特許第6766496号(P6766496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766496
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ホイール式建設機械
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/26 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   B66C23/26 C
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-143917(P2016-143917)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-12589(P2018-12589A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花本 貴博
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−514593(JP,A)
【文献】 特開2010−064595(JP,A)
【文献】 特開2015−199427(JP,A)
【文献】 特開平07−089696(JP,A)
【文献】 米国特許第04458772(US,A)
【文献】 特開昭54−051129(JP,A)
【文献】 特開2000−257116(JP,A)
【文献】 特開2003−226270(JP,A)
【文献】 実開平04−014502(JP,U)
【文献】 特開昭59−170335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 − 23/94
E02F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回可能に支持する旋回座を有する下部走行体とを備えたホイール式建設機械であって、
前記下部走行体は、
前記旋回座が設けられた下部フレームと、
複数の車輪が設けられた左右の装輪フレームと、
を有しており、
前記下部フレームと前記装輪フレームとが、係合状態を解除可能な係合機構を介して互いに係合されており、
前記左右の装輪フレームの前後に前記車輪が設けられており、前記前後の車輪のうち少なくとも一方の車輪が操舵可能な操舵輪であって、左右の前記操舵輪の操舵角度を連動させる連動手段が設けられており、
前記連動手段が、
前記左右の操舵輪をそれぞれ支持する左右の支持部材と、
前記左右の支持部材を連結するリンク部材と、
を有して構成されていることを特徴とするホイール式建設機械。
【請求項2】
上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回可能に支持する旋回座を有する下部走行体とを備えたホイール式建設機械であって、
前記下部走行体は、
前記旋回座が設けられた下部フレームと、
複数の車輪が設けられた左右の装輪フレームと、
を有しており、
前記下部フレームと前記装輪フレームとが、係合状態を解除可能な係合機構を介して互いに係合されており、
前記左右の装輪フレームの前後にアウトリガが設けられていることを特徴とするホイール式建設機械。
【請求項3】
上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回可能に支持する旋回座を有する下部走行体とを備えたホイール式建設機械であって、
前記下部走行体は、
前記旋回座が設けられた下部フレームと、
複数の車輪が設けられた左右の装輪フレームと、
を有しており、
前記下部フレームと前記装輪フレームとが、係合状態を解除可能な係合機構を介して互いに係合されており、
前記下部フレーム又は前記装輪フレームに、牽引車と連結可能な牽引装置が設けられていることを特徴とするホイール式建設機械。
【請求項4】
前記係合機構が、
前記下部フレームに設けられた梁部材と、
前記装輪フレームに設けられ、前記梁部材が挿入される開口部と、
を有して構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のホイール式建設機械。
【請求項5】
前記係合機構が、
前記下部フレームに設けられた第1ピン穴と、
前記装輪フレームに設けられた第2ピン穴と、
前記第1ピン穴及び前記第2ピン穴に挿入されるピン部材と、
を有して構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のホイール式建設機械。
【請求項6】
前記左右の装輪フレームの前後に前記車輪が設けられており、前記前後の車輪のうち少なくとも一方の車輪が操舵可能な操舵輪であって、左右の前記操舵輪の操舵角度を連動させる連動手段が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のホイール式建設機械。
