(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記環境を前記電磁放射ビームに曝露させることは、前記環境内に存在する少なくとも1つのフォトルミネセンスバックグラウンド種も励起させる、請求項1に記載の方法。
前記第1バックグラウンド信号は、前記少なくとも1つのフォトルミネセンスバックグラウンド種により放出される第1バックグラウンドフォトルミネセンス信号を含む、請求項2に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で記載の実施形態は、以下の詳細な説明、事例、および図面を参照することにより、より容易に理解され得る。一方、本明細書で記載の要素、装置、および方法は、詳細な説明、事例、および図面において提示される特定的な実施形態に限定されない。これらの実施形態が本発明の原理を単に例示するものであることを理解すべきである。多数の変更例および改変例が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に容易に明らかとなることであろう。
【0020】
加えて、本明細書で開示される全範囲が、当該の範囲に包含される任意のおよびすべての部分範囲を含むことを理解すべきである。例えば「1.0〜10.0」の範囲が記載されている場合は、1.0以上の最小値で始まり10.0以下の最大値で終わるあらゆる全部の部分範囲(例えば1.0〜5.3、4.7〜10.0、または3.6〜7.9)が含まれるものと考えるべきである。
【0021】
本明細書で開示される全範囲は、別に明記なき限り、当該範囲の端点を含むものと考えるべきである。例えば「5〜10」の範囲は一般に、端点5および10を含むものと考えるべきである。
【0022】
さらに、「〜まで」という文言が分量または数量との関連で使用される場合、当該の分量が少なくとも検出可能な分量または数量であることを理解すべきである。例えば、特定の分量「まで」の分量において存在する物質は、検出可能な分量から、当該の特定された分量を含んで当該の分量まで、存在し得る。
【0023】
一態様では、イメージング方法が本明細書で説明される。いくつかの実施形態では、イメージング方法は、オフ状態とオン状態との間の切り替え閾値を有する超音波切り替え可能フルオロフォアの集団を生物学的環境に配置することと、生物学的環境を超音波ビームに曝露させて、生物学的環境内に活性化領域を形成することと、を含み、活性領域は最高負圧および最高温度を有し、少なくとも1つのフルオロフォアの切り替え閾値は、活性化領域の最高負圧の約50%であるか、または、最高温度の少なくとも約50%である。この方法は、活性化領域内の全フルオロフォアのうちの少なくとも1つのフルオロフォアをオフ状態からオン状態へと切り替えることと、少なくとも1つのフルオロフォアを電磁放射ビームで励起させることと、少なくとも1つのフルオロフォアにより放出された光を検出することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのフルオロフォアの切り替え閾値は、活性化領域の最高負圧または最高温度の、少なくとも60%または少なくとも約70%である。いくつかの場合では、少なくとも1つのフルオロフォアの切り替え閾値は、活性化領域の最高負圧または最高温度の、約60%〜約100%、約60%〜約90%、約70%〜約100%、約70%〜約95%、または、約70%〜約90%である。以下でさらに説明するように、係る切り替え閾値を選択するならば、いくつかの場合では、活性化領域の体積を、活性化領域を形成するために使用される超音波ビームの焦点ゾーンのサイズより小さいサイズへと効果的に縮小させることにより、イメージング解像度の改善が可能となる。
【0024】
他の実施形態では、イメージングの方法は、オフ状態とオン状態との間の切り替え閾値を有する超音波切り替え可能フルオロフォアの集団を生物学的環境に配置することと、複数の異なる方向から生物学的環境を複数の超音波ビームに曝露させて、生物学的環境内に活性化領域を形成することと、を含み、超音波ビームの焦点ゾーンは少なくとも部分的に重なり合う。いくつかの場合では、例えば、2つの直交する超音波ビームが使用される。加えて、いくつかの事例では、フルオロフォアの切り替え閾値は、全超音波ビームのうちの1つの超音波ビームのみの焦点ゾーンにより提供される最高負圧または最高温度よりも大きい。この方法は、活性化領域内の全フルオロフォアのうちの少なくとも1つのフルオロフォアをオフ状態からオン状態へと切り替えることと、少なくとも1つのフルオロフォアを電磁放射ビームで励起させることと、少なくとも1つのフルオロフォアにより放出された光を検出することと、をさらに含む。以下でさらに詳細に説明するように、本明細書で記載のように複数の超音波ビームを使用するならば、活性化領域のサイズが縮小されることにより、イメージング解像度の改善が可能となる。
【0025】
さらに他の実施形態では、イメージングの方法は、オフ状態とオン状態との間の切り替え閾値を有する超音波切り替え可能フルオロフォアの集団を生物学的環境に配置することと、一定時間にわたるパルスビームの光パワーのFWHMに基づいて、生物学的環境を、わずか100psのパルス幅を有する電磁放射のパルスビームに曝露させることと、を含む。この方法は、生物学的環境を超音波ビームに曝露させて、生物学的環境内に活性化領域を形成することと、活性化領域内の全フルオロフォアのうちの少なくとも1つのフルオロフォアをオフ状態からオン状態へと切り替えることと、少なくとも1つのフルオロフォアを電磁放射の第2ビームで励起させることと、少なくとも1つのフルオロフォアにより放出された光を検出することと、をさらに含む。さらに、いくつかの場合では、パルスビームは、わずか約50psの、またはわずか約10psの、パルス幅を有する。いくつかの実施形態では、パルスビームは、約1ps〜約100psの、約1ps〜約10psの、約1ps〜約50psの、約10ps〜約100psの、または、約10ps〜約50psの、パルス幅を有する。以下でさらに説明するように、生物学的環境を電磁放射のパルスビームへと本明細書で記載する様式で曝露させることは、いくつかの実施形態では、フルオロフォア放出の検出を時間的に分離することにより、生物学的環境内に存在する他の種からの放出と比較して、本方法の信号対雑音比(SNR)の改善を可能にする。したがって、いくつかの場合では、少なくとも1つのフルオロフォアにより放出される光を検出するステップは、係る他の種の蛍光寿命に対応する遅延の後に実施される。加えて、いくつかの実施形態では、パルスビームの波長は、生物学的環境内に存在する1つまたは複数の種の吸収プロファイルと実質的に重なり合うよう、選択される。
【0026】
さらに他の実施形態では、イメージングの方法は、(a)第1超音波切り替え可能フルオロフォアを、または超音波切り替え可能フルオロフォアの第1集団を、生物学的環境などの環境に配置することと、(b)環境を超音波ビームに曝露させて、環境内に活性化領域を形成することと、(c)第1フルオロフォアを活性化領域内に配置して、第1フルオロフォアをオフ状態からオン状態に切り替えることと、(d)環境を電磁放射ビームに曝露させ、それにより第1フルオロフォアを励起させることと、を含む。いくつかの場合では、環境を電磁放射ビームに曝露させることは、環境に存在する少なくとも1つのフォトルミネセンスバックグラウンド種も励起させる。さらに、この方法は、(e)第1フルオロフォアにより放出された第1超音波蛍光信号と第1バックグラウンド信号とのうちの少なくとも一方を含む第1フォトルミネセンス信号を環境内の第1場所において検出すること、をさらに含む。いくつかの事例では、第1バックグラウンド信号は、少なくとも1つのフォトルミネセンスバックグラウンド種により放出された第1バックグラウンドフォトルミネセンス信号を含む。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の方法は、(f)第1フォトルミネセンス信号と第1基準信号との相関関係を算定して、第1場所に対する第1相関係数を生成することも、含む。いくつかの場合では、第1基準信号は第1フルオロフォアの第1超音波蛍光信号に対応する。加えて、本明細書で記載の方法は、(g)第1フォトルミネセンス信号と第1場所に対する相関係数とを乗算して、第1場所に対する第1修正済みフォトルミネセンス信号を生成することも含む。
【0027】
さらに、環境内の第1場所におけるフォトルミネセンス信号の検出および処理を実施する前述のステップ(e)〜(g)を任意の所望回数だけ反復すると、環境内の複数の場所に対する複数の修正済みフォトルミネセンス信号が生成され得ることが理解されるであろう。例えば、いくつかの場合では、本明細書で記載の方法は、(e
2)第1フルオロフォアにより放出された第2超音波蛍光信号と第2バックグラウンド信号とのうちの少なくとも一方を含む第2フォトルミネセンス信号を環境内の第2場所において検出することと、(f
2)第2フォトルミネセンス信号と第1基準信号との相関関係を算定して、第2場所に対する相関係数を生成することと、(g
2)第2フォトルミネセンス信号と第2場所に対する相関係数とを乗算して、第2場所に対する第2修正済みフォトルミネセンス信号を生成することと、をさらに含む。
【0028】
同様に、ステップ(e)〜(g)または(e
2)〜(g
2)の同一の処理を反復すると、環境内の第3場所における第3フォトルミネセンス信号からの第3修正済みフォトルミネセンス信号と、第3場所に対する相関係数と、が生成され得る。さらに一般的には、n個の修正済みフォトルミネセンス信号が、環境内のn個の場所におけるn個のフォトルミネセンス信号から、およびn個の場所に対するn個の相関係数から、生成され得る。なおnは、任意の所望の整数(例えば、2〜1000の、2〜500の、2〜100の、2〜50の、2〜30の、または2〜20の範囲の整数)であり得る。いくつかの場合では、nは1000より大きい値であり得る。加えて、n個の場所は、環境内の1つまたは複数の方向において連続的または不連続的である場所を含む、環境内の所望の場所の任意の集合であり得る。さらに、本明細書で記載の環境内の場所は、いくつかの実施形態では、環境内のボクセル、および/または、x座標、y座標、ならびにz座標のうちの1つまたは複数により特定される場所、であり得る。いくつかの場合では、例えば、1つの場所は、環境内の場所のラスタ走査に対して特定され得るxy座標の値もしくは環境の順序対(x,y)またはxyz座標値(x,y,z)を中心とするボクセルである。このようにして、環境内の第1フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットまたはプロファイルが取得され得る。加えて、以下でさらに説明するように、係るプロットは、上述の相関関係の算定および乗算のステップを実施することなく生成された別の同様のプロットと比較して、改善されたSNRを有し得る。
【0029】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で記載のイメージングの方法は、(e
n)第1フルオロフォアにより放出された第n追加的超音波蛍光信号と第n追加的バックグラウンド信号とのうちの少なくとも一方を含む、環境内のn個の追加的場所におけるn個の追加的フォトルミネセンス信号を検出することと、(f
n)n個の追加的フォトルミネセンス信号と第1基準信号との相関関係を算定して、n個の追加的場所に対するn個の追加的相関係数を生成することと、(g
n)n個の追加的フォトルミネセンス信号とn個の追加的相関係数とを乗算して、n個の追加的場所に対するn個の追加的修正済みフォトルミネセンス信号を生成することと、をさらに含み、nは1〜1000の整数である。さらに、係る方法は、(h)第1場所に対する第1修正済みフォトルミネセンス信号と、第2場所に対する第2修正済みフォトルミネセンス信号と、n個の追加的場所に対するn個の追加的修正済みフォトルミネセンス信号と、を組み合わせて、環境内の第1フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを生成することも含み得る。
【0030】
以下でさらに説明するように、環境内の超音波切り替え可能フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを本明細書で記載のように生成することは、いくつかの実施形態では、存在し得るあらゆるバックグラウンドフォトルミネセンス(例えば蛍光性バックグラウンド種により放出されるバックグラウンド蛍光など)の強度を低下させることにより、本方法のSNRの改善を可能にする。「バックグラウンド」種が、本明細書での参照目的のために、環境内に存在する超音波切り替え可能フルオロフォア以外の種であることを理解すべきである。さらに詳細には、バックグラウンド種は本方法のイメージング分析種ではない種であり得る。いくつかの事例では、バックグラウンド信号が組織自家蛍光を含むか、組織自家蛍光から構成されるか、または組織自家蛍光から実質的に構成されるよう、バックグラウンド種はイメージング対象の生物学的環境に存在する生体組織を含むか、係る生体組織から構成されるか、または係る生体組織から実質的に構成され得る。
【0031】
加えて、いくつかの場合では、本明細書で記載の方法は、1つまたは複数の超音波切り替え可能フルオロフォアの同時使用を含み得る。したがって本明細書で記載の方法は、いくつかの事例では、複数の異なる超音波切り替え可能フルオロフォアを使用する多重化イメージングを含む多重超音波蛍光イメージングを許可または提供し得る。例えばいくつかの実施形態では、本明細書で記載の方法は、(a)環境内に、第1超音波切り替え可能フルオロフォアおよび第2超音波切り替え可能フルオロフォアを配置することと、(b)環境を超音波ビームに曝露させて、環境内に活性化領域を形成することと、(c)第1フルオロフォアを活性化領域内に配置して、第1フルオロフォアをオフ状態からオン状態へと切り替えること、および/または、第2フルオロフォアを活性化領域内に配置して、第2フルオロフォアをオフ状態からオン状態へと切り替えることと、(d)環境を電磁放射ビームに曝露させ、それにより第1フルオロフォアおよび/または第2フルオロフォアを励起させることと、(e)第1フォトルミネセンス信号を環境内の第1場所において検出することと、を含む。第1フォトルミネセンス信号は、第1フルオロフォアにより放出された第1超音波蛍光信号と、第2フルオロフォアにより放出された第1蛍光信号と、第1バックグラウンド信号と、のうちの少なくとも1つを含み得る。さらに、この方法は、(f)第1フォトルミネセンス信号と第1基準信号との相関関係を算定して、第1場所に対する第1相関係数を生成することと、(g)第1フォトルミネセンス信号と第1場所に対する第1相関係数とを乗算して、第1場所に対する第1修正済みフォトルミネセンス信号を生成することと、をさらに含み得る。
【0032】
さらに、係る方法では、検出、相関関係算出、および他の信号処理ステップ(e)〜(g)は、ただ1つの超音波切り替え可能フルオロフォアまたは超音波切り替え可能フルオロフォアの集団を使用する実施形態に対して、同様のように実施され得、および/または、本明細書で記載のように反復され得る。例えば、いくつかの場合では、相関係数は、1つの超音波切り替え可能フルオロフォアに対して本明細書で記載の様式で判定される。加えて、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の方法は、(e
n)環境内のn個の追加的場所におけるn個の追加的フォトルミネセンス信号を検出すること、をさらに含む。なお、n個の追加的フォトルミネセンス信号は、第1フルオロフォアにより放出された第n追加的超音波蛍光信号と、第2フルオロフォアにより放出された第n追加的超音波蛍光信号と、第n追加的バックグラウンド信号と、のうちの少なくとも1つを含む。係る方法は、(f
n)n個の追加的フォトルミネセンス信号と第1基準信号との相関関係を算定して、n個の追加的場所に対するn個の追加的第1相関係数を生成するステップ、および(g
n)n個の追加的フォトルミネセンス信号とn個の追加的第1相関係数とを乗算して、n個の追加的場所に対するn個の追加的修正済みフォトルミネセンス信号を生成するステップも含み得、nは1〜1000の整数である。
【0033】
したがって、1つの超音波切り替え可能フルオロフォアを使用する実施形態に対して上述したように、本明細書で記載の方法は、環境内に存在する超音波切り替え可能フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロファイルまたはプロットを生成するために使用され得る。さらに、特定の空間的プロットに関連付けられたフルオロフォアが基準信号の選択により決定され得ることを理解すべきである。例えば、いくつかの場合では、第1基準信号は第1フルオロフォアの第1超音波蛍光信号に対応する。係る事例では、本明細書で記載の方法は、(h)第1場所に対する第1修正済みフォトルミネセンス信号とn個の追加的場所に対するn個の追加的修正済みフォトルミネセンス信号とを組み合わせて、環境内の第1フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを生成することをさらに含み得る。加えて、環境内の第2フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを生成することも可能である。係るプロットを生成するために、基準信号は、第1フルオロフォアよりもむしろ第2フルオロフォアの第1超音波蛍光信号に対応するよう、選択され得る。
【0034】
さらに、本明細書で記載のいくつかの実施形態では、複数の異なる基準信号が、本明細書で記載のフォトルミネセンス信号の相関関係を算定(連続的な算定を含む)するために使用され得る。例えば、いくつかの事例では、本明細書で記載の方法は、(f
2)第1フォトルミネセンス信号と第2基準信号との相関関係を算定して、第1場所に対する第2相関係数を生成することと、(g
2)第1フォトルミネセンス信号と第1場所に対する第2相関係数とを乗算して、第1場所に対する第2修正済みフォトルミネセンス信号を生成することと、をさらに含み得る。いくつかの場合では、第1基準信号は第1フルオロフォアの第1超音波蛍光信号に対応し、第2基準信号は第2フルオロフォアの第1超音波蛍光信号に対応する。
【0035】
理論に拘束されることを意図するものではないが、係る異なる基準信号が、本明細書で記載の超音波切り替え可能フルオロフォアを含む、超音波切り替え可能フルオロフォアの一意的なフォトルミネセンス放出プロファイルにより、多重化イメージングを取得するために使用され得るものと考えられる。係る超音波切り替え可能フルオロフォアは、一意的な超音波蛍光信号を有し得る。さらに、超音波蛍光信号は、波長領域において、および/または、時間的または時間領域において、一意的であり得る。したがって、本明細書で記載のいくつかの実施形態では、第1超音波切り替え可能フルオロフォアおよび第2超音波切り替え可能フルオロフォアは、異なる超音波蛍光放出プロファイルを有し得る。例えば、いくつかの場合では、プロファイルのピーク放出波長が異なり、それにより、フルオロフォアは異なる色の電磁放射を放出する。いくつかの事例では、フルオロフォアは異なる時間強度減衰プロファイルを有する。さらに一般的には、本明細書で記載の方法のいくつかの実施形態では、第1フルオロフォアおよび第2フルオロフォアの超音波蛍光放出プロファイルは数学的に直交であるか、相関関係を有さないか、または弱い相関関係を有する。係る事例では、1つのフルオロフォアの超音波蛍光放出から実質的に構成される信号が、他のフルオロフォアの超音波蛍光放出に基づく基準信号に対して相関関係の算定が実施されると、小さい相関係数が得られることとなる。例えば、いくつかの場合では、第2フルオロフォアの超音波蛍光信号に対応する基準信号を使用して第1フルオロフォアの第1超音波蛍光信号の相関関係を算定すると、小さい相関係数(例えば0.3より小さい)が生成され、その逆もまた成り立つ。
【0036】
さらに、環境内の第1場所におけるフォトルミネセンス信号の検出および処理を実施する前述のステップ(e)〜(g)を任意回数だけ反復すると、環境内の複数の場所に対する複数の修正済みフォトルミネセンス信号が生成され得ることが理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、複数の超音波切り替え可能フルオロフォアを使用する本明細書で記載の方法は、(e
n)環境内のn個の追加的場所におけるn個の追加的フォトルミネセンス信号を検出すること、をさらに含む。なお、n個の追加的フォトルミネセンス信号は、第1フルオロフォアにより放出された第n追加的超音波蛍光信号と、第2フルオロフォアにより放出された第n追加的超音波蛍光信号と、第n追加的バックグラウンド信号と、のうちの少なくとも1つを含む。この方法は、(f
1n)n個の追加的フォトルミネセンス信号と第1基準信号との相関関係を算定して、n個の追加的場所に対するn個の追加的第1相関係数を生成することと、(g
1n)n個の追加的フォトルミネセンス信号とn個の追加的場所に対するn個の追加的第1相関係数とを乗算して、n個の追加的場所に対するn個の追加的第1修正済みフォトルミネセンス信号を生成することと、(f
