(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性多孔質基材の一方の表面に、第1の微多孔層を形成するための塗液を塗布する工程を有し、続いて第2の微多孔層を形成するための塗液を塗布する工程を有することを特徴とする、請求項10に記載のガス拡散電極の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のガス拡散電極は、微多孔層を有する、ガス拡散電極であって、前記微多孔層は、第1の微多孔層、及び第2の微多孔層を少なくとも有し、前記第1の微多孔層の断面F/C比が0.06以上0.33以下であり、前記第2の微多孔層の断面F/C比が、0.06未満であり、前記第1の微多孔層を、前記第2の微多孔層に接さない部分と、前記第2の微多孔層に接する部分に2等分したときに、2等分した第1の微多孔層において、前記第2の微多孔層に接さない側を、微多孔層1−1といい、前記第2の微多孔層に接する側を、微多孔層1−2といい、微多孔層1−1の断面F/C比が微多孔層1−2の断面F/C比よりも低いことを特徴とする。ここで「F」とはフッ素原子の質量を意味し、「C」とは炭素原子の質量を意味し、「断面F/C比」とは断面方向から測定した際の「フッ素原子の質量」/「炭素原子の質量」の値を意味する。
【0021】
このような本発明のガス拡散電極に関し、初めに導電性多孔質基材について説明する。
【0022】
固体高分子形燃料電池において、ガス拡散電極は、セパレータから供給されるガスを触媒へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すため、高い導電性が要求される。このためガス拡散電極には、導電性を有し、通常10μm以上100μm以下の領域に細孔径を有する多孔体からなる基材である導電性多孔質基材を用いることが好ましい。そして導電性多孔質基材を有する態様の本発明のガス拡散電極においては、導電性多孔質基材の少なくとも片面に、微多孔層を有する、ガス拡散電極であって、導電性多孔質基材の少なくとも片面に、第1の微多孔層を有する、ことが好ましい。
【0023】
導電性多孔質基材としては、具体的には、例えば、炭素繊維織物、炭素繊維抄紙体、炭素繊維不織布、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素繊維を含む多孔質基材、発泡焼結金属、金属メッシュ、エキスパンドメタルなどの金属多孔質基材を用いることが好ましい。中でも、耐腐食性が優れることから、炭素繊維を含むカーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロスなどの導電性多孔質基材を用いることが好ましい。さらには、電解質膜の厚み方向の寸法変化を吸収する特性、すなわち「ばね性」に優れることから、炭素繊維抄紙体を炭化物で結着してなる基材、すなわちカーボンペーパーを用いることが好適である。
【0024】
本発明において、導電性多孔質基材は、フッ素樹脂を付与することで撥水処理が施されたものが好適に用いられる。フッ素樹脂は撥水性樹脂として作用するので、本発明において用いる導電性多孔質基材は、フッ素樹脂などの撥水性樹脂を含むことが好ましい。導電性多孔質基材が含む撥水性樹脂、つまり導電性多孔質基材が含むフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)(たとえば“テフロン”(登録商標))、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂)、ETFA(エチレン四フッ化エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリフッ化ビニル)等が挙げられる。強い撥水性を発現するPTFE、あるいはFEPが好ましい。
【0025】
撥水性樹脂の量は特に限定されない。導電性多孔質基材の全体100質量%中に0.1質量%以上20質量%以下程度が好適である。撥水性樹脂の量が0.1質量%より少ないと撥水性が十分に発揮されないことがある。撥水性樹脂の量が20質量%を越えるとガスの拡散経路あるいは排水経路となる細孔を塞いでしまったり、電気抵抗が上がることがある。
【0026】
導電性多孔質基材を撥水処理する方法は、一般的に知られている撥水性樹脂を含むディスパージョンに導電性多孔質基材を浸漬する処理技術のほか、ダイコート、スプレーコートなどによって導電性多孔質基材に撥水性樹脂を塗布する塗布技術も適用可能である。また、フッ素樹脂のスパッタリングなどのドライプロセスによる加工も適用できる。なお、撥水処理の後、必要に応じて乾燥工程、さらには焼結工程を加えても良い。
【0027】
次いで、微多孔層について説明する。本発明のガス拡散電極は微多孔層を有する。この微多孔層は、第1の微多孔層及び第2の微多孔層を少なくとも有する。また、微多孔層のみでガス拡散電極を形成してもよい。前述のとおり好適には、導電性多孔質基材の少なくとも片面に微多孔層を有し、導電性多孔質基材の少なくとも片面に、前記第1の微多孔層を有する態様である。なお、微多孔層は、少なくとも2層以上であれば特に限定されない。より好ましくは第2の微多孔層が微多孔層の最表層にある態様である。特に好ましくは導電性多孔質基材に接する第1の微多孔層、及び、第1の微多孔層に接して最表層にある第2の微多孔層の2層構成の態様である。
