特許第6766506号(P6766506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766506
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】異常検出装置及び車載用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
   H02M3/155 W
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-151756(P2016-151756)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-23195(P2018-23195A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2018年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 典子
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−110837(JP,A)
【文献】 特開2014−204570(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/064339(WO,A1)
【文献】 特開2016−111503(JP,A)
【文献】 特開2002−044854(JP,A)
【文献】 特開2011−147063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ素子のオンオフ動作によって入力電圧を昇圧又は降圧する電圧変換部を備えた車載用電源装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記車載用電源装置の所定位置の電流、電圧の少なくともいずれかの大きさを示す検出値をアナログ信号として生成する検出部と、前記検出部で生成された前記検出値をデジタル信号に変換する変換部とを備えた検出回路部と、
前記電圧変換部への入力経路の電圧又は電流の少なくともいずれか、又は前記電圧変換部からの出力経路の電圧又は電流の少なくともいずれかが異常値である場合に、前記車載用電源装置に対して所定の保護動作を行う保護回路部と、
前記検出回路部又は前記保護回路部の少なくともいずれかに予め定められた診断動作を行わせ、前記診断動作の結果に基づいて、前記検出回路部又は前記保護回路部の少なくともいずれかの異常を判定する異常判定部と、
を有し、
前記異常判定部は、車両において所定の動作停止条件が成立した場合に、前記検出回路部又は前記保護回路部の少なくともいずれかに前記診断動作を行わせ、前記診断動作の結果に基づいて、前記検出回路部又は前記保護回路部の少なくともいずれかの異常を判定し、前記検出回路部又は前記保護回路部の少なくともいずれかが異常である判定した場合、前記車両において所定の動作開始条件が成立したときに前記検出回路部又は前記保護回路部のうち異常と判定された対象回路部に対して予め定められた再診断動作を行わせ、前記再診断動作の結果に基づいて前記対象回路部の異常を再判定する異常検出装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記検出回路部を構成する前記変換部に対して予め定められた自己診断動作を行わせ、前記変換部の前記自己診断動作に基づいて前記検出回路部を構成する前記変換部の異常を判定する請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記入力経路の電圧又は電流が異常値である場合の疑似信号、又は前記出力経路の電圧又は電流が異常値である場合の疑似信号を前記保護回路部に与え、前記疑似信号の発生時における前記保護回路部の動作結果に基づいて前記保護回路部の異常を判定する請求項1又は請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記車載用電源装置は、複数の前記電圧変換部によって多相変換部が構成され、
前記異常判定部は、複数の前記電圧変換部を1又は複数個毎に順番に動作させ、順番に動作させたそれぞれ動作時における前記多相変換部からの出力に基づいて異常が生じている1又は複数の電圧変換部を検出する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異常検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の異常検出装置と、前記電圧変換部とを含む車載用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電源装置の異常を検出する異常検出装置、及び車載用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、並列接続された複数相のチョッパ部を含み、各相チョッパ部のスイッチ素子を異なる位相でスイッチ駆動し、発電装置からの直流電圧を所定の出力電圧に変換する多相チョッパと、各相チョッパ部のスイッチ素子の故障を検出する故障検出手段とを備えた電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−46541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の電源装置は、通常の電圧変換動作時に故障診断を行う構成であるため、故障診断を行っている最中に処理負荷が増大し、通常動作に影響を及ぼすという問題がある。また、特許文献1の電源装置は、各相のスイッチ素子の故障を判定する機能を備えているが、モニタ回路や保護回路などが適正に動作するか否かを判定することができないという問題もある。
【0005】
本発明は上述した事情に基づいてなされたものであり、車載用電源装置を動作させる上で重要性の高い部分の異常判定を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一例である異常検出装置は、
スイッチ素子のオンオフ動作によって入力電圧を昇圧又は降圧する電圧変換部を備えた車載用電源装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記車載用電源装置の所定位置の電流、電圧の少なくともいずれかの大きさを示す検出値をアナログ信号として生成する検出部と、前記検出部で生成された前記検出値をデジタル信号に変換する変換部とを備えた検出回路部と、
前記電圧変換部への入力経路の電圧又は電流の少なくともいずれか、又は前記電圧変換部からの出力経路の電圧又は電流の少なくともいずれかが異常値である場合に、前記車載用電源装置に対して所定の保護動作を行う保護回路部と、
前記検出回路部又は前記保護回路部の少なくともいずれかに予め定められた診断動作を行わせ、前記診断動作の結果に基づいて、前記検出回路部又は前記保護回路部の少なくともいずれかの異常を判定する異常判定部と、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
