(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体部は、前記取付部の周方向において互いに離間し、且つ、前記取付部の突出方向に延びる複数の本体リブ部を有する請求項1〜6の何れか一項に記載の発泡樹脂成形体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1〜
図4を参照しながら、本発明の発泡樹脂成形体の好適な実施形態を挙げて説明する。説明に利用する図面は概略図であり、細かい部分での形状や相対的な位置関係、大きさの関係などは必ずしも厳密に記載されているものではない。また、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施形態中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで新たな数値範囲を構成し得る。さらにこれらの数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0015】
本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0016】
(実施形態)
実施形態の発泡樹脂成形体1は、車両のインストルメントパネルの一部を構成する。
図1は実施形態の発泡樹脂成形体1を部分的に且つ模式的に表す斜視図であり、
図2は
図1のII−II断面図であり、タッピングスクリュー9と螺合した実施形態の発泡樹脂成形体1の断面を部分的に且つ模式的に表す説明図である。
図3および
図4は実施形態の発泡樹脂成形体1を製造している様子を模式的に表す説明図である。詳しくは、
図3は注入工程における発泡樹脂成形体中間体および成形型7を表し、
図4はコアバック工程における発泡樹脂成形体中間体および成形型7を表す。
【0017】
実施形態の発泡樹脂成形体1は、基体2と取付部3とを有し、基体2と取付部3とは一体的に成形されている。基体2は、上述したように、車両のインストルメントパネルの一部を構成する。基体2には図示略の窓部が設けられ、当該窓部には空調装置用ダクト8が取り付けられる。取付部3には、このダクト8をインストルメントパネルすなわち発泡樹脂成形体1に固定するためのタッピングスクリュー9が螺合する。ダクトは比較的質量の大きい部材であるために、取付部3とタッピングスクリュー9とは強固に螺合する必要がある。したがって、取付部3にはタッピングスクリュー9が螺合する際のトルクに耐え得る取付強度が要求される。
【0018】
基体2には取付部3が一体に立設されている。具体的には、基体2は車室内に面する意匠面21と、意匠面21と背向する裏面22とを有し、取付部3は裏面22に設けられている。基体2のなかで取付部3が設けられている部分およびその周縁部を一般部20と呼ぶ。一般部20は略平板状をなす。基体2は、一般部20のみで構成されても良いし、一般部20以外の部分、つまり、一般部20と面一でない部分、或いは一般部20と交差する方向に配置される部分を有しても良い。
【0019】
実施形態において、一般部20の裏面22から突出した取付部3の突出方向は、一般部20の裏面22に対して略垂直な方向である。なお、取付部3の突出方向は特に限定されず、一般部20の裏面22に対して所定の角度をなして突出する方向であってもよい。以下本明細書において、特に説明がない場合には、「突出方向」とは
図1に示す方向であって、取付部3の突出方向を指す。後述する螺合領域34の軸方向は取付部3の突出方向と一致し、取付部3に螺合したときのタッピングスクリュー9の軸方向もまた取付部3の突出方向に一致するものとする。また、後述する「幅方向」とは
図1に示す方向であって、突出方向と直交する方向を指す。さらに、後述する「奥行き方向」とは
図1に示す方向であって、突出方向及び幅方向と直交する方向を指す。実施形態においては、幅方向は後述する第1側壁32bと第2側壁32dとが離間する方向である。なお、実施形態の基体2は幅方向及び奥行き方向に拡がっている。
【0020】
