特許第6766730号(P6766730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766730
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ハイブリッド式産業車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/10 20120101AFI20201005BHJP
   B60K 6/365 20071001ALI20201005BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20201005BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20201005BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20201005BHJP
   B66F 9/22 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B60W10/10 900
   B60K6/365ZHV
   B60K6/445
   B60W20/40
   B60L50/16
   B66F9/22 X
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-70113(P2017-70113)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171958(P2018-171958A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】家岡 昇一
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−273515(JP,A)
【文献】 特開2001−112116(JP,A)
【文献】 特開2012−030762(JP,A)
【文献】 特開2015−182512(JP,A)
【文献】 特開2008−223306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−20/50
B60K 6/20− 6/547
B60L 1/00−58/40
B66F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータにより駆動されるエンジンと、前記モータ及び前記エンジンの少なくとも一方により駆動される油圧ポンプとを備えたハイブリッド式産業車両において、
前記モータの回転軸、前記エンジンの回転軸及び前記油圧ポンプの回転軸とそれぞれ接続された3種類のギアを有する遊星歯車機構と、
前記油圧ポンプの回転軸を回転しないように固定する回転軸固定部と、
前記エンジンの始動時に、前記油圧ポンプの回転軸が固定されるように前記回転軸固定部を制御すると共に、前記モータが前記エンジンを正回転させる方向に回転するように前記モータを制御する始動時制御部と
前記エンジンが始動されたかどうかを判断する始動判断部と、
前記始動判断部により前記エンジンが始動されたと判断したときに、前記油圧ポンプの回転軸の固定が解除されるように前記回転軸固定部を制御する始動後制御部とを備え
前記遊星歯車機構は、サンギアと、リングギアと、前記サンギア及び前記リングギアと噛み合う複数のプラネタリギアとを有し、
前記モータの回転軸は、前記サンギアに接続され、
前記エンジンの回転軸は、前記リングギアに接続され、
前記油圧ポンプの回転軸は、前記プラネタリギアに接続され、
前記始動時制御部は、前記モータを逆回転させるように制御し、
前記始動後制御部は、前記油圧ポンプの回転軸の固定が解除されるように前記回転軸固定部を制御した後、前記モータの回転数が正回転側に変更されるように前記モータを制御することを特徴とするハイブリッド式産業車両。
【請求項2】
モータと、前記モータにより駆動されるエンジンと、前記モータ及び前記エンジンの少なくとも一方により駆動される油圧ポンプとを備えたハイブリッド式産業車両において、
前記モータの回転軸、前記エンジンの回転軸及び前記油圧ポンプの回転軸とそれぞれ接続された3種類のギアを有する遊星歯車機構と、
前記油圧ポンプの回転軸を回転しないように固定する回転軸固定部と、
前記エンジンの始動時に、前記油圧ポンプの回転軸が固定されるように前記回転軸固定部を制御すると共に、前記モータが前記エンジンを正回転させる方向に回転するように前記モータを制御する始動時制御部と、
前記エンジンが始動されたかどうかを判断する始動判断部と、
