(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766902
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】軸受押さえ板、及び、それを用いた回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/173 20060101AFI20201005BHJP
F16C 27/00 20060101ALI20201005BHJP
F16C 35/077 20060101ALI20201005BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20201005BHJP
F16F 1/18 20060101ALI20201005BHJP
H02K 5/24 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
H02K5/173 A
F16C27/00 Z
F16C35/077
F16C19/06
F16F1/18 Z
H02K5/24 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-12388(P2019-12388)
(22)【出願日】2019年1月28日
(65)【公開番号】特開2020-120558(P2020-120558A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2019年10月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(72)【発明者】
【氏名】清水 瑛史
(72)【発明者】
【氏名】永田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 崇志
(72)【発明者】
【氏名】内藤 好晴
【審査官】
末續 礼子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−053413(JP,A)
【文献】
特開2017−180649(JP,A)
【文献】
特開平10−220553(JP,A)
【文献】
特開2012−189195(JP,A)
【文献】
特開平02−202332(JP,A)
【文献】
特開2018−200077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
F16C 19/06
F16C 27/00
F16C 35/077
F16F 1/18
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を支持する転がり軸受の外輪に当接する環状の内輪部と、
前記内輪部の半径方向外側に位置し、複数のボルトで固定部側に固定するための複数のボルト孔が形成された環状の外輪部と、
周方向における前記ボルト孔以外の位置にて、前記内輪部と前記外輪部とを一体的に繋ぐブリッジ部とを備え、
前記ブリッジ部の周方向を向く面は、半径方向中央から半径方向両端に向けて拡径するように湾曲形成され、
前記ブリッジ部が、前記内輪部および前記外輪部と曲線的に接続し、
前記ブリッジ部の周方向を向く面と前記内輪部との接続部分よりも、前記ブリッジ部の周方向を向く面と前記外輪部との接続部分の方が大きな曲率半径であることを特徴とする軸受抑え板。
【請求項2】
前記ブリッジ部が、周方向における、隣り合う二つの前記ボルト孔間の中央位置に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の軸受押さえ板。
【請求項3】
複数の前記ボルト孔が周方向において等間隔に形成される
ことを特徴とする請求項1または2記載の軸受押さえ板。
【請求項4】
前記外輪部には半径方向内側に向けて拡張された拡張部が複数形成されており、複数の前記ボルト孔は各前記拡張部にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の軸受押さえ板。
【請求項5】
ハウジングに設置され、内輪に前記回転軸を抱持する前記転がり軸受の前記外輪を、請求項1から4のいずれか一項に記載の軸受押さえ板で前記ハウジングに対し押さえつけて固定した
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受押さえ板、及び、それを用いた回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機は、例えば特許文献1に開示されるように、ハウジングの軸受収納(収容)部に設置され回転軸を支持する負荷側軸受、及び、この負荷側軸受に対し反負荷側から当接するようにハウジングに固定される円環状の軸受押さえ板を有している。なお、この軸受押さえ板は、負荷側軸受が軸受収納部から脱落することを防止するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004‐232774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の軸受押さえ板は、ボルト締結によってハウジングに固定されている。このような従来の回転電機に対し、振動等による荷重が印加されると、軸受押さえ板のボルト孔に応力が集中し、ボルト孔に挿入されたボルトが破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記技術的課題に鑑み、振動等による荷重が印加された場合の応力を分散し、ボルトの破損を防止することを可能とする軸受押さえ板及びそれを用いた回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明に係る軸受押さえ板は、
