(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載され車両外部との間で無線通信するための無線通信機能を含む車載器と、前記車載器を車両の外部から遠隔操作するためのユーザ操作端末と、前記ユーザ操作端末からの指示に従って制御対象の前記車載器との間で無線データ通信を行うデータセンタと、を備える通信システムであって、
前記データセンタは、ユーザと複数の車載器との対応関係が事前に登録された車載器管理部と、
前記ユーザ操作端末からの要求を受信した場合に、前記受信した要求が、通常送信要求及び一括送信要求の何れであるかを識別する識別手段と、
前記通常送信要求を受信した場合には、前記通常送信要求に対応する1つの車載器を特定し、前記一括送信要求を受信した場合には、前記車載器管理部に登録されている対応関係に基づいて、操作を行った前記ユーザに対応付けられた複数の車載器を特定する特定手段と、
前記通常送信要求を受信した場合には、前記特定手段に特定された前記1つの車載器に対して前記通常送信要求に対応する命令を送信し、前記一括送信要求を受信した場合には、前記特定手段に特定された前記複数の車載器のそれぞれに対して、前記一括送信要求に対応する命令を同時に、もしくは順番に送信する車載器側送信手段と、を有し、
前記一括送信要求として、前記車載器が使用するハザードマップの更新要求が含まれる
ことを特徴とする通信システム。
前記車載器は、前記データセンタからのメッセージを受信した場合に、少なくとも車両が所定の運行状態である間は、前記メッセージのデータを保持し、車両の乗務員の要求操作に従い、前記メッセージの出力を複数回行う、
ことを特徴とする請求項4に記載の通信システム。
車両に搭載され車両外部との間で無線通信するための無線通信機能を含む車載器と、前記車載器を車両の外部から遠隔操作するためのユーザ操作端末と、前記ユーザ操作端末からの指示に従って制御対象の前記車載器との間で無線データ通信を行うデータセンタと、で構成される通信システム、を制御するための通信制御方法であって、
前記データセンタが、特定ユーザと複数の車載器との対応関係を所定の車載器管理部に事前に保持し、
ユーザからの要求を前記データセンタが検知した場合に、前記データセンタは、前記検知した要求が通常送信要求及び一括送信要求の何れであるかを識別し、前記通常送信要求を検知した場合には、前記通常送信要求に対応する1つの車載器を特定し、特定した前記1つの車載器に対して前記通常送信要求に対応する命令を送信し、前記一括送信要求を検知した場合には、該当するユーザに対応付けられた複数の車載器を前記車載器管理部により特定し、特定した前記複数の車載器のそれぞれに対して、前記一括送信要求に対応する命令を同時に、もしくは順番に送信し、
前記一括送信要求として、前記車載器が使用するハザードマップの更新要求が含まれる、
ことを特徴とする通信制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2のような技術を採用することにより、例えば管理センタや管理センタを利用する企業等のユーザは、様々な車両の現在位置の情報を常時把握することができ、タクシーやトラックのような業務用車両を適切に配車するために現在位置の情報を利用できる。
【0006】
しかし、企業等のユーザが各車両の現在位置の情報を常時必要とするとは限らない。例えば、タクシーの配車を行う用途では、迎車を必要とする顧客からユーザ企業であるタクシー会社が連絡を受けたような場合に各車両の位置情報が必要になるが、そのようなイベントが発生しない状況では、位置情報が不要な場合も多い。
【0007】
特許文献1及び特許文献2のような技術では、短い時間間隔で定期的にポーリングを行って各車両から位置情報を取得しているが、定期的に取得した位置情報の大部分は実際には利用されない無駄な情報である可能性が高い。
【0008】
したがって、例えば大量の車両を管理するデータセンタにおいては、無駄なデータ通信を最小限に抑制することが求められる。そのため、例えばユーザから車両位置検索の要求を受けた時だけ、データセンタが車両に搭載された車載器に対して問い合わせを行い、各車両から位置情報を取得するような通信サービスを行っている。これにより、実際にユーザが必要とする時だけ、車両の位置情報の取得に関するデータ通信を行うことができ、無駄なデータ通信の発生を抑制できる。
【0009】
しかしながら、ユーザが必要とする時だけ、ユーザの要求によりデータセンタが車載器との間でデータ通信を行う場合には、ユーザが同じような入力操作を何回も繰り返す場合もあり、配車等の作業を効率的に行うことができなかった。
【0010】
例えば、ユーザが管理している多数の車両のそれぞれの位置情報を必要とする場合に、該当する車両を順番に指定して、その都度、位置情報の要求をユーザからデータセンタに送信しなければならないため、ユーザは車両の数だけ同じ操作を繰り返すことになる。
【0011】
また、車両を管理するユーザ企業は、位置情報を必要とする場合以外にも、様々な状況で各車両や乗務員を管理する必要がある。例えば、様々な状況を各車両の乗務員に知らせるために、車載器にメッセージを送りたい場合がある。また、災害発生時には各車両の乗務員の安否を確認する必要がある。また、道路で渋滞が発生しているような状況では、効率的な運行のために渋滞に関する情報を収集する必要がある。また、各車両の車載器が利用するソフトウェアを更新したい場合がある。このような状況で、データセンタを介して各車載器を遠隔操作しようとすると、ユーザは車両の数だけ同じ入力操作を繰り返すことが必要になり、車両の数が増えると、作業を効率的に行うことができない。
【0012】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の車両を管理するユーザが所定のデータセンタを利用して車両に搭載された各車載器を遠隔操作しようとする場合に、ユーザにおける入力操作の効率を改善することが可能な通信システム及び通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る通信システムは、下記(1)〜(5)を特徴としている。
【0014】
(1) 車両に搭載され車両外部との間で無線通信するための無線通信機能を含む車載器と、前記車載器を車両の外部から遠隔操作するためのユーザ操作端末と、前記ユーザ操作端末からの指示に従って制御対象の前記車載器との間で無線データ通信を行うデータセンタと、を備える通信システムであって、