前記始動判断部により前記エンジンが始動されたと判断したときに、前記油圧ポンプの回転軸の固定が解除されるように前記回転軸固定部を制御する始動後制御部とを備
前記遊星歯車機構は、サンギアと、リングギアと、前記サンギア及び前記リングギアと噛み合う複数のプラネタリギアとを有し、
前記モータの回転軸は、前記リングギアに接続され、
前記エンジンの回転軸は、前記サンギアに接続され、
前記油圧ポンプの回転軸は、前記プラネタリギアに接続され、
前記始動時制御部は、前記モータを逆回転させるように制御し、
前記始動後制御部は、前記油圧ポンプの回転軸の固定が解除されるように前記回転軸固定部を制御した後、前記モータの回転数が正回転側に変更されるように前記モータを制御することを特徴とするハイブリッド式産業車両。
【請求項3】
前記回転軸固定部は、前記油圧ポンプの吐出口に接続された開閉弁であることを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド式産業車両
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド式産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド式産業車両としては、例えば特許文献1に記載されているようなハイブリッド式油圧ショベルが知られている。特許文献1に記載のハイブリッド式油圧ショベルは、エンジンと、電動機(モータ)と、油圧ポンプとを備えている。エンジンの回転軸は、遊星歯車機構の外輪ギアに接続されている。モータの回転軸は、遊星歯車機構の太陽ギアに接続されている。油圧ポンプの回転軸は、遊星歯車機構の遊星キャリアに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−223306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術のようなハイブリッド式産業車両においては、モータによりエンジンを始動させるときは、モータを正回転させてエンジン及び油圧ポンプの回転数を上昇させる。このとき、例えば作動油の温度低下により作動油の粘度が高くなると、油圧ポンプの回転軸の負荷が大きくなる。この場合には、油圧ポンプの回転数が上昇せず、遊星歯車機構の特性から結果的にエンジンを逆回転させてしまうことがある。
【0005】
本発明の目的は、モータによりエンジンを始動させる際に、エンジンを確実に正回転させることができるハイブリッド式産業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、モータと、モータにより駆動されるエンジンと、モータ及びエンジンの少なくとも一方により駆動される油圧ポンプとを備えたハイブリッド式産業車両において、モータの回転軸、エンジンの回転軸及び油圧ポンプの回転軸とそれぞれ接続された3種類のギアを有する遊星歯車機構と、油圧ポンプの回転軸を回転しないように固定する回転軸固定部と、エンジンの始動時に、油圧ポンプの回転軸が固定されるように回転軸固定部を制御すると共に、モータがエンジンを正回転させる方向に回転するようにモータを制御する始動時制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
このようなハイブリッド式産業車両においては、エンジンの始動時に、回転軸固定部により油圧ポンプの回転軸が回転しないように固定される共に、モータがエンジンを正回転させる方向に回転する。このため、エンジンが逆回転することは無い。これにより、モータによりエンジンを始動させる際に、エンジンが確実に正回転するようになる。
【0008】
ハイブリッド式産業車両は、エンジンが始動されたかどうかを判断する始動判断部と、始動判断部によりエンジンが始動されたと判断したときに、油圧ポンプの回転軸の固定が解除されるように回転軸固定部を制御する始動後制御部とを更に備えてもよい。このような構成では、エンジンが始動された後は、油圧ポンプの回転軸の固定が解除されるため、油圧ポンプの回転数を上昇させることができる。
【0009】
遊星歯車機構は、サンギアと、リングギアと、サンギア及びリングギアと噛み合う複数のプラネタリギアとを有し、モータの回転軸は、サンギアに接続され、エンジンの回転軸は、リングギアに接続され、油圧ポンプの回転軸は、プラネタリギアに接続され、始動時制御部は、モータを逆回転させるように制御してもよい。このような構成では、モータ、エンジン及び油圧ポンプを遊星歯車機構に組み付けやすい。また、油圧ポンプの回転軸を固定した状態でモータを逆回転させることにより、エンジンが確実に正回転する。
【0010】
