特許第6767314号(P6767314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6767314
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】レーザ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/068 20060101AFI20201005BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H01S5/068
   H01S5/022
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-125205(P2017-125205)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-9342(P2019-9342A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204424
【氏名又は名称】大井電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 亮輔
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−187825(JP,A)
【文献】 特開2005−317841(JP,A)
【文献】 特開2006−165298(JP,A)
【文献】 特開2003−338660(JP,A)
【文献】 特開2015−126036(JP,A)
【文献】 特開2001−244554(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/102754(WO,A1)
【文献】 特開2008−181933(JP,A)
【文献】 特開2004−179407(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106684701(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0196595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
H01L 33/00,33/48−33/64
B23K 26/00−26/70
G08C 13/00−25/04
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザ半導体素子のそれぞれについて温度をモニタするモニタ部と、
各前記レーザ半導体素子について得られた各モニタ温度と、所定の温度閾値との比較に基づいて、各前記レーザ半導体素子が低温であるか高温であるかを判定する判定部と、
複数の前記レーザ半導体素子に対する合計出力目標値が一定であるという条件の下で、高温であると判定された前記レーザ半導体素子に対する出力目標値を減少させ、低温であると判定された前記レーザ半導体素子に対する出力目標値を増加させる目標値決定部と、
各前記レーザ半導体素子に対して決定された出力目標値に基づいて、各前記レーザ半導体素子を制御するドライバと、を備え
高温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が所定値以下であるときに、前記温度閾値を減少させる温度条件設定部、を備えることを特徴とするレーザ制御装置。
【請求項2】
複数のレーザ半導体素子のそれぞれについて温度をモニタするモニタ部と、
各前記レーザ半導体素子について得られた各モニタ温度と、所定の温度閾値との比較に基づいて、各前記レーザ半導体素子が低温であるか高温であるかを判定する判定部と、
複数の前記レーザ半導体素子に対する合計出力目標値が一定であるという条件の下で、高温であると判定された前記レーザ半導体素子に対する出力目標値を減少させ、低温であると判定された前記レーザ半導体素子に対する出力目標値を増加させる目標値決定部と、
各前記レーザ半導体素子に対して決定された出力目標値に基づいて、各前記レーザ半導体素子を制御するドライバと、を備え、
高温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が所定値以上であるときに、前記温度閾値を増加させる温度条件設定部、を備えることを特徴とするレーザ制御装置。
【請求項3】
請求項に記載のレーザ制御装置において、、
前記温度条件設定部は、
温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が第2の所定値以下であるときに、前記温度閾値を減少させることを特徴とするレーザ制御装置。