【0028】
まず、第1の微多孔層について説明する。第1の微多孔層は、導電性多孔質基材を有するガス拡散電極においては導電性多孔質基材に接する層であり、複数の孔を有する層である。
【0029】
そして第1の微多孔層は、導電性微粒子を含むことが好ましい。導電性微粒子を含みさえすればその粒子径は特に限定されない。第1の微多孔層中の導電性微粒子は、その粒子径が3nm以上500nm以下であることが好ましい。粒子径が3nm未満だと、第1の微多孔層の気孔率が低くなり、ガス拡散性が低くなることがある。一方、粒子径が500nmより大きいと、第1の微多孔層中の導電パスが少なくなり、電気抵抗が高くなることがある。本発明において、第1の微多孔層中の導電性微粒子は、その粒子径が20nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0030】
ここで、導電性微粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡により求めた粒子径を言う。測定倍率は50万倍で透過型電子顕微鏡による観察を行い、その画面に存在する100個の粒子径の外径を測定してその平均値を導電性微粒子の粒子径とする。ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を指す。透過型電子顕微鏡としては、日本電子(株)製JEM−4000EX、あるいはその同等品を用いることができる。
【0031】
本発明において、導電性微粒子としては、「粒状の導電性材料」であるカーボンブラック、「線状部分を有する導電性材料」であるカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維のチョップドファイバー、「鱗片状の導電性材料」であるグラフェン、黒鉛などが挙げられる。第1の微多孔層が含む導電性微粒子としては、これらの中でも「粒状の導電性材料」が好ましい。コストが低く、安全性や製品の品質の安定性の点から、カーボンブラックが特に好適に用いられる。つまり本発明においては、第1の微多孔層はカーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、不純物が少なく触媒の活性を低下させにくいという点でアセチレンブラックが好適に用いられる。
【0032】
またカーボンブラックの不純物の含有量の目安として灰分が挙げられる。灰分が0.1質量%以下のカーボンブラックを用いることが好ましい。なお、カーボンブラック中の灰分は少ないほど好ましい。灰分が0質量%のカーボンブラック、つまり、灰分を含まないカーボンブラックが特に好ましい。
【0033】
また、第1の微多孔層には、導電性、ガス拡散性、排水性、あるいは保湿性、熱伝導性といった特性、さらには燃料電池内部のアノード側での耐強酸性、カソード側での耐酸化性が求められるため、第1の微多孔層は、導電性微粒子に加えて、フッ素樹脂をはじめとする撥水性樹脂を含むことが好ましい。第1の微多孔層および第2の微多孔層が含むフッ素樹脂としては、導電性多孔質基材を撥水する際に好適に用いられるフッ素樹脂と同様、PTFE、FEP、PFA、ETFA等が上げられる。撥水性が特に高いという点でPTFE、あるいはFEPが好ましい。
【0034】
第1の微多孔層中の撥水性樹脂の量に関して、第1の微多孔層の断面F/C比は0.06以上0.33以下である。0.06未満だと撥水性が不足し排水性が低下して、0.33を超えると撥水剤樹脂が第1の微多孔層の空隙をふさいでしまい、ガス拡散性が低下する。より好ましくは第1の微多孔層の断面F/C比は0.08以上0.20以下である。ここで「F」とはフッ素原子の質量を意味し、「C」とは炭素原子の質量を意味し、「断面F/C比」とは断面方向から測定した際の「フッ素原子の質量」/「炭素原子の質量」の値を意味する。
【0035】
微多孔層の排水性を確保し、フラッディングを防止するために、本発明の第1の微多孔層は、第2の微多孔層に接さない部分と、第2の微多孔層に接する部分に2等分したときに、2等分した第1の微多孔層において、前記第2の微多孔層に接さない側を、微多孔層1−1といい、前記第2の微多孔層に接する側を、微多孔層1−2といい、微多孔層1−1の断面F/C比が微多孔層1−2の断面F/C比よりも低いことが好ましい。
【0036】
そして微多孔層1−1の断面F/C比を微多孔層1−2の断面F/C比よりも低くするための方法は特に限定されない。たとえば、第1の微多孔層が前記導電性多孔質基材に接した状態で熱処理することにより、第1の微多孔層中の撥水性樹脂がマイグレーションにより微多孔層1−2側に移動し、微多孔層1−1の断面F/C比を微多孔層1−2の断面F/C比よりも低くすることができる。
【0037】
次に、第2の微多孔層について説明する。第2の微多孔層は、第1の微多孔層に接する層であり、導電性多孔質基材を有する態様のガス拡散電極においては、ガス拡散電極において導電性多孔質基材側から見て第1の微多孔層の外側に存在し、複数の孔を有する層である。そして第2の微多孔層は、微多孔層の最表層にあることが特に好ましい。
【0038】
