(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内部電極は、積層された内部電極同士が対向する部分である対向電極部と、前記対向電極部から前記第1の端面または前記第2の端面まで引き出された部分である引出電極部とを有し、
前記幅方向における前記対向電極部と前記第1の側面との間の距離および前記対向電極部と前記第2の側面との間の距離は、5μm以上30μm以下であり、
前記内部電極の厚みは、1.0μm以上5.0μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
前記セラミック電子部品の前記幅方向の寸法は、前記セラミック電子部品の前記厚み方向の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセラミック電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに具体的に説明する。
【0017】
以下では、本発明によるセラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例に挙げて説明する。
【0018】
図1は、一実施の形態における積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、
図1に示す積層セラミックコンデンサ10のII−II線に沿った断面図である。
図3は、
図1に示す積層セラミックコンデンサ10のIII−III線に沿った断面図である。
図4は、
図1に示す積層セラミックコンデンサ10のIV−IV線に沿った断面図である。
【0019】
図1〜
図4に示すように、積層セラミックコンデンサ10は、全体として直方体形状を有する電子部品であり、積層体11と一対の外部電極14(14a,14b)とを有している。一対の外部電極14(14a,14b)は、
図1に示すように対向するように配置されている。
【0020】
図2および
図3に示すように、積層体11は、交互に積層された誘電体層12と、後述するように、積層体11の第1の端面15a側に引き出された第1の内部電極13aおよび第2の端面15b側に引き出された第2の内部電極13bとを備える。すなわち、複数の誘電体層12と複数の内部電極13(13a,13b)とが交互に積層されて、積層体11が形成されている。
【0021】
ここでは、一対の外部電極14が対向する方向を積層セラミックコンデンサ10の長さ方向と定義し、誘電体層12と内部電極13(13a,13b)の積層方向を厚み方向と定義し、長さ方向および厚み方向のいずれの方向にも直交する方向を幅方向と定義する。
【0022】
積層体11は、長さ方向に相対する第1の端面15aおよび第2の端面15bと、厚み方向に相対する第1の主面16aおよび第2の主面16bと、幅方向に相対する第1の側面17aおよび第2の側面17bとを有する。第1の端面15aには、外部電極14aが設けられており、第2の端面15bには、外部電極14bが設けられている。
【0023】
積層体11は、角部および稜線部に丸みを帯びていることが好ましい。ここで、角部は、積層体11の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体11の2面が交わる部分である。
【0024】
図2および
図3に示すように、積層体11を構成する誘電体層12は、外層部誘電体層12aと内層部誘電体層12bとを含む。外層部誘電体層12aは、積層体11の第1の主面16a側と第2の主面16b側、すなわち、積層体11の厚み方向の両外側に位置する誘電体層である。すなわち、外層部誘電体層12aは、第1の主面16aと、第1の主面16aに最も近い第1の内部電極13aとの間、および、第2の主面16bと、第2の主面16bに最も近い第2の内部電極13bとの間にそれぞれ位置する誘電体層である。
【0025】
内層部誘電体層12bは、第1の内部電極13aと、第2の内部電極13bの間に位置する誘電体層である。
【0026】
積層体11を構成する内層部誘電体層12b、すなわち、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bの間に位置する内層部誘電体層12bの数は、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bの数によって定まる。なお、外層部誘電体層12aは、上述の内層部誘電体層12bとは別に必要になる。
【0027】
内層部誘電体層12bの厚みは、例えば1.0μm以上5.0μm以下であることが好ましい。また、外層部誘電体層12aの厚みは、例えば10μm以上であることが好ましい。
【0028】
誘電体層12は、第1元素群と第2元素群とを含む。
【0029】
第1元素群は、Ba、Si、およびAlからなり、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部中に、Ba、Si、およびAlをそれぞれ以下の割合で含有する。
