【文献】
Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya,1988年,(2),pp.392-395
【文献】
Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya,1988年,(2),pp.396-398
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の前記概要は、本開示の各々の開示された実施形態または全ての実装を記述することを意図するものではない。
本開示の後記説明は、実例の実施形態をより具体的に例示する。
本開示のいくつかの箇所では、例示を通してガイダンスが提供され、及びこの例示は、様々な組み合わせにおいて使用できる。
それぞれの場合において、例示の群は、非排他的な、及び代表的な群として機能できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられる。
【0010】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
【0011】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0012】
特に断りのない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10〜40℃の範囲内の温度を意味することができる。
【0013】
本明細書中、表記「C
n−m」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0014】
本明細書中、特に断りのない限り、「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、及びアルキルチオ基が挙げられる。当該置換基の数は、1個から置換可能な最大個数の範囲内(例:1個、2個、3個、4個、5個、6個)であることができ、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、特に好ましくは1又は2個とできる。なお、2個以上の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0015】
本明細書中、特に断りのない限り、「有機基」は、有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。これから理解される通り、有機基は1個以上の炭素原子を有する。
本明細書中、特に断りのない限り、「有機基」は、
(1)炭化水素基、及び
(2)1個以上のヘテロ原子(例:窒素、酸素、硫黄、リン、ハロゲン)を有する炭化水素基
を包含する。
【0016】
本明細書中、特に断りのない限り、「炭化水素基」は、炭素及び水素のみからなる基を意味する。炭化水素基は、ヒドロカルビル基とも称され得る。
本明細書中、特に断りのない限り、「炭化水素基」の例は、
(1)1個以上の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基(例:ベンジル基)、及び
(2)1個以上の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基
を包含する。芳香族炭化水素基は、アリール基とも称され得る。
【0017】
本明細書中、特に断りのない限り、当該「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状、又はそれらの組み合わせである構造を有することができる。
本明細書中、特に断りのない限り、当該「脂肪族炭化水素基」は、飽和又は不飽和であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、当該「脂肪族炭化水素基」の例は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルキル基を包含する。
【0018】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(例:n−プロピル、イソプロピル)、ブチル(例:n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)、ペンチル(例:n−ペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、3−ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル等の、直鎖又は分岐鎖状の、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0019】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルケニル基」の例は、直鎖状、又は分岐鎖状の、炭素数1〜10のアルケニル基を包含し、及び
その具体例は、ビニル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、及び5−ヘキセニルを包含する。
【0020】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルキニル基」の例は、直鎖状、又は分岐鎖状の、炭素数2〜6のアルキニル基を包含し、及び
その具体例は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、及び5−ヘキシニルを包含する。
【0021】
本明細書中、特に断りのない限り、「シクロアルキル基」の例は、炭素数3〜10のシクロアルキル基を包含し、及び
その具体例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、及びアダマンチルを包含する。
【0022】
本明細書中、特に断りのない限り、「芳香族炭化水素基(アリール基)」の例は、C
6−14の芳香族炭化水素基(アリール基)を包含し、及び
その具体例は、フェニル、ナフチル、フェナンスリル、アンスリル、及びピレニルを包含する。
【0023】
本明細書中、特に断りのない限り、「芳香族炭化水素環」の例は、C
6−14芳香族炭化水素環を包含し、及び
その具体例は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及びフェナントレン環を包含する。
【0024】
本明細書中、特に断りのない限り、「フルオロアルキル基」とは、アルキル基から1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された基を意味し、アルキル基の全ての水素原子が置換されたパーフルオロアルキル基も包含する。「フルオロアルキル基」としては、例えば、モノ、ジ又はトリフルオロメチル、モノ、ジ、トリ、テトラ又はヘキサフルオロエチル、モノ、ジ、トリ、テトラ、ヘキサ又はヘプタフルオロブチル、及び、モノ、ジ、トリ、テトラ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ又はノナフルオロブチル、モノ、ジ、トリ、テトラ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナ、デカ又はウンデカフルオロペンチル等の、直鎖又は分岐状の、炭素数1〜10のフルオロアルキル基が挙げられる。
【0025】
式(1)で表される化合物の製造方法
本開示の一実施態様は、式(1):
【化18】
[式中、2つのR
1は同一であり、フッ素原子又はフルオロアルキル基である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(1)と称する場合がある。)の製造方法である。
【0026】
当該方法は、式(2):
【化19】
[式中、R
1は前記と同意義である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(2)と称する場合がある。)と、
式(3−1):
【化20】
[式中、
R
31、R
32、及びR
33は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−10アルキル基であるか、或いは2つが互いに結合して、1個以上の置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(3−1)と称する場合がある。)