上述した異常検出装置は、異常判定部を備え、この異常判定部は、検出回路部又は保護回路部の少なくともいずれかに予め定められた診断動作を行わせ、診断動作の結果に基づいて、検出回路部又は保護回路部の少なくともいずれかの異常を判定する。このような異常判定部の動作により、検出回路部又は保護回路部の少なくともいずれかに実際に診断動作を行わせた上で異常を判定することができ、車載用電源装置を正常に動作させる上で重要性の高い部分について異常が生じているか否かを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の異常検出装置及び車載用電源装置を含んだ車載電源システムを例示する回路図である。
図2】実施例1の異常検出装置及び車載用電源装置を含んだ車載電源システムを簡略的に示すブロック図である。
図3】実施例1の異常検出装置によって実行される保護回路部の異常検出制御の流れを例示するフローチャートである。
図4図3の異常検出制御における保護回路故障検出処理の流れを例示するフローチャートである。
図5】実施例1の異常検出装置によって実行される検出回路部の異常検出制御の流れを例示するフローチャートである。
図6】実施例1の異常検出装置によって実行される多相変換部の異常検出制御の流れを例示するフローチャートである。
図7図6の異常検出制御における故障相判定処理の流れを例示するフローチャートである。
図8】実施例1の異常検出装置によって実行される保護回路部の再判定制御の流れを例示するフローチャートである。
図9】実施例1の異常検出装置によって実行される検出回路部の再判定制御の流れを例示するフローチャートである。
図10】実施例1の異常検出装置によって実行される多相変換部の再判定制御の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本発明の望ましい例を示す。但し、本発明は以下の例に限定されない。
異常判定部は、車両において所定の動作停止条件が成立した場合に、検出回路部又は保護回路部の少なくともいずれかに診断動作を行わせ、診断動作の結果に基づいて、検出回路部又は保護回路部の少なくともいずれかの異常を判定し、検出回路部又は保護回路部の少なくともいずれかが異常である判定した場合、車両において所定の動作開始条件が成立したときに検出回路部又は保護回路部のうち異常と判定された対象回路部に対して予め定められた再診断動作を行わせ、再診断動作の結果に基づいて対象回路部の異常を再判定するように機能し得る。
【0010】
このように構成された異常検出装置は、診断動作やそれに応じた異常判定を、車両において所定の動作停止条件が成立した後に行うことができるため、車両走行時に行われる通常動作への影響を抑えて重要性の高い部分を確認することができる。更に、その異常判定によって異常と判定した場合には、異常と判定した回路部(対象回路部)に対して再診断動作を行わせ、異常を再判定することができるため、いずれかの回路部が異常であるか否かをより正確に判定することができ、しかも、再診断動作及び異常の再判定は、車両において所定の動作開始条件が成立したとき、車両の走行が進行する前に早期に実行することができる。このように、診断動作や異常判定だけでなく再診断動作や再判定についても車両走行時に行われる通常動作への影響を抑えて行うことができ、更には、異常判定後に再判定がなされないまま車両走行が行われる事態も生じにくくなる。
【0011】
異常判定部は、検出回路部を構成する変換部に対して予め定められた自己診断動作を行わせ、変換部の自己診断動作に基づいて検出回路部を構成する変換部の異常を判定するように機能し得る。
【0012】
このように構成された異常検出装置は、電流又は電圧をモニタする上で重要な部分である変換部を診断対象とし、この変換部に異常が生じているか否かを具体的に確認することができる。
【0013】
異常判定部は、入力経路の電圧又は電流が異常値である場合の疑似信号、又は出力経路の電圧又は電流が異常値である場合の疑似信号を保護回路部に与え、疑似信号の発生時における保護回路部の動作結果に基づいて保護回路部の異常を判定するように機能し得る。
【0014】
このように構成された異常検出装置は、電圧又は電流の異常に対応する上で重要な部分である保護回路部を診断対象とし、保護回路部に異常が生じているか否かを具体的に確認することができる。特に、実際の異常時に対応した疑似信号を発生させ、それに応じた保護回路部の動作結果に基づいて保護回路部の異常を判定することができるため、保護回路部が正常に動作し得るか否かを、より正確に判定することができる。
【0015】
異常検出装置は、複数の電圧変換部によって多相変換部が構成され、異常判定部は、複数の電圧変換部を1又は複数個毎に順番に動作させ、順番に動作させたそれぞれ動作時における多相変換部からの出力に基づいて異常が生じている1又は複数の電圧変換部を検出するように機能し得る。
【0016】
このように構成された異常検出装置は、車載用電源装置を正常に動作させる上で重要性の高い検出回路部又は保護回路部の異常判定だけでなく、多相変換部の異常判定をも行うことができ、しかも、異常が生じている相を具体的に特定することができる。
【0017】
上記異常検出装置と、電圧変換部とを含む形で車載用電源装置を構成し得る。この構成によれば、上記異常検出装置と同様の効果を奏する車載用電源装置を実現できる。
【0018】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示す車載用電源装置1(以下、電源装置1ともいう)は、車載用電源システム100の一部をなす車載用の多相型DCDCコンバータとして構成されており、入力側導電路6に印加された直流電圧(入力電圧)を多相方式且つ降圧方式で電圧変換し、入力電圧を降圧した出力電圧を出力側導電路7に出力する構成となっている。
【0019】
電源装置1は、入力側導電路6と出力側導電路7とを備えた電源ライン5と、入力された電圧を変換して出力するn個の電圧変換部CV1,CV2…CVnを備えた多相変換部2と、電圧変換部CV1,CV2…CVnを制御信号によって個々に制御する制御部4とを備える。なお、電圧変換部の個数(多相変換部2における最大相数)であるnは2以上の自然数であればよい。以下では、図1で示す構成、即ち、n=4である場合を代表例として説明する。また、本構成では、電源装置1のうちの多相変換部2を除いた部分によって異常検出装置3が構成されている。この異常検出装置3は、制御部4、保護回路14A,14B、電圧検出回路16A,16B、電流検出回路18などを備えている。
【0020】
入力側導電路6は、例えば、相対的に高い電圧が印加される一次側(高圧側)の電源ラインとして構成され、一次側電源部91の高電位側の端子に導通するとともに、その一次側電源部91から所定の直流電圧(例えば、48V)が印加される構成をなす。この入力側導電路6は、各電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4の個別入力路LA1,LA2,LA3,LA4にそれぞれ接続されている。一次側電源部91は、例えば、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の蓄電手段によって構成され、高電位側の端子は所定の高電位(例えば48V)に保たれ、低電位側の端子は例えばグラウンド電位(0V)に保たれている。また、入力側導電路6には、オルタネータとして構成される発電機(図示は省略)も電気的に接続されている。
