(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
給電部の入力インピーダンスから開口面の特性インピーダンスまで連続的なインピーダンス変化が生ずるように、目的とする最低周波数に基づくアンテナ長Lで一対のアンテナ素子を設計した指数関数テーパーTEMホーンアンテナに対し、0.06L〜0.11Lの範囲より定めた切り取り長Lcだけ両アンテナ素子の開口面側から均等に切除することで、アンテナ長Ls(Ls=L−Lc)となる一対の短縮アンテナ素子を備えるようにしたことを特徴とするテーパーTEMホーンアンテナ。
【背景技術】
【0002】
従来より、テーパー状のアンテナ素子を備えるTEMホーンアンテナが知られている。TEMホーンアンテナは、アンテナ給電部とホーンの開口部までをテーパー構造で構成する。その際、反射の影響を最小にするため,給電部と開口面の特性インピーダンスを整合する必要がある。このため、テーパー状アンテナ素子上に抵抗を装荷した抵抗装荷型TEMアンテナが用いられている(例えば、非特許文献1、非特許文献2を参照)。
【0003】
また、非特許文献1,2に記載された抵抗装荷型TEMホーンアンテナは、EMC試験のうち近接放射イミュニティ試験法において,電界印加用アンテナとして使用が検討されている(例えば、非特許文献3を参照)。しかし、抵抗装荷型TEMホーンアンテナは、テーパー状アンテナ素子上の抵抗によって、放射効率が低下するという問題がある。この放射効率低下という欠点から、抵抗装荷型TEMホーンアンテナは、放射エミッション測定における電界測定用アンテナとしても適切ではない。
【0004】
一方、抵抗装荷の必要が無い指数関数状のテーパー構造をもつ指数関数テーパーTEMホーンアンテナが提案されている(例えば、非特許文献4を参照)。この非特許文献4に記載の指数関数テーパーTEMホーンアンテナによれば、抵抗装荷型TEMホーンアンテナのように放射効率が低下するという問題が無い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本発明に係るテーパーTEMホーンアンテナの実施形態を示す構成図である。(b)は、本実施形態に係るテーパーTEMホーンアンテナのベースとなる指数関数テーパーTEMホーンアンテナを示す構成図である。
【
図2】(a)は、指数関数テーパーTEMホーンアンテナの基本概念である指数関数テーパー伝送線路の説明図である。(b)は、指数関数テーパーTEMホーンアンテナの側面図である。(c)は、指数関数テーパーTEMホーンアンテナの平面(底面)図である。
【
図3】指数関数テーパーTEMホーンアンテナ(切り取り長Lc=L×0%)におけるアンテナ正面方向の利得と最大放射利得とを示す利得−周波数特性図である。
【
図4】切り取り長Lc=L×2%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と最大放射利得とを示す利得−周波数特性図である。
【
図5】切り取り長Lc=L×4%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と最大放射利得とを示す利得−周波数特性図である。
【
図6】切り取り長Lc=L×6%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と最大放射利得とを示す利得−周波数特性図である。
【
図7】切り取り長Lc=L×8%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と最大放射利得とを示す利得−周波数特性図である。
【
図8】切り取り長Lc=L×10%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と最大放射利得とを示す利得−周波数特性図である。
【
図9】切り取り長Lc=L×15%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と最大放射利得とを示す利得−周波数特性図である。
【
図10】切り取り長Lc=L×20%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と最大放射利得とを示す利得−周波数特性図である。
【
図11】切り取り長Lc=L×6%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と、アンテナ長Lの指数関数テーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得を示す利得−周波数特性図である。
【
図12】切り取り長Lc=L×8%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と、アンテナ長Lの指数関数テーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得を示す利得−周波数特性図である。
【
図13】切り取り長Lc=L×10%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と、アンテナ長Lの指数関数テーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得を示す利得−周波数特性図である。
【
図14】切り取り長Lc=L×11%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と、アンテナ長Lの指数関数テーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得を示す利得−周波数特性図である。
【