・Baの含有割合は、BaOに換算して20重量部以上40重量部以下
・Siの含有割合は、SiO
2に換算して48重量部以上75重量部以下
・Alの含有割合は、Al
2O
3に換算して5重量部以上20重量部以下
【0030】
第2元素群は、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgからなり、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部に対して、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgをそれぞれ以下の割合で含有する。
・TiおよびFeのうち
の1つの含有割合は、Tiが含まれる場合にはTiO
2に換算して、Feが含まれる場合にはFe
2O
3に換算して、1重量部以上35重量部以下である。なお、TiおよびFeのうち
の1つが含まれていればよいので、Tiのみが含まれていてもよいし、Feのみが含まれていてもよい
。
・Mnの含有割合は、MnOに換算して1重量部以上10重量部以下
・Srの含有割合は、SrOに換算して1重量部以上35重量部以下
・Mgの含有割合は、MgOに換算して0.1重量部以上6重量部以下
【0031】
誘電体層12がBa、Si、およびAlからなる第1元素群と、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgからなる第2元素群とを含み、第1元素群に含まれるBa、Si、およびAlの含有割合と、第2元素群に含まれる、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgの含有割合が上記割合であるという条件(以下、「条件1」と呼ぶ)を満たすことにより、積層セラミックコンデンサ10は、後述するように、幅広い温度範囲、例えば−55℃以上125℃以下の温度範囲において、良好な温度特性を示す。
【0032】
なお、誘電体層12は、Ba、Si、およびAlからなる第1元素群と、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgからなる第2元素群とを含み、Ba、Si、Al、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgの含有割合が上記条件1を満たす誘電体磁器組成物を用いて構成されているとも言える。
【0033】
また、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部中におけるBa、Si、およびAlの含有割合、および、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部に対する、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgの含有割合はそれぞれ、以下の割合であるという条件(以下、「条件2」と呼ぶ)を満たすことがより好ましい。
・Baの含有割合は、BaOに換算して25重量部以上35重量部以下
・Siの含有割合は、SiO
2に換算して48重量部以上65重量部以下
・Alの含有割合は、Al
2O
3に換算して10重量部以上15重量部以下
・TiおよびFeのうち
の1つの含有割合は、Tiが含まれる場合にはTiO
2に換算して、Feが含まれる場合にはFe
2O
3に換算して、3重量部以上7重量部以下
・Mnの含有割合は、MnOに換算して2重量部以上7重量部以下
・Srの含有割合は、SrOに換算して3重量部以上7重量部以下
・Mgの含有割合は、MgOに換算して0.25重量部以上2重量部以下
【0034】
第1元素群に含まれるBa、Si、およびAlの含有割合と、第2元素群に含まれる、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgの含有割合が上記条件2の割合を満たすことにより、積層セラミックコンデンサ10は、後述するように、幅広い温度範囲において良好な温度特性を示すとともに、耐湿性がより向上する。
【0035】
各元素の含有割合は、積層セラミックコンデンサ10の誘電体層12を溶剤により溶解処理して溶液化し、ICP分析することにより求めることができる。各元素が誘電体層12内のどの位置に存在したかについては、特別の制約はない。
【0036】
また、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bが上記第1元素群および第2元素群を構成する元素を含んでいなければ、積層体11を溶解処理して溶液化し、ICP分析することにより、誘電体層12に含まれる上述した各元素の含有割合、すなわち、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部中のBa、Si、およびAlの含有割合と、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部に対する、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgの含有割合をそれぞれ求めることができる。