【請求項4】
請求項または請求項に記載のレーザ制御装置において、
前記温度条件設定部によって増加させた前記温度閾値が上限値に至り、かつ、高温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が前記所定値以上であるときに、前記合計出力目標値を既定値から減少させる出力条件設定部、を備えることを特徴とするレーザ制御装置。
【請求項5】
請求項に記載のレーザ制御装置において、
前記出力条件設定部は、
前記合計出力目標値を減少させた後に、高温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が前記所定値未満となったときに、前記合計出力目標値を前記既定値とすることを特徴とするレーザ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ制御装置に関し、特に、複数のレーザ半導体素子の温度および出力の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを伝わる光によって電気機器に電力を供給するシステムが実用化されている。このような光給電システムでは、光電源装置と電気機器との間が光ファイバで接続されている。光電源装置は、レーザダイオード等の発光素子を有し、発光素子から光ファイバに光を出力する。光ファイバは、発光素子から発せられた光を電気機器に伝送する。電気機器は、光ファイバから受信した光を電力に変換し、その電力によって動作する。
【0003】
光給電システムには、ユーザから離れた場所に設置された電気機器を制御する遠隔制御システムに組み込まれたものがある。電気機器には、モータを用いた機械、監視カメラ、温度計、湿度計等がある。遠隔制御システムでは制御装置と電気機器が光ファイバによって接続されている。制御装置は、電力供給用の光を光ファイバを介して電気機器に送信する。電気機器は光ファイバから受信した光を電力に変換し、その電力によって動作する。また、制御装置は、光ファイバを介して制御信号を送信して電気機器を制御し、あるいは、電気機器から送信された情報を光ファイバを介して受信する。遠隔制御システムに光給電システムが組み込まれることで、制御装置と電気機器との間に、光ファイバに加えて電力供給用の電線を設ける必要がなくなる、これによって、制御装置と電気機器との間のケーブルの数が削減される。また、電線が用いられないため、落雷や外来の電磁波等によって制御装置および電気機器に生じるノイズが抑制される。以下の特許文献1には、計測装置に光ファイバを介して電力を供給すると共に、計測装置から光ファイバを介してデータを収集する光給電システムが記載されている。
【0004】
光電源装置から電気機器に十分な電力を送信するため、光電源装置には複数の発光素子を備えるものがある。以下の特許文献2には、このような光電源装置として、複数のレーザ半導体素子(半導体レーザ)を備える半導体レーザ光源装置が記載されている。この文献には、各半導体レーザの温度を検出し、検出結果に応じて各半導体レーザに流れる電流を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−49612号公報
【特許文献2】特開2005−191223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、光給電システムに用いられる光電源装置等の光送信装置では、単位時間当たりに出力される光のエネルギー(以下、パワーという。)が一定であることが要求される。複数のレーザ半導体素子を備える光送信装置では、各レーザ半導体素子に流れる電流を調整することでパワーが制御される。そして、各レーザ半導体素子に流れる電流の調整に伴って、各レーザ半導体素子の温度が変化する。レーザ半導体素子に流れる電流と、レーザ半導体素子の温度との関係には、レーザ半導体素子ごとにばらつきがある。そのため、各レーザ半導体素子に流れる電流を同様に調整することでパワーを一定に制御した場合には、特定のレーザ半導体素子の温度が上昇し、そのレーザ半導体素子の寿命が短くなってしまうことがある。
【0007】
