミラー押え板9は、5組であり、最も観察対象側28のホットミラー押え板9は、耐熱ガラス10に接している。
【0030】
高温部観察窓33を使用する際には、ガラスホルダー1には、冷却用の冷却気体が冷却気体供給口2から導入され、冷却気体供給通路3を経て、冷却気体の流れ19は、冷却気体供給通路溝16へと通じる。冷却気体供給通路溝16に通じた冷却気体の流れ19は、
図1(A)、
図2(B)に示すように、冷却気体供給通路溝16をそのままガラスホルダー1の長手方向(カメラの視野軸の長手方向)に流れるものと、ホットミラー押え板9のギヤ状突起開孔部21を通じてガラスホルダー1の筒中心方向に流れるものに枝分かれ(分岐)する。
【0031】
冷却気体供給通路溝16をそのままカメラの視野軸の長手方向に流れた冷却気体の流れ19は、冷却気体供給通路溝出口5まで達して、耐熱ガラス10の外に排出される。冷却気体供給通路溝出口5から排出された冷却気体の流れ19は、耐熱ガラス押え板11の耐熱ガラス押え板溝A(12)にぶつかって方向を変え、ガラスホルダー1の筒中心方向に流れる。この冷却気体の流れにより、高温部からの熱から耐熱ガラス10を保護する。
【0032】
一方、冷却気体供給通路溝16から、各々のホットミラー押え板9のギヤ状突起開孔部21を通じてガラスホルダー1の筒中心方向に流れた各々の冷却気体の流れ19は、各々のホットミラー8を冷却し、冷却気体排出通路溝17へと排出されて再び合流する。冷却気体排出通路溝17で合流した冷却気体の流れ19は、冷却気体排出通路溝出口6まで達して、耐熱ガラス10の外に排出される。冷却気体排出通路溝出口6から排出された冷却気体の流れ19は、耐熱ガラス押え板11の耐熱ガラス押え板溝B(13)にぶつかって方向を変え、ガラスホルダー1の筒中心方向に流れる。この冷却気体の流れにより、高温部からの熱をパージし、耐熱ガラス10を保護する。
【0033】
冷却気体の流れ19の動きをわかりやすくするため、ホットミラー8、ホットミラー押え板9、耐熱ガラス押え板11以外を省略すると
図2(B)のようになる。本発明の構成とすることにより、層流となり、このような冷却気体の流れ19を生み出し、各々のホットミラー8を冷却用冷却気体で冷却できるので、温度上昇によるホットミラーのコーティングやホットミラー8自体の損傷を防止できる。また、冷却気体供給通路溝16、冷却気体排出通路溝17は、ガラスホルダー1の内部に溝を形成するだけで、はめ込んだホットミラー8と、耐熱ガラス10により冷却気体の流路を形成できるので、ガラスホルダー1自体に複雑な流路を設けることを必要としない。さらに、ホットミラー8の固定や位置決め、ホットミラー8表面の冷却通路確保は、ホットミラー押え板9をホットミラー8同士、ホットミラー8と耐熱ガラス10の間に挟み込むだけで行える。このため、ガラスホルダー1自体にホットミラーを固定するための機構や仕組みを必要としないため、観察窓を簡略化、コンパクトに省スペース化でき、長手方向の長さも短くすることができる。
また、冷却気体供給通路溝出口5、冷却気体排出通路溝出口6から流出した冷却気体の方向を変えて、耐熱ガラスの表面を2方向からパージ、冷却することも可能とした。
【0034】
本発明の別の態様として、高温部観察窓33の各部品の形状、配置を示す断面図を
図5(A)に、分解透視図を
図6(A)に示した。この態様の特徴としては、横孔A(4)と、横孔B(15)が設けられている点である。横孔A(4)は、冷却気体供給通路3から、冷却気体供給通路溝16と分岐してほぼ平行に、ガラスホルダー1の観察対象側の側面の横孔A出口26まで貫通して設けられている。横孔B(15)は、冷却気体排出通路溝17から分岐してほぼ平行に、ガラスホルダー1の観察対象側の側面の横孔B出口27まで貫通して設けられている。この横孔A(4)、B(15)を設けた際の冷却気体の流れを