前記データセンタは、ユーザと複数の車載器との対応関係が事前に登録された車載器管理部と、
前記ユーザ操作端末からの要求を受信した場合に、前記受信した要求が、通常送信要求及び一括送信要求の何れであるかを識別する識別手段と、
前記通常送信要求を受信した場合には、前記通常送信要求に対応する1つの車載器を特定し、前記一括送信要求を受信した場合には、前記車載器管理部に登録されている対応関係に基づいて、操作を行った前記ユーザに対応付けられた複数の車載器を特定する特定手段と、
前記通常送信要求を受信した場合には、前記特定手段に特定された前記1つの車載器に対して前記通常送信要求に対応する命令を送信し、前記一括送信要求を受信した場合には、前記特定手段に特定された前記複数の車載器のそれぞれに対して、前記一括送信要求に対応する命令を同時に、もしくは順番に送信する車載器側送信手段と、を有
し、
前記一括送信要求として、前記車載器が使用するハザードマップの更新要求が含まれる
ことを特徴とする。
【0015】
この通信システムによれば、ユーザ操作端末を扱うユーザは、複数の車載器に対して同じ指示を与えようとする時に、一括送信要求の入力操作を1回行うだけでよく、これだけで複数の車載器の全てに共通の指示を一斉に与えることができる。ユーザ操作端末またはデータセンタは、車載器管理部に登録された情報に基づいて、指示を与えるべき送信先の全ての車載器を特定できる。したがって、ユーザの入力操作に関する作業効率を大幅に改善できる。また、入力操作全体の所要時間を短縮できるので、例えば位置情報を取得する場合には、短時間で全車載器の位置情報を取得できる。
【0016】
(2) 上記(1)に記載の通信システムであって、
前記特定手段は、前記一括送信要求に対応して送信した命令に対する前記複数の車載器の各々からの応答を受信すると、応答を送信した車載器を特定し、
前記データセンタは、さらに、前記一括送信要求の要求元の前記ユーザ操作端末に対して、前記応答に対応する情報を送信するユーザ操作端末側送信手段を有する
ことを特徴とする。
【0017】
この通信システムによれば、ユーザ操作端末は、一括送信要求に対する応答として、各車載器から所定の情報を取得することができる。つまり、ユーザは簡単な入力操作を行うだけで、多数の車載器の各々から情報を収集することができる。
【0018】
(3) 上記(2)に記載の通信制御方法であって、
前記特定手段は、前記一括送信要求に対応して送信した命令に対して、送信先の車載器からの応答を所定時間以内に検出しない場合には、該当する車載器を特定し、
前記ユーザ操作端末側送信手段は、前記一括送信要求の要求元の前記ユーザ操作端末に対して、前記応答がないことを表す情報を送信する、
ことを特徴とする。
【0019】
この通信システムによれば、ユーザは複数の車載器の各々が与えた命令に対して応答可能な状態か否かを識別可能な情報を、データセンタおよびユーザ操作端末を介して取得できる。したがって、例えば災害発生時などの状況で役に立つ安否確認などの情報を容易に入手できる。
【0020】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの通信制御方法であって、
前記一括送信要求として、前記車載器を搭載した車両の位置情報の要求、
及び、前記車載器に対するメッセージの送信要求、の少なくとも1つ
が含まれる、
ことを特徴とする。
【0021】
この通信システムによれば、車載器を操作する様々な用途において、ユーザの入力操作の効率を改善できる。すなわち、一括送信要求で車両の位置情報を要求することにより、多数の車両の位置情報を簡単に収集できる。また、一括送信要求でメッセージを送信することにより、各車両の乗務員に対して一斉にメッセージを伝えることが可能になる。また、一括送信要求でソフトウェアの更新を要求することにより、多数の車載器の各々が扱うソフトウェアを一斉に更新することが可能になる。
【0022】
(5) 上記(4)に記載の通信制御方法であって、
前記車載器は、前記データセンタからのメッセージを受信した場合に、少なくとも車両が所定の運行状態である間は、前記メッセージのデータを保持し、車両の乗務員の要求操作に従い、前記メッセージの出力を複数回行う、
ことを特徴とする。
【0023】
この通信システムによれば、各車載器が前記メッセージを受け取った時に、乗務員が当該メッセージを確認できないような運転状況であったとしても、その後で再び当該メッセージを出力し確認することができる。
【0024】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る通信制御方法は、下記
(6)を特徴としている。
【0035】
(
6) 車両に搭載され車両外部との間で無線通信するための無線通信機能を含む車載器と、前記車載器を車両の外部から遠隔操作するためのユーザ操作端末と、前記ユーザ操作端末からの指示に従って制御対象の前記車載器との間で無線データ通信を行うデータセンタと、で構成される通信システム、を制御するための通信制御方法であって、
前記データセンタが、特定ユーザと複数の車載器との対応関係を所定の車載器管理部に事前に保持し、
ユーザからの要求を前記データセンタが検知した場合に、前記データセンタは、前記検知した要求が通常送信要求及び一括送信要求の何れであるかを識別し、前記通常送信要求を検知した場合には、前記通常送信要求に対応する1つの車載器を特定し、特定した前記1つの車載器に対して前記通常送信要求に対応する命令を送信し、前記一括送信要求を検知した場合には、該当するユーザに対応付けられた複数の車載器を前記車載器管理部により特定し、特定した前記複数の車載器のそれぞれに対して、前記一括送信要求に対応する命令を同時に、もしくは順番に送信し、
前記一括送信要求として、前記車載器が使用するハザードマップの更新要求が含まれる、
ことを特徴とする。
【0036】
この通信制御方法によれば、ユーザ操作端末を操作するユーザは、データセンタの提供するサービスを利用することにより、簡単な入力操作だけで、複数の車載器を遠隔操作することが可能になる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の通信システム及び通信制御方法によれば、複数の車両を管理するユーザが所定のデータセンタを利用して車両に搭載された各車載器を遠隔操作しようとする場合に、ユーザにおける入力操作の効率を改善することが可能になる。