実施形態における取付部3は、本体部31と脚部32とを有する。取付部3において、本体部31は先端側に位置し、脚部32は基端側に位置する。また、本体部31と脚部32とは一体的に連続してなり、さらに脚部32は基体2と一体的に連続している。
【0021】
図1及び
図2に示すように、本体部31は円筒状をなし、タッピングスクリュー9が挿通され螺合可能な取付孔31aを有する。具体的には、突出方向における本体部31の長さは、5.0mm以上10.0mm以下であることが望ましい。
【0022】
本体部31の取付孔31aは、本体部31の先端で開口している。
図2に示すように、実施形態における取付孔31aは行き止まり穴であり、取付孔31aの底面は、脚部32を構成する後述の頂壁32aの上面の一部に相当する。すなわち、取付孔31aは、本体部31の周壁内面と、脚部32の頂壁32aの上面の一部とによって区画されている。
【0023】
取付孔31aを区画する本体部31の周壁内面には、タッピングスクリュー9のネジ山91に対応し、ネジ山91と螺合する螺合部31bが設けられている。本体部31において、先端からこの螺合部31bが設けられている領域を螺合領域34と呼び、螺合領域34以外を残部領域35と呼ぶ。
【0024】
図1に示すように、実施形態の発泡樹脂成形体1は本体部31に8本の本体リブ部4を有する。本体リブ部4は、取付部3と一体成形されている。具体的には、
図1に示すように、本体リブ部4は、本体部31の周壁に一体に設けられ、突出方向に沿って延びる角柱体である。実施形態における本体リブ部4は、突出方向において、本体部31全体に亘って延びているが、少なくとも螺合領域34に相当する部分に設けられていればよい。このような本体リブ部4であれば、本体部31における取付強度を向上させることに有利となる。
【0025】
脚部32は、基体2と本体部31との間に位置し、基体2と本体部31と一体的に形成されている。実施形態では、突出方向に沿った脚部32の断面形状は、倒立略U字状をなす。
【0026】
幅方向及び奥行き方向おける脚部32の大きさは、本体部31の外径よりも大きい。換言すると、幅方向及び奥行き方向における脚部32の長さは、本体部31の長さよりも大きい。すなわち、実施形態における取付部3は、脚部32が土台となり、この土台となる脚部32の上に本体部31が配置される形状をなす。このように、脚部32が本体部31の土台となるような形状であることにより、取付部3における本体部31の取付強度や安定性を向上させることに有利となる。
【0027】
実施形態における脚部32は、
図1に示すように、頂壁32aと、互いに対向する第1側壁32b及び第2側壁32dと、第3側壁32cと、を有する。第3側壁32cは、第1側壁32b、第2側壁32d及び頂壁32aに交差する。
【0028】
実施形態における頂壁32aは、基体2と略平行な平板状であり、本体部31と一体的に設けられている。具体的には、突出方向における頂壁32aの上側の上面に、本体部31が設けられている。また、幅方向及び奥行き方向における頂壁32aの長さは、本体部31の外径の長さよりも大きい。
【0029】
第1側壁32b及び第2側壁32dはそれぞれ、突出方向に沿って基体2の一般部20から頂壁32aまで延び、且つ、奥行き方向に拡がる立壁である。第1側壁32b及び第2側壁32dは、突出方向及び奥行き方向と直交する幅方向で離間し、且つ、互いに対向している。突出方向において、第1側壁32b及び第2側壁32dのそれぞれの一端は頂壁32aと一体的に連続し、それぞれの他端は基体2の一般部20と一体的に連続している。
【0030】
実施形態における第3側壁32cは、突出方向に沿って基体2の一般部20から頂壁32aまで延び、且つ、幅方向に拡がる立壁である。すなわち、第3側壁32cは、第1側壁32b及び第2側壁32dと、互いに交差する方向に拡がっている。
【0031】
図1に示すように、実施形態における第3側壁32cと、第1側壁32b及び第2側壁32dとは、互いに直交するように拡がっている。突出方向において、第3側壁32cの一端は頂壁32aと一体的に連続し、他端は基体2の一般部20と一体的に連続している。また、幅方向における第3側壁32cの一端は、奥行き方向における第1側壁32bの一端と一体的に連続し、幅方向における第3側壁32cの他端は、奥行き方向における第2側壁32dの一端と一体的に連続している。このように、実施形態の脚部32は、基体2の一般部20と、第1側壁32bと、第2側壁32dと、第3側壁32cとによって区画された空間を有する所謂やぐら形状となっている。