及び
式(3−2):
【化21】
[式中、R
34、R
35、R
36、及びR
37は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−10アルキル基であるか、或いは2つが互いに結合して、1個以上の置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(3−2)と称する場合がある。)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(3)(本明細書中、化合物(3)と称する場合がある。)とを、
式(4−1):
MH
nF
m (4−1)
[式中、Mは金属原子であり、nは0又は1であり、Mの原子価数とnの和はmである。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(4−1)と称する場合がある。)、
式(4−2):
LR
414F (4−2)
[式中、Lは窒素原子又はリン原子であり、R
41は、同一又は異なって、C
1−5アルキル基である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(4−2)と称する場合がある。)、及び
フッ酸又はその塩
からなる群から選択される少なくとも1種のフッ素化合物(4)(本明細書中、化合物(4)と称する場合がある。)
並びに
有機溶媒(当該有機溶媒からは、前記式(3−1)で表される化合物及び式(3−2)で表される化合物は除外される。)の存在下に反応させる工程Aを含む。
【0027】
R
1は、好ましくは、フッ素原子又はC
1−10フルオロアルキル基であり、より好ましくは、フッ素原子又はC
1−5パーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、フッ素原子又はC
1−3パーフルオロアルキル基であり、特に好ましくは、C
1−3パーフルオロアルキル基である。
【0028】
化合物(2)の好適な具体例は、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、2,2,3-トリフルオロ-3-(パーフルオロエチル)オキシラン、及び2,2,3-トリフルオロ-3-(パーフルオロプロピル)オキシランを包含する。
【0029】
好ましくは、
R
31、R
32、及びR
33は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−5アルキル基であるか、
R
31が水素原子又はC
1−5アルキル基であり、R
32及びR
33が結合して、環上の炭素原子において1又は2個の置換基を有してもよいピロリジン環又はピペリジン環を形成し、当該置換基はメチル又はエチルであり複数ある場合は同一でも異なってもよく、或いは
R
31及びR
32が結合して、環上の炭素原子において1又は2個の置換基を有してもよいピロリドン環又はピペリジノン環を形成し、当該置換基はメチル又はエチルであり複数ある場合は同一でも異なってもよく、R
33が水素原子又はC
1−5アルキル基である。
【0030】
より好ましくは、
R
31、R
32、及びR
33は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−3アルキル基であるか、
R
31が水素原子又はC
1−3アルキル基であり、R
32及びR
33が結合してピロリジン環又はピペリジン環を形成するか、或いは
R
31及びR
32が結合してピロリドン環又はピペリジノン環を形成し、R
33が水素原子又はC
1−3アルキル基である。
【0031】
さらに好ましくは、
R
31、R
32、及びR
33は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−3アルキル基であるか、
R
31が水素原子又はC
1−3アルキル基であり、R
32及びR
33が結合してピロリジン環を形成するか、或いは
R
31及びR
32が結合してピロリドン環を形成し、R
33がC
1−3アルキル基である。
【0032】
特に好ましくは、
R
31、R
32、及びR
33は、同一又は異なって、水素原子、メチル、又はエチルであるか、
R
31が水素原子、メチル、又はエチルであり、R
32及びR
33が結合してピロリジン環を形成するか、或いは
R
31及びR
32が結合してピロリドン環を形成しており、R
33が水素原子、メチル、又はエチルである。
【0033】
化合物(3−1)の好適な具体例は、ギ酸アミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、及びN−エチル−2−ピロリドンを包含する。
【0034】
好ましくは、
R
34、R
35、R
36、及びR
37は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−5アルキル基であるか、或いは
R
34及びR
35は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−5アルキル基であり、R
36とR
37とは互いに結合して、環上の炭素原子において1又は2個の置換基を有してもよい、テトラヒドロピリミジン環又はイミダゾリジン環を形成し、当該置換基は、メチル又はエチルである。
【0035】
より好ましくは、
R
34、R
35、R
36、及びR
37は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−3アルキル基であるか、或いは
R
34及びR
35は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−3アルキル基であり、R
36とR
37とは互いに結合して、テトラヒドロピリミジン環又はイミダゾリジン環を形成する。
【0036】
さらに好ましくは、
R
34、R
35、R
36、及びR
37は、同一又は異なって、水素原子、メチル、又はエチルであるか、或いは
R
34及びR
35は、同一又は異なって、水素原子、メチル、又はエチルであり、R
36とR
37とは互いに結合して、テトラヒドロピリミジン環又はイミダゾリジン環を形成する。
【0037】
特に好ましくは、
R
34、R
35、R
36、及びR
37は、同一に、メチル又はエチルであるか、或いは
R
34及びR
35は、同一に、メチル又はエチルであり、R
36及びR
37は互いに結合して、テトラヒドロピリミジン環を形成する。
【0038】
化合物(3−2)の好適な具体例は、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、及びテトラメチル尿素を包含する。
【0039】
本開示の一実施形態において、化合物(3)の好適な具体例は、ギ酸アミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、N,N’−ジエチルプロピレン尿素、及びN,N’−ジエチルエチレン尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0040】
Mは、好ましくは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子であり、より好ましくは、アルカリ金属原子、マグネシウム原子、又はカルシウム原子であり、さらに好ましくはアルカリ金属原子又はカルシウム原子であり、特に好ましくはナトリウム原子、カリウム原子、セシウム原子、又はカルシウム原子である。
【0041】
好ましくは、Mはアルカリ金属原子であり、nは0又は1であるか、或いはMはアルカリ土類金属原子であり、nは0である。
【0042】
より好ましくは、Mはナトリウム原子、カリウム原子、又はセシウム原子であり、nは0又は1であるか、或いはMはカルシウム原子であり、nは0である。
【0043】
さらに好ましくは、Mはカリウム原子又はセシウム原子であり、nは0又は1であるか、或いはMはカルシウム原子であり、nは0である。
【0044】
化合物(4−1)の好適な具体例は、フッ化セシウム、フッ化水素カリウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、及びフッ化水素ナトリウムを包含する。
【0045】
好ましくは、Lは窒素原子又はリン原子であり、R
41は、同一又は異なって、C
1−4アルキル基である。
【0046】