【0038】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0041】
まず、通信システム100全体の構成について説明する。
図1は、本発明の通信制御方法を適用可能な通信システム100の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、この通信システム100は、車載器10と、データセンタ20と、事務所PC30とを含んでいる。また、車載器10とデータセンタ20との間は広域通信網40を介して接続され、データセンタ20と事務所PC30との間は通信回線50を介して接続されている。
【0042】
図1に示した通信システム100に含まれる車載器10は、デジタル式の運行記録計、すなわちデジタルタコグラフである。また、この車載器10はデータセンタ20の通信サービスを利用できるように無線データ通信機能を備えている。車載器10は、一般的には例えばタクシーやトラックのような業務用車両、あるいはリース契約された様々な車両に搭載した状態で使用される。
【0043】
なお、本実施形態では車載器10として運行記録計を想定しているが、その他の車載器、例えばドライブレコーダやタクシーメータなどに置き換える場合も想定できる。
【0044】
例えば、多数のタクシー車両を所有するタクシー会社が各タクシー車両の運行状態などを管理しようとする場合に、各タクシー車両に、車載器10としてデジタルタコグラフを搭載する。
【0045】
また、タクシー会社等のユーザは、社内の事務所等に設置した事務所PC30を用いて、各車両に搭載した車載器10を遠隔操作したり、車載器10から必要なデータを取得して、車両の運行管理や安全運転の管理などに役立てることが可能である。
【0046】
また、車載器10を扱うのに適した専用のデータ処理サービスを提供するデータセンタ20を利用することにより、事務所PC30の負担を減らすことができる。また、必要なタイミングで多数の車両の各々に搭載された車載器10との間で通信回線を確保し、様々な情報を低コストで取得して高度なデータ分析を行うことが可能になる。
【0047】
事務所PC30は、一般的なPC(パーソナルコンピュータ)に、管理用の専用のソフトウェアを組み込んだ装置である。管理対象の各車両に車載器10として搭載したデジタルタコグラフから様々なデータを収集し分析することにより、各車両の運行管理や安全運転の管理などに役立つ情報が得られる。
【0048】
具体例としては、各車両の現在位置を表す情報を収集することにより、多数の車両の現在の配車状況の把握が容易になり、効率的な運行ができるように各車両に指示を与えることも可能になる。また、車速、エンジン回転数などの情報を収集して分析することにより、乗務員の安全運転支援に役立つ情報が得られる。
【0049】
また、事務所PC30からデータセンタ20を経由して、各車載器10にメッセージを送信することも可能である。また、事務所PC30からデータセンタ20を経由して、各車載器10を遠隔操作し、各車載器10が使用するソフトウェア、すなわち車載器自体を制御するファームウェアや、ハザードマップのような定数データを最新の内容に更新することも可能である。
【0050】
次に、車載器10の構成について説明する。
図2は、
図1の通信システム100に含まれる車載器10の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、この車載器10は、マイクロコンピュータ(CPU)11、表示部12、メモリ(SRAM)13、メモリ(ROM)14、シリアルインタフェース(I/F)15、通信インタフェース16、外付け表示器17、通信モジュール18、通信アンテナ19、操作部61、音声出力部62、スピーカ63、信号処理部64、およびGPS受信機65を備えている。
【0051】
マイクロコンピュータ11は、予め内部に組み込まれたプログラムやメモリ14上に存在するプログラムを実行することにより、車載器10全体の機能を実現するために必要な各種制御を行う。
【0052】
表示部12は、比較的情報量の少ない可視情報を表示する機能を有し、マイクロコンピュータ11の制御により、例えば車速、時刻、位置のような数値を表示することができる。
【0053】
メモリ13は、揮発性であり、マイクロコンピュータ11のアクセスにより、データの読み出しおよび書き込みを自在に行うことができる。このメモリ13は、様々なデータを一時的に保持するために利用される。
【0054】
メモリ14は、不揮発性であり、マイクロコンピュータ11のアクセスにより、データの読み出しおよび書き込みを自在に行うことができる。このメモリ14は、車載器10の様々な機能を実現するために必要なソフトウェア、例えばファームウェアのようなプログラムや、ハザードマップのような定数データ群を保持するために利用される。
【0055】
外付け表示器17は、様々な可視情報を乗務員が視認しやすい状態で表示する機能を有している。この外付け表示器17は、シリアルインタフェース15を介してマイクロコンピュータ11と接続されている。外付け表示器17は、例えば車載器10の状態を表示したり、安全運転に役立つ文字のメッセージ、車載器10に対する入力操作を促すためのメッセージなどを表示するために利用される。
【0056】
通信モジュール18は、通信アンテナ19を利用して、例えば移動体通信事業者が提供する所定の広域通信網40との間で無線通信を行ってデータ通信用の無線通信回線を確保するために必要な通信機能を搭載している。この通信モジュール18は、通信インタフェース16を介してマイクロコンピュータ11と接続されている。
【0057】
操作部61は、乗務員が操作可能な複数の操作ボタン(図示せず)を有している。マイクロコンピュータ11は、操作部61の各操作ボタンの状態の変化を読み取ることにより、乗務員の入力操作を検出できる。
【0058】
音声出力部62は、テキスト形式のメッセージから疑似音声信号を合成することができる。音声出力部62が生成した疑似音声信号は、スピーカ63から音声のメッセージとして出力される。例えば、乗務員に安全運転を促す音声メッセージ、効率的な車両運行に役立つ音声メッセージ、入力操作を促すための音声メッセージなどを出力することが可能である。
【0059】
信号処理部64は、車両の運行状態を表す複数の信号SG1、SG2、およびSG3を処理してマイクロコンピュータ11に与えることができる。具体的には、車両のイグニッションのオンオフ状態を表す信号、車速を表すパルス信号、エンジン回転数を表すパルス信号などが、信号SG1、SG2、およびSG3として入力される。