【請求項7】
前記連動手段が、
前記左右の操舵輪を操舵するための操舵装置と、
前記左右の操舵輪の操舵角度を検出する舵角センサと、
前記舵角センサからの出力に基づいて、前記操舵装置を制御するコントローラと、
を有して構成されていることを特徴とする請求項に記載のホイール式建設機械。
【請求項8】
前記牽引装置が、前記左右の装輪フレームを連結するように設けられていることを特徴とする請求項に記載のホイール式建設機械。
【請求項9】
前記複数の車輪のうち少なくとも一部の車輪に対して走行駆動装置が設けられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のホイール式建設機械。
【請求項10】
前記走行駆動装置が、
前記装輪フレームに設けられた油圧モータと、
前記上部旋回体に設けられ、前記油圧モータに圧油を送り込む油圧ポンプと、
前記上部旋回体に設けられ、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、
を有して構成されていることを特徴とする請求項に記載のホイール式建設機械。
【請求項11】
前記下部フレームにアウトリガが設けられていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のホイール式建設機械。
【請求項12】
前記左右の装輪フレームの間隔が変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載のホイール式建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール式建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾で使用される建設機械として、例えば、クローラクレーン、トラッククレーン、ホイールクレーン等がある。このうちクローラクレーン等のクローラ式の建設機械は、一般的に吊り能力の点では優れているが、金属製のクローラにより舗装面を損傷させてしまうおそれがある。クローラにゴムを張り付けることで、舗装面を保護する方法もあるが、このようなクローラは高価であり、ゴムのたわみによる吊り能力の低下も懸念材料となる。
【0003】
このような理由から、港湾荷役用途には、トラッククレーンやホイールクレーン等のホイール式の建設機械(例えば特許文献1、2参照)が適していると言える。しかしながら、ホイール式の建設機械の多くは、公道を自走することが前提とされていることから車両制限を受け、吊り能力が固定的で低いものとなっている。一方、吊り能力の高い大型のホイールクレーン等も存在するが、このようなクレーンは公道走行ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−226270号公報
【特許文献2】特開2005−162343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、公道走行できないホイールクレーンは、上部旋回体と下部走行体とに分解することにより、トレーラで輸送することが可能である。しかしながら、吊り能力を高めるため、下部走行体の幅が大きくされているホイール式建設機械の場合、上部旋回体と下部走行体とに分解するだけでは、トレーラによる輸送にも限界があった。反対に、トレーラによる輸送を考慮すると、下部走行体の大型化が困難となり、吊り能力を十分に向上させることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、ホイール式建設機械において、吊り能力の向上と輸送性の向上とを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回可能に支持する旋回座を有する下部走行体とを備えたホイール式建設機械であって、前記下部走行体は、前記旋回座が設けられた下部フレームと、複数の車輪が設けられた左右の装輪フレームと、を有しており、前記下部フレームと前記装輪フレームとが、係合状態を解除可能な係合機構を介して互いに係合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下部走行体を構成する下部フレームと装輪フレームとが、係合状態を解除可能な係合機構を介して互いに係合されているので、係合状態を解除することで、下部走行体を下部フレームと装輪フレームとに分解できる。このように下部走行体を細かく分解することができるため、吊り能力を向上させるべく下部走行体を大型化しても、優れた輸送性を確保することができる。つまり、吊り能力の向上と輸送性の向上との両立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のホイールクレーンの側面図である。