より好ましくは、Lは窒素原子又はリン原子であり、R
41は、同一に、C
1−4アルキル基である。
【0047】
さらに好ましくは、Lは窒素原子又はリン原子であり、R
41は、同一に、直鎖状のC
1−4アルキル基である。
【0048】
特に好ましくは、Lは窒素原子又はリン原子であり、R
41は、同一に、メチル、エチル、又はn-ブチルである。
【0049】
化合物(4−2)の好適な具体例は、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルホスホニウムフルオリド、及びトリエチルメチルアンモニウムフロライドを包含する。
【0050】
フッ酸の塩は、アミン塩、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等を包含し、当該塩は1個以上の置換基を包含してもよく、置換基が複数あるときは同一でも異なってもよい。
【0051】
フッ酸のアミン塩は置換されていることが好ましい。置換基の数は、例えば1〜3個、好ましくは2又は3個、より好ましくは3個である。置換基が複数ある場合は同一でも異なってもよい。置換基としてはC
1−10アルキル基が好ましく、C
1−5アルキル基がより好ましく、C
1−4アルキル基が特に好ましい。
【0052】
フッ酸のアミン塩の好適な例は、トリC
1−4アルキルアミンのフッ化水素酸塩(HF
−の数は1〜7の整数のいずれであってもよい。)を包含する。
【0053】
フッ酸のアミン塩の好適な具体例は、トリメチルアミンのフッ化水素酸塩(HF
−の数は1〜7の整数のいずれであってもよく、好ましくは3、4、又は5である。)、トリエチルアミンのフッ化水素酸塩(HF
−の数は1〜7の整数のいずれであってもよく、好ましくは3、4、又は5である。)を包含する。
【0054】
フッ酸のアンモニウム塩が置換される場合、置換基の数は、例えば1〜4個、好ましくは2〜4個、より好ましくは3又は4個、特に好ましくは4個である。置換基が複数ある場合は同一でも異なってもよい。置換基としてはC
1−10アルキル基が好ましく、C
1−5アルキル基がより好ましく、C
1−4アルキル基が特に好ましい。
【0055】
フッ酸のアンモニウム塩の好適な例は、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、テトラC
1−4アルキルアンモニウムフルオライドを包含する。
【0056】
フッ酸のアンモニウム塩の好適な具体例は、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、テトラメチルアンモニウムフルオライド、テトラエチルアンモニウムフルオライド、及びテトラブチルアンモニウムフルオライドを包含する。
【0057】
フッ酸のイミダゾリウム塩は、イミダゾリウム環上の窒素原子で置換されていることが好ましい。置換基の数は、例えば1〜3個、好ましくは2又は3個、より好ましくは2個である。置換基が複数ある場合は同一でも異なってもよい。置換基としては、C
1−10アルキル基(例;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル)、シクロヘキシル、ビニル、又はアリルが好ましく、特に好ましくはC
1−3アルキル基である。
【0058】
フッ酸のイミダゾリウム塩の好適な具体例は、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムフロリド、及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムフロリドを包含する。
【0059】
フッ酸のピリジニウム塩は置換されていてもよく、置換基の数は、例えば1〜3個、好ましくは1又は2個である。置換基が複数ある場合は同一でも異なってもよい。置換基としてはC
1−10アルキル基が好ましく、C
1−5アルキル基がより好ましく、C
1−4アルキル基が特に好ましい。
【0060】
フッ酸のピリジニウム塩の好適な具体例は、ピリジニウムポリ(ヒドロゲンフルオリド)(HF
−の数は1〜9の整数のいずれであってもよく、好ましくは1又は9である。)を包含する。
【0061】
フッ酸のホスホニウム塩は置換されていることが好ましく、置換基の数は、例えば1〜4個、好ましくは3又は4個、より好ましくは4個である。置換基としてはC
1−10アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル、又は置換基を有していてもよいベンジルが好ましく、C
1−5アルキル基がより好ましく、C
1−4アルキル基が特に好ましい。
【0062】
フッ酸のホスホニウム塩の好適な具体例は、テトラメチルホスホニウムフッ化水素酸塩、テトラエチルホスホニウムフッ化水素酸塩、テトラプロピルホスホニウムフッ化水素酸塩、テトラブチルホスホニウムフッ化水素酸塩、テトラオクチルホスホニウムフッ化水素酸塩、トリメチルエチルホスホニウムフッ化水素酸塩、トリエチルメチルホスホニウムフッ化水素酸塩、ヘキシルトリメチルホスホニウムフッ化水素酸塩、トリメチルオクチルホスホニウムフッ化水素酸塩、トリエチル(メトキシメチル)ホスホニウムフッ化水素酸塩、及びトリエチル(メトキシメチル)ホスホニウムフッ化水素酸塩を包含する。
【0063】
本開示の一実施形態において、化合物(4)の好適な具体例は、フッ化セシウム、フッ化水素カリウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルホスホニウムフルオリド、トリエチルメチルアンモニウムフロライド、トリエチルアミン3フッ化水素酸塩、トリエチルアミン5フッ化水素酸塩、トリエチルアミン7フッ化水素酸塩、ピリジニウムポリ(ヒドロゲンフルオリド)、ピリジン1フッ化水素酸塩、ピリジニウムポリ(ヒドロゲンフルオリド)、ピリジン9フッ化水素酸塩、フッ化水素アンモニウム、及びフッ化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種のフッ素化合物である。
【0064】
有機溶媒の例は、芳香族系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、飽和炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、及びハロゲン化炭化水素系溶媒を包含する。当該有機溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0065】
有機溶媒の好適な例は、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、及びニトリル系溶媒を包含する。
【0066】
芳香族系溶媒の好適な具体例は、ベンゼン、トルエン、及びキシレンを包含する。
エステル系溶媒の好適な具体例は、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、及び酢酸n−ブチルを包含する。
ケトン系溶媒の好適な具体例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンを包含する。
飽和炭化水素系溶媒の好適な具体例は、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、及びn−ヘプタンを包含する。
ニトリル系溶媒の好適な具体例は、1,4−ジシアノブタン、アセトニトリル及びベンゾニトリルを包含する。
エーテル系溶媒の好適な具体例は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及び1,2−ジメトキシエタン、クラウンエーテルを包含する。
スルホキシド系溶媒の好適な具体例は、ジメチルスルホキシド及びスルホランを包含する。
ハロゲン化炭化水素系溶媒の好適な具体例は、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロベンゼン、及びクロロベンゼンを包含する。
【0067】
有機溶媒の好適な具体例は、酢酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジシアノブタン、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルを包含する。
【0068】
本開示において、化合物(3−1)及び(3−2)は工程Aにおいて反応剤として作用すると考えられるため、工程Aにおける有機溶媒から化合物(3−1)及び(3−2)は除外される。
