(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る鍵盤楽器の縦断面図である。
図1では主に、1つの鍵Kとそれに対応するアクション機構ACT等の構成を示している。この鍵盤楽器はグランドピアノ型の電子鍵盤楽器として構成され、白鍵及び黒鍵である鍵Kが複数並列に配列される。鍵Kの後端部の上方に、各鍵Kに対応してアクション機構ACTが設けられる。各鍵Kは各々、鍵支点部70におけるバランスピン74近傍の部分を支点として
図1の時計及び反時計方向に回動自在に配設される。
図1の右側が奏者側であって前方、左側が後方である。鍵Kの前部が押離操作される。
【0012】
この鍵盤楽器はハンマ11による弦19の打撃によって発音することができると共に、アクション機構ACT等における構成要素の移動や位置を検知して電子的に発音することも可能となっている。なお、消音用ストッパ60が、鍵盤筬を含むベース部76に対して位置を可変に取り付けられ、不図示の操作子の操作により消音用ストッパ60の位置を切り替えできるようになっている。通常の発弦による演奏を行う場合は、ハンマ11が当接しない位置に消音用ストッパ60を位置させ、消音モードで演奏するときには、消音用ストッパ60をハンマ11と当接する位置に位置させてハンマ11が弦19に当接しないようにすることができる。鍵Kの前部下部にフロントブッシングクロス64A、64Bが設けられている。ベース部76には、フロントブッシングクロス64A、64Bの位置に対応して、フロントパンチングクロス63A、63Bが配設されている。押鍵操作によって、フロントパンチングクロス63A、63Bにフロントブッシングクロス64A、64Bが当接することで、鍵Kの回動終了位置(エンド位置)が規制される。フロントピン75A、75Bによって、押鍵操作時に各鍵Kの前部の鍵並び方向への移動が規制される。
【0013】
鍵Kの後部の下部に導電部66が設けられている。ベース部76には、導電部66に対応して、バックレールアンダーフェルトを介してバックレールクロス65が配設されている。鍵Kの後部の下面がバックレールクロス65に当接することで導電部66がバックレールクロス65に当接し、非押鍵状態における鍵Kの初期位置、すなわち回動開始位置(レスト位置)が規制される。ベース部76に対して電気回路基板61が固定的に配設される。また、アクションブラケット77に対して電気回路基板62が固定的に配設される。電気回路基板はこの他にも存在するが、それらの図示は省略する。
【0014】
図2は、1つのアクション機構ACT及びその周辺要素の側面図である。鍵Kの後端部上面には、キャプスタンスクリュ4が植設されている。鍵Kの後端部上部には、バックチェック35が設けられる。鍵Kの後方にあるダンパレバーフレンジ78にダンパレバー67が軸支される。また、ダンパブロック69にダンパレバー67が軸支され、ダンパブロック69にダンパ79が固定される。アクション機構ACTは、ウィッペン5、ジャック6、レペティションレバー8等を主に備える。ウィッペン5は、その後端部5aの回動支点23が、サポートレール3に固定されたサポートフレンジ2に軸支され、自由端である前端5bが、回動支点23を中心として上下方向に回動自在にされている。ウィッペン5の回動支点23側の上面には、ハンマシャンクストップフェルト20が配設される。ウィッペン5の前半部上部には、ジャックストップ33が突設されている。
【0015】
ウィッペン5の前後方向中央においてレペティションレバーフレンジ7が上方に突設される。レペティションレバー8は、レペティションレバーフレンジ7の上端部の回動支点7aを中心に、同図時計及び反時計方向に回動自在に支持される。ジャック6は、略上方に延びた垂直部6aと略水平方向前方に延びたジャック小6bとを有して側面視略L字形を呈する。ジャック6は、ウィッペン5の前端5bの回動支点36に、