【0060】
GPS受信機65は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信し、受信した時間の情報に基づいて受信地点、すなわち車両の位置(緯度/経度)を算出することができる。
【0061】
したがって、マイクロコンピュータ11は、信号処理部64から入力される信号に基づいて、イグニッションのオンオフ状態、車速、エンジン回転数などを把握することができ、GPS受信機65の出力から車両の現在位置を把握することもできる。また、例えば操作部61のボタン操作の検出結果等に基づき、車両の運行状態の違いを表す「実車」、「空車」を把握することもできる。また、これらの情報を、マイクロコンピュータ11がメモリ14上に自動的に保存したり、広域通信網40を経由してデータセンタ20に転送することができる。
【0062】
次に、データセンタ20の構成について説明する。
図5は、データセンタ20内の装置の構成例を示すブロック図である。
図5の構成例においては、データセンタ20内は、サーバ本体21、大容量記憶装置22、ユーザ管理部24、車載器管理部25、ユーザ側通信インタフェース26、および車載器側通信インタフェース27を備えた総体を意味する。
【0063】
サーバ本体21は、所定のコンピュータにより構成されており、車載器側通信インタフェース27および広域通信網40を介して各車両の車載器10との間で必要に応じてデータ通信を行う。また、サーバ本体21はユーザ側通信インタフェース26および通信回線50を介して各ユーザの事務所PC30との間で必要に応じてデータ通信を行う。
【0064】
また、サーバ本体21は事前に定めた処理手順に従い、または事務所PC30から入力された要求を解析した結果に従い様々な処理を行う。例えば、各車載器10から必要なタイミングでデータを取得したり、取得したデータを大容量記憶装置22に蓄積したり、取得したデータに対して所定の分析処理を施したり、取得したデータを事務所PC30に転送することができる。また、事務所PC30が送信したメッセージを車載器10に転送することもできる。
【0065】
大容量記憶装置22は、多数の車載器10の各々から取得した大量のデータを蓄積したり、分析結果のデータを蓄積することができる。
【0066】
ユーザ管理部24は、データセンタ20のサービスを利用するユーザを管理するために必要な情報を保持している。すなわち、事前に登録した各々のユーザを識別するために必要なユーザIDや、認証のために必要なユーザ毎の固有のパスワードなどをユーザ管理部24が保持している。
【0067】
各ユーザが最初にデータセンタ20のサーバ本体21にアクセスする時には、サービスを利用するユーザを特定し、認証を行う必要がある。この際に、事務所PC30からサーバ本体21に入力されるユーザID、パスワード等の情報と、ユーザ管理部24上に保持されている情報とを照合することにより、正規のユーザか否かを識別できる。
【0068】
車載器管理部25は、各ユーザが所有もしくは管理している車両に搭載した各車載器10をユーザ毎に把握するために必要な情報、すなわち後述する車載器管理テーブル25aを保持している。車載器管理部25を利用することにより、サーバ本体21はユーザの管理下の各車載器10をユーザ毎に把握することができる。
【0069】
次に、車載器管理テーブル25aの構成について説明する。
図5に示した車載器管理部25に備わっている車載器管理テーブル25aの構成例を
図6に示す。
図6に示した車載器管理テーブル25aは、各車載器10に割り当てた車載器IDと、ユーザIDと、車載器IP(Internet Protocol)アドレスとを互いに対応付けて保持している。
【0070】
図6に示す例では、ユーザIDが(IDu=001)のユーザに対して、IDd001〜IDd021の各車載器IDが割り当てられた21台の車載器10が対応付けられている。また、ユーザIDが(IDu=002)のユーザに対して、IDd022〜IDd031の各車載器IDが割り当てられた11台の車載器10が対応付けられている。また、ユーザIDが(IDu=003)のユーザに対しては、IDd032以降の車載器IDが割り当てられた車載器10が対応付けられている。
【0071】
したがって、
図6の車載器管理テーブル25aを利用することにより、ユーザIDと各車載器IDとの関係を把握することができる。また、各車載器IDが割り当てられた車載器10との間で通信する際に使用するIPアドレスを特定できる。なお、
図6に示した車載器管理テーブル25aは複数ユーザの情報を纏めて保持しているが、ユーザID毎にそれぞれ独立した車載器管理テーブル25aを用意してもよい。
【0072】
次に、通信システム100全体の動作について説明する。
<動作の概要>
通信システム100に含まれる多数の車載器10の各々は、イグニッションのオンオフ状態、車速、エンジン回転数、車両の現在位置などの情報を逐次取得する。取得したこれらの情報は、車載器10の内部に自動的に保存する。
【0073】
また、例えばイグニッションのオンオフ状態が切り替わった時には、車載器10は最新の情報を広域通信網40を介してデータセンタ20に送信する。したがって、データセンタ20では、車両毎に、イグニッションのオンオフ状態が切り替わった時の車速、エンジン回転数、車両の現在位置などの情報を自動的に取得できる。
【0074】
また、データセンタ20内のサーバ本体21に組み込まれた処理手順に従い、データセンタ20が各車載器10に対して必要な情報の送信を要求する場合もある。データセンタ20では、車載器10毎に取得した情報を蓄積したり、蓄積した情報に対して分析を施したり、取得した情報や分析結果のデータを事務所PC30に送信することができる。
【0075】
また、各ユーザは、事務所PC30を利用してデータセンタ20のサーバ本体21にアクセスし、データセンタ20が提供する所定のサービスを利用することができる。すなわち、ユーザは事務所PC30からデータセンタ20に対して所定の要求を行うことにより、当該ユーザの管理下の各車載器10に対して命令を送って遠隔操作を行ったり、車載器10から情報を取得したり、車載器10にメッセージを送ることができる。
【0076】
本実施形態では、ユーザが事務所PC30からデータセンタ20に要求を送る際のデータセンタ20の動作モードとして、「通常モード」と、「一括送信要求モード」とがある。「通常モード」は、ユーザが指定した特定の車載器10を制御するためのモードである。「一括送信要求モード」は、当該ユーザの管理下の全ての車載器10を一括して遠隔制御するためのモードである。