回転軸を支持する転がり軸受の外輪に当接する環状の内輪部と、
前記内輪部の半径方向外側に位置し、複数のボルトで固定部側に固定するための複数のボルト孔が形成された環状の外輪部と、
周方向における前記ボルト孔以外の位置にて、前記内輪部と前記外輪部とを一体的に繋ぐブリッジ部とを備える
ことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するための第2の発明に係る軸受押さえ板は、
上記第1の発明に係る軸受押さえ板において、
前記ブリッジ部が前記内輪部及び前記外輪部と曲線的に接続している
ことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するための第3の発明に係る軸受押さえ板は、
上記第1又は2の発明に係る軸受押さえ板において、
前記ブリッジ部が、周方向における、隣り合う二つの前記ボルト孔間の中央位置に形成される
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するための第4の発明に係る軸受押さえ板は、
上記第1から3のいずれか一つの発明に係る軸受押さえ板において、
複数の前記ボルト孔が周方向において等間隔に形成される
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するための第5の発明に係る軸受押さえ板は、
上記第1から4のいずれか一つの発明に係る軸受押さえ板において、
前記外輪部には半径方向内側に向けて拡張された拡張部が複数形成されており、複数の前記ボルト孔は各前記拡張部にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するための第6の発明に係る軸受押さえ板は、
上記第1から5のいずれか一つの発明に係る軸受押さえ板において、
前記ブリッジ部と前記内輪部との接続部分よりも、前記ブリッジ部と前記外輪部との接続部分の方が、大きな曲率半径である
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するための第7の発明に係る回転電機は、
ハウジングに設置され、内輪に前記回転軸を抱持する前記転がり軸受の前記外輪を、上記第1から6のいずれか一つの発明に記載の軸受押さえ板で前記ハウジングに対し押さえつけて固定した
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る軸受押さえ板及び回転電機によれば、振動等による荷重が印加された場合の軸受押さえ板における応力を分散し、軸受押さえ板をハウジングカバーに締結するボルトの破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係る回転電機を表す概略的断面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る軸受押さえ板の正面図である。
【
図3】本発明の実施例における、軸受、軸受押さえ板、及びハウジングカバーを表す斜視図である。
【
図4】本発明の実施例に係る軸受押さえ板の応力分布をシミュレーションした部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る軸受押さえ板及び回転電機について、実施例にて図面を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
まず、本実施例に係る回転電機の構成を、
図1を用いて説明する。
図1の概略的断面図に示すように、本実施例に係る回転電機は、基本的な構成として、回転子1及びその外周に位置する固定子(図示略)が内包されるハウジング(固定部側)2と、ハウジング2に設けられる軸受3A,3Bと、軸受3A,3Bを介してハウジング2に回転自在に支持される回転軸4と、ハウジング2の負荷側にボルト締結により固定される軸受押さえ板5とを備えている。
【0017】
ハウジング2は、負荷側(軸方向一端側)に設置されるハウジング本体2A、及び、ハウジング本体2Aに対し反負荷側から取り付けられるハウジングカバー2Bから成るものである。
【0018】
ハウジング本体2Aには、回転軸4の負荷側を支持する負荷側軸受3Aが固定されており、ハウジングカバー2Bには回転軸4の反負荷側を支持する反負荷側軸受3Bが設けられている。
【0019】
ハウジングカバー2Bは、反負荷側軸受3Bを収納する軸受収納部6を有している。軸受収納部6は、その内周面が反負荷側軸受3Bの外周面と嵌合し、その反負荷側端部には、半径方向内側に向けて突出する円環状のフランジ6aが形成されており、負荷側は開放された形状となっている。
【0020】
反負荷側軸受3Bは、フランジ6aに対し負荷側から当接するようにして軸受収納部6に(負荷側が開放された状態で)収納され、回転軸4の反負荷側を回転自在に支持する転がり軸受である。
【0021】
次に、