2n)n個の追加的フォトルミネセンス信号と第2基準信号との相関関係を算定して、n個の追加的場所に対するn個の追加的第2相関係数を生成することと、(g
2n)n個の追加的フォトルミネセンス信号とn個の追加的場所に対するn個の追加的第2相関係数とを乗算して、n個の追加的場所に対するn個の追加的第2修正済みフォトルミネセンス信号を生成することと、も含み得る。なお、nは上述の整数(例えば1〜1000の整数)である。
【0037】
加えて、単一の超音波切り替え可能フルオロフォアの使用に対して上述したように、本明細書で記載の方法は、1つまたは複数のフルオロフォアに対する超音波蛍光放出の空間的プロットを生成するために使用され得る。例えば、いくつかの事例では、本明細書で記載の方法は、(h
1)第1場所に対する第1修正済みフォトルミネセンス信号とn個の追加的場所に対するn個の追加的第1修正済みフォトルミネセンス信号とを組み合わせて、環境内の第1フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを生成することをさらに含む。さらに、係る方法は、(h
2)第1場所に対する第2修正済みフォトルミネセンス信号と、n個の追加的場所に対するn個の追加的第2修正済みフォトルミネセンス信号と、を組み合わせて、環境内の第2フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを生成することも含み得る。
【0038】
さらに、2つの異なる超音波切り替え可能フルオロフォアに対して上述した同一の処理が、3つ以上の異なるフルオロフォアを使用する多重化イメージングのためにも使用され得ることを理解されたい。一般に、任意の所望個数の異なる超音波切り替え可能フルオロフォアが使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、3つ、4つ、または5つの異なる超音波切り替え可能フルオロフォアが使用され得る。さらに、係る場合では、本明細書で記載の方法は、それぞれ3つ、4つ、または5つのフルオロフォアに対応する3つ、4つ、または5つの基準信号を用いる3つ、4つ、または5つの相関関係算定および乗算のステップ(例えばステップ(f
1n)、(g
1n)、(f
2n)、および(g
2n)で説明されたステップなど)を実施することを含み得る。一般に、m個までの異なる超音波切り替え可能フルオロフォアが使用され得る。なおmは、5、10、20、50、または100であり得る。
【0039】
上記で記載の多重化されたUSFイメージングの方法は、イメージング対象の環境内のいずれの場所も、m個の異なる超音波切り替え可能フルオロフォアのうちの2つ以上を含まない場合、特に有用であり得る。一方、いくつかの場合では、異なるフルオロフォアが環境内の共通のボクセルに存在するかまたは存在し得る場合でさえも、複数の異なる超音波切り替え可能フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の複数の空間的プロットを生成することも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の方法は、(a)第1超音波切り替え可能フルオロフォアおよび第2超音波切り替え可能フルオロフォアを環境内に配置することと、(b)環境を超音波ビームに曝露させて、環境内に活性化領域を形成することと、(c)第1フルオロフォアを活性化領域内に配置して、第1フルオロフォアをオフ状態からオン状態へと切り替えること、および/または、第2フルオロフォアを活性化領域内に配置して、第2フルオロフォアをオフ状態からオン状態へと切り替えることと、(d)環境を電磁放射ビームに曝露させ、それにより第1フルオロフォアおよび/または第2フルオロフォアを励起させることと、を含む。この方法は、(e)環境内の第1場所における第1フォトルミネセンス信号を検出することをさらに含み得る。なお第1フォトルミネセンス信号は、第1フルオロフォアにより放出された第1超音波蛍光信号と、第2フルオロフォアにより放出された第1超音波蛍光信号と、のうちの少なくとも一方を含む。加えて、いくつかの場合では、本明細書で記載の方法は、(f)第1フォトルミネセンス信号を、第1フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号に対応する第1基底ベクトルと、第2フルオロフォアの正規化された超音波信号に対応する第2基底ベクトルと、に直交分解することも含む。さらに、いくつかの実施形態では、この方法は、(g
1)第1場所における第1フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号に対する基底ベクトル係数aを判定することと、(g
2)第1場所における第2フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号に対する基底ベクトル係数bを判定することと、をさらに含む。さらに、この方法は、(h
1)第1フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号と係数aとを乗算して、第1場所における第1フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号を生成すること、および、(h
2)第2フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号と係数bとを乗算して、第1場所における第2フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号を生成することも、含み得る。「分離」された超音波蛍光信号とは、本明細書における参照目的のために、USFイメージング実験により検出されたより複雑な信号(例えば、異なる超音波蛍光信号の組み合わせを含む、信号の組み合わせを含み得る本明細書で記載の検出されたフォトルミネセンス信号など)から取り出された、解離された、または明確化された、超音波蛍光信号を指し得る。したがって、本明細書で記載の様式で方法を実施することにより、イメージング対象の環境内の2つ以上のフルオロフォアから放出された信号が互いに区別されることが、たとえこれらのフルオロフォアが環境内の同一のおおよその位置(例えば同一のボクセル)に存在していたとしても、可能となり得る。
【0040】
さらに、ステップ(e)〜(h)の前述の処理を任意の所望回数だけ反復すると、環境内における任意の所望個数の追加的場所における第1フルオロフォアおよび/または第2フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号が生成され得る。したがって、いくつかの場合では、本明細書で記載の方法は、(e
n)環境内のn個の追加的場所におけるn個の追加的フォトルミネセンス信号を検出することをさらに含み得る。なお、n個の追加的フォトルミネセンス信号は、第1フルオロフォアにより放出された第n追加的超音波蛍光信号および第2フルオロフォアにより放出された第n追加的超音波蛍光信号のうちの少なくとも一方を含む。係る方法は、(f
n)n個の追加的フォトルミネセンス信号を、第1フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号に対応するn個の追加的第1基底ベクトルと、第2フルオロフォアの正規化された超音波信号に対応するn個の追加的第2基底ベクトルと、に直交分解することも、含み得る。加えて、この方法は、(g
1n)n個の追加的場所における第1フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号に対するn個の追加的基底ベクトル係数a
nを判定することと、(g
2n)n個の追加的場所における第2フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号に対するn個の追加的基底ベクトル係数b
nを判定することと、(h
1n)第1フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号とn個の追加的係数a
nとを乗算して、n個の追加的場所における第1フルオロフォアのn個の追加的分離された超音波蛍光信号を生成することと、(h
2n)第2フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号とn個の追加的係数b
nとを乗算して、n個の追加的場所における第2フルオロフォアのn個の追加的分離された超音波蛍光信号を生成することと、をさらに含み得る。上述のように、nは任意の所望の整数(例えば1〜1000の整数)であり得る。
【0041】
加えて、上述のように、環境内の第1フルオロフォアおよび第2フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の別個の空間的プロットを生成することも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の方法は、(i
1)第1場所における第1フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号と、n個の追加的場所における第1フルオロフォアのn個の追加的分離された超音波蛍光信号と、を組み合わせて、環境内の第1フルオロフォアにより放出された音波蛍光の空間的プロットを生成すること、および、(i
2)第1場所における第2フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号と、n個の追加的場所における第2フルオロフォアのn個の追加的分離された超音波蛍光信号と、を組み合わせて、環境内の第2フルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを生成すること、をさらに含む。
【0042】
さらに、第1フルオロフォアおよび第2フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号が環境内の1つまたは複数の場所に対して取得されると、所望により、これらの信号のSNRの改善が上述の様式で可能となる。例えば、いくつかの事例では、本明細書で記載の方法は、(j
1)第1フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号と第1基準信号との相関関係を算定して、第1場所に対する第1基準信号に対する第1相関係数を生成することと、(k
1)第1フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号と第1基準信号に対する第1相関係数とを乗算して、第1場所に対する第1フルオロフォアの第1修正済み分離された超音波蛍光信号を生成することと、(j
2)第2フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号と第2基準信号との相関関係を算定して、第1場所に対する第2基準信号に対する第1相関係数を生成することと、(k
2)第2フルオロフォアの分離された超音波蛍光信号と第2基準信号に対する第1相関係数とを乗算して、第1場所に対する第2フルオロフォアの第1修正済み分離された超音波蛍光信号を生成することと、をさらに含む。さらに、係る実施形態では、第1基準信号は第1フルオロフォアの第1超音波蛍光信号に対応し得、第2基準信号は第2フルオロフォアの第1超音波蛍光信号に対応し得る。
【0043】
分離された超音波蛍光信号の係る相関関係算定および修正をイメージング対象の環境内の任意の所望個数の場所に対して実施することが可能であることをさらに理解すべきである。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の方法は、(j
1n)第1フルオロフォアのn個の追加的分離された超音波蛍光信号と第1基準信号との相関関係を算定して、n個の追加的場所に対する第1基準信号に対するn個の追加的相関係数を生成することと、(k
1n)第1フルオロフォアのn個の追加的分離された超音波蛍光信号と第1基準信号に対するn個の追加的相関係数とを乗算して、n個の追加的場所に対する第1フルオロフォアのn個の追加的修正済み分離された超音波蛍光信号を生成することと、(j
2n)第2フルオロフォアのn個の追加的分離された超音波蛍光信号と第2基準信号との相関関係を算定して、n個の追加的場所に対する第2基準信号に対するn個の追加的相関係数を生成することと、(k
2n)第2フルオロフォアのn個の追加的分離された超音波蛍光信号と第2基準信号に対するn個の追加的相関係数とを乗算して、n個の追加的場所に対する第2フルオロフォアのn個の追加的修正済み分離された超音波蛍光信号を生成することと、を含み得る。なお、第1基準信号は第1フルオロフォアの第1超音波蛍光信号に対応し、第2基準信号は第2フルオロフォアの第1超音波蛍光信号に対応する。
【0044】
さらに所望により、複数の場所に対する係る修正済み分離された超音波蛍光信号は、上述のステップ(i
1)または(i
2)で記載のように、環境内のフルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを生成するために使用され得る。加えて、「修正済み」超音波蛍光信号が、1つまたは複数の信号処理ステップ(例えば本明細書で記載の1つまたは複数の乗算ステップなど)を通して修正された超音波蛍光信号を指し得ることを理解すべきである。
【0045】
さらに、2つの異なる超音波切り替え可能フルオロフォアに対して上述した同一の処理が、3つ以上の異なるフルオロフォアを使用する多重化イメージングのためにも使用され得ることを理解すべきである。一般に、任意の所望個数の異なる超音波切り替え可能フルオロフォアが使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、3つ、4つ、または5つの異なる超音波切り替え可能フルオロフォアが使用され得る。さらに、係る場合では、本明細書で記載の方法は、それぞれ3つ、4つ、または5つのフルオロフォアに対応する3つ、4つ、または5つの基準信号を用いる3つ、4つ、または5つの相関関係算定および乗算のステップ(例えばステップ(f
1n)、(g
1n)、(f
2n)、および(g
2n)で説明されたステップなど)を実施することを含み得る。一般に、m個までの異なる超音波切り替え可能フルオロフォアが使用され得る。なおmは、5、10、20、50、または100であり得る。一方、本明細書でさらに説明するように、単一のボクセル内の係る多重化イメージングに関しては、m個の異なる超音波切り替え可能フルオロフォアのm個の超音波蛍光放出プロファイルが、数学的に直交であるか、相関関係を有さないか、または弱い相関関係を有することが好ましいことを理解すべきである。
【0046】
ここで、本明細書で方法のステップに注目すると、本明細書で記載のイメージングの方法の特定のステップは、超音波切り替え可能フルオロフォアを、または超音波切り替え可能フルオロフォアの集団を、環境内に配置することを含む。本発明の目的と一致しないあらゆる環境も使用され得る。いくつかの実施形態では、環境は生物学的環境である。本明細書で記載の方法の環境は、非生物学的環境であってもよい。いくつかの場合では、例えば、生物学的環境は生体内環境(例えば、組織、器官、血管、または生体の他の部分など)である。いくつかの実施形態では、生物学的環境は腫瘍または腫瘍脈管構造を含む。他の場合では、生物学的環境は生体外環境(例えば組織培養など)を含む。本明細書で記載の方法の生物学的環境は、生物学的ファントム物質または組織模倣性ファントム物質(例えば寒天、シリコーン、ポリビニルアルコール(PVA)ゲル、ポリアクリルアミド(PAA)ゲル、またはゼラチン中における油の分散など)を含むか、または係るファントム物質により置き換えられ得る。他のファントム物質も使用され得る。
【0047】
さらに、いくつかの実施形態では、生物学的環境は深部組織を含む。「深部」組織」とは、本明細書での参照目的のために、器官、組織培養、または、生物学的環境に関連付けられた他のより大きい構造体の外側表面(例えばファントム物質の場合では、ファントム物質の外側表面)の少なくとも約1cm下方に位置する組織(またはファントム物質の場合には、ファントム物質の内部領域)を含む。いくつかの実施形態では、例えば、深部組織は外側表面の下方約1cm〜約10cm、または約1cm〜約5cmに位置する。いくつかの場合では、深部組織は外側表面の下方において10cmを超える位置にある。さらに、外側表面は、いくつかの実施形態では、器官の外皮表面を含む。
【0048】
加えて、本発明の目的と一致しない、任意の超音波切り替え可能フルオロフォアが、または、異なる超音波切り替え可能フルオロフォアの組み合わせが、使用され得る。「超音波切り替え可能」なフルオロフォアとは、本明細書での参照目的のために、超音波ビームに曝露されるとそれに応答してオン状態とオフ状態との間で切り替わるよう動作するフルオロフォアを含む。超音波ビームは、フルオロフォアの切り替え応答に対して、直接的または間接的に応答し得る。例えば、いくつかの場合では、超音波ビームとフルオロフォアとの直接的な相互作用が生じると、フルオロフォアの蛍光状態間が切り替わる。他の場合では、超音波ビームとフルオロフォアの中間的環境または微環境との間に直接的な相互作用が生じると、フルオロフォアの微環境の少なくとも1つの特性が変化する。係る場合では、超音波ビームにより誘導される環境的変化に応答して、フルオロフォアはオン蛍光状態とオフ蛍光状態との間で切り替わり得る。かくしてフルオロフォアは、超音波ビームへの曝露に応答して、間接的に切り替え可能となり得る。
【0049】
フルオロフォアの「オン」状態は、本明細書における参照目的のために、(1)フルオロフォアの蛍光強度が、蛍光強度が比較的低いフルオロフォアの「オフ」状態と比較して比較的高い状態、または、(2)フルオロフォアの蛍光寿命が、蛍光寿命が比較的短いフルオロフォアの「オフ」状態と比較して比較的長い状態、を含む。さらに、両方の場合において、オン状態およびオフ状態は、臨界的切り替えパラメータ(例えば温度または負圧など)の関数としてプロットされたとき、蛍光の強度または寿命のプロファイルにおいて階段関数を実質的に画成する。オン状態におけるよりもオフ状態においてより長い寿命を有するフルオロフォアは、フルオロフォアから放出された光子の時間ゲーティング検出または時間遅延検出(例えば、励起の後の比較的長い時間の後に受容された光子のみがUSF信号の一部として検出器によりカウントされる時間ゲーティング検出)を使用する本明細書で記載の方法における使用に対して特に好適である。いくつかの場合では、フルオロフォアのオン状態は、フルオロフォアの理論的最大蛍光強度の少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%を示し、フルオロフォアのオフ状態は、フルオロフォアの理論的最大蛍光強度のわずか50%、わずか約30%、わずか約10%またはわずか約5%を示す。
【0050】
オン状態対オフ状態の存在に対する物理的原因は異なり得る。例えば、いくつかの場合では、フルオロフォアの蛍光強度または蛍光寿命は、環境状態における変化(例えば、いくつかの熱応答性ポリマー、pH感受性の化学種、または感圧性の物質により示される変化など)に応答するフルオロフォアの構造変化または化学変化に起因して変化する。いくつかの場合では、フルオロフォアの蛍光強度または蛍光寿命は内部蛍光クエンチに応答して変化する。なお、係るクエンチは超音波の存在により直接的または間接的に誘導され得る。
【0051】
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で記載のフルオロフォアは、FRET供与体種およびFRET受容体種を含み、FRET供与体種とFRET受容体種との間の距離は超音波ビームの存在により変更される。FRET供与体種は第1蛍光種または他の発色団であり得、FRET受容体種は第2蛍光種または他の発色団であり得る。係る場合では、当業者により理解されるように、供与体種と受容体種との間のFRETエネルギー伝達により、供与体種の蛍光クエンチが生じ得る。したがって、受容体種はフルオロフォアの蛍光クエンチ種であるとみなされ得る。本発明の目的と一致しないあらゆる供与体−受容体のペアが本明細書で記載のFRETベースのフルオロフォアにおいて使用され得る。例えば、いくつかの場合では、供与体種はAlexaFluor546を含み、受容体種はAlexaFluor647を含む。受容体種および供与体種の他の組み合わせも可能である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載のフルオロフォアは、1つまたは複数のFRET供与体種を含むマイクロバブルと、マイクロバブルの外部表面に取り付けられた1つまたは複数のFRET受容体種と、を含み、マイクロバブルは超音波ビームの存在に応答してサイズが変化するよう動作する。サイズにおける変化により、FRET供与体種とFRET受容体種との間の距離に増減が生じ、それによりFRETエネルギー伝達効率に増減が生じ得る。その結果、マイクロバブルの蛍光クエンチおよび全体的な蛍光強度が、マイクロバブルのサイズに基づいて変動し得る。
【0053】