本発明は、光送信装置に用いられる複数のレーザ半導体素子の温度を均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のレーザ半導体素子のそれぞれについて温度をモニタするモニタ部と、各前記レーザ半導体素子について得られた各モニタ温度と、所定の温度閾値との比較に基づいて、各前記レーザ半導体素子が低温であるか高温であるかを判定する判定部と、複数の前記レーザ半導体素子に対する合計出力目標値が一定であるという条件の下で、高温であると判定された前記レーザ半導体素子に対する出力目標値を減少させ、低温であると判定された前記レーザ半導体素子に対する出力目標値を増加させる目標値決定部と、各前記レーザ半導体素子に対して決定された出力目標値に基づいて、各前記レーザ半導体素子を制御するドライバと、を備え、高温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が所定値以下であるときに、前記温度閾値を減少させる温度条件設定部、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明は、複数のレーザ半導体素子のそれぞれについて温度をモニタするモニタ部と、各前記レーザ半導体素子について得られた各モニタ温度と、所定の温度閾値との比較に基づいて、各前記レーザ半導体素子が低温であるか高温であるかを判定する判定部と、複数の前記レーザ半導体素子に対する合計出力目標値が一定であるという条件の下で、高温であると判定された前記レーザ半導体素子に対する出力目標値を減少させ、低温であると判定された前記レーザ半導体素子に対する出力目標値を増加させる目標値決定部と、各前記レーザ半導体素子に対して決定された出力目標値に基づいて、各前記レーザ半導体素子を制御するドライバと、を備え、高温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が所定値以上であるときに、前記温度閾値を増加させる温度条件設定部、を備えることを特徴とする
【0011】
望ましくは、前記温度条件設定部は、温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が第2の所定値以下であるときに、前記温度閾値を減少させる。
【0012】
望ましくは、前記温度条件設定部によって増加させた前記温度閾値が上限値に至り、かつ、高温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が前記所定値以上であるときに、前記合計出力目標値を既定値から減少させる出力条件設定部、を備える。
【0013】
望ましくは、前記出力条件設定部は、前記合計出力目標値を減少させた後に、高温であると判定された前記レーザ半導体素子の数が前記所定値未満となったときに、前記合計出力目標値を前記既定値とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光送信装置に用いられる複数のレーザ半導体素子の温度を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】光電源装置の構成を示す図である。
図2】制御部の構成を示す図である。
図3】制御値決定処理のフローチャートである。
図4】均一化処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本発明の実施形態に係る光電源装置の構成が示されている。光電源装置は、発光部10、モニタ部12、制御部14、ドライバ16および電源部22を備える。発光部10は、レーザダイオード18−1〜18−n、およびバイポーラトランジスタ20−1〜20−n(以下、単にトランジスタというときはバイポーラトランジスタを指す。)を備える。レーザダイオード18−jのアノードは、電源部22の正極端子に接続され、レーザダイオード18−jのカソードはトランジスタ20−jのコレクタに接続されている(jは1〜nの整数である。)。トランジスタ20−jのベースはドライバ16に接続され、トランジスタ20−jのエミッタは接地導体に接続されている。
【0017】
電源部22は、正極端子から各トランジスタのコレクタに電源電圧を出力する。制御部14からは、レーザダイオード18−jに対する制御値Cjがドライバに出力される。ドライバ16は、制御値Cjに応じてトランジスタ20−jのベースの電圧を変化させて、トランジスタ20−jのコレクタに流れる電流を制御し、レーザダイオード18−jに流れる電流を制御する。このようにして、ドライバ16は、レーザダイオード18−1〜18−nが出力する光のパワーを制御する。レーザダイオード18−1〜18−nは、光ファイバーに光を放射する。ドライバ16が、レーザダイオード18−1〜18−nのそれぞれが出力するパワーを制御することで、光ファイバーに送信される光のパワーが制御される。
【0018】
