特許第6767036号(P6767036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社藤井合金製作所の特許一覧

<>
  • 特許6767036-ガス栓カバー及びその製造方法 図000002
  • 特許6767036-ガス栓カバー及びその製造方法 図000003
  • 特許6767036-ガス栓カバー及びその製造方法 図000004
  • 特許6767036-ガス栓カバー及びその製造方法 図000005
  • 特許6767036-ガス栓カバー及びその製造方法 図000006
  • 特許6767036-ガス栓カバー及びその製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6767036
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ガス栓カバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/12 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   F16K27/12
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-121417(P2016-121417)
(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公開番号】特開2017-227221(P2017-227221A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 永雄
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−138864(JP,A)
【文献】 特開平11−051230(JP,A)
【文献】 実開昭58−035065(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0070662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流入筒部からせん収容部を介してガス流出筒部に至るガス流路が形成されているガス栓本体と、
前記せん収容部内に回動自在に収容され且つ操作つまみの回動操作によって前記ガス流路を開閉するせんと、
前記操作つまみと前記せんとの間に介在され且つ前記せんを前記せん収容部の底側へ付勢する付勢手段とを備えたガス栓に被覆させるガス栓カバーにおいて、
耐熱弾性材料である透明のシリコーンゴムからなり、
前記ガス栓本体の外表面の略全域に密着する内表面を有し、
前記内表面には、前記ガス栓本体の外表面に形成されている凸部が嵌入可能な凹部が形成されており、
前記ガス流路に沿った切込みが形成され、
前記切込みの両側の対向面が相互に離反する開放姿勢へ弾性変形可能とし、
前記ガス栓本体の外表面に前記内表面を密着させた被覆状態にて、前記対向面相互が弾性的に当接するように設定されていると共に、
前記操作つまみの外表面の略全域に密着する内表面を有する耐熱弾性材料製のつまみカバーを備えたガス栓カバー。
【請求項2】
請求項1に記載のガス栓カバーにおいて、前記切込みは、前記ガス栓本体のうち、前記ガス流入筒部の開放端から、前記せん収容部の開放端側を経由して、前記ガス流出筒部の開放端に至る範囲に沿って形成されているガス栓カバー。
【請求項3】
請求項1に記載のガス栓カバーにおいて、前記切込みは、前記ガス栓本体のうち、前記ガス流入筒部の開放端から、前記せん収容部の底側を経由して、前記ガス流出筒部の開放端に至る範囲に沿って形成されているガス栓カバー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のガス栓カバーにおいて、前記せん収容部の外周面に密着する有底筒部の開放端の頂面は、内周端縁に向かって縮径するテーパ面としたガス栓カバー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のガス栓カバーにおいて、ガス栓本体を収容させた状態にて、前記切込みの両対向面を相互に密着状態に挟持可能な挟持部材が設けられているガス栓カバー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のガス栓カバーにおいて、前記切込みに沿った両側縁に、外方に凸のリブをそれぞれ突設させ、対向する前記リブ相互を密着させた状態で挟持可能な挟持部材が設けられているガス栓カバー。