本明細書で記載のマイクロバブルは、任意のサイズを有し、本発明の目的と一致しない任意の化学種から形成され得る。いくつかの場合では、マイクロバブルは、約1μm〜約10μmの範囲または約1μm〜約5μmの範囲の直径を有し得る。他のサイズのマイクロバブルも使用され得る。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書で記載のマイクロバブルは、ポリマー物質(例えば有機ポリマー物質など)から形成された外殻により包囲されたガスコアを含む。他の場合では、外殻は脂肪性物質から形成される。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、アルブミン、ガラクトース、脂質、および六フッ化硫黄から形成された外殻を含む。加えて、本明細書で記載のマイクロバブルのガスコアは、空気、窒素、およびペルフルオロカーボン(例えばオクタフルオロプロパンなど)を含み得る。さらに、いくつかの場合では、本明細書で記載のマイクロバブルは、市販のマイクロバブル(例えばSonoVue
TM、Optison
TM、Imagent
TM、Definity
TM、またはTargestar
TMマイクロバブルなど)から形成される。本明細書で記載のFRET供与体種および/または受容体種は、本発明の目的と一致しない任意の様式で係るマイクロバブルの表面に取り付けられ得る。いくつかの場合では、例えば、供与体種および/または受容体種は、カルボジイミド、マレイミド、またはビオチン−ストレプトアビジン結合方式のうちの1つまたは複数を使用して市販のマイクロバブルの外部表面に取り付けられる。
【0054】
加えて、いくつかの実施形態では、本明細書で記載のフルオロフォアは熱応答性ポリマーを含む。「熱応答性」ポリマーとは、本明細書における参照目的のために、温度依存性の様式で変化する物理的特性または化学的特性を有するポリマーを含む。なお係る変化は不連続的な変化または2値的な変化である。例えば、いくつかの場合では、熱応答性ポリマーの物理的構造または極性は温度依存性の形で変化し、熱応答性ポリマーは、閾値温度より下では第1の構造を示し、閾値温度より上では第2の実質的に異なる構造を示す。いくつかの実施形態では、例えば、熱応答性ポリマーは、閾値温度より下では拡張されたコイル状または鎖状の構造を示し、閾値温度より上では密集型または球状構造を示す。いくつかの係る場合では、閾値温度はポリマーの「下方臨界溶解温度」(LCST:lower critical solution temperature)とも呼ばれ得る。
【0055】
本発明の目的と一致しない任意の熱応答性ポリマーが使用され得る。いくつかの実施形態では、熱応答性ポリマーは、アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、アクリル酸、およびアリルアミンのうちの1つまたは複数を有する、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)またはN−イソプロピルアクリルアミドのコポリマーを含む。他の場合では、熱応答性ポリマーは、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)(PVCL)またはプルロニックポリマーなどのポロキサマーを含む。他の熱応答性ポリマーも使用され得る。
【0056】
加えて、いくつかの場合では、本明細書で記載のフルオロフォアの熱応答性ポリマーは、1つまたは複数の蛍光団を含むか、または、1つまたは複数の蛍光種(例えば1つまたは複数の蛍光染料分子など)に抱合される。熱応答性ポリマーは、本発明の目的に一致しない任意の様式において蛍光種に抱合され得る。例えば、いくつかの場合では、熱応答性ポリマーは、1つまたは複数の共有結合(例えば、1つまたは複数のエステル結合、または1つまたは複数のアミド結合)を通して蛍光種に連結される。
【0057】
図1では、本明細書で記載の一実施形態に係る熱応答性フルオロフォアを使用する超音波により切り替えられる蛍光処理が概略的に示されている。
図1で示されているように、熱応答性ポリマーが蛍光種に抱合されるとフルオロフォアが提供される。フルオロフォアは上述のように鎖状構造および球状構造を有し、この構造は温度依存性である。さらに一方の構造から他方の構造への遷移が生じると、蛍光種の蛍光強度または蛍光寿命が変化する。本明細書でさらに説明されるように、蛍光強度または蛍光寿命における変化は、ポリマーが球状構造と比較して鎖状構造にあるときの蛍光種の微環境における差異に起因し得る。例えば、いくつかの場合では、フルオロフォアにより経験されるポリマー環境の極性および/または粘度は、ポリマーが鎖状構造にあるかまたは球状構造にあるかどうかに応じて変化する。
【0058】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書で記載のフルオロフォアは、熱応答性ポリマーのナノ粒子の表面に分散および/または取り付けられた蛍光物質を含む。さらに、蛍光物質の蛍光特性は、ポリマーナノ粒子の構造、極性、または他の物理的特性もしくは化学的特性の変化に依存し得る。加えて、特性変化は温度依存性の変化であり得る。このようにして、熱応答性ポリマーナノ粒子に温度変化が生じると、蛍光物質の蛍光強度および/または蛍光寿命が変化し得る(蛍光物質のオン状態と蛍光物質のオフ状態との間の変化を含む)。
【0059】
例えば、いくつかの実施形態では、熱応答性ポリマーナノ粒子は温度依存性の極性を示し得、ナノ粒子に分散された蛍光物質は極性依存性の蛍光強度および/または蛍光寿命を示し得る。したがってナノ粒子の温度が変化すると、フルオロフォアの蛍光強度および/または蛍光寿命が変化し得る。
【0060】
他の典型的な実施形態では、熱応答性ポリマーナノ粒子は、閾値温度より下では親水性の内部を有し、閾値温度より上では疎水性の内部を有し得る。したがって係るナノ粒子は、極性溶媒または非極性溶媒に分散されたとき、温度依存性のサイズを示し得る。例えば、閾値温度よりも低い水または他の極性溶媒に分散された場合、ナノ粒子は、ナノ粒子の親水性の内部に水が存在するため、より大きいサイズを示し得る。同様に、閾値温度より上では、ナノ粒子は、現時点では疎水性となったナノ粒子の内部から水が排出されるため、より小さいサイズを示し得る。かくして、ナノ粒子に分散された蛍光物質が温度依存性の濃度を有することとなり、その結果、フルオロフォア全体の蛍光特性が温度依存性となり得る。このプロセスは
図2で概略的に示されている。
【0061】
さらに他の典型的な実施形態では、超音波切り替え可能フルオロフォアは、ポリマーナノ粒子またはミセルが蛍光物質に対するナノカプセルとして作用するよう、蛍光色素などの蛍光物質をポリマーナノ粒子またはミセルの内部に組み込むことにより、形成される。さらに、ポリマーナノ粒子は、熱応答性ポリマー(上述の熱応答性ポリマーなど)から形成され得る。本明細書で記載のナノカプセルを形成するために好適なポリマーの非限定的な例としては、PluronicF127、PluronicF98、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、およびアクリルアミド(AAm)またはN−tert−ブチルアクリルアミド(TBAm)を有するPNIPAMのコポリマーが挙げられる。さらに、いくつかの事例では、ナノ粒子またはナノカプセルは、上述の熱応答性ポリマーとポリエチレングリコール(PEG)とを重合することにより、および/または、ペンダント基としてのPEGを熱可塑性ポリマーに抱合させることにより、形成され得る。係るフルオロフォアは、いくつかの場合では、以下でさらに説明されるように、切り替え閾値を有し得る。なお切り替え閾値はPEGの含有により少なくとも部分的に制御される。
【0062】
本明細書で記載の熱応答性ポリマーまたはポリマーナノカプセルなどのポリマーナノ粒子は、本発明の目的と一致しないサイズまたは形状を有し得る。いくつかの実施形態では、例えば、熱応答性ポリマーナノ粒子は実質的に球形状であり、約10nm〜約300nmの範囲の、約50nm〜約250nmの範囲の、約50nm〜約200nmの範囲の、または約70nm〜約150nmの範囲の、直径を有する。いくつかの場合では、ポリマーナノカプセルは実質的に球形状であり、約100nmより小さい、または約50nmより小さい、直径を有する。いくつかの事例では、ポリマーナノカプセルは、約20nm〜約90nmの範囲の、約20nm〜約80nmの範囲の、または約20nm〜約70nmの範囲の、サイズを有する。他のサイズおよび形状も可能である。
【0063】
さらに、本発明の目的と一致しない任意の蛍光物質を、熱応答性ポリマーナノ粒子または他のポリマーナノ粒子に分散させ、および/または取り付けた場合にも、本明細書で記載のフルオロフォアが形成され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で記載のように、蛍光物質は、極性の影響を受ける蛍光強度および/または蛍光寿命を示す。他の場合では、蛍光物質は、温度依存性、粘度依存性、pH依存性、および/またはイオン強度依存性の、蛍光強度および/または蛍光寿命を示す。
【0064】
本明細書で記載のいくつかの実施形態での使用に対して好適な蛍光物質の非限定的な例としては、N,N−ジメチル−4−ベンゾフラザンスルホンアミド(DBD)、4−(2−アミノエチルアミノ)−7−(N,N−ジメチルスルファモイル)ベンゾフラザン(DBD−ED)、インドシアニングリーン(ICG)、Dylite−700−2BなどのDylite−700、IR−820、3,3’−ジエチルチアトリカルボシアニンヨージド(DTTCI)、LS−277、LS−288、シアニン色素、ローダミン6GもしくはローダミンBなどのローダミン色素、またはクマリンなどの有機色素が挙げられる。いくつかの事例では、蛍光物質はアザジピロメテンを含む。加えて、いくつかの場合では、蛍光物質は、II族〜VI族半導体ナノ結晶(例えばZnSまたはCdSEなど)を、もしくはIII族〜V族半導体ナノ結晶(例えばInPまたはInAsなど)を含む半導体ナノ結晶または量子ドットなどの無機種を含む。他の事例では、蛍光物質はランタニド種を含む。本明細書で記載の超音波切り替え可能フルオロフォアにおける使用に対して好適である追加的な非限定的な例としては、Aminら、“Syntheses, Electrochemistry, and Photodynamics of Ferrocene−Azadipyrromethane Donor−Acceptor Dyads and Triads,” J. Phys. Chem. A 2011, 115, 9810−9819、Bandiら、“A Broad−Band Capturing and Emitting Molecular Triad: Synthesis and Photochemistry,” Chem. Commun., 2013, 49, 2867−2869、Jokicら、“Highly Photostable Near−Infrared Fluorescent pH Indicators and Sensors Based on BF
2−Chelated Tetraarylazadipyrromethane Dyes,” Anal. Chem. 2012, 84, 6723−6730、Jiangら、“A Selective Fluorescent Turn−On NIR Probe for Cysteine,” Org. Biomol. Chem., 2012, 10, 1966−1968、および、Kucukozら、“Synthesis, Optical Properties and Ultrafast Dynamics of Aza−boron−dipyrromethane Compounds Containing Methoxy and Hydroxy Groups and Two−Photon Absorption Cross−Section,” Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry 247 (2012), 24−29、に記載の蛍光物質が挙げられる。上記の文献の全部は参照することにより本明細書に援用される。他の蛍光物質も使用され得る。
【0065】
本明細書で記載の超音波切り替え可能フルオロフォアは、本発明の目的と一致しない任意の蛍光放出プロファイルを有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、フルオロフォアは、可視光を含む放出プロファイルまたは電磁スペクトルの可視領域を中心とする放出プロファイル(例えば450nm〜750nmの範囲)を示す。いくつかの場合では、フルオロフォアは、赤外線(IR)光を含む放出プロファイルまたは電磁スペクトルのIR領域を中心とする放出プロファイルを示す。例えば、いくつかの事例では、本明細書で記載のフルオロフォアは、近赤外線(NIR、750nm〜1.4μm)、短波長赤外線(SWIR、1.4〜3μm)、中波長赤外線(MWIR、3〜8μm)、または、長波長赤外線(LWIR、8〜15μm)を中心とする放出プロファイルを示す。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書で記載のフルオロフォアは、水および/または生体組織が吸収最小値を有する波長と重なり合う放出プロファイル(例えば、約700nm〜約800nmの、または約1.25μm〜約1.35μmの範囲の波長など)を有する。加えて、いくつかの場合では、本明細書で記載の超音波切り替え可能フルオロフォアの集団は、異なる放出プロファイルを有するフルオロフォアを含む。例えば、いくつかの場合では、係る集団のうちの第1フルオロフォアはNIRにおいて放出し、係る集団のうちの第2フルオロフォアは電磁スペクトルの可視領域において放出し得る。さらに、いくつかの事例では、第1フルオロフォアおよび第2フルオロフォアは、以下でさらに説明するように、異なる時間強度減衰プロファイルを有し得る。いくつかの実施形態では、第1フルオロフォアおよび第2フルオロフォアの超音波蛍光放出プロファイルは数学的に直交するか、または相関関係を有さない。このようにして多重化イメージングが達成され得る。
【0066】
さらに、いくつかの事例では、本明細書で記載のフルオロフォアは、少なくとも約1nsの、少なくとも約3nsの、または少なくとも約10nsの、蛍光寿命を示す。いくつかの実施形態では、本明細書で記載のフルオロフォアは、約1ns〜約15nsの範囲の、約1ns〜約10nsの範囲の、約1ns〜約4nsの範囲の、約3ns〜約7nsの範囲の、約3ns〜約5nsの範囲の、または約10ns〜約15nsの範囲の、蛍光寿命を示す。
【0067】
加えて、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の超音波切り替え可能フルオロフォアは、フルオロフォアのオン状態およびオフ状態に関する1つまたは複数の望ましい特徴を示す。例えば、いくつかの場合では、フルオロフォアは、蛍光強度における高いオン・オフ比(I
On/I
Off)、蛍光寿命における高いオン・オフ比(τ
On/τ
Off)、オン状態とオフ状態との間の鋭利な遷移帯域幅(T
BW)、および/または、例えば調整可能な切り替え閾値温度(T
th)または調整可能な切り替え閾値圧力(P
th)などの調整可能な切り替え閾値(S
th)、を示す。これらの測定規準は
図3を参照してさらに説明され得る。
【0068】
図3では、温度依存性のフルオロフォアの蛍光強度および蛍光寿命のプロットが温度の関数として示されている。一方、同一の原理および命名法が、圧力依存性の蛍光に対して、または本明細書で記載の他のいくつかの変数に依存するフルオロフォアに対して、類似の方法で適用可能であることを理解すべきである。係る事例では、
図3の温度軸は、
図3の外観を実質的に変更させることなく、圧力軸により、または、蛍光の切り替えに関連する他の変数に対応する軸により、置き換えられ得る。
図3を参照すると、T
thは切り替え閾値温度を指す。I
On/I
Offは、閾値温度より高い温度の範囲におけるフルオロフォアの平均蛍光強度と、閾値温度より低い温度の範囲におけるフルオロフォアの平均蛍光強度と、の比を指す。同様に、τ
On/τ
Offは、閾値温度より高い温度の範囲におけるフルオロフォアの平均蛍光寿命と、閾値温度より低い温度の範囲におけるフルオロフォアの平均蛍光寿命と、の比を指す。いくつかの実施形態では、これらの平均値は、切り替え閾値の大きさの約5%〜約100%である大きさを有する温度の範囲であるが遷移帯域幅T
BWの外側に存在する範囲において、取得される。T
BWは、フルオロフォアが階段関数の形でオン状態からオフ状態に切り替わる温度値(または同様に、圧力または他の変数値)の範囲を指す。換言すると、T
BWはオン状態とオフ状態との間のステップの幅を指す。T
BWが小さいほど、フルオロフォアの蛍光強度プロファイルは、オン状態とオフ状態との間で不連続性を有する真の階段関数との類似性が大きくなる。
図3では、I
On値は、約33℃〜約48℃温度範囲(約16℃、または26℃のT
th値の約62%の範囲)における平均強度として取得され、I
Off値は約23℃〜約25℃の範囲(約3℃、または26℃のT
th値の約12%の範囲)における平均強度として取得される。一般に、オン状態およびオフ状態における平均蛍光強度を判定するために使用される温度値の範囲は、特定のイメージング用途に対する対象となる温度値の範囲に基づき得る。本明細書で記載の超音波切り替え可能フルオロフォアは、以下の表1で与えられるI
On/I
Off値、τ
On/τ
Off値、T
BW値、およびT
th値のうちのいずれかを示し得る。
【表1】
【0069】
本明細書で記載のイメージングの方法は、いくつかの実施形態では、生物学的環境などの環境を電磁放射のパルスビームに曝露させる(生物的環境を超音波ビームに曝露させる前を含む)ことも含む。電磁放射のパルスビームは、ピコ秒のパルス幅(例えば、わずか100psのパルス幅)を有し得る。なおバルス幅は一定時間にわたるパルスビームの光パワーのFWHMとして定義される。パルスビームは本発明の目的と一致しない任意の波長およびパワーを有し得る。いくつかの場合では、例えば、パルスビームの波長は、上記でさらに説明されているように、生物学的環境に存在する1つまたは複数の種の吸収プロファイルと実質的に重なり合うよう、選択される。いくつかの実施形態では、パルスビームは可視波長、またはNIR波長を有する。他のパルスビームも使用され得る。
【0070】
本明細書で記載の方法は、生物学的環境などの環境を1つまたは複数の超音波ビームに曝露させて、環境内に活性化領域を形成することも含む。超音波ビームは、本発明の目的と一致しない任意の超音波周波数を有し得る。いくつかの実施形態では、超音波ビームは、約20kHzより大きい周波数または約2MHzより大きい周波数を有する、振動する音圧波を含む。いくつかの場合では、本明細書で記載の超音波ビームは、約5GHzまでの周波数、または約3GHzまでの周波数を有する。いくつかの実施形態では、超音波ビームは、約20kHz〜約5GHzの、約50kHz〜約1GHzの、約500kHz〜約4GHzの、約1MHz〜約5GHzの、約2MHz〜約20MHzの、約2MHz〜約10MHzの、約5MHz〜約200MHzの、約5MHz〜約15MHzの、約200MHz〜約1GHzの、約500MHz〜約5GHzの、または、約1GHz〜約5GHzの、周波数を有する。
【0071】
加えて、超音波ビームは、本発明の目的と一致しない任意のパワーを有し得る。いくつかの実施形態では、例えば、超音波ビームは、約0.1W/cm
2〜約10W/cm
2の範囲の、約0.1W/cm
2〜約5W/cm
2の範囲の、約0.5W/cm
2〜約5W/cm
2の範囲の、約1W/cm
2〜約10W/cm
2の範囲の、または、約1W/cm
2〜約5W/cm
2の範囲の、パワーを有する。他の場合では、超音波ビームは、約100W/cm
2〜約5000W/cm
2の範囲の、または、約100W/cm
2〜約3000W/cm
2の範囲の、パワーを有する。いくつかの場合では、高いパワー(例えば本明細書で記載の高いパワーなど)を有する超音波ビームを使用すると、活性化領域内で非線形性効果が生じることとなり得る。さらに、いくつかの実施形態では、活性化領域の効果的なサイズがこのようして小さくなると、イメージング解像度が改善されることとなる。
【0072】
環境は、本発明の目的と一致しない任意の様式で、超音波ビームに曝露され得る。例えば、いくつかの実施形態では、生物学的環境が、制限された期間の間のみ、本明細書で記載の超音波ビームに曝露される。いくつかの場合では、例えば、超音波ビームは、1秒よりも短い期間にわたり、または約500msよりも短い期間にわたり、環境に対して提供される。いくつかの実施形態では、超音波ビームは、約300msより短い期間にわたり、約100msより短い期間にわたり、約50msより短い期間にわたり、または約10msより短い期間にわたり、環境に提供される。いくつかの場合では、超音波ビームは、約1ms〜約1秒、約1ms〜約500ms、約1ms〜約300ms、約1ms〜約100ms、約1ms〜約50ms、約1ms〜約10ms、約10ms〜約300ms、約10ms〜約100ms、約10ms〜約50ms、または、約50ms〜約100msにわたり、環境に提供される。生物学的環境を超音波ビームに曝露させる曝露時間が短い場合、いくつかの実施形態では、蛍光信号の時間ゲーティングが可能となり、それにより、1つまたは複数の望ましくないかまたは非検体の蛍光信号(例えば組織自家蛍光信号またはオン状態にランダムに切り替わるフルオロフォアからの信号)から、所望のUSF信号を時間的に分離することが可能となる。