【0021】
出力側導電路7は、相対的に低い電圧が印加される二次側(低圧側)の電源ラインとして構成されている。出力側導電路7には、一次側電源部91の出力電圧よりも小さい直流電圧(例えば12V)を出力する蓄電手段(鉛蓄電池等)が接続されている。なお、出力側導電路7には、車載用電気機器などの負荷94(図2参照)も接続されている。
【0022】
入力側導電路6と出力側導電路7との間には、多相変換部2が設けられている。この多相変換部2は、入力側導電路6と出力側導電路7との間に並列に接続されたn個の電圧変換部CV1,CV2…CVnを備える。n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnは、同様の構成をなし、いずれも同期整流方式の降圧型コンバータとして機能する。なお、以下では、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnの各電圧変換部を電圧変換部CVとも称する。入力側導電路6からはn個の電圧変換部CV1,CV2…CVnの各個別入力路LA1,LA2…LAnが分岐している。また、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnの各個別出力路LB1,LB2…LBnは、共通の出力路である出力側導電路7に接続されている。なお、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnは、それぞれ1相目、2相目…n相目とされている。なお、本明細書では、「相に対応する電圧変換部」を単に「相」と称することもある。
【0023】
n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnのうち、第k相の電圧変換部CVkについて説明する。以下において、kは、n以下の自然数である。第k相の電圧変換部CVkは、ハイサイド側のスイッチ素子SAkと、ローサイド側のスイッチ素子SBkと、インダクタLkと、保護用のスイッチ素子SCkとを備える。例えば、第1相の電圧変換部CV1は、ハイサイド側のスイッチ素子SA1と、ローサイド側のスイッチ素子SB1と、インダクタL1と、保護用のスイッチ素子SC1とを備えており、第2相の電圧変換部CV2は、ハイサイド側のスイッチ素子SA2と、ローサイド側のスイッチ素子SB2と、インダクタL2と、保護用のスイッチ素子SC2とを備えている。第3相、第4相も同様である。
【0024】
第k相の電圧変換部CVkにおいて、スイッチ素子SAkは、Nチャネル型のMOSFETとして構成され、スイッチ素子SAkのドレインには、入力側導電路6から分岐した個別入力路LAkが接続されている。スイッチ素子SAkのソースには、ローサイド側のスイッチ素子SBkのドレイン及びインダクタLkの一端が接続されている。スイッチ素子SBkは、スイッチ素子SAkとインダクタLkとの接続点にドレインが接続され、ソースはグラウンドに接続されている。インダクタLkの他端は、スイッチ素子SCkのソースに接続されている。スイッチ素子SCkのドレインは、出力側導電路7に接続されている。スイッチ素子SCkは、過電流、過電圧、逆流等の異常時に経路の導通を遮断するように機能するものである。なお、図1ではスイッチ素子SAk,SBk,SCkの各ゲートに接続される制御線は省略しているが、各スイッチ素子SAk,SBk,SCkが個別の制御線を介して制御部4によって制御され得る。
【0025】
制御部4は、主として、制御回路10とFET駆動部12とを備える。制御回路10は、例えばMCU(Micro Controller Unit)として構成されており、各種演算処理を行うCPU10Aと、アナログ電圧をデジタル信号に変換するA/D変換器10Bと、パルス発振器10Cとを備える。更に、制御回路10には、ROM、RAMなどの半導体記憶手段によって構成される記憶部(図示は省略)なども設けられている。A/D変換器10Bには、後述する電圧検出回路16A,16B、電流検出回路18などから出力される各電圧値が入力される。
【0026】
制御部4において、制御回路10は、デューティを決定する機能、及び決定したデューティのPWM信号を生成し出力する機能を有しており、具体的には、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnのそれぞれに対するPWM信号を生成し、出力する。例えば、定常出力状態において、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnを全て駆動する場合、制御回路10は、位相が2π/nずつ異なるPWM信号を生成し、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnのそれぞれに出力する。図1の例のように多相変換部2が4個の電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4によって構成されていれば、制御部4からそれぞれに対して位相が2π/4ずつ異なるPWM信号が与えられる。制御回路10は、パルス発振器10Cで生成されるパルス信号を利用し、演算処理で算出されるデューティのPWM信号を公知の方法で生成する。
【0027】
FET駆動部12は、制御回路10で生成された各相に対するPWM信号に基づき、各相のスイッチ素子SAk,SBk(kは、1〜nの自然数)のそれぞれを交互にオンするためのオン信号をスイッチ素子SAk,SBkのゲートに印加する。スイッチ素子SAk,SBkへのPWM信号の出力中においてスイッチ素子SBkのゲートに与えられる信号は、デッドタイムが確保された上で、スイッチ素子SAkのゲートに与えられる信号に対して位相が反転する。
【0028】
電源装置1は、複数の電圧変換部CV1,CV2…CVnに対する共通の入力経路(入力側導電路6)の入力電圧値を検出する電圧検出回路16Aと、複数の電圧変換部CV1,CV2…CVnからの共通の出力経路(出力側導電路7)における出力電圧値及び出力電流値をそれぞれ検出する電圧検出回路16B、電流検出回路18を備える。
【0029】
電圧検出回路16Aは、入力側導電路6の電圧値を反映した値(例えば、入力側導電路6の電圧値そのもの、或いはその電圧値を分圧回路で分圧した分圧値など)を制御回路10のA/D変換器10Bに出力する部分として構成されている。電圧検出回路16Bは、出力側導電路7の電圧値を反映した値(例えば、出力側導電路7の電圧値そのもの、或いはその電圧値を分圧回路で分圧した分圧値など)を制御回路10のA/D変換器10Bに出力する部分として構成されている。
【0030】