【0077】
<ユーザの要求に対応したシステムの動作>
<通常モードの動作例>
事務所PC30を操作するユーザが、データセンタ20に対して「通常モード」で位置情報を要求した場合の通信システム全体の動作シーケンスの例を
図3に示す。
図3の動作について以下に説明する。
【0078】
なお、
図3に示す動作を実行する前に、ユーザはデータセンタ20のサービスを利用できるように、ユーザIDとパスワード等の認証情報を事務所PC30に入力し、事務所PC30とサーバ本体21との間で認証を完了しておく必要がある。
【0079】
ユーザが事務所PC30を操作して、目的の「車両A」を選択し(S11)、図示しない「車両位置要求ボタン」を押下する(S12)と、その入力に従って、事務所PC30は、「車両A位置要求」をデータセンタ20に送信する(S13)。この「車両A位置要求」は、要求元の該当するユーザを識別するためのユーザID等の情報と、制御対象の「車両A」を特定する情報とを含んでいる。ここで、「車両A」は、車両を特定するIDの情報でもよいし、その車両に搭載された車載器10を表す車載器IDであってもよい。
【0080】
サーバ本体21は、事務所PC30から「車両A位置要求」を受信すると、この要求を処理する。そして、受信した要求により指定された制御対象の「車両A」にアクセスできるように、「車両A」に搭載された車載器10に割り当てられたIPアドレスを特定する(S21)。例えば、
図6に示した車載器管理テーブル25aを参照することにより、車載器IDから目的のIPアドレスを取得できる。そして、サーバ本体21はS21で取得したIPアドレスを宛先として、所定の「位置要求コマンド」を広域通信網40を経由して目的の車載器10に送信する(S22)。
【0081】
車載器10は、サーバ本体21からの前記「位置要求コマンド」を受信すると(S31)、この命令を受け付けて次のように処理する。車載器10は、GPS受信機65を利用して現在位置の情報を取得する(S32)。また、車載器10は最新の車両情報、すなわち車速、エンジン回転数、実車/空車の区分等の情報を取得する(S33)。
【0082】
そして、車載器10はS31で受信した命令に対して返信するために必要な「位置返信コマンド」を含むパケットを生成する(S34)。この「位置返信コマンド」には、S32で取得した位置情報とS33で取得した車両情報とが含まれる。位置情報だけを「位置返信コマンド」に含めてもよい。また、車載器10はS34で生成した「位置返信コマンド」のパケットを、広域通信網40を経由してサーバ本体21に返信する(S35)。
【0083】
データセンタ20のサーバ本体21は、車載器10から「位置返信コマンド」のパケットを受信すると(S23)、受信したパケットの送信元のIPアドレスから、該当する車載器10の車載器ID、あるいは車両を特定する(S24)。例えば、
図6に示した車載器管理テーブル25aを参照することにより、IPアドレスから車載器IDを特定できる。そして、サーバ本体21は、S24で特定した車載器ID、あるいは車両に基づき、要求元の事務所PC30を特定し、S23で受信したパケットを事務所PC30に返信として転送する。
【0084】
事務所PC30は、S13で送信した「車両A位置要求」に対する応答として、「位置返信コマンド」のパケットをデータセンタ20から受信する(S14)と、このパケットに含まれる該当車両の位置情報を、地図上にマッピングする(S15)。つまり、地図上に車両の位置を表示できるように対応付ける。
【0085】
また、受信したパケットに位置情報以外の付加情報、例えば車速、エンジン回転数、実車/空車の区別などの情報が含まれている場合には、これらの情報を該当する「車両A」に対応付けて表示画面上でポップアップとして表示できるように事務所PC30がデータを処理する(S16)。また、事務所PC30は要求に対して「車両A位置情報取得」が完了したことを画面に表示してユーザに通知する(S17)。
【0086】
したがって、
図3に示した動作を複数の車両に対して行う場合には、ユーザはS11で順番に各車両を選択し、S12で「車両位置要求ボタン」を押下する操作を何回も繰り返すことになる。
【0087】
<一括送信要求モードの動作例>
事務所PC30を操作するユーザが、データセンタ20に対して「一括送信要求モード」で位置情報を要求した場合の通信システム全体の動作シーケンスの例を
図4に示す。
図4の動作について以下に説明する。
【0088】
なお、
図4に示す動作を実行する前に、ユーザはデータセンタ20のサービスを利用できるように、ユーザIDとパスワード等の認証情報を事務所PC30に入力し、事務所PC30とサーバ本体21との間で認証を完了しておく必要がある。
【0089】
ユーザの管理下の全ての車両を操作対象として位置情報を要求する場合には、ユーザは事務所PC30を操作して、図示しない「全車両位置要求ボタン」を押下する(S41)。その入力に従って、事務所PC30は、「全車両位置要求」をデータセンタ20に送信する(S42)。この「全車両位置要求」は、要求元の該当するユーザを識別するためのユーザID等の情報と、制御対象が「全車両」であることを示す情報とを含んでいる。
【0090】
サーバ本体21は、事務所PC30からの前記「全車両位置要求」を受信すると、この要求を処理する。そして、受信した要求の制御対象が「全車両」であることが分かるので、要求を送信したユーザに対応付けられた全ての車両の車載器10を処理対象として、車両毎の車載器10にアクセスするために必要なIPアドレスを特定する(S51)。
【0091】
例えば、「全車両位置要求」の要求元のユーザのユーザIDが(IDu=001)であり、
図6に示した車載器管理テーブル25aを使用している場合には、IDd001〜IDd021の車載器IDが割り当てられた21台の車載器10が制御対象であることが分かるので、これらの各々について車載器IPアドレスを車載器管理テーブル25aから取得する。
【0092】
そして、サーバ本体21は制御対象の21台の車載器10のそれぞれに対して、つまりS51で特定した各車載器IPアドレスを送信先として、「位置要求コマンド」を一斉に、もしくは順番に広域通信網40を経由して送信する。
【0093】
したがって、ユーザの管理下にある全ての車両、つまり
