(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6767078
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】異常検出装置及び異常検出方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20060101AFI20201005BHJP
G01F 3/22 20060101ALI20201005BHJP
G01D 3/08 20060101ALI20201005BHJP
G06F 1/04 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
G01F1/00 T
G01F3/22 B
G01D3/08
G06F1/04 571
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-57483(P2017-57483)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-159651(P2018-159651A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 信仁
(72)【発明者】
【氏名】松浦 友朋
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5478479(JP,B2)
【文献】
特許第5806529(JP,B2)
【文献】
特許第3529207(JP,B2)
【文献】
特開平11−167441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01
G06F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUのクロック周波数が、第1周波数以上の周波数である状態が規定時間を超えたかを判定する異常判定部と、
前記異常判定部により前記規定時間を超えたと判定された場合に、前記CPUをリセットするリセット部と、
前記リセット部により前記CPUがリセットされた後、前記クロック周波数を、前記第1周波数よりも低い第2周波数以下の周波数に設定する復旧部と
を備えた異常検出装置。
【請求項2】
前記CPUによる特定の処理の開始及び終了を検出する処理検出部と、
前記処理検出部により前記CPUによる前記処理の開始が検出された場合に前記クロック周波数を前記第1周波数以上の周波数に切替え、前記処理検出部により前記CPUによる前記処理の終了が検出された場合に前記クロック周波数を前記第2周波数以下の周波数に切替えるクロック切替え部とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記CPUの負荷を監視する負荷監視部と、
前記負荷監視部により前記CPUの負荷が閾値以上であると判定された場合に前記クロック周波数を前記第1周波数以上の周波数に切替え、前記負荷監視部により前記CPUが前記閾値未満であると判定された場合に前記クロック周波数を前記第2周波数以下の周波数に切替えるクロック切替え部とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記異常検出装置を有する機器に関するデータを記憶する記憶部を備え、
前記復旧部は、前記記憶部からデータを読み出して、前記CPUをリセット前の状態に復旧する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れか1項記載の異常検出装置。
【請求項5】
異常判定部が、CPUのクロック周波数が、第1周波数以上の周波数である状態が規定時間を超えたかを判定し、
リセット部が、前記異常判定部により前記規定時間を超えたと判定された場合に、前記CPUをリセットし、
復旧部が、前記リセット部により前記CPUがリセットされた後、前記クロック周波数を、前記第1周波数よりも低い第2周波数以下の周波数に設定する
ことを特徴とする異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、CPUのクロック周波数が高周波数から低周波数に切替わらない異常を検出する異常検出装置及び異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスメータは、電池だけで10年等の長期間にわたって動作することが求められており、低消費電力化が求められている(例えば特許文献1参照)。一方、ガスメータのCPUは、ガス流量の測定、流量の積算、ガス遮断及び警報出力、通信及び学習といった様々な処理を行っている。
従来では、ガスメータを低消費電力化する方法として、負荷に応じてCPUのクロック周波数を低周波数又は高周波数に切替える方法を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−133758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バグ、ソフトエラー、ノイズ又は仕様外の使い方等により不具合が発生し、長時間、クロック周波数が高周波数のままとなってしまうと、CPUの消費電力が増え、長期間の駆動が難しくなるという課題がある。現状のガスメータでは、クロック周波数が高周波数から低周波数に切替わらない事象が発生して放置すると、1ヶ月程度で電池残量がなくなってしまう。このように、何らかの不具合によりクロック周波数が高周波数から低周波数に切替わらない場合にも消費電力を抑える手段が求められている。