(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766764
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
H01R 9/00 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
H01R9/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-131043(P2017-131043)
(22)【出願日】2017年7月4日
(65)【公開番号】特開2019-16447(P2019-16447A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】村井 完
【審査官】
山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−160619(JP,A)
【文献】
特開平07−269530(JP,A)
【文献】
特開2017−082843(JP,A)
【文献】
米国特許第05255647(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0106257(US,A1)
【文献】
特開2008−304023(JP,A)
【文献】
特開2012−251583(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/117062(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00
H01R 13/46
H01R 13/73
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなし、カラー装着孔が開口して設けられている台座部と、
前記カラー装着孔に装着され、筒状をなすカラーと、を備える端子台であって、
前記カラーの内面は、前記カラー装着孔の一方の開口部から前記カラー装着孔の他方の開口部に向けて、内径が小さくなるテーパー状をなし、且つ、前記他方の開口部から前記一方の開口部に向けて、内径が小さくなるテーパー状をなしている端子台。
【請求項2】
板状をなし、カラー装着孔が開口して設けられている台座部と、
前記カラー装着孔に装着され、筒状をなすカラーと、を備える端子台であって、
前記カラーの内面は、前記カラー装着孔の一方の開口部から前記カラー装着孔の他方の開口部に向けて、内径が小さくなるテーパー状をなしており、
前記カラーは、前記台座部内に埋設される埋設部を有しており、
前記埋設部の外面は、前記一方の開口部から前記他方の開口部に向けて、外径が大きくなるテーパー状をなし、且つ、前記他方の開口部から前記一方の開口部に向けて、外径が大きくなるテーパー状をなしている端子台。
【請求項3】
前記カラーは、前記台座部内に埋設される埋設部を有しており、
前記埋設部の外面は、前記一方の開口部から前記他方の開口部に向けて、外径が大きくなるテーパー状をなし、且つ、前記他方の開口部から前記一方の開口部に向けて、外径が大きくなるテーパー状をなしている請求項1に記載の端子台。
【請求項4】
前記カラーは、前記一方の開口部から前記カラーの軸方向に向けて突出する一方の突出部と、前記他方の開口部から前記カラーの軸方向に向けて突出する他方の突出部と、を有しており、
前記一方の突出部は、前記一方の開口部の開口縁に向けて外径が大きくなるテーパー状をなしており、
前記他方の突出部は、前記他方の開口部の開口縁に向けて外径が大きくなるテーパー状をなしている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の端子台の一例として、特開2011−160619号(下記特許文献1)に記載の回転電機用端子台が知られている。この回転電機用端子台は、板状をなす台座部と、台座部上に設けられた信号用コネクタとを備えている。台座部の四隅には、インサート成形により、4つのカラーが埋め込まれている。
【0003】
台座部にインサート成形により4つのカラーを埋め込む際、一般的に、台座部の金型の四隅に、凸部を設けおく。次に、金型の四隅の凸部にそれぞれカラーを挿通しておき、金型に樹脂を流し込む。これにより、4つのカラーが台座部に埋め込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−160619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、樹脂成形すると部位ごとに樹脂の量が偏るため、これにより、板状の台座部が上方又は下方のいずれかの方向に反ってしまう。この反りを解消するには、予め台座部を、反る方向と反対の方向に反らせた状態で成形する必要がある。
