特許第6766971号(P6766971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6766971
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20201005BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20201005BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20201005BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H02J7/35 K
   H02J3/38 130
   H02J3/32
   H02J3/38 110
   H02J7/35 B
   H02J7/00 Y
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-571565(P2019-571565)
(86)(22)【出願日】2019年7月3日
(86)【国際出願番号】JP2019026512
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】李 海青
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−077092(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/165365(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
H02J 3/00 − 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルからの直流電力を交流電力に変換し、前記交流電力を電力系統へ出力するように構築された第一電力変換装置と、
前記太陽電池パネルと前記第一電力変換装置との間に設けられ、事故発生時に開放される直流側開閉装置と、
蓄電池と、
前記太陽電池パネルと前記直流側開閉装置との間の接続点に接続され、前記蓄電池の充放電を制御する第二電力変換装置と、
を備え、
前記直流側開閉装置の開放に応じて前記接続点の直流電圧が予め定められた所定閾値を超えた場合に、前記太陽電池パネルからの前記直流電力を変換することで前記蓄電池を充電する解列充電制御モードを実施するように構築された電力システム。
【請求項2】
前記第二電力変換装置は、システム上位監視装置からの指令信号に基づいて前記蓄電池を充電する通常充電制御モードを備え、
前記解列充電制御モードは、前記指令信号で前記通常充電制御モードが指示されていなくとも前記接続点の前記直流電圧が前記所定閾値を超えた場合に実施される請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記第二電力変換装置は、入力される直流電圧を検出する電圧検出回路を含み、前記電圧検出回路により検出された前記直流電圧が前記所定閾値を超えたことを検出する請求項1または2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記所定閾値は、前記太陽電池パネルの開放電圧よりも高く、且つ前記太陽電池パネルの絶縁耐圧よりも低い値に定められた請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項5】
前記所定閾値は、前記太陽電池パネルの開放電圧よりも高く設定され、
前記第二電力変換装置は、前記解列充電制御モードが開始された後に前記直流電圧が前記開放電圧に収束したことが検知された場合には、前記解列充電制御モードを停止するように構築された請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項6】
前記蓄電池は、充電上限電圧を備え、
前記第二電力変換装置は、前記解列充電制御モードの開始時または開始後に前記蓄電池の電圧が前記充電上限電圧に達した場合であっても前記解列充電制御モードを継続する過充電制御モードを備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば日本特開2015−109796号公報に記載されているように、DCリンク方式の太陽光発電システムが知られている。DCリンク方式とは、太陽電池パネルと電力変換装置とを接続する直流(DC)パスに蓄電池システムが接続された方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特開2015−109796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