そして第2の微多孔層は、導電性微粒子を含むことが好ましい。第2の微多孔層が含む導電性微粒子としては、「線状部分を有する導電性材料」が好ましい。
【0039】
ここで線状とは、線のような細長い形で、具体的にはアスペクト比が10以上の形状のものを言う。そのため線状部分を有するとは、アスペクト比が10以上の形状の部分を有することを意味する。
【0040】
第2の微多孔層中の線状部分を有する導電性材料は、アスペクト比が30以上5000以下の線状部分を有する導電性材料を用いることが望ましい。線状部分のアスペクト比が30未満であると、微多孔層中の導電性材料の絡まりあいが少なくなり、第2の微多孔層中にクラックが形成されることがある。一方、線状部分のアスペクト比が5000より大きいと、第2の微多孔層中の導電性材料の絡まりあいが過剰となり、第2の微多孔層中で固形分が凝集し、第2の微多孔層の表面が粗くなるという問題が発生することがある。本発明において、第2の微多孔層中の線状部分を有する導電性材料は、その線状部分のアスペクト比が35以上3000以下であることがより好ましく、40以上1000以下であることがさらに好ましい。
【0041】
ここで、導電性材料の線状部分のアスペクト比は次のように求める。アスペクト比は、平均長さ(μm)/平均直径(μm)を意味する。平均長さは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などの顕微鏡で、1000倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる10箇所の線状部分を選び、その長さを計測し、平均値を求めたものであり、平均直径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などの顕微鏡で、前記平均長さを求めるために無作為に選んだ10箇所の線状部分を、それぞれ10000倍以上に拡大して写真撮影を行い、前記10箇所の線状部分の直径を計測し、平均値を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製SU8010、あるいはその同等品を用いることができる。
【0042】
本発明において、線状部分を有する導電性材料としては、線状カーボン、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。そして線状部分を有する導電性材料としては線状カーボンが好ましく、線状カーボンとしては、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カップ積層型カーボンナノチューブ、竹状カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、炭素繊維のチョップドファイバーなどが挙げられる。中でも、線状部分のアスペクト比を大きくでき、導電性、機械特性が優れることから、線状部分を有する導電性材料としてはVGCFが好適に用いられる。つまり本発明においては、第2の微多孔層はVGCFを含むことが好ましい。
【0043】
また、触媒層との接着性向上、触媒層との接触抵抗低減のため、第2の微多孔層の触媒層と接する表面には撥水性樹脂が少ないことが好ましい。
【0044】
第2の微多孔層中の撥水性樹脂の量に関して、第2の微多孔層の断面F/C比は0.06未満である。0.06以上だと触媒層との接着ができず、また電気抵抗が上がる可能性がある。より好ましくは0.03未満である。
【0045】
導電性多孔質基材を有する本発明のガス拡散電極を製造するためには、導電性多孔質基材に、微多孔層を形成するための塗液、すなわち微多孔層形成用塗液(以下、微多孔層塗液という)を塗布することが一般的である。微多孔層塗液は通常、前記した導電性微粒子や線状部分を有する導電性材料と水やアルコールなどの分散媒を含んでなる。微多孔層塗液は導電性微粒子や線状部分を有する導電性材料を分散するための分散剤として、界面活性剤などが配合されることが多い。また、微多孔層に撥水性樹脂を含ませる場合には、微多孔層塗液には予め撥水性樹脂を含ませておくことが好ましい。
【0046】
微多孔層の役割としては、(1)カソードで発生する水蒸気を凝縮防止の効果、(2)触媒層の目の粗い導電性多孔質基材への貫入防止、(3)触媒層との接触抵抗低減、(4)導電性多孔質基材の粗さが電解質膜に転写されることによる電解質膜の物理的損傷防止の効果などである。
【0047】
微多孔層塗液は、前記したように導電性微粒子又は線状部分を有する導電性材料を、分散剤を用いて分散して調製する。導電性微粒子又は線状部分を有する導電性材料を分散させるためには、導電性微粒子又は線状部分を有する導電性材料と分散剤の合計の含有量100質量%に対して、分散剤を0.1質量%以上5質量%以下用いて分散させることが好ましい。しかし、この分散を長時間安定させて塗液粘度の上昇を防ぎ、液が分離したりしないようにするために、分散剤の添加量を増量することが有効である。
【0048】
また、微多孔層塗液が導電性多孔質基材の細孔に流入して裏抜けを起こしてしまうことを防ぐためには、微多孔層塗液の粘度を少なくとも1000mPa・s以上に保つことが好ましい。逆に、あまり高粘度になると塗布性が悪くなるため、上限は25Pa・s程度である。好ましい粘度の範囲としては、3000mPa・s以上、20Pa・s以下、より好ましくは5000mPa・s以上、15Pa・s以下である。本発明において、第1の微多孔層を形成した後、次いで、第2の微多孔層塗液を塗布して第2の微多孔層を形成する。その際、第2の微多孔層塗液の粘度は、さらに低く、10Pa・s以下であることが望ましい。