【0069】
工程A
工程Aに用いる化合物(3)の量は、化合物(2)の1モルに対して、好ましくは、0.05〜10モルの範囲内、より好ましくは0.08〜5モルの範囲内、さらに好ましくは0.1〜2モルの範囲内であってよい。
【0070】
工程Aに用いる化合物(4)の量は、化合物(2)の1モルに対して、好ましくは、0.001〜0.3モルの範囲内、より好ましくは0.002〜0.1モルの範囲内、さらに好ましくは0.006〜0.1モルの範囲内であってよい。
【0071】
工程Aに用いる有機溶媒の量は、技術常識等に基づき、溶媒として機能しえる量とすることができる。工程Aに用いる有機溶媒の量は、化合物(2)の1モルに対して、好ましくは、0.1〜50モルの範囲内、より好ましくは0.1〜20モルの範囲内、さらに好ましくは0.1〜10モルの範囲内であってよい。
【0072】
工程Aの反応温度は、好ましくは、−30〜40℃の範囲内、より好ましくは、−30℃〜30℃の範囲内、さらに好ましくは、−20〜30℃の範囲内であってよい。工程Aの反応温度は、低いほうが、化合物(1)の選択性が向上する傾向がある。工程Aの反応温度は、高いほうが、反応性が向上する傾向がある。
【0073】
工程Aの反応時間は、好ましくは、0.5時間〜48時間の範囲内、より好ましくは、0.5時間〜24時間の範囲内、さらに好ましくは0.5時間〜12時間の範囲内であってよい。
【0074】
工程Aの反応は、不活性ガス(例:窒素ガス)の存在下又は不存在下で実施され得、好適には不存在下で実施され得る。
【0075】
工程Aは、減圧下、大気圧下、又は加圧条件下にて実施され得る。
【0076】
工程Aは、有機溶媒中で化合物(2)と化合物(3)とを反応させてよく、好ましくは、化合物(3)、化合物(4)、及び有機溶媒を混合して冷却(例:−30℃)し、ここに化合物(2)を添加して実施され得る。
【0077】
工程Aで生成した化合物(1)は、所望により、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、蒸留、精留、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせにより単離、又は精製できる。
【0078】
ヘキサフルオロプロピレンオキシドにN,N−ジメチルホルムアミドを0℃で反応(第1反応)させた後、ジエチレングリコールジメチルエーテル中、フッ化セシウム存在下、140℃に加熱(第2反応)して、化合物(1)を製造する従来の方法では、第1反応時にジフルオロアミンが多く副生する。ジフルオロアミンは目的物である化合物(1)を他の化合物に変換するため、第2反応の前に、人体に有害なHClガスでジフルオロアミンをトラップして除去する必要があった。本開示の工程Aでは溶媒を使用することによって、ジフルオロアミンが溶媒に移行し、ジフルオロアミンと化合物(1)との接触が抑制されるため、HClガスでジフルオロアミンをトラップする必要がない。
【0079】
特許文献1に開示の方法では、3,5,5,6-テトラフルオロ-3,6-ビス(トリフルオロメチル)-1,4-ジオキサン-2-オンの製造において、取り扱いが難しく、危険なフッ素ガスが使用される。また、特許文献1に開示の方法では、3,5,5,6-テトラフルオロ-3,6-ビス(トリフルオロメチル)-1,4-ジオキサン-2-オンは混合物で製造され精製が難しい。これに対し、本開示の工程Aでは、フッ素ガスを使用しなくてもよく、また、工程Aで得られる生成液は精製が容易であり、例えば分液により精製することができる。
【0080】
工程B
本開示の式(1)で表される化合物の製造方法は、工程Aに加え、分液する工程Bをさらに含んでよい。工程Aで生成する反応液は、上液層と下液層との2層で構成され得、一方の層には化合物(1)が含まれる。このため、当該反応液を分液することで目的とする化合物(1)を含む液層を簡便に取得できる。
【0081】
当該液層から化合物(1)を単離する方法は、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、蒸留、精留、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせであってよい。工程Bで取得される化合物(1)を含む液層は、化合物(1)の沸点と近い沸点を有する夾雑化合物が少ないため、当該液層を蒸留することにより化合物(1)を簡便に取得できる。
【0082】
式(5)で表される化合物の製造方法
本開示の一実施態様は、式(5):
式(5):
【化22】
[式中、R
1はフッ素原子又はフルオロアルキル基である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(5)と称する場合がある。)の製造方法である。
当該方法は、前記工程A又はBで生成した前記式(1)で表される化合物を前記化合物(4)の存在下に加熱して式(6):
【化23】
[式中、R
1は前記と同意義である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(6)と称する場合がある。)を生成させる工程C、
該式(6)で表される化合物を塩基(本明細書中、塩基(d)と称する場合がある。)と反応させて式(8):
【化24】
[式中、R
81は前記塩基に対応する基であり、R
1は前記と同意義である。]
で表される化合物を生成させる工程D、及び
該式(8)で表される化合物(本明細書中、化合物(8)と称する場合がある。)を加熱して前記式(5)で表される化合物を生成させる工程E、
を含む。
【0083】
化合物(8)は前記塩基に対応する、化合物(6)のカルボン酸塩である。
R
81は、好ましくは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、ピリジニウム、アンモニウム、有機基で置換されていてもよいアミノであり、より好ましくは、カリウム原子、ナトリウム原子、又はアンモニウムであり、特に好ましくは、ナトリウム原子又はカリウム原子である。
【0084】
本明細書において、工程C、工程D、工程E、及び工程Fは、工程Cにおいて前記工程A又はBで生成した式(1)を原料として使用することを除き、公知の方法で実施してもよく、例えば、特開2005−002014号公報、米国特許第3308107号明細書、又は米国特許第6664431号明細書に記載の方法に準じて実施してもよい。当該公報は、引用により本明細書に組み入れられる。
【0085】
工程C
工程Cでは、前記工程A又はBで生成した化合物(1)を化合物(4)の存在下に加熱して異性化し、化合物(6)を生成させる。
工程Cにおいて、前記工程A又はBで生成した化合物(1)は、単離されて使用されてもよいし、又は化合物(1)を含む前記工程Bで取得された反応液の液層を使用されてもよい。
【0086】
工程Cにおける化合物(4)の詳細は、特に断りのない限り、工程(A)における化合物(4)の詳細に関する記載が適用される。
工程Cに用いる化合物(4)の量は、化合物(1)の1モルに対して、好ましくは、0.001〜10モルの範囲内、より好ましくは0.002〜5.0モルの範囲内、さらに好ましくは0.006〜1.0モルの範囲内であってよい。
【0087】
工程Cは、好適には、有機溶媒中で実施してもよい。有機溶媒の例及び好適な例は、前記と同じである。有機溶媒の好適な具体例は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジシアノブタン、アセトニトリル、1,2−ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジメチルスルホキシドを包含する。
【0088】
工程Cに用いる有機溶媒の量は、技術常識等に基づき、溶媒として機能しえる量を採用すればよい。
【0089】
工程Cの反応温度は、好ましくは、50〜300℃の範囲内、より好ましくは、50〜200℃の範囲内、さらに好ましくは、100〜180℃の範囲内であってよい。
【0090】
工程Cの反応時間は、好ましくは、0.5時間〜60時間の範囲内、より好ましくは、1時間〜24時間の範囲内、さらに好ましくは2時間〜24時間の範囲内であってよい。
【0091】
工程Cで生成した化合物(6)は、所望により、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、蒸留、精留、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせにより単離、又は精製できる。