図2の時計及び反時計方向に回動自在に配設される。ジャックストップ33は、ジャックボタンスクリュ32と、ジャックボタンスクリュ32の後端部に設けられたジャックボタン31とを有している。非押鍵状態(離鍵状態)においては、ジャックボタン31にジャック6が当接して、ジャック6の初期位置が規制され、その初期位置は、ジャックボタンスクリュ32で調節することができる。
【0016】
シャンクレール10にはシャンクフレンジ9が固定されている。シャンクレール10に取り付けられたレギュレーティングレール100に対して、レギュレーティングボタン25が高さ調節自在に設けられている。シャンクフレンジ9の下部には、レペティションスクリュ34が設けられている。ハンマ11は、レペティションレバー8の上方に配設される。ハンマ11のハンマシャンク16の前端部が、シャンクフレンジ9に対して、回動中心13を中心として上下方向に回動自在に枢支される。ハンマシャンク16の後端である自由端にハンマウッド17が取り付けられている。ハンマウッド17の上端にハンマフェルト18が取り付けられている。ハンマシャンク16の前端部近傍にハンマローラ14が設けられる。
【0017】
非押鍵状態において、レペティションレバー8は、その前端部上面にてハンマローラ14を下方より受け止め、該ハンマ11を初期位置に規制する。一方、レペティションレバー8の後端部にはレペティションレバーボタン15が高さ調整自在に配設されている。このボタン15はウィッペン5の後端部5aの上面に当接し、これによってレペティションレバー8の反時計方向への回動が規制され、レペティションレバー8が初期位置に規制される。レペティションレバー8の前端部には、長孔21が形成されている。ジャック6の垂直部6aが長孔21内に挿通され、垂直部6aの頂端面22がレペティションレバー8の上面とほぼ面一になっている。
【0018】
かかる構成において、非押鍵状態から鍵Kが押鍵操作される通常の押鍵往行程においては、キャプスタンスクリュ4の上昇によってウィッペン5が突き上げられ、回動支点23を中心として往方向である反時計方向に回動する。ウィッペン5が突き上げられることにより、レペティションレバー8及びジャック6がウィッペン5と一緒に上方に回動する。これらの回動に伴い、まず、レペティションレバー8及びジャック6の垂直部6aが、ハンマローラ14を回転乃至摺動させながら、ハンマローラ14を介してハンマ11を押し上げ、上方に回動させる。
【0019】
一方、鍵Kの往方向への回動に伴い、鍵Kの後端部上部に設けられたダンパレバークッション68がダンパレバー67の前端部を押し上げる。するとダンパブロック69を介してダンパ79が上昇し、やがて弦19からダンパ79(厳密にはダンパ79の下部に設けられたダンパフェルト)が離間する。次いで、レペティションレバー8がレペティションスクリュ34に当接係合することにより、レペティションレバー8の反時計方向への変位(上限位置)が規制されると、ジャック6の垂直部6aの頂端面22がレペティションレバー8の長孔21を通じて突出し、ハンマローラ14が頂端面22によって駆動されて、ハンマ11が突き上げられる。ウィッペン5がさらに往方向に回動すると、その回動途中でジャック6のジャック小6bがレギュレーティングボタン25(厳密にはレギュレーティングボタンパンチング)の下面に当接してその上昇が阻止される。しかしウィッペン5自身はなおも回動するので、ジャック6は回動支点36を中心に時計方向に回動する。そのため、ジャック6の垂直部6aの頂端面22がハンマローラ14の下方から前方に抜けて、脱進する。これにより、ハンマ11は、ジャック6との係合を解かれ、自由回動状態で弦19を打撃する。
【0020】