【0049】
上記のように微多孔層塗液の粘度を高粘度に保つためには、増粘剤を添加することが有効である。ここで用いる増粘剤は、一般的に良く知られたもので良い。例えば、メチルセルロース系、ポリエチレングリコール系、ポリビニルアルコール系などが好適に用いられる。
【0050】
これらの分散剤や増粘剤は、同じ物質に二つの機能を持たせても良く、またそれぞれの機能に適した素材を選んでも良い。ただし、増粘剤と分散剤を別個に選定する場合には、導電性微粒子の分散系および撥水性樹脂であるフッ素樹脂の分散系を壊さないものを選ぶことが好ましい。上記分散剤と増粘剤は、ここでは界面活性剤と総称する。本発明は、界面活性剤の総量が、導電性微粒子又は線状部分を有する導電性材料の添加質量の50質量部以上が好ましく、より好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは200質量部以上である。界面活性剤の添加量の上限としては、通常導電性微粒子又は線状部分を有する導電性材料の添加質量の500質量部以下である。これを越えるようだと後の焼結工程において多量の蒸気や分解ガスが発生し、安全性、生産性を低下させる可能性がある。
【0051】
微多孔層塗液の導電性多孔質基材への塗布は、市販されている各種の塗布装置を用いて行うことができる。塗布方式としては、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、スプレー噴霧、凹版印刷、グラビア印刷、ダイコーター塗布、バー塗布、ブレード塗布、コンマコーター塗布などが使用できる。導電性多孔質基材の表面粗さによらず塗布量の定量化を図ることができるため、ダイコーター塗布が好ましい。以上例示した塗布方法はあくまでも例示のためであり、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0052】
微多孔層塗液を塗布した後、必要に応じ、微多孔層塗液の分散媒(水系の場合は水)を乾燥除去する。塗布後の乾燥の温度は、分散媒が水の場合、室温(20℃前後)から150℃以下が望ましく、さらに好ましくは60℃以上120℃以下が好ましい。この分散媒(たとえば水)の乾燥は後の焼結工程において一括して行なっても良い。
【0053】
微多孔層塗液を塗布した後、微多孔層塗液に用いた界面活性剤を除去する目的および撥水性樹脂を一度溶解して導電性微粒子および線状部分を有する導電性材料を結着させる目的で、焼結を行なうことが一般的である。
【0054】
焼結の温度は、添加されている界面活性剤の沸点あるいは分解温度にもよるが、250℃以上、400℃以下で行なうことが好ましい。焼結の温度が250℃未満では界面活性剤の除去が十分に達成し得ないかあるいは完全に除去するために膨大な時間がかかり、400℃を越えると撥水性樹脂の分解が起こる可能性がある。
【0055】
焼結時間は生産性の点からできるかぎり短時間、好ましくは20分以内、より好ましくは10分以内、さらに好ましくは5分以内である。あまり短時間に焼結を行なうと界面活性剤の蒸気や分解性生物が急激に発生し、大気中で行なう場合には発火の危険性が生じる。
【0056】
焼結の温度と時間は、撥水性樹脂の融点あるいは分解温度と界面活性剤の分解温度に鑑みて最適な温度、時間を選択する。なお、乾燥や焼結は、第1の微多孔層塗液の塗布後や第2の微多孔層塗液の塗布後のそれぞれに行ってもよい。後述するように、第1の微多孔層塗液の塗布および第2の微多孔層塗液の塗布後に、一括して行うのが好ましい。
【0057】
また、ガス拡散電極を微多孔層のみで形成する場合、導電性多孔質基材の代わりに、フィルム上に、微多孔層塗液を塗布し、上記の方法で微多孔層を形成したのち、フィルムから微多孔層をはがす方法によって、導電性多孔質基材を有さないガス拡散電極を得ることができる。
【0058】
微多孔層に関して
図2を用いてより詳細に説明する。なお、好適な本発明のガス拡散電極の製造方法は、導電性多孔質基材の一方の表面に、第1の微多孔層を形成するための塗液を塗布する工程を有し、続いて第2の微多孔層を形成するための塗液を塗布する工程を有することを特徴とする。
【0059】
本発明の第1の微多孔層201は、第1の微多孔層を形成するための塗液(以下、第1の微多孔層塗液)を、導電性多孔質基材2に直接塗布して設けられる。
【0060】
本発明の第1の微多孔層の厚み203については、導電性多孔質基材の粗さが電解質膜に転写されることによる電解質膜の物理的損傷防止の効果を発現させるために、微多孔層の合計の厚みが10μm以上であることが好ましい。より好ましくは第1の微多孔層の厚みだけで9.9μm以上、より好ましくは10μm以上である。ただし、第2の微多孔層が上に積層されても、ガス拡散性を確保する必要性から、第1の微多孔層の厚みは50μm未満であることが好ましい。
【0061】