電流検出回路18は、出力側導電路7を流れる電流に対応する電圧値を検出値として出力する構成であればよい。例えば、電流検出回路18は、出力側導電路7に介在する抵抗器と差動増幅器とを有し、抵抗器の両端電圧が差動増幅器に入力され、出力側導電路7を流れる電流によって抵抗器に生じた電圧降下量が差動増幅器で増幅され、これを検出値として制御回路10のA/D変換器10Bに出力するようになっている。
【0031】
本構成では、電圧検出回路16A,16B、電流検出回路18が検出部の一例に相当し、電源装置1の所定位置の電流、電圧の少なくともいずれかの大きさを示す検出値をアナログ信号として生成するように機能する。A/D変換器10Bは、変換部の一例に相当し、検出部で生成された検出値をデジタル信号に変換するように機能する。そして、電圧検出回路16A,16B、電流検出回路18(検出部)とA/D変換器10B(変換部)とによって検出回路部が構成されている。
【0032】
保護回路14A,14Bは、保護回路部の一例に相当し、電圧変換部への入力経路の電圧又は電流の少なくともいずれか、又は電圧変換部からの出力経路の電圧又は電流の少なくともいずれかが異常値である場合に、電源装置1に対して所定の保護動作を行うように機能する。
【0033】
図2で示すように、保護回路14Aは、入力側導電路6の電流値が所定の電流閾値以上である場合に過電流信号を制御部4に出力し、入力側導電路6の電圧値が所定の電圧閾値以上である場合に過電圧信号を制御部4に出力する判定回路31Aを備える。また、保護回路14Aは、判定回路31Aによって過電流信号又は過電圧信号が出力された場合に多相変換部2を動作停止状態とする停止回路32Aを備える。停止回路32Aは、判定回路31Aから制御部4に対して過電流信号又は過電圧信号が出力された場合に多相変換部2の動作を停止させ、その動作停止状態を解除条件が成立するまで維持する構成をなす。停止回路32Aが多相変換部2の動作を停止させる方法は特に限定されず、例えば、判定回路31Aによって制御部4に対し過電流信号又は過電圧信号が出力された場合にFET駆動部12から多相変換部2に入力される制御信号を無効化する制御を開始するとともにその無効化制御を継続し、制御部4から解除信号(ラッチクリア信号)が出力された場合に、その無効化制御を解除するような構成とすることができる。
【0034】
図2で示す保護回路14Bは、出力側導電路7の電流値が所定の電流閾値以上である場合に過電流信号を制御部4に出力し、出力側導電路7の電圧値が所定の電圧閾値以上である場合に過電圧信号を制御部4に出力する判定回路31Bを備える。また、保護回路14Bは、判定回路31Bによって過電流信号又は過電圧信号が出力された場合に多相変換部2を動作停止状態とする停止回路32Bを備える。停止回路32Bは、判定回路31Bから制御部4に対して過電流信号又は過電圧信号が出力された場合に多相変換部2の動作を停止させ、その動作停止状態を解除条件が成立するまで維持する構成をなす。停止回路32Bが多相変換部2の動作を停止させる方法は特に限定されず、例えば、判定回路31Bによって過電流信号又は過電圧信号が出力された場合にFET駆動部12から多相変換部2に入力される制御信号を無効化する制御を開始するとともにその無効化制御を継続し、制御部4から解除信号(ラッチクリア信号)が出力された場合に、その無効化制御を解除するような構成とすることができる。
【0035】
次に、制御部4によって行われる多相変換部2の駆動制御について説明する。
まず、定常状態での基本動作について説明する。定常状態での基本動作は、後述する図3〜7の制御(車両動作終了時の各制御)が実行される前の動作であり、且つ、後述する図8図10の制御(車両動作開始時の各制御)が終了した後の動作である。制御部4は、電圧変換部CVk(kは、1〜nの自然数)を複数備えてなる多相変換部2を制御対象とし、多相変換部2の各々の電圧変換部CVkに設けられた各々のスイッチ素子SAk,SBkに対しオン信号とオフ信号とを交互に切り替える制御信号を出力する機能を有する。
【0036】
定常状態のとき、制御部4は、n個の電圧変換部CV1,CV2…CVnのそれぞれに対して、デッドタイムを設定した形でPWM信号を相補的に出力する。例えば、第k相の電圧変換部CVkを構成するスイッチ素子SAk,SBkの各ゲートに対しては、制御部4は、デッドタイムを設定した上で、スイッチ素子SAkのゲートへのオン信号の出力中には、スイッチ素子SBkのゲートにオフ信号を出力し、スイッチ素子SAkのゲートへのオフ信号の出力中には、スイッチ素子SBkのゲートにオン信号を出力する。電圧変換部CVkは、このような相補的なPWM信号に応じて、スイッチ素子SAkのオン動作とオフ動作との切り替えをスイッチ素子SBkのオフ動作とオン動作との切り替えと同期させて行い、これにより、個別入力路LAkに印加された直流電圧を降圧し、個別出力路LBkに出力する。個別出力路LBkの出力電圧は、スイッチ素子SAk,SBkの各ゲートに与えるPWM信号のデューティ比に応じて定まる。このような制御は、上述した自然数kが1からnのいずれの場合でも、即ち、第1相から第n相までのいずれの電圧変換部においても、同様に行われる。
【0037】
制御部4は、多相変換部2を動作させる場合、複数の電圧変換部CV1,CV2…CVnの一部又は全部を、制御信号(PWM信号)によって個々に制御し、多相変換部2からの出力が設定された目標値となるようにフィードバック制御を行う。例えば、制御部4は、電流検出回路18によって制御回路10に入力された検出値(出力側導電路7の電流値)と、出力電流の目標値(目標電流値)とに基づき、公知のPID制御方式によるフィードバック演算によって各相の制御量(デューティ比)を決定する。多相変換部2において駆動相数がmのときの定常出力状態では、フィードバック演算によって決定したデューティ比のPWM信号を、位相を2π/mずつ異ならせてm個の電圧変換部のそれぞれに出力する。なお、n個の電圧変換部を全て駆動せる場合にはn=mであり、後述する故障判定などによってn個の電圧変換部のうちp個の電圧変換部を駆動させない場合には、m=n−pである。
【0038】
次に、図3図7等を参照し、車両動作終了時の制御について説明する。
図1で示す電源装置1では、車両において所定の動作停止条件が成立したときに、制御回路10が図3図5図6の各制御を実行する。なお、これらの制御は、順番に実行してもよく、並行して実行してもよい。以下の説明では、電源装置1が搭載される車両内に設けられた図示しないイグニッションスイッチがオフ状態になり、制御回路10にイグニッションスイッチがオフ状態であることを示す信号(IGオフ信号)が入力されたときが「所定の動作停止条件が成立したとき」である場合を例に挙げて説明する。
【0039】
まず、保護回路部の故障を判定する制御を説明する。
制御回路10(より具体的には、CPU10A)は、外部からIGオフ信号が入力されたことに応じて図3の制御を開始し、まず、ステップS1にて保護回路故障検出処理を行う。制御回路10は、保護回路故障検出処理を図4の流れで行うことができ、この保護回路故障検出処理は、故障検出の対象となる各保護回路に対して行うことができる。例えば、図1図2の例では、保護回路14A,14Bのそれぞれに対して図4の処理を行うことができる。
【0040】