【0032】
図1に示すように、脚部32は、基体2の一般部20側である他端側の付け根部33と、付け根部33以外の一般脚部36とからなる。実施形態における脚部32では、付け根部33の肉厚は、本体部31の肉厚及び一般脚部36の肉厚よりも薄くなっている。
【0033】
ところで、発泡樹脂成形体では、樹脂発泡が抑えられた部分は、十分に樹脂発泡させた部分よりも剛性が高くなることが知られている。ここで、本明細書において用いられる「樹脂発泡」とは、樹脂材料に含まれる発泡剤が発泡すること、例えば、発泡剤から気体が生じること、発泡剤と発泡開始剤との化学反応で気体が生じること、或いは気体の体積が増大すること等で、樹脂材料中に気泡が形成されることを意味する。
【0034】
樹脂発泡を抑える手段としては、例えば、成形時のコアバック工程において、樹脂発泡を抑えたい部分のキャビティ幅を増大させないようにすることが挙げられる。一方で、このような成形条件を制御する方法とは異なり、成形型において、剛性を向上させたい部分のキャビティ幅を予め小さく設計することによっても、樹脂発泡を効果的に抑制できる。これは、成形型内のキャビティ幅が小さい部分では、その他の部分に比べて、注入及び充填された樹脂材料がより早く型面によって冷却され得るからである。すなわち、このキャビティ幅が小さい部分では、その他の部分に比べてスキン層が成長しやすい。要するに、キャビティ幅が小さい部分に注入及び充填された樹脂材料は、樹脂発泡が起こる前に樹脂材料が固まるため、この部分の樹脂部は他の部分に比べて密な樹脂部となる。したがって、肉厚が薄くなる部分は樹脂発泡が抑えられた密な樹脂部となるため、発泡樹脂成形体の剛性向上に有利となる。
【0035】
実施形態の発泡樹脂成形体では、後述するように、基体2の一般部20における成形材料を、取付部3における成形材料よりも大きく樹脂発泡させるようなコアバック射出成型法を用いている。取付部3のうち基体2との連続部分である付け根部33は、他の部分に比べて薄肉となっている。このため、コアバック工程前の注入工程において、付け根部33における成形材料は、型面によって冷却され硬化し得る。すると、コアバック工程で成形材料を樹脂発泡させる際に、付け根部33における成形材料が硬化しているため、取付部3を成形するためのキャビティ内の内圧が低下し難くなる。これは、取付部3における基体2との連続部分である付け根部33が、ちょうど封止栓のような役割を果たし得るためである。したがって、取付部3における成形材料の樹脂発泡が抑制されるため、成形後には取付部3は密な樹脂部となる。このように、付け根部33の肉厚を薄くすることで、取付部3の一部である本体部31は密な樹脂部となるため、実施形態における取付部3の取付強度の向上に有利となる。よって、付け根部33は、成形時における本体部31における成形材料の樹脂発泡を十分に抑える機能を有すると言うことができる。
【0036】
突出方向における付け根部33の高さは、2.0mm〜5.0mmであることが望ましく、3.0mm〜4.0mmであることがより好ましい。また、突出方向における付け根部33の高さは、脚部32全体の高さの10%〜50%であることが望ましく、20%〜40%であることが好ましい。突出方向における付け根部33の高さが上記範囲内であることにより、取付部3の剛性や安定性を十分に向上させることができる。また、付け根部33の肉厚は、0.5mm〜1.0mmであることが望ましく、0.5mm〜0.7mmであることがより好ましい。付け根部33の肉厚が上記範囲内であることにより、取付部3の剛性を効果的に向上させることができ、且つ、成形時における本体部31における樹脂発泡を十分に抑制することが可能となる。したがって、取付部3における本体部31は、その肉厚を薄くすることなく、樹脂発泡を十分に抑えた密な樹脂部となるため、取付強度の向上に有利となる。
【0037】