図2】本実施形態のホイールクレーンの下部走行体の上面図である。
図3】牽引車に連結されたホイールクレーンの側面図である。
図4】連動手段の変形例を示す模式図である。
図5】係合機構の変形例を示す上面図である。
図6】係合機構の第2変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るホイール式建設機械の一実施形態として、主に港湾施設での荷役用途に使用されるホイールクレーンについて、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態のホイールクレーンの側面図であり、図2は、本実施形態のホイールクレーンの下部走行体の上面図である。なお、本発明の適用対象はホイールクレーンに限定されず、車輪を有する他のホイール式の建設機械に適用することも可能である。
【0011】
ホイールクレーン1は、上部旋回体2がホイール式の下部走行体3に旋回可能に搭載された基本構成を有する。上部旋回体2は、キャブ4、ブーム5、カウンタウェイト6等を有している。キャブ4は、上部旋回体2の前部に設けられた運転室である。ブーム5は、その基端部がキャブ4の近傍に着脱可能に取り付けられており、当該基端部を中心として起伏自在に構成されている。ブーム5の先端部には、荷役作業に用いられるフック7が吊り下げられている。カウンタウェイト6は、上部旋回体2の後部に配設されており、ホイールクレーン1の前方安定度を向上させるためのおもりである。また、上部旋回体2には、走行、旋回、吊り上げ等の各動作の駆動源となるエンジン8が設けられている。エンジン8の出力軸には油圧ポンプ9が連結されており、エンジン8が作動することによって、油圧ポンプ9から上記各動作に関わる油圧アクチュエータへ圧油が送り出される。
【0012】
図2に示すように、下部走行体3は、下部フレーム20と、下部フレーム20の左右外側に設けられ、前後方向に延びる左右一対の装輪フレーム30と、を有する。下部フレーム20には、上部旋回体2を旋回可能に支持する旋回座21が設けられている。この旋回座21は、旋回座21の前後に配置された前後一対の梁部材22に取り付けられている。本実施形態の梁部材22は、断面が矩形のものであるが、形状は適宜変更が可能である。各梁部材22には、2つのジャッキ装置23が左右に並んで設けられており、計4つのジャッキ装置23によって、下部フレーム20をジャッキアップできるようになっている。
【0013】
各装輪フレーム30には、前輪31及び後輪32がそれぞれ設けられている。装輪フレーム30は、下部フレーム20が取り付けられているメインフレーム30aと、メインフレーム30aの前方に設けられ、メインフレーム30aに対して鉛直軸周りに回動可能な可動フレーム30bと、からなる。前輪31は可動フレーム30bに取り付けられており、後輪32はメインフレーム30aに取り付けられている。
【0014】
メインフレーム30aの前端部と可動フレーム30bの後端部とは、上下に重なっており、鉛直方向に延びる操舵軸33によって連結されている。左右の操舵軸33は、左右方向に延びる連結部材34によって連結されている。また、可動フレーム30bの前端部は、鉛直方向に延びる連結軸35によって前輪31の車軸と連結されており、さらに、左右の連結軸35は、左右方向に延びるリンク部材36によって連結されている。これによって、左右の可動フレーム30bがリンク部材36によって連結されていることになる。なお、連結部材34及びリンク部材36は、いずれも装輪フレーム30に対して着脱自在に構成されている。
【0015】
キャブ4に設けられた不図示のステアリングを操作すると、操舵軸33が鉛直軸周りに回動し、これによって、前輪31が、可動フレーム30bとともに、操舵軸33を中心に回動可能となっている。このとき、左の装輪フレーム30(可動フレーム30b)に設けられた前輪31と、右の装輪フレーム30(可動フレーム30b)に設けられた前輪31とが、リンク部材36を介して連結されていることで、左右の前輪31の操舵角度を連動させることができる。つまり、本実施形態では、前輪31が本発明の「操舵輪」に相当し、左右の装輪フレーム30(可動フレーム30b)とリンク部材36とによって、本発明の「連動手段」が構成されている。
【0016】
一方、本実施形態において、後輪32は操舵輪としては機能しないが、駆動輪として機能するように構成されている。具体的には、装輪フレーム30(メインフレーム30a)に、後輪32と連結された油圧モータ37が設けられており、この油圧モータ37に、油圧ポンプ9(図1参照)から圧油が供給されるように構成されている。かかる構成により、エンジン8が作動し、油圧ポンプ9から油圧モータ37に圧油が送り込まれると、後輪32を駆動させることができる。つまり、本実施形態では、エンジン8と、油圧ポンプ9と、油圧モータ37とによって、本発明の「走行駆動装置」が構成されている。
