(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内輪の外周面に設けられた内輪軌道と、外輪の内周面に設けられた外輪軌道との間に複数の転動体が転動自在に配置された軸受ユニットの中心軸方向の一端側から前記内輪を支持する内輪支持台と、
前記軸受ユニットの中心軸方向の一端側に前記内輪支持台が前記内輪と対向して配置され、前記軸受ユニットの中心軸方向の一端側とは反対側にハブ本体がシャフト部の先端を前記内輪と対向させて配置され、かつ前記シャフト部の先端が前記内輪の内周面に接触した状態で、前記ハブ本体を前記内輪に向かって加圧して前記内輪支持台に前記内輪を押圧固定すると共に、前記内輪の内周面に前記シャフト部を圧入するシャフト圧入部と、
前記内輪が前記内輪支持台に押圧固定された状態で前記外輪を前記外輪の中心軸回りに回転させる外輪回転駆動部と、
前記内輪が前記内輪支持台から離間した状態で前記軸受ユニットの中心軸方向の一端側から前記外輪を支持し、シャフト圧入部がハブ本体を加圧したときの圧力で前記外輪を支持しながら前記内輪と共に加圧方向に移動する外輪支持台と、
を備えているハブユニット製造装置。
前記外輪支持台は、前記軸受ユニットの重量よりも強い弾発力を有し、かつ前記シャフト圧入部が前記ハブ本体を加圧するときの荷重で弾性変形する弾性部材に支持されている請求項1から請求項3の何れか一項に記載のハブユニット製造装置。
前記回転ピンは、前記回転台に前記軸受ユニットの中心軸方向に昇降可能に支持され、前記内輪が前記内輪支持台に押圧固定された状態で前記回転台の回転により回動しながら上昇し、先端が前記取付け部の下面よりも上方に位置するまで上昇する請求項5又は請求項6に記載のハブユニット製造装置。
前記回転ピンが上昇の途中で前記取付け部の下面に当接したときに前記外輪が共回りしないように前記外輪を制動する制動装置を更に備えている請求項7に記載のハブユニット製造装置。
前記外輪回転駆動部は、前記回転台の回転方向に点在し、前記取付け部よりも数が多い複数の前記回転ピンを備え、前記複数の回転ピンは、上昇途中で前記取付け部の下面に先端が当接したときに上昇が停止する請求項7に記載のハブユニット製造装置。
前記回転ピンは、予め、前記内輪支持台上に軸受ユニットを配置したとき、前記軸受ユニットの中心軸方向から見て前記取付け部と重畳しない位置に配置されていることを特徴とする請求項5から請求項7の何れか一項に記載のハブユニット製造装置。
前記内輪が前記内輪支持台と対向して配置された前記軸受ユニット上に前記ハブ本体を前記シャフト部の一端側が前記内輪と対向するようにして搬送するハブ本体搬送部を更に備えている請求項1に記載のハブユニット製造装置。
前記軸受ユニットは、前記内輪の内輪軌道と前記外輪の外輪軌道との間に前記複数の転動体が転動自在に配置された軸受列を2つ備え、更に2つの前記内輪の各々の内周面に亘って圧入された連結環を備え、
前記内輪支持台は、2つの前記内輪の各々の内周面に前記シャフト部を圧入する際に前記シャフト部で2つの前記内輪の各々の内周面から押し出された前記連結環が通り抜けて排除される貫通孔を備えている請求項1に記載のハブユニット製造装置。
前記第2の位置は、前記内輪の内周面に前記シャフト部を圧入するときの荷重よりも大きい荷重を付加したときの位置である請求項13又は14に記載のハブユニット製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、発明の実施形態を説明するための図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
(実施形態1)
この実施形態1では、自動車などの車輪を懸架装置に回転自在に支持するハブユニットを製造するハブユニット製造装置及びハブユニットの製造方法について説明する。また、この実施形態1では、ハブユニットの製造に用いられる軸受ユニットとして、外輪の中心軸方向の一端側が内輪の中心軸方向の一端側よりも突出する軸受ユニットを用いた場合について説明する。
【0012】
<ハブユニット>
まず、本発明の実施形態1に係るハブユニット製造装置30で製造されるハブユニット1について説明する。
図1に示すように、ハブユニット1は、ハブ本体2と、このハブ本体2のシャフト部3に外嵌された軸受ユニット10とを備えている。
【0013】
<ハブ本体>
ハブ本体2は、例えば中空円筒形状のシャフト部3と、このシャフト部3の中心軸方向において一端側とは反対側に設けられたフランジ部4と、フランジ部4のシャフト部3側とは反対側にシャフト部3と同軸で設けられた外筒部5とを備えている。フランジ部4は、車輪を取り付けるためのボルトが挿入される貫通孔4aと、圧入時に軸受ユニット10が突き当たることで軸受ユニット10が位置決めされる圧入基準面(突き当て面)4bとを有する。
【0014】
<軸受ユニット>
軸受ユニット10は、ハブ本体2の圧入基準面4bに突き当たった状態でシャフト部3に外嵌されている。軸受ユニット10は、各々が内周面及び外周面を有し、その各々の外周面に内輪軌道11a,12aが設けられた2つの内輪11,12と、内周面及び外周面を有し、その内周面に2つの外輪軌道13a,13bが2つの内輪11,12の各々の内輪軌道11a,12aに個々に対向して設けられた外輪13とを備えている。2つの内輪11,12は、環状の間座17を介して外輪13の中心軸方向に直列に配置されており、この間座17と共にハブ本体2のシャフト部3に外嵌されている。外輪13は、その外周面から突出して周方向に所定の間隔を置いて配置された複数の取付け部14(
図6参照)を備えている。
【0015】
また、軸受ユニット10は、内輪11の内輪軌道11aと外輪13の外輪軌道13aとの間に配置された転動体としての複数の円すいころ15aと、この複数の円すいころ15aを所定の間隔で転動自在に保持する保持器16aとを備えている。
また、軸受ユニット10は、内輪12の内輪軌道12aと外輪13の外輪軌道13bとの間に配置された転動体としての複数の円すいころ15bと、この複数の円すいころ15bを所定の間隔で転動自在に保持する保持器16bとを備えている。
また、軸受ユニット10は、外輪13の中心軸方向の一端側と内輪11との間に配置された環状のエンコーダシール18と、外輪13の中心軸方向の一端側とは反対側の他端側と内輪12との間に配置された環状の外装シール19とを備えている。外装シール19は、ハブ本体2に軸受ユニット10を取り付ける前の段階において、既に外輪13の中心軸方向の他端側と内輪12との間に圧入されている。一方、エンコーダシール18は、ハブ本体2に軸受ユニット10を取り付けた後に外輪13の中心軸方向の一端側と内輪11との間に圧入される。
【0016】