図1に示すように、実施形態の発泡樹脂成形体1は脚部32に脚リブ部5を有する。脚リブ部5は、脚部32及び基体2と一体成形されており、脚部32の第1側壁32b、第2側壁32d、及び第3側壁32cのそれぞれに設けられている。実施形態における脚リブ部5は、脚部32の外周壁に設けられている。
【0038】
実施形態における脚リブ部5は、三角形状の薄板状体あり、その一辺が各側壁と一体的に設けられおり、他の一辺が基体2と一体的に設けられている。
図1に示すように、脚リブ部5は、第1側壁32b及び第2側壁32dにはそれぞれ1つずつ奥行き方向における端部に設けられており、第3側壁32cには幅方向における両端部にそれぞれ設けられている。なお、各側壁における脚リブ部5の形状や、配置場所及び数は特に限定されるものではない。
【0039】
実施形態の発泡樹脂成形体1において、基体2、本体部31及び脚部32を有する取付部3、本体部31に設けられた本体リブ部4、並びに脚部32に設けられた脚リブ部5は、同じ発泡樹脂材料を用いて一体に発泡成形されたものである。
図2に示すように、このうち基体2は、取付部3、本体リブ部4及び脚リブ部5に比べて密度が低く、粗な樹脂部となっている。換言すると、基体2は、取付部3、本体リブ部4及び脚リブ部5に比べて、空隙率すなわち発泡樹脂材料の発泡率が高い。このため、実施形態の発泡樹脂成形体1は、比較的軽量な基体2に比較的剛性の高い取付部3、本体リブ部4及び脚リブ部5が設けられたものとなり、軽量化及び取付強度の向上の両方を実現できる。
【0040】
また、取付部3のうち本体部31では、螺合領域34に相当する樹脂部は残部領域35に相当する樹脂部に比べて密度が高く、密な樹脂部となっている。換言すると、螺合領域34に相当する樹脂部は残部領域35に相当する樹脂部に比べて、空隙率すなわち発泡樹脂材料の発泡率が低い。このため、本体部31における取付強度の向上に有利となる。さらに、取付部3のうち脚部32では、付け根部33は、付け根部33以外の一般脚部36や本体部31に比べて密度が高く、密な樹脂部となっている。換言すると、付け根部33は、付け根部33以外の一般脚部36や本体部31に比べて、空隙率すなわち発泡樹脂材料の発泡率が低い。このため、脚部32における剛性向上に有利となる。
【0041】
実施形態の発泡樹脂成形体1における製造方法を以下に説明する。以下、実施形態の発泡樹脂成形体1の製造方法を、必要に応じて、単に実施形態の製造方法と呼ぶ。実施形態の製造方法は、スライドコアと呼ばれる可動型を備える発泡成形型を用いた射出成形法、所謂コアバック射出成形法を用いた方法である。
【0042】
実施形態の製造方法は、準備工程、注入工程、保圧工程およびコアバック工程を有する。
【0043】
(準備工程)
準備工程においては、樹脂材料及び発泡剤を図略の発泡樹脂成形機に入れて加熱し軟化させて、流体状の成形材料50を得る。実施形態の製造方法で用いる成形材料50は、75質量部のポリプロピレン、5質量部の炭酸水素ナトリウムおよび20質量部のタルクを含有する。このうち炭酸水素ナトリウムは発泡剤として機能する。具体的には、炭酸水素ナトリウムは加熱分解されて炭酸ナトリウムと水と二酸化炭素を生じる。このうち二酸化炭素は成形材料中の気泡を構成し得る。また、この分解反応速度は水の存在下で高まるために、上記の分解反応による成形材料の発泡は連続的に進行し得る。
【0044】
(注入工程)
注入工程では、上記準備工程で得た流体状の成形材料50を、図略の射出機を経て
図3に示す成形型7内に注入し充填する。実施形態の製造方法で用いる成形型7は、第1型71と第2型72とで構成され、第1型71と第2型72との間に区画形成されるキャビティ及び第1型71内部に形成されるキャビティを有する。第1型71は可動型であり、コアバック工程で第2型72から離れる方向に移動可能である。第2型72は固定型であり、第2型72の型面は基体2の意匠面21を形成する。注入工程において、可動型である第1型71は、
図3に示す型締め位置に配置される。
【0045】
注入工程においては、第2型72と型締め位置にある第1型71との間、及び第1型71の内部に第1キャビティ73が形成されている。