【0037】
ここで、積層体11を溶液化する方法としては、例えば積層体11を酸により溶解して溶液化する方法や、アルカリ融解した後、酸などに溶かして溶液化する方法がある。すなわち、溶解処理して溶液とする方法に特別の制約はない。
【0038】
また、第1の内部電極13a、第2の内部電極13b、および外部電極14が上記第1元素群および第2元素群を構成する元素を含んでいなければ、積層セラミックコンデンサ10を溶解処理して溶液化し、ICP分析することにより、誘電体層12に含まれる上述した各元素の含有割合を求めることができる。
【0039】
積層体11は、上述のように、第1の端面15a側に引き出された第1の内部電極13aと、第2の端面15b側に引き出された第2の内部電極13bとを備える。第1の内部電極13aと第2の内部電極13bは、厚み方向において、内層部誘電体層12bを介して交互に配置されている。
【0040】
第1の内部電極13aは、第2の内部電極13bと対向する部分である対向電極部と、対向電極部から積層体11の第1の端面15aまで引き出された部分である引出電極部とを備えている。また、第2の内部電極13bは、第1の内部電極13aと対向する部分である対向電極部と、対向電極部から積層体11の第2の端面15bまで引き出された部分である引出電極部とを備えている。第1の内部電極13aの対向電極部と、第2の内部電極13bの対向電極部とが内層部誘電体層12bを介して対向することにより容量が形成され、これにより、コンデンサとして機能する。
【0041】
積層セラミックコンデンサ10を実装した状態において、実装姿勢に依存しない周波数特性を得るためには、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bの幅方向における端部の位置は、積層方向において揃っていることが好ましい。
【0042】
第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bは、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、AgとPdの合金、およびAuなどの金属を含有している。特に、積層セラミックコンデンサ10の周波数特性を良好なものにするために、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bとして、Cuを用いることが好ましい。第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bは、さらに誘電体層12に含まれるセラミックと同一組成系の誘電体粒子を含んでいてもよい。
【0043】
第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bの厚みは、1.0μm以上5.0μm以下であることが好ましい。
【0044】
また、積層体11の幅方向において、内部電極13(13a,13b)の対向電極部と、第1の側面17aとの間の距離W1aおよび第2の側面17bとの間の距離W1b(
図4参照)は、30μm以下であることが好ましい。積層体11の幅方向において、内部電極13(13a,13b)の対向電極部と、第1の側面17aとの間の距離W1aおよび第2の側面17bとの間の距離W1bを30μm以下とすることにより、内部電極13の幅方向の寸法を大きくすることができるので、低抵抗化を実現することができ、積層セラミックコンデンサ10の周波数特性を良好にすることができる。
【0045】
ただし、通常は、上述の距離W1aおよび距離W1bは、内部電極13(13a,13b)の幅方向の端部と、第1の側面17aあるいは第2の側面17bとの間の距離が小さくなり過ぎたり、内部電極13(13a,13b)の幅方向の端部が、第1の側面17aあるいは第2の側面17bに露出したりするおそれのないように、ある程度の大きさが確保されていることが望ましい。例えば、距離W1aおよび距離W1bは、5μm以上であることが好ましい。
【0046】
内部電極13(13a,13b)の対向電極部と、第1の側面17aとの間の距離W1aおよび第2の側面17bとの間の距離W1bは、以下の方法により計測することができる。すなわち、積層体11の厚み方向および幅方向により規定される面、換言すると、積層体11の長さ方向と直交する面である第1の端面15aあるいは第2の端面15bを研磨して、内部電極13(13a,13b)を露出させ、露出した内部電極13(13a,13b)と、積層体11の第1の側面17aとの間の距離および第2の側面17bとの間の距離を、光学顕微鏡を用いて測長する。