ここで、この実施形態1の軸受ユニット10は、内輪11の内輪軌道11aと外輪13の外輪軌道13aとの間に複数の円すいころ15aが転動自在に配置された第1の軸受列と、内輪11の内輪軌道11aと外輪13の外輪軌道13aとの間に複数の円すいころ15aが転動自在に配置された第2の軸受列とを備えている。すなわち、この実施形態1の軸受ユニット10は、2つの軸受列を備えている。そして、軸受ユニット10は、ハブユニット1の製造において、ハブ本体2のシャフト部3に外嵌されるが、ハブ本体2のシャフト部3に外嵌される前の軸受ユニット10は、
図3に示すように、2つの内輪11,12の各々の内周面(挿通孔)に亘って圧入された連結環(連結部材)20を備えている。この連結環20は、2つの内輪11,12の各々の内周面の形状(シャフト部が挿通する貫通孔の形状)に合わせて円柱形状で形成され、例えば弾性力を有する合成樹脂で形成されている。この連結環20は、外径が2つの内輪11,12の各々の内径よりも若干大きく設定されているので、2つの内輪11,12の各々の内周面を摩擦力で把持し、2つの内輪11,12が外輪13から搬送中に脱落するのを防止している。また、2つの内輪11,12にハブ本体2のシャフト部3を一括して圧入することができるので、2つの軸受を別々に圧入する場合と比較して、圧入作業のサイクルタイムを短縮することができる。この連結環20は、
図9に示すように、2つの内輪11,12の各々の内周面にハブ本体2のシャフト部3を圧入する際に、シャフト部3によって内輪11,12の各々の内周面から押し出される。
外輪13は、複数の円すいころ15a,15bを介して2つの内輪11,12の各々に保持されている。
【0017】
<ハブユニット製造装置>
次に、ハブユニット1の製造に用いられるハブユニット製造装置30について、
図2及びハブユニットの製造方法を説明するための
図3〜
図10を用いて説明する。
図2及び
図4に示すように、ハブユニット製造装置30は、ハウジング31と、軸受ユニット10を載置する軸受載置部41と、軸受載置部41に載置された軸受ユニット10に対して内輪11,12の各々の内周面にハブ本体2のシャフト部3を圧入するシャフト圧入部51と、軸受載置部41に載置された軸受ユニット10に対して外輪13を中心軸回りに回転させる外輪回転駆動部61とを備えている。
【0018】
ハウジング31は、基台部32と、この基台部32から垂直方向に離間して配置された天板部33と、基台部32及び天板部33に連結された支柱部34とを備えている。軸受載置部41及び外輪回転駆動部61は基台部32に支持され、シャフト圧入部51は天板部33に支持されている。そして、シャフト圧入部51は、軸受載置部41及び外輪回転駆動部61の上方に互いに離間して配置されている。
ここで、軸受載置部41への軸受ユニット10の搬送及び軸受載置部41の上方へのハブ本体2の搬送は装置による自動搬送で行うことができるが、軸受ユニット10及びハブ本体2が軽量である場合は作業者による手作業で搬送することもできるので、この実施形態1では軸受ユニット10及びハブ本体2の搬送を手作業で行う場合について説明する。
【0019】
<軸受載置部>
軸受載置部41は、
図4に示すように、軸受ユニット10の中心軸方向の一端側から内輪11,12を支持する内輪支持台42を備えている。また、軸受載置部41は、
図3に示すように、内輪11,12が内輪支持台42から離間して浮いた状態で軸受ユニット10の中心軸方向の一端側から外輪13を支持し、
図4に示すように、シャフト圧入部51がハブ本体2を加圧したときの圧力で外輪13を支持しながら内輪11,12と共に加圧方向に移動する外輪支持台43を備えている。
【0020】
<内輪支持台>
内輪支持台42は、外形が軸受ユニット10の内輪11,12の端面形状に合わせて円形状で形成され、軸受ユニット10の中心軸方向の一端側に位置する内輪11の端面全域を支持するようになっている。また、内輪支持台42は、
図9に示すように、2つの内輪11,12の各々の内周面にハブ本体2のシャフト部3を圧入する際にシャフト部3で2つの内輪11,12の各々の内周面から押し出された連結環20が通り抜けて排除される貫通孔42aを中央部に備えている。また、内輪支持台42は、軸受ユニット10の内輪11,12の各々の内周面にハブ本体2のシャフト部3を圧入する際にシャフト圧入部51がハブ本体2に付加する荷重(加圧力)を受けても動かないようにハウジング31の基台部32に直接又は他の部材を介して支持固定されている。
【0021】
<シャフト圧入部>
シャフト圧入部51は、
図4に示すように、軸受ユニット10の中心軸方向の一端側に内輪支持台42が内輪11と対向して配置され、軸受ユニット10の中心軸方向の一端側とは反対側にハブ本体2がシャフト部3の一端側を内輪12と対向させて配置され、かつシャフト部3の先端が内輪12の内周面に接触した状態で、ハブ本体2を内輪11,12に向かって加圧して内輪支持台42に内輪11,12を押圧固定すると共に、
図9に示すように、内輪11,12の内周面にシャフト部3を圧入する。このシャフト圧入部51は、
図2に示すように、天板部33にシリンダチューブ52aが取り付けられ、シリンダロッド52bの先端に圧入治具53が取り付けられた加圧シリンダ52を備えている。そして、内輪支持台42への内輪11,12の押圧固定及び内輪11,12の各々の内周面へのシャフト部3の圧入は、加圧シリンダ52の圧入治具53をハブ本体2の外筒部5に当接した状態で加圧シリンダ52が所定の荷重でハブ本体2を加圧することによって行われる。圧入治具53は、ハブ本体2の外筒部5に当接した状態でハブ本体2と共に内輪11,12に向かって下降移動する。圧入治具53は、例えば平板状で形成されている。
【0022】
<外輪支持台>
図3に示すように、外輪支持台43は、外形が軸受ユニット10の外輪13の端面形状に合わせて円形状で形成され、外輪の端面全域を支持するようになっている。また、外輪支持台43は、中央部に貫通孔43aを有する環状形状で形成され、この貫通孔43aに内輪支持台42が配置されている。
外輪支持台43は外輪13の一端側を支持する外輪支持面部43bを有する。この外輪支持面部43bでは外輪13が回転する際に外輪13の一端側が圧接しながら滑る(摺動する)。したがって、外輪支持台43の外輪支持面部43bは硬度がHRC40以上の鋼材で表面粗さがRa1.6以下の研削面であることが好ましい。
外輪支持台43は、軸受ユニット10の重量よりも強い弾発力を有し、かつシャフト圧入部51がハブ本体2を加圧するときの荷重(加圧力)で弾性変形する弾性部材としての例えば圧縮ばね44に、外輪支持面部43bとは反対側から支持されている。圧縮ばね44は、一端側が外輪支持台43に連結され、一端側とは反対側の他端側がハウジング31の基台部32(