【0073】
さらに、超音波ビームは持続波ビームまたはパルスビームもしくは変調ビームであり得る。変調超音波ビームまたはパルス超音波ビームの使用は、いくつかの実施形態では、USF信号の周波数ゲーティング検出を可能にすることにより、本明細書で記載の方法のSNRの改善をさらに可能にする。例えば、いくつかの場合では、パルス超音波ビームまたは変調超音波ビームは、特定の周波数または変調を有する超音波曝露を提供する。その結果、対応するUSF信号も同一の特定の周波数または変調を示し得る。したがって、いくつかの係る場合では、ロックイン増幅器が、特定の周波数または変調に対する検出器の感度を大きくさせ、それにより、本方法の全体的な感度およびSNRを大きくさせるために、使用される。
【0074】
本明細書で記載の方法のいくつかの実施形態では、単一の超音波ビームが、単一の超音波トランスデューサ(例えば高密度焦点式超音波(HIFU)トランスデューサなど)を使用して、環境に向かって誘導される。他の事例では、複数の超音波ビームが、複数の超音波トランスデューサを使用して、環境に向かって誘導される。さらに、いくつかの場合では、第1超音波ビームは第1方向から第1角度で環境に向かって誘導され、第2超音波ビームは、第1角度および/または第1方向とは異なる、第2角度で、および/または第2方向から、環境に向かって誘導される。いくつかの実施形態では、例えば、第1方向および第2方向は、直交するか、または実質的に直交する(例えば80〜100度で隔てられた角度)。他の場合では、これらの方向は、80度よりも小さい角度で、または、100度よりも大きい角度で、隔てられる。さらに、所望により、追加的超音波ビームも、追加的方向から、または追加的角度で、環境に向かって誘導され得る。係る場合では、ビームの焦点ゾーンが互いに重なり合うかまたは交わり合って、これらのビームの交差箇所において活性化領域が形成され得る。かくして活性化領域は、活性化領域を生成するために使用される単一の超音波ビームの焦点ゾーンよりも小さい体積または断面を有することとなり、それにより、イメージング解像度が改善され得る。いくつかの場合では、例えば、活性化領域は、約2mmより小さい、1.5mmよりも小さい、または約1mmより小さい横方向寸法および/または軸方向寸法を有する。いくつかの実施形態では、活性化領域は、約700μmより小さい、または約500μmより小さい横方向寸法および/または軸方向寸法を有する。いくつかの実施形態では、活性化領域は、約300μm〜約2mm、約400μm〜約1.5mm、約400μm〜約1mm、約400μm〜約700μm、または、約400μm〜約500μm横方向寸法および/または軸方向寸法を有する。いくつかの場合では、横方向寸法および軸方向寸法の両方が、約1mmより小さい、または約700μmより小さいサイズを含む、本明細書で記載のサイズを有する。さらに、いくつかの実施形態では、活性化領域の横方向寸法および軸方向寸法が異なる場合、比較的非等方性の活性化領域が提供されることとなる。代替的に、他の事例では、横方向寸法および軸方向寸法は実質的に同一である場合、比較的「正方形」のまたは等方性の活性化領域が提供される。
【0075】
「活性化領域」は、本明細書での参照目的のために、本明細書で記載の超音波切り替え可能フルオロフォアがオフ状態からオン状態へと切り替わり得る環境の領域を含む。例えば、いくつかの場合では、活性化領域は、環境の他の部分と比較して負圧の領域を含む。同様に、他の事例では、活性化領域は高温領域を含む。本明細書でさらに説明されるように、本明細書で記載の活性化領域の温度、圧力、または他の特性は、生物学的環境に分散されたフルオロフォアの切り替え閾値に基づいて選択され得る。例えば、いくつかの場合では、1つまたは複数の超音波ビームは、約30℃より高い、約35℃より高い、または約30℃〜約50℃の範囲の平均温度または最高温度を有する活性化領域を形成するよう構成される。他の実施形態では、活性化領域は、約10kPa〜約150kPaの範囲、または約80kPa〜約120kPaの範囲の平均負圧または最高負圧を有する。さらに、本明細書でさらに説明されるように、活性化領域のサイズ、形状、および/または他の特性は、活性化領域を形成するために使用された1つまたは複数の超音波ビームの個数および/またはパワーにより決定され得る。いくつかの場合では、例えば、活性化領域のサイズおよび形状は、単一の超音波ビームの焦点ゾーンにより画定される。他の場合では、活性化領域は、複数の超音波ビームの焦点ゾーンの重なり合うにより画定される。
【0076】
本明細書で記載のフルオロフォアは、本発明の目的と一致しない任意の様式で活性化領域内に配置され得る。いくつかの場合では、フルオロフォアは、環境の近傍エリアから活性化領域へと分散されることにより、環境の活性化領域に進入するか、または環境の活性化領域内に配置される。他の事例では、活性化領域は、環境内の特定場所に形成され、係る特定場所では、フルオロフォアまたはフルオロフォアの集団が発見される可能性があり、または発見され得ないことが知られている。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の超音波ビームが、環境において、または環境内で、ラスタ走査されると、複数の活性化領域が環境内の異なる場所において連続的に生成される。
【0077】
本明細書で記載のイメージング方法は、環境を電磁放射ビームに曝露させること、および/または、電磁放射ビームを用いて少なくとも1つのフルオロフォアをオン状態に励起させることも、含む。フルオロフォアは、本発明の目的と一致しない任意の様式で、電磁放射ビームを用いて励起され得る。いくつかの実施形態では、例えば、フルオロフォアはレーザ励起源(例えばダイオードレーザなど)を使用して励起される。他の事例では、フルオロフォアは、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)または広帯域励起源を使用して励起される。さらに、本明細書で記載の励起源は、本発明の目的と一致しない任意波長の光を提供し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で記載のフルオロフォアは、可視光、NIR光、またはIR光を含む電磁放射ビームで励起される。他の場合では、電磁放射ビームは紫外線(UV)光を含む。
【0078】
本明細書で記載の方法は、環境内または環境内の特定の場合内で放出されたフォトルミネセンス信号または他の光を検出することも含む。いくつかの実施形態では、例えば、方法は、少なくとも1つの超音波切り替え可能フルオロフォアにより放出された光を検出することを含む。フルオロフォアにより放出された光は、本発明の目的と一致しない任意の様式で検出され得る。いくつかの実施形態では、例えば、オン状態にある少なくとも1つのフルオロフォアにより放出された光を検出することは、時間ゲーティング様式または周波数ゲーティング様式(本明細書で記載の時間ゲーティング様式または周波数ゲーティング様式を含む)で光を検出することを含む。いくつかの場合では、オン状態にある少なくとも1つのフルオロフォアにより放出された光は、オフ状態にあるフルオロフォアの蛍光寿命よりも長い時間遅延の後に、または生物学的環境に存在する他の種の蛍光寿命よりも長い時間遅延の後に、検出される。例えば、いくつかの実施形態では、オン状態にある少なくとも1つのフルオロフォアにより放出された光は、生物学的環境に存在する非フルオロフォア種の自家蛍光寿命(例えば約4nsまで、または約5nsまでとなり得る組織の自家蛍光寿命など)よりも長い時間遅延の後に検出される。加えて、本発明の目的と一致しない任意の検出器も使用され得る。いくつかの実施形態では、例えば、1つまたは複数の光電子増倍管(PMT)検出器が使用され得る。他の構成も可能である。
【0079】
同様に、環境内の1つまたは複数の場所におけるフォトルミネセンス信号を検出することは、本発明の目的と一致しない任意の様式でも実施され得る。いくつかの場合では、例えば、環境内の複数の場所における複数のフォトルミネセンス信号は、環境をラスタ走査することにより、検出される。環境内の異なる場所において一連の活性化領域が超音波ビームにより連続的に生成されるよう、係るラスタ走査は、環境全域において、または環境内において、1つまたは複数の超音波ビームのラスタ走査することを含み得る。いくつかの事例では、本明細書で記載の検出器を、環境内の1つの場所から他の場所へと移動または走査させることも可能である。係る様式で検出器を移動または操作させることにより、本方法の検出エリアを大きくすることが可能である。他の場合では、電荷結合素子(CCD)撮像センサまたはカメラなどの2次元検出器が、複数の場所におけるフォトルミネセンス信号を同時に検出するために使用され得る。
【0080】
本明細書で記載のイメージング方法は、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の検出されたフォトルミネセンス信号と1つまたは複数の基準信号との相関関係を算定して、イメージング対象の環境内の1つまたは複数の場所に対する1つまたは複数の相関係数を生成することも含む。係る方法は、1つまたは複数の検出されたフォトルミネセンス信号と、1つまたは複数の場所に対する1つまたは複数の相関係数と、を乗算して、1つまたは複数の修正済みフォトルミネセンス信号を生成することも含み得る。前述の相関関係算定および乗算のステップは、本発明の目的と一致しない任意の様式でも実施され得る。さらに本明細書で記載の方法の「基準」信号は、イメージング対象の環境に配置されたフルオロフォアと同一の発光または蛍光放出プロファイルを有する信号であり得る。したがって、「基準」信号は、本明細書でさらに説明するように、検出された信号がそれに対して比較される標準信号として使用され得る。加えて、係る基準信号は、1つまたは複数のフォトルミネセンス信号がイメージング対象の環境から検出されたときに使用されるのと同一または実質的に同様の実験条件下で、生成または測定され得ることが理解されるべきである。例えば、以下に挙げる実験条件、すなわち、環境を超音波ビームに曝露させる様式(例えば、使用される超音波ビームの個数、パワー、および方向)と、環境を電磁放射ビームに曝露させる様式(例えば、使用される放射源のパワー、波長、および種類(パルスビームまたは持続波))と、フォトルミネセンス信号を検出する様式(例えば、使用される検出器の種類および配置)と、環境の性質(例えば、イメージングの深度、および使用される組織の種類)と、が、基準信号の生成または測定のために、および、1つまたは複数のフォトルミネセンス信号の検出のために、一定に、または実質的に一定(実験誤差内で)に、保持され得る。
【0081】
本明細書で記載のいくつかの実施形態では、フォトルミネセンス信号と基準信号との相関関係を算定することは、フォトルミネセンス信号の時間強度減衰プロファイルと、基準信号の時間強度減衰プロファイルと、を比較することを含む。係る比較は、いくつかの場合では、検出されたフォトルミネセンス信号が基準信号に対してどれほど密接に対応するかについての評価指標として作用する相関係数を生成し得る。理論に拘束されることを意図するものではないが、時間領域における超音波切り替え可能フルオロフォアの一意的なスペクトルシグネチャが、以下でさらに説明されるように、フォトルミネセンス信号および基準信号の時間強度減衰プロファイルが比較されるとき、特に有用な相関係数の生成を可能にすると考えられる。いくつかの実施形態では、環境なの場所に対する相関係数は、式(1)にしたがって生成される。
【数1】
式中、ρ
I,Rは第1場所に対する相関係数であり、I(t)は第1場所における第1フォトルミネセンス信号の時間強度減衰プロファイルであり、R(t)は第1基準信号に対する時間強度減衰プロファイルであり、NはI(t)およびR(t)における時間点の個数である。
【0082】
さらに、いくつかの場合では、本明細書で記載の様式で生成された相関係数は、ビン分割された相関係数である。「ビン分割」された相関係数は、本明細書での参照目的のために、すべての可能な相関係数値のビン分割に基づく値が割り当てられた相関係数である。例えば、いくつかの場合では、相関係数の値は、最初に上記の式(1)にしたがって決定され得る。式(1)を使用することにより、すべての相関係数は理論的に−1〜+1の範囲の値を有し得る。一方、本明細書で記載の相関関係算定ステップに関しては、負の値は物理的には無意味となり得る。したがって、式(1)により相関係数の負の値が与えられる場合、負の相関係数を強制的にゼロの値とするビン分割処理が使用され得る。相関係数の他の値も、改善されたSNRが提供されるよう、「変更」またはビン分割され得る。したがって、いくつかの場合では、ビン分割処理における次のステップとして、特定の相関係数の「実際」値が、係数値の複数の「ビン」のうちの1つに特定の相関係数を配置するために、使用され得る。加えて、本明細書で記載の乗算ステップ(例えば上述のステップ(g)または(g
n))を実施するために、同一のビン内のすべての相関係数が同一の値(例えば、相関係数をビン分割するために使用されるビン分割表により提供される値など)を有するものとして処理され得る。本明細書で記載のいくつかの実施形態における使用に対して好適なビン分割表の1つの非限定的な例が、以下の表2で提供される。一方、他のビン分割表も使用され得ることを理解すべきである。
【表2】
【0083】
加えて、本明細書で記載の相関関係算定および/または乗算ステップが、本発明の目的と一致しない、任意のコンピュータもしくはソフトウェアアルゴリズムを、または、他のハードウェアおよび/またはソフトウェアを、使用して実施され得ることがさらに理解される。いくつかの場合では、例えば、1つまたは複数のMATLABアルゴリズムが使用される。
【0084】
本明細書で記載の方法は、いくつかの実施形態では、環境内の複数の場所に対する複数の修正済みフォトルミネセンス信号を組み合わせて、環境内のフルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを生成することも含む。修正済みフォトルミネセンス信号は、本発明の目的と一致しない任意の様式で組み合わされ得る。いくつかの場合では、例えば、修正済みフォトルミネセンス信号が組み合わされると、1つまたは複数の軸に沿った距離の関数として蛍光強度のプロットが提供される。1つの実施形態における距離の関数としての蛍光強度のプロットが例えば
図22で示されている。他の実施形態では、修正済みフォトルミネセンス信号が組み合わされると、環境内の2次元または3次元の関数として蛍光強度のプロットが提供される。修正済みフォトルミネセンス信号は、他の様式での組み合わせも可能である。
【0085】
さらに、上述のように、本明細書で記載の方法にしたがって生成された空間的プロットは、本明細書で記載の相関関係算定および乗算ステップを実施することなく生成された同様のプロットと比較して、改善されたSNRを有し得る。例えば、いくつかの場合では、本明細書で記載の環境内のフルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットは、相関関係算定ステップが本明細書で記載の様式で実施されなかった場合に環境(または同様の環境)内のフルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットのSNRの、少なくとも約50%大きい、少なくとも約70%大きい、少なくとも約100%大きい、少なくとも約150%大きい、少なくとも約200%大きい、少なくとも約250%大きい、少なくとも約300%大きい、少なくとも約400%大きい、少なくとも約500%大きい、少なくとも約600%大きい、少なくとも約700%大きい、少なくとも約800%大きい、少なくとも約900%大きい、少なくとも約1000%大きい、SNRを有し得る。前述のパーセンテージが、2つの関連するSNR値における差異を、低い方のSNR値で除算し、その値に100倍することにより、判定されたものであることを理解すべきである。いくつかの事例では、本明細書で記載の方法を使用して得られたSNRは、本明細書で記載の相関関係算定ステップを含まない同様の方法により得られたSNRよりも、約20〜300%大きい、約15〜250%大きい、約15〜200%大きい、約15〜100%大きい、約50〜300%大きい、約50〜250%大きい、約50〜200%大きい、約50〜150%大きい、約50〜100%大きい、約70〜300%大きい、約70〜250%大きい、約100〜300%大きい、約100〜250%大きい、約100〜200%大きい、約150〜300%大きい、約150〜250%大きい、約200〜300%大きい、または、約200〜250%大きい。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の環境内のフルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットは、少なくとも約80の、少なくとも約100の、少なくとも約150の、少なくとも約200の、少なくとも約250の、少なくとも約300の、少なくとも約350の、または、少なくとも約400のSNRを有し得る。いくつかの事例では、本明細書で記載の様式で生成された空間的プロットのSNRは、約80〜約400の範囲、約100〜約350の範囲、約150〜約350の範囲、約200〜約350の範囲、約250〜約350の範囲、約300〜約400の範囲、または、約300〜約350の範囲である。本明細書で記載の様式で提供された空間的プロットの非限定的な例が、以下の実施例10で、図示され、さらに説明される。
【0086】
本明細書で記載の空間的プロットのSNRの値が、本発明の目的と一致しない任意の様式で決定され得ることに注意すべきである。いくつかの場合では、空間的プロットのSNRは以下のように決定される。第1に、正規化されたUSF画像の放出プロファイルを使用して、プロファイルのピーク強度およびFWHMが決定される。次に、ピーク波長はFWHMの値の3倍である帯域幅を有する信号範囲の中心として割り当てられる。次に、この信号範囲の外側のデータの全部がバックグラウンドとして取り扱われる。次に、バックグラウンドの標準偏差が計算され、放出プロファイルのノイズとして取り扱われる。次に、プロファイルのSNRは、ピーク強度をノイズで除算することにより、計算される。さらに、所望により、複数の測定に対するSNRが決定され、平均される。平均SNRが、USF画像のSNRとして得られ得る。
【0087】
加えて、本明細書で記載の方法は、いくつかの場合では、1つまたは複数のフォトルミネセンス信号を、第1フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号に対応する第1基底ベクトルと、第2フルオロフォアの正規化された超音波信号に対応する第2基底ベクトルと、に直交分解することを含む。係る方法は、環境内の複数の場所における複数のフルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号に対する基底ベクトル係数を判定することも含み得る。フォトルミネセンス信号は、本発明の目的と一致しない任意の様式で分解され得る。例えば、いくつかの事例では、フォトルミネセンス信号は、コンピュータもしくはソフトウェア・アルゴリズム、または他のハードウェア(例えばMATLAB曲線当てはめアルゴリズムなど)を使用して、基底ベクトルに分解される。同様に、フォトルミネセンス信号が基底ベクトルに分解されると、以下でさらに説明されるように、基底ベクトルの係数は、任意の好適なコンピュータまたはソフトウェア・アルゴリズム(例えばMATLABアルゴリズムなど)を使用して、判定され得る。加えて、フルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号と適切な係数とを乗算して、環境内の特定の場所におけるフルオロフォアの分離された超音波蛍光信号を生成することは、本発明の目的と一致しない任意の様式で実施され得る。例えば、いくつかの事例では、MATLABアルゴリズムなどのアルゴリズムが使用され得る。
【0088】
本明細書で記載の方法は、いくつかの場合では、複数の場所における1つまたは複数のフルオロフォアの分離された超音波蛍光信号を組み合わせて、環境内の1つまたは複数のフルオロフォアにより放出された超音波蛍光の空間的プロットを生成することも含む。分離された超音波蛍光信号は、本発明の目的と一致しない任意の様式で組み合わされ得る。いくつかの場合では、例えば、分離された信号が組み合わされると、1つまたは複数の軸に沿った距離の関数として蛍光強度のプロットが提供される。他の実施形態では、分離された信号が組み合わされると、環境内の2次元または3次元の関数として蛍光強度のプロットが提供される。したがって、分離された超音波蛍光信号を本明細書で記載の様式で組み合わせることは、環境内の1次元、2次元、または3次元における複数のフルオロフォアの多重化イメージングを提供し得る。