【0047】
複数の誘電体層12の厚み、および、複数の内部電極13(13a,13b)の各々の厚みは、以下の方法により測定することができる。
【0048】
まず、積層体11の厚み方向および幅方向により規定される面、換言すると、積層体11の長さ方向と直交する面を研磨することによって、断面を露出させて、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。次に、露出させた断面の中心を通る厚み方向に沿った中心線、および、この中心線から両側に等間隔に2本ずつ引いた線の合計5本の線上において、誘電体層12の厚みを測定する。この5つの測定値の平均値を、誘電体層12の厚みとする。
【0049】
なお、より正確に求めるためには、厚み方向において、積層体11を上部、中央部、および、下部に分けて、上部、中央部、および、下部のそれぞれにおいて、上述した5つの測定値を求め、求めた全ての測定値の平均値を、誘電体層12の厚みとする。
【0050】
上では、誘電体層12の厚みを測定する方法について説明したが、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bの厚みも、誘電体層12の厚みを測定する方法に準じる方法で、誘電体層の厚みを測定した断面と同じ断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができる。
【0051】
外部電極14aは、積層体11の第1の端面15aの全体に形成されているとともに、第1の端面15aから、第1の主面16a、第2の主面16b、および第1の側面17a、第2の側面17bに回り込むように形成されている。また、外部電極14bは、積層体11の第2の端面15bの全体に形成されているとともに、第2の端面15bから、第1の主面16a、第2の主面16b、および第1の側面17a、第2の側面17bに回り込むように形成されている。
【0052】
一方の外部電極14aは、第1の内部電極13aと電気的に接続されており、他方の外部電極14bは、第2の内部電極13bと電気的に接続されている。
【0053】
外部電極14(14a,14b)は、例えば、下地電極層と、下地電極層上に配置されためっき層とを備える。
【0054】
下地電極層は、以下に説明するような、焼付け電極層、樹脂電極層、および、薄膜電極層などの層のうち、少なくとも1つを含む層とすることができる。
【0055】
焼付け電極層は、ガラスと金属とを含む層であり、1層であってもよいし、複数層であってもよい。焼付け電極層に含まれる金属には、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、AgとPdの合金、およびAuなどのうちの少なくとも1つが含まれる。
【0056】
焼付け電極層は、ガラスおよび金属を含む導電ペーストを積層体に塗布して焼き付けることによって形成される。焼き付けは、積層体11の焼成と同時に行ってもよいし、積層体11の焼成後に行ってもよい。
【0057】
また、下地電極層は、例えば、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む樹脂電極層であってもよい。樹脂電極層を形成する場合には、焼付け電極層を形成せずに、積層体上に直接形成するようにしてもよい。樹脂電極層は、1層であってもよいし、複数層であってもよい。
【0058】
また、下地電極層は、上述のように、薄膜電極層を含む層であってもよい。薄膜電極層は、例えば、金属粒子が堆積した1μm以下の層であり、スパッタ法または蒸着法などの既知の薄膜形成法により形成される。
【0059】
下地電極層上に配置されるめっき層は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、AgとPdの合金、および、Auなどのうちの少なくとも1つを含む。めっき層は、1層であってもよいし、複数層であってもよい。ただし、めっき層は、Niめっき層とSnめっき層の2層構造とすることが好ましい。Niめっき層は、下地電極層が積層セラミックコンデンサ10を実装する際のはんだによって侵食されるのを防止する機能を果たす。また、Snめっき層は、積層セラミックコンデンサ10を実装する際のはんだの濡れ性を向上させる機能を果たす。
【0060】
なお、外部電極14は、上述した下地電極層を備えず、積層体11上に直接配置されるめっき層を備える構成であってもよい。この場合、めっき層が直接、第1の内部電極13aまたは第2の内部電極13bと接続される。以下では、外部電極14が上述した下地電極層を備えず、積層体11上に直接形成されるめっき層を備える構成である場合のめっき層の詳細について説明する。
【0061】
めっき層は、積層体11上に形成された第1めっき層と、第1めっき層上に形成された第2めっき層とを含むことが好ましい。ただし、無電解めっき法によりめっき層を形成する場合には、積層体11上に触媒を設けるようにしてもよい。