本発明の第2の微多孔層200は、導電性多孔質基材2側から見て第1の微多孔層201の外側に、第2の微多孔層を形成するための塗液(以下、第2の微多孔層塗液)を塗布することにより形成される。第2の微多孔層の表面に、触媒層102が配置される。微多孔層が第1の微多孔層201と第2の微多孔層200の2層のみからなる場合には、第2の微多孔層塗液が第1の微多孔層201の表面に塗布される。第2の微多孔層200の役割は、触媒層の目の粗い導電性多孔質基材への貫入防止、触媒層との接触抵抗低減、および触媒層との接着性向上である。
【0062】
本発明における第2の微多孔層は、その断面F/C比が0.06未満であり、これによって第2の微多孔層と触媒層との接着性を向上することができる。特に好ましいのは、第2の微多孔層の断面F/C比が0.03未満である。
【0063】
さらに第2の微多孔層が、触媒層の貫入防止と触媒層との接触抵抗低減の効果を有するためには、第2の微多孔層の厚み202が0.1μm以上、10μm未満であることが好ましい。第2の微多孔層の厚みが、0.1μm未満では、第1の微多孔層の表面を第2の微多孔層が完全に覆うことができないため第1の微多孔層に存在する撥水性樹脂が微多孔層の表面に現れ、触媒層と微多孔層の接着性が低下する場合がある。また第2の微多孔層の厚みが10μm以上だと、ガス拡散性が低下してしまうことがある。第2の微多孔層の厚みは、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0064】
ガス拡散電極または導電性多孔質基材の厚みについては、マイクロメーターなどを用い、基材に0.15MPaの荷重を加えながら測定を行なうことができる。また、微多孔層の厚みについては、ガス拡散電極の厚みから導電性多孔質基材の厚みを差し引いて求めることができる。さらに、微多孔層が2層構成の場合の第2の微多孔層の厚みについては、
図2に示すように、第1の微多孔層を塗布した導電性多孔質基材の上に第2の微多孔層を塗布する際に、第2の微多孔層が塗布されている部分と第2の微多孔層が塗布されていない部分との差を第2の微多孔層の厚みとすることができる。基材に第1の微多孔層、第2の微多孔層を塗布により形成する際、各層の厚みを調整する場合には、上記マイクロメーターによる測定法を用いる。
【0065】
なお、導電性多孔質基材、第1の微多孔層、及び第2の微多孔層を有するガス拡散電極の状態で、各層の厚みを求める場合には、(株)日立ハイテクノロジーズ製IM4000などのイオンミリング装置を用いて、ガス拡散電極を厚み方向にカットし、その面直断面(厚み方向の断面)を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したSEM像から算出する方法が採用できる。
【0066】
本発明のガス拡散電極は、発電性能を確保するために、厚み方向のガス拡散性は30%以上であることが好まく、さらに好ましくは32%以上である。厚み方向のガス拡散性は高いほど良い。燃料電池に組み込んだ際に、細孔容積が大きすぎて、電池内部に圧力がかかったときにその構造を維持できる前提での上限値は40%程度と考えられる。
【0067】
本発明のガス拡散電極は、発電性能を確保するために、厚み方向の電気抵抗が2.4MPa加圧時に4.0mΩcm
2以下であることが好ましい。厚み方向の電気抵抗は小さいほど好ましい。現実的には2.4MPa加圧時に0.5mΩcm
2未満とすることは容易でないので、下限は2.4MPa加圧時に0.5mΩcm
2程度である。
【0068】
本発明においては、導電性多孔質基材の一方の表面に第1の微多孔層塗液を塗布する工程を有し、続いて第2の微多孔層塗液を、第2の微多孔層の厚みが10μm未満となるように塗布する工程を有することが好ましい。このような薄膜を均一に塗布するためには、第1の微多孔層塗液を導電性多孔質基材上に塗布した後、乾燥させずに連続して第2の微多孔層塗液を塗布するWet on Wetの重層技術を適用することも有効である。導電性多孔質基材の表面は一般的に粗く、凹凸の差が10μm近くにもなる場合がある。このように凹凸の大きい表面に第1の微多孔層塗液を塗布しても、乾燥後は完全にはその凹凸を解消しきれない。第2の微多孔層は10μm未満という薄膜が好適なため、第2の微多孔層塗液の粘度はある程度低くすることが好ましい。そのような低粘度の塗液で上記のような凹凸のある面の上に薄膜を形成しようとすると、凹凸の凹部には液が溜まりやすく(即ち厚膜になる)、凸部には液が乗らずに、極端な場合には第2の微多孔層の薄膜が形成できない。これを防ぐために、乾燥する前に、第1の微多孔層塗液と第2の微多孔層塗液を重ねてしまい、後から一括して乾燥させることにより、第1の微多孔層の表面に均一に第2の微多孔層の薄膜を形成することができる。
【0069】
このように、多層塗布の際に各層の塗布後に乾燥せず、多層塗布完了後に一括して乾燥することは、乾燥機が一つで済み、塗布工程も短くなるので、設備コストや生産スペースの節約にもなる。また、工程が短くなることで、工程における、一般的に高価な導電性多孔質基材のロスを低減することも可能となる。
【0070】