図4に示す「車両A」、「車両B」、「車両C」・・・にそれぞれ搭載された車載器10は、サーバ本体21からの前記「位置要求コマンド」をそれぞれ受信する(S61)。
【0094】
この「位置要求コマンド」を受信した各々の車載器10は、GPS受信機65を利用して現在位置の情報を取得する(S62)。また、車載器10は最新の車両情報、すなわち車速、エンジン回転数、実車/空車の区分等の情報を取得する(S63)。
【0095】
そして、車載器10はS61で受信した命令に対して返信するために必要な「位置返信コマンド」を含むパケットを生成する(S64)。この「位置返信コマンド」には、S62で取得した位置情報とS63で取得した車両情報とが含まれる。位置情報だけを「位置返信コマンド」に含めてもよい。また、車載器10はS64で生成した「位置返信コマンド」のパケットを、広域通信網40を経由してサーバ本体21に返信する(S65)。
【0096】
データセンタ20のサーバ本体21は、各車載器10から「位置返信コマンド」のパケットを受信すると(S53)、受信したパケットの送信元のIPアドレスから、該当する車載器10の車載器ID、あるいは車両を特定する(S54)。例えば、
図6に示した車載器管理テーブル25aを参照することにより、IPアドレスから車載器IDを特定できる。そして、サーバ本体21は、S54で特定した車載器ID、あるいは車両に基づき、要求元の事務所PC30を特定し、S53で受信したパケットを事務所PC30に返信として転送する。
【0097】
事務所PC30は、S42で送信した「全車両位置要求」に対する応答として、各車両の車載器10からの「位置返信コマンド」のパケットをデータセンタ20から受信する(S43)と、このパケットに含まれる該当車両の位置情報を、地図上にマッピングする(S44)。つまり、地図上に車両の位置を表示できるように対応付ける。
【0098】
また、受信したパケットに位置情報以外の付加情報、例えば車速、エンジン回転数、実車/空車の区別などの情報が含まれている場合には、これらの情報を該当する車両に対応付けて表示画面上でポップアップとして表示できるように事務所PC30がデータを処理する(S45)。
【0099】
また、事務所PC30はS43で受信したパケットの送信元の車両について、「車両位置情報取得」が完了したことを画面に表示してユーザに通知する(S46)。
【0100】
また、事務所PC30はS42で要求した全車両について、位置情報の取得が完了したか否かをS47で識別し、位置情報を取得していない車両が残っている場合には、S43に戻って処理を繰り返す。
【0101】
したがって、
図4に示した一括送信要求モードの動作を実行する場合には、ユーザはS41で「全車両位置要求ボタン」を1回押下するだけで、ユーザの管理下の全ての車両から位置情報等を一括して取得することができる。
【0102】
例えば、多数のタクシー車両の運行を管理するタクシー会社が、乗客となる顧客から迎車の要求を受け付けたような場合には、顧客の現在位置に最も近い位置に存在し、かつ空車状態のタクシー車両を特定する必要がある。このときに、ユーザは事務所PC30の「全車両位置要求ボタン」を1回押下するだけで、全車両の位置情報等を取得できる。そして、事務所PC30の画面上の地図に各車両位置を表示させることにより、該当するタクシー車両を容易に特定できる。
【0103】
次に、データセンタ20における処理の詳細について説明する。
<データセンタが車載器へデータを送信する処理>
データセンタ20が車載器10へデータを送信する処理の具体例を
図7に示す。例えば、
図4に示したステップS52でサーバ本体21が「位置要求コマンド」を車載器10に送信するような場合に、
図7の処理が実行される。
図7の処理について以下に説明する。
【0104】
ステップS101では、サーバ本体21は該当するデータ、例えば「位置要求コマンド」を車載器10に対して送信する。また、ステップS102で内部タイマを起動して、データを送信してからの経過時間の計測を開始する。
【0105】
ステップS103では、サーバ本体21は、S101で送信したデータに対する車載器10からの応答の有無を識別する。応答有の場合はS105に進み、応答なしの場合はS104に進む。
【0106】
ステップS104では、サーバ本体21はS102で起動した内部タイマで計測している経過時間を閾値と比較してタイムアウトか否かを識別する。所定時間内であればS103に戻り、タイムアウトになった場合はS106に進む。
【0107】
ステップS105では、サーバ本体21は、車載器10からの応答に対応するメッセージを、該当する車載器IDと共に、要求を送信したユーザの事務所PC30に返信として送信する。
【0108】
ステップS106では、サーバ本体21は、車載器10からの応答がないことを示すメッセージを、該当する車載器IDと共に、要求を送信したユーザの事務所PC30に返信として送信する。
【0109】
したがって、ユーザの要求に対して各車載器10が応答できる状態か否かにかかわらず、ユーザが扱う事務所PC30は、何らかの応答をデータセンタ20から受け取ることができる。また、要求に対して車載器10が所定時間以内に応答したか否かに応じて、異なるメッセージがデータセンタ20から事務所PC30に返信されるので、事務所PC30およびユーザは車載器10毎に応答の有無を区別できる。
【0110】
<データセンタがユーザからの要求を処理する動作>
データセンタ20がユーザからの要求を処理する動作の具体例を
図8に示す。例えば、
図3、
図4に示した各ステップS21、S51でサーバ本体21が事務所PC30からの要求を受け取った時に、サーバ本体21により
図8の処理が実行される。
図8の処理について以下に説明する。
【0111】
サーバ本体21は、事務所PC30からの要求を受信すると、S111からS112の処理に進み、要求の内容を識別する。そして、受信した要求が「一括送信要求」に該当する場合はS114に進み、「一括送信要求」でなければS113に進む。
【0112】
ステップS113では、サーバ本体21は事務所PC30から指定された特定の車載器10について、個別に処理を実行する。例えば、
図3に示した例のように「車両A」が指定された場合は、「車両A」に対応する特定の車載器10に対する処理を実行する。
【0113】
ステップS114では、サーバ本体21は、S111で受信した事務所PC30からの「一括送信要求」の種類を識別する。本実施形態では、「位置情報の要求」、「メッセージの送信要求」、「ソフトウェアの更新要求」のそれぞれについて、サーバ本体21が「一括送信要求」として処理できる。