【0062】
第1めっき層および第2めっき層は、例えば、Cu、Ni、Sn、Pb、Au、Ag、Pd、Bi、および、Znからなる群より選ばれる1種の金属、または当該金属を含む合金を含むことが好ましい。
【0063】
例えば、内部電極としてNiを用いた場合、第1めっき層としては、Niと接合性のよいCuを用いることが好ましい。また、第2めっき層としては、はんだ濡れ性のよいSnやAuを用いることが好ましい。また、第1めっき層として、はんだバリア性能を有するNiを用いるようにしてもよい。
【0064】
第2めっき層は必要に応じて形成すればよい。したがって、外部電極14は、第1めっき層だけを備える構成であってもよい。また、外部電極14は、第1めっき層および第2めっき層に加えて、第2めっき層上に形成された別のめっき層をさらに備える構成としてもよい。
【0065】
めっき層の単位体積あたりの金属の割合は、99体積%以上であることが好ましい。また、めっき層は、ガラスを含まないことが好ましい。めっき層は、厚み方向に沿って粒成長したものであり、柱状である。
【0066】
積層体11および外部電極14を含む積層セラミックコンデンサ10の長さ方向の寸法を「長さL」、幅方向の寸法を「幅W」、厚み方向の寸法を「厚みT」としたときに、例えば、以下の寸法の積層セラミックコンデンサ10を作製することができる。
(サイズ1)長さL:0.237mm以上0.263mm以下、幅W:0.112mm以上0.138mm以下、厚みT:0.112mm以上0.138mm以下
(サイズ2)長さL:0.38mm以上0.42mm以下、幅W:0.18mm以上0.22mm以下、厚みT:0.18mm以上0.22mm以下
(サイズ3)長さL:0.57mm以上0.63mm以下、幅W:0.27mm以上0.33mm以下、厚みT:0.27mm以上0.33mm以下
(サイズ4)長さL:0.95mm以上1.05mm以下、幅W:0.45mm以上0.55mm以下、厚みT:0.45mm以上0.55mm以下
(サイズ5)長さL:1.5mm以上1.7mm以下、幅W:0.7mm以上0.9mm以下、厚みT:0.7mm以上0.9mm以下
(サイズ6)長さL:1.85mm以上2.15mm以下、幅W:1.05mm以上1.35mm以下、厚みT:1.05mm以上1.35mm以下
【0067】
なお、積層セラミックコンデンサ10の幅Wは、厚みTよりも大きいことが好ましい。
【0068】
長さL、幅W、および厚みTは、光学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0069】
[実施例]
積層セラミックコンデンサ10の誘電体層12の主成分を構成する材料として、純度99%以上のSiO
2、BaCO
3、Al
2O
3、MnCO
3、SrCO
3、TiO
2、Fe
2O
3、Mg(OH)
2、および、ZrO
2の各粉末素材を準備した。
【0070】
準備した各粉末素材を表1〜表3に示す仕込み値となるように秤量した。表1〜表3において、Si、Ba、およびAlの仕込み値は、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部中のBa、Si、およびAlの含有割合を重量部で示している。上述したように、Ba、Si、およびAlの含有割合は、BaO、SiO
2、およびAl
2O
3にそれぞれ換算した数値である。
【0071】
また、表1〜表3において、Mn、Sr、Ti、Fe、およびMgの仕込み値は、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部に対するMn、Sr、Ti、Fe、およびMgの含有割合を重量部で示している。上述したように、Mn、Sr、Ti、Fe、およびMgの含有割合は、MnO、SrO、TiO
2、Fe
2O
3、およびMgOにそれぞれ換算した値である。
【0075】
表1〜表3に示す仕込み値となるように秤量した各粉末素材を、ボールミルにより湿式混合し、その後乾燥、解砕して粉末を得た。そして、得られた粉末を大気中で750〜1000℃の温度で1時間〜3時間仮焼した後、解砕して、原料粉末を得た。
【0076】
なお、誘電体層12の主成分の製造方法は、固相法、水熱法など特に制約はなく、粉末素材の形態についても、炭酸物、酸化物、水酸化物、塩化物など、特に制約はない。
【0077】
また、誘電体層12の原料粉末には、HfO
2などの不可避的不純物を含有していてもよい。また、SrCO
3とTiO
2を用いる代わりに、SrTiO
3を用いてもよい。
【0078】
得られた原料粉末をICP分析したところ、各元素の組成は、表1〜表3に示す組成と略同一であることが確認された。ただし、表1〜表3において、試料番号に*を付した試料は、Si、Ba、Al、Mn、Sr、Ti、Fe、Mgの含有割合が上記条件1の割合を満たさない試料であり、*を付していない試料は、Si、Ba、Al、Mn、Sr、Ti、Fe、Mgの含有割合が上記条件1の割合を満たす試料である。