制御回路10は、保護回路14Aに対して図4の保護回路故障検出処理を行う場合、まず、ステップS11の処理を実行し、疑似故障発生信号を発生させた状態(ON状態)にする。制御回路10は、ステップS11の処理を行う場合、例えば入力側導電路6において所定の過電圧疑似信号(判定回路31Aによって過電圧状態と判定される電圧の信号(即ち、所定の電圧閾値以上の電圧信号))を発生させ、このように入力側導電路6に過電圧疑似信号を発生させている最中に判定回路31Aが過電圧信号を出力するか否かを確認する。なお、過電圧疑似信号の発生方法は特に限定されず、保護回路14Aの判定回路31Aに対して所定の電圧閾値(通常動作時に入力電圧の過電圧を判定するための閾値)を超える電圧を印加し得る方法であればよい。
【0041】
更に、制御回路10は、図4のステップS11の処理を行う場合、入力側導電路6において所定の過電流疑似信号(判定回路31Aによって過電流状態と判定される電流信号(所定の電流閾値以上の電流信号))を発生させ、入力側導電路6に過電流疑似信号を発生させている最中に判定回路31Aが過電流信号を出力するか否かを確認する。なお、過電流疑似信号の発生方法は特に限定されず、保護回路14Aの判定回路31Aに対して所定の電流閾値(通常動作時に入力電流の過電流を判定するための閾値)を超える電流を流し得る方法であればよい。
【0042】
制御回路10は、このように過電圧疑似信号及び過電流疑似信号を発生させたときに判定回路31Aからの過電圧信号又は過電流信号を確認できなかった場合、図4のステップS13において、所定時間の間、過電流疑似信号の発生及び過電圧疑似信号の発生を繰り返すとともに、過電流信号及び過電圧信号の検出を試みる。制御回路10は、ステップS13の所定時間の間においても、過電圧信号又は過電流信号のいずれかを検出しなかった場合(ステップS14でYesの場合)、ステップS15において保護回路14Aが故障であると判定する。
【0043】
制御回路10は、保護回路14Bに対しても図4の保護回路故障検出処理を行うことができる。この場合、制御回路10は、ステップS11において、例えば出力側導電路7において所定の過電圧疑似信号(判定回路31Bによって過電圧状態と判定される電圧の信号(即ち、所定の電圧閾値以上の電圧信号))を発生させ、出力側導電路7に過電圧疑似信号を発生させている最中に判定回路31Bが過電圧信号を出力するか否かを確認する。更に、制御回路10は、出力側導電路7において所定の過電流疑似信号(判定回路31Bによって過電流状態と判定される電流信号(所定の電流閾値以上の電流信号))を発生させ、出力側導電路7に過電流疑似信号を発生させている最中に判定回路31Bが過電流信号を出力するか否かを確認する。制御回路10は、このようにステップS11において過電圧疑似信号及び過電流疑似信号を発生させたときに判定回路31Bからの過電圧信号又は過電流信号を確認できなかった場合、ステップS12においてyesの判定となり、ステップS13において、所定時間の間、過電流疑似信号の発生及び過電圧疑似信号の発生を繰り返すとともに、過電流信号及び過電圧信号の検出を試みる。制御回路10は、ステップS13の所定時間の間においても、過電圧信号又は過電流信号のいずれかを検出しなかった場合(ステップS14でYesの場合)、ステップS15において保護回路14Bが故障であると判定する。
【0044】
制御回路10は、保護回路14A,14Bに対して図4で示す保護回路故障検出処理を行った後、図3のステップS2の判定処理を行い、保護回路故障検出処理において保護回路14A,14Bの少なくともいずれかが故障であると判定されたか否かを判定する。制御回路10は、保護回路故障検出処理において保護回路14A,14Bの少なくともいずれかが故障であると判定した場合(ステップS2でYesの場合)、ステップS3の処理を行い、図示しない記憶部に保護回路が故障であることを示す情報を記憶する。
【0045】
このように、制御回路10は異常判定部の一例に相当し、車両において所定の動作停止条件が成立した場合(例えば、IGオフ信号が入力された場合)に、検出回路部及び保護回路部に予め定められた診断動作を行わせ、診断動作の結果に基づいて、検出回路部及び保護回路部の異常を判定するように機能する。具体的には、制御回路10(異常判定部)は、動作停止条件が成立した場合に、疑似信号として、入力経路の電圧が異常値となる疑似電圧信号及び入力経路の電流が異常値となる疑似電流信号を保護回路14Aにそれぞれ与え、各疑似信号の発生時に保護回路14Aが異常時の正規動作を行ったか否かを基づいて(具体的には、保護回路14Aから過電圧信号及び過電流信号が出力されたか否かに基づいて)、保護回路14Aの異常を判定するように機能する。同様に、制御回路10(異常判定部)は、動作停止条件が成立した場合に、疑似信号として、出力経路の電圧が異常値となる疑似電圧信号及び出力経路の電流が異常値となる疑似電流信号を保護回路14Bにそれぞれ与え、各疑似信号の発生時に保護回路14Bが異常時の正規動作を行ったか否かに基づいて(具体的には、保護回路14Bから過電圧信号及び過電流信号が出力されたか否かに基づいて)、保護回路14Bの異常を判定するように機能する。
【0046】
次に、検出回路部の故障を判定する制御を説明する。
制御回路10(より具体的には、CPU10A)は、外部からIGオフ信号が入力されたことに応じて図5の制御も行うことができる。この図4の制御では、まず、ステップS21により、自己診断機能を利用した故障検出処理を行う。
【0047】
制御回路10には、A/D変換器10Bの故障を診断する自己診断機能が搭載されており、図5のステップS21では、この自己診断機能を実行する。自己診断機能としては、公知のマイクロコンピュータなどにおいてA/D変換器に対して実行される公知の自己診断機能を用いることができる。
【0048】
例えば、制御回路10内に、予め定められた基準電圧を生成する基準電圧生成回路(図示は省略)が設けられ、制御回路10は、内部の基準電圧生成回路で生成された基準電圧をアナログ信号としてA/D変換器10Bに入力する。そして、その基準電圧をA/D変換器10Bによってデジタル信号に変換した後の変換後のデータが予め定められた正常範囲内であればA/D変換器10Bが正常であると判定し、その正常範囲から外れた異常範囲であればA/D変換器10Bが故障であると判定する。
【0049】
制御回路10は、このようにステップS21にて自己診断機能を実行したときに、その自己診断機能によりA/D変換器10Bの故障であると判定した場合、ステップS23において、A/D変換器10Bが故障であることを示す情報を図示しない記憶部に記憶する。一方、ステップS22にて、A/D変換器10Bが故障でないと判定した場合、ステップS24において、A/D変換器10Bが故障でないことを示す情報を図示しない記憶部に記憶する。なお、ステップS24では、情報の記憶を行わないようにしてもよい。
【0050】
このように異常判定部として機能する制御回路10は、動作停止条件が成立した場合(例えば、IGオフ信号が入力された場合)にA/D変換器10B(変換部)に対して予め定められた自己診断動作を行わせ、A/D変換器10B(変換部)の自己診断動作に基づいてA/D変換器10B(変換部)の異常を判定するように機能する。