図2参照)に直接又は他の部材を介して支持されている。
【0023】
外輪支持台43は、
図3に示すように、外輪13の一端側が内輪12の一端側よりも突出する場合、内輪11,12が内輪支持台42から離間して浮いた状態で外輪13を支持する位置から、
図4に示すように、シャフト圧入部51がハブ本体2を加圧したときの荷重で圧縮ばね44が縮んで加圧方向に下降移動する。そして、外輪支持台43は、
図4に示すように、内輪11,12が内輪支持台42に支持されたときに下降移動が停止する。そして、外輪支持台43は、シャフト圧入部51がハブ本体2への加圧を解除(除荷)したときに圧縮ばね44の弾発力で元の位置に戻る。
ここで、外輪支持台43を下側から支持する圧縮ばね44の弾発力は軸受ユニット10の重量よりも強ければよく、例えば軸受ユニット10の重量が50Nの場合、圧縮ばね44の弾発力は50Nを超えて100N以下とすることが好ましい。
【0024】
<外輪回転駆動部>
外輪回転駆動部61は、
図5に示すように、軸受ユニット10の中心軸と同軸で回転する回転台62と、この回転台62の回転により軸受ユニット10の中心軸と同軸で回転移動するように回転台62に支持され、一部が外輪13の周方向から取付け部14の厚さ方向の側面に引っ掛かって(当接して)回転台62の回転力を外輪13に伝達する回転ピン63とを備えている。
【0025】
<回転台>
回転台62は、外形が円形状で形成されている。また、回転台62は、中央部に貫通孔62aを有する環状形状で形成され、この貫通孔62aに内輪支持台42及び外輪支持台43が配置されている。回転台62は、内輪支持台42及び外輪支持台43の中心軸と同軸でモータなどの駆動源によって外輪支持台43の周囲で回転する。
【0026】
<回転ピン>
回転ピン63は、回転台62の中心軸方向に昇降可能になっている。回転ピン63は、例えば回転台62に支持されたエアシリンダや、ラック・アンド・ピニオン機構などのピン昇降器によって回転台62の回転時でも昇降可能になっている。
回転ピン63は、
図3及び
図4に示すように、軸受載置部41に軸受ユニット10を載置したときや、シャフト圧入部51からの加圧で内輪支持台42に内輪11,12を押圧固定したときは外輪13の取付け部14の下面よりも下方に位置している。そして、回転ピン63は、
図5に示すように、内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定された状態で回転台62の回転により回転移動しながら上昇し、先端が取付け部14の下面よりも上方に位置するまで上昇する。そして、回転ピン63は、外輪13の取付け部14の側面に引っ掛かって外輪13を回転させる。回転ピン63の昇降を行うピン昇降器は、制御部によって制御される。
なお、
図5に示すように、回転ピン63には、回転台62に当接して回転ピン63の上昇を制御するストッパ63aが設けられている。
また、回転ピン63は複数本設けてもよいが、この実施形態1のように1本とすることが好ましい。また、回転ピン63としては、丸棒を用いることが好ましい。
【0027】
<ハブユニットの製造方法>
次に、ハブユニット製造装置30を用いたハブユニット1の製造方法について説明する。以下に示すハブユニット1の製造方法は、ハブユニット1を備えた車両の製造方法、及びハブユニット1を備えた機械の製造方法に適用することができる。ここで、機械とは、動力が人力である器械を含むものである。
まず、
図3に示すハブ本体2及び軸受ユニット10を準備する。この実施形態1の軸受ユニット10は、外輪13の中心軸方向の一端側が内輪11の中心軸方向の一端側よりも突出している。また、軸受ユニット10は、ハブ本体2のシャフト部3に圧入される前の段階なので、エンコーダシール18を備えていない。
【0028】
次に、
図3に示すように、ハブユニット製造装置30の軸受載置部41上に軸受ユニット10を軸受ユニット10の中心軸方向の一端側が軸受載置部41と向かい合うようにして載置する。この軸受ユニット10の軸受載置部41への載置は、作業者による手作業で内輪11,12の中心軸と内輪支持台42の中心軸とが同軸となるように位置合わせしながら行う。位置合わせは、例えば外輪支持台43や内輪支持台42に位置決め用の突起を設けて置くことで容易に行うことができる。
この軸受載置工程において、軸受ユニット10の中心軸方向の一端側では、外輪13の一端側が内輪11の一端側よりも突出している。したがって、軸受ユニット10は、内輪11,12が内輪支持台42から離間し、外輪13の一端側が外輪支持台43に支持された状態で軸受載置部41に載置される。
また、この軸受載置工程において、軸受ユニット10の中心軸方向の一端側では、内輪支持台42が内輪11と対向して配置され、かつ外輪支持台43が外輪13と対向して配置される。
【0029】
次に、
図3に示すように、軸受載置部41に載置された軸受ユニット10の上方にハブ本体2をシャフト部3が軸受ユニット10側に位置するように配置する。このハブ本体2の軸受ユニット10上への配置も作業者による手作業で内輪11,12の中心軸とシャフト部3の中心軸とが同軸となるように位置合わせしながら行う。この位置合わせは、例えば、軸受ユニット10上において、軸受ユニット10の中心軸方向に昇降移動が可能で、軸受ユニット10の中心軸方向と直交する二次元方向に移動が可能な保持チャックにハブ本体2を保持させることで容易に行うことができる。
このハブ本体配置工程において、軸受ユニット10の中心軸方向の一端側とは反対側の他端側に、シャフト部3の先端を内輪12と対向させた状態でハブ本体2が配置される。
【0030】
次に、
図4に示すように、軸受ユニット10の中心軸方向の一端側に内輪支持台42が内輪11と対向して配置され、軸受ユニット10の中心軸方向の一端側とは反対側にハブ本体2がシャフト部3の先端を内輪12と対向させて配置され、かつシャフト部3の先端が内輪12の内周面に接触した状態で、シャフト圧入部51がハブ本体2を内輪11,12に向かって第1の荷重P1で加圧して内輪支持台42に内輪11,12を押圧固定する。このときの第1の荷重P1は、内輪11,12が内輪支持台42に向かって下降移動して内輪支持台42に押圧固定され、かつシャフト部3の内輪11,12の内周面への圧入(侵入)が途中で停止する程度の圧力で行う。例えば、この後の工程で軸受ユニット10の2つの内輪11,12の各々の内周面にハブ本体2のシャフト部3を圧入するときに付加する第2の荷重P2(
図9参照)の1/100程度の圧力で行うことが好ましい。一例として、圧入時の第2の荷重P2が20KN〜50KNの場合は、200Nから500N程度の第1の荷重P1で加圧する。内輪支持台42に軸受ユニット10の内輪11,12を押圧固定する理由は、この後の工程で外輪13を回転させる際に内輪11,12が外輪13と共回りするのを防止するためである。