【0089】
上述のように、本明細書で記載のイメージング方法は、いくつかの実施形態では、改善された進入深さ/解像度比(DRR)を示し得る。イメージング方法の「進入深さ」は、本明細書における参照目的のために、イメージング対象内部における超音波ビームの強度が、表面におけるその初期値の1/e(約37パーセント)まで低下するイメージング対象の表面下方の深さとして定義される。方法の「解像度」は、本明細書における参照目的のために、顕微鏡的解像度(すなわち、別個の物体の区別が可能なサイズ)であり、これは、所与の寸法における活性化領域のFWHMと等しい。いくつかの実施形態では、本明細書で記載の方法は、少なくとも100のDRRを示す。他の場合では、本明細書で記載の方法は、少なくとも約200、少なくとも約300、または少なくとも約400のDRRを示す。いくつかの実施形態では、本明細書で記載の方法は、約500までのDRRを示す。いくつかの場合では、本明細書で記載の方法は、約100〜約500の範囲の、約100〜約400の範囲の、約100〜約300の範囲の、または、約200〜約500の範囲の、DRRを示す。さらに、本明細書で記載の方法の進入深さは、いくつかの実施形態では、100mmまで、50mmまで、または、30mmまで、となり得る。いくつかの場合では、進入深さは、約10mm〜約100mmの範囲、約10mm〜約60mmの範囲、約10mm〜約50mmの範囲、約20mm〜約90mmの範囲、または、約20mm〜約50mmの範囲、である。加えて、本明細書で記載の方法の解像度は、いくつかの実施形態では、約100μmより小さい、約70μmより小さい、約50μmより小さい、または、約30μmより小さい。いくつかの場合では、解像度は、約10μm〜約100μmの範囲、約10μm〜約70μmの範囲、約10μm〜約50μmの範囲、約10μm〜約30μmの範囲、約20μm〜約100μmの範囲、約20μm〜約80μmの範囲、約20μm〜約50μmの範囲、または、約30μm〜約70μmの範囲である。
【0090】
本明細書で記載のイメージング方法が、本発明の目的と一致しない、本明細書で記載のステップの任意の組み合わせを含み得、機材および物質の任意の組み合わせを使用し得ることが理解される。例えば、いくつかの場合では、本明細書で記載の方法は、熱応答性ポリマーを含む1つまたは複数のフルオロフォアを深い生体組織に配置することと、2つの直交するHIFUトランスデューサを使用して活性化領域を形成することと、時間ゲーティング様式でフルオロフォアからの放出を検出し、それにより、約200より大きいDRRを提供することと、を含む。さらに、いくつかの事例では、係る方法は、環境内の複数の場所に対する複数の相関係数を生成した後に、および/または、1つまたは複数のフォトルミネセンス信号を直交分解し、その後に、複数のフルオロフォアに対する分離された超音波蛍光信号を生成した後に、フルオロフォアの超音波蛍光放出の空間的プロットを生成することをさらに含む。他の組み合わせおよび構成も可能である。
【0091】
本明細書で記載のいくつかの実施形態について、以下の非限定的な事例においてさらに例示する。
【0092】
実施例1
超音波切り替え可能フルオロフォア
一般事項
本明細書で記載のいくつかの実施形態に係るイメージング方法における使用に対して好適な一連の超音波切り替え可能フルオロフォアまたは造影剤が、環境の影響を受けやすいNIR色素、インドシアニングリーン(ICG)を熱応答性ポリマーナノ粒子(NP)に封入することにより、準備された。NPは、本明細書で記載の生物学的環境などの水性環境に配置され得る。環境の温度が閾値温度(NPのLCSTと呼ばれ得る)より低い場合、NPは親水性を示し、大量の水を吸収する。その結果、NPの平均直径は比較的大きくなる。理論に拘束されることを意図するものではないが、水が極性および非粘性の微環境を提供し、それにより、励起されたICG分子の非放射性減衰速度が大きくなるために、水分を多く含む微環境ではICG分子が弱い蛍光を発するものと考えられる。温度が閾値温度を超えるとNPは疎水性を示し、NPから水が排出され、それに応じて平均NP直径が小さくなる。再び、理論に拘束されることを意図するものではないが、NP内に分散されたICG分子が、次に、水分を多く含む微環境と比較して、比較的低い極性および高い粘性を有する、ポリマーを多く含む微環境に曝露されると考えられる。極性が低く粘性が高い係る微環境は、励起されたICG分子の非放射性減衰速度を抑制し、その結果、ICGの蛍光強度が大きくなると考えられる。オフ状態からオン状態へのこの蛍光切り替え挙動が、可逆性であり、反復可能であることが観察された。特に、高密度焦点式超音波(HIFU)トランスデューサが、トランスデューサの焦点ゾーンの温度をNPのLCSTより高く、または低く、することにより、フルオロフォアをオン状態とオフ状態との間で可逆的および反復的に切り替えるために、使用され得た。
【0093】
NPは、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)の、またはアクリルアミド(AAm)との、もしくはN−tert−ブチルアクリルアミド(TBAm)との、そのコポリマーの、熱応答性ポリマーから形成された。
図4では、係るポリマーおよびICGの構造が示されている。特に、(1)ICGが封入されたP(NIPAM−TBAm185:15)NPと、(2)ICGが封入されたPNIPAM・NPと、(3)ICGが封入されたP(NIPAM−AAm90:10)NPと、(4)ICGが封入されたP(NIPAM−AAm86:14)NPと、を含む、四種類のポリマーNPが合成された。前記の式における比率は、NPを形成するために使用された、NIPAMのモノマーと、TBAmまたはAAmのモノマーと、のモル比を指す。これらの熱応答性ポリマーNPのLCSTは、PNIPAMと重合されるAAmおよび/またはTBAmの量に基づいて変更され得る。例えば、親水性モノマー(例えばAAmなど)を使用すると、ポリマーはより高いLCSTを有した。対照的に、疎水性モノマー(例えばTBAmなど)を使用した場合、LCSTは低下した。加えて、TBAmはNIPAMよりも疎水性が高く、その一方で、AAmはNIPAMよりも親水性が高いことに注意すべきである。
【0094】
物質
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と、アクリルアミド(AAm)と、過硫酸アンモニウム(APS)と、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)と、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)と、N−tert−ブチルアクリルアミド(TBAm)と、アスコルビン酸ナトリウムと、ICGと、を、Sigma−Aldrich社(米国ミズーリ州セントルイス)から購入した。全部の薬品は、さらに精製を実施することなく、入荷状態のまま使用した。
【0095】
合成
ICGを含むPNIPAM・NPは以下のように調製された。他のNPは、適量のTBAmおよび/またはAAmモノマーを追加することを除き、同様の手続きを使用して調製された。加えて、TBAmおよび/またはAAmを、アクリル酸(AAc)およびアリルアミン(AH)の一方または両方で部分的または完全に置換して、P(NIPAM−AAc)、P(TBAm−NIPAM−AAc)、またはP(NIPAM−AH)などの他のコポリマーを形成することも可能であった。
【0096】
簡潔に、PNIPAM・NPを調製するために、NIPAM(モノマー、0.6822g)、BIS(架橋剤、0.0131g)、およびSDS(界面活性剤、0.0219g)が、250mLシュレンク管内で50mLの脱イオン化水中に溶解され、その後、10分間、窒素パージを実施した。次に、ICG(フルオロフォア、0.0034g)と、APS(開始剤、0.039g)、TEMED(促進剤、51μL)がシュレンク管に加えられた。次に、シュリンクラインに真空を印加した後に窒素を充填するサイクルを3回実施した後、シュレンク管を不活性窒素雰囲気下に置いた。次に、シュレンク管の内容が4時間にわたり室温で攪拌された。反応は、シュレンク管の内容を空気に曝露させることにより停止された。10−kDa分子量カットオフ膜を使用して生成物を3日間にわたり脱イオン化水に対して透析すると、余剰の界面活性剤および未反応物質が除去された。最終生成物の組成は、フーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトロメータ(米国フロリダ州ウェストパームビーチのThermo Nicolet 6700)を使用して4,000〜600cm
−1で確認された。
【0097】
NPの直径は、動的光散乱(DLS)および透過電子顕微鏡法(TEM)により測定された。TEMは、NPの形態を判定するためにも使用された。DLS測定のために、生成物の200μLを2.8mLの脱イオン化水で希釈し、次に、Nanotrac150(米国カリフォルニア州サンディエゴ、Microtrac、日機装)を用いて室温(25℃)で分析した。TEM測定のために、試料は、生成物NPの水性分散液(約1mg/mlの濃度)を、炭素コーティングが施された銅格子(FF200−Cu−50、米国ペンシルベニア州ハットフィールド、Electron Microscopy Sciences)上に滴下し、次に、0.2%の酢酸ウラニルで着色することにより、準備された。TEM実験は、JEOL1200EX TEM(米国マサチューセッツ州ピーボディ、JOEL)を使用して実施された。NPは、動的光散乱(DLS)および透過電子顕微鏡法(TEM)によれば、70nm〜150nmの範囲のサイズを有した。特に、DLSによる測定時、(1)ICGを含むPNIPAM NPは150±25nmの平均サイズを有し、(2)ICGを含むP(NIPA−TBAm185:15)NPは76±4nmの平均サイズを有し、(3)ICGを含むP(NIPAM−AAm86:14)NPは75±25nmの平均サイズを有し、(4)ICGを含むP(NIPAM−AAm90:10)NPは76±2nmの平均サイズを有した。水溶液中のNPの周囲に界面活性剤(SDS)および水和層が存在したため、DLSにより測定されたサイズはTEMにより測定されたサイズよりもいくぶん大きいものであった。例えば、上述の試料(1)のNPの平均サイズは、TEMにより測定された場合、およそ110nmであった。NPは略球形状で会った。
【0098】
ポリマーNPの蛍光切り替え曲線を
図5に示す。蛍光強度は試料温度の関数としてプロットされている。シャープな切り替え特性が明らかに4つのすべてのNPに見られ得る。なお切り替え閾値温度(LCSTまたはT
thの)は28℃、31℃、37℃、および41℃であった。さらに、切り替えは単一の試料において複数回観察された。例えば
図6では、低温(25℃、x軸上の測定点1、3、5、7、9、および11)と高温(44℃、測定点2、4、6、8、10、および12)との間でサイクルする12個の異なる時間点における、ICGを含むP(NIPAM−AAm:90:10)NPに対する蛍光データが示されている。加えて、I
On/I
Off比は、試料(1)、(2)、(3)、および(4)に対して、それぞれ3.3、2.9、9.1、および9.1に達した。これらの値は、いくつかの他の造影剤のI
On/I
Off比の少なくとも1.6〜5.1倍である。
【0099】
本明細書で記載のフルオロフォアの蛍光特性を測定するために使用したシステムを
図7に概略的に示す。一般に、フルオロフォアの放出パルスを100回平均して、その平均ピーク値が蛍光強度を表すために使用された。
図7で示される「F
ex」は励起フィルタを指し、「F
em」は放出フィルタを指し、「L」はレンズを指し、「PMT」は光電子増倍管を指し、「BM」はビームスプリッタを指し、「PD」はフォトダイオードを指し、「PDG」はパルス遅延発生器を指し、「NDフィルタ」は減光フィルタを指す。
【0100】
実施例2
熱応答性ポリマーナノ粒子を使用するイメージング方法
一般事項
本明細書で記載のいくつかの実施形態に係るイメージング方法は以下のように実施された。最初に、小型シリコーンチューブに(0.69mmの平均直径を有する、米国ペンシルベニア州、InstechLab、BSILT031)、実施例1のICGを含むPNIPAM NP(LCST=31℃)の水性溶液を充填した。次に、シリコーンチューブを一片のブタの筋肉組織に埋め込み、血管をUSFイメージングのターゲットとして模擬した。
図8Aでは、イメージングのために使用される組織試料、チューブ、励起光源、蛍光収集ファイバ、およびHIFUトランスデューサの構成が概略的に図示されている。ブタ組織は、およそ8mmの厚さ(
図8Aのz軸方向)と、およそ20mmの幅(x軸方向)と、を有した。チューブはy軸方向に沿って組織内に挿入された。チューブの中心から組織の上部表面までの距離はおよそ4mmであった。およそ3mmの直径を有するファイババンドル(米国ニュージャージー州、Edmund Optics、NT39−366)が、レーザから組織の底部まで励起光を送達して、HIFUビームに曝露させることによりオン状態に切り替わるようフルオロフォアを励起するために使用された。第2ファイババンドル(Edmund Optics、NT42−345)が、USF光子を収集するために組織の上部に留置された。2.5MHzHIFUトランスデューサ(米国ワシントン、SonicConcepts、H−108、有効直径:60mm、焦点距離:50mm)が、組織の底部に配置され、チューブ領域に集光された。音響エネルギーを組織に効率的に伝達するために、HIFUトランスデューサ、組織試料の底部表面、および励起光を送達するためのファイババンドルが、水中に沈められた。チューブを2次元的にイメージングするために、HIFUトランスデューサは、x−y平面において走査および平行移動された。
【0101】
USFイメージングシステム
USFイメージングシステムの構成が
図8Bに概略的に示されている。このシステムは、4つの主要サブシステム、すなわち、(1)光学サブシステム、(2)超音波サブシステム、(3)温度測定サブシステム、および(4)電子制御サブシステム、を含む。光学サブシステムは、励起光または電磁放射ビームの送達と、放射光の収集と、を実施するための構成要素を含んだ。励起光は、808nmダイオードレーザ(MDL−III−808R)を使用して生成され、上述のファイババンドルを介して試料組織の底部へ送達された。バンドパスフィルタF1(ニューヨーク州、Semrock、FF01−785/62−25。中心波長:785nm、帯域幅:62nm)が、放出フィルタの通過帯域に配置されたダイオードレーザの望ましくない側波帯成分を除去するための励起フィルタとして使用された。レーザは、持続波(CW)モードで動作されたが、試料照射回数および期間は、パルス遅延発生器(カリフォルニア州、ハイランド、PDG、P400)によりトリガされる高速メカニカルシャッタ(ニューヨーク州、UNIBITZ LS3T2)を使用して制御された。シャッタは0.5msの応答時間を有した。代替的に、CWレーザよりもむしろパルスレーザを使用することも可能である。上述の第2ファイババンドルを介して収集された放出済み光子は、1組の放出フィルタへと送達された後に、光電子増倍管(PMT)により受容された。4つの放出フィルタの組み合わせは、励起光子の最大拒否と、蛍光放出光子の通過と、を可能にした。特に、2つのロングパス干渉フィルタ(F2およびF5。米国ニューヨーク州Semrock、BLP01−830R−25。エッジ波長:846nm)と、2つのロングパス吸収ガラスフィルタ(F3およびF4。米国カリフォルニア州アーヴィン、ニューポート、FSR−RG830。カットオン:830nm)が
図8Bで示されるように配置された。2つのNIRアクロマティック複レンズ(米国ニュージャージー州、Thorlabs、AC−254−035−B)が、励起光子が干渉フィルタにより最も良好に拒否されるよう蛍光光子をコリメートすることと、フィルタ済み光子を冷却された低ノイズPMT(日本国、浜松、高電圧電源C8137−02により駆動されるH7422P−20)に集光させることと、を実施するために、使用された。信号は、低ノイズ電流前置増幅器(米国カリフォルニア州、StanfordResearchSystems、SR570)により、さらに増幅され、マルチチャンネルオシロスコープ(米国オレゴン州、Tektronix、DPO4102B−L)により取得された。
【0102】
超音波サブシステムは、上述のHIFUトランスデューサと、様々な駆動要素と、インピーダンス整合ネットワーク(NWM)と、無線周波数(RF)出力増幅器と、ファンクションジェネレータ(FG)と、を含むものであった。特に、2.5MHzの中心周波数を有するゲーティング処理された正弦波信号が、FG(米国、カリフォルニア州、Agilent、33220A)により生成され、RF出力増幅器(米国、ニューヨーク州、E&I、325LA)により、さらに増幅された。増幅された信号はHIFUトランスデューサを駆動するためにNWMに入力された。HIFUトランスデューサは、シリコーン試料チューブ上に集光された。HIFUトランスデューサは、初期のHIFU位置決めと、後続の走査と、の両方を行うために、2次元平行移動ステージ上に取り付けられた。初期位置決め時には、HIFUトランスデューサは、熱電対からの温度信号がその最大値に達した位置(熱電対接続部がHIFU焦点上に配置されたことを示す)に移動された。この位置は画像の中心にあると考えられた。長方形エリア(4.0mmx1.02mm)が、中心を包囲するHIFUトランスデューサによりラスタ走査された。超音波サブシステムの全体は、HIFUパルスの放出と、励起光パルスの放出と、オシロスコープのデータ取得と、を含むPDGにより制御された。これらの処理の時間系列は
図8Cにプロットされる。この実施例では、超音波曝露時間は300msであった。この曝露時間は、PDGからのゲーティング処理パルスの幅により判定された。
【0103】
レーザパルス、蛍光信号、およびデータ取得を適切に同期するために、以下のストラテジーが取られた。レーザパルスは、レーザビームを20mの光ファイバ(米国ニュージャージー州、Thorlabs社、FT200EMT)に接続することにより、およそ100ns遅延された。励起光パルスがレーザにより放出されると、少量のレーザエネルギーがビームスプリッタにより分割され、高速フォトダイオード(PD)に送達され、電子パルスが生成された。このパルスはPDGをトリガするために使用された。PDGの出力は、データ取得のためにオシロスコープをトリガするために使用された。トリガ時間はPDGの出力遅延時間を制御することにより調節された。したがってオシロスコープのデータ取得は、蛍光信号に対して良好に同期および整合した。レーザパルスからの100nsの遅延は、トリガ信号の全体的電子遅延を生じさせるにあたり十分に大きいものであった。
【0104】
HIFU焦点における温度は、増幅器および第2オシロスコープを介して、ミクロンサイズの熱電対により測定された。特に、75μmの小さい接合サイズを有する熱電対(米国コネチカット州、OmegaEngineering、CHCO003)が、HIFUにより誘導された温度変化を測定するために、シリコーンチューブに配置された。接合部は走査エリアの中心に固定された。熱電対からの出力電圧信号は、高精度オペレーショナル増幅器OPA2277を含む増幅器回路により増幅され、オシロスコープ(米国カリフォルニア州、Agilent、Infiniium 54830D MSO)により取得された。HIFUトランスデューサをx軸方向に沿って走査させることにより、温度プロファイルが取得された。熱電対信号は温度と線形に比例した。この温度は、試験の前に組織試料の外部で事前に較正されたものであった。HIFU焦点において測定されたピーク温度は、およそ45℃であった。
【0105】
超音波曝露期間の間、HIFU焦点における組織温度は連続的に増加した。曝露の後、温度は熱拡散の結果として減少した。励起光は、超音波曝露の終了直前の最終的な2ms間にわたり組織を照射した。照射はシャッタを開くことにより開始された。同時に、蛍光信号はオシロスコープにより取得された。オシロスコープはPDGからのパルスによりトリガされた。HIFUトランスデューサは2次元平行移動ステージを使用して走査および平行移動された。
【0106】
高解像度USF画像
上述のHIFUトランスデューサは、上述の組織試料における試料チューブを超音波的にイメージングするために使用された。パルサー/レシーバ(米国、Olympus NDT、5073PR)が、トランスデューサの励起および反射された音響エコーの受容の両方を実施するために、使用された。NWMは、トランスデューサとパルサー/レシーバとの間のインピーダンス整合のためにも使用された。反射された音響信号はパルサー/レシーバにより増幅され、コンピュータに接続されたデジタイザ(NI USB5133)により取得された。係る受信された信号は通常、超音波イメージング分野ではAラインと呼ばれ、深さ(z軸)方向に沿った組織音響インピーダンス分布を表す。1つのAラインがxy平面における各場所において取得された。HIFUトランスデューサをxy平面において走査させることにより、一連の3次元(x、y、およびz)データが取得された。各Aラインのエンベロープは、異なる深さにおけるCモード画像を形成するために、計算された。USF画像と比較するために、xy平面における1組の2次元データ(Cモード画像のうちの1つ)が、チューブ位置におけるzの深さを固定することにより、抽出された。
