【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外周部を残して内側の領域のみが研削されたTAIKOウエハに貼付して無電解めっき処理時の保護を行うためのTAIKOウエハ保護用テープであって、基材と前記基材の片方の面に形成された粘着剤層からなり、前記基材は、5%引張強度が60MPa以下、かつ、JIS K7129に準拠したLyssy法で測定される水蒸気透過性が3g/m
2・day以下であるTAIKOウエハ保護用テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、従来のマスキングテープを用いてTAIKOウエハの保護を行ったときに充分な保護ができない原因について検討した。その結果、従来のマスキングテープではTAIKOウエハの外周部の段差に充分に追従できないことが原因であることを見出した。また、無電解めっき処理においては、めっき処理液中で80〜100℃程度の加熱が行われる。このような加熱しためっき処理液中では、粘着剤層が基材を透過した水分の影響を受けて粘着力を充分に維持できないことも保護不良の原因となると考えられた。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、5%引張強度が60MPa以下、かつ、JIS K7129に準拠したLyssy法で測定される水蒸気透過性が3g/m
2・day以下である基材を用いたTAIKOウエハ保護用テープは、充分な段差追従性を発揮できるとともに、加熱しためっき処理液でも充分な粘着力を維持することができ、TAIKOウエハの保護を確実に行うことができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明のTAIKOウエハ保護用テープは、TAIKOウエハに貼付して無電解めっき処理時の保護を行うためのTAIKOウエハ保護用テープである。
本明細書においてTAIKOウエハとは、外周部を残して内側の領域のみが研削されたウエハを意味する。上記外周部は、通常0.5〜1mm程度の幅を有し、上記外周部と内側の領域との段差は通常550〜650μm程度である。上記TAIKOウエハは、片面に回路が形成されたものであってもよい。
【0009】
本発明のTAIKOウエハ保護用テープは、基材と該基材の片方の面に形成された粘着剤層からなる。
上記基材は、5%引張強度が60MPa以下である。これにより、TAIKOウエハの外周部の段差に充分に追従することができる。上記5%引張強度は、55MPa以下であることが好ましい。上記5%引張強度の下限は特に限定されないが、TAIKOウエハ保護用テープの取り扱い性等の観点からは、10MPa以上であることが好ましい。
なお、本明細書において5%引張強度とは、幅10mm、長さ15cmのサンプルを、80℃、チャッキング距離10cmの条件下で引張り試験機にて引張り試験を行ったときに、伸張率5%時の引張強度を意味する。
【0010】
上記基材は、JIS K7129に準拠したLyssy法で測定される水蒸気透過性が3g/m
2・day以下である。これにより、無電解めっき処理時の加熱しためっき処理液でも上記粘着剤層が充分な粘着力を維持することができ、TAIKOウエハの保護を確実に行うことができる。上記水蒸気透過性は2.7g/m
2・day以下であることが好ましい。上記水蒸気透過性の下限は特に限定されないが、実質的には0.0001g/m
2・day程度が下限である。
【0011】
上記基材を構成する材料としては特に限定されず、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等が挙げられる。
上記5%引張強度と水蒸気透過性とを満たすためには、上記材料を用いた単層の基材だけでなく、2層以上の積層体からなる基材を用いてもよい。例えば、比較的柔軟なポリプロピレンやポリエチレン等からなる柔軟層と、水蒸気透過性の低いエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂からなる水蒸気遮蔽層とを積層した基材は、上記5%引張強度と水蒸気透過性とを満たすことができる。
上記柔軟層を構成する樹脂としては、ポリプロピレンやポリエチレン等に加えて、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。上記柔軟層の厚みは特に限定されないが、5〜45μmが好ましい。上記水蒸気遮蔽層を構成する樹脂は特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂等が挙げられる。上記水蒸気遮断層の厚みは特に限定されないが、5μm以上が好ましい。
このような積層体タイプの基材としては、例えば、フタムラ化学社製の商品名「QH−1」(二軸延伸ポリプロピレン層/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂層/二軸延伸ポリプロピレン層の3層構造体)等の市販品を用いることもできる。
【0012】
また、例えば、比較的柔軟なポリプロピレンやポリエチレン等からなる柔軟層の表面にアルミ蒸着等を施すことによっても、上記5%引張強度と水蒸気透過性とを満たすこともできる。
上記柔軟層を構成する樹脂としては、ポリプロピレンやポリエチレン等に加えて、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。上記柔軟層の厚みは特に限定されないが、10〜50μmが好ましい。アルミ蒸着膜の厚みは特に限定されないが、1μm以下が好ましい。
【0013】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は50μmである。上記基材の厚みがこの範囲内であると、取り扱い性を確保しつつ、TAIKOウエハの外周部の段差に充分に追従することができる。上記基材の厚みのより好ましい下限は16μm、より好ましい上限は30μmである。