モニタ部12は、レーザダイオード18−1〜18−nの温度を測定し、それぞれの測定値であるモニタ温度T1〜Tnを制御部14に出力する。また、モニタ部12は、レーザダイオード18−1〜18−nが出力するパワーを測定し、それぞれの測定値であるモニタパワーM1〜Mnを制御部14に出力する。制御部14は、各モニタ温度および各モニタパワーに基づいて、ドライバ16に各トランジスタを制御させる。
【0019】
レーザダイオード18−1〜18−nに流れる電流を制御する半導体素子としては、バイポーラトランジスタの他、電界効果トランジスタ等が用いられてもよい。この場合、バイポーラトランジスタのベース、コレクタ、およびエミッタが、電界効果トランジスタのゲート、ドレインおよびソースにそれぞれ対応する。
【0020】
図2には、制御部14の構成が示されている。制御部14は、条件設定部24および目標値演算部28を備えている。制御部14は、予め記憶されたプログラムを実行することで各構成要素を構成するプロセッサによって構成されてもよい。
【0021】
条件設定部24には、各レーザダイオードに対する温度閾値Tsについての初期値T0と、出力パワーに対する合計出力目標値Pの既定値P0がユーザの操作等によって入力される。条件設定部24は、温度閾値Tsの初期値T0と、目標値演算部28から与えられる高温素子数mに基づいて温度閾値Tsを求め、目標値演算部28に出力する。高温素子数mは、過去に目標値演算部28に出力された温度閾値Tsよりも高温であるレーザダイオードの個数として、目標値演算部28によって求められる。温度閾値Tsを求める具体的な処理については後述する。
【0022】
条件設定部24は、合計出力目標値Pの既定値P0と高温素子数mとに基づいて、合計出力目標値Pを求め1/n倍器26に出力する。合計出力目標値Pは、光電源装置が出力するパワーに対する目標値である。合計出力目標値Pを求める具体的な処理については後述する。1/n倍器26は、合計出力目標値Pのn分の1である個別目標値Pa=P/nを求め、目標値演算部28に出力する。
【0023】
目標値演算部28は、判定/目標値決定部30−1〜30−n、加算合計部32および制御値決定部34−1〜34−nを備えている。
【0024】
判定/目標値決定部30−1〜30−nには、個別目標値Paが入力されている。また、判定/目標値決定部30−1〜30−nには、それぞれ、モニタ温度T1〜Tnが入力されている。
【0025】
判定/目標値決定部30−jおよび制御値決定部34−jが実行する処理について説明する。図3には、判定/目標値決定部30−jおよび制御値決定部34−jが実行する制御値決定処理のフローチャートが示されている。判定/目標値決定部30−jは、モニタ温度Tjと温度閾値Tsとを比較し、モニタ温度Tjが温度閾値Tsよりも大きいか否かを判定する(S101)。判定/目標値決定部30−jは、モニタ温度Tjが温度閾値Tsよりも大きいと判定したときは、(数1)に従ってパワー減算値Δjを求める(S102)。
【0026】
(数1)Δj=Kj・Pa
【0027】
ここで、係数Kj(j=1〜n)は任意の定数であり、K1〜Knのそれぞれに個別に値が設定されていてもよいし、K1〜Knに対し同一の値が設定されていてもよい。すなわち、レーザダイオード18−1〜18−nのそれぞれに対して個別に値が設定されていてもよいし、同一の値が設定されていてもよい。
【0028】
判定/目標値決定部30−jは、(数1)に従って求めたパワー減算値Δjを加算合計部32に出力する(S103)。判定/目標値決定部30−jは、(数2)に従って出力目標値Pjを求め、制御値決定部34−jに出力する(S104)。
【0029】
(数2)Pj=Pa−Δj
【0030】
制御値決定部34−jは、出力目標値PjとモニタパワーMjとの差異に基づいて制御値Cjを求め(S105)、制御値Cjをドライバ16に出力する(S106)。制御値Cjは、トランジスタ20−jのコレクタに流れる電流をドライバ16に調整させるための値である。すなわち、ドライバ16は、出力目標値PjおよびモニタパワーMjに基づく制御値Cjに従いレーザダイオード18−jが出力する光のパワーが、出力目標値Pjに近付き、または一致するように、トランジスタ20−jのコレクタに流れる電流を調整する。
【0031】
判定/目標値決定部30−jは、ステップS101においてモニタ温度Tjが温度閾値Ts以下であると判定したときは、パワー減算値Δjを0とし(S107)、加算合計部32に出力する(S108)。
【0032】
加算合計部32は、判定/目標値決定部30−1〜30−nが、それぞれ、パワー減算値Δ1〜Δnを出力した後、総パワー減算値ΔPを求める。総パワー減算値ΔPは、パワー減算値Δ1〜Δnを加算合計した値である。
【0033】
判定/目標値決定部30−jは、他の総ての判定/目標値決定部がパワー減算値を加算合計部32に出力した後(S103またはS108)、加算合計部32によって求められた総パワー減算値ΔPを取得する(S109)。