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、クロック周波数が高周波数から低周波数に切替わらない異常を検出可能な異常検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る異常検出装置は、CPUのクロック周波数が、第1周波数以上の周波数である状態が規定時間を超えたかを判定する異常判定部と、異常判定部により規定時間を超えたと判定された場合に、CPUをリセットするリセット部と、リセット部によりCPUがリセットされた後、クロック周波数を、第1周波数よりも低い第2周波数以下の周波数に設定する復旧部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、クロック周波数が高周波数から低周波数に切替わらない異常を検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るガスメータの構成例を示す図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係るガスメータによる異常検出動作例を示す図である。
【
図3】この発明の実施の形態1におけるCPUのクロック周波数の状態遷移例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るガスメータ1の構成例を示す図である。
ガスメータ1は、記憶部11及びCPU12を有している。なお、ガスメータ1は、電池により駆動する。
【0010】
記憶部11は、ガスメータ1に関するデータ(設定値データ及び履歴データ)を記憶するものであり、不揮発性メモリ(フラッシュROM)及び揮発性メモリ(RAM)を有している。また、記憶部11は、CPU12が実行するプログラムも記憶している。
【0011】
ここで、設定値データには、ガスメータ1に関する各種設定値を示すデータが含まれる。設定値としては、例えば、製品仕様やパルス出力単位等が挙げられる。この設定値は、ガスメータ1の製造及び出荷時に不揮発性メモリに対して初期値が設定され、また、一部の設定値はガスメータ1のCPU12が有する学習機能により更新される。
【0012】
また、履歴データには、指針値、現在タイマ(検定後経過時間)、セキュリティ情報(遮断弁状態、警告)及び学習状態等を示すデータが含まれる。なお、検定後経過時間とは、ガスメータ1の構造及び精度が法令で定める基準に適合しているかどうかを検査する検定を受けてからの経過時間である。また、遮断弁状態には、ガスメータ1に内蔵され、ガスの供給を遮断する遮断弁の開閉状態、及び遮断種別が含まれる。また、遮断種別としては、例えば、合計・増加流量遮断、使用時間遮断、外部センサ遮断、センタ遮断、緊急遮断、テスト遮断・復帰安全漏洩遮断、電池電圧低下遮断、検定有効期間満了遮断が挙げられる。これらの遮断は、通常動作に復帰可能な復帰可能遮断と、通常動作に復帰不可能な復帰不可遮断とに分類することができる。また、警告としては、例えば、電池電圧低下警告、検定有効期間満了警告、遮断異常警告が挙げられる。また、学習機能は、ガスメータ1での消費パターンを学習して設定値の更新を行う機能である。
【0013】
ここで、セキュリティ情報及び学習状態を示すデータは、ガスメータ1の規格により、変更の度に不揮発性メモリに記憶される。また、指針値及び現在タイマを示すデータは、ガスメータ1の規格により、24時間毎に不揮発性メモリに記憶される。また、ガスメータ1によっては、指針値及び現在タイマを示すデータは、揮発性メモリにも定期的(例えば10秒毎)に記憶される。
【0014】
CPU12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することで各種機能を実現する。各種機能としては、ガス流量の測定、流量の積算、ガス遮断及び警報出力、通信及び学習等の機能が挙げられる。また、CPU12は、クロック周波数の異常を検出する機能(異常検出装置)を有している。
CPU12は、クロック周波数の異常を検出する機能として、処理検出部121、クロック切替え部122、許容時間設定部123、異常判定部124、リセット部125及び復旧部126を備えている。
【0015】
処理検出部121は、CPU12による特定の処理の開始及び終了を検出する。特定の処理は、負荷が大きい処理であり、ガス遮断及び通信等が挙げられる。
【0016】
クロック切替え部122は、CPU12のクロック周波数を切替える。クロック切替え部122は、クロック周波数を、高周波数(第1周波数以上の周波数)又は低周波数(第1周波数よりも低い第2周波数以下の周波数)を含む複数の周波数に切替え可能である。以下では、クロック切替え部122は、クロック周波数を高周波数(例えば1MHz)又は低周波数(例えば32kHz)に切替えるものとする。
クロック切替え部122は、通常時にはクロック周波数を低周波数としている。一方、クロック切替え部122は、処理検出部121によりCPU12による上記処理の開始が検出された場合には、クロック周波数を高周波数に切替える。また、クロック切替え部122は、処理検出部121によりCPU12による上記処理の終了が検出された場合には、クロック周波数を低周波数に切替える。
【0017】
許容時間設定部123は、CPU12のクロック周波数が高周波数である状態を許容する許容時間(規定時間)を設定する。この許容時間としては、例えば設計上あり得る最大時間を設定でき、数秒から数分程度である。
【0018】
異常判定部124は、CPU12のクロック周波数が高周波数である状態が、許容時間設定部123により設定された許容時間を超えたかを判定する。
【0019】
リセット部125は、異常判定部124により許容時間を超えたと判定された場合に、CPU12をリセットする。
【0020】
復旧部126は、リセット部125によりCPU12がリセットされた後、クロック周波数を低周波数に設定する。また、復旧部126は、記憶部11の不揮発性メモリからデータを読み出して正常性を検査した上で、当該データを用いてCPU12をリセット前の状態に復旧する。上記データは、重要なデータであり、例えば、指針値、現在タイマ、セキュリティ情報及び各種設定値等を示すデータが挙げられる。