打弦モード時には、ハンマ11の往方向の変位終了位置は、ハンマ11のハンマフェルト18が弦19に当接することによって規定される。ハンマ11は、打弦後は、自重と弦19の反撥力とによって回動復帰する。消音モード時には、ハンマ11は、ハンマシャンク16が消音用ストッパ60に間接的に当接することによって回動を規制され、弦19には当接しない。従って、消音モード時のハンマ11の往方向の変位終了位置は消音用ストッパ60への間接的な当接によって規定される。このように、ハンマ11は、鍵Kの押下操作により駆動されて往方向に変位する変位可能区間のうち往方向の変位終了位置を含む区間に、押鍵態様にかかわらず鍵Kからの付勢力を受けることなく惰性でのみ変位する惰性変位区間を有している。ハンマ11についての惰性変位区間は、ハンマ11の往方向における変位終了位置を含みジャック6と当接し得ない区間である。この惰性変位区間では、押離鍵態様にかかわらず、ハンマ11には鍵Kが直接にも間接にも係合せず、重力や摩擦による減速による影響を除けば加速度が外乱として作用することがない。なお、打弦モード時と消音モード時とでは、惰性変位区間の長さが異なり、打弦モード時の方が往方向に長くなる。消音モード時の惰性変位区間を特に惰性変位区間101と記す。惰性変位区間の回動開始側の位置は、打弦モード時と消音モード時とで同じである。
【0021】
押鍵終了後、その押鍵状態が維持されているときは、弦19で跳ね返ったハンマ11は、そのハンマウッド17がバックチェック35(厳密にはバックチェッククロス35a)に受け止められ、静止している。鍵Kが離鍵され、バックチェック35とハンマ11との係合が解かれると、レペティション付勢部12bの付勢力によって、レペティションレバー8が反時計方向に回動すると共に、ハンマローラ14がレペティションレバー8に支えられる。また、ジャック6は、打弦動作後、ウィッペン5の回動復帰に伴ってレギュレーティングボタン25から解放され、ジャック付勢部12aの付勢力により反時計方向に回動復帰して、初期位置に戻る。ジャック6の垂直部6aの頂端面22がハンマローラ14の下側位置に速やかに復帰することによって、鍵Kが非押鍵位置まで完全に戻らなくても、再押鍵による次の打弦動作が行えるようになる。つまり、速い連弾が可能となる。
【0022】
ところで、本鍵盤楽器において、係合関係となる対象に対する係合状態が押離鍵動作の行程において変化し得る構成要素を「構成体」と称する。構成体には、部品単体だけでなく、一体として構成される部品構成体、あるいは一体として可動する構成体が含まれる。例えば、鍵K(鍵体)、ハンマ11のほか、鍵Kからハンマ11までの系に介在する構成要素、あるいは、鍵Kやハンマ11の回動動作開始位置や回動動作終了位置を規制する構成要素が該当する。具体的には、これらのほか、符号で挙げると、構成要素5、6、7、8、9、11、15、19、20、25、31、34、35、60、63、65、79等が、構成体に該当し得る。なお、構成要素64、66、68は鍵Kの一部として把握してもよい。構成要素14、16、17、18はハンマ11の一部として把握してもよい。構成体はこれら例示したものに限定されるものではない。
【0023】
本鍵盤楽器は、検知部SW7を含む複数の検知部SW(検知部SW2〜SW8)を、鍵Kに対応して複数備える。検知部SWは、鍵Kや変位部材の動作を検知するか、または係合関係となり得る構成体同士の係合状態を検知するものである。検知部SW7は消音用ストッパ60の下面に配設される。従って、消音モード時には、ハンマ11は、検知部SW7に当接し、検知部SW7を介して消音用ストッパ60に間接的に当接する。本実施の形態では、押鍵操作により鍵Kによって直接的または間接的に駆動されて往方向に変位(動作)すると共に、鍵Kの離操作により復方向に動作する「変位部材」に着目して、押鍵ベロシティを含む音情報を生成すると共に、発音タイミングを決定する。変位部材としてハンマ11を例にとって考える。ハンマ11の動作が検知部SW7で検知され、その検知結果に基づいて発音タイミング及び押鍵速度の決定等が行われる。
【0024】