系統連系システムに事故が発生した時に、太陽電池パネル側の電力変換装置を電力系統から解列させる場合がある。太陽電池パネルが発電している最中に太陽電池パネルと電力変換装置との間の直流側開閉装置が開放されると、太陽電池パネルが発電した電力が行き場を失ってしまう。そうすると過電圧が発生し太陽電池パネルに大きな負担がかかるおそれがある。
【0005】
この出願は、上記のような課題を解決するためになされたもので、太陽電池パネルの過電圧を抑制することができる電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願にかかる電力システムは、
太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルからの直流電力を交流電力に変換し、前記交流電力を電力系統へ出力するように構築された第一電力変換装置と、
前記太陽電池パネルと前記第一電力変換装置との間に設けられ、事故発生時に開放される直流側開閉装置と、
蓄電池と、
前記太陽電池パネルと前記直流側開閉装置との間の接続点に接続され、前記蓄電池の充放電を制御する第二電力変換装置と、
を備え、
前記直流側開閉装置の開放に応じて前記接続点の直流電圧が予め定められた所定閾値を超えた場合に、前記太陽電池パネルからの前記直流電力を変換することで前記蓄電池を充電する解列充電制御モードを実施するように構築されたものである。
【発明の効果】
【0007】
上記電力システムによれば、電力系統に対する電力システムの解列に応じて接続点の直流電圧の大きさが所定閾値を超えた場合には、第二電力変換装置が蓄電池を充電する解列充電制御モードが実施される。これにより、太陽電池パネルの発電電力を蓄電池に吸収させることができる。その結果、事故発生時に太陽電池パネルの過電圧が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態にかかる電力システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態にかかる電力システムの動作を説明するための図である。
図3】実施の形態にかかる電力システムの動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および図2は、実施の形態にかかる電力システム1の構成を示す図である。図1は平常運転中の様子を模式的に表したものである。図2は系統事故20の発生時におけるシステム解列時の動作を模式的に表したものである。
【0010】
電力システム1は、直流リンク発電システム1aと、系統側開閉装置2と、連系トランス3と、システム上位監視装置であるメインサイトコントローラ(MSC)11と、を備えている。系統側開閉装置2の一端は電力系統100に接続され、系統側開閉装置2の他端は連系トランス3の一端に接続されている。連系トランス3の他端は、交流側開閉装置4の一端に接続されている。なお、実施の形態において「開閉装置」と記載した構成要素には、開閉器および遮断器などの各種の装置を用いることができる。
【0011】
直流リンク発電システム1aは、交流側開閉装置4と、第一電力変換装置5と、直流側開閉装置6と、太陽電池パネル7と、第二電力変換装置8と、蓄電池用開閉装置9と、蓄電池10と、を備えている。第一電力変換装置5および第二電力変換装置8は、パワーコンディショナシステム(PCS)とも称される。
【0012】
交流側開閉装置4の他端は、第一電力変換装置5の交流出力端に接続されている。第一電力変換装置5の直流入力端には、直流側開閉装置6の一端が接続されている。
【0013】
直流側開閉装置6の他端は、接続点Xを介して、太陽電池パネル7に接続されている。接続点Xには、第二電力変換装置8の第一入出力端も接続されている。第二電力変換装置8の第二入出力端は、蓄電池用開閉装置9を介して、蓄電池10に接続されている。
【0014】
実施の形態では、簡略化のために一つの直流リンク発電システム1aのみを図1に示しているが、複数の直流リンク発電システム1aが連系トランス3に接続するように電力システム1が構築されてもよい。太陽電池パネル7は、複数の太陽電池モジュールが多数直列及び並列に接続された太陽電池アレイとして提供されてもよい。
【0015】
