特許第6767072号(P6767072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6767072
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】距離設定型光電センサ
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/12 20060101AFI20201005BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20201005BHJP
   H03K 17/78 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   G01V8/12 D
   H01H35/00 C
   H03K17/78 P
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-198466(P2015-198466)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-73629(P2017-73629A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100156351
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 秀央
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 永幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】小池 哲夫
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−125759(JP,A)
【文献】 特開2013−195079(JP,A)
【文献】 特開2010−256182(JP,A)
【文献】 特開平8−255536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B11/00
G01C3/06
G01V8/00−8/26
H01H35/00
H03K17/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を投光する投光部と、受光光学系、及び、N側受光面からF側受光面まで延伸配置され、当該受光光学系に対向した受光素子を有し、前記投光部により投光された光に対する反射光を受光する受光部とを備え、前記受光部による受光結果から、設定距離よりも近くに存在する検出体の有無を検出する距離設定型光電センサにおいて、
前記受光部は、前記受光素子の前記N側受光面に対し、前記F側受光面とは反対側の端部から一部分にかけて対向配置され、前記設定距離よりも近く且つ当該受光素子での受光量が規定値以上となる反射光を反射する第1の距離に存在する前記検出体からの反射光の一部を遮蔽する遮蔽壁を有し、
前記遮蔽壁は、前記受光光学系と前記受光素子との間であって、前記検出体により反射された光のうちの一部の光の入射方向が当該受光素子から外れる方向である場合に、当該一部の光を遮り、且つ、残りの光を遮らない位置に配置され
前記遮蔽壁のうちの反射光を遮蔽する端部は、前記受光素子における延伸配置方向と光軸方向とを含む面内における形状が、一方の辺が前記第1の距離よりも近くに存在する前記検出体から前記受光素子に入射される反射光を遮蔽しない角度であり、他方の辺が当該第1の距離より遠くに存在する前記検出体から当該受光素子に入射される反射光を遮蔽しない角度である三角形状に構成された
ことを特徴とする距離設定型光電センサ。
【請求項2】
前記受光素子は、2分割フォトダイオード、多分割フォトダイオード、位置検出素子又は一次元CCDのうちのいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の距離設定型光電センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、設定距離よりも近くに存在する検出体の有無を検出する距離設定型光電センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、設定距離よりも近くに存在する検出体の有無を検出する距離設定型光電センサ(BGS型光電センサ)が知られている(例えば特許文献1参照)。この距離設定型光電センサでは、受光部に2分割フォトダイオードを設けている。そして、三角測距の原理を用い、検出体の距離により2分割フォトダイオードでの受光位置が異なることを利用して、設定距離よりも近くに存在する検出体を検出する。