【0092】
工程D
工程Dでは、化合物(6)を、塩基(d)と反応させて、化合物(8)を生成させる。化合物(8)は、当該塩基(d)に対応する、化合物(6)のカルボン酸塩である。
【0093】
塩基(d)は、例えば、(1)アルカリ又はアルカリ土類金属の、酢酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、アルコキシド塩、水酸化物塩、水素化物塩、アンモニウム塩、又はアミド塩、(2)アルカリ金属、及び(3)アミンからなる群より選択される少なくとも1種である。
アルコキシド塩の例は、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド、リチウムメトキシド、及びリチウムエトキシドを包含する。
水酸化物塩の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び水酸化バリウムを包含する。
水素化物塩の例は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、及び水素化カルシウムを包含する。
アルカリ金属の例は、ナトリウム、カリウム、及びリチウムを包含する。
アミンの例は、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及び複素環式アミンを包含する。当該アミンは、好適に、第三級アミンであることができる。
【0094】
塩基(d)は、好ましくは、ナトリムメトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である。
塩基(d)は、より好ましくは、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0095】
工程Dは、好適には、有機溶媒中で実施してもよい。有機溶媒の例及び好適な例は、前記と同じである。有機溶媒の好適な具体例は、メタノール、エタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジシアノブタン、1,2−ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルを包含する。
【0096】
工程Dに用いる塩基(d)の量は、化合物(6)の1モルに対して、好ましくは、0.05〜10モルの範囲内、より好ましくは0.1〜10モルの範囲内、さらに好ましくは0.1〜5モルの範囲内であってよい。
【0097】
工程Dに用いる有機溶媒の量は、技術常識等に基づき、溶媒として機能しえる量を採用すればよい。
【0098】
工程Dの反応温度は、好ましくは、−50〜120℃の範囲内、より好ましくは、−20〜100℃の範囲内、さらに好ましくは、−10〜70℃の範囲内であってよい。
【0099】
工程Dの反応時間は、好ましくは、0.1時間〜24時間の範囲内、より好ましくは、0.1時間〜12時間の範囲内、さらに好ましくは0.1時間〜6時間の範囲内であってよい。
【0100】
工程Dで生成した化合物(8)は、所望により、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、蒸留、精留、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせにより単離、又は精製できる。
【0101】
工程E
工程Eでは、化合物(8)を加熱し、熱分解することにより化合物(5)を生成させる。化合物(5)は、樹脂材料の原料を製造するための中間体等として有用である。
【0102】
工程Eは、有機溶媒中で実施してもよいし、無溶媒で実施してもよい。有機溶媒の例及び好適な例は、前記と同じである。有機溶媒の好適な具体例は、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジシアノブタン、及びアセトニトリルを包含する。
【0103】
工程Eに用いる有機溶媒の量は、技術常識等に基づき、溶媒として機能しえる量を採用すればよい。
【0104】
工程Eの反応温度は、溶媒を含む場合は好ましくは、100〜400℃の範囲内、より好ましくは、100〜300℃の範囲内、さらに好ましくは、100〜200℃の範囲内であってよい。溶媒を含まない場合は好ましくは、100〜400℃の範囲内、より好ましくは、150〜400℃の範囲内、さらに好ましくは、150〜350℃の範囲内であってよい。
【0105】
工程Eの反応時間は、好ましくは、0.1時間〜24時間の範囲内、より好ましくは、0.1時間〜12時間の範囲内、さらに好ましくは0.1時間〜6時間の範囲内であってよい。
【0106】
工程Eの反応は、不活性ガス(例:窒素ガス)の存在下又は不存在下で実施され得、好適には不存在下で実施され得る。
【0107】
工程Eは、減圧下、大気圧下、又は加圧条件下にて実施され得る。
【0108】
工程Eで生成した化合物(5)は、所望により、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、蒸留、精留、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせにより単離、又は精製できる。
【0109】
本開示の一実施形態は、前記式(5)で表される化合物の製造方法であって、
前記工程Dに代えて、
前記式(6)で表される化合物を水又はアルキルアルコールと反応させて式(7):
【化25】
[式中、R
71は水素原子又はアルキル基であり、R
1は前記と同意義である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(7)と称する場合がある。)を生成させる工程D1、及び
該式(7)で表される化合物を塩基(本明細書中、塩基(d2)と称する場合がある。)と反応させて前記式(8)で表される化合物を生成させる工程D2
を含む。
【0110】
R
71は、好ましくは、水素原子或いは直鎖又は分岐鎖状のC
1−10アルキル基であり、より好ましくは、水素原子或いは直鎖又は分岐鎖状のC
1−5アルキル基であり、さらに好ましくは、直鎖又は分岐鎖状のC
1−4アルキル基であり、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、又はtert−ブチルであり、さらに特に好ましくはメチル又はエチルである。
【0111】
工程D1
工程D1では、化合物(6)を、水又はアルキルアルコールと反応させて、対応するカルボン酸又はアルキルエステルに転換し、化合物(7)を生成させる。
【0112】
工程D1において、化合物(6)は、単離されたものであってもよいし、化合物(6)を含む工程Cで生成した生成液をそのまま使用してもよい。当該生成液を使用すると、化合物(6)の精製が不要となる利点があるため、好ましい。
【0113】
アルキルアルコールは、好ましくは、直鎖又は分岐鎖状のC
1−10アルキルアルコールであり、より好ましくは、直鎖又は分岐鎖状のC
1−5アルキルアルコールであり、さらに好ましくは、直鎖又は分岐鎖状のC
1−4アルキル基であり、特に好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、又はtert−ブチルアルコールであり、さらに特に好ましくは、メタノール又はエタノールである。
【0114】
工程D1に用いる水、アルキルアルコール、或いは水と当該アルコールとの混合物の量は、化合物(6)の1モルに対して、好ましくは、0.1〜50モルの範囲内、より好ましくは、0.2〜20モルの範囲内、さらに好ましくは、0.5〜10モルの範囲内であってよい。
【0115】
工程D1では、水及び前記のアルキルアルコールに加え、さらに他の有機溶媒を使用することもできる。有機溶媒の例及び好適な例は、前記と同じである。当該有機溶媒の具体例は、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジシアノブタン、及びアセトニトリルを包含する。当該有機溶媒の量は化合物(6)の1モルに対して好ましくは0.01〜50モルの範囲内、より好ましくは0.1〜50モルの範囲内とすることができる。
【0116】
工程D1の反応温度は、好ましくは、−50〜50℃の範囲内、より好ましくは、−20〜30℃の範囲内、さらに好ましくは、−20〜20℃の範囲内であってよい。