MSC11は、例えば図示しない電力計測計等を介して、系統電流Isと系統電圧Vsと力率Pfとを取得する。MSC11は、系統電流Isなどの上記各種パラメータに基づいて、有効電力上限リミッタPを直流リンク発電システム1aの第一電力変換装置5に対して送信する。なお、一般的に、太陽光発電用の電力変換装置(PV−PCS)へは発電上限リミッタ値だけが送信され、実際の発電量はPV−PCSのMPPT制御に応じて調整される。
【0016】
第一電力変換装置5は、太陽電池パネル7からの直流電力を交流電力に変換し、交流電力を電力系統100へ出力するように構築されている。第一電力変換装置5は、第一電力変換回路5aと、第一電力変換制御回路5bと、を備えている。
【0017】
第一電力変換回路5aは、一例としてIGBT等の半導体スイッチング素子で構築された電圧型三相交流インバータ回路である。第一電力変換制御回路5bは、MSC11からの有効電力上限リミッタPを上限として、MPPT制御機能により、ゲートパルスとしてのPWM制御信号を生成することにより第一電力変換回路5aの半導体スイッチング素子をオンオフ制御する。
【0018】
直流側開閉装置6は、太陽電池パネル7と第一電力変換装置5との間に設けられている。電力システム1の平常運転時には、系統側開閉装置2と交流側開閉装置4と直流側開閉装置6とが投入されている。なお、直流側開閉装置6と系統側開閉装置2は、第一電力変換装置5の一部として提供されてもよく、第一電力変換装置5とは別の部品として独立に設置されてもよい。
【0019】
系統事故20の発生時などの異常時には、第一電力変換装置5の半導体スイッチング素子がゲートブロックされ、交流側開閉装置4と直流側開閉装置6とが開放され、第一電力変換装置5の運転が停止される。交流側開閉装置4を開放することで、直流リンク発電システム1aを電力系統100から解列することができる。
【0020】
蓄電池10は、ESS(エナジーストレージシステム)用の各種の蓄電装置を用いることができる。蓄電池10は、電気二重層コンデンサ(EDLC)と、リチウムイオンキャパシタ(LIC)と、リチウムイオン二次電池(LIB)と、ニッケル水素電池と、チタン酸リチウムを用いたSciB(登録商標)と、鉛蓄電池と、ナトリウム硫黄電池と、燃料電池(FC)とからなる群から選択された蓄電池であってもよい。
【0021】
蓄電池10と第二電力変換装置8は、蓄電用開閉装置9を介して接続されている。実施の形態では、電力システム1の平常運転時においても、系統事故20の発生時においても、蓄電用開閉装置9が投入のまま保持されるものとする。
【0022】
第二電力変換装置8は、太陽電池パネル7と直流側開閉装置6との間の接続点Xに接続されている。第二電力変換装置8は、第二電力変換回路8aと、第二電力変換制御回路8bと、を備えている。
【0023】
第二電力変換回路8aとしては、各種公知のDC−DCコンバータ回路を用いることができる。第二電力変換回路8aは、例えば、PWMスイッチングコンバータであってもよいし、チョッパ回路を含む昇降圧コンバータであってもよい。第二電力変換制御回路8bは、MSC11からの指令信号S1に基づいて、第二電力変換回路8aに含まれるIGBTまたはMOSFETなどの半導体スイッチング素子のオン・オフを制御する。指令信号S1には、有効電力指令Pが含まれていてもよく、あるいは電流指令値または電圧指令値が含まれていてもよい。第二電力変換装置8は、有効電力指令Pに基づいて接続点Xに対する有効電力の入出力を行うように作動してもよく、電流指令値または電圧指令値に基づいて蓄電池または接続点Xにおける充放電電流制御または電圧制御を実施してもよい。蓄電池10の種類および制御システムの内容に応じて、指令信号S1にどのような指令値を含ませるかを決めればよい。
【0024】
第二電力変換制御回路8bは、電圧検出回路8b1を含んでいる。電圧検出回路8b1は、第二電力変換装置8に入力される直流電圧VDCを検出する。電圧検出回路8b1は、直流電圧センサを含む。実施の形態では、直流電圧VDCが電圧検出回路8b1によって検出される。また、制御回路8bには予め所定閾値Vthが設定されている。
【0025】
第二電力変換制御回路8bが実施する制御モードは、放電制御モードと二つの充電制御モードとを含む。二つの充電制御モードは、通常充電制御モードと解列充電制御モードとを含む。
【0026】