しかしながら、台座部を反らせた状態で成形するには、金型の台座部の部分に傾斜を持たせる必要があるが、金型の台座部の部分に傾斜を持たせると金型の四隅の突起部も傾かせる必要がある。そのため、金型に樹脂を流し込み、成形後に金型を抜こうとすると、突起部がカラーに引っかかって金型が抜けなくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される端子台は、板状をなし、カラー装着孔が開口して設けられている台座部と、前記カラー装着孔に装着され、筒状をなすカラーと、を備える端子台であって、前記カラーの内面は、一方の開口部から他方の開口部に向けて、内径が小さくなるテーパー状をなしている。
【0007】
板状の台座部を樹脂成形により形成すると、台座部内の樹脂の偏りにより、上方または下方のいずれかに反る場合がある。このような反りを解消するには、反る方向と反対の方向に予め台座部を反らせて樹脂成形する必要がある。そのためには、台座部の金型に傾きを持たせることで、台座部を反対方向に反らせることができるが、金型のカラーを挿通する突起部も併せて傾かせる必要がある。このため、従来のように、カラーの内面にテーパーが設けられていないと、金型の突起部がカラーの内面に引っかかり、カラーが金型の突起部から抜けなくなってしまう。しかし、上記構成のように、カラーの内面にテーパーを持たせると、金型の突起部がカラーの内面に引っかかることなく、カラーを突起部から抜くことができる。
【0008】
また、前記カラーの内面は、前記他方の開口部から前記一方の開口部に向けて、内径が小さくなるテーパー状をなしていることとしても良い。
【0009】
このように構成することで、金型の突起部にカラーをセットする際、カラーの向きに関わらずカラーをセットすることが可能となり、カラーをセットする際の作業性を向上させることができる。
【0010】
また、前記カラーは、前記台座部内に埋設される埋設部を有しており、前記埋設部の外面は、前記一方の開口部から前記他方の開口部に向けて、外径が大きくなるテーパー状をなし、且つ、前記他方の開口部から前記一方の開口部に向けて、外径が大きくなるテーパー状をなしていることとしても良い。
【0011】
例えば、カラーに対して応力が加わっても、カラーの埋設部の外面に設けられたテーパー状の部分がカラー装着孔の内面に引っかかることで、カラーが抜けずに保持される。このように、カラーの外面にテーパー状の部分を設けることで、カラーの保持力を向上させることができる。
【0012】
また、前記カラーは、前記一方の開口部から前記カラーの軸方向に向けて突出する一方の突出部と、前記他方の開口部から前記カラーの軸方向に向けて突出する他方の突出部と、を有しており、前記一方の突出部は、前記一方の開口部の開口縁に向けて外径が大きくなるテーパー状をなしており、前記他方の突出部は、前記他方の開口部の開口縁に向けて外径が大きくなるテーパー状をなしていることとしても良い。
【0013】
カラーにネジを挿通して端子台を固定する際、ネジの頭部が台座部の樹脂部を傷つけないようにするため、カラーの端部を、カラー装着孔の開口部から突出させる場合がある。従来のように、カラーの突出部にテーパーが設けられていないとすると、カラーが、金型の突起部に引っかかり、カラーが金型から抜けなくなってしまう。しかし、上記構成のように、カラーの突出部に開口部の開口縁に向けて外径が大きくなるテーパーを設けることで、カラーを突起部から抜くことができる。
【発明の効果】
【0014】
本明細書に開示される端子台によれば、カラーが装着された台座部を上方又は下方に反らせた状態で台座部を樹脂成形しても、カラーが挿通される金型の突起部が抜けなくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】図
2の台座部が反っていない状態におけるA−A断面図
【
図4】図
2の台座部が下方に反っている状態におけるA−A断面図
【
図5】図
2の台座部が上方に反っている状態におけるA−A断面図
【
図6】図
2の台座部が上方に反っている状態から反っていない状態への変化を表したA−A断面図
【
図8】従来のカラーを用いた場合における金型に樹脂注入後のカラー付近の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
図1から
図8を参照して本実施形態を説明する。
本実施形態の端子台1は、
図1に示すように、台座部10と、ハウジング11とを備えている。以降の説明では、
図3の図示上側を上方向とし、図示右側を右方向とする。