【0117】
工程D1の反応時間は、好ましくは、0.1時間〜24時間の範囲内、より好ましくは、0.1時間〜12時間の範囲内、さらに好ましくは0.1時間〜6時間の範囲内であってよい。
【0118】
工程D1の反応は、不活性ガス(例:窒素ガス)の存在下又は不存在下で実施され得、好適には不存在下で実施され得る。
【0119】
工程D1は、減圧下、大気圧下、又は加圧条件下にて実施され得る。
【0120】
工程D1で生成した化合物(7)は、所望により、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、蒸留、精留、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせにより単離、又は精製できる。
【0121】
化合物(6)に前記アルキルアルコールを反応させて反応液中に化合物(7)を生成させ、当該反応液に水を加えて生じた有機層を回収し、有機層を蒸留することによって、化合物(7)を簡便に精製することができ、好ましい。
【0122】
工程D2
工程D2では、化合物(7)を塩基(d2)と反応させて化合物(8)を生成させる。
工程D2における塩基(d2)の詳細は、特に断りのない限り、工程Dにおける塩基の詳細に関する記載が適用される。
【0123】
工程D2に用いる塩基(d2)の量は、化合物(7)の1モルに対して、好ましくは、0.1〜20モルの範囲内、より好ましくは、0.5〜15モルの範囲内、さらに好ましくは1〜10モルの範囲内であってよい。
【0124】
工程D2は、好適には有機溶媒存在下で実施する。有機溶媒の例及び好適な例は、前記と同じである。
有機溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジシアノブタン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランであり、1種単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0125】
工程D2の反応温度は、好ましくは、−50〜120℃の範囲内、より好ましくは、−20〜100℃の範囲内、さらに好ましくは、−10〜70℃の範囲内であってよい。
【0126】
工程D2の反応時間は、好ましくは、0.1時間〜24時間の範囲内、より好ましくは、0.1時間〜12時間の範囲内、さらに好ましくは0.1時間〜6時間の範囲内であってよい。
【0127】
工程D2の反応は、不活性ガス(例:窒素ガス)の存在下又は不存在下で実施され得、好適には不存在下で実施され得る。
【0128】
工程D2は、減圧下、大気圧下、又は加圧条件下にて実施され得る。
【0129】
工程D2において化合物(8)は、溶媒中に固体として析出し得、析出した場合は溶媒を除去することにより化合物(8)を簡便に単離できる。溶媒を除去する方法は公知の方法を採用すればよい。
【0130】
本開示の一実施形態は、前記式(5)で表される化合物の製造方法であって、前記工程D1において生成した液を精製して前記式(7)で表される化合物を得る工程D1aをさらに含む。精製した化合物(7)は前記工程D2に供されてよい。
【0131】
工程D1a
工程D1aでは、工程D1で生成する反応液を精製して化合物(7)を得る。化合物(7)は、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、蒸留、精留、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせにより単離、又は精製できる。好ましくは、工程D1で生成する反応液中の有機層を精製し、より好ましくは当該有機層を蒸留により精製して簡便に化合物(7)を得る。当該有機層は多くの場合、化合物(7)の沸点近傍の沸点を有する他の物質が含まれないか少量しか含まれないため、蒸留に適している。
【0132】
本開示の一実施形態は、前記式(5)で表される化合物の製造方法であって、前記工程D及び工程Eに代えて、前記式(6)で表される化合物を塩基(本明細書中、塩基(f)と称する場合がある。)の存在下に加熱して前記式(5)で表される化合物を生成する工程Fを含む。
【0133】
工程F
工程Fでは、化合物(6)を塩基(f)の存在下に加熱して前記式(5)で表される化合物を生成させる。工程Fは、公知の方法で実施してもよく、例えば、米国特許第3308107号明細書、又は米国特許第6664431号明細書に記載の方法に準じて実施してもよい。当該公報は、引用により本明細書に組み入れられる。
【0134】
工程Fにおいて、化合物(6)は、単離されたものであってもよいし、化合物(6)を含む工程Cで生成した生成液をそのまま使用してもよい。当該生成液を使用すると、化合物(6)を精製する作業が不要となる利点があるため、好ましい。
【0135】
工程Fにおける塩基(f)の詳細は、特に断りのない限り、工程Dにおける塩基の詳細に関する記載が適用される。
【0136】
塩基(f)は、好ましくは、アルカリ金属の水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩又は炭酸水素塩、或いはアンモニアである。アルカリ金属ハロゲン化物は、活性炭、無機酸化物等の担体に担持されていてもよい。
【0137】
塩基(f)は、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、塩化ナトリウム、及びヨウ化カリウムからなる群より選択される少なくとも1種である。
塩基(f)は、さらに好ましくは、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、塩化ナトリウム、及びヨウ化カリウムからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0138】
塩基(f)の担体は、好ましくは活性炭、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、又は二酸化ケイ素である。
塩基(f)の担体は、より好ましくはアルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、及び二酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種である。
アルカリ金属酸化物の具体的な例は、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、及び酸化セシウムを包含する。
アルカリ土類金属酸化物の具体的な例は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化バリウムを包含する。
【0139】
工程Fは、有機溶媒中で実施してもよいし、無溶媒で実施してもよい。有機溶媒の例及び好適な例は、前記と同じである。有機溶媒の好適な具体例は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジシアノブタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルを包含する。
【0140】
工程Fに用いる塩基(f)の量は、化合物(6)の1モルに対して、好ましくは、0.1〜200モルの範囲内、より好ましくは、0.5〜100モルの範囲内、さらに好ましくは、1〜50モルの範囲内であってよい。
【0141】
工程Fに用いる無機酸化物の量は、化合物(6)の1モルに対して、好ましくは、0.2〜400モルの範囲内、より好ましくは1〜200モルの範囲内、さらに好ましくは2〜100モルの範囲内であってよい。
【0142】
工程Fに用いる有機溶媒の量は、技術常識等に基づき、溶媒として機能しえる量を採用すればよい。
【0143】
工程Fの反応温度は、溶媒を含む場合は好ましくは、80〜400℃の範囲内、より好ましくは、100〜350℃の範囲内、さらに好ましくは、100〜300℃の範囲内であってよい。溶媒を含まない場合は好ましくは、100〜400℃の範囲内、より好ましくは、150〜400℃の範囲内、さらに好ましくは、150〜350℃の範囲内であってよい。
【0144】
工程Fの反応時間は、好ましくは、0.01時間〜24時間の範囲内、より好ましくは、0.01時間〜12時間の範囲内、さらに好ましくは0.01時間〜6時間の範囲内であってよい。
【0145】
工程Fの反応は、不活性ガス(例:窒素ガス)の存在下又は不存在下で実施され得、好適には不存在下で実施され得る。