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のガス栓カバーの製造方法において、前記ガス栓本体そのものを金型として利用したことを特徴とするガス栓カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス栓カバー、特に、厨房に設置されるガス栓に装着させるガス栓カバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス栓として、図6に示すように、円錐台形のせん(3)を回動可能に収容するせん収容部(30)と、その両側方に連通するガス流入筒部(31a)及びガス流出筒部(31b)とから、ガス栓本体(31)が構成されており、せん収容部(30)の開放端の円筒部(33)に、せん(3)を回動操作するための操作つまみ(2)が回動可能に装着されているものがある。
せん(3)にはガス通過孔(3a)が貫通しており、同図に示した全開状態では、ガス流入筒部(31a)の開放端から、せん収容部(30)内のせん(3)のガス通過孔(3a)を通って、ガス流出筒部(31b)の開放端に至るガス通路が形成され、操作つまみ(2)をせん(3)と共に90度回動させると、ガス流路が、せん(3)によって閉塞されて全閉状態となる。
【0003】
また、操作つまみ(2)の裏面と、せん(3)の頂面中央との間には、せん(3)をせん収容部(30)内に押し込んだ状態で保持するための押えバネ(4)が圧縮状態で介在されており、せん(3)は、押えバネ(4)の付勢力によって、せん収容部(30)内に深く押し込まれた状態で収容されている。
【0004】
上記ガス栓は、ガス栓本体(31)及びせん(3)が共に鋳鉄製であるから熱変形する性質がある。ガス栓が、温度変化の緩やかな環境下に置かれる場合では、ガス栓本体(31)及びせん(3)は、同じ膨張・収縮度合いで熱変形するため問題はないが、例えば、業務用厨房で使用されるガス栓のように、燃焼機器からの輻射熱や、飛散される熱湯や高温の油の影響を、せん(3)の外側に位置するガス栓本体(31)が直接受けることにより、ガス栓本体(31)の温度が瞬間的に上昇するような環境下に置かれた場合、ガス栓本体(31)のみが熱膨張することがある。ガス栓本体(31)が熱膨張することにより、せん収容部(30)の内径が拡径すると、その内部に収容されており且つ熱膨張していないせん(3)が、押えバネ(4)の付勢力によって、拡径されたせん収容部(30)の底側へ一層深く押し込まれてしまうことがある。この状態で、ガス栓本体(31)が冷却されて収縮すると、せん(3)の外周面はせん収容部(30)の内周面(35)で加圧されることから、せん(3)はせん収容部(30)内にて回動し難くなる。このようなガス栓本体(31)のみの膨張・収縮が繰り返し起こり、その都度、せん(3)がせん収容部(30)の底側へ押込まれていくと、操作つまみ(2)によるせん(3)のスムーズな回動操作が困難になり、ガス栓の開閉操作に支障を来すといった不都合が生じる。
【0005】
上記不都合を解消するために、特許文献1のように、ガス栓本体の上方及び側方をカバーで被覆させたものを考案した。このものでは、熱伝導率の小さい材質で形成されたカバーをガス栓本体に被覆させることにより、ガス栓本体を輻射熱や熱湯等から保護することができ、ガス栓本体のみの膨張・収縮を抑制することができるが、この考案のカバーは、ガス栓本体との間に隙間を設けて被覆させる構成であるから、上記した輻射熱や飛散する熱湯や高温の油に対しての断熱効果は不十分である。
これに対して、特許文献2の発明のバルブカバー装置では、バルブの両側の管に断熱材を巻着させ、その上から円筒状のカバーを包持させる構成であるから、十分な断熱効果を得ることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭56−32694号公報
【特許文献2】特開平11−51230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したバルブカバー装置をガス栓カバーとして利用しようとすると、ガス栓の外形に対応させた断熱材が必要である上に、さらに、その断熱材の上から包囲可能なカバーを被覆させて、抜け止め状態に固定させなければならないため、部品点数が増える上に、ガス栓へ着脱がやり難く、カバー装着作業の作業性が悪いという不都合がある。
【0008】
本発明は、『ガス流入筒部からせん収容部を介してガス流出筒部に至るガス流路が形成されているガス栓本体と、