【0114】
そして、「一括送信要求」の種類が「位置情報の要求」である場合はS115に進み、「一括送信要求」の種類が「メッセージの送信要求」である場合はS116に進み、「一括送信要求」の種類が「ソフトウェアの更新要求」である場合はS117進む。
【0115】
ステップS115では、サーバ本体21は、「一括送信要求」を送信した特定のユーザのユーザIDに対応付けられた全ての車載器10に対して位置情報の収集処理をを実行する。つまり、
図4に示したステップS52のように、該当する全車両の車載器10に対して「位置要求コマンド」を送信する。
【0116】
ステップS116では、サーバ本体21は、「一括送信要求」を送信した特定のユーザのユーザIDに対応付けられた全ての車載器10に対して、要求と共に事務所PC30から指定されたメッセージの内容を一斉に送信する。例えば、災害が発生したような状況において、事務所PC30を操作するユーザが各車両の乗務員の安否確認を行おうとする場合に、安否確認の返信を求める所定のメッセージをS116で全ての車両に対して一斉に送信することができる。
【0117】
ステップS117では、サーバ本体21は、「一括送信要求」を送信した特定のユーザのユーザIDに対応付けられた全ての車載器10に対して、ソフトウェアの更新処理を実行する。例えば、車載器10のマイクロコンピュータ11を制御するためのファームウェアを更新したり、危険を回避するために車載器10が使用するハザードマップを最新のデータに更新しようとする場合に、S117で全ての車載器10の更新を一斉に行うことができる。
【0118】
次に、車載器10の処理の詳細について説明する。
車載器10が受信したメッセージを処理する動作の具体例を
図9に示す。例えば、事務所PC30がメッセージを含む「一括送信要求」をデータセンタ20を経由して車載器10に送信した場合に、各車載器10内のマイクロコンピュータ11が
図9に示す処理を実行する。
図9の処理について以下に説明する。
【0119】
車載器10がデータセンタ20からのメッセージを受信すると、マイクロコンピュータ11は、ステップS121からS122の処理に進み、受信した最新のメッセージを乗務員が認識できるように出力する。例えば、外付け表示器17の表示画面にメッセージの文字を表示したり、メッセージのテキストデータを音声出力部62で音声信号に変換してスピーカ63から音声メッセージとして出力する。また、マイクロコンピュータ11は受信したメッセージのテキストデータを、次のステップS123で不揮発性のメモリ14に保存する。
【0120】
ステップS124では、マイクロコンピュータ11は、車載器10を操作する乗務員による操作部61のボタン操作により、「メッセージ出力」が要求されたか否かを識別する。この要求がない場合はS126に進み、要求があった場合はS125に進む。
【0121】
ステップS125では、マイクロコンピュータ11は、S123でメモリ14に保存したメッセージのテキストデータをメモリ14から読み出して、S122と同様に、乗務員が認識できるように文字表示や音声として出力する。
【0122】
ステップS126では、マイクロコンピュータ11は、自車両の運行が終了したか否かを識別する。例えば、自車両の運行情報を記録する記録媒体(図示せず)の車載器からの取り外しを検知して当日の乗務が終了したことを認識した場合、あるいは車両のイグニッションがオフになったことを検知したような場合に、運行終了とみなしてS126からS127に進む。
【0123】
ステップS127では、マイクロコンピュータ11は、S123でメモリ14に保存したメッセージのテキストデータをメモリ14上から消去する。
【0124】
したがって、車載器10が
図9に示した動作を実行する場合には、データセンタ20から受信したメッセージの内容を、メッセージを受信したタイミングだけでなく、乗務員の操作に従い、必要に応じて何回でも繰り返して出力することができる。したがって、車両の運行状況により、受信したメッセージを直ちに確認できない場合や、周囲の騒音などの影響でメッセージの音声を聴き取りにくいような状況であっても、メッセージの出力を繰り返すことにより、確実に内容を確認することが可能になる。そのため、事務所PC30を操作するユーザが、同じメッセージを繰り返し送信するような作業を行う必要もなくなる。
【0125】
このように、
図1に示した通信システム100においては、データセンタ20が事務所PC30から出力される「一括送信要求」を受け付けることができる。そして、データセンタ20のサーバ本体21の制御により、例えば
図4に示すような動作を行うことができる。したがって、
図3に示す動作のように、事務所PC30を操作するユーザが、制御対象の車両毎に要求の入力操作を行わなくても、
図4に示す動作のように、「一括送信要求」を送信するための操作を1回行うだけで、管理下の全ての車両の車載器10を一括して制御することが可能になる。
【0126】
なお、前述の通信システム100においては、データセンタ20がユーザの「一括送信要求」を受け付ける場合を想定しているが、同様の機能を事務所PC30上に搭載してもよい。すなわち、事務所PC30に組み込むソフトウェアの中に、車載器管理部25に相当する機能を備えることにより、データセンタ20がユーザの「一括送信要求」を受け付けない場合であっても、ユーザの1回の入力操作で全ての車載器10を制御対象にすることが可能になる。
【0127】
図1に示した通信システム100においては、データセンタ20のサーバ本体21が
図7に示した動作を実行するので、「一括送信要求」を送信した場合に、ユーザは車載器10毎に、返信の有無を確実に区別することができる。したがって、例えば災害が発生し、ユーザが全車両の乗務員に関する安否確認を行おうとする場合に、「一括送信要求」を送信し、各車載器10からの返信の内容を識別することにより、簡単に安否確認ができる。
【0128】
図1に示した通信システム100においては、データセンタ20のサーバ本体21が
図8に示した動作を実行するので、「一括送信要求」を様々な用途で利用できる。すなわち、ユーザの管理下の全ての車両から位置情報を一括して収集することもできるし、全ての車両に対して同じメッセージを一斉に送信することもできるし、全ての車両の車載器10が使用するソフトウェアを一斉に更新することもできる。
【0129】
図1に示した通信システム100においては、車載器10が