図9Bの画像はこのように形成された。
【0107】
図9Aでは、xy平面上のチューブのUSF画像が示されている。2本の垂直破線はチューブの内側縁部の場所を示す。各y場所におけるx軸方向に沿ったUSF画像プロファイルのFWHMおよびFWEM(full−width−at−one−eighth−of−the−maximum)が計算された。異なるy場所における平均されたFWHMおよびFWEMは、それぞれ0.48±0.13mmおよび0.68±0.19mmであった。FWHM(0.48mm)はチューブの内径よりも狭く、FWEM(0.69mm)はチューブ内径(0.69mm)に非常に近い。内径がチューブの全サイズを説明するパラメータであるとみなされ得るため、FWHMよりもむしろFWEMがUSF画像の全サイズを説明するパラメータとみなされ得る。
【0108】
USF画像と純粋な超音波画像を比較するために、一般に使用されるパルスエコー法を介して同一のHIFUトランスデューサを使用して同一の試料がxy平面上で走査された。各xy場所において、チューブの上部内側境界から反射された超音波エコーが記録され、超音波画像を生成するために使用された。その結果が
図9Bに示されている。平均のFWHMおよびFWEMはそれぞれ0.76±0.01mmおよび1.12±0.02mmであった。これらの値の両方はUSF画像の値よりも大きい。筋肉中の超音波速度が1,542〜1,626m/sの範囲であると仮定すると、採用されたHIFUトランスデューサ(周波数=2.5MHzおよびf値=0.83)の理論的回折限界横方向焦点サイズ(FWHMに相当する)は0.512〜0.54mmの範囲となる。この値も、チューブのUSFプロファイルの平均FWHMよりも大きい。したがって本明細書で記載のイメージング方法は音響回折限界を超える解像度を達成することが可能である。
【0109】
図9Cおよび
図9Dでは、
図9Aでマークされた水平破線に沿った、USFの生成による蛍光、拡散された蛍光、超音波、および温度の強度プロファイルが示されている。特に
図9Cでは、y=0におけるx軸に沿ったUSF信号および拡散された蛍光信号のプロファイルが示されている。
図9Dでは、y=0におけるx軸に沿ったUSF、超音波、および温度信号のプロファイルが示されている。USFおよび超音波画像の両方は、正規化され、双三次補間法に基づいて内挿された。拡散された蛍光信号のFWHMは3.9mmであった。この値は、対応するUSF画像のプロファイルのFWHM(0.48mm)およびチューブの内径(0.69mm)よりも顕著に大きい。したがって、本明細書で記載の方法は、蛍光拡散光トモグラフィ(FDOT)などの拡散蛍光方法と比較して、改善された解像度を提供し得る。
図9Dにおいて、USF信号プロファイルのFWHMが0.54であることと比較して、温度プロファイルが0.66mmのFWHMを有し、超音波プロファイルが0.76mmのFWHMを有したことに注目すべきである。
図9Cで示される拡散蛍光のプロファイルを得るために、試料は、他のすべての成分が固定状態に保たれる一方でx軸方向に沿って走査された。HIFUがオフ状態に維持され、温度が室温(LCSTより低い)に保たれたが、レーザがオン状態にあるときUSF造影剤は依然として何らかの蛍光を放出した。なぜなら、USF造影剤は、オフ状態にあるときでさえも、必ずしも100パーセントのオフ状態ではないためである。励起光が放出フィルタから漏出することにより結果に歪みが生じることを回避するために、バックグラウンド走査が、チューブに水を充填することにより、実施された。このバックグラウンドデータは、フルオロフォアを含むチューブから取得された結果から差し引かれた。
【0110】
実施例3
超音波切り替え可能フルオロフォア
一般事項
本明細書で記載の方法のいくつかの実施形態における使用に対して好適な一連の超音波切り替え可能フルオロフォアは、以下のように準備された。フルオロフォアは、(1)線状の熱応答性ポリマー構造に連結されているか、(2)実施例1で上述のNPなどの熱応答性ポリマーNP内に分散されているか、(3)熱応答性ポリマーNPの表面に連結されているか、または、(4)一部が熱応答性ポリマーNP内に分散され且つ一部が熱応答性ポリマーNPの表面に連結されている、複数のFRET供与体種および複数のFRET受容体種を含んだ。構造(1)、(3)、および(4)がそれぞれ
図10〜
図12に示されている。加えて、様々なフルオロフォアのいくつかの特性が表2および表3に提供されている。表3では、線状の熱応答性ポリマーに基づくフルオロフォアの特性が説明されている。表4では、熱応答性ポリマーナノ粒子に基づくフルオロフォアの特性が説明されている。表3および表4で使用される命名法は、この実施例で以下でさらに説明される命名法に対応する。加えて、表3および表4で報告される測定値は、上記の実質例1および実施例2で説明された方法で得られたものである。
【0111】
構造(1)
一般に、熱応答性線状ポリマーが最初に合成され、次に、ヒドロキシル部分、カルボキシル部分、および/またはアミン部分などの、ポリマー上の適切な部分と蛍光種との間に共有化学結合を形成することにより、蛍光種がポリマー上にグラフト重合された。いくつかの場合では、例えば、カルボジイミド結合方式が使用された。抱合は他の方法でも実施され得る。一般に、供与体種は、可視領域における短い励起/放出波長を有し、その一方で、受容体種は赤色/NIR放出(長い波長)を有した。蛍光状態へ励起される受容体種がまったく存在しないかまたはほとんど存在しないよう、短波長励起光(供与体種に対する)がシステムを励起するために使用された。熱応答性ポリマーが上述のように球状構造を取ると、供与体種および/または受容体種間の距離が減少し、その結果、供与体種から受容体種へのFRETが生じる。したがって、受容体種の放出(長波長における)が観察され得た。
【0112】
全般的構造(1)を有する一連のフルオロフォアを形成するために、以下の物質が使用された。N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N−tert−ブチルアクリルアミド(TBAm)、アクリルアミド(AAm)、アクリル酸(AAc)、アリルアミン(AH)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、過硫酸アンモニウム(APS)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)、および、7−(2−アミノエチルアミノ)−N,N−ジメチル−4−ベンゾフラザンスルホンアミド(DBD−ED)は、Sigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から購入された。SeTau425モノN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、Square660モノ−NHS、Seta700モノ−NHS、Seta633モノ−NHS、および、Square660モノ−NH2は、SETA BioMedicals(米国イリノイ州アーバナ)から購入され、それぞれST425、Sq660、St700、Sq633、およびSq660aとして示された。全部の薬品は、さらに精製を実施することなく、入荷状態のまま使用した。
【0113】
全般的構造(1)を有するフルオロフォアの熱応答性ポリマー成分は、少なくとも3つの官能化部分、すなわち、(a)主要熱応答性ユニット(例えばNIPAMなど)、(b)LCST制御ユニット(例えばTBAmまたはAAmなど)、および、(c)蛍光種に結合するための機能化ユニット(例えばAAcまたはAHなど)、を含んだ。線状ポリマーはフリーラジカル重合を通して合成された。すべての反応は250mLシュレンク管内で実施された。3つの主要なステップを以下に示す。最初にパージ手順が実施され、反応混合物が10分間にわたり窒素を用いてパージされた。開始剤(例えばAPS)または促進剤(例えばTEMED)が加えられたとき、真空印加(1分)および窒素充填(5秒)のサイクルを3回実施することにより酸素がパージされた。次に、室温で4時間にわたり窒素下で反応混合物を攪拌することにより、重合反応が実施された。最後に、ポリマー生成物は、3日間にわたり適切な分子量カットオフ(MWCO)膜を用いて未反応モノマー、開始剤、または他の小さい分子を除去する透析により、精製された。
【0114】
一例としてP(NIPAM−AAc200:1)を使用すると、全般的な手術は以下の通りである。200:1のモル比の1.3644gのNIPAM(モノマー)および4μLのAAc(モノマー)の試料が、シュレンク管内で50mLの脱イオン化(DI)水に溶解された。パージ手順の間、0.067gのAPS(開始剤)および51μLのTEMED(促進剤)がシュレンク管に加えられた。反応後、試料は、3.5KのMWCO膜で透析された。生成した溶液が収集され、後にアミンを含有する蛍光種と抱合させるために、凍結乾燥された。NHSを含有する蛍光種と抱合させるために、アミン官能化されたポリマーP(NIPAM−AH)が、AAcに代わってAHを使用する点を除き上記と同一の手順を使用して、合成された。さらに一般的に、前述の手順を使用して、以下の熱応答性ポリマー、すなわち、P(NIPAM−TBAm−AAc85:15:1)、P(NIPAM−TBAm−AAc185:15:1)、P(NIPAM−TBAm−AAc585:15:1)、および、P(NIPAM−AAm−AAc200:32:1)、が合成された。
【0115】
ポリマーの合成後、ポリマーと蛍光種との間の抱合が、カルボキシル基と主要アミン部分との間の化学反応を使用して、実施された。いくつかの場合では、蛍光種はNHSを含んだ。NHSは熱応答性ポリマーの主要なアミン(例えばP(NIPAM−AH)中に存在するアミンなど)と反応された。他の場合では、蛍光種は、EDCの存在下でポリマーのカルボキシル基と抱合した主要なアミンを含んだ(例えばP(NIPAM−AAc)。抱合反応は、光の影響を受けやすい色素または蛍光種を保護するために、7mLの茶色ガラス管内で実施された。抱合のための全般的手順は以下の通りである。アミンを含有する色素(例えばDBD−EDまたはSq660aなど)に対して、5mgのポリマー、25mgのEDC、および、0.3mgのDBD−ED、および/または5μLのSq660a(1mg/100μLのジメチルスルホキシド(DMSO)の原液)が、ガラス管内の5mL脱イオン化水に溶解された。次に、ガラス管は攪拌され、室温で終夜にわたり反応された。反応の完了後、抱合物は上述の適切なMWCO透析膜を用いて精製された。NHSを含有する色素(例えば、ST425、St633、Sq660、およびSt700)に対して、5mgのポリマーおよび10μLの色素(原液:1mg/100μLのDMSO)が、5mLのリン酸塩緩衝剤食塩水(PBS、8mMのリン酸ナトリウム、2mMのリン酸カリウム、0.14MのNaCl、10mMのKCL、pH8.3〜8.6)に溶解された。次に、溶液は攪拌され、室温で終夜にわたり反応された。次に、1mLの20mMのトリス緩衝液(pH7.8)が溶液に加えられ、色素の未反応NHS部分が2時間にわたり反応停止された。最後に、試料は透析により精製された。
【0116】
いくつかの場合ではDBD−ED、St633、Sq660、およびSt700が極性の影響を受けやすいフルオロフォアとして使用されたことに注目すべきである。他の事例では、DBD−EDまたはST425が供与体種として使用され、Sq660(a)が受容体として使用された。
【0117】
構造(2)
構造(2)を有するフルオロフォアは実施例1で上述したように準備された。
【0118】
構造(3)
構造(3)を有するフルオロフォアは、最初に、蛍光種を含めることを除いて実施例1での説明のように熱応答性NPを準備することにより、準備された。次に、蛍光種は、5mgの線状ポリマーよりもむしろ5mLのポリマーNP溶液が使用されたことを除いて、線状熱応答性ポリマーに対して上述した様式に対応する様式で、NPの表面に取り付けられた。構造(3)を有する1つの例示的なフルオロフォアとして、P(NIPAM−AAc200:1)NP−DBD−ED−Sq660aが、2つのアミン含有色素(DBD−EDおよびSq660a)をAAcモノマーにより提供されるカルボキシル部分を通してポリマーNP(P(NIPAM−AAc200:1)NP)の表面に共有結合させることにより、準備された。
【0119】
構造(4)
構造(4)を有するフルオロフォアは、最初に、熱応答性NPを実施例1で説明したように準備し、次に、構造(3)に対して上述したように蛍光種をNPの表面に抱合させることにより、準備された。構造(4)を有する1つの例示的なフルオロフォアとして、DBD−EDがP(NIPAM−AH86:14)NPの内部に封入され、Sq660は、NHS部分(色素に由来)とアミン部分(AHモノマーに由来)との抱合を介して、NPの表面に取り付けられた。係るフルオロフォアは、一般的な命名法DBD−ED@P(NIPAM−AH86:14)NP−Sq660を使用して示される。ここで、記号「@」に先行する種は、指定されたポリマーに封入され、ハイフン「−」に後続する種はNPの表面に抱合される。
【0121】
実施例4
超音波切り替え可能フルオロフォア
一般事項
本明細書で記載の方法のいくつかの実施形態における使用に対して好適な一連の超音波切り替え可能フルオロフォアは、以下のように準備された。フルオロフォアは、熱応答性ポリマーと、電磁スペクトルの赤色/NIR部分において放出ピークを有する蛍光物質と、を含んだ。特に、ADPDIシアノけい皮酸色素(ADPDICA)が使用された。ADPDICAの構造が
図13で示されている。いくつかのフルオロフォアは、上述の実施例3からの全般的構造(1)を有し、他のフルオロフォアは実施例3からの全般的構造(2)を有し、さらに他のフルオロフォアは実施例3からの全般的構造(3)を有した。
【0122】
物質
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、アクリルアミド(AAm)、過硫酸アンモニウム(APS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)、アクリル酸(AAc)、N−tert−ブチルアクリルアミド(TBAm)、および、アスコルビン酸ナトリウム、が、Sigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から購入された。全部の薬品は、さらに精製を実施することなく、入荷状態のまま使用した。
【0123】
合成
ADPDICAは、Bandiら、“Excitation−Wavelength−Dependent, Ultrafast Photoinduced Electron Transfer in Bisferrocene/BF
2−Chelated−Azadipyrromethene/Fullerene Tetrads,” Chem. Eur. J. 2013, 19, 7221−7230、および、Bandiら、“Self−Assembled via Metal−Ligand Coordination AzaBODIPY−Zinc Phthalocyanine and AzaBODIPY−Zinc Naphthalocyanine Conjugates: Synthesis, Structure, and Photoinduced Electron Transfer,” J. Phys. Chem. C 2013, 117, 5638−5649に記載のアザジピロメテン合成手順にしたがって、準備された。簡略には、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−2−プロペン−1−オンは、対応する4−ヒドロキシベンズアルデヒド、アセトフェノン、および水酸化カリウムを反応させることにより、準備された。この種は、後に、乾燥エタノール中でニトロメタンおよびジエチルアミンと反応させて、3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ニトロ−1−フェニルブタン−1−オンが得られた。次に、4−{2−[3−(4−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピノ−ルイルイミノ]−5−フェニル−2H−ピロール−3−yl}フェノールが、エタノール中で酢酸アンモニウムと反応させることにより、合成された。次に、BF
2キレート4−{2−[3−(4−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1H−ピロール−2イルイミノ]−5−フェニル−2H−ピロール−3−イル}フェノールが、この生成物を、乾燥CH
2Cl
2中でジイソプロピルエチルアミンおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテルで処理することにより、この生成物から形成された。次に、BF
2キレート種は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)の存在下で適切な安息香酸と反応された後、クロマトグラフィ精製が実施された。
【0124】
全般的構造(1)を有するフルオロフォアは、ADPDICAが蛍光種として使用される点を除き、上述の実施例3における構造(1)に対して記載された手順にしたがって準備された。加えて、精製が、3.5KDaのMWCO膜を使用する3日間にわたる透析により、実施された。熱応答性ポリマーは、P(NIPAM−AH200:1)、P(NIPAM−TBAm−AH185:15:1)、および、P(NIPAM−AAm−AH172:28:1)を含んだ。したがって、全般的構造(1)を有する以下のフルオロフォア、すなわち、(a)P(NIPAM−AH200:1)−ADPDICA、(b)P(NIPAM−TBAm−AH185:15:1)−ADPDICA、および、(c)P(NIPAM−AAm−AH172:28:1)−ADPDICA、が形成された。熱応答性ポリマーに対するADPDICAの抱合は、ADPDICAのカルボキシル基と、ポリマーのAH繰り返し単位により提供されるアミン基と、の間にアミド結合を形成することにより、実施された。
【0125】
全般的構造(2)を有するフルオロフォアは、上述の実施例3における構造(2)に対して記載された手順にしたがって準備された。特に、DBD−Sq660FRETシステムに対する手順に対応した。この様式で形成された1つの典型的なフルオロフォアは、ADPDICA@P(NIPAM−AH200:1)NPであった。ADPDICA@P(NIPAM−AH200:1)NPにおいて、ADPDICAはNP内部に封入された。
【0126】
全般的構造(3)を有するフルオロフォアは、上述の実施例3における構造(3)に関して記載した手順にしたがって準備された。特に、DBD−Sq660FRETシステムに対する手順に対応した。この様式で形成された1つの典型的なフルオロフォアは、P(NIPAM−AH200:1)NP−ADPDICAであった。P(NIPAM−AH200:1)NP−ADPDICAにおいて、ADPDICAはNPの表面に取り付けられた。構造(1)と同様に、熱応答性ポリマーに対するADPDICAの抱合は、ADPDICAのカルボキシル基と、ポリマーのAH繰り返し単位により提供されるアミン基と、の間にアミド結合を形成することにより、実施された。
【0127】
蛍光イメージング
上述のフルオロフォアの温度依存性の蛍光特性は、711nm/25nmバンドパス放出フィルタを使用して2つの異なる励起波長(λ
ex=609nmまたは655nm)において評価された。フルオロフォアの温度は、フルオロフォアを温度制御された水槽内に配置することにより、制御された。結果は表5および表6に示されている。表5では、λ
ex=609nmに対するデータが示されている。表6では、λ
ex=655nmに対するデータが示されている。表5および表6において「λ
ex」として標識されたデータは使用された放出フィルタを指し、「lp」はロングパスフィルタを指す。
【表5】
【表6】
【0128】
実施例5
マイクロバブルを使用するイメージング方法
本明細書で記載のいくつかの実施形態に係るイメージング方法は以下のように実施された。最初に、マイクロバブルを含む一連のフルオロフォアが準備された。1つの場合では、フルオロフォアは、マイクロバブルの外側表面に取り付けられた複数のFRET受容体種(または「フルオロフォア」種。「F」と略称される)および複数のFRET供与体種(または「クエンチャ」種。「Q」と略称される)を有するTargestar−Bマイクロバブルを含んだ。特に、AlexaFluor(AF)546(供与体またはF)およびAF647(受容体またはQ)がビオチン−ストレプトアビジン結合を介してマイクロバブル表面上に標識された。
【0129】
イメージングのために、励起光(532nm)の強度は15HMzに変調された。個々のF−Qマイクロバブルは、超音波的および光学的に透明なマイクロバブルを通って低速で流動した。2.25MHzの中心周波数における3サイクルの超音波バーストが、F−Qマイクロバブルを膨張させるために使用された。当初、AF546からの蛍光信号は、AF546からAF647へのFRETエネルギー伝達のために、弱い値であった。一方、AF546からの蛍光放出は、超音波バーストにより形成された負圧の間のマイクロバブル膨張のために、超音波的にオン状態に(約5のI