前記せん収容部内に回動自在に収容され且つ操作つまみの回動操作によって前記ガス流路を開閉するせんと、
前記操作つまみと前記せんとの間に介在され且つ前記せんを前記せん収容部の底側へ付勢する付勢手段とを備えたガス栓に被覆させるガス栓カバー』において、 ガス栓への脱着が容易であり且つ外部からの熱がガス栓本体に伝わるのを確実に防止できるガス栓カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために講じた本発明の解決手段は、『耐熱弾性材料である透明のシリコーンゴムからなり、
前記ガス栓本体の外表面の略全域に密着する内表面を有し、
前記内表面には、前記ガス栓本体の外表面に形成されている凸部が嵌入可能な凹部が形成されており、
前記ガス流路に沿った切込みが形成され、
前記切込みの両側の対向面が相互に離反する開放姿勢へ弾性変形可能とし、
前記ガス栓本体の外表面に前記内表面を密着させた被覆状態にて、前記対向面相互が弾性的に当接するように設定されていると共に、
前記操作つまみの外表面の略全域に密着する内表面を有する耐熱弾性材料製のつまみカバーを備えた』ことである。
【0010】
上記技術的手段は次のように作用する。
ガス栓カバーは、耐熱弾性材料により、せん収容部とガス流入筒部とガス流出筒部とを備えたガス栓本体の外表面の略全域に密着する内表面を有する形状に成型されており、ガス栓本体のガス流路に沿って切込みが設けられている。この切込みの両側の対向面が相互に離反する方向へ強制的に弾性変形させれば、切込みを開放することができ、この開放部からガス栓本体をガス栓カバー内に差し入れることができる。
ガス栓カバー内にガス栓本体を収容し、ガス栓カバーの内表面にガス栓本体の外表面が密着させた後、前記開放部を弾性復帰させると、前記切込みの対向面相互が、弾性材料の弾性復帰力により当接することとなり、ガス栓カバーは、ガス栓本体に、隙間なく密着させた状態に被覆させることができる。ガス栓本体とガス栓カバーとの間に隙間を生じさせないようにすることで、ガス栓は外的衝撃や汚れから確実に保護されると共に、ガス栓カバーは耐熱性材料から形成されているから、燃焼機器からの輻射熱で熱せられたり、熱湯や高温の油が飛散しても、ガス栓本体自体に影響が及ぶことはない。
特に、シリコーンゴムは耐熱性、耐候性に優れた性質を有するから、ガス栓が厨房で使用される場合では、燃焼機器からの輻射熱や、熱湯や高温の油によってガス栓本体の温度が上昇するのを確実に防止できると共に、屋外で使用される場合でも、太陽光 ・風雨・温度変化などに対し、変質や劣化を起こしにくいから、ガス栓を確実に保護することができる。
また、撥水性にも優れているから、調味料や洗剤等がガス栓カバーにかかってもすぐに拭き取れる上に、透明のシリコーンゴムを採用することにより、前記切込みや、ガス流入筒部又はガス流出筒部の開放端からガス栓カバーの内面に浸み込んだ汚れ等も目視することができ、ガス栓カバーを外して、ガス栓カバーの内表面及びガス栓本体の外表面を清掃できるから、ガス栓を常に美しく清潔な状態に保つことができる。
また、ガス栓本体はガス栓カバーで、操作つまみは、前記操作つまみの外表面の略全域に密着する内表面を有する耐熱弾性材料製のつまみカバーで被覆させておけば、ガス栓全体を、外部からの熱や衝撃や汚れから保護することができる。
【0011】
上記ガス栓カバーにおいて、好ましくは、『前記切込みは、前記ガス栓本体のうち、前記ガス流入筒部の開放端から、前記せん収容部の開放端側を経由して、前記ガス流出筒部の開放端に至る範囲に沿って形成されている』ことである。
ガス栓カバーは、せん収容部の開放端部側を開放させることができ、この開放部から、ガス栓本体を、せん収容部の底側から収容することができる。
【0012】
上記ガス栓カバーにおいて、好ましくは、『前記切込みは、前記ガス栓本体のうち、前記ガス流入筒部の開放端から、前記せん収容部の底側を経由して、前記ガス流出筒部の開放端に至る範囲に沿って形成されている』ことである。
ガス栓カバーは、せん収容部の底側を開放させることができ、この開放部から、ガス栓本体を、せん収容部の開放端側から収容することができる。
【0014】
上記ガス栓カバーにおいて、好ましくは、『前記せん収容部の外周面に密着する有底筒部の開放端の頂面は、内周端縁に向かって縮径するテーパ面とした』ものである。