遊星歯車機構は、サンギアと、リングギアと、サンギア及びリングギアと噛み合う複数のプラネタリギアとを有し、モータの回転軸は、リングギアに接続され、エンジンの回転軸は、サンギアに接続され、油圧ポンプの回転軸は、プラネタリギアに接続され、始動時制御部は、モータを逆回転させるように制御してもよい。このような構成でも、モータ、エンジン及び油圧ポンプを遊星歯車機構に組み付けやすい。また、油圧ポンプの回転軸を固定した状態でモータを逆回転させることにより、エンジンが確実に正回転する。
【0011】
始動後制御部は、油圧ポンプの回転軸の固定が解除されるように回転軸固定部を制御した後、モータの回転数が正回転側に変更されるようにモータを制御してもよい。このような構成では、エンジンが始動された後に、エンジンの回転数を変更すること無く、油圧ポンプの回転数を上昇させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モータによりエンジンを始動させる際に、エンジンを確実に正回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド式産業車両を示す概略構成図である。
図2】遊星歯車機構の構造を示す図である。
図3】コントローラにより実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
図4】モータによるエンジンの始動時において、モータの回転数とエンジンの回転数と油圧ポンプの回転数との関係を表す共線図である。
図5図4に示された構成との比較例を表す共線図である。
図6図4に示された構成の変形例を表す共線図である。
図7図4に示された構成の他の変形例を表す共線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド式産業車両を示す概略構成図である。図1において、本実施形態のハイブリッド式産業車両1は、例えば油圧を利用して荷役を行うハイブリッド式フォークリフトである。なお、ここでいう産業車両には、油圧ショベル等の建設機械も含まれる。
【0016】
ハイブリッド式産業車両1は、モータジェネレータ2(以下、単にモータ2という)と、電動機として働くモータ2により駆動されると共に、発電機として働くモータ2を回転させるエンジン3と、モータ2及びエンジン3の少なくとも一方により駆動される油圧ポンプ4とを備えている。モータ2は、回転軸2aを有している。エンジン3は、回転軸3aを有している。油圧ポンプ4は、回転軸4aを有している。
【0017】
また、ハイブリッド式産業車両1は、遊星歯車機構5を備えている。遊星歯車機構5は、図2に示されるように、サンギア6と、このサンギア6の周囲に配置されたリングギア7と、サンギア6とリングギア7との間に配置され、サンギア6及びリングギア7と噛み合う複数(ここでは3つ)のプラネタリギア8とを有している。複数のプラネタリギア8には、プラネタリキャリア8Aが連結されている。サンギア6、リングギア7及びプラネタリギア8は、3種類のギアに相当する。
【0018】
モータ2の回転軸2aは、サンギア6に接続されている。エンジン3の回転軸3aは、リングギア7に接続されている。油圧ポンプ4の回転軸4aは、プラネタリキャリア8Aを介して各プラネタリギア8に接続されている。
【0019】
モータ2は、インバータ9を介してバッテリ10と接続されていると共に、インバータ9,11を介して走行モータ12と接続されている。エンジン3によりモータ2が回されると、モータ2が発電し、モータ2から発生した電力がインバータ9を介してバッテリ10に蓄えられる。そして、バッテリ10に蓄えられた電力がインバータ11を介して走行モータ12に供給されることで、走行モータ12が回転駆動される。これにより、車輪(図示せず)が回転する。
【0020】
油圧ポンプ4は、コントロールバルブ13を介して油圧シリンダ14と接続されている。油圧シリンダ14は、リフトシリンダ及びティルトシリンダである。油圧シリンダ14は、油圧ポンプ4から吐出される作動油によって動作する。
【0021】
また、ハイブリッド式産業車両1は、油圧ポンプ4の回転軸4aを回転しないように固定する回転軸固定部15を備えている。回転軸固定部15は、例えば油圧ポンプ4の回転軸4aを制動するブレーキである。
【0022】
また、ハイブリッド式産業車両1は、エンジン始動スイッチ16と、コントローラ17とを備えている。エンジン始動スイッチ16は、エンジン3を始動するための手動操作スイッチである。
【0023】
コントローラ17は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等で構成されている。コントローラ17は、エンジン始動スイッチ16の操作信号に基づいて、モータ2及び回転軸固定部15を制御する。コントローラ17は、始動時制御部18と、始動判断部19と、始動後制御部20とを有している。