On/I
Off比、および約5のτ
On/τ
Off比で)切り替えられ得た。受容体(AF647)からの放出は、補完的な挙動を示した。
【0130】
良好に制限された超音波負圧力場が、F−QマイクロバブルベースのUSFイメージングのために、回折限界超音波ビームを使用して、形成され得た。超音波ビームは、2つの集光された5MHzトランスデューサにより提供された。各ビームの集光された負圧領域の横方向サイズのFWHMは約450μmであった。このサイズは、主にトランスデューサの回折および開口数(NA)により、判定された。焦点の軸方向サイズは約380μmであった。このサイズは、主に超音波のパルス長さならびに周波数およびトランスデューサにより判定された(軸方向解像度が、少なくとも1/2パルス幅×超音波速度であると仮定する)。2つの超音波パルスが垂直に伝播し共通の焦点ゾーンで交錯したとき、干渉された圧力場は、2つの個々の垂直な場を足し合わせることにより、得られた。このようにして、小さい負圧領域が形成された。この小さい領域は、当該領域を形成するために使用されたビームの焦点ゾーンよりも小さいサイズを有した。2つのビームにより形成された主要負圧領域(MNPR:main negative pressure region)のFWHMは、横方向において約165μmであった。この値は、個々の超音波パルスの横方向解像度および軸方向解像度の、それぞれ約1/2.7および1/2.3であった。同様の結果が干渉場の軸方向においても見られた。
【0131】
MNPRが空間的に制限されていたため、MNPRは、超音波パルスの伝搬のために、時間的にも制限されていた。制限されたMNPRの寿命はおよそ0.08〜24μsであった。この時間的期間は、ps光パルスを使用する隣接組織の照射がフルオロフォアをオン状態に励起させることを可能にするにあたり十分な長さであった。この時間的期間は、励起光パルスの幅よりもはるかに長いものであった。励起光パルスの幅は、光が組織内で散乱するために、深部組織において1〜3nsに広げられ得る。したがって必要に応じて、複数の光パルスが単一の時間窓において提供され得る。この時間窓内のみにおいて組織を光学的に照射する(すなわち、励起を時間的に制限する)ことにより、MNPRの前後に個々の超音波パルスにより予期せずオン状態へと切り替えられるフルオロフォアにより生成されるバックグラウンド蛍光ノイズを回避することが可能である。かくしてUSF蛍光信号は、光パルスおよび超音波パルスの両方が空間的および時間的に重なり合うときにのみ、検出され得る。
【0132】
加えて、本明細書で記載の空間解像度は、いくつかの実施形態では、本明細書で記載のマイクロバブルを振動させる圧力閾値を適切に選択することにより、さらなる改善が可能であることが見出された。例えば、負圧閾値が100kPaであり、それぞれの個々の超音波パルスにおける負ピーク圧力がこの閾値より小さいものと仮定すると、フルオロフォアは、2つの超音波パルスが重なり合いMNPRが形成されるまで、オン状態に切り替わらないであろう。上述の2つの超音波パルスがMNPRを形成するために使用されると、干渉場の最高負圧は、建設的干渉のために倍増(200kPa)される。圧力が100kPaを超える領域内のF−Qマイクロバブルのみがオン状態に切り替えられ得る。この領域の全サイズは約165μmであり、そのFWHM(空間解像度)は約83μmである。一方、さらに小さい活性化領域サイズと、さらに高解像度パワーが、切り替え閾値(例えば、100kPa)と個々の超音波ビームにより提供されるピーク負圧との間の関係をさらに調整することにより、得られ得る。負圧切り替え閾値が大きくなる(より負となる)と、F−Qマイクロバブルがオン状態に切り替えられ得る領域のサイズは小さくなり、したがって空間解像度は改善される。
図14では、F−Qマイクロバブルがオン状態に切り替えられる活性化領域のFWHMと、マイクロバブルの閾値との、間の関係が示されている。なお、切り替え閾値は個々の超音波ビームの最高負圧のパーセンテージとして表される。閾値が最高負圧の約70パーセントを超えると、解像度は、5MHzおよび10MHzの超音波周波数の両方に対して、ただちに改善される。例えば、閾値が最高負圧の90パーセントである場合、空間解像度は、10MHzおよび5MHzの超音波周波数に対して、それぞれ14μmおよび35μmに達する。空間解像度のこの値は、純粋な超音波の横方向および軸方向(450μmおよび380μm)と比較して、顕著に改善されている。
【0133】
一般に、空間解像度の改善には信号対雑音比(SNR)の劣化が伴い得る。この劣化は、活性化領域が小さくなることに起因するものである。所与の濃度のフルオロフォアにおいて、より少量のフルオロフォアが、より小さい体積の生物学的環境において見出され得る。結果として、より少量のフルオロフォアが、励起されるためにオン状態において利用可能であり得、より弱いUSF信号が期待され得る。単一のF−Qマイクロバブルが撮像ボクセル(例えば30μm引ける30μm×30ボクセル)に配置されている場合、極端な非ゼロの場合が生じ得る。通常、2μm直径のマイクロバブルはマイクロバブルの体積に基づいて5×10
4分子/μm
2で標識され得る。これは、濃度を計算するためにバブルの体積を使用して、249μMの体積濃度に等しい。体積が30μm×30μm×30μmボクセルであると取られるならば、この標識量は、36nMの体積濃度に等しい。これらの濃度は、組織イメージングに対する大部分の光学技術の検出限界(fM−nM)よりはるかに上である。したがって、高感度光学検出システム(例えば時間ゲーティングおよび/または光子計数システムなど)は、活性化領域が小さいため、SNRにおけるあらゆる損失を実質的に補償し得、組織内の単一のF−Qマイクロバブルを検出することが可能である。
【0134】
実施例6
超音波切り替え可能フルオロフォア
本明細書で記載のいくつかの実施形態に係る方法における使用に対して好適な追加的な超音波切り替え可能フルオロフォアは、以下を含む。
【0135】
F−Q−HJマイクロバブル
マイクロバブルの表面上のドナ−受容体対間でFRETを実装するために、供与体および受容体は、ホリデイジャンクション(HJ)を介してマイクロバプル上に標識され得る。
図15では、係るマイクロバブルが概略的に示されている。2つの交差する線はHJの2本のアームを表す。HJは四差路の形の4本のDNA二重らせんからなる。2つの四角形は、(ストレプトアビジン−ビオチン結合を、または、HJの核酸と供与体および受容体に取り付けられたNHSエステルとの間の反応を、介して)2本のアームの2つの端部において標識された1対の供与体種および受容体種を示す。水平方向に向けられた線はマイクロバブルの外殻を示し、その外殻上に、HJの他方の2つの端部が(ビオチン−ストレプトアビジン結合または他の結合方式を介して)取り付けられている。バブルが膨張(収縮)すると、距離R
sは増加(減少)する。その結果、供与体と受容体との間の距離(R
DA)が増加(減少)し、(l
1/l
2)は大きくなり、それに付随して供与体がオン状態(オフ状態)に切り替わる。2本のアーム間の初期角度(θ)は制御可能である。マイクロバブルの表面積か比較的大きいため、多数のF−Q−HJが、顕著に干渉することなく、単一のマイクロバブル上に標識され得る。係る設計は、USF遷移帯を狭め、超音波切り替え効率およびSNRを改善し得る。
【0136】
F−Q−ヘアピン−NPマイクロバブル
他の標識ストラテジーは、供与体−受容体対をDNAヘアピン複合体上に取り付けることである(
図16および
図17参照)。ヘアピン複合体の一方の端部は、ビオチン−ストレプトアビジン結合を介して、マイクロバブル表面に取り付けられ、他方の端部は、ジゴキシゲニン−抗ジゴキシゲニン結合を介して、はるかに小さい金ナノ粒子(Au−NP、直径は数十nm)に取り付けられる。F−Q(またはD−A)標識されたDNAヘアピン複合体は3つの主要な成分、すなわち、(1)ヘアピン分子(
図16における点線領域)、(2)供与体および受容体に取り付けられたオリゴヌクレオチド、および、(3)受容体およびビオチンに取り付けられたオリゴヌクレオチド、からなる。理論に拘束されることを意図するものではないが、供与体をオン状態に切り替えるための原理は、以下のように説明され得る。超音波圧力がマイクロバブル壁部を加速させ、それにより、ヘアピン分子を伸長させることによりAuナノ粒子を加速させる。加速されたAu−NPは、ヘアピン分子上に反対の力を印加する。この力が十分に大きい場合、ヘアピンループが開かれ、それにより供与体−受容体距離が増大し、供与体がオン状態に切り替わる。約18ピコニュートン(pN)の力が、ヘアピンを開放し、供与体放出をオン状態にするために、使用され得る。力が6PNより小さくなると、ヘアピンは閉じられ、供与体はオフ状態に切り替わる。2μmの直径を有するマイクロバブルに印加された150kPaの超音波圧力波を有し、且つ20nmの直径を有するAu−NPに取り付けられた超音波パルスが、ヘアピン分子を伸長させるために約20pNの力を生成し得ることが推定される。したがって超音波的に蛍光をオン状態に切り替えることが可能である。
【0137】
F−Q−ヘアピンマイクロバブル
上記のF−Q−HJマイクロバブルのホリデイジャンクションを上述のDNAヘアピン分子で置き換えることも可能である。2つの端部は2つの相補的なオリゴヌクレオチドにアニールされ得る。一方のオリゴヌクレオチドが、供与体(例えばAF610など)およびビオチンで標識される。同様に、他方のオリゴヌクレオチドが、受容体(例えばAF647など)およびビオチンに取り付けられる。これらのビオチン端部は、ストレプトアビジン標識マイクロバブルに取り付けられ得る。DNA分子の長さが、その持続長(通常は約50nm)よりも短い場合、DNA分子は弾性棒のような挙動を示す。したがって2本のアームは自然に伸長され、マイクロバブル表面に取り付けられる。超音波ビームに対する曝露により負圧サイクルの間にマイクロバブルが伸長されたとき、力がヘアピンアームの両端に印加され、それによりヘアピンが開かれ、上述のように供与体がオン状態に切り替えられる。
【0138】
F−Q−DNA−NPマイクロバブル
蛍光標識された二重鎖(ds)DNA分子を介してマイクロバブルに比較的小さいナノ粒子(数十nm)を取り付けることも可能である。ds−DNAは、ビオチン−ストレプトアビジン結合を介してマイクロバブル表面に取り付けられる。ds−DNAの他方端は、チオール結合を介して、金ナノ粒子(AuNP)に取り付けられる。通常、ds−DNAは湾曲し、ds−DNAとAuNPとの間の静電気的引力、疎水性相互作用、およびイオン−双極子分散相互作用により、AuNPの表面に平坦に吸収される。AuNPとDNA分子との間の引力により、AuNPは、ds−DNAの一方の端部上に標識された蛍光種に対して近接する。AuNPの表面は、比較的長い距離(約3〜20nm)内の蛍光種をクエンチし得る。超音波圧力波が印加されてマイクロバブルが圧縮されると、加速されたマイクロバブル壁部は、ds−DNA分子を伸長させることにより、AuNPを加速させるであろう。マイクロバブル壁部の加速(超音波圧力強度により制御される)が十分に大きいためDNAとAuNPとの間の静電気的引力およびその他の相互作用により、力が生成された場合、AuNPは、(AuNPの質量のために)同一の加速を経験することができず、その結果、蛍光種がAuNP表面から分離して、クエンチ効果が失われることとなる。
【0139】
QD−熱応答性ポリマー−受容体フルオロフォア
他のFRETベースのフルオロフォアは、CdSe量子ドットなどの半導体量子ドットを供与体として、および、小分子色素を受容体として、使用する。量子ドットは、熱応答性ポリマーから形成された1つまたは複数のリンカーを使用して、1つまたは複数の受容体色素に取り付けられる。例えば、赤色放出量子ドット(Qdot(登録商標)655、Invitrogen社)が供与体として選択され、NIR色素(AlexaFluor750、Invitrogen社)が受容体として選択される。複数の受容体(AF750)が、上述の連結方式を使用して熱応答性ポリマーを介して、単一の供与体(Qdot(登録商標)655)上に取り付けられる。QD供与体は非常に長く寿命(およそ30ns)を有し、受容体AF750は非常に短い寿命(およそ0.7ns)を有する。T<LCSTである場合、熱応答性ポリマーは拡張されたコイル状または鎖状の構造を示し、この構造は比較的長い。したがって供与体と受容体との間の距離は、FRETクエンチ範囲(>40nm)よりも全般に短い。HIFUトランスデューサが、上述のようにLCSTよりも高い温度に熱応答性ポリマーを加熱すると、ポリマーは球状構造に遷移し、それにより、供与体−受容体距離が小さく(<20nm)なる。結果として、FRETエネルギー移動が生じる。したがって供与体(Qdot(登録商標)655)の励起エネルギーの一部が受容体(AF750)に移動され、供与体(AF750)がNIR波長において光子を放出する。これらのFRET関連の光子は、供与体寿命および受容体寿命のうちのより長い寿命に近い寿命(この場合、およそ30ns)を有し得る。したがって放出されたNIR光子は、本明細書で記載の時間ゲーティング検出技術を使用して、高いSNRで容易に検出することが可能である。ロングパス光学フィルタは、QD放出の検出を排除するために使用され得る。
【0140】
実施例7
超音波切り替え可能フルオロフォア
一般事項
本明細書で記載の方法のいくつかの実施形態における使用に対して好適な一連の超音波切り替え可能フルオロフォアは、以下のように準備された。亜鉛フタロシアニン(ZnPC)誘導体が、本明細書で記載のいくつかの実施形態に係るイメージング方法に対する造影剤として、PluronicF−98ミセルまたはP(NIPA−TBAm)ナノ粒子(NP)に封入された。
【0141】
物質
亜鉛フタロシアニン(ZnPC)、亜鉛2,9,16,23−テトラ−tert−ブチル−29H,31H−フタロシアニン(ZnPCTTB)、亜鉛1,4,8,11,15,18,22,25−オクタブトキシ−29H,31H−フタロシアニン(ZnPCOB)、亜鉛1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(ZnPCHF)、亜鉛2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(オクチルオキシ)−29H,31H−フタロシアニン(ZnPCOO)、および、亜鉛2,11,20,29−テトラ−tert−ブチル−2,3−ナフタロシアニン(ZnTTBNPC)が、Sigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から購入された。これらのZnPC誘導体の化学構造が
図18Aおよび
図18Bに図示されている。テトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)(Sigma−Aldrich)、PluronicF−98(BASF、米国ニュージャージー州フォーハムパーク)、NIPAM、TBAm、BIS、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(ACA)、および、SDSも、使用された。
【0142】
ZnPC封入されたPluronicF−98ミセルの合成
ZnPCが30分間にわたり超音波処理下でテトラブチルアンモニウムヨージドを添加してクロロホルム中に溶解された。一方、PluronicF−98が50mg/mlの濃度の脱イオン化(DI)水(pH8.5)に溶解された。ZnPCクロロホルム溶液が、激しく攪拌(500rpm)しながら、PluronicF−98水溶液に一滴ずつ加えられた。結果的に生成したエマルジョンは、40Wで4分間にわたり超音波プローブ(Qsonica)を用いて(各1分間の実行の後に30秒のパルス)さらに分散された。クロロホルムはドラフト内で一晩にわたり蒸発された。透明な溶液が得られ、その後、その溶液は0.45μm膜を使用して濾過された。
【0143】
ZnPC封入されたP(NIPAM−TBAm)NPの合成
1.3644gのNIPAM、0.1247gのTBAm、0.0131gのBIS、0.070gのACA、および、0.0219gのSDSの混合物が、250mLシュレンク管内で50mLのDI水(pH10.5)に溶解され、引き続き10分間にわたり窒素パージが実施された。ZnPC DMSO溶液(2mL)がシュレンク管に加えられ、次にシュレンク管は真空下に置かれ、その後、窒素でパージされた。ポンプ/パージ手順は、シュレンク管内に窒素雰囲気を提供するために、3回反復された。この反応は70℃で一晩にわたり実行された。次にこの反応は、バルブを弛めて環境を空気に曝露させることにより、停止された。試料は10−kDa分子量のカットオフ膜を使用して3日間にわたりDI水に対して透析され、それにより過剰な界面活性剤および未反応物質が除去された。
【0144】
ZnPC封入されたPluronicF−98ミセルの蛍光応答
上記のフルオロフォアに関する温度依存性の蛍光特性が、λ
ex=609nmの励起波長において、711nm/25nmのバンドパス放出フィルタを使用して(より長い放出ピーク波長を有するZnTTBPCについては、例外として、765nm/62nmのバンドパスフィルタを使用した)、評価された。その結果を表7および
図19A〜
図19Fに示す。
【表7】
【0145】
ZnPC封入されたP(NIPAM−TBAm)NPの蛍光応答
ZnPC封入されたP(NIPAM−TBAm)NPの蛍光強度を
図20Aおよび
図20Bに示す。I
On/I
Off比は、ZnPCおよびP(NIPAM−TBAm)含有NPに対して、およそ1.8であった。オフ状態(T<LCST)にあるNP内部に封入された色素(A)の蛍光寿命は、およそ3nsであった(
図20A)。
【0146】
実施例8
超音波切り替え可能フルオロフォア
一般事項
本明細書で記載のいくつかの実施形態に係る一連の超音波切り替え可能フルオロフォアは、以下のように準備された。特に、二種類のNIR色素、すなわちアザBODIPY誘導体および亜鉛フタロシアニン(ZnPC)誘導体が、フルオロフォアを準備するために使用された。PluronicF−127、PluronicF−98、およびPEGとのこれらのコポリマーの感熱性ポリマーが、異なる切り替え閾値を有する色素に対するナノカプセルを合成するために使用された。ナノカプセルの直径は、透過電子顕微鏡法(TEM)により測定に基づいて、約20nm〜約70nmの範囲であった。上記の2つの色素種類から、ADPDICAおよびZnPC(TTB)がフルオロフォアを形成するために使用された。これらのフルオロフォアの切り替え特性を表8にまとめた。
【0147】
物質
ADPDICAは、上述の実施例4と同様にBandiらに記載の技術にしたがって合成された。ADPDICAの化学構造を
図13で示す。ZnPC(TTB)はSigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から購入した。ZnPC(TTB)の化学構造を
図18Aで示す。PluronicF−127およびF−98はBASF(米国、ニュージャージー州、フォーハムパーク)から購入した。メトキシルPEGカルボン酸生成物(MW=20,000、30,000、および40,000g/mol)はNanocs社(米国ニューヨーク州ニューヨーク)から購入した。全部の薬品は、さらに精製を実施することなく、直接的に使用した。TBAIも使用した。
【0148】
合成
PluronicF−127またはF−98(所望の準備に応じて)がDI水(pH8)に溶解された。色素/TBAI(モル比=1/6)が、クロロホルム中に溶解され、30分間にわたり超音波処理状態に保たれた。色素/TBAIクロロホルム溶液は、溶液を攪拌しつつ、Pluronic水溶液中に一滴ずつ加えられた。溶液は、20Wで動作する超音波発生装置(米国コネチカット州ニュートン、Qsonica有限責任会社)を使用して4分間にわたり、さらに分散された。結果的に生成された溶液は、クロロホルムが完全に蒸発するまで、ドラフト下で攪拌し続けた。結果的に生成した透明な溶液は、1.2μmの膜(米国ペンシルベニア州ピッツバーグ、FisherScientific)およびAmiconUltra遠心濾過器(10,000分子量カットオフ、米国マサチューセッツ州ビルリカ、Millipore)を通して濾過された。
【0149】
フルオロフォアの特徴評価
フルオロフォアの光学切り替え特性は、実施例1および実施例2で上述したシステムにしたがって測定された。測定結果を表8に示す。
【表8】
【0150】
実施例9
USFイメージングシステム
本明細書で記載のイメージング方法のいくつかの実施形態における使用に対して好適なUSFイメージングシステムが提供される。特に、以下の3つのUSFイメージングシステム、すなわち、(1)持続波(CW)モードシステム、(2)周波数領域(FD)モードシステム、および、(3)時間領域(TD)モードシステムが、テストされた。これらのシステムに関するシステム構成および時間系列を
図21A〜
図21Gに示す。
【0151】