【0051】
次に、電圧変換部の故障を判定する制御を説明する。
制御回路10は、外部からIGオフ信号が入力されたときに、図6の制御も実行することができる。この図6の制御では、まず、ステップS31において、故障相判定処理を行う。
【0052】
制御回路10は、ステップS31の故障相判定処理を図7のような流れで行い、この故障相判定処理では、ステップS42〜ステップS45の間の処理を、n相分繰り返す。iは、ステップS42〜S45の処理の実行回数を示す値であり、i=1であれば、第1相に対してステップS42〜S45の処理を行い、i=nであれば、第n相に対してステップS42〜S45の処理を行う。図7の故障相判定処理の開始直後はi=1であり、ステップS42〜S45の処理が完了する毎にiの値をカウントアップする。iの値がnを超えた場合には、図7の故障判定処理を終了する。
【0053】
制御回路10は、ステップS42の処理を行う場合、そのステップS42の処理を行う時点でのiの値に基づき、第i相のみを駆動し、それ以外の相の駆動を停止させる。例えば、i=1であれば、第1相(1番目)の電圧変換部CVのみを駆動し、それ以外の電圧変換部CVの駆動を停止させる。制御回路10は、このように第i相の電圧変換部CVを駆動させた状態で、ステップ43の処理を実行し、所定時間にわたり出力電圧値及び出力電流値を監視する。制御回路10は、ステップS43の後にステップS44の判定処理を行い、ステップS43の処理で監視される出力電圧値が予め定められた下限値よりも低い場合(具体的には、電圧検出回路16Bの検出値で特定される電圧値が所定の下限電圧値よりも低い場合)、又は、ステップS43の処理で監視される出力電流値が0A相当の場合(具体的には、電流検出回路18の検出値で特定される電流値が所定の下限電流値よりも低い場合)には、ステップS45において着目しているi相の電圧変換部CVが故障であることを示す情報を図示しない記憶部に記憶する。制御回路は、ステップS44の判定処理において、ステップS43の処理で監視される出力電圧値が予め定められた下限値以上であり、且つステップS43の処理で監視される出力電流値が0A相当でないと判定した場合には、ステップS46からステップS41に戻り、iをカウントアップする。
【0054】
制御回路10は、図7で示す故障相判定処理を終えた後、図6のステップS32の判定処理を行い、故障相判定処理において、いずれかの相の故障を示す情報が記憶されているか否かを判定する。制御回路10は、図7の故障相判定処理でいずれの相も故障と判定せず、図示しない記憶部にいずれの相の故障情報も記憶されていない場合には、ステップS34において故障相なしと判定し、この場合、特別な処理を行わずに図6の制御を終了する。
【0055】
一方、制御回路10は、図7の故障相判定処理でいずれかの相を故障と判定しており、いずれかの相の故障情報が図示しない記憶部に記憶されている場合には、ステップS33において故障相ありと判定し、故障相があることを示す情報を、故障相を特定する情報とともに図示しない記憶部に記憶しておく。
【0056】
このように、異常判定部として機能する制御回路10は、動作停止条件が成立した場合(例えばIGオフ信号が入力された場合)に複数の電圧変換部CVを1つずつ順番に動作させ、順番に動作させたそれぞれ動作時における多相変換部2からの出力に基づいて異常が生じている電圧変換部CVを検出するように機能する。
【0057】
次に、図8図10等を参照し、車両動作開始時の制御について説明する。
制御回路10は、車両において所定の動作開始条件が成立したとき(例えば、IGオン信号が入力されたとき)に図8図10の制御を実行する。なお、図8図10の制御は順番に行ってもよく、並行して行ってもよい。
【0058】
まず、保護回路の故障の再判定について図8を参照して説明する。
制御回路10(より具体的には、CPU10A)は、外部からIGオン信号が入力されたことに応じて図8の制御を開始し、まず、ステップS51において、動作停止条件が成立したとき(即ち、IG信号がIGオン信号からIGオフ信号に切り替わったとき)に実行された図3の制御において保護回路14A,14Bのいずれかが故障であると判定されているか否かを判定する。図3の制御において保護回路14A,14Bのいずれかが故障であると判定されていない場合、即ち、いずれも故障でない場合には、図8の制御を終了する。
【0059】
図3の制御において保護回路14A,14Bのいずれかが故障であると判定されている場合、即ち、図示しない記憶部に保護回路14A,14Bのいずれかの故障を示す情報が記憶されている場合、制御回路10は、ステップS52の処理を行い、記憶部に記憶された情報によって故障と特定されている保護回路を対象として図4と同様の保護回路故障検出処理を再度行う。
【0060】
そして、ステップS52の後、ステップS53の判定処理を行い、制御回路10は、ステップS52にて対象の保護回路(記憶部に故障情報が記憶されている保護回路)に対して図4の保護回路故障検出処理を行ったときに、再びステップS15にてその対象の保護回路を故障と判定した場合(ステップS53でyes)、ステップS54において、その対象の保護回路(再判定を行った保護回路)を故障と確定させる。ステップS54にて対象の保護回路の故障を確定させた場合、その保護回路が異常である旨の情報を外部装置(例えば上位ECUなど)に通知するような保護動作を行ってもよく、ユーザに所定の報知を行うような保護動作を行ってもよい。或いは、多相変換部2の動作を禁止するような保護動作を行ってもよい。
【0061】
制御回路10は、ステップS52にて対象の保護回路に対して図4の保護回路故障検出処理を行ったときにステップS15の処理を実行せず、対象の保護回路を故障と判定しなかった場合(ステップS53でno)、ステップS55において、その対象の保護回路(再判定を行った保護回路)を故障ではないと判定する。この場合、先に行われた図3の制御で記憶部に記憶された情報(その対象の保護回路が故障であることを示す情報)は消去すればよい。
【0062】
次に、A/D変換器10Bの故障の再判定について図9を参照して説明する。
制御回路10(より具体的には、CPU10A)は、外部からIGオン信号が入力されたことに応じて図9の制御を開始し、まず、ステップS61において、動作停止条件が成立したとき(即ち、IG信号がIGオン信号からIGオフ信号に切り替わったとき)に実行された図5の制御においてA/D変換器10Bが故障であると判定されているか否かを判定する。図5の制御においてA/D変換器10Bが故障であると判定されている場合、即ち、図示しない記憶部にA/D変換器10Bの故障を示す情報が記憶されている場合、制御回路10は、ステップS62の処理を行い、A/D変換器10Bに対して図5のステップS21と同様の自己診断機能を行わせ、故障検出を再度行う。
【0063】
制御回路10は、ステップS62の自己診断機能の実行時に再度A/D変換器10Bが故障であると判定した場合(ステップS63でyes)には、ステップS64において、A/D変換器10Bを故障と確定させる。このようにA/D変換器10Bの故障を確定させた場合、A/D変換器10Bが異常である旨の情報を外部装置(例えば上位ECUなど)に通知するような保護動作を行ってもよく、ユーザに所定の報知を行うような保護動作を行ってもよい。或いは、多相変換部2の動作を禁止するような保護動作を行ってもよい。