【0031】
この押圧工程において、外輪支持台43は、内輪11,12が内輪支持台42から浮いた状態で外輪13を支持する第1の位置(
図3参照)から外輪13を支持しながら内輪11,12と共に加圧方向に下降移動し、内輪11,12が内輪支持台42に支持される第2の位置(
図4参照)で内輪11,12と共に下降移動が停止する。
次に、
図5に示すように、内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定された状態で回転台62を第1の回転速度で回転させながら回転ピン63を回転ピン63の先端が外輪13の取付け部14の下面よりも上方に突出するまで上昇させる。
【0032】
この回転ピン上昇工程において、回転ピン63は回転台62の回転により外輪13の中心軸と同軸で回転移動するので、外輪13の周方向から取付け部14の厚さ方向の側面に引っ掛かって外輪13を回転させる。このときの回転台62の第1の回転速度は、2つの内輪11,12の各々の内周面にハブ本体2のシャフト部3を圧入するときの第2の回転速度よりも遅い速度、例えば60〜100rpm程度で行うことが好ましい。これは、回転ピン63が外輪13の取付け部14の側面に当接したときの衝撃を緩和するためである。
【0033】
また、この回転ピン上昇工程において、回転ピン63は、回転台62から外輪13の取付け部14側に向かって上昇移動するが、
図5及び
図6に示すように、この回転ピン63が上昇移動する途中で回転ピン63の先端が外輪13の取付け部14の下面に当接しなければ、取付け部14の下面よりも上方に回転ピン63の先端が位置するまで回転ピン63は上昇する。一方、
図7及び
図8に示すように、この回転ピン63が上昇移動する途中で回転ピン63の先端が外輪13の取付け部14の下面に当接したときは、外輪13の取付け部14と対向しない位置まで回転ピン63が回転移動して取付け部14の下面よりも上方に先端が位置するまで回転ピン63は上昇移動する。
また、この回転ピン上昇工程において、外輪13は、一端側が圧縮ばね44の弾発力で外輪支持台43の外輪支持面部43bに支持された状態でこの外輪支持面部43bを滑りながら回転する。
【0034】
次に、
図9に示すように、回転台62が第1の回転速度よりも速い所定の第2の回転速度になったら、内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定され、かつ外輪13を外輪13の中心軸回りに回転させた状態で、シャフト圧入部51がハブ本体2を内輪11,12に向かって第1の荷重P1よりも大きい第2の荷重P2で加圧して内輪11,12の内周面にシャフト部3を圧入する。シャフト部3の圧入は、圧入治具53と共にハブ本体2が内輪11,12に向かって下降移動し、ハブ本体2の圧入基準面4bに軸受ユニット10の中心軸方向の一端側とは反対側に位置する内輪12の端面が当接するまで行う。
【0035】
この圧入工程において、軸受ユニット10の外輪13は回転ピン63から伝達された回転台62の回転によって回転するが、軸受ユニット10の内輪11,12はシャフト圧入部51の加圧で内輪支持台42に押圧固定されているので、回転せず静止している。このように、2つの内輪11,12が回転しない状態で外輪13を相対回転させることによって円すいころ15a,15bが転動し、円すいころ15a,15bに調心作用が働くため、正規位置に円すいころ15a,15bが配列された状態で2つの内輪11,12の各々の内周面にシャフト部3を圧入することができる。シャフト部3を圧入するときの回転台62の回転は、円すいころ15a,15bに調心作用が十分に働く回転数、例えば200rpm程度の第2の回転数で行うことが好ましい。
ここで、内輪11,12の軸方向外端部には、
図9に示すように、円すいころ15a,15bの軸方向端面が当接する段差部(鍔部)11x,12xが設けられている。この段差部11x,12xに円すいころ15a,15bの軸方向端面が当接していないと、すなわち正規位置に配列されていないと、2つの内輪11,12の各々の内周面にシャフト部3を圧入する際に、圧痕の発生が懸念される。したがって、この実施形態1のように、外輪13を回転させながら2つの内輪11,12の各々の内周面にシャフト部3を圧入することが重要である。
【0036】
また、この圧入工程において、2つの内輪11,12の各々の内周面に内嵌された連結環20は、
図9に示すように、シャフト部3の先端で2つの内輪11,12の各々の内周面から押し出され、内輪支持台42の貫通孔42aを通り抜けて排除される。
また、この圧入工程において、外輪13は、一端側が圧縮ばね44の弾発力で外輪支持台43の外輪支持面部43bに支持された状態でこの外輪支持面部43bを滑りながら回転する。
【0037】
次に、
図10に示すように、内輪12の端面がハブ本体2の圧入基準面4bに当接した後、内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定され、かつ外輪13を外輪13の中心軸回りに回転させた状態で、シャフト圧入部51がハブ本体2を内輪11,12に向かって第2の荷重P2よりも大きい第3の荷重P3で加圧して、確実に内輪12の端面がハブ本体2の圧入基準面4bに突き当たるようにダメ押しを行う。このときの第3の荷重P3は、シャフト部3を圧入するときの第2の荷重P2の3〜10程度、例えば150〜200KN程度で行う。
このダメ押し工程により、ハブ本体2のシャフト部3に軸受ユニット10が外嵌されたハブユニット1がほぼ完成する。ほぼ完成したハブユニット1をハブユニット製造装置30から取り外すため、シャフト圧入部51の加圧を解除、回転台62の停止及び回転ピン63の下降移動を行う。そして、ハブユニット製造装置30から取り外したハブユニット1に対し、外輪13の中心軸方向の一端側と内輪11との間にエンコーダシール18を圧入する。
【0038】
<実施形態1の効果>
次に、この実施形態1の効果について説明する。
この実施形態1のハブユニット製造装置30は、2つの内輪11,12が軸受ユニット10の中心軸方向の一端側から内輪支持台42に押圧固定(支持)された状態で、シャフト圧入部51がハブ本体2を内輪11,12に向かって加圧して2つの内輪11,12の各々の内周面にハブ本体2のシャフト部3を圧入するので、特許文献1の従来技術とは異なり、軸受ユニット10の2つの内輪11,12はシャフト部3の圧入方向に下降移動しない。このため、特許文献1の従来技術では、内輪がシャフト部に沿って下降移動するときに、内輪を加圧する方向とは反対方向の反力(支持用コイルバネ24,25の弾発力)が外輪に付加されるが、このような反力はこの実施形態1では付加されない。換言すれば、内輪と外輪との間で内輪の下降移動に伴うせん断応力が付加されるようなことはない。この実施形態1では、外輪13には圧縮ばね44の弾発力だけが付加される。したがって、軸受ユニットを下降移動して圧入する従来技術と比較して軸受ユニット10の外輪13を円滑に回転させることができるので、ハブユニット1をより高精度で生産することができる。