図3に示すように、第1キャビティ73は、取付部3を成形するための取付部領域75と、基体2を成形するための基体領域74と、本体リブ部4を成形するための本体リブ領域(図示略)と、脚リブ部5を成形するための脚リブ領域(図示略)と、を有する。取付部領域75、本体リブ領域、脚リブ領域は、第1型71の内部に形成されている。基体領域74は、第2型72と型締め位置にある第1型71との間に形成されている。
【0046】
また、取付部領域75は、本体部31を成形するための本体部用領域75aと、脚部32を成形するための脚部用領域75bと、を有する。脚部用領域75bは、付け根部33を成形するための付け根部用領域751bと、一般脚部36を成形するための一般脚部用領域752bとを有する。付け根部用領域751bは、基体領域74と連続する部分であり、本体部用領域75aや、付け根部用領域751b以外の脚部用領域75bよりもキャビティ幅が小さくなっている。
【0047】
注入工程では、この第1キャビティ73に流体状の成形材料50を注入し充填する。なお、このとき可動型である第1型71は、成形材料50による流体圧に抗して第1キャビティ73の大きさを維持するのに足る力で、固定型である第2型72に向けて型締めされている。換言すると、このとき第1型71は、成形材料50による流体圧に抗して
図3に示す型締め位置にあり続けるのに充分な力で、第2型72に向けて型締めされている。なお、このとき成形材料50は比較的高温であるため、第1キャビティ73内においては、準備工程に引き続き、成形材料50に含まれる発泡剤が徐々に熱分解されて、小さな気泡が発生している。
【0048】
(保圧工程)
保圧工程では、上記の注入工程後に引き続き、注入工程における型締め力を維持しつつ、第1キャビティ73内を所定の圧力、例えば30〜40MPaに保った状態を0.5〜1秒程度の間維持する。
【0049】
(コアバック工程)
コアバック工程では、
図4に示すように、上記の保圧工程後に第1型71を図中の白抜き矢印で示す型開き方向にやや移動させて、第2キャビティ76を形成する。実施形態の製造方法における型開き方向は、取付部3突出方向および基体2の一般部20の厚さ方向に略一致する。
【0050】
コアバック工程で形成された第2キャビティ76の容積は、注入工程および保圧工程で形成された第1キャビティ73の容積よりも大きい。また、取付部領域75の容積はコアバック工程の前後において同じである。すなわち、コアバック工程では、第1キャビティ73における基体領域74の容積を増大させるように第1型71を移動させる。
【0051】
このコアバック工程によって成形型7に形成された第2キャビティ76の容積は、それまでの第1キャビティ73の容積よりも大きいため、第2キャビティ76内は第1キャビティ73よりも圧力が低下し得る。このため、第2キャビティ76内の成形材料50は膨張し得る。より具体的には、成形材料50中の気泡が膨張して、成形材料50は全体として膨らみ得る。
【0052】
ところで、実施形態の製造方法では、注入工程及び保圧工程において、成形材料50の中で成形型7の型面近傍にある部分が型面に冷却されるため硬化する。特に、キャビティ幅が小さい部分は、その他の部分に比べてより早く内部まで硬化する。実施形態における取付部領域75のうち脚部用領域75bは、他の部分よりもキャビティ幅が小さい付け根部用領域751bを有する。すなわち、取付部領域75に充填された成形材料50(取付部中間成形体51と呼ぶ)のうち、付け根部用領域751bに充填されている成形材料50(付け根部中間成形体51aと呼ぶ)はより早く内部まで硬化する。したがって、付け根部中間成形体51aでは、気泡が大きく膨らみ難い。
【0053】
また、注入工程及び保圧工程において内部まで硬化する付け根部中間成形体51aが形成されることにより、コアバック工程における内圧低下が取付部領域75において起こり難くなる。これは、付け根部中間成形体51aが硬化することにより、取付部領域75が基体領域74、77の容積変化による内圧低下の影響を受け難くなるからである。すると、コアバック工程において、取付部領域75の内圧低下が抑制され、結果として取付部中間成形体51の気泡が大きく膨らみ難くなる。