【0079】
なお、全組成のうち、CrおよびBの含有量についても調べてみたが、いずれも検出限界量以下であった。また、例えば原料の混合時にYSZボールを用いると、YSZボールからの混入により、Zrの含有量がごく微量であるが増加することがある。
【0080】
この原料粉末に、ポリビニルブチラール系バインダおよびトルエン、エタノールなどの有機溶剤を加えてボールミルにより湿式混合し、スラリーを調製した。そして、スラリーをドクターブレード法によりシート成形した後、カットすることにより、長さ15cm、幅15cm、厚み4μmの矩形のマザーセラミックグリーンシートを得た。
【0081】
その後、マザーセラミックグリーンシート上にCuを主体とする導電ペーストを印刷し、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bを構成するための導電ペースト層である内部電極パターンを形成した。
【0082】
続いて、導電ペースト層を形成したマザーセラミックグリーンシートを、導電ペーストが端部まで引き出されている側が長さ方向の異なる方向に交互に配置されるように複数枚積層し、マザー積層体であるセラミックグリーンシート積層体を得た。
【0083】
このセラミックグリーンシート積層体を所定の位置でカットして個々のチップ素子に分割した後、大気中で、250℃の温度に加熱してバインダを燃焼させた後、3.33〜200℃/分の昇温速度、および900〜1040℃の最高焼成温度で、窒素および水素を用いた非酸化性雰囲気中で焼成し、本発明の積層セラミックコンデンサにおける積層体11となるセラミック焼結体を得た。
【0084】
このセラミック焼結体をバレル研磨することによって、端面から内部電極を露出させ、内部電極が露出した部分に、外部電極用のCuペーストを塗布した。塗布したCuペーストを乾燥させた後、800℃の最高焼成温度、還元雰囲気下で外部電極の焼き付けを行った。続いて、バレルめっき法により、外部電極上にNiめっき層を形成し、同様の方法により、Niめっき層の上にSnめっき層を形成した。
【0085】
なお、上述したように、下地電極層を形成せずに、セラミック焼結体に直接、めっき電極を形成するようにしてもよい。その場合、セラミック焼結体をバレル研磨することによって、端面から内部電極を露出させ、内部電極が露出した部分に、めっき電極用のめっき膜を形成する。めっきは、電解めっきおよび無電解めっきのうちのどちらを採用してもよいが、無電解めっきは、めっき析出速度を向上させるために、触媒添加などの前処理が必要となり、工程が複雑化する。したがって、電解めっきを採用することが好ましい。また、めっき工法としては、バレルめっきを用いることが好ましい。
【0086】
セラミック焼結体に直接、めっき電極を形成した場合にも、必要に応じて、形成しためっき電極の表面にめっき層を形成する。
【0087】
このようにして作製した積層セラミックコンデンサの外形寸法は、長さ方向の寸法Lが2.0mm、幅方向の寸法Wが1.2mm、厚み方向の寸法Tが0.6mmであり、誘電体層の厚みは3.2μmであった。また、誘電体層の内層部誘電体層の総数は、40層であった。
【0088】
作製した積層セラミックコンデンサの外部電極を研磨により除去し、得られた積層体をアルカリ溶融法によって溶液化し、得られた溶液についてICP分析を行ったところ、内部電極の構成成分であるCuを除いて、表1〜表3に示した調合組成と略同一であることが確認された。
【0089】
[評価特性]
表1〜表3に示す試料番号1〜71の各試料について、後述する焼結性、温度特性、および加速耐湿負荷試験後の不良の有無について確認した。
【0090】
(焼結性)
作製した積層セラミックコンデンサの表面を研磨することによって断面を露出させ、走査型電子顕微鏡の観察倍率を3000倍として断面を観察し、良好な焼結が行われているか否かを確認した。表1〜表3において、焼結性が「○」となっているものは、焼結体に形成される気孔(ポア)の存在率は5%未満であり、良好な焼結が行われていることを示す。一方、焼結性が「×」となっているものは、緻密な焼結体が得られなかったか、焼結体に形成される気孔(ポア)の存在率が5%以上であるか、または、過焼結状態であったことを示す。
【0091】
(温度特性)
−55℃以上125℃以下の範囲で、周波数1kHz、電圧1Vrmsの条件下で静電容量測定を行い、25℃を基準として、−55℃および125℃における静電容量温度係数(TCC)を算出した。算出した静電容量温度係数が+60ppm/℃より大きい試料、または、−60ppm/℃より小さい試料は、温度特性が好ましくない試料である。
【0092】
(加速耐湿負荷寿命試験(PCBT))
温度120℃、湿度100%RH、気圧2atm、印加電圧50V、試料数100個の条件で加速耐湿負荷寿命試験