【0064】
制御回路10は、ステップS62にて自己診断機能を実行したときにA/D変換器10Bが故障であると判定しなかった場合(ステップS63でno)、ステップS65において、A/D変換器10Bを故障ではないと判定する。この場合、先に行われた図5の制御で記憶部に記憶された情報(A/D変換器10Bが故障であることを示す情報)は消去すればよい。
【0065】
次に、電圧変換部CVの故障の再判定について図10を参照して説明する。
制御回路10(より具体的には、CPU10A)は、外部からIGオン信号が入力されたことに応じて図10の制御を開始し、まず、ステップS71において、動作停止条件が成立したとき(即ち、IG信号がIGオン信号からIGオフ信号に切り替わったとき)に実行された図6の制御において複数の電圧変換部CVのうちのいずれかが故障であると判定されているか否かを判定する。図6の制御において複数の電圧変換部CVのうちのいずれかが故障であると判定されている場合、即ち、図示しない記憶部に複数の電圧変換部CVのいずれかの故障を示す情報が記憶されている場合、ステップS72において、その故障であると判定されている電圧変換部CV(即ち、記憶部に故障である旨が記憶されている電圧変換部)に対して図7と同様の故障相判定処理を再度行う。
【0066】
具体的には、制御回路10は、先に行われた図6の制御において故障と判定されている電圧変換部CV(以下、故障推定相ともいう)に対し、図7のステップS42〜S45と同様の処理を実行する。具体的には、まず、ステップS42と同様の処理を行い、故障と判定されている電圧変換部CV(故障推定相)のみを駆動し、それ以外の電圧変換部CVの駆動を停止させる。制御回路10は、このように故障と判定されている電圧変換部CV(故障推定相)のみを駆動させた状態で、ステップ43と同様の処理を実行し、所定時間にわたり出力電圧値及び出力電流値を監視する。制御回路10は、このような監視を行った後にステップS44と同様の判定処理を行い、故障推定相の動作時に出力電圧値が予め定められた下限値よりも低い場合(具体的には、電圧検出回路16Bの検出値で特定される電圧値が所定の下限電圧値よりも低い場合)、又は、故障推定相の動作時に出力電流値が0A相当の場合(具体的には、電流検出回路18の検出値で特定される電流値が所定の下限電流値よりも低い場合)には、ステップS45と同様の処理を行い、その故障推定相を再度故障と判定する。逆に、故障推定相の動作時に出力電圧値が予め定められた下限値以上であり且つ出力電流値が0A相当ではない場合には、その故障推定相を故障と判定しない。
【0067】
制御回路10は、このような故障相判定処理を行った後、ステップS73において故障推定相が再度故障と判定されたか否かを判定し、故障推定相が再度故障と判定された場合には、ステップS74において、故障推定相の故障を確定させる。このように、いずれかの電圧変換部CVの故障が確定した場合、その後に行う定常状態の制御において、故障が確定した電圧変換部CVを動作させずに動作禁止状態とし、残りの電圧変換部CVを動作させて電圧変換を行うようにすることができる。また、いずれかの電圧変換部CVが異常である旨の情報を外部装置(例えば上位ECUなど)に通知するような保護動作を行ってもよく、ユーザに所定の報知を行うような保護動作を行ってもよい。
【0068】
なお、制御回路10は、故障推定相を故障と判定しなかった場合(ステップS73でno)、ステップS75において、多相変換部2に故障が生じていないと判定する。この場合、先に行われた図6の制御で記憶部に記憶された情報(いずれかの電圧変換部CVが故障であることを示す情報)は消去すればよい。
【0069】
制御回路10は、このような流れで図8図10の制御を実行し、これら図8図10の制御が終了した後には、上述した定常状態の制御に移行する。
【0070】
以上のように、本構成の異常検出装置3は、制御回路10が異常判定部として機能し、この制御回路10(異常判定部)は、検出回路部及び保護回路部に予め定められた診断動作を行わせ、診断動作の結果に基づいて、検出回路部及び保護回路部の異常を判定する。このような制御回路10(異常判定部)の動作により、検出回路部及び保護回路部に実際に診断動作を行わせた上で異常を判定することができ、電源装置1を正常に動作させる上で重要性の高い部分について異常が生じているか否かを確認することができる。
【0071】
制御回路10(異常判定部)は、車両において所定の動作停止条件が成立した場合に、検出回路部又は保護回路部の少なくともいずれかに診断動作を行わせ、診断動作の結果に基づいて、検出回路部又は保護回路部の少なくともいずれかの異常を判定し、検出回路部又は保護回路部の少なくともいずれかが異常である判定した場合、車両において所定の動作開始条件が成立したときに検出回路部又は保護回路部のうち異常と判定された対象回路部に対して予め定められた再診断動作を行わせ、再診断動作の結果に基づいて対象回路部の異常を再判定するように機能し得る。
【0072】
このように構成された異常検出装置は、診断動作やそれに応じた異常判定を、車両において所定の動作停止条件が成立した後に行うことができるため、車両走行時に行われる通常動作への影響を抑えて重要性の高い部分を確認することができる。更に、その異常判定によって異常と判定した場合には、異常と判定した回路部(対象回路部)に対して再診断動作を行わせ、異常を再判定することができるため、いずれかの回路部が異常であるか否かをより正確に判定することができ、しかも、再診断動作及び異常の再判定は、車両において所定の動作開始条件が成立したとき、車両の走行が進行する前に早期に実行することができる。このように、診断動作や異常判定だけでなく再診断動作や再判定についても車両走行時に行われる通常動作への影響を抑えて行うことができ、更には、異常判定後に再判定がなされないまま車両走行が行われる事態も生じにくくなる。
【0073】
制御回路10(異常判定部)は、検出回路部を構成するA/D変換器10B(変換部)に対して予め定められた自己診断動作を行わせ、A/D変換器10B(変換部)の自己診断動作に基づいて検出回路部を構成するA/D変換器10B(変換部)の異常を判定する。このように構成された異常検出装置3は、電流又は電圧をモニタする上で重要な部分であるA/D変換器10B(変換部)を診断対象とし、このA/D変換器10B(変換部)に異常が生じているか否かを具体的に確認することができる。
【0074】
制御回路10(異常判定部)は、入力経路の電圧又は電流が異常値である場合の疑似信号、又は出力経路の電圧又は電流が異常値である場合の疑似信号を保護回路14A,14B(保護回路部)に与え、疑似信号の発生時における保護回路14A,14Bの動作結果に基づいて保護回路14A,14Bの異常を判定することができる。このように構成された異常検出装置3は、電圧又は電流の異常に対応する上で重要な部分である保護回路14A,14B(保護回路部)を診断対象とし、保護回路14A,14Bに異常が生じているか否かを具体的に確認することができる。特に、実際の異常時に対応した疑似信号を発生させ、それに応じた保護回路14A,14Bの動作結果に基づいて保護回路14A,14Bの異常を判定することができるため、保護回路14A,14Bが正常に動作し得るか否かを、より正確に判定することができる。