【0146】
工程Fは、減圧下、大気圧下、又は加圧条件下にて実施され得る。
【0147】
工程Fで生成した化合物(5)は、所望により、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、蒸留、精留、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせにより単離、又は精製できる。
【0148】
化合物
本開示の製造方法で製造可能な化合物のうち、式(7−1):
【化26】
[式中、2つのR
1は同一であり、フッ素原子又はフルオロアルキル基であり、R
72はアルキル基である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(7−1)と称する場合がある。)は新規化合物である。本開示はこれらの新規化合物もまた、提供する。これらの新規化合物は、ポリマー製造用のモノマーの原料、中間体などとして、有用に使用され得る。
【0149】
化合物(7−1)において、R
1は、前記のとおりである。
【0150】
化合物(7−1)において、R
72は、好ましくは、直鎖又は分岐鎖状のC
1−10アルキル基であり、より好ましくは、水素原子或いは直鎖又は分岐鎖状のC
1−5アルキル基であり、さらに好ましくは、直鎖又は分岐鎖状のC
1−4アルキル基であり、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、又はtert−ブチルであり、さらに特に好ましくはメチル又はエチルである。
【0151】
化合物(7−1)は、好ましくは、R
1が、同一に、フッ素原子又はC
1−10フルオロアルキル基であり、R
72が直鎖又は分岐鎖状のC
1−10アルキル基である。
化合物(7−1)は、より好ましくは、R
1が、同一に、フッ素原子又はC
1−5パーフルオロアルキル基であり、R
72が直鎖又は分岐鎖状のC
1−5アルキル基である。
化合物(7−1)は、さらに好ましくは、R
1が、同一に、フッ素原子又はC
1−3パーフルオロアルキル基であり、R
72が直鎖又は分岐鎖状のC
1−4アルキル基である。
化合物(7−1)は、特に好ましくは、R
1が、同一に、C
1−3パーフルオロアルキル基であり、R
72がメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、又はtert−ブチルである。
化合物(7−1)は、さらに特に好ましくは、R
1が、同一に、C
1−3パーフルオロアルキル基であり、R
72がメチル又はエチルである。
【0152】
式(7−1)で表される化合物の製造方法
本開示は、新規化合物(7−1)の製造方法も提供する。当該製造方法は、
前記式(6)で表される化合物をアルキルアルコールと反応させて前記式(7−1)で表される化合物を生成させる工程D1−1を含む。
【0153】
化合物(7−1)の製造方法における工程D1−1において用いられる化合物(6)は、前記化合物(5)の製造方法における工程Cで生成したものでもよいし、公知技術により製造されたものでもよい。本工程のその他の事項は、本工程が化合物(6)に水と反応させる態様を含まないことを除き、前記化合物(5)の製造方法における工程D1と同様である。
【0154】
組成物
本開示の一実施形態は、前記式(5)で表される化合物を含有する組成物であって、
さらに、式(5)で表される化合物100質量部に対して、
式(9):
【化27】
[式中、2つのR
1は前記と同意義である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(9)と称する場合がある。)を0.00001〜1質量部、及び/又は
式(10):
【化28】
[式中、2つのR
1は前記と同意義である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(10)と称する場合がある。)を0.00001〜1質量部
含有する組成物、である。
【0155】
本開示の式(5)で表される化合物の製造方法は、前記組成物もまた製造できる。前記組成物は、化合物(4−1)、重合禁止剤、水、又は極性溶媒をさらに含んでもよい。
前記組成物に含有される前記の各種成分の量は、反応条件(例:温度、時間、原料種及び量、溶媒種及び量、触媒種及び量)を設定することにより調整し得る。また、当該各種成分の量は、化合物(5)の製造後の精製により調整し得る。
【0156】
前記組成物におけるR
1の詳細には、特に断りのない限り、前記式(1)で表される化合物の製造方法におけるR
1の詳細に関する記載が適用される。
【0157】
化合物(9)の好適な具体例は2,2,3,5,6-ペンタフルオロ-3,6-ビス(トリフルオロメチル)-5-((1,2,2-トリフルオロビニル)オキシ)-1,4-ジオキサンを包含する。
前記組成物における化合物(9)の量比は、化合物(5)の100質量部に対して、好ましくは、0.00001〜1質量部、より好ましくは、0.00001〜0.8質量部、さらに好ましくは、0.00001〜0.5質量部、特に好ましくは、0.0001〜0.1質量部である。
【0158】
化合物(10)の好適な具体例はパーフルオロ−2,4−ジメチルー1,3−ジオキソランを包含する。
前記組成物における化合物(10)の量比は、化合物(5)の100質量部に対して、好ましくは、0.00001〜1質量部、より好ましくは、0.00001〜0.8質量部、さらに好ましくは、0.00001〜0.5質量部、特に好ましくは、0.0001〜0.1質量部である。
【0159】
前記組成物は、化合物(9)と化合物(10)のいずれか、或いは両方を含有しても良い。化合物(5)の100質量部に対して、好ましくは、化合物(9)を0.00001〜0.8質量部及び/又は化合物(10)を0.00001〜0.8質量部含有し、より好ましくは、化合物(9)を0.00001〜0.5質量部及び/又は化合物(10)を0.00001〜0.5質量部含有し、特にに好ましくは、化合物(9)を0.0001〜0.1質量部及び/又は化合物(10)を0.0001〜0.1質量部含有する。
【0160】
化合物(4−1)の好適な具体例及び式(4−1)中の記号は、前記式(1)で表される化合物の製造方法における化合物(4−1)の場合と同じである。
【0161】
極性溶媒の好適な例は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、及びニトリル系溶媒を包含する。
アルコール系溶媒の好適な具体例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びtert−ブチルアルコールを包含する。
エステル系溶媒の好適な具体例は、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、及び酢酸n−ブチルを包含する。
ニトリル系溶媒の好適な具体例は、1,4−ジシアノブタン、アセトニトリル及びベンゾニトリルを包含する。
エーテル系溶媒の好適な具体例は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及び1,2−ジメトキシエタンを包含する。
【0162】
極性溶媒の好適な具体例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブチルアルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジシアノブタン、アセトニトリル、及びテトラヒドロフランを包含する。
【0163】
重合禁止剤の好適な例は、4−メトキシ−1−ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、及びベンゾトリアゾールを包含する。
【0164】
前記組成物における化合物(4−1)の量比は、化合物(5)の100質量部に対して、好ましくは、0.00001〜0.1質量部、より好ましくは、0.00001〜0.08質量部、さらに好ましくは、0.00001〜0.05質量部、特に好ましくは、0.00001〜0.01質量部である。
【0165】
前記組成物における極性溶媒の量比は、化合物(5)の100質量部に対して、好ましくは、0.00001〜0.1質量部、より好ましくは、0.00001〜0.08質量部、さらに好ましくは、0.00001〜0.05質量部、特に好ましくは、0.0001〜0.01質量部である。