図3(a)は、検知部SW7の構成を示す断面図である。検知部SW7は、押下ストロークを少し有する2メイク式のスイッチとして構成され、下方にドーム状に膨出した被駆動部87を有する。消音用ストッパ60の下面には、固定接点86、90が設けられる。ドーム内には、固定接点86、90のそれぞれに対応して可動接点85、89が設けられる。可動接点85と固定接点86とで第1スイッチSW7−1が構成され、可動接点89と固定接点90とで第2スイッチSW7−2が構成される。ドーム内には、非押鍵状態において可動接点85よりも消音用ストッパ60の下面から離れているストッパ部88が設けられる。消音モード時におけるハンマ11の動作範囲である回動の全ストロークの始点は、ハンマ11がレペティションレバー8に当接することで規制される。消音モードにおいて、全ストロークの終点は、ストッパ部88が消音用ストッパ60の下面に対して当接関係となることで規制される。
【0025】
図3(b)は、ハンマ11のストロークと惰性変位区間101との関係を示す図である。
図3(c)は、検知部SW7による検知状態を示す図である。
図3(b)に示すように、押鍵往行程において被駆動部87がハンマ11によって駆動されると、最初に可動接点85が固定接点86に当接して電気的に導通し、第1スイッチSW7−1がオン(ON)となる。その後、可動接点89が固定接点90に当接して電気的に導通し、第2スイッチSW7−2がオン(ON)となる。その後、ストッパ部88が消音用ストッパ60の下面に当接する。消音モードにおける惰性変位区間101では、往復のいずれの場合も、鍵Kからの付勢力を受けることなくハンマ11が惰性で変位する。惰性変位区間101の回動動作開始側の端位置は、ジャック6がハンマローラ14の下方から前方に抜けて脱進する位置に対応している。惰性変位区間101の回動動作終了側の端位置は、ストッパ部88が消音用ストッパ60の下面に対して当接関係となる位置に対応している。
【0026】
図3(c)に示すように、ハンマ11の往方向の変位行程において、後述するCPU45は、第1スイッチSW7−1がオンとなってから第2スイッチSW7−2がオンとなるまでの時間差ΔT1に基づき押鍵ベロシティを決定し、例えば、時間差ΔT1の逆数に係数を乗じたものを押鍵ベロシティとする。スイッチSW7−1、SW7−2が順にオンとなる区間においては、ハンマ11は鍵Kからの加速度が加わることなく惰性で変位しているから、外乱の影響による受けることなく、回動終了間際の変位速度を正確に検出できる。
【0027】
検知部SW8(
図2)は、検知部SW7の第1スイッチSW7−1と同様に1メイク式のスイッチとして構成される。検知部SW8は、ストップレール81の下部に配置される。検知部SW2〜SW6については、鍵Kや変位部材の動作を検知できる構成であればよく、配置の場所に合わせた構成を採用できる。例えば、検知部SW5、SW6(
図1)は、鍵支点部70の前方に配置され、いずれも、押下操作される鍵Kに押下されるとONとなる。検知部SW5の方が検知部SW6よりも突出しており、押鍵往行程において先にONとなる。検知部SW2〜SW4については、接触または圧力変化によりONとなる一般的なスイッチ構成を採用してもよいが、本実施の形態では、一例として、構成体同士の間の電気的な導通の状態により、両者の係合状態を検知する構成としている。具体的には、構成体における相互に係合する係合部の各々を、導電性を有する構成とし、CPU45(
図4(a))は、両者が当接すれば導通、離間すれば非導通となることを利用して、両者の係合状態を検知する。このような導通構成を簡単に実現するためには、例えば、係合部の、互いが係合する領域に導電材を施す。
【0028】
図4(a)は、鍵盤楽器の全体構成を示すブロック図である。本鍵盤楽器は、検出回路43、検出回路44、ROM46、RAM47、タイマ48、表示装置49、外部記憶装置50、各種インターフェイス(I/F)51、音源回路53及び効果回路54が、バス56を介してCPU45にそれぞれ接続されて構成される。さらに、検出回路44には、検知部SWが接続される。各種操作子41には、鍵K等の演奏操作子も含まれる。CPU45にはタイマ48が接続され、音源回路53には効果回路54を介してサウンドシステム55が接続されている。
【0029】