このものでは、ガス栓カバーを構成する有底筒部内にせん収容部を収容させた状態にて、湯水や油や洗浄液等の液状物が飛散されて操作つまみの下方へ浸入してきても、せん収容部の開放端部の周囲を包囲しているガス栓カバーの開放端側の頂面は、内周端縁に向かって縮径するテーパ面としてあるから、前記頂面に留まることなく、外方へ向かって降下する傾斜面上を流れ落ちていく。よって、ガス栓カバーの開放部の頂面上における液状物の貯留を防止できると共に、前記開放端側からガス栓カバー内へ液状物が浸入するのを防止することができる。
【0015】
上記ガス栓カバーにおいて、好ましくは、『ガス栓本体を収容させた状態にて、前記切込みの両対向面を相互に密着状態に挟持可能な挟持部材が設けられている』ことである。ガス栓カバー内にガス栓本体を収容し、切込みの対向面相互を当接させた状態にて、例えば、結束バンドのような挟持部材で切込み形成域を挟持することにより、前記対向面を確実に密着させることができる。これにより、切込みから湯水等が侵入する不都合を確実に防止できると共に、外的衝撃や長期使用によるガス栓カバーの劣化等によって切込みが不用意に開放しガス栓カバーがガス栓本体から外れるといった不都合を防止することができる。
【0016】
上記ガス栓カバーにおいて、好ましくは、『前記切込みに沿った両側縁に、外方に凸のリブをそれぞれ突設させ、
対向する前記リブ相互を密着させた状態で挟持可能な挟持部材が設けられている』ものでは、相互に対向する一対のリブを挟持させるだけで、切込みの対向面としてのリブを密着させることができるから、容易な手段で切込みの対向両側を密着させることができる。
【0018】
また、上記ガス栓カバーの製造方法は、『前記ガス栓本体そのものを金型として利用したこと』を特徴とする。
これにより、前記ガス栓本体の外表面の略全域に密着する内表面を有するガス栓カバーを確実に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス栓カバーは、弾性材料により、ガス栓本体の外表面に密着する内表面とガス流路に沿った切込みを有するように形成されているから、前記切込みを弾性的に開放させるだけで、この開放部から、ガス栓本体をガス栓カバーに出し入れすることができる。 よって、1つの部品により、ガス栓の外表面に密着可能で且つ容易に着脱自在なガス栓カバーを提供することができる。
また、ガス栓カバーの内表面は、その弾性復帰力によってガス栓本体の外表面の凹凸にも密着するから、ガス栓カバーの内表面はガス栓本体の外表面に、相互の凹凸部で係合し合うこととなり、ガス栓カバーのガス栓本体への保持力は確実なものとなり、不用意にずれたり外れたりする不都合はない。
上記ガス栓カバーをガス栓本体に被覆させることにより、ガス栓本体を外的衝撃から保護でき、塵埃や、油、又は洗剤等がガス栓本体の外表面に付着するのを確実に防止することができる。
また、前記弾性材料は耐熱性であるから、ガス栓が業務用厨房に設置されても、ガス栓本体が、燃焼機器からの輻射熱や飛散される熱湯や高温の油の影響を直接受けることがなく、ガス栓本体は熱膨張したり収縮したりすることはない。よって、熱膨張により拡径させられたせん収容部内に、せんが付勢手段の付勢力によって底側へ押し込まれ、その後、冷却により縮径したせん収容部の内周面でせんの外周面が加圧されることにより、せんがせん収容部内にて回動し難くなるといった不都合を防止することができる。これにより、操作つまみによるせんのスムーズな開閉操作を長期にわたって持続することができる。
【0020】
また、前記ガス栓本体そのものを金型としてガス栓カバーを製造することにより、内表面がガス栓本体の外表面に確実に密着させることのできるガス栓カバーを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1番目の実施の形態のガス栓カバーとガス栓との分解斜視図である。
図2】本発明の第1番目の実施の形態のガス栓カバーをガス栓に装着させた状態を示す斜視図である。
図3】本発明の第1番目の実施の形態のガス栓カバーの成型工程を示す説明図である。
図4】本発明の第2番目の実施の形態のガス栓カバーをガス栓に装着させた状態を示す側面図である。
図5】本発明の第3番目の実施の形態のガス栓カバーをガス栓に装着させた状態を示す側面図である。
図6】一般的なガス栓の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本願発明の第1番目の実施の形態におけるガス栓カバー(1)と、これを装着させるガス栓の分解斜視図であり、図2は、図1のガス栓にガス栓カバー(1)を装着させた状態を示す斜視図である。