【0039】
また、特許文献1では、外輪を支持する保持部が回転しながら昇降移動するようになっており、機構が複雑で装置が大型する。これに対し、この実施形態1のハブユニット製造装置30では、外輪13を保持しながら下降させる保持部が不要であり、しかも外輪13を回転させる外輪回転駆動部61が基本的に昇降移動しない。この実施形態1の外輪支持台43は下降移動するが、この下降移動は外輪13の一端側が内輪11の一端側よりも突出する突出量を吸収するためのものであり、圧入の開始から終了までの移動を吸収するものではない。したがって、この実施形態1のハブユニット製造装置30は、従来の製造装置と比較して小型化を図ることができる。
【0040】
また、この実施形態1のハブユニット製造装置30は、内輪11,12が内輪支持台42から離間して浮いた状態で外輪13を支持する位置から内輪11,12が内輪支持台42に支持される位置まで、シャフト圧入部51がハブ本体2を加圧したときの荷重で外輪13を支持しながら内輪11,12と共に加圧方向に下降移動する外輪支持台43を備えている。このため、外輪13の一端側が内輪11の一端側よりも突出する軸受ユニット10であっても、内輪支持台42に内輪11,12を押圧固定した状態で外輪13を安定させて回転させることができると共に、2つの内輪11,12の各々の内周面にハブ本体2のシャフト部3を確実に圧入することができる。
【0041】
また、この実施形態1のハブユニット製造装置30は、外輪支持台43が外輪13の一端側の全面を支持するので、外輪13の回転を安定化させることができる。
また、この実施形態1のハブユニット製造装置30は、外輪13の取付け部14の側面に回転ピン63が当接し、回転ピン63が円周方向に取付け部14を移動させることによって外輪13を回転させているので、外輪の側面に回転ローラなどを押しつけて外輪を回転させる場合と比較してラジアル方向の力が付加されないので、外輪13を円滑に回転させることができる。
【0042】
また、この実施形態1のハブユニット製造装置30は、2つの内輪11,12の各々の内周面にハブ本体2のシャフト部3を圧入する際にシャフト部3で2つの内輪11,12の各々の内周面から押し出された連結環20が通り抜けて排除される貫通孔32aを内輪支持台42が備えているので、2つの内輪11,12の各々の内周面へのシャフト部3の圧入と同時に、2つの内輪11,12の各々の内周面(挿通孔)に亘って圧入されたていた連結環20を取り除くことができる。
なお、この実施形態1では、外輪支持台43を備えたハブユニット製造装置30について説明したが、変形例として
図29に示すように、外輪支持台43を省略してもよい。この場合、軸受ユニット10は、外輪13の一端側が回転台62と内輪支持台42との間(貫通孔62a内)に配置され、内輪11の一端側が内輪支持台42に支持された状態で軸受載置部41に載置される。
この変形例においても、上述の実施形態1と同様に、ハブユニット1をより高精度で生産することが可能である。
また、上述の実施形態1では、回転ピン63が昇降する場合について説明したが、回転ピン63は回転台62に固定してもよい。この場合、回転ピン63は、外輪13の取付け部14の側面に引っ掛かって外輪13を回転させることが可能な長さに設定することが好ましい。
また、回転ピン63は、予め、内輪支持台42上に軸受ユニット10を配置したときに軸受ユニット10の中心軸方向から見て取付け部14とは重畳しない位置に配置するようにしてもよい。
また、内輪支持台42上に軸受ユニット10を配置したときに取付け部14と回転ピン63とが重畳しないように軸受ユニット10と回転ピン63とを決まった位相で配置するようにしてもよい。
【0043】
(実施形態2)
この実施形態2のハブユニット製造装置30Aは、上述した実施形態1のハブユニット製造装置30とほぼ同様の構成になっており、以下の構成が異なっている。
すなわち、
図11に示すように、この実施形態2のハブユニット製造装置30Aは、外輪13の回転を制動する制動装置としての制動エアシリンダ66を更に備えている。この制動エアシリンダ66は、シリンダチューブ66aがハウジング31に直接又は他の部材を介して支持され、シリンダロッド66bが外輪13の側面に対して前後進し、シリンダロッド66bの先端を外輪13の側面に当接させることによって外輪13の回転を制動する。
図11では、シリンダロッド66bの先端が外輪13の側面に当接した状態を示している。
【0044】
制動エアシリンダ66は、上述したハブユニット1の製造工程中の回転ピン上昇工程において、回転ピン63が上昇の途中で外輪13の取付け部14の下面に当接したときに外輪13が共回りしないように、外輪13の側面にシリンダロッド66bの先端を当接させて外輪13の回転を制動する。制動エアシリンダ66は、シャフト圧入部51の加圧で内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定されるまでは外輪13の側面に対して非接触状態である。そして、内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定された後、回転ピン63が上昇して外輪13の取付け部14の側面に引っ掛かるまでは外輪13の側面に対して接触状態であり、外輪13に制動力が付加される。
【0045】
回転ピン上昇工程では、制動エアシリンダ66は、外輪13に制動力を付加しているので、回転ピン63が上昇移動する途中で回転ピン63の先端が外輪13の取付け部14の下面に当接しても外輪13の共回りを防止できる。これにより、回転ピン63が上昇移動する途中で回転ピン63の先端が外輪13の取付け部14の下面に当接し、外輪13の取付け部14と対向しない位置まで回転ピン63が回転移動して外輪13の側面に回転ピン63が引っ掛かるまでの動きを円滑に行うことができる。
【0046】
(実施形態3)
この実施形態3は、外輪回転駆動部61の回転ピンの構成を変えたものである。すなわち、この実施形態3のハブユニット製造装置30Bは、
