(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抽出部は、前記圧脈波が安定しているかを示す安定性特徴量、前記1つまたは複数のセンサと測定部位との接触状態が正常であるかを示すセンサ接触状態特徴量、及び計測開始時と所望の計測時刻との間での前記圧脈波の類似度を示す類似度特徴量のうちの少なくとも1つの特徴量を抽出し、
前記算出部は、前記少なくとも1つの特徴量に基づいて前記信頼度を算出する請求項1に記載の血圧測定装置。
前記圧脈波が安定していると判定され、かつ前記接触状態が正常であると判定された場合に、さらに前記類似度がしきい値よりも高いと判定された場合には、前記算出部はこの時間区間での前記信頼度を高いと設定する請求項2に記載の血圧測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明に係る実施形態の血圧測定装置、方法及びプログラムを説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
本実施形態に係る血圧測定装置100について
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1は、血圧測定装置100の機能ブロック図であり、血圧を時間的に連続して測定する血圧計101と、計測安定性判定部103と、センサ接触状態判定部104と、類似度判定部105と、信頼度算出部107と、記憶部108と、を示している。
図2は、血圧計101の機能ブロック図であり、圧脈波情報を基に血圧を時間的に連続して一心拍ごとに測定することができるものである。本実施形態では、主として、トノメトリ法を採用する血圧計101を用いる場合について説明を行う。なお、血圧計101は、トノメトリ法を採用する血圧計に限らず、1つまたは複数のセンサを用いて圧脈波を測定することができる任意の血圧計であってもよい。
図3は、一例としてトノメトリ方式の血圧測定装置100が装着されるイメージ図であり、手のひらを横(手を広げた場合の指が並ぶ方向)から見た概略透視図である。
図3は、圧力センサが橈骨動脈に交差して二列に配置されている一例を示している。
図3は、血圧測定装置100が腕の手のひら側の腕に載せられているだけのように見えるが、実際では血圧測定装置100は腕に巻き付いている。
【0015】
図4は、血圧測定装置100が手首に装着されている状態でセンサ部201の位置での血圧測定装置100と手首Wの断面図である。
図4では橈骨動脈RAが血圧測定装置100に押圧されていてその上部が扁平化されていることも示している。
図5は、血圧測定装置100の生体に接触する側から見た図であり、この接触する面にセンサ部201が2列に平行に配置されている。センサ部201は、血圧測定装置100が手首Wに装着された状態で橈骨動脈が延伸している方向Aに交差する方向Bにセンサが複数個並んでいる。
【0016】
血圧測定装置100は、
図1に示すように、血圧計101、特徴量抽出部102、計測安定性判定部103、センサ接触状態判定部104、類似度判定部105、信頼度算出部107、及び記憶部108を含む。
【0017】
血圧測定装置100は例えば、環状になっていて、手首等にブレスレットのように巻き付き、生体情報から血圧を測定する。血圧測定装置100は、
図2及び
図3に示すように、センサ部201(具体的には、圧力センサ)が橈骨動脈上に位置するように血圧測定装置100が配置される。また、血圧測定装置100は心臓の高さに合わせて配置することが好ましい。
【0018】
血圧計101は、トノメトリ法によって時間的に連続した一心拍ごとの圧脈波を測定する。トノメトリ法は血管を圧力センサで圧扁することにより圧脈波を計測し血圧を決定する手法である。血管の厚さが一様な円管と見なすと、血管内の血液の流れ、拍動の有無に関係なく血管壁を考慮してラプラスの法則に従い、血管の内圧(血圧)と血管の外圧(圧脈波の圧力)との関係式を導くことができる。この関係式で押圧面において血管が圧扁されている条件下では、血管の外壁及び内壁の半径を近似することにより、圧脈波の圧力を血圧が等しいと近似できる。この結果、血圧計101は装着される生体の血圧値を一心拍ごとに測定することになる。
【0019】