放電制御モードは、MSC11からの指令信号S1に基づいて、蓄電池10で蓄えた電力を接続点Xへと出力するように第二電力変換装置8を運転するモードである。通常充電制御モードは、MSC11からの指令信号S1に基づいて、直流側開閉装置6が投入されているシステム平常運転中に、接続点Xの余剰発電電力を蓄電池10に蓄えるように第二電力変換装置8を運転するモードである。電力会社との取り決めなどにより、電力系統100に出力するサイト合成出力電力の大きさにサイト合成出力上限値が存在する場合がある。この場合には、通常充電制御モードが実施されることで、サイト合成出力上限値を超える余剰発電電力を蓄電池10に充電することができる。
【0027】
解列充電制御モードは、第一電力変換装置5の解列に応じて接続点Xの直流電圧VDCが予め定められた所定閾値Vthを超えた場合に、第二電力変換装置8が太陽電池パネル7の発電電力を変換することで蓄電池10を充電するモードである。実施の形態では、指令信号S1で通常充電制御モードが指示されていなくとも、接続点Xの直流電圧VDCが所定閾値Vthを超えた場合には解列充電制御モードが実施されるものとする。
【0028】
放電制御モードと二つの充電制御モードとにおいて、充放電の区別および充放電量は、指令信号S1の内容で指示される。例えば、自己出力点Yに対する有効電力の入出力を指示するという観点から、指令信号S1に含まれる有効電力指令Pなどの指令値が正または負の任意の値に調整されてもよい。
【0029】
実施の形態によれば、次の効果が得られる。図2に示す系統事故20の発生時には、太陽電池パネル7側の第一電力変換装置5を電力系統100から解列させるために直流側開閉装置6が開放される。直流側開閉装置6が開放されると図2に示す太陽電池パネル7の発電電力P1が行き場を失うので、何らの措置も取られなければ太陽電池パネル7の出力電圧が過大となるおそれがある。
【0030】
この点、実施の形態にかかる電力システム1によれば、接続点Xの直流電圧VDCの大きさが所定閾値Vthを超えた場合には、解列充電制御モードが実施される。解列充電制御モードにより、第二電力変換装置8が蓄電池10を充電するように動作モードを切り替える。このとき接続点Xと第二電力変換装置8との接続状態は維持されているので、遮断された第一電力変換装置5への電流経路を蓄電池10の側へと切り替えて蓄電池10へと電流を導くことができる。このような電流経路の切替により、太陽電池パネル7の発電電力を蓄電池10に吸収させることができる。その結果、系統事故20の発生時に太陽電池パネル7の過電圧が発生することを抑制することができる。
【0031】
なお、実施の形態によれば、指令信号S1で通常充電制御モードが指示されていなくとも、接続点Xの直流電圧VDCが所定閾値Vthを超えた場合には解列充電制御モードが実施されるように第二電力変換装置8が構築されている。系統事故20の発生は系統電圧Vsの変化に基づいてMSC11でも検知されるので、MSC11が系統事故20を検知したことに応じて指令信号S1を充電制御に切り替えることも考えられる。しかしながら、この場合にはMSC11を経由することで一定の遅延が発生する。この点、実施の形態によれば、MSC11を経由せずに第二電力変換装置8で制御が完結しているので、接続点Xの電圧上昇を直接に検知してその電圧上昇に高速応答するように解列充電制御モードを作動させることができる利点がある。
【0032】
なお、実施の形態によれば、第二電力変換制御回路8bが持つ電圧検出回路8b1によって直流電圧VDCが所定閾値Vthを超えたことが検出される。内蔵された電圧検出回路8b1によれば、マイクロ秒などの高速な電圧検出が可能である。従って、系統事故20時における直流電圧VDCの上昇をすばやく検知することができる。
【0033】
仮に第一電力変換装置5と第二電力変換装置8とを通信回線でつないで、通信回線を用いて第一電力変換装置5が停止したことを第二電力変換装置8に伝達することも考えられる。しかしながら、このような通信回線を用いる手法では、通信速度が遅い場合には数十ミリ秒から数秒程度の時間がかかるおそれがある。数秒程度の通信時間がかかってしまうと、系統事故20の発生時における直流電圧VDCの上昇速度に比べて制御応答が遅すぎる問題がある。この点、第二電力変換装置8に内蔵された電圧検出回路8b1を用いることで、直流電圧VDCの上昇を速やかに検知することができる。なお、第一電力変換装置5と第二電力変換装置8との間に通信回線を設置すると、設置作業に手間がかかったり、コストアップを招いたり、通信回線の断線などの信頼性についての問題が生じたりするという欠点もある。
【0034】