【0166】
前記組成物における重合禁止剤の量比は、化合物(5)の100質量部に対して、好ましくは、0.00001〜1質量部、より好ましくは、0.00001〜0.8質量部、さらに好ましくは、0.00001〜0.5質量部、特に好ましくは、0.00001〜0.1質量部である。
【0167】
前記組成物における水の量比は、化合物(5)の100質量部に対して、好ましくは、0.00001〜0.1質量部、より好ましくは、0.00001〜0.08質量部、さらに好ましくは、0.00001〜0.05質量部、特に好ましくは、0.00001〜0.01質量部である。
【0168】
本開示の組成物は、前記量比の範囲内であることにより、例えば樹脂材料の原料に好適に使用することができ、かつ当該組成物の製造コストの点で有利であり、それにより、最終製品の製造コストの点でも有利である。
【0169】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能であることが理解されるであろう。
【実施例】
【0170】
以下、実施例によって本開示の一実施態様を更に詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0171】
実施例中の記号及び略称は、以下の意味で用いられる。
CsF:フッ化セシウム
GC:ガスクロマトグラフィー
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
ジグライム:ジエチレングリコールジメチルエーテル
Me:メチル
化合物1a:次式(1a)で表される化合物
【化29】
化合物6a:次式(6a)で表される化合物
【化30】
化合物8a:次式(8a)で表される化合物
【化31】
化合物5a:次式(5a)で表される化合物
【化32】
化合物9a:次式(9a)で表される化合物
【化33】
化合物10a:次式(10a)で表される化合物
【化34】
化合物11a:次式(11a)で表される化合物
【化35】
化合物11b:次式(11b)で表される化合物
【化36】
化合物12a:次式(12a)で表される化合物
【化37】
化合物13a:次式(13a)で表される化合物
CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3 (13a)
化合物7a:次式(7a)で表される化合物
【化38】
化合物14a:次式(14a)で表される化合物
【化39】
化合物14b:次式(14b)で表される化合物
【化40】
化合物14c:次式(14c)で表される化合物
【化41】
化合物15a:次式(15a)で表される化合物
CF
3CF
2CF
2OCFCF
3COF (15a)
化合物15b:次式(15b)で表される化合物
CF
3CF
2CF
2OCFCF
3COOMe (15b)
化合物15c:次式(15c)で表される化合物
CF
3CF
2CF
2OCFCF
3COOK (15c)
化合物16a:次式(16a)で表される化合物
【化42】
【0172】
実施例 1:工程AおよびB
0.83gのCsF(2.5mmol)、9.03gのDMF(0.12 mol)、及び16.6gのジグライム(0.12 mol)を反応器に加え−20℃に冷却した。前記反応器に44gの6フッ化プロピレンオキシド(0.27 mol)を加え2時間撹拌した。6フッ化プロピレンオキシドが消失したのち、反応液を回収した。反応液は上層液と下層液の2層に分離していた。反応液を分液し上層液29gと下層液40gを各々回収した。上層液と下層液をGCで分析した。63GC%の化合物1aを収率52%で得た。
化合物1a:63GC%、ヘキサフルオロプロピレン:10GC%、化合物14a:15GC%以下、化合物11a(H):0.1GC%、CsF:0.1%以下、化合物15a:1.0GC%、(CH
3)
2NCF
2H:0.5GC%、化合物16a:6.0GC%、ジグライム:1.0GC%以下
なお、ここで「%以下」とは、各種成分の含有量が、0.0000095%以上、且つ具体的に記載された数値の%以下の範囲内であることを意味する。以下の例でも同様である。
CsFの含有量は、NMR法で測定した。
その他の成分の含有量はGC法で測定した。
【0173】
比較例1: 2段階での化合物1aの合成
4.27gのDMF(0.06 mol)を反応器に加え−27℃に冷却した。前記反応器に12gの6フッ化プロピレンオキシド(0.07 mol)を加え1時間撹拌した。撹拌後反応液を回収した。反応液をNMRで分析した。目的物の前駆体である4−フルオロ−5−オキソ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン−2−カルボニルフルオリドが5%の収率で得られた。前駆体の収率が非常に低かったため第2工程を実施しなかった。
【0174】
実施例2: 工程C
実施例1と同様にして得られた20gの下層液(13gの化合物1aを含む)、3.2gのCsF(21 mmol)、7.1gのジグライム(53mmol)を反応器に加え120℃で12時間加熱し反応液を得た。反応液は上層液と下層液をGCで分析した。7.2gの化合物6aを純度74%で得た。
化合物6a:74GC%、ヘキサフルオロプロピレン:2.0GC%、化合物1a:1.1GC%、化合物14a:3.0GC%以下、化合物11a(H):0.1GC%、CsF:0.1%以下、化合物15a:0.1GC%、(CH
3)
2NCF
2H:0.1GC%以下、ジグライム:15GC%以下
CsFの含有量は、NMR法で測定した。
その他の成分の含有量はGC法で測定した。
【0175】
実施例3: 工程D
実施例2で得られた7.2gの化合物6aを含む下層液を、12.7gの炭酸カリウム(0.09mol)、28gのジメトキシエタン(0.3 mol)に加え60℃で2時間撹拌し反応液を得た。反応液を濾過しろ液を取得し、ろ液を濃縮した。NMRで解析したところ7.0gの化合物8aを含む濃縮物を得た(収率44%)
化合物8a:80%、化合物14c:3.0%以下、化合物11a(H):0.1%、CsF:1.0%以下、KF:1.0%以下、化合物15c:0.1%、水:0.1%以下、ジグライム:10%以下
水の含有量はカールフィッシャー電量滴定法で測定した。
その他の成分の含有量はNMR法で測定した。
【0176】
実施例4: 工程E
実施例3で得られた6.7gの化合物8aを反応器に加え、200℃で4時間、300℃で1時間加熱した。生成物を−78℃でトラップに回収しNMR、GCで解析したところ化合物5aを収率60%、純度95%で得た。
化合物5a:95GC%、ヘキサフルオロプロピレン:0.01GC%、化合物9a:1.0GC%以下、化合物11a(H):0.1GC%、化合物11b(Me):0.1GC%、化合物12a:0.1GC%、CsF:0.1%以下、KF:0.1%以下、化合物13a:0.1GC%、化合物10a:0.2GC%以下、ジグライム:4.0GC%以下、水:0.1%以下
CsF及びKFの含有量は、イオンクロマトグラフィー法で測定した。イオンクロマトグラフィー法では、前処理として、サンプルを同容量の超純水によって液液抽出して得られた液を測定に供した。
水の含有量はカールフィッシャー電量滴定法で測定した。
その他の成分の含有量はGC法で測定した。
【0177】
実施例5: 工程D1
実施例2と同様にして得られた83gの上層液、79gの下層液にメタノール32g(1 mol)及び45gの水を加えて2時間撹拌した。生成液は2層に分離しており分液により下層液を回収して蒸留(150℃、5時間)することによって化合物7aを得た。収率は47%であった。
-77ppm (1F, CF2), -81ppm (3F, CF
CF3), -82ppm (3F, CF3), -83ppm (1F, CF2), -124ppm(1F,
CFCF3)
化合物7a:98GC%、化合物14b:0.1GC%以下、化合物11a(H):0.1GC%、化合物11b(Me):0.1GC%、化合物15b:0.1GC%、水:0.1%以下
水の含有量はカールフィッシャー電量滴定法で測定した。
その他の成分の含有量はGC法で測定した。
【0178】
実施例6: 工程D2
42gのメタノールに0.13molの水酸化カリウムを加えた。このメタノール液をガラスの反応器に加えた。このメタノール液に0.13molの化合物7aを徐々に加え20℃で1時間撹拌した。反応液から溶媒を濃縮器で留去し生成した固体を回収した。この個体を減圧乾燥して化合物8aを化学量論量で得た。