特徴量抽出部102は、時系列の一心拍ごとの血圧の分布からこの分布の特徴量を抽出する。特徴量は大きく2種類あり、トノグラムのAC成分から抽出されるもの、トノグラムのDC成分から抽出されるものがある。ここでトノグラムとは、複数の圧力センサの番号(例えば、チャンネル番号)に対する、圧力センサごとの血圧に起因する算出された特徴量の分布形状のことである。トノグラムはセンサ部201に含まれるセンサアレイごとに得られる。また、トノグラムのAC成分とは一心拍単位の最高血圧値と最低血圧値との差分値に相当し、トノグラムのDC成分とは一心拍単位の最低血圧値に相当する。トノグラムのAC成分の一例を
図6に示し、トノグラムのDC成分の一例を
図7に示す。最高血圧値は収縮期血圧(SBP:systolic blood pressure)に対応し、最低血圧値は拡張期血圧(DBP:diastolic blood pressure)に対応する。特徴量の詳細については後に
図9A、
図9B及び
図9Cを参照して説明する。
【0020】
計測安定性判定部103は、測定により得られた圧脈波が安定しているかどうかを判定する。例えば、計測安定性判定部103は、特徴量抽出部102で抽出される特徴量の1つである1心拍前とのトノグラム(DC)変化量総和に基づいて、血圧計101からの脈波が安定しているかどうかを判定する。1心拍前とのトノグラム(DC)変化量総和とは、チャンネルごとにトノグラムのDC成分の1心拍前との変化量を算出し、そのチャンネルごとの変化量を全てのチャンネルで総和したものである。このトノグラム(DC)変化量総和が少ない区間ほどセンサ部201が安定して生体に装着されていて正確な血圧を取得していると見なすことができる。本実施形態の計測安定性判定部103は、例えば、トノグラム(DC)変化量総和があるしきい値以下の期間は安定して正確な血圧を取得できる安定区間と定義し、トノグラム(DC)変化量総和がしきい値よりも大きい期間は安定して正確な血圧を取得できない不安定区間と定義する。計測安定性判定部103からは、例えば、安定区間は信頼度が高いまたは中間とし、不安定区間は信頼度が低いとする。また例えば、安定区間で検出した血圧値のみを採用するとしてもよい。安定区間及び不安定区間の具体例については後に
図10を参照して説明する。
【0021】
センサ接触状態判定部104は、血圧測定に用いるセンサ(例えば圧力センサ)と測定部位との接触状態が正常(適切)であるかどうかを判定する。例えば、センサ接触状態判定部104は、特徴量抽出部102で抽出される特徴量であるトノグラム(AC)極大値Chと、トノグラム(AC)振幅差と、トノグラム(DC)振幅差との3つの特徴量に基づいて、接触状態を判定する。トノグラム(AC)極大値Chとは、トノグラムのAC成分の出力値が極大となるチャンネルである。また、トノグラム(AC)振幅差とは、トノグラムのAC成分の出力値が極大となるチャンネルの前後の数チャンネルの間でのAC成分の振幅差のことである。さらに、トノグラム(DC)振幅差とは、トノグラムのAC成分の出力値が極大となるチャンネルの前後の数チャンネルの間でのDC成分の振幅差のことである。(1)トノグラム(AC)極大値Chが所定の範囲に含まれるか、(2)トノグラム(AC)振幅差がしきい値よりも大きいか、(3)トノグラム(DC)振幅差がしきい値よりも大きいかにより、センサ接触状態判定部104は、トノメトリ状態であるか、トノメトリ状態を逸脱した状態であるかを判定する。トノメトリ状態は、トノメトリ方式の血圧計を用いる場合において圧力センサが測定部位に対して適切に配置されている状態に対応する。上記(1)に関して、トノグラム(AC)極大値Chは中央(第23チャンネル)付近に位置することが望ましく、上記の所定の範囲は、例えば、15〜31チャンネルの範囲とされる。
【0022】
類似度判定部105は、特徴量抽出部102で抽出される特徴量であるトノグラム(AC)変化量総和及びトノグラム(DC)変化量総和に基づいて、圧脈波の初期状態と現在の圧脈波の状態との類似度を判定する。トノグラム(AC)変化量総和は、トノグラムのAC成分のある時刻における各チャンネルの出力値と、トノグラムのAC成分の初期状態(例えば、較正のとき)での各チャンネルの出力値(例えば、計測開始1分間の各チャンネルの平均値)と、の変化量を全てのチャンネルについて総和したものである。同様にトノグラム(DC)変化量総和は、トノグラムのDC成分のある時刻における各チャンネルの出力値と、計測開始1分間の各チャンネルの平均値と、の変化量を全てのチャンネルについて総和したものである。較正のときとは、圧脈波の圧力値を血圧値に変換するときである。計測開始時は較正のときと通常は同じ時刻になる。計測開始1分間の各チャンネルの平均値によって、初期のトノグラムの状態を示すので、類似度判定部105はある時刻のトノグラムが初期のトノグラムとどの程度類似しているかを判定することができる。類似度判定部105は、例えばトノグラム(AC)変化量総和及びトノグラム(DC)変化量総和が共にそれぞれのしきい値(第1しきい値)よりも小さい場合に類似度が高いと判定し、そうでない場合には類似度が低いと判定する。この他にも、変化量総和の値を点数に対応付けて類似度を例えば百分率で評価してもよく、判定結果表示手法は、様々な変形例がある。