なお、第二電力変換装置8として用いられるコンバータ装置には、入力電圧を検出する電圧検出回路8b1が設けられることが普通である。この点、実施の形態によれば、内蔵された電圧検出回路8b1を用いることで新たな追加部品が必要とされないので、ハードウェアおよびソフトウェアの面で構築が容易であるという利点もある。
【0035】
図3は、実施の形態にかかる電力システム1の動作を示すタイムチャートである。図3のタイムチャートの時刻t1において系統事故20が発生すると、接続点Xの直流電圧VDCが、平常運転電圧Vopeから急峻に上昇する。
【0036】
直流電圧VDCは、やがて時刻t2において所定閾値Vthに達する。VDC>Vthであることが判定された時刻t2において、この電圧判定に応答して第二電力変換制御回路8bが解列充電制御モードをオンとする。これに応答して第二電力変換回路8aが蓄電池10を充電するように電力変換を実施する。
【0037】
その後、時間TCRGが経過した時刻t3において、接続点Xの直流電圧VDCが、太陽電池パネル7の開放電圧VOCまで収束する。この電圧収束が確認された時刻t3で、解列充電制御モードがオフとされる。なお、解列充電制御モードをオフとする電圧収束の判定条件は、VDC≦VOCであってもよく、変形例としてVDC≦Vth_OCであってもよい。Vth_OCは、VOCより若干高い電圧に定めた電圧収束閾値である。
【0038】
図3に示すように、所定閾値Vthは、太陽電池パネル7の開放電圧VOCよりも高く、且つ太陽電池パネル7の絶縁耐圧Vpvrよりも低い値に定められることが好ましい。これにより解列充電制御モードを作動させるための所定閾値Vthを適正値に設定することができる。
【0039】
実施の形態では、所定閾値Vthは、太陽電池パネル7の開放電圧VOCよりも高く設定されている。第二電力変換装置8は、解列充電制御モードが開始された後に直流電圧VDCが開放電圧VOCまで低下した場合には、解列充電制御モードを停止するように構築されてもよい。
【0040】
蓄電池10は、充電上限電圧Vlimitを備えている。第二電力変換装置8は、解列充電制御モードの開始時または開始後に蓄電池10の電圧が充電上限電圧Vlimitに達した場合であっても解列充電制御モードを継続する過充電制御モードを備えてもよい。
【0041】
一般的に、蓄電池10のSOC上限に対応する充電上限電圧Vlimitは、蓄電池10が不可逆的に破壊してしまう物理的上限電圧よりも十分に低く定められている。また、系統事故20の発生時における太陽電池パネル7の過電圧対策という観点からは、その過電圧を吸収できる程度の短時間の充電動作を実施できればよい。そこで、過充電制御モードにおいては蓄電池10のSOCが100%であっても蓄電池10に対して一時的に非常時電力吸収を行わせることで、系統事故20の発生時における太陽電池パネル7の保護を優先させることができる。
【0042】
なお、この過充電制御モードを作動させるときには、蓄電池10の保護回路が持つ通常の保護機能に数秒から数十秒程度の時限をもたせることが好ましい。通常の保護機能は、蓄電池10が充電上限電圧Vlimitに達した時点で速やかに充電を停止させるように構築されるのが普通だからである。
【符号の説明】
【0043】
1 電力システム、1a 直流リンク発電システム、2 系統側開閉装置、3 連系トランス、4 交流側開閉装置、5 第一電力変換装置、5a 第一電力変換回路、5b 第一電力変換制御回路、6 直流側開閉装置、7 太陽電池パネル、8 第二電力変換装置、8a 第二電力変換回路、8b 第二電力変換制御回路、8b1 電圧検出回路、9 蓄電池用開閉装置、10 蓄電池、20 系統事故、S1 指令信号、VDC 直流電圧、Vlimit 充電上限電圧、VOC 開放電圧、Vs 系統電圧、Vth 所定閾値、X 接続点
【要約】
電力システムは、太陽電池パネルと、太陽電池パネルからの直流電力を交流電力に変換し、交流電力を電力系統へ出力するように構築された第一電力変換装置と、太陽電池パネルと第一電力変換装置との間に設けられ、事故発生時に開放される直流側開閉装置と、蓄電池と、太陽電池パネルと直流側開閉装置との間の接続点に接続され、直流側開閉装置の開放に応じて接続点の直流電圧が予め定められた所定閾値を超えた場合に、直流電力を変換することで蓄電池を充電する解列充電制御モードを実施するように構築された第二電力変換装置と、を備える。第二電力変換装置は、システム上位監視装置からの指令信号に基づいて蓄電池を充電する通常充電制御モードを備える。解列充電制御モードは、指令信号で通常充電制御モードが指示されていなくとも接続点の直流電圧が所定閾値を超えた場合に実施されることが好ましい。
図1
図2
図3