図15】切り取り長Lc=L×12%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と、アンテナ長Lの指数関数テーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得を示す利得−周波数特性図である。
【
図16】切り取り長Lc=L×15%とした短縮アンテナ素子を備えるテーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得と、アンテナ長Lの指数関数テーパーTEMホーンアンテナにおけるアンテナ正面方向の利得を示す利得−周波数特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係るテーパーTEMホーンアンテナの実施形態につき説明する。
【0012】
図1(a)は、テーパーTEMホーンアンテナ10の概略構成を示すもので、テーパー形状の第1短縮アンテナ素子11、この第1短縮アンテナ素子11と同一形状でX−Z平面に対象配置される第2短縮アンテナ素子12、第1短縮アンテナ素子11の受電端11aに接続される第1同軸給電部13a、第2短縮アンテナ素子12の受電端12aに接続される第2同軸給電部13bからなる。なお、以下の説明においては、水平方向をX、鉛直方向をY、テーパーTEMホーンアンテナ10の開口面(第1短縮アンテナ素子11の開放端11bと第2短縮アンテナ素子12の開放端12bを含む略四角形の仮想面)に直交する方向をZとする。
【0013】
上述したテーパーTEMホーンアンテナ10は、
図1(b)に示す指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110を基本とし、第1アンテナ素子111と第2アンテナ素子112の開口面(第1アンテナ素子111の開放端111bと第2アンテナ素子112の開放端112bを含む略四角形の仮想面)側から均等に所要量(後に詳述)だけ切除することで、第1,第2短縮アンテナ素子11,12とするのである。
【0014】
指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110は、第1,第2同軸給電部113a,113bの入力インピーダンス(例えば、50Ω)から開口面の特性インピーダンス(例えば、377Ω)まで連続的なインピーダンス変化が生ずるように、目的とする最低周波数(例えば、400MHz)に基づくアンテナ長L(例えば、400MHzの波長λの1/2)で第1,第2アンテナ素子111,112を設計したものである。
【0015】
図2(a)は、指数関数テーパーTEMホーンアンテナの基本概念である指数関数テーパー伝送線路の説明図である。この電送線路の任意の位置zでの特性インピーダンスZ(z)は、下式(1)となる。
【0017】
また、Z(0)=Z
0 およびZ(L)=Z
L とすれば、下式(2)が得られる。
【0019】
指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の構造は、
図2(b)の側面図および
図2(c)の平面図(或いは底面図)に示すもので、第1,第2アンテナ素子111,112の各入力インピーダンスが式(2)におけるZ
0 に、第1,第2アンテナ素子111,112の各開口面での特性インピーダンスが式(2)におけるZ
L に相当する。そして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の任意の位置zにおける高さh(z)は、下式(3)で与えられる。
【0021】
ここで、第1,第2同軸給電部113a,113bのプレート間隔をh
0 (=h(0))、第1アンテナ素子111の開放端111bと第2アンテナ素子112の開放端112bとの離隔距離である開口長Hをアンテナ長と同じL(=h(L))とすると、下式(4),(5)が得られる。
【0023】
また、位置zでの第1,第2アンテナ素子111,112の幅W(z)は、平行平板の特性インピーダンスの近似式である下式(6)により与えられる。
【0025】
なお、第1,第2同軸給電部113a,113bのプレート間隔h
0 (=h(0))と幅(W
0 )は、同軸給電の入力インピーダンスと第1,第2アンテナ素子111,112の各給電端111a,112aにおける特性インピーダンスが整合するように与える。
【0026】
上述したテーパー伝送線路を適用した指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の特性を、有限積分法(FIM)に基づく電磁界解析ソルバーであるMW−Studio(ドイツCST社製)を用いて評価した。指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の解析モデルは、最低周波数を400MHzとしてH=W=L=375〔mm〕の寸法に設定し、第1,第2アンテナ素子111,112の材質は完全導体と仮定し、最大λ/20の不均一メッシュでモデル化した。解析領域の外周に吸収境界として8層のPML(Perfectly Matched Layer)を用いた。
【0027】
図3に、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の利得−周波数特性の計算結果を示す。本図より分かるように、0.4〜6〔GHz〕という広帯域において、4〔dBi〕以上の比較的フラットな利得特性を得ることができる。しかしながら、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110では、アンテナ利得の最大値がアンテナ正面であるボアサイト方向と一致しない二つの周波数帯(2〜3〔GHz〕帯、4.5〜5.5〔GHz〕帯)がある。よって、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110は、EMC試験用アンテナ(近接放射イミュニティ試験法における電界印加用アンテナ、放射エミッション測定における電界測定用アンテナ等)には適さないのである。