【0017】
また、各装輪フレーム30(メインフレーム30a)の左右外側には、2つのアウトリガ38が前後に並んで設けられている。このように、装輪フレーム30の外側に設けられた計4つのアウトリガ38を接地させることで、ホイールクレーン1の安定性を高め、吊り能力を向上させることができる。なお、アウトリガ38は伸縮式のものが好ましく、例えば、前側の2つのアウトリガ38は斜め前方外側に伸縮可能であり、後側の2つのアウトリガ38は斜め後方外側に伸縮可能であるとよい。これによって、左右方向と前後方向の両方の安定性を向上させることができる。ただし、アウトリガ38の構成はこれに限定されず、左右方向にのみ伸縮するものであってもよい。また、アウトリガ38の基部に回転自在な継手を設ければ、左右伸縮式のものであっても、アウトリガ38を斜め前方外側又は斜め後方外側に張り出すことができる。
【0018】
各装輪フレーム30(メインフレーム30a)には、前後一対の梁部材22に対応する前後2カ所に、左右方向に貫通する矩形の開口部39が形成されている。そして、梁部材22の左右両端部を、対応する開口部39に挿入することで、下部フレーム20と装輪フレーム30とが係合し、下部走行体3が組み立てられる。一方、梁部材22を開口部39から抜き出せば、下部フレーム20と装輪フレーム30との係合状態が解除され、下部走行体3を1つの下部フレーム20と2つの装輪フレーム30とに分解することができる。つまり、本実施形態では、下部フレーム20の梁部材22と、装輪フレーム30の開口部39とによって、本発明の「係合機構」が構成されている。
【0019】
ここで、下部フレーム20と装輪フレーム30との組立時及び分解時には、下部フレーム20に設けられたジャッキ装置23を接地させ、下部フレーム20をジャッキアップすることが好ましい。下部フレーム20をジャッキアップしない場合、旋回座21に搭載された上部旋回体2の重量によって、梁部材22が開口部39の底面に強く押し付けられることになり、梁部材22を開口部39に挿入したり抜き出したりすることが困難となる。しかしながら、下部フレーム20をジャッキアップさせることによって、梁部材22を開口部39の底面から浮かせることができ、容易に梁部材22を開口部39に挿入したり抜き出したりすることができる。
【0020】
本実施形態のホイールクレーン1は、図3に示すように、下部走行体3に着脱自在に設けられた牽引装置40を用いることで、牽引車100によって牽引可能に構成されている。下部走行体3の左右の装輪フレーム30の後端部、及び、牽引装置40の前端部には、それぞれ不図示のピン穴が形成されている。これらのピン穴にピン部材41を挿入することで、牽引装置40によって左右の装輪フレーム30を連結するように、牽引装置40を下部走行体3に取り付けることができる。牽引装置40の後端部は、牽引車100に設けられた台座101に固定される。
【0021】
上述のように、ホイールクレーン1の後輪32は、油圧モータ37(図1参照)により駆動可能な駆動輪として機能するが、油圧モータ37の出力だけでは、それほど速度を上げることができない。そこで、牽引車100によってホイールクレーン1を牽引することで、より高速での移動が可能となる。したがって、例えば港湾内での移動において、短距離の場合はホイールクレーン1を自走させ、長距離の場合は牽引車100によって牽引するといった具合に使い分ければ、機動性を向上させることができる。
【0022】
(効果)
以上のように、本実施形態のホイールクレーン1は、下部フレーム20と装輪フレーム30とが、係合状態を解除可能な係合機構を介して互いに係合されているので、係合状態を解除することで、下部走行体3を下部フレーム20と装輪フレーム30とに分解できる。このように下部走行体3を細かく分解することができるため、吊り能力を向上させるべく下部走行体3を大型化しても、優れた輸送性を確保することができる。つまり、吊り能力の向上と輸送性の向上との両立が可能となる。
【0023】
また、本実施形態では、上記係合機構が、下部フレーム20に設けられた梁部材22と、装輪フレーム30に設けられ、梁部材22が挿入される開口部39と、を有して構成されている。このため、下部フレーム20と装輪フレーム30との係合を強固にできるとともに、下部走行体3を下部フレーム20と装輪フレーム30とに容易に分解することができる。
【0024】
また、本実施形態では、左右の装輪フレーム30の前後に車輪31、32が設けられており、前後の車輪31、32のうち少なくとも一方の車輪31が操舵可能な操舵輪31であって、左右の操舵輪31の操舵角度を連動させる連動手段が設けられている。このため、下部走行体3を下部フレーム20と装輪フレーム30とに分解できる構造であっても、左右の操舵輪31の操舵角度を適切に保つことができる。