【0034】
判定/目標値決定部30−jは、(数3)に従って、パワー加算値δを求める(S110)。
【0035】
(数3)δ=Pa/(n−m)
【0036】
ここで、mは高温素子数であり、判定/目標値決定部30−1〜30−nのうち、ステップS101においてモニタ温度Tjが温度閾値Tsよりも大きいと判定されたものの個数である。すなわち、高温素子数mは、高温であると判定されたレーザダイオードの個数を示す。一方、n−mは低温素子数であり、判定/目標値決定部30−1〜30−nのうち、ステップS101においてモニタ温度Tjが温度閾値Ts以下であると判定されたものの個数である。すなわち、低温素子数n−mは、低温であると判定されたレーザダイオードの個数を示す。
【0037】
判定/目標値決定部30−jは、(数4)に従って出力目標値Pjを求め、制御値決定部34−jに出力する(S111)。
【0038】
(数4)Pj=Pa+δ
【0039】
制御値決定部34−jは、出力目標値PjとモニタパワーMjとの差異に基づいて制御値Cjを求め(S105)、制御値Cjをドライバ16に出力する(S106)。ドライバ16は、制御値Cjに従いレーザダイオード18−jが出力する光のパワーが、出力目標値Pjに近付き、または一致するように、トランジスタ20−jのコレクタに流れる電流を調整する。
【0040】
このように、判定/目標値決定部30−jは、モニタ温度Tjが温度閾値Tsを超えるときは、パワー減算値Δj=Kj・Paを加算合計部32に出力すると共に、出力目標値Pj=Pa−Δjを制御値決定部34−jに出力する。一方、モニタ温度Tjが温度閾値Ts以下であるときは、判定/目標値決定部30−jは、パワー減算値Δj=0を加算合計部32に出力する。さらに、他の総ての判定/目標値決定部がパワー減算値を加算合計部32に出力し、加算合計部32が総パワー減算値ΔPを求めた後に、加算合計部32から総パワー減算値ΔPを取得し、Pj=Pa+ΔP/(n−m)を制御値決定部34−jに出力する。制御値決定部34−jは、出力目標値PjおよびモニタパワーMjに基づいて制御値Cjを求め、制御値Cjをドライバ16に出力する。
【0041】
このような処理によれば、高温と判定されたレーザダイオード18−jに対する出力目標値Pjは、合計出力目標値Pのn分の1である個別目標値PaからKj・Paだけ減少する。そして、ドライバ16の制御によって、レーザダイオード18−jが発する光のパワーは、個別目標値PaからKj・Paだけ減少する。
【0042】
一方、低温と判定されたレーザダイオード18−kに対する出力目標値は、個別目標値Paに対して、パワー加算値δ=Pa/(n−m)だけ増加する。そして、ドライバ16の制御によって、レーザダイオード18−kが発する光のパワーは、Pa/(n−m)だけ増加する。
【0043】
パワー加算値δは、高温のレーザダイオードのパワー減算値を加算合計したものである。したがって、高温のレーザダイオードが発するパワーが減少した分だけ、低温のレーザダイオードが発するパワーが増加する。そのため、光電源装置が発する光のパワーが合計出力目標値Pに維持されると共に、高温のレーザダイオードが発するパワーが減少し、低温のレーザダイオードが発するパワーが増加する。これによって、レーザダイオード18−1〜18−nの温度が均一となるように、各レーザダイオードが発する光のパワーが制御される。
【0044】
次に、条件設定部24が実行する処理について説明する。条件設定部24は、温度条件としての温度閾値Tsを求める温度条件設定部としての機能と、出力条件としての合計出力目標値Pを求める出力条件設定部としての機能を有している。図4には、条件設定部24が実行する均一化処理のフローチャートが示されている。均一化処理では、温度閾値Tsを変化させて、高温のレーザダイオードの個数と、低温のレーザダイオードの個数とを近付けることで、複数のレーザダイオードの温度を均一化させる処理である。すなわち、均一化処理では、モニタ温度が温度閾値Tsよりも大きいレーザダイオードの個数と、モニタ温度が温度閾値Ts以下のレーザダイオードの個数とが近付くように、あるいは一致するように温度閾値Tsを変化させる。
【0045】