【0023】
計測安定性判定部103で安定区間と判定され、センサ接触状態判定部104でトノメトリ状態であると判定されているにも関わらず、類似度判定部105で類似度が低いと判定された場合には、血圧の基準値がシフトしている可能性が高い。例えば、姿勢変化、手首の位置が変化、手首の向きが変化、これらに伴う装着状態変化がある。
【0024】
上記では、複数の圧力センサを用いて圧脈波を測定するトノメトリ方式の血圧計を用いる例について説明を行った。1つの圧力センサを用いて圧脈波を測定する血圧計を用いる場合にも、計測安定性判定部103、センサ接触状態判定部104、及び類似度判定部105は、上述したものと同様の方法で判定処理を行うことができる。この場合、トノグラムを作成する処理が不要となる。例えば、計測安定性判定部103は、AC成分の変化量、すなわち、現在のAC成分と一心拍前のAC成分との差に基づいて、圧脈波が安定しているかどうかを判定することができる。AC成分は、一心拍分の圧脈波波形における最大値から最小値を引いた値に相当する。センサ接触状態判定部104は、何らかのセンサの出力信号に基づいて、圧力センサと測定部位との接触状態が正常であるかどうかを判定することができる。類似度判定部105は、AC成分の変化量及びDC成分の変化量に基づいて、計測開始時と対象の計測時刻との間での圧脈波の類似度を算出することができる。DC成分は、一心拍分の圧脈波波形における最小値に相当する。
【0025】
信頼度算出部107は、計測安定性判定部103、センサ接触状態判定部104、及び類似度判定部105の判定結果に基づいて、血圧計101からの血圧データの信頼度を測定区間ごとに算出する。信頼度算出部107は、例えば、計測安定性判定部103で血圧データが安定区間であると判定された区間に対して、センサ接触状態判定部104でトノメトリ状態であると判定された場合には信頼度が中以上と判定し、トノメトリ状態を逸脱した状態と判定された場合には信頼度が低いと判定する。一方、計測安定性判定部103で血圧データが不安定区間であると判定された区間に対しては、信頼度が低と判定する。センサ接触状態判定部104で信頼度が中以上と判定された場合には、さらに類似度判定部105で類似度が高いと判定された場合には信頼度が高いと判定し、類似度が低いと判定された場合には信頼度が中位であると判定する。このようにして信頼度算出部107は、血圧値の時系列データについて区間ごとに信頼度を付与し、記憶部108に記録する。
【0026】
信頼度算出部107は、例えば、計測安定性判定部103で不安定区間と判定されると、他の判定部の結果を参照することなく、信頼度が低いと算出する。一方、計測安定性判定部103で安定区間と判定されると、センサ接触状態判定部104でトノメトリ状態であるかを判定するが、トノメトリ状態を逸脱している場合には、他の判定部の結果を参照することなく、信頼度が低いと算出する。
【0027】
また、以上とは異なり、各判定部での判定結果を数値で表し、信頼度は数値で示してもよい。判定部103、104、105が算出する判定結果をそれぞれ条件分けして、信頼度を数値で表示してもよい。信頼度が高いとなるのは、計測安定性判定部103で安定区間と判定され、センサ接触状態判定部104でトノメトリ状態と判定され、かつ、類似度判定部105で類似度が高いと判定された場合とする。
【0028】
記憶部108は、血圧計101からの血圧データと、その信頼度とを対応付けて記憶する。記憶部108は例えば、ユーザごとに血圧データと、その信頼度とを対応付けて記憶してもよい。記憶部108は血圧計101からの血圧データを信頼度と共に記録する。
【0029】
次に血圧計101について
図2を参照して説明する。