【0028】
しかして、本発明に係るテーパーTEMホーンアンテナ10は、上述した指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110をベースとして用いた構造であり、これによって、放射特性を改善することができる。
【0029】
図1(a)に示すように、アンテナ長Lで第1,第2アンテナ素子111,112を設計した指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110(
図1(a)中、破線で示す)に対し、0.06L〜0.11Lの範囲より定めた切り取り長Lcだけ第1,第2アンテナ素子111,112の開口面側から、それぞれ第1素子除去部14a、第2素子除去部14bだけ均等に切除することで、アンテナ長Ls(Ls=L−Lc)となる第1,第2短縮アンテナ素子11.12を備えるテーパーTEMホーンアンテナ10となる。
【0030】
なお、本実施形態に係るテーパーTEMホーンアンテナ10も、テーパー伝送線路を適用した指数関数テーパー形状の一部を第1,第2短縮アンテナ素子11,12に備えるものである。しかしながら、第1,第2短縮アンテナ素子11,12の指数関数テーパー形状は、アンテナ長Lsに対して指数関数テーパー構造を適用したものではないことから、本来の指数関数テーパー構造を備える指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110と混同することがないよう、本発明は単に「テーパーTEMホーンアンテナ」と称することとした。
【0031】
そして、テーパーTEMホーンアンテナ10は、第1,第2アンテナ素子111,112から夫々第1,第2素子除去部14a,14bを切除することで、アンテナ長がLsになることは勿論、アンテナ開口面における開口幅(第1,第2短縮アンテナ素子11,12の各開放端11b,12bの長さ)はWsに、開口高さ(第1短縮アンテナ素子11の開放端11bと第2短縮アンテナ素子12の開放端12bとの離隔距離)はHsになるので、第1,第2素子除去部14a,14bのサイズに応じて、テーパーTEMホーンアンテナ10自体を小型化できるという利点もある。
【0032】
また、本実施形態に係るテーパーTEMホーンアンテナ10は、アンテナ利得の最大値がアンテナ正面(ボアサイト方向)と一致することで、放射指向性を高められるという利点もあるが、第1,第2素子除去部14a,14bのサイズ(切り取り長Lc)と、テーパーTEMホーンアンテナ10おける放射特性改善との因果関係は明らかになっていない。しかしながら、切り取り長Lcを変化させてモデリングしたテーパーTEMホーンアンテナ10の放射特性を確認することにより、テーパーTEMホーンアンテナ10の放射特性改善に効果がある切り取り長Lcとして、0.06L(L×6%)以上を要することを確認できた。以下に示す利得−周波数特性の計算にもMW−Studioを用いた。
【0033】
図4に示すのは、切り取り量(Cutoff length)Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの2%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。切り取り量Lc=0.02Lでは、第1,第2素子除去部14a,14bのサイズが小さためか、2.5〜3.5〔GHz〕帯、5〜6〔GHz〕帯でアンテナ利得の最大値がアンテナ正面方向からずれている。従って、切り取り長Lc=0.02Lとしたアンテナ長Ls=0.98LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、所期の目的を達成できない。
【0034】
図5に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの4%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。切り取り量Lc=0.04Lでも、まだ第1,第2素子除去部14a,14bのサイズが小さためか、3〜4〔GHz〕帯、5.5〜6〔GHz〕帯でアンテナ利得の最大値がアンテナ正面方向からずれている。従って、切り取り長Lc=0.04Lとしたアンテナ長Ls=0.96LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、所期の目的を達成できない。
【0035】
図6に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの6%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。切り取り量Lc=0.06Lでは、3〜4〔GHz〕帯にてアンテナ利得の最大値がアンテナ正面方向から若干ずれていることが認められる。しかしながら、その利得差は極微少であり、EMC試験用アンテナとして用いても実用上問題ないと考えられる。従って、切り取り長Lc=0.06Lとしたアンテナ長Ls=0.94LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、放射指向性が改善されるので、この0.06Lが切り取り量Lcの下限値となる。
【0036】
図7に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの8%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。切り取り量Lc=0.08Lであれば、0.4〔GHz〕〜6〔GHz〕の広帯域においてアンテナ利得の最大値がアンテナ正面方向と一致しており、切り取り長Lc=0.08Lとしたアンテナ長Ls=0.92LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、EMC試験用アンテナとして好適である。従って、テーパーTEMホーンアンテナ10の放射指向性が改善できる切り取り長Lcの範囲として、0.06L≦Lc≦0.8Lが想定される。