【0054】
これとは逆に、基体領域74に充填された成形材料50(基体中間成形体55と呼ぶ)の気泡は、コアバック工程において比較的大きく膨らみ、基体中間成形体55自体も比較的大きく膨張する。つまり、基体中間成形体55には比較的大きな気泡が存在し、取付部中間成形体51には大きな気泡はあまり存在しない。換言すると、このとき取付部中間成形体51の密度は、基体中間成形体55の密度よりも大きくなる。
【0055】
したがって、その後取付部中間成形体51および基体中間成形体55を有する発泡樹脂中間成形体を冷却し硬化させると、比較的低密度の基体2と比較的高密度の取付部3とを有する発泡樹脂成形体1が得られる。換言すると、取付部3は密な樹脂部となり、基体2は粗な樹脂部となる。よって、実施形態の製造方法によると、粗な樹脂部からなる基体2によって軽量化を実現することができ、且つ、密な樹脂部からなる取付部3によって取付強度が向上した剛性に優れる発泡樹脂成形体1を得ることができる。
【0056】
また、上記のとおり、実施形態における脚部32に密な樹脂部からなる付け根部33を有することで、基体2と取付部3との一体化を強固なものとすることができる。さらに、付け根部33によって、本体部31の樹脂部を密なものとすることが可能となるため、取付部3の取付強度を向上させることに有利となる。
【0057】
また、実施形態における脚部32は、幅方向及び奥行き方向において、第1側壁32b、第2側壁32d及び第3側壁32cを有する。したがって、実施形態における取付部3は、幅方向及び奥行き方向からの外力に対して、剛性を向上させることに効果的である。さらに、実施形態における脚部32は、脚リブ部5を有する。これにより、幅方向及び奥行き方向からの外力に対して、より効果的に剛性を向上させることが可能である。
【0058】
実施形態の製造方法では、成形材料50における樹脂材料としてポリプロピレンを用い、発泡剤として炭酸水素ナトリウムを用いたが、成形材料50における樹脂材料と発泡剤との組み合わせはこれに限定されない。樹脂材料は熱可塑性樹脂であるのが好ましい。ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(所謂ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(所謂AS樹脂)、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等が例示される。更には、これらの樹脂材料に繊維材を加えた繊維強化プラスチック(所謂FRP)を用いても良い。
【0059】
発泡剤もまた特に限定せず、使用する樹脂材料に応じて、適する発泡性能や発泡温度のものを適宜選択すれば良い。例えば発泡剤としては、熱分解されることで気体を生じる一般的なものを使用できる。或いは、熱により体積の増大するものを使用することも可能である。
【0060】
一般的な発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムおよび炭酸アンモニウム等の無機化合物、アゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビス9イソブチロニトリル、アゾヘキサヒドロベンゾニトリル、および、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、ベンゼンスルフォニルヒドラジド、ベンゼン−1,3−スルフォニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルフォニルヒドラジド、ジフェニルオキシド−4,4’−ジスルフォニルヒドラジド、4,4’−オキシビス9(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)、および、パラトルエンスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,および、N’−ジメチルフタルアミド等のニトロソ化合物、テレフタルアジド、および、p−t−ブチルベンズアジド等のアジド化合物が例示される。
【0061】