図9に示した動作を実行するので、車両の運行状況により、受信したメッセージを乗務員が直ちに確認できない場合や、周囲の騒音などの影響でメッセージの音声を聴き取りにくいような状況であっても、メッセージの出力を繰り返すことにより、確実に内容を確認することが可能になる。そのため、事務所PC30を操作するユーザが、同じメッセージを繰り返し送信するような作業を行う必要もなくなる。
【0130】
ここで、上述した本発明に係る通信システム及び通信制御方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[11]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両に搭載され車両外部との間で無線通信するための無線通信機能を含む車載器(10)と、前記車載器を車両の外部から遠隔操作するためのユーザ操作端末(事務所PC30)と、前記ユーザ操作端末からの指示に従って制御対象の前記車載器との間で無線データ通信を行うデータセンタ(20)と、を備える通信システム(100)であって、
前記データセンタは、ユーザと複数の車載器との対応関係を事前に登録する車載器管理部(25)と、
前記ユーザ操作端末から一括送信要求を受信した場合に、前記車載器管理部に登録されている対応関係に基づいて、操作を行った前記ユーザに対応付けられた複数の車載器を特定する特定手段(サーバ本体21)と、
前記特定手段に特定された前記複数の車載器のそれぞれに対して、前記一括送信要求に対応する命令を同時に、もしくは順番に送信する車載器側送信手段(サーバ本体21、車載器側インタフェース27)と、を有する
ことを特徴とする通信システム。
[2] 前記特定手段は、前記一括送信要求に対応して送信した命令に対する前記複数の車載器の各々からの応答を受信すると、応答を送信した車載器を特定し、
前記データセンタは、さらに、前記一括送信要求の要求元の前記ユーザ操作端末に対して、前記応答に対応する情報を送信するユーザ操作端末側送信手段(サーバ本体21、ユーザ側通信インタフェース26)を有する
ことを特徴とする前記[1]に記載の通信システム。
[3] 前記特定手段は、前記一括送信要求に対応して送信した命令に対して、送信先の車載器からの応答を所定時間以内に検出しない場合には、該当する車載器を特定し、
前記ユーザ操作端末側送信手段は、前記一括送信要求の要求元の前記ユーザ操作端末に対して、前記応答がないことを表す情報を送信する、
ことを特徴とする前記[2]に記載の通信システム。
[4] 前記ユーザ操作端末が、前記一括送信要求として、前記車載器を搭載した車両の位置情報の要求、前記車載器に対するメッセージの送信要求、および前記車載器が扱うソフトウェアの更新要求、の少なくとも1つを受け付ける、
ことを特徴とする前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の通信システム。
[5] 前記車載器は、前記データセンタからのメッセージを受信した場合に、少なくとも車両が所定の運行状態である間は、前記メッセージのデータを保持し、車両の乗務員の要求操作に従い、前記メッセージの出力を複数回行う、
ことを特徴とする前記[4]に記載の通信システム。
[6] 車両に搭載され車両外部との間で無線通信するための無線通信機能を含む車載器(10)と、前記車載器を車両の外部から遠隔操作するためのユーザ操作端末(事務所PC30)と、前記ユーザ操作端末からの指示に従って制御対象の前記車載器との間で無線データ通信を行うデータセンタ(20)と、で構成される通信システム(100)を制御するための通信制御方法であって、
特定ユーザと複数の車載器との対応関係を所定の車載器管理部(25)に事前に登録しておき、
前記ユーザ操作端末または前記データセンタが、ユーザからの一括送信要求を検知した場合に、該当するユーザに対応付けられた複数の車載器を特定し、特定した前記複数の車載器のそれぞれに対して、前記一括送信要求に対応する命令を同時に、もしくは順番に送信する(S51、S52)、
ことを特徴とする通信制御方法。
【0131】
[7] 前記データセンタ(20)は、前記一括送信要求に対応して送信した命令に対する前記複数の車載器の各々からの応答を受信すると、応答を送信した車載器を特定し、前記一括送信要求の要求元の前記ユーザ操作端末に対して、前記応答に対応する情報を送信する(S53、S54)、
ことを特徴とする前記[6]に記載の通信制御方法。
【0132】
[8] 前記データセンタは、前記一括送信要求に対応して送信した命令に対して、送信先の車載器からの応答を所定時間以内に検出しない場合には、該当する車載器を特定し、前記一括送信要求の要求元の前記ユーザ操作端末に対して、前記応答がないことを表す情報を送信する(S104、S106)、
ことを特徴とする前記[7]に記載の通信制御方法。
【0133】
[9] 前記ユーザ操作端末または前記データセンタが、前記一括送信要求として、前記車載器を搭載した車両の位置情報の要求、前記車載器に対するメッセージの送信要求、および前記車載器が扱うソフトウェアの更新要求、の少なくとも1つを受け付ける(S114〜S117)、
ことを特徴とする前記[6]〜[8]のいずれかに記載の通信制御方法。
【0134】
[10] 前記車載器(10)は、前記ユーザ操作端末または前記データセンタからのメッセージを受信した場合に、少なくとも車両が所定の運行状態である間は、前記メッセージのデータを保持し、車両の乗務員の要求操作に従い、前記メッセージの出力を複数回行う(S121〜S127)、
ことを特徴とする前記[9]に記載の通信制御方法。
【0135】
[11] 車両に搭載され車両外部との間で無線通信するための無線通信機能を含む車載器(10)と、前記車載器を車両の外部から遠隔操作するためのユーザ操作端末(事務所PC30)と、前記ユーザ操作端末からの指示に従って制御対象の前記車載器との間で無線データ通信を行うデータセンタ(20)と、で構成される通信システム(100)、を制御するための通信制御方法であって、
前記データセンタが、特定ユーザと複数の車載器との対応関係を所定の車載器管理部(25)に事前に保持し、
ユーザからの一括送信要求を前記データセンタが検知した場合に、前記データセンタは、該当するユーザに対応付けられた複数の車載器を前記車載器管理部により特定し(S51)、特定した前記複数の車載器のそれぞれに対して、前記一括送信要求に対応する命令を同時に、もしくは順番に送信する(S52)、
ことを特徴とする通信制御方法。