【0037】
図8に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの10%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。切り取り量Lc=0.1Lにおいても、0.4〔GHz〕〜6〔GHz〕の広帯域においてアンテナ利得の最大値がアンテナ正面方向と一致しており、切り取り長Lc=0.1Lとしたアンテナ長Ls=0.9LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、EMC試験用アンテナとして好適である。従って、テーパーTEMホーンアンテナ10の放射指向性が改善できる切り取り長Lcの範囲として、0.06L≦Lc≦1.0Lが想定される。
【0038】
図9に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの15%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。切り取り量Lc=0.15Lにおいても、0.4〔GHz〕〜6〔GHz〕の広帯域においてアンテナ利得の最大値がアンテナ正面方向と一致しており、切り取り長Lc=0.15Lとしたアンテナ長Ls=0.85LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、EMC試験用アンテナとして好適である。従って、テーパーTEMホーンアンテナ10の放射指向性が改善できる切り取り長Lcの範囲として、0.06L≦Lc≦1.5Lが想定される。
【0039】
図10に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの20%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。切り取り量Lc=0.2Lにおいても、0.4〔GHz〕〜6〔GHz〕の広帯域においてアンテナ利得の最大値がアンテナ正面方向と一致しており、切り取り長Lc=0.2Lとしたアンテナ長Ls=0.8LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、EMC試験用アンテナとして好適である。従って、テーパーTEMホーンアンテナ10の放射指向性が改善できる切り取り長Lcの範囲として、0.06L≦Lc≦2.0Lが想定される。
【0040】
切り取り量Lcを20%より大きくした場合は示さないが、広帯域でアンテナ利得の最大値がアンテナ正面方向と一致している傾向は、切り取り量Lcを20%より大きくしても、ある程度まで続くものと想定される。しかしながら、切り取り長Lc=0.2Lとしたアンテナ長Ls=0.8LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、低い周波数帯での利得が非常に劣化していることが分かる。このように、アンテナ利得が著しく劣化しているようでは、放射指向性が改善されても、EMC試験用アンテナに適しているとは言えない。
【0041】
そこで、本実施形態のテーパーTEMホーンアンテナ10としては、切り取り量Lcの上限を、低周波数帯での利得低下から定めるものとした。利得低下の判定基準として、本実施形態では、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110における1.0〔GHz〕辺りでの利得に対して、その低下量が約3〔dBi〕以内に抑えられている切り取り量Lcを上限値に設定するものとした。
【0042】
図11に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの6%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。同図中に破線で示した指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の特性(ボアサイト方向の利得)と比較すると、切り取り量Lc=0.06LのテーパーTEMホーンアンテナ10では、1〔GHz〕辺りで、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110よりも1.5〔dBi〕程度低下しているものと認められる。しかしながら、その利得低下量は3〔dBi〕以内に抑えられているので、EMC試験用アンテナとして用いても実用上問題ないと考えられる。従って、切り取り長Lc=0.06Lとしたアンテナ長Ls=0.94LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、利得低下の判定条件を満たしており、この0.06Lが切り取り量Lcの下限値となる。
【0043】
図12に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの8%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。同図中に破線で示した指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の特性(ボアサイト方向の利得)と比較すると、切り取り量Lc=0.08LのテーパーTEMホーンアンテナ10では、1〔GHz〕辺りで、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110よりも2〔dBi〕程度低下しているものと認められる。しかしながら、その利得低下量は3〔dBi〕以内に抑えられているので、EMC試験用アンテナとして用いても実用上問題ないと考えられる。従って、切り取り長Lc=0.08Lとしたアンテナ長Ls=0.92LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、利得低下の判定条件を満たしており、切り取り長Lcの範囲として、0.06L≦Lc≦0.08Lが想定される。