血圧計101は、センサ部201、押圧部202、制御部203、記憶部204、操作部205、及び出力部206を含む。センサ部201は、圧脈波を時間的に連続して検出する。例えば、センサ部201は一心拍ごとに圧脈波を検出する。センサ部201は圧力を検出するセンサを含み、
図3のように手のひら側に配置され、通常は
図3のように腕の延伸方向に2列に平行して配置される。複数のセンサを含むセンサアレイのそれぞれの列は、腕の延伸方向に交差(ほぼ直交)して複数(例えば、46個)のセンサが配置されている。押圧部202は、ポンプ及び弁、圧力センサ、空気袋からなりセンサ部201のセンサ部分を空気袋がふくらむことによって手首に適切な圧力で押圧してセンサの感度を上げることができる。ポンプ及び弁によって空気袋に空気を入れ、圧力センサが空気袋内の圧力を検出し、制御部203が監視して制御することによって適切な圧力に調整する。制御部203は血圧計101の全体の制御を行い、センサ部201からは脈波の時系列データを受け取り、このデータを血圧値の時系列データに変換して血圧データとして記憶部204に記憶させる。記憶部204は血圧データを格納し、制御部203からのリクエストに応じて所望のデータを渡す。操作部205はユーザ等からの入力をキーボード、マウス、及びマイク等から受け付けたり、外部のサーバ等からの指示を有線または無線で受け付ける。出力部206は、制御部203を介して記憶部204に格納されている血圧データを受け取り血圧計101の外部へ渡す。
【0030】
血圧測定装置100は、
図3及び
図4に示すように手首の手のひら側に配置され、血圧計101のセンサ部201が橈骨動脈RA上に位置するように配置される。
図4の矢印で示すように押圧部202がセンサ部201を手首Wに押圧し橈骨動脈RAが圧扁する。なお、
図3及び
図4には示していないが、血圧測定装置100は環状になっていて、手首等にブレスレットのように巻き付き血圧を測定する。
【0031】
次に、血圧測定装置100のセンサ部201について
図5を参照して説明する。
図5は、センサ部201の手首Wと接触する側の面を示している。
図5に示すように、センサ部201は、1以上の(この例では2つの)センサアレイを備え、センサアレイの各々は、方向Bに配列された複数のセンサを有する。方向Bは、血圧測定装置100が被測定者に装着された状態において橈骨動脈の伸びる方向Aと交差する方向である。例えば、方向Aと方向Bは直交していてもよい。1つの列にセンサは例えば、46個(46チャンネルあると称す)配置されている。なお、ここではセンサはチャンネル番号が付与されている。また、センサの配置は
図5に示す例に限定されない。
【0032】
各センサは、圧力を測定して圧力データを生成する。センサとしては、圧力を電気信号に変換する圧電素子を用いることができる。
図8に示すような圧力波形が圧力データとして得られる。圧脈波の測定結果は、センサの中から適応的に選択された1つのセンサ(アクティブチャンネル)から出力された圧力データに基づいて生成される。一心拍分の圧脈波の波形における最大値はSBPに対応し、一心拍分の圧脈波の波形における最小値はDBPに対応する。血圧データは、圧脈波の測定結果と共に、センサそれぞれから出力される圧力データを含むことができる。なお、脈波の測定結果は、血圧計101において生成されずに、血圧測定装置100内の情報処理部を含む制御部203によって圧力データに基づいて生成されてもよい。
【0033】
次に血圧計101が測定した圧脈波から算出した時系列データについて
図8を参照して説明する。
図8は、一心拍ごとの圧脈波を測定した際に圧脈波から算出した血圧の時系列データを示している。また、
図8にはそのうちの1つの圧脈波に基づく血圧の波形を示している。圧脈波に基づく血圧は、
図8に示すような波形として一心拍ごとに検出され、それぞれの圧脈波に基づく血圧が連続して検出される。
図8の波形800が一心拍の圧脈波に基づく血圧波形であり、801の圧力値がSBPに対応し802の圧力値がDBPに対応する。
図8の圧脈波に対応する血圧の時系列に示されるように通常、一心拍ごとに血圧波形のSBP803及びDBP804は変動している。
【0034】
特徴量抽出部102が抽出する特徴量について
図9A、
図9B、及び
図9Cを参照して説明する。
図9A、
図9B、及び
図9Cは、特徴量抽出部102が抽出する特徴量を、一例としたトノグラムのAC成分及びDC成分のグラフの一例を挙げて示したものである。