図2,3を用いて軸受押さえ板5の構成について詳述する。軸受押さえ板5は、円環状の内輪部11、内輪部11に対し半径方向外側に位置する円環状の外輪部12、及び、内輪部11と外輪部12とを繋ぐ四つのブリッジ部13を備えている。
【0022】
内輪部11は、その内径が、反負荷側軸受3Bの内径よりも大きくかつ反負荷側軸受3Bの外径よりも小さいものであり、さらに、その外径は、反負荷側軸受3Bの外径よりも大きい形状となっている。そして、この内輪部11は、反負荷側軸受3Bの外輪3Baに対し負荷側から当接するようにして配される。
【0023】
外輪部12には、ボルト12a(
図3ではフランジボルト)によりハウジングカバー2Bに対して負荷側から締結されるボルト孔12bが、周方向において等間隔に四つ形成されている。
【0024】
また、外輪部12には半径方向内側に向けて拡張された拡張部12cが四つ形成されており、四つのボルト孔12bは各拡張部12cにそれぞれ設けられている。なお、拡張部12cは、それぞれボルト12aの頭部に対応する形状となっている。
【0025】
ブリッジ部13は、周方向におけるボルト孔12b以外の位置、好ましくは、周方向における、隣り合う二つのボルト孔12b間の中央位置にて、内輪部11と外輪部12とを一体的に繋ぐようにして半径方向に延伸して形成されている。
【0026】
また、ブリッジ部13のうち、周方向を向く面13aは、ブリッジ部13が半径方向中央から半径方向両端に向けて拡径するように湾曲している。これにより、ブリッジ部13は、平面視において、内輪部11及び外輪部12と曲線的に接続している(
図2中の接続部分A,B)。
【0027】
軸受押さえ板5は、上述の構成とすることで、内輪部11が荷重を受ける部分となり、外輪部12がハウジングカバー2Bにボルト締結される部分となる。
【0028】
上述の構成とした本実施例に係る回転電機は、振動等により(回転子1及び回転軸4の)荷重が印加された際、軸受押さえ板5が、反負荷側軸受3B(特に外輪3Ba)を負荷側から押さえることになり、反負荷側軸受3Bが軸受収納部6から負荷側に脱落してしまうことを防ぐことができる。なお、反負荷側軸受3Bの反負荷側端部にはフランジ6aが配されているため、反負荷側軸受3Bが軸受収納部6の反負荷側に脱落することはない。
【0029】
また上記荷重は、軸受押さえ板5を介してハウジングカバー2Bに伝達される。特許文献1に開示されるような従来の軸受押さえ板では、このときの軸受押さえ板にかかる応力がボルト孔に集中するため、ボルトが破損するおそれがあった。それに対して本実施例では、上記荷重が、軸受押さえ板5において内輪部11からブリッジ部13を介して外輪部12のボルト孔12bに伝達されるため、応力がブリッジ部13と外輪部12との接続部分Bに集中することとなり、ボルト孔12bにかかる応力が緩和される。
図4は、軸受押さえ板5に加わる応力分布をグレースケールで示した部分拡大図(色が濃いほど応力が高い)であり、これを見ると、ボルト孔12bよりも接続部分Bの方が、高い応力が加わっていることがわかる。
【0030】
また、本実施例では、ブリッジ部13が、平面視において内輪部11及び外輪部12と曲線的に接続していることにより、(ブリッジ部13が内輪11及び外輪12と直交している形状に比べて)接続部分の一点に応力が集中することを防ぐことができる。
【0031】
そして、ボルト孔12bは、外輪部12を真円状としその周上に形成するのではなく、外輪部12に拡張部12cを設け、そこにボルト孔12bを形成することで、外輪部12の半径方向の幅を小さくすることができ、省スペース化を図ることができる。
【0032】
さらに、本実施例では、ブリッジ部13と内輪部11との接続部分Aよりもブリッジ部13と外輪部12との接続部分Bの方が、大きな曲率半径に形成されている。仮に接続部分Bを接続部分Aと同じ曲率半径とすると、接続部分Bにおける上記荷重印加時の応力が高くなってしまう。それを緩和するため、接続部分Bの曲率半径を大きくしているのである。
【0033】
なお、本実施例では、軸受押さえ板5にボルト孔12b及びブリッジ部13がそれぞれ四つずつ形成されるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ボルト孔12b及びブリッジ部13は、それぞれ複数(二つ以上)であればいくつであってもよい。
【0034】
また、本実施例において説明したごとく、ブリッジ部13が周方向において隣り合うボルト孔12bの間に配置されていれば、ボルト孔12bの数とブリッジ部13の数とが一致していなくとも成立するが、両者の数は一致していた方がより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、軸受押さえ板、及び、それを用いた回転電機として好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 回転子
2 ハウジング
2A ハウジング本体
2B ハウジングカバー
3A 負荷側軸受
3B 反負荷側軸受
3Ba 外輪
4 回転軸
5 軸受押さえ板
6 軸受収納部
6a フランジ
11 内輪部
12 外輪部
12a ボルト
12b ボルト孔
12c 拡張部
13 ブリッジ部
13a (ブリッジ部13のうち周方向を向く)面
A (ブリッジ部13と内輪部11との)接続部分
B (ブリッジ部13と外輪部12との)接続部分