【0025】
また、本実施形態では、上記連動手段が、操舵輪31を支持する支持部材としての装輪フレーム30(可動フレーム30b)と、左右の装輪フレーム30(可動フレーム30b)を連結するリンク部材36と、を有して構成されている。かかる構成によれば、低コストで且つ確実に、左右の操舵輪31の操舵角度を適切に保つことができる。なお、リンク部材36は、本実施形態のように左右の装輪フレーム30(可動フレーム30b)を連結するものに限定されず、左右の操舵輪31の車軸を連結するものでもよく、この場合には車軸が「支持部材」に相当する。
【0026】
また、本実施形態では、装輪フレーム30に、牽引車100と連結可能な牽引装置40が設けられている。ホイールクレーン1を牽引車100によって牽引すれば、エンジン8からの出力を利用した自走時よりも高速での走行が可能となり、機動性を向上させることができる。なお、牽引装置40は、装輪フレーム30ではなく、下部フレーム20に取り付けるようにしてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、牽引装置40が、左右の装輪フレーム30を連結するように設けられているので、牽引装置40により、下部フレーム20の構造を強固にすることができる。
【0028】
また、本実施形態では、左右の装輪フレーム30の前後にアウトリガ38が設けられているので、吊り能力をさらに向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態では、複数の車輪31、32のうち少なくとも一部の車輪32に対して走行駆動装置が設けられているので、ホイールクレーン1を自走させることが可能であり、機動性を高めることができる。
【0030】
また、本実施形態では、走行駆動装置が、装輪フレーム30に設けられた油圧モータ37と、上部旋回体2に設けられ、油圧モータ37に圧油を送り込む油圧ポンプ9と、上部旋回体2に設けられ、油圧ポンプ9を駆動するエンジン8と、を有して構成されている。かかる構成によれば、走行駆動装置を設けた場合であっても、ホイールクレーン1の組立及び分解が容易となる。また、走行駆動装置用のエンジン8を、荷役作業用のエンジンと兼用することができるため、コストダウンや省スペース化が可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、下部フレーム20にジャッキ装置23が設けられているので、下部フレーム20をジャッキアップすることで、既に説明したように、下部走行体3の組立及び分解が容易となる。
【0032】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記実施形態の要素を適宜組み合わせまたは種々の変更を加えることが可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態では、前輪31を操舵輪とし、後輪32を駆動輪としたが、前輪31、32にどのような機能を持たせるかは適宜変更が可能である。また、車輪の数や配置も適宜変更が可能である。
【0034】
また、上記実施形態では、左右の操舵輪31の操舵角度を連動させる連動手段が、リンク部材36を有して構成されているものとした。しかしながら、リンク部材36で機械的に連動させる代わりに、左右の操舵輪31の操舵角度を制御的に連動させるようにしてもよい。具体的には、図4に示すように、各操舵輪31の車軸に設けられた操舵アーム51を回動させる油圧シリンダ52、操舵輪31の操舵角度を検出する舵角センサ53、舵角センサ53の出力を受け取るコントローラ54、油圧シリンダ52に圧油を給排する油圧装置55を設ける。そして、左右の操舵輪31の操舵角度を適切に維持するように、コントローラ54によって油圧装置55を制御することで、左右の操舵輪31の操舵角度を連動させることができる。この場合には、本発明の「連動手段」が、油圧シリンダ52と油圧装置55とからなる操舵装置と、舵角センサ53と、コントローラ54と、を有して構成される。かかる構成によれば、左右の装輪フレーム30を連結するリンク部材36が不要となり、下部走行体3の組立及び分解が容易となる。また、左右の操舵輪が複数対設けられている場合でも、各操舵輪の操舵角度を適切に維持することができる。
【0035】