【0017】
台座部10は、
図1に示すように、長方形状の板状をなしている。ハウジング11は、平面視方形状をなしており、台座部10の中央から上方に突出して設けられている。台座部10及び、ハウジング11は、樹脂成形により一体に形成されている。
【0018】
後述する金型30に樹脂を注入直後の台座部10及びハウジング11は、
図1に示すように平行な形状をなしているが、端子台1内の樹脂の偏りにより、一定時間が経過し樹脂が固まると、上方又は下方のいずれかの方向に反ってしまう。例えば、本実施例においては、
図4に示すように、端子台1aの台座部10a及びハウジング11aは下方に反った形状となる。この反りを解消するには、
図5に示すように、端子台1bの台座部10b及びハウジング11bを、予め上方に反らせた形状で樹脂成形を行う。これにより、一定時間が経過し樹脂が固まると、
図6に示すように、台座部10及びハウジング11は平行な形状となる。
【0019】
台座部10の四隅には、カラー装着孔12がそれぞれ開口して設けられている。それぞれのカラー装着孔12には、金属製のカラー20がインサート成形により装着されている。
【0020】
カラー20は、
図1、
図3に示すように、筒状をなしており、カラー装着孔12の上下の開口部13からそれぞれ上下に突出する突出部21と、カラー装着孔12の内部に埋設されている埋設部22とから構成されている。
【0021】
カラー20の内面には、
図3に示すように、カラー20の上側の端部25から、下方に向けて内径が小さくなる内面テーパー部23が設けられている。また、カラー20の内面には、カラー20の下側の端部25から上方に向けて内径が小さくなる内面テーパー部23が設けられている。このように構成することで、後述する下側の金型50の突起部51にカラー20をセットする際、カラー20の向きに関わらずカラー20をセットすることが可能となり、カラー20を下側の金型50にセットする際の作業性を向上させることができる。
【0022】
カラー20の外面には、
図3に示すように、カラー20の上側の端部25から、下方に向けて外径が大きくなる外面テーパー部24が設けられている。また、カラー20の外面には、カラー20の下側の端部25から上方に向けて外径が大きくなる外面テーパー部24が設けられている。このように構成することで、例えば、カラー20に対して応力が加わっても、外面テーパー部24がカラー装着孔12の内面に引っかかることで、カラー20が抜けずに保持される。このように、外面テーパー部24を設けることで、カラー20の保持力を向上させることができる。
【0023】
内面テーパー部23の傾斜角度及び、外面テーパー部24の傾斜角度は、上方に反らせた状態における台座部10bの傾斜角度よりも大きくなっている。これにより、端子台1の樹脂成形の際、カラー20に挿入された後述する上側の金型40の突起部41及び下側の金型50の突起部51をカラー20から引き抜くことができるようになる。
【0024】
端子台1の樹脂成形は、
図7に示すように、金型30に樹脂を注入して行う。金型30は、上側の金型40と下側の金型50とから構成されている。
【0025】
下側の金型50の台座部10を形成する台座面52は、台座部10を上方に反らせるため、やや傾斜を持たせてある。下側の金型50には、台座面52から法線方向に向けて突出する突起部51が設けられている。また、突起部51の基端部周辺には、台座面52から凹んで溝状をなす凹部53が設けられている。
【0026】
下側の金型50の突起部51は、台座面52の法線方向上側に向かう程細くなる円錐台状をなしている。また、下側の金型50の凹部53は、突起部51の外周面と径方向に対向する内周面54を有し、この内周面54は、台座面52の法線方向下側に向かうほど径が小さくなるテーパー状をなしている。
【0027】
上側の金型40は、下側の金型50と上下対照となっており、下側の金型50と同様、上側の金型40にも、突起部41、台座面42、及び凹部43が設けられている。また、上側の金型40の凹部43は、下側の金型50の凹部53と同様、突起部41の外周面と径方向に対抗する内周面44を有している。
【0028】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図7に示すように、カラー20を下側の金型50の突起部51に挿入すると、カラー20の下側の端部25は下側の金型50の凹部53の底面に当接する。
また、カラー20の下側の外面テーパー部24は、下側の金型50の凹部53の内周面54に当接し、下側の内面テーパー部23は、下側の金型50の突起部51の外周面に当接する。
【0029】