図面において上方に開放し且つ逆円錐台形状のせん(3)を収容するせん収容部(30)と、その開放端部に連設された円筒部(33)と、せん収容部(30)の胴部の対応位置にそれぞれ連通するように連設されたガス流入筒部(31a)及びガス流出筒部(31b)とからガス栓本体(31)が構成されており、せん(3)に貫通しているガス通過孔(3a)をガス流入筒部(31a)及びガス流出筒部(31b)に連通させることにより、ガス流入筒部(31a)の開放端からガス流出筒部(31b)の開放端に至るガス流路が開放した状態となり、この状態からせん(3)を90度回転させることにより、前記ガス流路は閉塞される。
【0023】
せん(3)の頂面(36)の中央に突設された一対の操作凸部(32)を操作つまみ(2)の裏面中央の凹部(図示せず)内に相対回動阻止状態に嵌め込んだ状態で、操作つまみ(2)を、円筒部(33)に対して相対回動可能に装着させる。操作つまみ(2)を回動させることで、せん(3)も同方向に回動させることができ、ガス流路(31a)を開閉させることができる。
なお、せん(3)の頂面(36)の操作凸部(32)内と操作つまみ(2)の裏面との間には、せん(3)をせん収容部(30)内に押し込むための押えバネ(4)が介在されている。これにより、せん(3)は、抑えバネ(4)でせん収容部(30)の底側へ押圧されながら、操作つまみ(2)の回動操作によって、せん収容部(30)内で回動自在となる。
【0024】
次に、ガス栓カバー(1)について説明する。
ガス栓カバー(1)は、ガス栓本体(31)に密着状態に被覆させるもので、せん収容部(33)及び円筒部(33)を被覆する上方開放のカップ状の有底筒部(10)と、有底筒部(10)の対向する両側壁に連設され且つガス流入筒部(31a)及びガス流出筒部(31b)を包囲する一対の側筒(11a)(11b)とからなり、全体が透明なシリコーンゴムにより成型されている。
両側筒(11a)(11b)の軸線に沿った上面から有底筒部(10)の上方開放端にかけて、それぞれ切込み(12)が形成されており、ガス栓カバー(1)は、シリコーンゴムの弾性を利用して、切込み(12)の対向面(12a)(12b)が離反する方向に開放させることができる。
【0025】
切込み(12)の対向面(12a)(12b)が大きく離反するように、手でガス栓カバー(1)の上方を強制的に開放させた状態にて、組付け完了状態にあるガス栓のガス栓本体(31)をせん収容部(30)の底側から収容し、有底筒部(10)の底部にせん収容部(30)の底が当接した状態で手を離せば、ガス栓カバー(1)は、シリコーンゴムの弾性復帰力により、図2に示すように、ガス栓本体(31)の外表面に密着状態に被覆させることができ、対向面(12a)(12b)相互を当接させることができる。
なお、これら対向面(12a)(12b)を確実に密着状態に保持するために、同図に示すように、ガス栓カバー(1)の側筒(11a)(11b)に、結束バンド(21)を巻回させておくとよい。この結束バンド(21)が、発明特定事項としての挟持部材に対応する。
【0026】
業務用の厨房に設置されているガス栓のガス栓本体(31)に、透明なシリコーンゴム製のガス栓カバー(1)を装着させた場合、シリコーンゴムは耐熱性及び撥水性に優れた性質を有するから、燃焼機器からの輻射熱や、熱湯や高温の油からガス栓本体(31)を確実に保護してガス栓本体(31)の温度上昇を確実に防止することができると共に、調味料や洗剤等がガス栓カバー(1)にかかっても容易に拭き取れる。さらに、透明のシリコーンゴムを採用しているから、切込み(12)や側筒(11a)(11b)の開放端からガス栓カバー(1)内に浸み込んだ汚れを目視により発見でき、切込み(12)からガス栓カバー(1)を上方に開放させて、ガス栓本体(31)から取り外してガス栓カバー(1)の内表面及びガス栓本体(31)の外表面を清掃することができるから、ガス栓を常に美しく保つことができる。
【0027】
ガス栓本体(31)の外表面に密着可能な内表面を有するガス栓カバー(1)は、図3に示すように、ガス栓本体(31)そのものを金型として成型することで製造することができる。
具体的には、下金型(41)と上金型(42)との間に、中金型としてガス栓本体(31)を円筒部(33)を下にして設置し、ガス栓本体(31)と上下の金型(42)(41)との間の隙間(S)に、シリコーンゴムを射出することで、同図において、下方に開放する有底筒部(10)と左右に開放する側筒(11a)(11b)とからなるシリコーンゴム製のガス栓カバー(1)がガス栓本体(31)に包囲した状態で成型される。
成型後、有底筒部(10)の開放端から側筒(11a)(11b)の各開放端に至る個所に切込み(12)を形成し、切込み(12)を開放するようにガス栓カバー(1)を弾性変形させて、ガス栓本体(31)を取り出せば、図1に示したような、上方に弾性的に開放可能なガス栓カバー(1)が出来上がる。