図12に示すように、外輪回転駆動部61が実施形態1の回転ピン63に代えて回転ピン64を備えている。回転ピン64は、回転台62のピン昇降器に連結された昇降連結部64aと、端面を有する先頭部64bと、一端側が昇降連結部64aに連結され、他端側が先頭部64bに連結された弾性部材としての圧縮ばね64cとを備えている。回転ピン64は、回転台62から上昇する途中で先頭部64bの先端が外輪13の取付け部14の下面に当接したときに圧縮ばね64cが縮んで(弾性変形して)先頭部64bの上昇が停止する。このように、昇降連結部64aと先頭部64bとの間に圧縮ばね64cが介在する回転ピン64を採用することにより、回転台62から上昇する途中で先頭部64bの先端が外輪13の取付け部14の下面に当接したときに回転ピン64が外輪13の取付け部14を突き上げる力を緩和することができる。これにより、回転ピン64が上昇移動する途中で回転ピン64の先端が外輪13の取付け部14の下面に当接し、外輪13の取付け部14と対向しない位置まで回転ピン64が回転移動して外輪13の側面に回転ピン64が引っ掛かるまでの動きを円滑に行うことができる。また、回転台62をゆっくり回転する必要がなくなるので、サイクルタイム短縮に有効である。
なお、回転ピン64の数は、外輪13の取付け部14の数よりも多いことが好ましい。
【0047】
(実施形態4)
この実施形態4のハブユニット製造装置30Cは、上述した実施形態1のハブユニット製造装置30とほぼ同様の構成になっており、以下の構成が異なっている。
すなわち、
図13及び
図14に示すように、この実施形態4のハブユニット製造装置30Cは、更に、内輪12の圧入基準面4b側の端面と圧入基準面4bとの間の距離71aを測定する距離測定器としてのシグマゲージ(Σゲージ)71と、シグマゲージ71の測定と同時に圧入治具53の移動方向の第1の位置72bと、圧入治具53が第1の位置72bから軸受ユニット10側に移動した第2の位置72cとを測定する位置測定器としてのリニアスケール72と、を備えている。また、この実施形態4のハブユニット製造装置30Cは、更に軸受ユニット10の内輪11,12とハブ本体2のシャフト部3との圧入の正常の有無を判定する圧入判定部73及び報知部74を備えている。
【0048】
圧入判定部73は、シグマゲージ71が測定した距離71aを「A」、リニアスケール72が測定した第1の位置72bを「B」、リニアスケール72が測定した第2の位置72cを「C」としてA=|B−C|を満たすときに内輪11,12とシャフト部3との圧入を「正常」と判定する。また、圧入判定部73は、A=|B−C|を満たさないときに内輪11,12とシャフト部3との圧入を「異常」と判定する。また、圧入判定部73は、判定結果を報知部74に出力する。これらの判定機能及び出力機能は、圧入判定部73内の記憶部に記憶された圧入判定プラグラムによって動作する。
【0049】
報知部74は、表示装置、印刷装置、音声出力装置などによって構成されている。そして、報知部74は、圧入判定部73の判定結果を報知するようになっている。
ここで、前述の実施形態1で説明したように、ハブユニット1の製造においては、シャフト圧入部51(圧入治具53)がハブ本体2を内輪11,12に向かって第2の荷重P2で加圧して、ハブ本体2の圧入基準面4bに軸受ユニット10の中心軸方向の一端側とは反対側に位置する内輪12の端面が当接するまで圧入を行った後、
図15に示すように、シャフト圧入部51(圧入治具53)がハブ本体2を内輪11,12に向かって第2の荷重P2よりも大きい第3の荷重P3で加圧して、確実に内輪12の端面がハブ本体2の圧入基準面4bに突き当たるようにダメ押しを行っている。
【0050】
したがって、圧入治具53の第2の位置72cを、内輪11,12の内周面にシャフト部3を圧入するときの第2の荷重P2よりも大きい第3の荷重P3を付加したときの位置とすることで、内輪12の端面がハブ本体2の圧入基準面4bに突き当たるまで確実に圧入されたかの判定を行うことができる。第1及び第2の位置72b,72cは、内輪11,12又はシャフト部3の中心軸方向であることが好ましい。また、2つの位置のうち、一方は、圧入治具53の厚さ方向の上面又は下面であることが好ましい。
【0051】
(実施形態5)
上述の実施形態1では、ハブユニット1の製造に用いられる軸受ユニットとして、外輪の中心軸方向の一端側が内輪の中心軸方向の一端側よりも突出する軸受ユニット10を用いた場合について説明した。これに対し、この実施形態5では、軸受ユニットとして、内輪11の中心軸方向の一端側が外輪13の中心軸方向の一端側よりも突出する軸受ユニット10Aを用いた場合について説明する。
図16に示すように、この実施形態2のハブユニット1Aは、ハブ本体2と、このハブ本体2のシャフト部3に外嵌された軸受ユニット10Aとを備えている。軸受ユニット10Aは、実施形態1の軸受ユニット10と基本的に同様の構成になっているが、内輪11の中心軸方向の一端側が外輪13の中心軸方向の一端側よりも突出した構成になっている。その他の構成は上述の実施形態1の軸受ユニット10と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0052】
次に、ハブユニット製造装置30を用いたハブユニット1Aの製造方法について説明する。この実施形態2のハブユニット1Aの製造方法においても、実施形態1のハブユニット製造装置30をそのまま使用することができる。
まず、
図17に示すハブ本体2及び軸受ユニット10Aを準備する。
次に、
図17に示すように、ハブユニット製造装置30の軸受載置部41上に軸受ユニット10Aを軸受ユニット10Aの中心軸方向の一端側が軸受載置部41側と向かい合うようにして載置する。この軸受ユニット10Aの軸受載置部41への載置は、内輪11,12の中心軸と内輪支持台42の中心軸とが同軸となるように位置合わせしながら行う。
【0053】
この軸受載置工程において、軸受ユニット10Aの中心軸方向の一端側では、内輪11の一端側が外輪13の一端側よりも突出している。したがって、軸受ユニット10Aは、外輪13が外輪支持台43から離間し、内輪11の一端側が内輪支持台42に支持された状態で軸受載置部41に載置される。
また、この軸受載置工程において、軸受ユニット10Aの中心軸方向の一端側で内輪支持台42が内輪11と対向して配置され、かつ外輪支持台43が外輪13と対向して配置される。
【0054】
次に、
図17に示すように、軸受載置部41に載置された軸受ユニット10Aの上方にハブ本体2をシャフト部3が軸受ユニット10側に位置した状態で配置する。このハブ本体2の軸受ユニット10A上への配置も内輪11,12の中心軸とシャフト部3の中心軸とが同軸となるように位置合わせしながら行う。
このハブ本体配置工程において、軸受ユニット10Aの中心軸方向の一端側とは反対側の他端側に、シャフト部3の先端を内輪12と対向させた状態でハブ本体2が配置される。
【0055】
次に、