例えば、設定距離に検出体が存在する場合、当該検出体からの反射光により、2分割フォトダイオードのN(Near)側受光面とF(Far)側受光面で等しい光量を受光する。一方、検出体が設定距離よりも距離設定型光電センサに近い場合、当該検出体からの反射光により、N側受光面でより多く受光する。逆に、検出体が設定距離よりも距離設定型光電センサから遠い場合、当該検出体からの反射光により、F側受光面でより多く受光する。そして、距離設定型光電センサでは、N側の受光量とF側の受光量の差を検出し、閾値と比較することで、設定距離よりも近くに存在する検出体を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−256182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の距離設定型光電センサでは、検出体が近くにある場合に、戻り光量が多くなり、受光部での受光量が多くなる。一方、受光部にはダイナミックレンジがあり、それを超える光量を受光した場合、受光部の回路が飽和してしまう。そして、この受光部の回路が飽和してしまった場合、N側受光面での受光量とF側受光面での受光量の差を正しく検出することができなくなり、誤動作を起こしてしまうという課題がある。
【0005】
一方、戻り光量の増大による受光部の回路の飽和に対し、受光量に応じて投光量を自動的に調整するAPC回路を用いたり、受光部のダイナミックレンジを大きくする等の対策がある。しかしながら、APC回路を用いた対策では、回路が複雑になり、コストが高くなるという課題がある。また、ダイナミックレンジを大きくする対策では、受光部の回路を高電圧化して又は低感度にしてダイナミックレンジを広げる必要がある。その結果、検出距離が短くなり、また、回路が複雑になるという課題がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、戻り光量の増大による受光部の回路の飽和を防ぐことで、誤動作を回避することができる距離設定型光電センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る距離設定型光電センサは、光を投光する投光部と、受光光学系、及び、N側受光面からF側受光面まで延伸配置され、当該受光光学系に対向した受光素子を有し、投光部により投光された光に対する反射光を受光する受光部とを備え、受光部による受光結果から、設定距離よりも近くに存在する検出体の有無を検出する距離設定型光電センサにおいて、受光部は、受光素子のN側受光面に対し、F側受光面とは反対側の端部から一部分にかけて対向配置され、設定距離よりも近く且つ当該受光素子での受光量が規定値以上となる反射光を反射する第1の距離に存在する検出体からの反射光の一部を遮蔽する遮蔽壁を有し、遮蔽壁は、受光光学系と受光素子との間であって、検出体により反射された光のうちの一部の光の入射方向が当該受光素子から外れる方向である場合に、当該一部の光を遮り、且つ、残りの光を遮らない位置に配置され、遮蔽壁のうちの反射光を遮蔽する端部は、受光素子における延伸配置方向と光軸方向とを含む面内における形状が、一方の辺が第1の距離よりも近くに存在する検出体から受光素子に入射される反射光を遮蔽しない角度であり、他方の辺が当該第1の距離より遠くに存在する検出体から当該受光素子に入射される反射光を遮蔽しない角度である三角形状に構成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成したので、戻り光量の増大による受光部の回路の飽和を防ぐことで、誤動作を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る距離設定型光電センサの構成例を示す図である。
図2】この発明の実施の形態1における遮蔽壁の配置例を示す斜視図である。
図3】従来構成での検出体の位置による受光量の変化を示す図であり、(a)検出体までの距離が20mm程度の場合であり、(b)検出体までの距離が80mm程度の場合であり、(c)検出体までの距離が450mm程度の場合である。
図4】この発明の実施の形態1に係る距離設定型光電センサでの検出体の位置による受光量の変化を示す図であり、(a)検出体までの距離が20mm程度の場合であり、(b)検出体までの距離が80mm程度の場合であり、(c)検出体までの距離が450mm程度の場合である。
図5】この発明の実施の形態1に係る距離設定型光電センサの効果を示す図である。
図6】この発明の実施の形態1に係る距離設定型光電センサの遮蔽壁の別の構成例を示す図であり、(a)検出体までの距離が20mm程度の場合であり、(b)検出体までの距離が80mm程度の場合であり、(c)検出体までの距離が450mm程度の場合である。