検出回路43は各種操作子41の操作状態を検出する。検出回路44は検知部SWにおける導通状態を検知し、その検知結果をCPU45に供給する。CPU45は、本装置全体の制御を司る。ROM46は、CPU45が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶する。RAM47は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ48は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。各種I/F51には、MIDI−I/Fや通信I/Fが含まれる。音源回路53は、各種操作子41から入力された演奏データや予め設定された演奏データ等を音信号に変換する。効果回路54は、音源回路53から入力される音信号に各種効果を付与し、DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム55は、効果回路54から入力される音信号等を音響に変換する。
【0030】
図4(b)は、レジスタに記憶される検知部SWにおける検知結果の情報を示す概念図である。検知部SWにおける検知結果の情報は、ONかOFFかを示す導通状態と、ONとOFFとが切り替わった変化時刻とを示す情報であり、全ての検知部SWについて、鍵KごとにRAM47のレジスタに記憶される。なお、検知情報が利用されない検知部SWについては記憶する必要はない。なお、検知部SW7については、第1スイッチSW7−1、第2スイッチSW7−2のそれぞれについて検知結果の情報が記憶される。
【0031】
図5は、メイン処理を示すフローチャートである。この処理は、本鍵盤楽器の電源のオンにより開始され、所定時間(例えば、100μ秒ごと)間隔で実行される。まず、CPU45は、各鍵Kにおける検知部SWを走査して、走査結果(ONかOFFか)をレジスタに鍵Kごとに記憶する(ステップS101)。次に、CPU45は、各検知部SWにおいて状態変化、すなわちONとOFFとの変化が生じた場合はその変化時刻も記憶する(ステップS102)。これにより、検知結果の情報(
図4(b))が鍵Kごとに記憶され、随時更新される。なお、各検知部SWの走査の処理と状態をレジスタに記憶する処理とは、ハードウェアで逐次自動的に行うようにしてもよい。次に、CPU45は、各鍵Kの発音処理(
図6(a))を実行し(ステップS103)、次に、各鍵Kの消音処理(
図6(b))を実行して(ステップS104)、
図5の処理を終了させる。
【0032】
音制御は、複数の検知部SWの検知結果に基づいて行える。また、それらの検知部SWの検知結果は、音制御に限られず、演奏を音制御用の演奏データとして記録することにも利用できる。音制御や演奏データの記録に用いる検知部SWに限定はない。すなわち、発音トリガや押鍵ベロシティを決定する音情報生成用の検知部SWには、いずれの検知部SWを採用してもよい。また、発音した音を消音する消音対応の検知部SWには、いずれの検知部SWを採用してもよい。本実施の形態では、代表として、検知部SW7を用いて発音処理と消音処理の双方を行う例を説明する。本実施の形態では、CPU45は、検知部SW7の第2スイッチSW7−2がオフからオンとなったタイミングを発音タイミングとして決定し、第1スイッチSW7−1と第2スイッチSW7−2との検知時間差から押鍵ベロシティを決定する。
【0033】
図6(a)は、
図5のステップS103で実行される各鍵Kの発音処理を示すフローチャートである。
図6(b)は、
図5のステップS104で実行される各鍵Kの消音処理を示すフローチャートである。まず、
図6(a)のステップS201では、CPU45は、検知部SW7の第1スイッチSW7−1の状態がオン(ON)であるか否かを判別する。この判別は、検知結果の情報(
図4(b))を参照することでなされ、以降でも同様である。その判別の結果、検知部SW7の状態がオンでない(OFFである)場合は、発音がなされることなく
図6(a)の処理は終了する。一方、第1スイッチSW7−1の状態がオンである場合は、CPU45は、検知部SW7の第2スイッチSW7−2の状態がオフ(OFF)からオン(ON)へと変化したか否かを判別する(ステップS202)。その判別の結果、第2スイッチSW7−2の状態がオフから変化していない場合は、発音すべきタイミングでないので、発音がなされることなく