計測安定性判定部103が使用する特徴量である、1拍前と現在とのトノグラム(DC)変化量総和は、チャンネルごとにトノグラムのDC成分の1拍前と現在との変化量を算出し、そのチャンネルごとの変化量を全てのチャンネルで総和したものである。センサ接触状態判定部104が使用する特徴量は3種類あり、トノグラム(AC)極大値Chと、トノグラム(DC)振幅差と、トノグラム(AC)振幅差である。トノグラム(AC)極大値Chは、
図9Aに示すように、トノグラムのAC成分の出力値が極大のチャンネルである。トノグラム(DC)振幅差は、
図9Bに示すように、トノグラムのAC成分の極大となるチャンネルを中心とした前後k(例えば、k=10)チャンネル分のトノグラム内のDC成分での振幅差である。トノグラム(AC)振幅差は、
図9Aで示すように、トノグラムのAC成分の極大となるチャンネルを中心とした前後kチャンネル分のトノグラムのAC成分での振幅差である。
【0035】
類似度判定部105が使用する特徴量は2種類あり、トノグラム(AC)変化量総和と、トノグラム(DC)変化量総和である。トノグラム(AC)変化量総和は、
図9Cに示すように、トノグラムのAC成分のある時刻tでの各チャンネルの出力値と、初期の各チャンネルの出力値との変化量を算出し、そのチャンネルごとの変化量を全てのチャンネルで総和したものである。ここで初期の各チャンネルの出力値は、例えば、計測開始から1分間の各チャンネルの出力値の平均値とする。また、トノグラム(DC)変化量総和は、トノグラム(AC)変化量総和においてAC成分をDC成分に置き換えたものである。
【0036】
次に、安定区間と不安定区間について
図10を参照して説明する。
図10は横軸が時間を示し、縦軸がセンサアレイのチャンネル番号を示し、濃淡でセンサの出力値の大きさを示す。
図10の時刻t
0からt
1までと時刻t
5からt
6まででは、白色ほど出力値が大きく黒いほど出力値が小さい。
図10の時刻t
1からt
2までと時刻t
3からt
4まででは、黒いほど出力値が大きいことを示している。すなわち、時刻t
5からt
6までは、時刻t
0からt
1までよりもセンサの出力値は概ね小さいことが分かる。また、時刻t
0からt
1までは、チャンネル1から10まで位の出力値が10以降のチャンネルよりも出力値よりも大きい。また、時刻t
0からt
1までもチャンネル1から10弱位までがそれ以降のチャンネル46までよりも概ね出力値が大きい。
図10の場合では、時刻t
0からt
1までが安定区間、t
1からt
2までが不安定区間、t
3からt
4までが不安定区間、t
5からt
6までが安定区間に対応する。
【0037】
次にトノメトリ状態、トノメトリ状態を逸脱した状態の典型的なトノグラムの例について
図11を参照して説明する。
図11の上部に挙げた4つのトノグラムは、水平方向(横軸)がセンサのチャンネル番号を示し、垂直方向(縦軸)が各センサの出力値(例えば、血圧値)を示す。上部の4つはいずれもトノメトリ状態を逸脱した状態であり、下部の1つはトノメトリ状態を示す。上部の左2つは典型的には脈が弱い場合であり、上部の左から3つ目は脈が深部にあるか、センサが肘よりに配置されている可能性が高い場合であり、上部の最も右の例は腱の影響が大きく例えば手首が細い場合である。トノメトリ状態は、チャンネルの中心部の出力値が大きく(極大値が1箇所で振幅がある値より大)、両端のチャンネルにかけて出力値が左右対称になだらかになっていくのが特徴である。計測安定性判定部103では、このトノメトリ状態の判定を行う。
【0038】
次に血圧測定装置100の動作の一例について
図12を参照して説明する。
図12は血圧測定装置100の動作の典型的な一例を示すフローチャートである。
血圧計101が生体から血圧値の時系列データを取得し、特徴量抽出部102に渡す(ステップS1201)。血圧計101はこの時系列データを記憶部108に渡し、記憶部108はこの血圧値の時系列データを順次記録してゆく。
【0039】
ステップS1202では特徴量抽出部102が、計測安定性判定部103、センサ接触状態判定部104、及び類似度判定部105が必要とする特徴量を抽出し、それぞれの判定部に対応する特徴量を渡す。
【0040】
ステップS1203では計測安定性判定部103が、特徴量抽出部102から受け取った、1心拍前とのトノグラム(DC)変化量総和がしきい値以下であれば安定区間と判定し、それ以外の値であれば不安定区間と判定する(ステップS1203)。計測安定性判定部103が、安定区間であると判定した場合にはステップS1204へ進み、不安定区間であると判定した場合にはステップS1206へ進み、信頼度算出部107が「信頼度が低い」と判定する。