図7】この発明の実施の形態1に係る距離設定型光電センサの派生効果を示す図であり、(a)従来構成の受光素子でのスポット径を示す図であり、(b)本発明の構成の受光素子でのスポット径を示す図である(検出体までの距離が80mm程度の場合)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る距離設定型光電センサの構成例を示す図である。
距離設定型光電センサは、光を投光する投光部と、N側受光面からF側受光面まで延伸配置された受光素子5を有し、投光部により投光された光に対する反射光を受光する受光部とを備え、受光部による受光結果に基づいて、設定距離よりも近くに存在する検出体50の有無を検出するものである。
【0011】
光電センサは、図1に示すように、駆動回路1、投光素子2、投光光学系3、受光光学系4、受光素子5、遮蔽壁6、演算回路7、増幅回路8、比較判定回路9、出力回路10、表示回路11及び制御回路12を備えている。
なお、図1に示す構成において、駆動回路1、投光素子2及び投光光学系3は投光部を構成し、受光光学系4、受光素子5、遮蔽壁6、演算回路7及び増幅回路8は受光部を構成する。
【0012】
駆動回路1は、投光素子2への電流を生成するものである。
投光素子2は、駆動回路1により生成された電流により駆動し、光を発光するものである。この投光素子2として、例えばLEDを用いる。
投光光学系3は、投光素子2により発光された光を集光するものである。この投光光学系3により集光された光は、検出領域に投光される。そして、検出領域に検出体50が存在する場合に、この検出体50によって上記光が反射される。
【0013】
受光光学系4は、検出領域に存在する検出体50により反射された光を集光するものである。
受光素子5は、受光部のN側受光面からF側受光面まで延伸配置され、受光光学系4により集光された光を電気信号(電流)に変換するものである。この受光素子5として、2分割フォトダイオード、多分割フォトダイオード、PSD(位置検出素子)又は一次元CCDのうちのいずれかを用いる。この受光素子5により、N側受光面での受光量とF側受光面での受光量を検出することができる。
【0014】
遮蔽壁6は、図2に示すように、受光素子5のN側受光面に対し、F側受光面とは反対側の端部から一部分にかけて対向配置されたものである。この際、遮蔽壁6は、受光素子5での受光量が規定値以上となる反射光を反射する距離に存在する検出体50からの反射光の一部を遮蔽する位置に配置される。この遮蔽壁6により、戻り光量の増大による受光部での受光量の増大を防ぎ、受光部の回路の飽和を回避する。
【0015】
演算回路7は、受光素子5により検出されたN側受光面での受光量(電流)とF側受光面での受光量(電流)との差を検出するものである。
増幅回路8は、演算回路7による処理後の電流を電圧に変換して所定の増幅率で増幅するものである。この増幅回路8により増幅された電圧が受光信号に相当する。
【0016】
比較判定回路9は、増幅回路8により増幅された電圧を判定閾値と比較し、検出領域での物体の有無を検出するものである。この際、比較判定回路9は、増幅回路8により増幅された電圧が判定閾値より大きい場合には検出領域に物体は無いと判定し、増幅回路8により増幅された電圧が判定閾値以下の場合には検出領域に物体があると判定する。この比較判定回路9として、アップダウンカウンタ等を用いる。
【0017】
出力回路10は、比較判定回路9による判定結果を示す情報を出力するものである。この際、出力回路10は、上記判定結果を示す情報をもとに出力トランジスタを動作させる。
表示回路11は、比較判定回路9による判定結果を示す情報を表示灯等により表示するものである。
制御回路12は、光電センサの各部の動作を制御するものである。
【0018】
次に、上記のように構成された距離設定型光電センサの効果について説明する。
まず、従来構成の場合での検出体50の位置による受光量の変化について、図3を参照しながら説明する。なお図3では、距離設定型光電センサのうち、投光素子2、投光光学系3、受光光学系4及び受光素子5のみを図示している。
【0019】
図3(a)は検出体50の位置が距離設定型光電センサから非常に近い場合(距離設定型光電センサから20mm程度の場合)を示している。この場合、戻り光量は多いが、反射光が斜めから受光側に反射されることになり、検出体50からの反射光の多くが受光素子5から外れ、受光素子5での受光量は小さくなる。すなわち、受光素子5のサイズは有限で小さいため、検出体50の位置が非常に近いと反射光が受光面から外れてしまう。
【0020】