上記の多層塗布においては、第1の微多孔層塗液の塗布をダイコーターで行い、さらに第2の微多孔層塗液の塗布もダイコーターで行う方法が適用できる。また、第1の微多孔層塗液の塗布を各種のロールコーターで行い、第2の微多孔層塗液の塗布をダイコーターで行なう方法が適用できる。また、第1の微多孔層塗液の塗布をコンマコーターで行い、第2の微多孔層塗液の塗布をダイコーターで行なう方法が適用できる。また、第1の微多孔層塗液の塗布をリップコーターで行い、第2の微多孔層塗液の塗布をダイコーターで行なう方法が適用できる。また、スライドダイコーターを用いて、基材に塗布する前に第1の微多孔層塗液と第2の微多孔層塗液を重ねてしまう方法などが適用できる。特に、高粘度の塗液を均一に塗布するためには、第1の微多孔層塗液の塗布をダイコーターまたはコンマコーターで行なうことが好ましい。
【0071】
本発明のガス拡散電極は、触媒層を両面に設けた電解質膜の両側に触媒層とガス拡散電極が接するように圧着し、さらに、セパレータなどの部材を組みこんで単電池を組み立てて燃料電池として使用される。その際、第2の微多孔層が、触媒層と接するように組み立てるとよい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。実施例で用いた材料、導電性多孔質基材の作製方法、燃料電池の電池性能評価方法を次に示した。
【0073】
<材料>
A:導電性多孔質基材
・厚み150μm、空隙率85%のカーボンペーパー:
以下のように調製して得た。
【0074】
東レ(株)製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ”(登録商標)T300−6K(平均単繊維径:7μm、単繊維数:6,000本)を6mmの長さにカットし、アラバラリバー社製広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)クラフトマーケットパルプ(ハードウッド)と共に、水を抄造媒体として連続的に抄造し、さらにポリビニルアルコールの10質量%水溶液に浸漬し、乾燥する抄紙工程を経て、ロール状に巻き取って、炭素短繊維の目付けが15g/m
2の長尺の炭素繊維紙を得た。炭素繊維紙100質量部に対して、添加したパルプの量は40質量部、ポリビニルアルコールの付着量は20質量部に相当する。
【0075】
(株)中越黒鉛工業所製鱗片状黒鉛BF−5A(平均粒子径:5μm、アスペクト比:15)、フェノール樹脂およびメタノール(ナカライテスク(株)製)を2:3:25の質量比で混合した分散液を用意した。上記炭素繊維紙に、炭素短繊維100質量部に対してフェノール樹脂が78質量部である樹脂含浸量になるように、上記分散液を連続的に含浸し、90℃の温度で3分間乾燥する樹脂含浸工程を経た後、ロール状に巻き取って樹脂含浸炭素繊維紙を得た。フェノール樹脂には、荒川化学工業(株)製レゾール型フェノール樹脂KP−743Kと荒川化学工業(株)製ノボラック型フェノール樹脂“タマノル”(登録商標)759とを1:1の質量比で混合したものを用いた。このフェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の混合物)の炭化収率は43%であった。
【0076】
(株)カワジリ製100tプレスに熱板が互いに平行になるようにセットし、下熱板上にスペーサーを配置して、熱板温度170℃、面圧0.8MPaでプレスの開閉を繰り返しながら上下から離型紙で挟み込んだ樹脂含浸炭素繊維紙を間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理した。また、熱板の有効加圧長LPは1200mmで、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量LFを100mmとし、LF/LPを0.08とした。すなわち、30秒の加熱加圧、型開き、炭素繊維の送り(100mm)、を繰り返すことによって圧縮処理を行い、ロール状に巻き取った。
【0077】
圧縮処理をした炭素繊維紙を前駆体繊維シートとして、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2400℃の加熱炉に導入し、加熱炉内を連続的に走行させながら、約500℃/分(650℃までは400℃/分、650℃を越える温度では550℃/分)の昇温速度で焼成する炭化工程を経た後、ロール状に巻き取ってカーボンペーパーを得た。得られたカーボンペーパーは、密度0.25g/cm
3、空隙率85%であった。
【0078】
・厚み180μm、空隙率85%のカーボンペーパー:
炭化後の厚みが180μmとなるように炭素繊維の目付け量、圧縮処理の際のスペーサーの厚みを調整した以外は、厚み150μm、空隙率85%のカーボンペーパーと同様にして、厚み180μm、空隙率85%のカーボンペーパーを得た。
【0079】
B:カーボンブラック
・“デンカブラック”(登録商標)(電気化学工業株式会社製)
C:VGCF
・“VGCF”(登録商標)(昭和電工株式会社製)
D:撥水性樹脂
・“ポリフロン”(登録商標)PTFEディスパージョンD−210C(ダイキン工業(株)製)
E:界面活性剤
・“TRITON”(登録商標)X−114(ナカライテスク(株)製)
<微多孔層の断面F/C比測定>
微多孔層(第2の微多孔層、微多孔層1−1、微多孔層1−2)の断面のF/C比を以下のようにして測定した。
【0080】