【0024】
始動時制御部18は、エンジン3の始動時に、油圧ポンプ4の回転軸4aが固定されるように回転軸固定部15を制御すると共に、モータ2がエンジン3を正回転させる方向に回転するようにモータ2を制御する。始動判断部19は、エンジン3が始動されたかどうかを判断する。始動後制御部20は、始動判断部19によりエンジン3が始動されたと判断したときに、油圧ポンプ4の回転軸4aの固定が解除されるように回転軸固定部15を制御する。
【0025】
図3は、コントローラ17により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。図3において、コントローラ17は、まずエンジン始動スイッチ16がONされたかどうかを判断する(手順S101)。
【0026】
コントローラ17は、エンジン始動スイッチ16がONされたと判断したときは、油圧ポンプ4の回転軸4aをロックするように回転軸固定部15を制御する(手順S102)。これにより、油圧ポンプ4が回転することはない。つまり、図4の実線Pで示されるように、各プラネタリギア8に接続された油圧ポンプ4の回転数は0となる。
【0027】
なお、図4は、モータ2によるエンジン3の始動時において、モータ2の回転数とエンジン3の回転数と油圧ポンプ4の回転数との関係を表す共線図である。図4において、0よりも上側の領域は正回転領域であり、0よりも下側の領域は逆回転領域である。エンジン3及び油圧ポンプ4の回転時には、エンジン3及び油圧ポンプ4は正回転する。
【0028】
続いて、コントローラ17は、図4の実線Pで示されるように、サンギア6に接続されたモータ2を逆回転させるように制御する(手順S103)。このとき、コントローラ17は、エンジン3の始動可能回転数(例えば200rpm)に対応する電流指令値をモータ2に出力する。これにより、図4の実線Pで示されるように、リングギア7に接続されたエンジン3は、始動されて正回転するようになる。
【0029】
続いて、コントローラ17は、モータ2の状態に基づいてエンジン3が始動されたかどうかを判断する(手順S104)。エンジン3が始動されてエンジン3の出力トルクが上がり始めると、モータ2の負荷が減少する。そこで、コントローラ17は、モータ2の負荷減少が検出されたときに、エンジン3の回転数が始動可能回転数となり、エンジン3が始動されたと判断する。なお、エンジン3が始動されたかどうかの判断手法としては、特にモータ2の負荷には限られず、モータ2のトルク等を用いてもよい。
【0030】
コントローラ17は、エンジン3が始動されたと判断したときは、油圧ポンプ4の回転軸4aのロックが解除されるように回転軸固定部15を制御する(手順S105)。これにより、油圧ポンプ4が回転可能となる。
【0031】
続いて、コントローラ17は、図4の破線Qで示されるように、モータ2の回転数が正回転側に変更されるようにモータ2を制御する(手順S106)。このとき、逆回転しているモータ2の回転数が下がってもよいし(図示)、逆回転しているモータ2が正回転に切り換わってもよい。これにより、図4の破線Qで示されるように、油圧ポンプ4が正回転するようになる。
【0032】
以上において、手順S101〜S103は、始動時制御部18により実行される。手順S104は、始動判断部19により実行される。手順S105,S106は、始動後制御部20により実行される。
【0033】
図5は、図4に示された構成との比較例を表す共線図である。本比較例では、図5の実線Pで示されるように、モータ2を正回転させることで、エンジン3及び油圧ポンプ4の回転数を上昇させる。
【0034】
ところで、油圧ポンプ4から吐出される作動油の粘度は、温度により変化する。例えば冬場のような低温環境下では、作動油の温度が低いため、作動油の粘度が高くなる。このため、油圧ポンプ4の回転軸4aの負荷が大きくなる。このように油圧ポンプ4の回転軸4aの負荷が大きいと、遊星歯車機構5の特性から、図5の1点鎖線Rで示されるように、油圧ポンプ4の回転数が所望の回転数まで上昇せず、結果的にエンジン3が逆回転してしまう。また、モータ2によりエンジン3及び油圧ポンプ4を回転させるため、モータ2の負荷が大きくなる。
【0035】
このような不具合に対し、本実施形態では、エンジン3の始動時に、回転軸固定部15により油圧ポンプ4の回転軸4aが回転しないように固定される共に、モータ2がエンジン3を正回転させる方向に回転する。このため、エンジン3が逆回転することは無い。これにより、モータ2によりエンジン3を始動させる際に、エンジン3が確実に正回転するようになる。
【0036】
また、エンジン3の始動時には、モータ2によりエンジン3のみを回転させるため、モータ2の負荷が低減される。これにより、特にバッテリ10の出力が取れ難い低温時に有利となる。