図18に示すように、軸受ユニット10Aの中心軸方向の一端側に内輪支持台42が内輪11と対向して配置され、軸受ユニット10Aの中心軸方向の一端側とは反対側にハブ本体2がシャフト部3の一端側を内輪12と対向させて配置され、かつシャフト部3の先端が内輪12の内周面に接触した状態で、シャフト圧入部51がハブ本体2を内輪11,12に向かって第1の荷重P1で加圧して内輪支持台42に内輪11,12を押圧固定する。このときの第1の荷重P1は、実施形態1と同様に、シャフト部3の内輪11,12の内周面への圧入(侵入)が途中で停止する程度の圧力で行う。
この押圧工程において、軸受ユニット10Aは、内輪12の中心軸方向の一端側が外輪13の中心軸方向の一端側よりも突出しているので、外輪13が外輪支持台43から離間して浮いた状態で内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定される。
【0056】
次に、
図19に示すように、内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定された状態で回転台62を第1の回転速度で回転させながら回転ピン63を回転ピン63の先端が外輪13の取付け部14の下面よりも上方に突出するまで上昇させる。
この回転ピン上昇工程において、回転ピン63は回転台62の回転により外輪の中心軸と同軸で回転移動するので、外輪13の周方向から取付け部14の厚さ方向の側面に引っ掛かって外輪13を回転させる。このときの回転台62の第1の回転速度は、実施形態1と同様の回転速度で行うことが好ましい。
【0057】
また、この回転ピン上昇工程において、回転ピン63は、回転台62から外輪13の取付け部14側に向かって上昇移動するが、
図6に示すように、上昇移動の途中で回転ピン63の先端が外輪13の取付け部14の下面に当接しなければ、取付け部14の下面よりも上方に回転ピン63の一部が突出するまで回転ピン63は上昇する。一方、
図8に示すように、上昇移動の途中で回転ピン63の先端が外輪13の取付け部14の下面に当接したときは、外輪13の取付け部14と対向しない位置まで回転ピン63が回転移動し、取付け部14の下面よりも上方に回転ピン63の先端が突出するまで回転ピン63は上昇移動する。
【0058】
次に、
図20に示すように、回転台62が第1の回転速度よりも速い所定の第2の回転速度になったら、内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定され、かつ外輪13を外輪13の中心軸回りに回転させた状態で、シャフト圧入部51がハブ本体2を内輪11,12に向かって第1の荷重P1よりも大きい第2の荷重P2で加圧して内輪11,12の内周面にシャフト部3を圧入する。シャフト部3の圧入は、圧入治具53と共にハブ本体2が内輪11,12に向かって下降移動し、ハブ本体2の圧入基準面4bに軸受ユニット10の中心軸方向の一端側とは反対側に位置する内輪12の端面が当接するまで行う。
【0059】
この加圧工程において、軸受ユニット10の外輪13は回転ピン63から伝達された回転台62の回転によって回転するが、軸受ユニット10の内輪11,12はシャフト圧入部51の加圧で内輪支持台42に押圧固定されているので、回転せず静止している。このように、2つの内輪11,12が回転しない状態で外輪13を相対回転させることによって、上述の実施形態1と同様に、円すいころ15a,15bが転動し、円すいころ15a,15bに調心作用が働くため、正規位置に円すいころ15a,15bが配列された状態で2つの内輪11,12の各々の内周面にシャフト部3を圧入することができる。シャフト部3を圧入するときの回転台62の回転は、上述の実施形態2と同様の第2の回転数で行うことが好ましい。
【0060】
また、この加圧工程において、2つの内輪11,12の各々の内周面に内嵌された連結環20は、シャフト部3の先端で2つの内輪11,12の各々の内周面から押し出され、内輪支持台42の貫通孔42aを通り抜けて排除される。
また、この工程において、外輪13は、外輪支持台43から離間して浮いた状態で回転する。
次に、
図21に示すように、内輪12の端面がハブ本体2の圧入基準面4bに当接した後、内輪11,12が内輪支持台42に押圧固定され、かつ外輪13を外輪の中心軸回りに回転させた状態で、シャフト圧入部51がハブ本体2を内輪11,12に向かって第2の荷重P2よりも大きい第3の荷重P3で加圧して、確実に内輪12の端面がハブ本体2の圧入基準面4bに突き当たるようにダメ押しを行う。このときの第3の荷重P3は、上述の実施形態1と同様の程度で行う。
【0061】
このダメ押し工程により、ハブユニット1Aの製造がほぼ完了する。製造が完了したハブユニット1Aをハブユニット製造装置30から取り外すため、シャフト圧入部51の加圧を解除、回転台の回転の中止及び回転ピンの下降移動を行う。そして、ハブユニット製造装置30から取り外したハブユニット1Aに対し、外輪13の中心軸方向の一端側と内輪11との間にエンコーダシール18を圧入する。
このように、この実施形態2のハブユニット製造装置30は、内輪11の中心軸方向の一端側が外輪13の中心軸方向の一端側よりも突出する軸受ユニット10Aを用いてハブユニット1を製造することができる。すなわち、ハブユニット製造装置30は、軸受ユニット10,10Aの中心軸方向の一端側で内輪11及び外輪12の何れか一方が突出する突出形態が異なる軸受ユニット10,10Aに対応してハブユニット1,1Aを製造することができる。
【0062】
(実施形態6)
この実施形態6のハブユニット製造装置は、上述した実施形態1のハブユニット製造装置30の構成に加えて、
図22から
図25に示すハブ本体搬送部81を備えている。ハブ本体搬送部81は、内輪11が内輪支持台42と対向して配置された軸受ユニット10上にハブ本体2をシャフト部3の一端側が内輪12と対向するようにして搬送する。具体的には、ハブ本体搬送部81は、ハブ本体2の向きを反転させる反転台82と、ハブ本体2を保持する保持キャップ治具83と、ハブ本体2を搬送する搬送用チャック84と、圧入時にハブ本体2を保持する圧入用チャック85を備えている。反転台82は、昇降移動、水平移動及び反転動作が可能な移動機構に支持されている。保持キャップ治具83は、昇降移動及び水平移動が可能な移動機構に支持されている。搬送用チャック84及び圧入用チャック85は、昇降移動及び水平移動が可能な移動機構に支持され、かつ開閉動作が可能になっている。保持キャップ治具83には、ハブ本体2のシャフト部3を収納する凹状の収納部83aが設けられている。搬送用チャック84は開閉動作する2つの把持部材84aを有し、この2つの把持部材84aの各々にはハブ本体2のフランジ部4を収納する凹状の収納部84bが設けられている。