ガス拡散電極を水平に置き、片刃を用いて水平面に対して垂直にスライスして断面を出し、SEM−EDX(エネルギー分散型蛍光X線)を用いて、一方の表面に近い部分から他方の表面に近い部分までの視野(全体視野)がモニター画面に収まるよう拡大倍率を調整し、加速電圧5KeV、スキャン幅20μm、ラインスキャン間隔50μmでガス拡散電極の断面の元素分析を行い、微多孔層1−1、微多孔層1−2、および第2の微多孔層のそれぞれについて、断面のフッ素原子の質量および炭素原子の質量に対応するX線量(カウント数)を定量し、F/C比を求めた。
【0081】
さらに第1の微多孔層の断面のF/C比は、微多孔層1−1の断面のF/C比と微多孔層1−2の断面のF/C比の平均値とした。
【0082】
なお、SEM−EDXとしては、日立製SEM H−3000にエネルギー分散型蛍光X線分析装置SEMEDEX Type−Hを付加した装置を用いた。
【0083】
<厚み方向のガス拡散性>
西華産業製水蒸気ガス水蒸気透過拡散評価装置(MVDP−200C)を用い、ガス拡散電極の一方の面側(1次側)に拡散性を測定したいガスを流し、他方の面側(2次側)に窒素ガスを流す。1次側と2次側の差圧を0Pa近傍(0±3Pa)に制御しておき(即ち圧力差によるガスの流れはほとんどなく、分子拡散によってのみガスの移動現象が起こる)、2次側のガス濃度計により、平衡に達したときのガス濃度を測定し、この値(%)を厚み方向のガス拡散性の指標とした。
【0084】
<厚み方向の電気抵抗>
40mm×40mmのサイズにガス拡散電極を切り取り、上下を金メッキされた平滑な金属の剛体電極で挟み、2.4MPaの平均圧力をかける。この状態で上下の電極に1Aの電流を流した時の、上下の電極の電圧を測定することにより、単位面積当たりの電気抵抗を算出し、この値を電気抵抗の指標とした。
【0085】
<触媒層−微多孔層接着性評価>
ガス拡散電極を、電解質膜・触媒層一体化品(日本ゴア製の電解質膜“ゴアセレクト(登録商標)”に、日本ゴア製触媒層“PRIMEA(登録商標)”を両面に形成したもの)の触媒層と微多孔層が接するように重ね、100℃で2MPaの圧力をかけてホットプレスを行った後、ガス拡散電極と電解質膜・触媒層一体化品が接着しているかどうかを評価した。
【0086】
<発電性能評価>
ガス拡散電極を、前記電解質膜・触媒層一体化品の両側に、触媒層と微多孔層が接するように挟み、100℃で2MPaの圧力をかけてホットプレスすることにより、膜電極接合体(MEA)を作製した。この膜電極接合体を燃料電池用単セルに組み込み、電池温度57℃、燃料利用効率を70%、空気利用効率を40%、アノード側の水素、カソード側の空気をいずれも露点が57℃となるように加湿して発電させ、電流密度が1.9A/cm
2のときの出力電圧を耐フラッディング性の指標とした。
【0087】
<ばね性評価>
40mm×40mmのサイズにガス拡散電極を切り取り、表面が平滑な金属の剛体で挟み、1.0MPaの平均圧力をかけたときのガス拡散電極の厚さに対する、2.0MPaの平均圧力をかけたときのガス拡散電極の圧縮率をばね性評価の指標とした。
【0088】
(実施例1)
厚み150μm、空隙率85%のカーボンペーパーを、撥水性樹脂濃度が2質量%になるように水に分散した撥水性樹脂ディスパージョンを満たした浸漬槽に浸漬して撥水処理を行い、100℃で乾燥して導電性多孔質基材を得た。撥水性樹脂ディスパージョンとして、PTFEディスパージョン D−210Cを水でPTFEが2質量%になるように薄めたものを用いた。
【0089】
次に、ダイコーターを用いて第1の微多孔層塗液を塗布した後、連続してダイコーターにより第2の微多孔層塗液を塗布し、100℃で水分を乾燥、さらに350℃で焼結を行ない、ガス拡散電極を得た。
【0090】
なお、微多孔層塗液は以下のように調製した。
【0091】
第1の微多孔層塗液:
カーボンブラック7.1質量部、PTFEディスパージョン3.9質量部、界面活性剤14.2質量部、精製水74.8質量部をプラネタリーミキサーで混練し、塗液を調製した。この時の塗液粘度は、7.5Pa・sであった。
【0092】
第2の微多孔層塗液:
VGCF7.1質量部、PTFEディスパージョン0.6質量部、界面活性剤14.2質量部、精製水78.1質量部をプラネタリーミキサーで混練し、塗液を調製した。プラネタリーミキサーでの混練時間は第1の微多孔層塗液の場合の2倍の時間をかけ、塗液の分散度を上げた。この時の塗液粘度は、1.1Pa・sであった。
【0093】
第1の微多孔層塗液の塗布にあたっては、焼結後の微多孔層の目付け量が16g/m
2となるように調整した。このとき、第1の微多孔層の厚みは25μmであった。さらに、第2の微多孔層塗液の塗布にあたっては、第2の微多孔層の厚みが3μmとなるよう調製した。
【0094】
このようにして、調製したガス拡散電極の微多孔層1−1の断面F/C比、微多孔層1−2の断面F/C比、第2の微多孔層の断面F/C比、厚み方向ガス拡散性、電気抵抗、触媒層−微多孔層接着性、発電性能、およびばね性を測定した結果を表1に示す。
【0095】
(実施例2)
実施例1において、第2の微多孔層塗液中のPTFEディスパージョンを0質量部と変更し、精製水を78.7質量部と変更した以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
【0096】
(実施例3)