【0075】
電源装置1は、複数の電圧変換部CVによって多相変換部2が構成され、制御回路10(異常判定部)は、複数の電圧変換部CVを順番に動作させ、順番に動作させたそれぞれ動作時における多相変換部2からの出力に基づいて異常が生じている電圧変換部CVを検出する。このように構成された異常検出装置3は、電源装置1を正常に動作させる上で重要性の高い検出回路部又は保護回路部の異常判定だけでなく、多相変換部2の異常判定をも行うことができ、しかも、異常が生じている相を具体的に特定することができる。
【0076】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施例及び後述する実施例はどのように組み合わせてもよい。
【0077】
(1)実施例1では、降圧型の多相コンバータを例示したが、昇圧型の多相コンバータであってもよく昇降圧型の多相コンバータであってもよい。また、降圧型、又は昇圧型、若しくは昇降圧側の単相コンバータであってもよい。
(2)実施例1では、kを1〜nの自然数とし、各相のローサイド側にスイッチ素子SBkを設けたが、接地電位にアノードが接続されたダイオードに置き換えることが可能である。また、スイッチ素子SAk,SBkは、Pチャネル型のMOSFETであってもよく、バイポーラトランジスタ等の他のスイッチ素子であってもよい。
(3)実施例1における一次側電源部91や二次側電源部92はあくまで一例であり、公知の様々な蓄電手段を適用することができる。
(4)実施例1における入力側や出力側の接続構成はあくまで一例であり、いずれの例においても、様々な装置や電子部品を入力側導電路6や出力側導電路7に電気的に接続することができる。
(5)実施例1では、図1において4つの電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4が並列に接続された4相構造の電源装置1を代表例として例示したが、電圧変換部の数は4未満の複数であってもよく、5以上の複数であってもよい。
(6)制御部4は、制御回路10に入力された出力側導電路7の電圧値(検出電圧値)と、出力電圧の目標値(目標電圧値)とに基づき、出力電圧を目標電圧値に近づけるように公知のPID制御方式によるフィードバック演算を行うとともに各電圧変換部CVに与える制御量(デューティ比)を決定してもよい。
(7)実施例1では、保護回路14Aは、入力側導電路6に過電流が発生した時又は過電圧が発生した時のいずれの場合でも、多相変換部2の動作を停止させる保護動作を行い得る構成であったが、過電流発生のみ保護動作を行う構成であってもよく、過電圧発生時に保護動作を行う構成であってもよい。
(8)実施例1では、保護回路14Bは、出力側導電路7に過電流が発生した時又は過電圧が発生した時のいずれの場合でも、多相変換部2の動作を停止させる保護動作を行い得る構成であったが、過電流発生のみ保護動作を行う構成であってもよく、過電圧発生時に保護動作を行う構成であってもよい。
(9)実施例1では、図7の処理において、多相変換部2を構成する複数の電圧変換部CVを1つずつ個別に動作させ、個別に異常を判定する例を示したが、図7の処理において、多相変換部2を構成する複数の電圧変換部CVを複数個ずつ(例えば、2個ずつ)動作させてもよい。複数の電圧変換部CVを複数個ずつ動作させる場合において、いずれか複数個の組を動作させているときに出力電圧が異常範囲又は出力電流が異常範囲となった場合、その組を異常と判定するようにしてもよい。このような複数個(複数相)ずつの異常判定は、IGオフ後の異常診断においても、IGオン後の再診断においても行うことができる。
(10)実施例1では、制御部4にIGオフ信号が入力されたことが所定の動作停止条件である例を示したが、車両の使用が終了することを特定し得る条件であればよい。例えば、CAN通信などの車内通信が停止することが所定の動作停止条件であってもよい。
(11)実施例1では、制御部4にIGオン信号が入力されたことが所定の動作開始条件である例を示したが、車両の使用が開始することを特定し得る条件であればよい。例えば、CAN通信などの車内通信が開始することが所定の動作開始条件であってもよい。
(12)実施例1では、車両動作停止時に図3及び図5の制御を実行する例を示したが、いずれかの制御を省略してもよい。
(13)実施例1では、検出回路部を構成するA/D変換器10Bに対して自己診断機能を実行させ、その結果に基づいて検出回路部の故障を判定する例を示したが、この例に限定されない。例えば、診断動作又は再診断動作として、所定の基準電圧生成回路によって生成された基準電圧を入力側導電路6又は出力側導電路7に入力し、そのときにA/D変換器10Bによって変換されたデータが示す値が所定の正規範囲内である場合に正常と判定し、そうでない場合に故障と判定するような方法を用いてもよい。
(14)実施例1では、保護回路の一例を示したが、保護回路は上述した例に限られない。例えば、入力側導電路6及び出力側導電路7のそれぞれに各導電路を通電状態と非通電状態に切り替え得る保護用のスイッチ(半導体スイッチ素子や機械式リレーなど)を設け、過電流や過電圧の発生時にこれらスイッチをオフ動作させるような保護回路であってもよい。この場合、診断動作や再診断動作は、保護用のスイッチ素子をオンオフさせるような動作であってもよい。例えば、IGオフ信号の入力時に、制御回路10が入力側導電路6に設けられた保護用のスイッチをオフ動作させる診断動作を行い、オフ動作した場合(例えば入力側導電路6に電流が流れない場合)には、正常と判定し、オフ動作しなかった場合には故障と判定するような方法であってもよい。故障と判定された場合には、IGオン信号の入力時に同様の方法で再診断動作を行い、スイッチの異常を判定すればよい。このような診断動作、再診断動作は、多相変換部2を駆動しながら行うことができる。同様に、IGオフ信号の入力時に、制御回路10が出力側導電路7に設けられた保護用のスイッチをオフ動作させる診断動作を行い、オフ動作した場合(例えば出力側導電路7に電流が流れない場合)には、正常と判定し、オフ動作しなかった場合には故障と判定するような方法であってもよい。故障と判定された場合には、IGオン信号の入力時に同様の方法で再診断動作を行い、スイッチの異常を判定すればよい。
【符号の説明】
【0078】
1…車載用電源装置
2…多相変換部
3…異常検出装置
10…制御回路(異常判定部)
10B…A/D変換器(変換部、検出回路部)
14A,14B…保護回路(保護回路部)
16A,16B…電圧検出回路(検出部、検出回路部)
18…電流検出回路(検出部、検出回路部)
CV…電圧変換部
SA1,SA2,SA3,SA4,SB1,SB2,SB3,SB4…スイッチ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10