図6(a)の処理は終了する。
【0034】
一方、第2スイッチSW7−2の状態がオフからオンへと変化した場合は、CPU45は、発音するべき程度の強さで押鍵されたと判断できるので、CPU45は、現時点を発音タイミングと決定すると共に、音情報を生成する(ステップS203)。この音情報の生成においては、CPU45は、第1スイッチSW7−1がオンとなってから第2スイッチSW7−2がオンとなるまでの時間差ΔT1(
図3(c)参照)に基づき押鍵ベロシティを決定する。例えば、CPU45は、時間差ΔT1の逆数に係数を乗じたものを押鍵ベロシティとする。そしてCPU45は、生成した音情報に基づき発音を開始する(ステップS204)。すなわち、CPU45は、今回処理の対象となっている鍵Kの音高の音を、当該鍵Kに対応して現在決定されているベロシティで発音するよう、音源回路53及び効果回路54等を制御する。その後、
図6(a)の処理が終了する。
【0035】
図6(b)の各鍵Kの消音処理において、ステップS301では、CPU45は、消音対応の検知部SW(ここでは検知部SW7の第1スイッチSW7−1)の状態がオンからオフへと変化したか否かを判別する。その判別の結果、第1スイッチSW7−1の状態がオンからオフへと変化していない場合は、CPU45は、消音を開始することなく
図6(b)の処理を終了させる。一方、第1スイッチSW7−1の状態がオンからオフへと変化した場合は、CPU45は、処理をステップS302に進め、今回処理の対象の鍵Kに対応する音高が発音中か否かを判別する。その判別の結果、CPU45は、発音中でない場合は
図6(b)の処理を終了させる一方、発音中である場合は、消音タイミングが到来したと判断して、発音中の音の消音を開始する(ステップS303)。その後、
図6(b)の処理は終了する。
【0036】
なお、消音対応の検知部SWとして、検知部SW7の第1スイッチSW7−1に代えて、例えば、検知部SW2、SW5、SW6のいずれかを用いてもよく、その方が適切な消音制御ができる場合がある。例えば、消音対応の検知部SWとして検知部SW2を採用すれば、ダンパレバークッション68とダンパレバー67(の当接部67a)との離間が消音タイミングとなる。この場合
、より自然な消音となる。
【0037】
本実施の形態によれば、ハンマ11が惰性変位区間101にあるときにハンマ11の動作を検出するセンサとして検知部SW7を設けたので、鍵Kからの付勢力が外乱として加わらない状態におけるハンマ11の動作を正確に検知することができる。特に、CPU45は、第2スイッチSW7−2での検知タイミングによって発音タイミングを適切に決定する。しかも、検知部SW7は、惰性変位区間101における2箇所でハンマ11の通過を検知し、CPU45は、2箇所での通過の時間差ΔT1に基づいてハンマ11の変位速度を決定する。これにより、外乱を除去した条件でハンマ11の速度を検出し、ひいては押鍵速度を正確に推定できるので、音情報を適切に生成できる。
【0038】
なお、検知部SW7の構成は例示したスイッチ式に限定されず、例えば光学式であってもよい。
図7(a)は、検知部SW7の変形例を示す正面図である。この検知部SW7は、フォトインタラプタ型の光学センサとして構成される。発光部83と受光部84との対で第1スイッチSW7−1が構成され、発光部91と受光部92との対で第2スイッチSW7−2が構成される。発光部83から受光部84までの光路をハンマ11が遮っているときに第1スイッチSW7−1がオンとなる。発光部91から受光部92までの光路をハンマ11が遮っているときに第2スイッチSW7−2がオンとなる。消音用ストッパ60の下面よりも下において、発光部91と受光部92とは同じ高さにあり、これらよりさらに下において、発光部83と受光部84とは同じ高さにある。ハンマシャンク16の上面位置を基準にすると、消音モードにおける惰性変位区間101は、第1スイッチSW7−1の高さよりも少し下の位置から消音用ストッパ60の下面までの区間である。