熱により体積の増大する発泡剤としては、カプセル発泡剤を挙げることができる。カプセル発泡剤は、熱可塑性樹脂からなる外殻に発泡剤が封入されたものを指す。外殻を構成する熱可塑性樹脂としては塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の共重合体が用いられ、発泡剤としてはイソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシラン等の揮発性有機溶剤が用いられる。なお、当該揮発性有機溶剤は膨張剤とも呼ばれる。
【0062】
何れの場合にも、発泡剤が発泡すること、例えば、発泡剤から気体が生じること、発泡剤と発泡開始剤との化学反応で気体が生じること、或いは気体の体積が増大すること等で、成形材料50中に気泡が形成される。そして、気泡がコアバック工程において膨張または成長することで、本発明の発泡樹脂成形体を得ることができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例であっても、本発明の効果を奏し得る。
【0064】
例えば、実施形態における取付部3は、タッピングスクリュー9を固定する部材を例に挙げたが、取付部はこれに限定されることなく、例えばクリップ座のような、他の部品との嵌合等の取り付け目的で設けられる突起状物として用いることもできる。
【0065】
また、取付部は、本体部から脚部に向かって裾広がりな形状、あるいは、脚部から本体部に向かって先細り形状であってもよい。また、取付部は本体部から脚部まで幅方向及び奥行き方向が同じ場合であってもよい。いずれの場合であっても、脚部における基体との連続部分である付け根部は、その他の部分より肉厚が薄いものであればよい。
【0066】
また、実施形態における本体部31は、中空状の取付孔31aを有する筒状であればよく、円筒状以外の角筒状等の形状であってもよい。また、実施形態における本体部31は、脚部32の頂壁32aの上面の一部が底面となる行き止まり穴であるが、これに代えて、基体2の裏面22まで貫通する貫通孔であってもよい。すなわち、頂壁32aに貫通孔を有するものであってもよい。本体部31の取付孔31aが行き止まり穴であれば、取付部3の剛性向上に有利となる。取付孔31aが貫通孔であれば、成形性に有利となる。
【0067】
また、実施形態における脚部32は、幅方向において2つの立壁(第1側壁32b及び第2側壁32d)と、奥行き方向において1つの立壁(第3側壁32c)とを有するが、更に奥行き方向において第3側壁32cと離間する立壁(第4側壁)を有するものであってもよい。
【0068】
また、実施形態における本体リブ部4及び/又は脚リブ部5は省略されていてもよい。
【0069】
本発明の発泡樹脂成形体は以下のように表現できる。
<1>基体2と、基体2と一体に形成され基体2から突出する取付部3と、を有する発泡樹脂成形体1であって、
取付部3は、相手部材9を挿入可能な取付孔31aを有する本体部31と、一端が本体部31と連続し他端が基体2と連続する脚部32とを備え、
脚部32における他端側33の肉厚は、本体部31の肉厚よりも薄い発泡樹脂成形体1。
<2>取付部3の突出方向に沿った脚部32の断面形状は、倒立U字状である<1>に記載の発泡樹脂成形体1。
<3>取付部3の突出方向に直交する幅方向及び奥行き方向において、脚部32の長さは、本体部31の長さよりも大きい<2>に記載の発泡樹脂成形体1。
<4>脚部32は、基体2から立設された複数の側壁32b、32c、32dと、側壁32b、32c、32dを繋ぎ本体部31に接続する頂壁32aと、側壁32b、32c、32d及び基体2を繋ぐ脚リブ部5と、を有する<2>又は<3>に記載の発泡樹脂成形体1。
<5>脚部32における他端側33の肉厚は、0.5mm以上1.0mm未満である<1>〜<4>の何れか一つに記載の発泡樹脂成形体1。
<6>本体部31は筒状である<1>〜<5>の何れか一つに記載の発泡樹脂成形体1。
<7>本体部31は、取付部3の周方向において互いに離間し、且つ、取付部3の突出方向に延びる複数の本体リブ部4を有する<1>〜<6>の何れか一つに記載の発泡樹脂成形体1。