実施例1において、第1の微多孔層塗液中のPTFEディスパージョンを3.0質量部と変更し、精製水を75.7質量部と変更し、第2の微多孔層塗液中のPTFEディスパージョンを0質量部と変更し、精製水を78.7質量部と変更した以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
【0097】
(実施例4)
実施例1において、第1の微多孔層塗液中のPTFEディスパージョンを1.8質量部と変更し、精製水を76.9質量部と変更し、第2の微多孔層塗液中のPTFEディスパージョンを0質量部と変更し、精製水を78.7質量部と変更した以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
【0098】
(実施例5)
実施例1において、第1の微多孔層塗液中のPTFEディスパージョンを5.9質量部と変更し、精製水を72.8質量部と変更し、第2の微多孔層塗液中のPTFEディスパージョンを0質量部と変更し、精製水を78.7質量部と変更した以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
【0099】
(実施例6)
実施例1において、第1の微多孔層の焼結後目付け量を32g/m
2となるよう調整し、第1の微多孔層の厚みが50μmであった以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
【0100】
(実施例7)
実施例1において、第2の微多孔層の厚みが10μmとなるよう調整した以外はすべて、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
【0101】
(実施例8)
ダイコーターを用いて第1の微多孔層塗液をフィルムに塗布した後、連続してダイコーターにより第2の微多孔層塗液を塗布し、100℃で水分を乾燥、さらに350℃で焼結を行ない、フィルムからはがすことによりガス拡散電極を得た。
【0102】
なお、微多孔層塗液は以下のように調製した。
【0103】
第1の微多孔層塗液:
カーボンブラック7.1質量部、PTFEディスパージョン3.0質量部、界面活性剤14.2質量部、精製水75.7質量部をプラネタリーミキサーで混練し、塗液を調製した。
【0104】
第2の微多孔層塗液:
VGCF7.1質量部、界面活性剤14.2質量部、精製水78.7質量部をプラネタリーミキサーで混練し、塗液を調製した。プラネタリーミキサーでの混練時間は第1の微多孔層塗液の場合の2倍の時間をかけ、塗液の分散度を上げた。
【0105】
第1の微多孔層塗液の塗布にあたっては、焼結後の微多孔層の目付け量が16g/m
2となるように調整した。このとき、第1の微多孔層の厚みは25μmであった。さらに、第2の微多孔層塗液の塗布にあたっては、第2の微多孔層の厚みが3μmとなるよう調製した。
【0106】
この例においては、ばね性が低いという結果であった。その他の測定結果は表1に記載のとおりであった。微多孔層のみでガス拡散電極を形成した場合、ばね性は低いもののその他の項目では優れた性能を示すことがわかった。
【0107】
(比較例1)
実施例1において、第2の微多孔層塗液中のPTFEディスパージョンを2.4質量部と変更し、精製水を76.3質量部と変更した以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。この例においては、触媒層と微多孔層が接着しなかった。その他の測定結果は表2に記載のとおりであった。
【0108】
(比較例2)
実施例1において、ダイコーターを用いて第1の微多孔層塗液をいったんフィルムに塗布し、100℃で水分を乾燥させて第1の微多孔層を形成した後、導電性多孔質基材上に第1の微多孔層を圧接し、フィルムをはがすことで導電性多孔質基材上に第1の微多孔層を形成し、次にダイコーターにより第1の微多孔層の上に第2の微多孔層塗液を塗布し、100℃で水分を乾燥、さらに350℃で焼結を行ない、ガス拡散電極を得た。このガス拡散電極の発電性能を評価した結果、表2に記載のように、出力電圧0.31V(運転温度57℃、加湿温度57℃、電流密度1.9A/cm
2)であり耐フラッディング性がやや劣る結果であった。その他の測定結果は表2に記載のとおりであった。
【0109】
(比較例3)
実施例1において、第1の微多孔層塗液中のPTFEディスパージョンを11.8質量部と変更し、精製水を66.9質量部と変更した以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。このガス拡散電極の発電性能を評価した結果、表2に記載のように、厚み方向ガス拡散性が28%と低い結果であった。その他の測定結果は表2に記載のとおりであった。
【0110】
(比較例4)
実施例6において、第2の微多孔層塗液中の精製水を76.3質量部と変更して、さらに第2の微多孔層塗液にPTFEディスパージョンを2.4質量部加えた点を除いては、実施例6と同様にしてガス拡散電極を得た。
【0111】
この例においては、ばね性が低いという結果であった。その他の測定結果は表2に記載のとおりであった。微多孔層のみでガス拡散電極を形成した場合、ばね性は低いものの、その他の項目では優れた性能を示すことがわかった。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】