【0014】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては特に限定されず、従来からマスキングテープの粘着剤層に用いられている粘着剤等を用いることができる。具体的には例えば、アルキル基の炭素数が5以下であるアクリル酸アルキルエステルに由来するセグメントと、単独重合体のガラス転移温度が80〜120℃であるアクリルモノマーに由来するセグメントと、側鎖にラジカル重合性の不飽和結合を有するセグメントを有する共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう。)を含有する粘着剤等が挙げられる。
【0015】
上記アルキル基の炭素数が5以下であるアクリル酸アルキルエステルに由来するセグメントは、上記共重合体のベースとなるものである。上記粘着剤層を構成する共重合体がアルキル基の炭素数が5以下であるアクリル酸アルキルエステルからなるセグメントを有することにより、上記粘着剤層は無電解めっき処理時の加熱しためっき処理液においても高い粘着力を発揮することができる。
【0016】
上記アルキル基の炭素数が5以下であるアクリル酸アルキルエステルは、例えば、エチルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート等が挙げられる。なかでも、エチルアクリレート、メチルアクリレートが好適である。
【0017】
上記共重合体における上記アルキル基の炭素数が5以下であるアクリル酸アルキルエステルからなるセグメントの含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は90重量%である。上記アルキル基の炭素数が5以下であるアクリル酸アルキルエステルからなるセグメントの含有量が40重量%未満であると、加熱しためっき処理液中における粘着剤の充分な凝集力が得られないことがあり、90重量%を超えると、粘着剤としての応力緩和力が減少し、接着力を損なうことがある。上記アルキル基の炭素数が5以下であるアクリル酸アルキルエステルからなるセグメントの含有量のより好ましい下限は50重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0018】
上記単独重合体のガラス転移温度が80〜120℃であるアクリルモノマーに由来するセグメントは、上記共重合体のガラス転移温度を調整する役割を有する。上記共重合体における上記アルキル基の炭素数が5以下であるアクリル酸アルキルエステルの単独重合体では、ガラス転移温度が−20℃を下回り、高温における必要な弾性率調整ができない。上記単独重合体のガラス転移温度が80〜120℃であるアクリルモノマーを共重合することにより、上記共重合体のガラス転移温度を調整することができる。
【0019】
上記単独重合体のガラス転移温度が80〜120℃であるアクリルモノマーは、例えば、メチルメタクリレート、イソボロニルアクリレート、アクリロニトリル、アクリル酸等が挙げられる。なかでも、メチルメタクリレートやアクリロニトリルが好適である。
【0020】
上記共重合体における上記単独重合体のガラス転移温度が80〜120℃であるアクリルモノマーに由来するセグメントの含有量は、上記共重合体のガラス転移温度が−5〜15℃になるように適宜調整すればよい。一般的には、上記共重合体における上記単独重合体のガラス転移温度が80〜120℃であるアクリルモノマーに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。上記単独重合体のガラス転移温度が80〜120℃であるアクリルモノマーに由来するセグメントの含有量が10重量%未満であると、加熱しためっき処理液中での凝集力が得られないことがあり、40重量%を超えると、粘着力が著しく低下することがある。上記単独重合体のガラス転移温度が80〜120℃であるアクリルモノマーに由来するセグメントの含有量のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は35重量%である。
【0021】
上記側鎖にラジカル重合性の不飽和結合を有するセグメントは、上記共重合体に光硬化性を付与する役割を有する。上記粘着剤層を構成する共重合体が側鎖にラジカル重合性の不飽和結合を有するセグメントを有することにより、無電解めっき処理後にTAIKOウエハ保護用テープに光を照射すれば、上記粘着剤層が硬化する。硬化した粘着剤層は、弾性率が著しく上昇して粘着力のほとんどを失うことから、容易に剥離することができる。
【0022】
上記共重合体に上記側鎖にラジカル重合性の不飽和結合を有するセグメントを挿入する方法は、例えば、分子内に官能基を持ったアクリルモノマーを共重合したうえで、該官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という。)と反応させる方法等が挙げられる。
【0023】
上記分子内に官能基を持ったアクリルモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーや、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマーや、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマーや、アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマーや、アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0024】
上記官能基含有不飽和化合物は、例えば、上記分子内に官能基を持ったアクリルモノマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが挙げられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが挙げられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが挙げられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが挙げられる。
【0025】
上記共重合体における上記側鎖にラジカル重合性の不飽和結合を有するセグメントの含有量の好ましい下限は0.1meq/g、好ましい上限は2meq/gである。上記側鎖にラジカル重合性の不飽和結合を有するセグメントの含有量が0.1meq/g未満であると、充分な光硬化性を付与できず、光を照射してもTAIKOウエハ保護用テープを剥離できないことがあり、2meq/gを超えると、硬化後の粘着剤が脆くなることがある。上記側鎖にラジカル重合性の不飽和結合を有するセグメントの含有量のより好ましい下限は0.2meq/g、より好ましい上限は1.5meq/gである。