【0044】
図13に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの10%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。同図中に破線で示した指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の特性(ボアサイト方向の利得)と比較すると、切り取り量Lc=0.10LのテーパーTEMホーンアンテナ10では、1〔GHz〕辺りで、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110よりも2.8〔dBi〕程度低下しているものと認められる。しかしながら、その利得低下量は3〔dBi〕以内に抑えられているので、EMC試験用アンテナとして用いても実用上問題ないと考えられる。従って、切り取り長Lc=0.10Lとしたアンテナ長Ls=0.9LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、利得低下の判定条件を満たしており、切り取り長Lcの範囲として、0.06L≦Lc≦0.10Lが想定される。
【0045】
図14に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの11%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。同図中に破線で示した指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の特性(ボアサイト方向の利得)と比較すると、切り取り量Lc=0.11LのテーパーTEMホーンアンテナ10では、1〔GHz〕辺りで、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110よりも3.1〔dBi〕程度低下しているものと認められる。しかしながら、その利得低下量は約3〔dBi〕程度に抑えられているので、EMC試験用アンテナとして用いても実用上問題ないと考えられる。従って、切り取り長Lc=0.11Lとしたアンテナ長Ls=0.89LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、利得低下の判定条件を満たしており、切り取り長Lcの範囲として、0.06L≦Lc≦0.11Lが想定される。
【0046】
図15に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの12%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。同図中に破線で示した指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の特性(ボアサイト方向の利得)と比較すると、切り取り量Lc=0.12LのテーパーTEMホーンアンテナ10では、1〔GHz〕辺りで、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110よりも3.4〔dBi〕程度低下しているものと認められる。この利得低下量は約3〔dBi〕程度に抑えられているとはいえないので、EMC試験用アンテナとして用いることは適当でないと考えられる。従って、切り取り長Lc=0.12Lとしたアンテナ長Ls=0.88LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、利得低下の判定条件を満たさないので、切り取り長Lcの範囲に0.12Lは含まず、0.06L≦Lc≦0.11Lが適当である。
【0047】
図16に示すのは、切り取り量Lcとして、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110におけるアンテナ長Lの15%を適用したテーパーTEMホーンアンテナ10の利得−周波数特性図である。同図中に破線で示した指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110の特性(ボアサイト方向の利得)と比較すると、切り取り量Lc=0.15LのテーパーTEMホーンアンテナ10では、1〔GHz〕辺りで、指数関数テーパーTEMホーンアンテナ110よりも4.2〔dBi〕程度低下しているものと認められる。この利得低下量は3〔dBi〕を大きく超えているので、EMC試験用アンテナとして用いることは適当でない。従って、切り取り長Lc=0.15Lとしたアンテナ長Ls=0.85LのテーパーTEMホーンアンテナ10は、利得低下の判定条件を満たさないので、切り取り長Lcの範囲に0.15Lは含まず、0.06L≦Lc≦0.11Lが適当である。
【0048】
以上のように、本実施形態のテーパーTEMホーンアンテナ10は、放射指向性を改善可能な切り取り量Lcの範囲と、低周波帯域での利得低下抑制基準に基づく切り取り量Lcの範囲とから、0.06L≦Lc≦0.11Lに設定した。従って、この範囲内で定めた切り取り量Lcによってアンテナ長LsのテーパーTEMホーンアンテナ10とすれば、EMC試験用アンテナに適したものとなる。
【0049】
以上、本発明に係るテーパーTEMホーンアンテナを実施形態に基づき説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全てのテーパーTEMホーンアンテナを権利範囲として包摂するものである。