【0041】
ステップS1204ではセンサ接触状態判定部104が、特徴量抽出部102から受け取った、(条件1)トノグラム(AC)極大値Chが所定の範囲に含まれるか、(条件2)トノグラム(AC)振幅差がしきい値よりも大きいか、及び(条件3)トノグラム(DC)振幅差がしきい値よりも大きいかに基づいて、トノメトリ状態であるかを判定する。例えば、(条件1)、(条件2)、及び(条件3)がすべて満たされる場合にトノメトリ状態であると判定しステップS1205へ進み、(条件1)、(条件2)、及び(条件3)のいずれか1つでも満たされない場合にはトノメトリ状態を逸脱した状態であると判定してステップS1206へ進み、信頼度算出部107が「信頼度が低い」と判定する。
【0042】
ステップS1205では類似度判定部105が、特徴量抽出部102から受け取った、トノグラム(AC)変化量総和及びトノグラム(DC)変化量総和の2つの特徴量に基づいて、トノグラムの類似度を判定する。例えばトノグラム(AC)変化量総和及びトノグラム(DC)変化量総和が共にそれぞれのしきい値(第1しきい値)よりも小さい場合に類似度が高いと判定し、信頼度算出部107は信頼度が高いと判定する(ステップS1206)。一方、トノグラム(AC)変化量総和及びトノグラム(DC)変化量総和のうちの少なくともどちらかがしきい値以上の場合には類似度が低いと判定し、信頼度算出部107は信頼度が中位と判定する(ステップS1206)。
【0043】
なお、この一例では、計測安定性判定部103、センサ接触状態判定部104、及び類似度判定部105が順番に判定処理を行って信頼度算出部107に判定結果を渡しているが、これとは異なり、計測安定性判定部103、センサ接触状態判定部104、及び類似度判定部105が並列に判定処理を行い、これらの判定結果を信頼度算出部107が適切に条件分けして信頼度を判定してもよい。
【0044】
次に、血圧測定装置100のハードウェア構成の一例について
図13を参照して説明する。
血圧測定装置100は、CPU1301、ROM1302、RAM1303、入力装置1304、出力装置1305、及び血圧計101を備え、これらがバスシステム1306を介して互いに接続されている。血圧測定装置100の上述した機能は、CPU1301がコンピュータ読み取り可能な記録媒体(ROM1302)に記憶されたプログラムを読み出し実行することにより実現されることができる。RAM1303は、CPU1301によってワークメモリとして使用される。この他に補助記憶装置(図示せず)例えば、ハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SDD)を備え、記憶部108として使用され、さらにプログラムを記憶してもよい。入力装置1304は、例えば、キーボード、マウス、及びマイクロフォンを含み、ユーザからの操作を受け付ける。入力装置1304には例えば、血圧計101に測定を開始させるための操作ボタン、校正を行うための操作ボタン、通信を開始または停止するための操作ボタンがある。出力装置1305は、例えば、液晶表示装置などの表示装置及びスピーカを含む。血圧計101は、例えば通信装置で他のコンピュータとの間で信号の送受信を行い、例えば血圧測定装置から測定データを受信する。通信装置は、近距離で互いにデータをやり取りできる通信方式を利用することが多く、例えば、近距離無線通信方式を使用し、具体的にはブルートゥース(登録商標)、トランスファイージェット(登録商標)、ジグビー(登録商標)、アイアールディーエイ(登録商標)などの通信方式がある。
【0045】
また、上述した特徴量抽出部102、計測安定性判定部103、センサ接触状態判定部104、類似度判定部105、及び信頼度算出部107が行う動作を実行するためのプログラムが上記のROM1302または補助記憶装置に記憶され、CPU1301がそのプログラムを実行してもよい。これとは異なり血圧測定装置100とは別のサーバ等にプログラムが記憶されて、サーバ等のCPUがプログラムを実行してもよい。この場合は、血圧計101が測定した圧脈波の時系列データ(もしくは血圧値の時系列データ)をサーバに送信してサーバで処理を行い信頼度を求めることができる。この場合にはサーバで処理を行うため、処理速度が上がる可能性がある。さらに、特徴量抽出部102、計測安定性判定部103、センサ接触状態判定部104、類似度判定部105、及び信頼度算出部107の装置部分が血圧測定装置100から除去されるので、血圧測定装置100の大きさが小さくなりセンサを正確に測定できる位置に容易に配置することができる。この結果、ユーザへの負担が下がり、簡易に正確な血圧測定を行うことができるようになる。