【0021】
次に、上記のように構成されたガスメータ1による異常検出動作例について、
図2,3を参照しながら説明する。なお、許容時間設定部123は、許容時間を予め設定している。また、クロック切替え部122は、通常時では、CPU12のクロック周波数を低周波数に設定しており、CPU12は低速クロックで処理を行っている。
このガスメータ1による異常検出動作例では、
図2に示すように、まず、処理検出部121は、CPU12による特定の処理の開始を検出したかを判定する(ステップST1)。
このステップST1において、処理検出部121がCPU12による上記処理の開始を検出していない場合には、シーケンスはステップST1に戻る。
【0022】
一方、ステップST1において、処理検出部121がCPU12による上記処理の開始を検出した場合には、クロック切替え部122は、クロック周波数を高周波数に切替える(ステップST2)。その後、CPU12は高速クロックで処理を行う。
【0023】
次いで、異常判定部124は、CPU12のクロック周波数が高周波数である状態が、許容時間設定部123により設定された許容時間を超えたかを判定する(ステップST3)。
【0024】
このステップST3において、異常判定部124が許容時間を超えていないと判定した場合には、処理検出部121は、CPU12による上記処理の終了を検出したかを判定する(ステップST4)。
このステップST4において、処理検出部121がCPU12による上記処理の終了を検出していない場合には、シーケンスはステップST3に戻る。
【0025】
一方、ステップST4において、処理検出部121がCPU12による上記処理の終了を検出した場合には、クロック切替え部122は、クロック周波数を低周波数に切替える(ステップST5)。その後、CPU12は低速クロックで処理を行う。また、シーケンスはステップST1に戻る。
【0026】
一方、ステップST3において、異常判定部124が許容時間を超えたと判定した場合には、リセット部125は、CPU12をリセットする(ステップST6)。すなわち、異常判定部124は、クロック周波数が高周波数である状態が許容時間を超えた場合にはCPU12が異常であると判定し、リセット部125はCPU12をリセットする。これにより、CPU12は初期状態となる。
なお、リセット部125は、CPU12をリセットする前に、重要なデータ(指針値、現在タイマ、セキュリティ情報及び各種設定値等)を記憶部11の不揮発性メモリに記憶してもよい。
【0027】
次いで、復旧部126は、クロック周波数を低周波数に設定する(ステップST7)。また、復旧部126は、記憶部11の不揮発性メモリからデータを読み出して正常性を検査した上で、当該データを用いてCPU12をリセット前の状態に復旧する(ステップST8)。これにより、復旧部126は、初期状態であるCPU12を、不揮発性メモリに記憶された重要なデータを用いて、リセット前の状態に復旧する。その後、シーケンスはステップST1に戻る。
図3は実施の形態1におけるCPU12のクロック周波数の状態遷移例を示している。
【0028】
このように、CPU12のクロック周波数が高周波数である状態が許容時間を超えた場合には異常と判定し、CPU12のリセットを行い、クロック周波数を低周波数とした状態で復旧を行っている。これにより、電池寿命を延ばすことができる。また、ガスメータ1に、異常を検知してリセット及び復旧を行う機能を持たせることで、高信頼性につなげることができる。なお、CPU12が暴走した場合には、WDT(ウォッチドックタイマ)によりリセットされる。
【0029】
以上のように、この実施の形態1によれば、CPU12のクロック周波数が高周波数である状態が許容時間を超えたかを判定する異常判定部124と、異常判定部124により許容時間を超えたと判定された場合に、CPU12をリセットするリセット部125と、リセット部125によりCPU12がリセットされた後、クロック周波数を低周波数に設定する復旧部126とを備えたので、クロック周波数が高周波数から低周波数に切替わらない異常を検出可能となる。
【0030】
なお上記では、CPU12による特定の処理の開始及び終了を検出する処理検出部121を設け、クロック切替え部122が、上記処理の開始及び終了のタイミングでCPU12のクロック周波数を高周波数又は低周波数に切替える場合を示した。しかしながら、クロック周波数の切替え方法はこれに限らず、CPU12の負荷状態に基づいてクロック周波数を切替えてもよい。
この場合、CPU12に、処理検出部121に代えて、CPU12の負荷を監視する負荷監視部を設ける。そして、クロック切替え部122は、負荷監視部によりCPU12の負荷が閾値以上であると判定された場合には、クロック周波数を高周波数に切替える。また、クロック切替え部122は、負荷監視部によりCPU12が閾値未満であると判定された場合には、クロック周波数を低周波数に切替える。このような構成であっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0031】
また上記では、電池駆動の機器としてガスメータ1を用いた場合を示した。しかしながら、これに限らず、長期間の駆動が必要な電池駆動の機器であればよい。例えば、音楽プレーヤー等の携帯機器や、IoT(Internet of Things)で用いられる小型のセンサ機器等に対しても、異常検出装置を適用可能である。
【0032】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 ガスメータ
11 記憶部
12 CPU
121 処理検出部
122 クロック切替え部
123 許容時間設定部
124 異常判定部
125 リセット部
126 復旧部