【0037】
また、本実施形態では、エンジン3が始動された後は、油圧ポンプ4の回転軸4aの固定が解除されるため、油圧ポンプ4の回転数を上昇させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、モータ2がサンギア6に接続され、エンジン3がリングギア7に接続され、油圧ポンプ4がプラネタリギア8に接続されているので、モータ2、エンジン3及び油圧ポンプ4を遊星歯車機構5に組み付けやすい。また、油圧ポンプ4の回転軸4aを固定した状態でモータ2を逆回転させることにより、エンジン3が確実に正回転する。
【0039】
また、本実施形態では、油圧ポンプ4の回転軸4aの固定が解除された後、モータ2の回転数が正回転側に変更されるようにモータ2が制御されるので、エンジン3が始動された後に、エンジン3の回転数を変更すること無く、油圧ポンプ4の回転数を上昇させることができる。
【0040】
図6は、図4に示された構成の変形例を表す共線図である。図6において、モータ2はリングギア7に接続され、エンジン3はサンギア6に接続され、油圧ポンプ4はプラネタリギア8に接続されている。このような構成でも、モータ2、エンジン3及び油圧ポンプ4を遊星歯車機構5に組み付けやすい。また、エンジン3の始動時に、回転軸固定部15により油圧ポンプ4の回転軸4aが回転しないように固定される共に、モータ2が逆回転することでエンジン3が正回転する。
【0041】
図7(a)は、図4に示された構成の他の変形例を表す共線図である。図7(a)において、モータ2はプラネタリギア8に接続され、エンジン3はリングギア7に接続され、油圧ポンプ4はサンギア6に接続されている。なお、エンジン3がサンギア6に接続され、油圧ポンプ4がリングギア7に接続されてもよい。
【0042】
エンジン3の始動時には、実線Pで示されるように、回転軸固定部15により油圧ポンプ4の回転軸4aが回転しないように固定される共に、モータ2が正回転することでエンジン3が正回転する。エンジン3の始動後には、破線Qで示されるように、油圧ポンプ4の回転軸4aの固定が解除された状態で、モータ2の回転数を上げることで、油圧ポンプ4が正回転するようになる。
【0043】
図7(b)は、図4に示された構成の更に他の変形例を表す共線図である。図7(b)において、モータ2はリングギア7に接続され、エンジン3はプラネタリギア8に接続され、油圧ポンプ4はサンギア6に接続されている。なお、モータ2がサンギア6に接続され、油圧ポンプ4がリングギア7に接続されてもよい。
【0044】
エンジン3の始動時には、実線Pで示されるように、回転軸固定部15により油圧ポンプ4の回転軸4aが回転しないように固定される共に、モータ2が正回転することでエンジン3が正回転する。エンジン3の始動後には、破線Qで示されるように、油圧ポンプ4の回転軸4aの固定が解除された状態で、モータ2の回転数を下げることで、油圧ポンプ4が正回転するようになる。なお、エンジン3の回転数を上げることで、油圧ポンプ4を正回転させてもよい。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、油圧ポンプ4の回転軸4aを固定する回転軸固定部15は、ブレーキで構成されているが、回転軸固定部15の構成としては、特にブレーキには限られず、例えば油圧ポンプ4の吐出口に接続された開閉弁であってもよい。この場合には、開閉弁が閉弁されることで、油圧ポンプ4の出力が閉塞されるため、油圧ポンプ4の回転軸4aが回転しなくなる。
【0046】
また、上記実施形態では、エンジン3によりモータ2が発電されてバッテリ10に蓄えられた電力が走行モータ12に供給されることで、走行モータ12が回転駆動されて車輪(図示せず)が回転するが、車輪を回転させる駆動機構としては、特にそれには限られない。例えばエンジン3により油圧ポンプ4を駆動して油圧を発生させ、その油圧により油圧モータを回転駆動させることで、車輪を回転させてもよいし、或いはエンジン3からの動力をトランスミッション及びドライブシャフトを介して車輪に伝達することで、車輪を回転させてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…ハイブリッド式産業車両、2…モータジェネレータ(モータ)、2a…回転軸、3…エンジン、3a…回転軸、4…油圧ポンプ、4a…回転軸、5…遊星歯車機構、6…サンギア、7…リングギア、8…プラネタリギア、15…回転軸固定部、18…始動時制御部、19…始動判断部、20…始動後制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7