次に、上側の金型40を下方に降ろし、上側の金型40の突起部41をカラー20に挿入すると、カラー20の上側の端部25は上側の金型40の凹部43の天井面に当接する。また、カラー20の上側の外面テーパー部24は、上側の金型40の凹部43の内周面44に当接し、上側の内面テーパー部23は、上側の金型40の突起部41の外周面に当接する。
【0030】
次に、金型30に樹脂を注入する。樹脂が固まったら、上側の金型40を上げる。この時、カラー20には内面テーパー部23、及び外面テーパー部24が設けられているため、アンダーカットにならずに、上側の金型40の突起部41をカラー20から抜くことができる。同様に、下側の金型50の突起部51もカラー20から抜くことができる。端子台1bを金型30から抜き、一定時間が経過すると、
図6に示すように、端子台1bの台座部10b及びハウジング11bは下方に反り、平行な形状(台座部10及びハウジング11の形状)となる。
【0031】
一方、従来のように、内面テーパー部23及び外面テーパー部24が設けられていない構成のカラー20aを金型30aにセットし、樹脂成形したとすると、
図8に示すように、上側の金型40aの突起部41a及び凹部43aがカラー20aの内面及び外面に引っかかるため、上側の金型40aをカラー20aから引き抜くことはできない。同様に、下側の金型50aの突起部51aも、カラー20aから引き抜くことはできない。
【0032】
以上のように本実施形態によれば、板状の台座部10を樹脂成形により形成すると、台座部10内の樹脂の偏りにより、上方または下方のいずれかに反る場合がある。このような反りを解消するには、反る方向と反対の方向に予め台座部10を反らせて樹脂成形する必要がある。そのためには、台座部10の金型30に傾きを持たせることで、台座部10を反対方向に反らせることができるが、金型30のカラー20を挿通する突起部41、51も併せて傾かせる必要がある。このため、従来のように、カラー20aの内面にテーパーが設けられていないと、金型30aの突起部41a、51aがカラー20aの内面に引っかかり、カラー20aが金型30aの突起部41a、51aから抜けなくなってしまう。しかし、上記構成のように、カラー20の内面にテーパー(内面テーパー部23)を持たせると、金型30の突起部41、51がカラー20の内面に引っかかることなく、カラー20を突起部41、51から抜くことができる。
【0033】
また、金型30の突起部51にカラー20をセットする際、カラー20の向きに関わらずカラー20をセットすることが可能となり、カラー20をセットする際の作業性を向上させることができる。
【0034】
例えば、カラー20に対して応力が加わっても、カラー20の埋設部22の外面に設けられたテーパー状の部分(外面テーパー部24)がカラー装着孔12の内面に引っかかることで、カラー20が抜けずに保持される。このように、カラー20の外面にテーパー状の部分(外面テーパー部24)を設けることで、カラー20の保持力を向上させることができる。
【0035】
また、カラー20にネジを挿通して端子台1を固定する際、ネジの頭部が台座部10の樹脂部を傷つけないようにするため、カラー20の端部25を、カラー装着孔12の開口部13から突出させる場合がある。従来のように、カラー20aの突出部21aにテーパーが設けられていないとすると、カラー20aが、金型30aの突起部41a、51aに引っかかり、カラー20aが金型30aから抜けなくなってしまう。しかし、上記構成のように、カラー20の突出部21に開口部13の開口縁14に向けて外径が大きくなるテーパー(外面テーパー部24)を設けることで、カラー20を突起部41、51から抜くことができる。
【0036】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、カラー20は、カラー装着孔12の上下の開口部13からそれぞれ上下に突出する突出部21を有していたが、突出させない構成としても良い。
(2)上記実施形態では、カラー20の埋設部22の外面はテーパー状をなしていることとしたが、埋設部の外面の形状は問わず、テーパーを設けない構成としても良い。また、カラーの台座部への保持力を確保するために、埋設部の外面にフランジを設けてカラーの保持力を向上させる構成としても良い。
(3)カラー20の内面テーパー部23は、上側の端部25から下方に向かって内径が小さくなり、且つ、下側の端部25から上方に向かって内径が小さくなることとしたが、上側又は下側のいずれか一方のみから他方に向かって内径が小さくなることとしても良い。
【符号の説明】
【0037】
1,1a,1b…端子台
10,10a,10b…台座部
12…カラー装着孔
13…開口部
14…開口縁
20,20a…カラー
21,21a…突出部
22…埋設部