【0046】
以上の実施形態の血圧測定装置によれば、測定された血圧値への信頼度を測定する機会ごとに(例えば一心拍ごとに)評価することができ、従って測定対象者に合わせて測定された血圧値への信頼度を評価することができる。また、圧脈波が安定していると判定され、かつ前記トノグラムがトノメトリ状態であると判定された場合に、さらに類似度が第1しきい値よりも高いと判定された場合には、算出部はこの区間での信頼度を最も高いと算出することにより、最低血圧値の安定性が高く、トノグラムがトノメトリ状態であり、かつ、トノグラムの計測開始時との類似度が高いと判定された場合には、最も良い条件での血圧データを得ていることが分かる。この結果、センサが橈骨動脈からずれが小さく確実に圧脈波を受け取ることが信頼度に組み込まれ、より理想的な一心拍ごとの連続血圧データを得ることが可能になる。
【0047】
橈骨動脈と橈骨・腱の位置関係には個人差があるため、橈骨動脈上の皮下組織が厚い人や橈骨動脈と橈骨・腱が近い人などは、信頼度を低い状態で測定することになるが、この他に圧脈波が安定しているか、計測開始時と所望の計測時刻との間でのトノグラムの類似度も、血圧値の時系列データの信頼度の判定条件に組み込むことで、より実際の測定環境に適した血圧値の信頼度を評価することが可能になる。また、このように圧脈波の安定性、及び類似度を判定条件に組み込むことで、同一の生体でも測定条件によって、信頼度が変化しうる。
【0048】
さらに、圧力値から血圧値への変換は、較正時のトノグラム情報から算出されるため、各拍のトノグラム情報による信頼度評価だけでは、血圧値の信頼性を評価し切れていないが、上記のように類似度を判定条件に組み込むことで、通常測定開始時事に行う較正時でのトノグラムとの類似度を評価することで、より血圧値が正しいかの信頼度を得ることができるようになる。例えば、測定の途中で類似度以外の判定条件で信頼度が高くなる場合でも、較正時とのトノグラムが類似していないと正しい血圧値が算出されない
ため信頼度を低くする算出が可能になり、本実施形態の血圧測定装置の類似度を考慮した信頼度はより正確であることが分かる。
【0049】
本発明の装置は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
また、以上の各装置及びそれらの装置部分は、それぞれハードウェア構成、またはハードウェア資源とソフトウェアとの組み合せ構成のいずれでも実施可能となっている。組み合せ構成のソフトウェアとしては、予めネットワークまたはコンピュータ読み取り可能な記録媒体からコンピュータにインストールされ、当該コンピュータのプロセッサに実行されることにより、各装置の機能を当該コンピュータに実現させるためのプログラムが用いられる。
【0050】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0051】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0052】
(付記1)
ハードウェアプロセッサとメモリとを備える血圧測定装置であって、
前記ハードウェアプロセッサは、
1つまたは複数のセンサによって圧脈波を検出することで一心拍ごとの血圧値を含む血圧データを得、
前記血圧データの1以上の特徴量を抽出し、
前記特徴量に基づいて、前記血圧データがどの程度正確に血圧値を示しているかを示す信頼度を算出するように構成され、
前記メモリは、
前記信頼度と前記血圧データとを記憶する記憶部と、を備える血圧測定装置。
【0053】
(付記2)
少なくとも1つのハードウェアプロセッサを用いて、1つまたは複数のセンサによって圧脈波を検出することで一心拍ごとの血圧値を含む血圧データを得、
少なくとも1つのハードウェアプロセッサを用いて、前記血圧データの1以上の特徴量を抽出し、
少なくとも1つのハードウェアプロセッサを用いて、前記特徴量に基づいて、前記血圧データがどの程度正確に血圧値を示しているかを示す信頼度を算出することを備える血圧測定方法。