【0028】
中金型としてガス栓本体(31)そのものを利用することにより、ガス栓本体(31)の外表面に確実に密着可能な内表面を有するガス栓カバー(1)を形成することができ、ガス栓本体(31)の外表面に隙間なくガス栓カバー(1)を装着させることができるから、ガス栓本体(31)を外的衝撃や汚れから確実に保護することができると共に、ガス栓カバー(31)は耐熱性のシリコーンゴム製であるから、燃焼機器からの輻射熱や熱湯や高温の油等がガス栓本体(31)に影響することはなく、ガス栓本体(31)のみが熱による膨張・収縮を繰り返すようなことはない。
【0029】
また、ガス栓本体(31)の外表面に凸部(301)が形成されている場合、ガス栓カバー(1)の内表面には、凸部(301)が嵌入可能な凹部(101)が形成されるから、ガス栓本体(31)の外表面にガス栓カバー(1)の内表面を密着させると、凸部(301)が凹部(101)に係合することにより、ガス栓カバー(1)はガス栓本体(31)に対して確実に装着され、不用意にずれたり外れたりすることはない。
【0030】
さらに、ガス栓カバー(1)の有底筒部(10)の上方開放端面は、内周端縁に向かって縮径するテーパ面(13)としておくことにより、飛散された湯水や油や洗浄液等の液状物が、操作つまみ(2)の下方へ浸入し、テーパ面(13)に付着しても、テーパ面(13)に沿って外方へ流れ落ちていく。これにより、液状の汚れが操作つまみ(2)の下方に留まって固着したり、前記開放端側から有底筒部(10)内へ浸入する不都合を防止することができる。
【0031】
また、上記実施の形態では、ガス栓カバー(1)の切込み(12)の対向面(12a)(12b)相互の密着度合いを向上させるために、図2に示すように、ガス栓カバー(1)の側筒(11a)(11b)を結束バンド(21)で巻回させる構成としたが、図4に示すように、側筒(11a)(11b)に形成されている切込み(12)の両側縁に沿って、それぞれ上方に凸のリブ(14)(14)を突設させ、切込み(12)の対向面(12a)(12b)を密着させた状態にて、一対のリブ(14)(14)を上からクリップ(22)で挟持させても良い。この場合、クリップ(22)が、発明特定事項としての挟持部材として機能する。
この実施の形態のものでは、弾性復帰力により当接し合っている一対のリブ(14)(14)にクリップ(22)を装着させるだけであるから、簡易な手段により、切込み(12)の対向面(12a)(12b)を確実に密着させることができ、ガス栓本体(31)に対するガス栓カバー(1)の保持力を向上させることができると共に防水効果も向上させることができる。
【0032】
また、ガス栓カバー(1)の切込み(12)は、図5に示すように、ガス栓カバー(1)の両側筒(11a)(11b)の軸線に沿った下面から有底筒部(10)の底部(15)に連続するように形成しても良い。この場合、ガス栓カバー(1)は有底筒部(10)の底部(15)側が開放する態様となり、その開放部から、ガス栓カバー(1)を、操作つまみ(2)側から挿入させて、ガス栓本体(31)に被覆させることができる。
【0033】
なお、ガス栓カバー(1)はガス栓本体(31)に被覆させる構成としたが、図1の二点鎖線に示すように、操作つまみ(2)に被覆させるつまみカバー(20)を別途設けても良い。
つまみカバー(20)も、ガス栓カバー(1)と同様に、操作つまみ(2)自体を金型としてシリコーンゴムの射出成型とすることにより、操作つまみ(2)の外表面の略全域に密着する内表面を有するつまみカバー(20)を設けることができる。
ガス栓本体(31)はガス栓カバー(1)で被覆し、操作つまみ(2)はつまみカバー(20)で被覆しておけば、ガス栓全体を、外部からの熱や衝撃や汚れ等から確実に保護することができる。これにより、操作つまみ(2)によるスムーズな開閉操作が確保されるから、温度変化の激しい厨房でもガス栓の長期の使用が可能となる。
【符号の説明】
【0034】
(1) ・・・・・・・ガス栓カバー
(12)・・・・・・・切込み
(12a)(12b)・・・・対向面
(2) ・・・・・・・操作つまみ
(3) ・・・・・・・せん
(30)・・・・・・・せん収容部
(31)・・・・・・・ガス栓本体
(31a) ・・・・・・ガス流入筒部
(31b) ・・・・・・ガス流出筒部
(4) ・・・・・・・押さえバネ(付勢手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6