最初に条件設定部24は、温度閾値Tsを初期値T0に設定し、合計出力目標値Pを既定値P0に設定する(S201)。条件設定部は24、高温素子数mが第1閾値a以上であるか否かを判定する(S202)。条件設定部24は、高温素子数mが第1閾値a以上であると判定したときは、温度閾値Tsに所定の加算値αを加算した値Ts+αが、上限値Tmaxを超えるか否かを判定する(S203)。条件設定部24は、Ts+αが上限値Tmax以下であるときは、温度閾値Tsに加算値αを加算した値Ts+αを新たな温度閾値Tsとし(S204)、ステップS202に戻る。一方、条件設定部24は、Ts+αが上限値Tmaxよりも大きいときは、合計出力目標値Pから減算値βを減算した値P−βを新たな合計出力目標値Pとし(S205)、ステップS202に戻る。
【0046】
ステップS202〜S205によれば、高温素子数mが第1閾値a以上であるときは、温度閾値Tsが上限値Tmaxを超えないことを条件に、温度閾値Tsに加算値αが加算される。温度閾値Tsに加算値αを加算した値が上限値Tmaxを超えてしまうときは、代わりに合計出力目標値Pから減算値βを減算した値が、新たな合計出力目標値Pとされる。このように、温度閾値Tsを増加させる処理、または、合計出力目標値Pを減少させる処理が繰り返される。これによって高温素子数mが小さくなる場合には、高温素子数mは第1閾値a未満の値に至る。第1閾値aは、例えば、光電源装置が備えるレーザダイオードの数nである。この場合、高温素子数mが第1閾値a以上であるか否かの判定は、高温素子数mがnであるか否かの判定となる。
【0047】
条件設定部24は、ステップ202において高温素子数mが第1閾値a未満であると判定したときは、合計出力目標値Pが既定値P0であるか否かを判定する(S206)。条件設定部24は、合計出力目標値Pが既定値P0でないと判定したときは、合計出力目標値Pを既定値P0に設定し(S209)、ステップS202に戻る。
【0048】
合計出力目標値Pが既定値P0でないときは、先に実行されたステップS205によって合計出力目標値Pが小さくなり、これによって高温素子数mが第1閾値a未満の値に至り、ステップS206に至った可能性が高い。合計出力目標値Pを既定値P0に再び設定することにより、合計出力目標値Pを減少させる処理が実行され、再び、高温素子数mが第1閾値a未満の値となってステップS209に至るという処理が繰り返される可能性が高い。
【0049】
条件設定部24は、合計出力目標値Pが既定値P0であると判定したときは、高温素子数mが第2閾値b以下であるか否かを判定する(S207)。条件設定部24は、高温素子数mが第2閾値b以下であると判定したときは、温度閾値Tsから減算値γを減算した値を新たな温度閾値Tsとし(S208)、ステップS207に戻る。
【0050】
一方、条件設定部24は、高温素子数mが第2閾値bよりも大きいと判定したときは、ステップS202に戻る。
【0051】
ステップS207およびステップS208によれば、高温素子数mが第2閾値b以下であるという条件の下で、温度閾値Tsを減少させる処理が繰り返される。温度閾値Tsが小さくなることで高温素子数mは大きくなるため、高温素子数mは第2閾値bより大きい値に至り、条件設定部24の処理は、ステップS202に至る。第2閾値bは、例えば0である。この場合、高温素子数mが第2閾値b以下であるか否かの判定は、高温素子数mが0であるか否かの判定となる。
【0052】
このような均一化処理によれば、温度閾値Tsが上限値に至らず合計出力目標値Pが一定であるという条件の下で、高温素子数mが第2閾値bより大きく、第1閾値a未満となる状態に温度閾値Tsが収束する。これによって、光電源装置が発する光のパワーを一定としながら、n個のレーザダイオードの温度を均一にすることができる。そのため、特定のレーザダイオードが高温になって寿命が短縮してしまうこと回避される。
【0053】
なお、温度閾値Tsを増加させる過程において温度閾値Tsが上限値を超えてしまう場合には(S203)、合計出力目標値Pを既定値P0よりも小さくし、各レーザダイオードの温度を下げて、高温素子数mを減らす処理(S205)、および合計出力目標値Pを既定値に戻す処理(S209)が繰り返される。これによって、各レーザダイオードの温度が上限値Tmaxを超えないような制御が行われ、各レーザダイオードの寿命の短縮が回避される。
【0054】
上記では、レーザ半導体素子(半導体レーザ)として、レーザダイオードが用いられる実施形態について説明した。レーザ半導体素子としては、レーザとして機能するその他の半導体素子が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 発光部、12 モニタ部、14 制御部、16 ドライバ、18−1〜18−n レーザダイオード、20−1〜20−n トランジスタ、22 電源部、24 条件設定部、26 1/n倍器、28 目標値演算部、30−1〜30−n 判定/目標値決定部、32 加算合計部、34−1〜34−n 制御値決定部。
図1
図2
図3
図4