(以下、加速耐湿負荷試験と呼ぶ)を行い、250時間経過後に、logIRの値が6乗以下である試料の数をカウントし、カウントした数が総数の10%以上となった試料を不良品と判定した。表1〜表3では、試料数100個のうちの
加速耐湿負
荷試験の結果がNGの数、すなわち、logIRの値が6乗以下となる試料の数を示している。
【0093】
表1〜表3に示すように、Si、Ba、Al、Mn、Sr、Ti、Fe、Mgの含有割合が上記条件1の割合を満たす試料、すなわち、試料番号に*を付していない試料は全て、焼結が十分に行われており、加速耐湿負荷試験において不良品は発生せず、かつ、−55℃および125℃の静電容量温度係数は、正常値である−60ppm/℃以上+60ppm/℃以下となった。
【0094】
すなわち、誘電体層12がBa、Si、およびAlからなる第1元素群と、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgからなる第2元素群とを含み、各元素の含有割合が上記条件1の割合を満たす積層セラミックコンデンサは、−55℃以上125℃以下の幅広い温度範囲で良好な温度特性を示すことが確認された。
【0095】
一方、Si、Ba、Al、Mn、Sr、Ti、Fe、Mgの含有割合が上記条件1の割合を満たさない試料、すなわち、試料番号に*を付した試料は、焼結性、加速耐湿負荷試験、および、−55℃および125℃の静電容量温度係数の各項目のうち、少なくとも1つの項目において不良が発生した。
【0096】
また、Si、Ba、Al、Mn、Sr、Ti、Fe、Mgの含有割合が上記条件1の割合を満たす試料のうち、特に、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部中のBa、Si、およびAlの含有割合と、BaがBaOであり、SiがSiO
2であり、AlがAl
2O
3である第1元素群の100重量部に対する、TiおよびFeのうち
の1つ、Mn、Sr、およびMgの含有割合がそれぞれ以下の条件を満たす試料は、加速耐湿負荷試験において250時間経過後に、−55℃および125℃の静電容量温度係数が−30ppm/℃以上+30ppm/℃以下となり、温度特性がJIS規格のCG特性を満足することが分かった。なお、下記の条件を満たす試料とは、試料番号10、11、12、20、21、22、29、30、33、34、35、36、37、41、42、43、44、68、69、70、および71の試料である。
・Siの含有割合は、SiO
2換算で48重量部以上65重量部以下
・Baの含有割合は、BaO換算で25重量部以上35重量部以下
・Alの含有割合は、Al
2O
3換算で10重量部以上15重量部以下
・TiおよびFeのうち
の1つの含有割合は、Tiが含まれる場合にはTiO
2に換算して、Feが含まれる場合にはFe
2O
3に換算して、3重量部以上10重量部以下
・Mnの含有割合は、MnO換算で1重量部以上10重量部以下
・Srの含有割合は、SrO換算で3重量部以上10重量部以下
・Mgの含有割合は、MgO換算で0.1重量部以上4重量部以下
【0097】
さらに、Si、Ba、Al、Mn、Sr、Ti、Fe、およびMgの含有割合が上記条件1を満たす試料のうち、特に、上記条件2を満たす試料は、加速耐湿負荷試験において250時間経過後に、logIRの値が6乗以下となる試料の数が総数の1%以下となり、耐湿性がより向上することが分かった。Si、Ba、Al、Mn、Sr、Ti、Fe、およびMgの含有割合が上記条件2を満たす試料とは、試料番号10、11、20、21、29、30、34、35、36、42、43、68、69、70、および71の試料である。
【0098】
上記実施例では、長さ方向の寸法Lが2.0mm、幅方向の寸法Wが1.2mm、厚み方向の寸法Tが0.6mmの積層セラミックコンデンサを作製し、焼結性、温度特性、および加速耐湿負荷試験後の不良の有無について確認した。上記のサイズ以外に、上述したサイズ1〜サイズ6の試料を作製し、焼結性、温度特性、および加速耐湿負荷試験後の不良の有無について確認したところ、同様の結果を得ることができた。
【0099】
すなわち、積層セラミックコンデンサの長さ方向の寸法Lが0.2mm以上2.0mm以下であり、厚み方向の寸法Tが0.1mm以上1.2mm以下であり、幅方向の寸法Wが0.1mm以上1.2mm以下である積層セラミックコンデンサであれば、−55℃以上125℃以下の幅広い温度範囲で良好な温度特性を示すことが確認できた。
【0100】
なお、上述した実施形態では、セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例に挙げて説明したが、セラミック電子部品が積層セラミックコンデンサに限定されることはない。例えば、セラミック電子部品は、LC複合部品、内部コンデンサなどを有する多層基板などであってもよい。
【0101】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。