また、上記実施形態では、左右の装輪フレーム30の間隔が特に変更できないものとしたが、図5に示すように、左右の装輪フレーム30の間隔を変更可能に構成してもよい。図5に示す梁部材22は、図2のものと比べて左右により長く延びており、左右の装輪フレーム30を、図5(a)に示す内側位置と図5(b)に示す外側位置との間で変更できるようになっている。例えばホイールクレーン1の牽引時や自走時には、左右の装輪フレーム30の間隔が狭くなる内側位置に位置決めすることで、ホイールクレーン1の幅が狭くなり、機動性が向上する。一方、荷役作業時には、左右の装輪フレーム30の間隔が広くなる外側位置に位置決めすることで、ホイールクレーン1の幅が広くなり、吊り能力及び安定性を向上させることができる。なお、このようなホイールクレーン1の幅の拡縮方法としては、例えば、旋回座21又は梁部材22に不図示の油圧シリンダを設け、この油圧シリンダを用いてメインフレーム30aを左右方向に駆動させるようにすればよい。あるいは、梁部材22とメインフレーム30aとの固定位置を複数用意し、ジャッキ装置23で梁部材22をジャッキアップさせた状態でメインフレーム30aを移動させ、所望の位置でピン等で固定する方法でもよい。また、このようにホイールクレーン1の幅が拡縮可能に構成されている場合には、左右の装輪フレーム30の間隔を容易に変更できるように、左右の装輪フレーム30を連結する連結部材34やリンク部材36(図2参照)は、着脱自在あるいは伸縮式に構成されていることが好ましい。
【0036】
また、下部フレーム20と装輪フレーム30とを係合させる係合機構の第2変形例として、ピンを用いた係合機構について、図6を参照しつつ説明する。この変形例では、図6(a)に示すように、旋回座21が設けられた下部フレーム20に、旋回座21から前方及び後方にそれぞれ突設された2つの突設部材61が設けられており、各突設部材61には、左方及び右方にそれぞれ突出する第1突出部61aが計4つ形成されている。各第1突出部61aには、前後方向に貫通する第1ピン穴61bが形成されている。一方、装輪フレーム30(メインフレーム30a)には、左右内側(旋回座21側)に向かって突出し、第1突出部61aを前後から挟み込むように配置された前後一対の第2突出部30cが、4つの第1突出部61aのそれぞれと対応する位置に形成されている。各第2突出部30cには、前後方向に貫通する第2ピン穴30dが形成されている。
【0037】
第1ピン穴61bと第2ピン穴30dとは略同じ形状を有しており、第1ピン穴61bと第2ピン穴30dとが前後方向に一列に並んだ状態で、ピン部材62をピン穴61b、30dに挿入することで、下部フレーム20と装輪フレーム30とを係合させることができる。つまり、この変形例においては、下部フレーム20に設けられた第1ピン穴61bと、装輪フレーム30(メインフレーム30a)に設けられた第2ピン穴30dと、第1ピン穴61b及び第2ピン穴30dに挿入されるピン部材62とによって、本発明の「係合機構」が構成されている。
【0038】
この場合、図6(b)に示すように、延長部材63を用いることで、左右の装輪フレーム30の幅を広げることができる。なお、図6(b)では、図6(a)における左上の係合機構についてのみ図示しているが、他の3ヶ所の係合機構にも同様に延長部材63が設けられる。延長部材63は、左右方向に延びる部材であり、一端部に形成された凹部63aと他端部に形成された凸部63bとが連結部63cによってつながった形状を有する。延長部材63の凹部63aは、その内部に第1突出部61aを配置可能な形状を有しており、ピン部材62を挿入可能なピン穴63dが形成されている。また、延長部材63の凸部63bは、前後一対の第2突出部30cの間に配置可能な形状を有しており、ピン部材62を挿入可能なピン穴63eが形成されている。
【0039】
第1突出部61aの第1ピン穴61bと凹部63aのピン穴63dとが前後方向に一列に並ぶとともに、第2突出部30cの第2ピン穴30dと凸部63bのピン穴63eとが前後方向に一列に並ぶように、延長部材63を装輪フレーム30と下部フレーム20との間に配置する。そして、2本のピン部材62のうち1本を第1ピン穴61b及びピン穴63dに挿入するとともに、もう1本を第2ピン穴30d及びピン穴63eに挿入することによって、左右の装輪フレーム30の幅を広げた状態で、第1突出部61a及び第2突出部30cとを延長部材63によって連結することができる。このように、左右方向において下部フレーム20と装輪フレーム30との間に配置され、下部フレーム20及び装輪フレーム30のそれぞれにピン部材62によって連結される延長部材63を用いることで、容易に、左右の装輪フレーム30の幅を広げることができる。
【符号の説明】
【0040】
1:ホイールクレーン(ホイール式建設機械)
2:上部旋回体
3:下部走行体
8:エンジン
9:油圧ポンプ
20:下部フレーム
21:旋回座
22:梁部材
23:ジャッキ装置
30:装輪フレーム
31:前輪(操舵輪)
32:後輪(駆動輪)
36:リンク部材
37:油圧モータ
38:アウトリガ
39:開口部
40:牽引装置
52:油圧シリンダ(操舵装置)
53:舵角センサ
54:コントローラ
55:油圧装置(操舵装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6