【0026】
上記共重合体は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、共重合可能なその他のモノマーに由来するセグメントを含有してもよい。上記共重合可能なその他のモノマーは、炭素数6以上の側鎖を有するアクリルモノマー、例えば2−エチルヘキシルアクリレートやイソオクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等が挙げられる。
【0027】
上記粘着剤層は、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤を含有することが好ましい。このような気体発生剤を含有する上記粘着剤層に光を照射すると、上記共重合体が架橋硬化して粘着剤層全体の弾性率が上昇し、このような硬い粘着剤層中で発生した気体は粘着剤層から接着界面に放出され接着面の少なくとも一部を剥離することから、より容易にTAIKOウエハ保護用テープを剥離することができる。
【0028】
上記気体発生剤は特に限定されないが、例えば、アジド化合物、アゾ化合物等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れるアジド化合物が好適である。
上記アジド化合物としては特に限定されず、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー(GAP)等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。
また、特に優れた耐熱性を有することから、紫外線等の光を照射することにより気体(二酸化炭素ガス)を発生するカルボン酸化合物又はその塩や、テトラゾール化合物又はその塩も上記気体発生剤として用いることができる。
【0029】
上記粘着剤層は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤は、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物や、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物や、フォスフィンオキシド誘導体化合物や、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
上記粘着剤層は、多官能オリゴマー又はモノマーを含有することが好ましい。上記多官能オリゴマー又はモノマーは、上記共重合体に光を照射したときの硬化性を向上させる役割を有する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5,000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記粘着剤層は、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的でイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えることもできる。更に、粘着剤の安定性を高めるために熱安定剤、酸化防止剤を配合してもよい。
【0032】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は50μmである。上記粘着剤層の厚みがこの範囲内であると、無電解めっき処理時に剥離しない充分な粘着力と、TAIKOウエハの外周部の段差への充分な追従性とを両立することができる。上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は40μmである。
【0033】
本発明のTAIKOウエハ保護用テープを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記基材上に上記共重合体を含有する粘着剤をドクターナイフやスピンコーター等を用いて塗工する等の従来公知の方法が挙げられる。
【0034】
本発明のTAIKOウエハ保護用テープを用いれば、外周部を残して内側の領域のみが研削されたTAIKOウエハに無電解めっき処理を施す場合に、外周部の段差に充分に追従して貼付でき、かつ、加熱しためっき処理液でも充分な粘着力を維持することができることから、TAIKOウエハの保護を確実に行うことができる。
外周部を残して内側の領域のみが研削されたTAIKOウエハの無電解めっき処理を施さない側に本発明のTAIKOウエハ保護用テープを貼付する工程と、TAIKOウエハ保護用テープが貼付されたTAIKOウエハに無電解めっき処理を施す工程と、無電解めっき処理後のTAIKOウエハからTAIKOウエハ保護用テープを剥離する工程を有するTAIKOウエハの処理方法もまた、本発明の1つである。
【0035】
本発明のTAIKOウエハの処理方法は、外周部を残して内側の領域のみが研削されたTAIKOウエハの無電解めっき処理を施さない側に本発明のTAIKOウエハ保護用テープを貼付する工程を有する。TAIKOウエハ保護用テープを貼付することにより、めっきが不要な部分を保護することができる。
【0036】
本発明のTAIKOウエハの処理方法では、次いで、TAIKOウエハ保護用テープが貼付されたTAIKOウエハに無電解めっき処理を施す工程を行う。上記無電解めっき処理の方法は特に限定されず、従来公知の方法が挙げられる。
【0037】
本発明のTAIKOウエハの処理方法では、次いで、無電解めっき処理後のTAIKOウエハからTAIKOウエハ保護用テープを剥離する工程を行う。特にTAIKOウエハ保護用テープの粘着剤層が上記共重合体から構成される場合には、剥離に先立って光を照射することにより粘着剤層が硬化して、より容易に剥離することができる。また、TAIKOウエハ保護用テープの粘着剤層が上記気体発生剤を含有する場合には、剥離に先立って光を照射することにより該気体発生剤から気体が発生して、その圧力により更に容易に剥離することができる。