【0039】
図7(b)は、検知部SW7による検知状態を示す図である。
図7(b)に示すように、押鍵往行程において被駆動部87がハンマ11によって駆動されると、最初に第1スイッチSW7−1がオンとなり、その後、第2スイッチSW7−2がオンとなる。
図3の例と同様に、CPU45は、第1スイッチSW7−1がオンとなってから第2スイッチSW7−2がオンとなるまでの時間差ΔT1に基づき押鍵ベロシティを決定する。なお、変位速度を検知する観点からは、検知部SW7は惰性変位区間101における少なくとも2箇所でハンマ11の動作を検知できる構成であればよい。
【0040】
なお、これまで、グランドピアノ型のアクション機構ACTを有する鍵盤楽器への本発明の適用を例示したが、このような構成に限られない。すなわち、押離鍵操作により往方向及び復方向に変位(動作)し、惰性変位区間がある変位部材を有すればよく、アクション機構を有しなくてもよい。また、変位部材としてハンマ11の主にハンマシャンク16に着目したが、変位部材としては、ハンマローラ14、ハンマシャンク16、ハンマウッド17、ハンマフェルト18であってもよい。
【0041】
また、
図8に示すようなアップライト型のアクション機構ACTを有する鍵盤楽器にも本発明を適用可能である。
図8は、アップライトピアノのアクション機構ACT2の側面図である。通常の押鍵操作においては、鍵Kを押下操作すると、ウイペン112が突き上げられて回動し、ジャック120を上昇させる。また、ジャック120が上昇すると、バット126はジャック120によって突き上げられてハンマ130を
図8の反時計方向に回動させる。ジャック120は上昇回動し、その途中でレギュレーティングボタン140に当接して時計方向に回動することによりバット126の下部から一時的に脱進する。また、ウイペン112が上昇回動すると、ダンパースプーン156はダンパレバー152を時計方向に回動させてダンパ155を弦19から離間させる。
【0042】
そして、ダンパ155が弦19から離間した後、ハンマ130が弦19を打撃し、ハンマ130は、跳ね返ってキャッチャ133がバックチェック144に弾性的に受け止められる。ジャック120は、離鍵操作に伴うウイペン112の回動下降によりレギュレーティングボタン140から解放されることにより回動復帰して、その上端が再びバット126の下部に入り込む。それにより、同一鍵Kによる次の打弦動作が可能になる。棚板106に対して固定的に、キーバックレールクロス165が配設され、鍵Kの後部の下部に導電部166が設けられている。消音用ストッパ82は、消音用ストッパ60と同様に、消音モード時用に位置を切り替えできるようになっている。かかる構成において、例えば消音用ストッパ82に、検知部SW7を設けてもよい。また、バット126とジャック120との間、レギュレーティングボタン140とジャック120との間、鍵Kの下面(の導電部166)とキーバックレールクロス165との間、等に、検知部SWを設けてもよい。
図8の構成におけるハンマ130についての消音モード時の惰性変位区間は、ハンマ130の往方向における変位終了位置を含みバット126とジャック120とが当接し得ない区間である。
【0043】
なお、上述したように、惰性変位区間は、打弦モードである場合は、消音モード時よりも往方向に長い。仮に、打弦モードにおいて、ハンマ11の回動終了間際の動作を検出したい場合は、検知部SW7に代わる検知部を、弱音化のためのマフラ機構におけるマフラーフェルトに配設する構成が考えられる。例えば、検知部としてのシートセンサをマフラーフェルトに内蔵し、ハンマ11のハンマフェルト18がマフラーフェルトを押圧したときの圧力を検知する。弦は振動して発音してしまうが、ハンマ11の動作を検知して演奏データとして記録するという利用態様が考えられる。
【0044】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。