【0063】
次に、ハブ本体搬送部81の動作について説明する。
まず、
図22(a)に示すように、反転台82上にハブ本体2を外筒部5が反転台82と向かい合うようにして配置する。反転台82の隣には保持キャップ治具83が待機している。
次に、反転台82が上昇移動、水平移動及び反転動作して、
図22(b)に示すように、保持キャップ治具83の収納部83aにハブ本体2のシャフト部3を嵌め込む。ハブ本体2は、シャフト部3を下側にした姿勢で保持キャップ治具83に保持される。
【0064】
次に、
図22(c)に示すように、保持キャップ治具83が搬送用チャック84の下方に移動する。このとき、搬送用チャック84は、開放状態で軸受載置部41の隣で待機している。軸受載置部41には軸受ユニット10が載置されている。
次に、
図23(d)に示すように、保持キャップ治具83が搬送用チャック84に向かって上昇する。そして、搬送用チャック84が閉鎖状態となり、2つの把持部材84aの各々の収納部84bにハブ本体2のフランジ部4を嵌め込む。ハブ本体2は、シャフト部3を下側にした姿勢で搬送用チャック84に保持される。
【0065】
次に、
図23(e)に示すように、保持キャップ治具83が下降する。そして、搬送用チャック84が軸受載置部41の上方に移動し、軸受ユニット10の上方にハブ本体2を搬送する。
次に、シャフト圧入部51の加圧シリンダ52(
図2参照)が作動し、
図23(f)に示すように、ハブ本体2の外筒部5の近くまで圧入治具53が降下移動する。そして、圧入用チャック85が開放状態で軸受載置部41と搬送用チャック84との間に移動する。
次に、
図24(g)に示すように、圧入用チャック85が閉鎖状態となり、2つの把持部材85aでハブ本体2のシャフト部3を保持する。そして、搬送用チャック84が開放状態となる。そして、
図24(h)に示すように、搬送用チャック84が保持キャップ治具83の上方に移動する。
【0066】
次に、
図25(i)に示すように、圧入用チャック85がハブ本体2を保持した状態で下降する。このとき、圧入用チャック85は、軸受ユニット10の中心軸とハブ本体2の中心軸とが同軸となるように位置合わせを行う。
次に、シャフト圧入部51の加圧シリンダ52が作動し、
図25(j)に示すように、ハブ本体2の外筒部5に接触するまで圧入治具53が降下移動する。そして、
図25(k)に示すように、圧入用チャック85が開放状態となる。そして、シャフト圧入部51の加圧シリンダ52が作動し、圧入治具53が降下し、圧入治具53がハブ本体2を内輪11,12に向かって第1の荷重P1で加圧して内輪支持台42に内輪11,12を押圧固定する。
【0067】
次に、シャフト圧入部51の加圧シリンダ52が作動し、圧入治具53が降下し、
図25(l)に示すように、圧入治具53がハブ本体2を内輪11,12に向かって第2の荷重P2で加圧して内輪支持台42に内輪11,12を圧入する。
これにより、ハブ本体搬送部81の搬送動作が終了する。
以上のように、この実施形態のハブユニット製造装置によれば、ハブ本体2を自動搬送することができる。
【0068】
(変 形 例)
上述した実施形態6では、反転台82が上昇移動、水平移動及び反転動作して、
図22(b)に示すように、保持キャップ治具83の収納部83aにハブ本体2のシャフト部3を収納している。そこで、
図26(a)に示すように、保持キャップ治具83の上方にセンタリングアーバー91を配置し、保持キャップ治具83の上方周辺に識別コードリーダ92を配置して置くことにより、
図26(b)に示すように、保持キャップ治具83の収納部83aにハブ本体2のシャフト部3を収納した後、ハブ本体2を回転させながらハブ本体2の識別コードを読み取ることができる。
【0069】
また、
図27(a)に示すように、軸受載置部41の上方にセンタリングアーバー93を配置し、軸受ユニット10の側面の外側に識別コードリーダ94を配置して置くことにより、
図27(b)に示すように、軸受ユニット10を回転させながら軸受ユニット10の識別コードを読み取ることができる。
また、上述の実施形態では、圧入治具53を平板形状で形成した場合について説明したが、ハブ本体2の他端側(外筒部5)の径や面積が小さく、加圧する際のハブ本体2の姿勢が不安定になる場合は、
図28に示すように、圧入治具54をキャップ形状にしてもよい。この場合、圧入治具54は、天板部54aと筒状の脚部54bとで構成されるため、脚部54bのサイズをハブ本体2の外筒部5に合わせることで、芯出しを行うことができる。
【0070】
(実施形態7)
この実施形態7では、ハブユニットを備えた車両としての自動車の製造について説明する。
この実施形態7の自動車100は、
図30に示すように、車軸101にハブユニット105を介して車輪102が取り付けられている。この自動車100は、上述した実施形態1から6のハブユニット製造装置を用いた製造方法、又は上述した実施形態1から6のハブユニットの製造方法を用いた製造方法によって製造される。
ハブユニット105は、上述の実施形態1から6に示すハブユニットと同様に、シャフト部及びフランジ部を有するハブ本体106と、このハブ本体106のシャフト部に外嵌された軸受ユニット107とを備えている。
軸受ユニット107は、外周面に内輪軌道が設けられた2つの内輪と、内周面に2つの内輪の各々の内輪軌道と対向して2つの外輪軌道が設けられ、かつ外周面から突出して周方向に所定の間隔を置いて複数の取付け部が設けられた外輪とを備えている。また、軸受ユニット107は、2つの内輪の各々の内輪軌道と外輪の2つの内輪軌道との間に配置された転動体としての複数の円すいころとを備えている。そして、ハブ本体106のシャフト部が車軸101に連結され、ハブ本体106のフランジ部には車輪102が連結されている。また、軸受ユニット107の外輪の取付け部がナックルアーム103に連結されている。ナックルアーム103はショックアブソーバ104に連結され、ショックアブソーバ104は図示しないシャーシ本体に連結されている。
なお、この実施形態7では車両としての自動車100について説明したが、本発明は電車などの車両の製造方法にも適用することができる。
また、上述した実施形態1から6のハブユニット製造装置は、ハブユニットを備えた機械の製造に適用することが可能である。また、上述した実施形態1から6のハブユニットの製造方法は、ハブユニットを備えた機械の製造方法に適用することが可能である。
【0071】
以上、本発明を上記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
例えば、本発明は転動体としてボールを用いたハブユニットの製造に適用することができる。