図6(B)に示す。横孔A(4)、B(15)の内部を流れる横孔A、Bによる冷却気体の流れ191は、それぞれ、横孔A出口26、横孔B出口27から出て、それぞれ、耐熱ガラス押え板溝A(12)、耐熱ガラス押え板溝B(13)にぶつかる。その後、横孔A出口26から出て耐熱ガラス押え板溝Aにぶつかった冷却気体は、冷却気体供給通路溝出口5から出て耐熱ガラス押え板溝A(12)にぶつかった冷却気体と同様に方向を筒中心方向に流れを変え、耐熱ガラス10の表面を熱から遮断する。同様に、横孔B出口27から出て耐熱ガラス押え板溝Bにぶつかった冷却気体は、冷却気体排出通路溝出口6から出て耐熱ガラス押え板溝B(13)にぶつかった冷却気体と同様に方向を筒中心方向に流れを変え、耐熱ガラス10の表面を熱から遮断する。このように、横孔A(4)、B(15)を設けることにより、耐熱ガラス10表面の断熱、冷却機能を向上させることができる。なお、
図5では、横孔A(4)、B(15)は、冷却気体供給通路溝16、冷却気体排出通路溝17とほぼ平行に設けられているが、必ずしも平行である必要はなく、耐熱ガラス押え板11にぶつけて冷却気体の流れを筒中心方向に変えて、耐熱ガラス10表面を冷却気体で熱から保護できれば、どこに横孔A出口26、横孔B出口27を設けてもよい。その場合、耐熱ガラス押え板11において、横孔A出口26、横孔B出口27の対応する場所に、26、27から流出してくる冷却気体がぶつかって流れを筒中心方向に変える機構を設ける。
【実施例】
【0035】
1000℃を超え最高1300℃の高温場所として、
図7のように、コークス炉炭化室30内の炉壁31を、カメラを熱から保護する
図5に示した本発明の高温部観察窓を備えた補修装置用観察装置32を使って観察した。ガラスホルダー1は内径約100mmの金属製の略円筒状で、外径100mmの円形、3mm厚のホットミラー8がはめ込まれた。ホットミラー8とホットミラー押え板9は、5セット使用した。ホットミラー押え板9は、材質をステンレス、厚さ0.5mmで、ギヤ状突起22の折り曲げ幅24を3mm、突起長さ25を5mm、ギヤ状突起開孔部の幅を8mmとした。ガラスホルダー1の観察対象側に耐熱ガラス10を配置し、耐熱ガラス押え板11を最外部に取り付けてホットミラー押え板9のギヤ状突起22を圧縮力で折り曲げ幅24を3mmからわずかに変形させホットミラー8と耐熱ガラス10の動きを抑制した。ガラスホルダー内部壁20に設けた一定幅の冷却用の冷却気体供給通路溝16からホットミラー押え板9のギヤ状突起22のギヤ状突起開孔部21からホットミラー8と耐熱ガラス10の表面にあらかじめ除湿、冷却した冷却用の空気(補修装置用観察装置32の場合は20℃)を流し、冷却気体供給通路溝16のほぼ点対称位置に設けた冷却気体排出通路溝17に流した。ガラスホルダー1の冷却用の冷却気体供給口2からは、冷却気体供給通路溝16のほかに直接、耐熱ガラス押え板11に向かう横孔A(4)と横孔B(15)にも冷却用の空気を流し、耐熱ガラス押え板11の耐熱ガラス10側に点対称に作られた耐熱ガラス押え板溝A(12)と耐熱ガラス押え板溝B(13)に冷却気体供給通路溝出口5と冷却気体排出通路溝出口6からも冷却用の空気が合流して、耐熱ガラス10の表面を2方向からパージ、冷却した。
その結果、補修装置による補修中、カメラやホットミラーの損傷は見られず、十分な観察を行うことができた。
なお、実施例において、本発明の高温部観察窓を、コークス炉の炉内観察に適用しているが、断熱性、耐熱性が高く、小型化可能であるから、コークス炉に限られるものではなく、高温部を観察するあらゆる観察窓において、適用することができる。