一方、図3(b)は検出体50の位置が距離設定型光電センサに近い場合(距離設定型光電センサから80mm程度の場合)を示している。この場合、戻り光量が多く、受光素子5での受光量が最も多くなる。このように戻り光量が増大して受光素子5での受光量が増大すると、回路が飽和し、誤動作を起こしてしまう。
【0021】
一方、図3(c)は検出体50の位置が距離設定型光電センサから遠い場合(距離設定型光電センサから450mm程度の場合)を示している。この場合、反射光はほぼ平行光となり、戻り光量は少なく、受光素子5での受光量も小さくなる。
【0022】
次に、本発明の構成の場合での検出体50の位置による受光量の変化について、図4,5を参照しながら説明する。なお図4では、距離設定型光電センサのうち、投光素子2、投光光学系3、受光光学系4、受光素子5及び遮蔽壁6のみを図示している。
【0023】
本発明では、図4に示すように、受光素子5のN側受光面に対し、F側受光面とは反対側の端部から一部分にかけて対向配置し、受光素子5での受光量が規定値以上となる反射光を反射する距離に存在する検出体50からの反射光の一部を遮蔽する遮蔽壁6を設けている。この遮蔽壁6により、図4(b)に示すように、検出体50が距離設定型光電センサに近い場合(距離設定型光電センサから80mm程度の場合)での反射光の一部を遮蔽し、戻り光量を低減させている。その結果、受光素子5での受光量を低減させることができる。図5に示す例では、遮蔽壁6を設けることで、受光量を約50%低減させることができている。なお図5において、破線は遮蔽壁6を設けない場合(従来構成)を示し、実線は遮蔽壁6を設けた場合(本発明の構成)を示している。
【0024】
また、図4(a),(c)に示すように、遮蔽壁6は、検出体50が距離設定型光電センサに非常に近い場合及び遠い場合(距離設定型光電センサから20mm程度及び450mm程度の場合)での反射光は遮蔽していない。図5に示す例では、一点鎖線で囲んだ領域では遮蔽壁6の影響を受けていないことがわかる。
このように、本発明により、戻り光量が増大する検出体50の位置についてのみ遮蔽を行って受光量を低減することができ、受光素子5の飽和を回避することができる。
【0025】
なお実際には、遮蔽壁6として、図4に示すような非常に薄い部材を設けることは難しい。そこで、例えば図6に示すように、反射光を遮蔽する端辺が鋭角状に構成された遮蔽壁6を設けてもよい。この遮蔽壁6の端辺は、一方の面61が、受光量が規定値以上となる反射光を反射する距離より近くに存在する検出体50から受光素子5に入射される反射光を遮蔽しない角度であり、他方の面62が、当該距離より遠くに存在する検出体50から受光素子5に入射される反射光を遮蔽しない角度であるように構成されている。すなわち、図6(a)の例では、端辺の一方の面61は、距離設定型光電センサから20mm程度に位置する検出体50から受光素子5に入射される反射光を遮蔽しない角度に構成されている。また、図6(c)の例では、端辺の他方の面62は、距離設定型光電センサから450mm程度に位置する検出体50から受光素子5に入射される反射光を遮蔽しない角度に構成されている。
【0026】
以上のように、この実施の形態1によれば、受光部に、受光素子5のN側受光面に対し、F側受光面とは反対側の端部から一部分にかけて対向配置され、当該受光素子5での受光量が規定値以上となる反射光を反射する距離に存在する検出体50からの反射光の一部を遮蔽する遮蔽壁6を設けたので、戻り光量の増大による受光部の回路の飽和を防ぐことで、誤動作を回避することができる。また、従来のようなAPC回路及び高ダイナミックレンジを有する受光部を用いることなく、簡単な構造部材で戻り光量の増大を抑えることができる。
【0027】
また、図7(a)に示すように、従来構成では、戻り光量が増大する距離からの反射光では、焦点距離の関係上、像がボケてしまい、受光素子5の受光面上でのスポット径が大きくなる。それに対して、本発明のように遮蔽壁6を設けることで、図7(b)に示すように、戻り光量が増大する距離からの反射光に対しても、ボケの量を小さくすることができ、受光素子5の受光面上でのスポット径を小さくすることができる。これにより受光量の検出精度が向上する。
【0028】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 駆動回路
2 投光素子
3 投光光学系
4 受光光学系
5 受光素子
6 遮蔽壁
7 演算回路
8 増幅回路
9 比較判定回路
10 出力回路
11 表示回路
12 制御回路
50 検出体
61,62 面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7