CWモードシステムに関しては、イメージング対象の環境(例えば生体組織など)は、短い時間的期間(ミリ秒のオーダー)にわたり連続的にHIFUに曝露される。励起レーザが、HIFU曝露の前に、またはHIFU曝露の間に、アクティブ化または電源投入されると、USF信号が生成される。次に、USF信号の蛍光強度が各場所において計算される(
図21Aおよび
図21B参照)。
【0152】
FDモードシステムに関しては、HIFU曝露は短期間にわたり事前決定された周波数で変調される。さらにUSF信号は、変調されたHIFU周波数と同一の周波数を有する。ロックイン増幅器の使用により、変調されたUSF信号は、非常に高い感度で検出され得る(
図21C〜
図21E)。加えて、レーザ照射も、超音波信号がCWモードで動作する一方で、比較的高い周波数に(例えばkHzからMHzへと)変調され得る(
図21C〜
図21E)。このようにしてロックイン増幅器は、超音波に起因する蛍光信号変化を検出するために使用され得る。さらにロックイン増幅器を使用することにより、システムはUSF信号に対して高感度を有することが可能となる。
【0153】
TDモードシステムに関しては、HIFU曝露は短い時間的期間(ミリ秒のオーダー)にわたり継続して行われ、レーザがピコ秒パルスを照射して、HIFU加熱が終了した後、USF造影剤が励起される。このようにして、放出されたUSF信号は、オン状態に切り替えられたフルオロフォアの蛍光寿命が長いため、数十ナノ秒のオーダーの幅を有するパルスとなる(
図21Fおよび
図21G)。それとは対照的に、バックグラウンドノイズは、蛍光バックグラウンド種の蛍光寿命が短いため、減衰がはるかに迅速となる。したがって、時間ゲーティング検出技術を使用することにより、USF信号は、信号の末尾部分のみを取得することによりバックグラウンドノイズから時間的に分離することが可能である。したがって感度および信号対雑音比の両方が、特定の他の方法/システムと比較して、顕著に改善される。
【0154】
加えて、加熱期間における顕著な熱拡散を回避するために、HIFU曝露時間は、熱拡散時定数よりもはるかに短い時間である数ミリ秒に制限され得る。
【0155】
実施例10
改善されたSNRを提供するイメージング方法
本明細書で記載のいくつかの実施形態に係るイメージング方法は以下のように実施された。最初に、一連の超音波切り替え可能フルオロフォアは、上述の実施例7にしたがって準備された。フルオロフォアは、(1)PluronicF127ポリマーから形成されたナノカプセルまたはミセルに封入されたADPDICAを含むフルオロフォア、および、(2)PNIPAMナノ粒子に封入されたICGを含むフルオロフォアを含んだ。これらのフルオロフォアは、上述の実施例7および実施例8での記載と同様に準備された。2つの異なるフルオロフォアのピーク放出波長は、それぞれおよそ710nmおよび810nmであった。加えて、これらのフルオロフォアのUSF信号の動的な挙動は互いに異なり、
図22で示されるノイズからも異なるものであった。特に
図22Aでは、ADPDICA含有フルオロフォアのUSF信号の時間的減衰プロファイルが示されている。
図22Bでは、ADPDICA含有フルオロフォアを使用するイメージング実験に対するバックグラウンド信号またはノイズ信号の時間的減衰プロファイルが示されている。同様に
図22Eでは、ICG含有フルオロフォアのUSF信号の時間的減衰プロファイルが示されている。
図22Fでは、ICG含有フルオロフォアを使用するイメージング実験に対するバックグラウンド信号またはノイズ信号の時間的減衰プロファイルが示されている。2つのフルオロフォアの時間的減衰プロファイルが異なるのは、理論に拘束されることを意図するものではないが、(1)蛍光色素の異なる環境的感度、(2)フルオロフォアの異なる構造(例えば、ミセル対ナノ粒子)、および、(3)フルオロフォアを形成するために使用された異なる感熱性ポリマー、のうちの1つまたは複数に起因するものと考えられる。異なる超音波切り替え可能フルオロフォアの異なる放出プロファイルは、多重USFイメージングを可能にし得る。
【0156】
特に、
図22Aおよび
図22Eで図示するフルオロフォアの放出プロファイルが、所与の実験条件(例えば上述の条件など)に対して一意的且つ一貫した形状を有することに注意すべきである。器具および実験条件が固定されると、所与のフルオロフォアに対するUSF動的曲線の形状は変化せず、信号強度に対して独立していることにも、さらに注意すべきである。各信号の強度は、固定された時間点におけるピーク値まで増加し、次に、減衰または低減する。それとは対照的に、バックグラウンド信号(
図22Bおよび
図22F)は不規則的に変動し、他のノイズ信号に対していかなる相関関係も示さない。さらに重要であるが、バックグラウンド信号は、超音波蛍光信号が示すのと同じ時間的減衰プロファイルを示さない。したがってバックグラウンド信号は、超音波蛍光信号に対する強い数学的な相関関係を示さない。理論に拘束されることを意図するものではないが、異なる時間的減衰プロファイルは、任意のUSF信号が、環境内の特定的な場所において検出されたフォトルミネセンス信号の合計の相関分析を実施するための基準信号として選択されることを可能にすると考えられる。相関関係が実施されると、相関係数(CrC)の計算が可能となる。係る分析が実施されると、USFに関連する信号が大きいCrCを有する一方でバックグラウンド信号が小さいCrCを有することが見出された。したがって上述のように、適切にCrC閾値を選択することにより、CrCはUSF信号とバックグラウンドノイズとを区別するために使用され得る。
【0157】
単色USFイメージングにおいて、小さいシリコーンチューブ(内径:0.31mm、外径:0.64mm)が、上述のフルオロフォアの水溶液で充填され、1片のブタの筋肉組織に埋め込まれた。この構造は、USFイメージング実験に対するターゲットとして血管をシミュレートすることを意図するものであった。組織の厚さはおよそ12mmであった。チューブ中心から組織の上部表面までの距離はおよそ6mmであった。集光された超音波ビームが、さらに上述したように、チューブ内のフルオロフォアをオフ状態からオン状態へと外的および局所的に切り替えるために使用された。放出された蛍光光子は、冷却された低ノイズPMTにより収集された。超音波ビームを用いて試料に対してラスタ走査を実施した後、USF画像が上述のようにして生成された。特に、試料内の複数の場所のそれぞれに対して、検出されたフォトルミネセンス信号の合計と基準信号とを比較する相関分析が実施された。この場合では、典型的なUSF信号が、基準信号として機能するために、USF画像から選択された。相関係数は、上記の式(1)にしたがって計算された。バックグラウンド信号が
図22に示される基準信号の一意的な動的パターンに従わないため、バックグラウンド信号に対する相関係数は、ゼロであるか、ゼロに近いか、または非常に小さい(例えば<0.3)。このように、ノイズは、バックグラウンド信号を含む検出された信号に対して、環境内の関連する場所に対するバックグラウンド信号に関連付けられた相関係数を乗算することにより、顕著に抑えることができた。
【0158】
このようにして、USF画像のSNRは劇的に増加した。相関処理前後のUSF画像が
図22および
図23に示されている。特に、
図22C/
図23Cおよび
図22D/
図23Dではそれぞれ、相関/乗算処理の前後のADPDICAベースのフルオロフォアの空間的蛍光放出プロファイルが示されている。これら2つのプロファイルのSNRは、それぞれ88および300と計算された。同様に、相関分析の前後のICGベースのフルオロフォアの空間的蛍光放出プロファイルがそれぞれ、
図22G/
図23Aおよび
図22H/
図23Bに示されている。ICGベースのフルオロフォアに対して、SNRはそれぞれ、相関の前後で31および345であった。
【0159】
実施例11
多重化イメージング方法
本明細書で記載の一実施形態に係る多重化イメージング方法は、以下のように実施された。最初に、ADPDICA含有超音波切り替え可能フルオロフォアおよびICG含有超音波切り替え可能フルオロフォアが、実施例10で上述したように準備された。次に、前述のフルオロフォアが、実施例2で上述したのと同様のイメージングシステムを使用して、撮像された。励起光源は、671nmの励起波長を有するダイオードレーザ(MLL−FN−671)であった。1つの673/11バンドパスフィルタ(中心波長:673nm、帯域幅:11nm)が励起フィルタとして適用され、3つのロングパスフィルタ(エッジ波長:715nm)および2つのロングパス吸収フィルタ(エッジ波長:690nm)が放出フィルタとして使用された。
【0160】
2色USFイメージングに対して、小さいチューブ(内径:0.31mm、外径:0.64mm)が散乱シリコーンファントム内に埋め込まれた。散乱物質はTiO
2であった。ファントムの厚さはおよそ12mmであった。チューブは、ADPDICAベースのフルオロフォアの水溶液350μLと、ICGベースのフルオロフォアの水溶液250μLと、の混合物で充填された。2つの水溶液は、水溶液体積あたり同一重量のフルオロフォアを含んだ。集光された超音波ビームが、チューブ内のフルオロフォアをオフ状態からオン状態へと外的および局所的に切り替えるために使用された。放出された光子は、冷却された低ノイズPMTにより収集された。超音波ビームを用いてラスタ走査を実施した後、USF画像が上述のようにして得られた。
【0161】
特に、検出されたフォトルミネセンス信号は、ADPDICAベースのフルオロフォアの正規化された超音波蛍光信号に対応する第1基底ベクトルと、ICGベースのフルオロフォアの正規化された超音波信号に対応する第2基底ベクトルと、に直交分解された。したがって、環境内の特定の場所に対して、検出されたフォトルミネセンス信号の合計は、次の式(2)にしたがって表現され得る。
【数2】
式中、「Mixture」はフォトルミネセンス信号(ベクトルとして表現される)の合計を表し、「ADPDICA」はADPDICAベースのフルオロフォアに対応する基底ベクトルを表し、「ICG」はICGベースのフルオロフォアに対応する基底ベクトルを表し、aおよびbは基底ベクトルに対する係数である。
図24では、1つの特定的場所に対する式(2)に対応する信号が示されている。特に、
図24Aでは、ADPDICAベースのフルオロフォアの成分信号が示され、
図24Bでは、ICGベースのフルオロフォアの成分信号が示され、
図24Cでは、検出されたフォトルミネセンス信号の合計が示されている。MATLABにおける曲線当てはめアルゴリズムを使用して、試料内の1つの場所に対して95%の信頼度内で、基底ベクトル係数aは3.9と判定され、基底ベクトル係数bは2.6と判定された。aとbとの比(3.9/2.6=1.5)は混合物の組成(350/250=1.4)に近い値であった。
【0162】
実施例12
複数の超音波トランスデューサを使用するイメージング方法
本明細書で記載の一実施形態に係る複数の超音波トランスデューサを使用するイメージング方法は以下のように実施された。複数の超音波トランスデューサを使用することに加えて、以下の方法は、USFイメージングおよび超音波(US:Ultrasound)イメージングの組み合わせを使用するデュアルモダリティイメージングを含んだ。
【0163】
この方法は、
図25で図示するUSFイメージングシステムを使用して実施された。
図25で図示するブロック図では、MTは、0.1Hz周波数を有するマスタートリガ(T−1)を送信するためのパルス遅延発生器である。FG−1は、デュアルHIFUトランスデューサモジュール(デュアル9MHz−HIFU)に対するゲーティング(単一サイクル、0.5マイクロ秒遅延を有するパルス信号)と、超音波トランスデューサ(UST)モジュールに対する複合トリガリング(1KHz、300サイクル、パルス信号)と、を実施するためのファンクションジェネレータである。FG−2は、デュアルHIFUの各HIFU(HIFU−1およびHIFU−2)を、それぞれ9MHz正弦波信号を使用するパワー増幅器(RFA−1およびRFA−2)により駆動するためのファンクションジェネレータである。パルスT/Rは、USTを駆動するためのパルス送受信器である。FG−3は、励起レーザ光源(レーザ)を1KHz周波数で変調するためのファンクションジェネレータである。Wは、デュアルHIFU−USTモジュールを浸漬し、試料(S)を部分的に浸漬するための水タンクである。STは内径(ID)が0.31mmおよび外径(OD)が0.64mmのシリコーンチューブである。3D−TSは3次元(3D)平行移動台である。TS−MCUは3D平行移動台モータ駆動制御ユニットである。CT−1は、励起レーザ光源を光バンドル(OB−1)に集光させるためのコリメーションチューブである。CT−2は、試料(S)内からの光バンドル(OB−2)から収集された蛍光信号を案内するための最適化されたコリメーションチューブである。PMTは、光学的蛍光信号を検出するための光電子増倍管である。Pre−ampはPMTから検出された光信号をフィルタ処理するための前置増幅器である。LIAは、検出された光信号から1KHz周波数信号を検出するためのロックイン増幅器である。NI−DAQは、光信号を記録するためのNationalInstrumentデータ取得モジュールである。デジタイザは、超音波信号を記録するためのNationalInstrumentデータ取得モジュールである。CB−1は超音波信号データを伝達するための通信バスである。CB−2はTS−MCUを制御するためのシリアル通信バスである。CB−3は光信号データを伝達するための通信バスである。T−2は1KHz周波数を有するパルス信号であり、LIAに対する基準信号として機能する。T−3は3D−TSの動きをトリガするための単一サイクルパルス信号である。
【0164】
より一般的には、
図25で図示するシステムは、4つのモジュールに区画化され得る。これらのモジュールは、(1)ソースモジュール、(2)試料モデルモジュール、(3)検出モジュール、(4)平行移動モジュール、を含む。これらのモジュールの各モジュールについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0165】
ソースモジュール
ソースモジュールは、3つのサブモジュール、すなわち、(1)超音波モジュール、(2)デュアル高密度焦点式超音波モジュール、および(3)励起レーザモジュールにさらに区画化され得る。これらのサブモジュールの各サブモジュールについて、以下でさらに説明する。
【0166】
超音波モジュール
超音波モジュールは、走査の間における各場所におけるAラインを取得するために使用される。なお走査は、任意の所望のライン、平面、または3D平面に沿って実施され得、平行移動モジュールを使用して規制される。超音波の高解像度イメージングを達成するために、10MHz(10MHz、V315、米国マサチューセッツ州ウォルサム、オリンパス)周波数の集光超音波トランスデューサ(UST)が使用された。ここでは、単一要素超音波トランスデューサが設計の簡略化のために選択された。一方、所望により、単一要素超音波トランスデューサは、超音波トランスデューサのアレイで置き換えることも可能である。ここでは電子的集光が、多段深度セクタイメージングを実施するため、および、より微細な解像度を達成するために、実施され得る。USTの焦点距離はおよそ34mm(約1.34インチ)であり、直径は19mm(約0.75インチ)である。パルスエコー法が超音波イメージングのために用いられ、したがって、パルス生成器/受信器(米国マサチューセッツ州ウォルサム、OlympusNDT、5077RP)により駆動される。なおこのパルス生成器/受信器は、2チャンネル型ファンクションジェネレータ(FG−1、米国テキサス州、Tektronix、AFG3252)の第1チャンネルによりトリガされる。各走査場所におけるFG−1のチャンネル1からの各バーストにおける複数のパルスサイクルにより達成される複合トリガは、平均処理(さらなる詳細については、この実施例のデータ処理セクションにおいて討論する)により、ノイズ低減ために用いられる。
【0167】
デュアル高密度焦点式超音波モジュール
デュアル高強度集光超音波モジュールに対して、2チャンネル型ファンクションジェネレータ(FG−1)の第2チャンネルは、第2ファンクションジェネレータ(FG−2)に対するゲーティングトリガとして使用される。なおFG−2は、カスタム注文のデュアル高密度焦点式超音波(デュアルHIFU)トランスデューサ(HIFU、SU−109、米国ワシントン州ボセル、SonicConceptsLtd)を駆動する。デュアルHIFUトランスデューサは、2つの9MHz周波数HIFUトランスデューサ(直径=23mm、焦点距離=35mm)がその基部に対しておよそ45度で、互いに対して90度の角度で、互いに対して対向し、およそ5cm離間された状態で取り付けられるよう、設計される。デュアルHIFU間の分離エリアは、完全中空の円形間隙を有するよう設計される。この間隙は、31.75mmの直径を有し、その直径が2cmである超音波トランスデューサを配列するための十分な空間を有し、それにより、両側におよそ0.5cmの自由な動きが可能となるよう、カスタマイズされる。デュアルHIFUの予備試験の間、HIFUの性能仕様がわずかに変動することが観察された。したがってそれぞれのHIFU焦点において略同一のピーク圧力を達成するために、2つのHIFUは異なる電圧で駆動される。デュアルHIFUは、2チャンネル型ファンクションジェネレータ(FG−2、米国イリノイ州シカゴ、Aglilent33500B)からの、それぞれの振幅(ピーク間電圧、Vpp)の正弦波信号を使用して駆動される。2つチャンネルの各チャンネルは、個々がデュアルHIFU構成にあるそれぞれの9MHzのHIFUトランスデューサを駆動するための、それぞれの専用のパワー増幅器に接続される。かくして、増幅された駆動パワーは、それぞれの焦点において、より高いピーク圧力を生成する。このようにして、デュアルHIFUーUSTユニットは、上向き(光学テーブルに対して垂直)になるようグループ化および配置される。ここで、USTは、所望の試料または組織に対向するカスタム設計のデュアルHIFUの中央に配置される。グループ化されたユニットが、所望のライン、平面、または、カスタムプログラムされたMATLAB GUIを使用する3次元的走査のための3次元平行移動台システム(3D−TS、米国ニューヨーク州、Velmex、VXMモータ駆動Xスライド組立体)上に取り付けられる。FG−1の第2チャンネルからのゲーティング信号の期間はHIFU曝露の期間を制御する。HIFU曝露の期間は、FG−2からの所望の駆動電圧と組み合わされて、研究対象の試料または組織内における超音波に誘導された温度変動を制御するための間接的方法を提供する。
【0168】
パルス遅延発生器は、0.1Hz周波数を有するマスタートリガとして使用される。このマスタートリガは、ファンクションジェネレータ(FG−1)およびデータ取得カード(NI−DAQカード、米国テキサス州ダラス、NationalInstruments、PCIE−6363)をトリガし、それにより、走査タイミングおよび取得タイミングとともに、デュアルHIFUおよびUSTの両方の動作が制御される。ファンクションジェネレータFG−1の第1チャンネルに対する直接的トリガと比較して0.5秒の遅延が、FG−1の第2チャンネルに対して設定される。その結果、超音波イメージングを完了させるための十分な時間が提供される。これにより、これらの周波数が互いに近いために9MHzのHIFU信号が10MHzのUSTによりピックアップされることが確実に回避される。
【0169】
励起レーザモジュール
励起レーザモジュールは第3サブモジュールである。第3サブモジュールはフルオロフォア励起源として持続波レーザを含む。励起源は、光バンドル(OB−1およびOB−2、米国ニュージャージー州バリントン、EdmundOptics、モデル#39366)により、研究対象の所望の試料または組織を照射するために使用される。これは、研究のために使用される色素/対照液に応じて、808nm(中国JL、DragonLasers、MGL−II−808−2W)または671nm(米国ユタ州ミッドベール、Optoengine有限責任会社、MLL−FN−671−500mW)のいずれかを使用することにより、達成される。808nmレーザ光源の場合、このレーザのビームプロファイルは長方形である。係るビームプロファイルに対して、平凸NIRレンズ(L1およびL2、米国ニュージャージー州ニュートン、Thorlabs、モデル#AC254−035−B)を有する簡単な構成が、長方形ビームを光バンドル(OB−1、モデル#39366)の一方の端部上に集光させるために用いられる。他のレーザ(671nmのCWレーザ)に関しては、ビームプロファイルの断面が光バンドルの開放端部に対して同等であるため、レンズは不要である。両方の構成において、励起波長範囲を制限するために、フィルタがレーザヘッドの前方に配置される。なお、785/62nm(米国ニューヨーク州ロチェスター、Semrock、FF01−785/62−25)および671/11nm(米国ニューヨーク州ロチェスター、Semrock、FF01−673/11−25)が、それぞれ用いられる。光バンドルの他方の端部は、放出されるレーザが、
図25で図示するように超音波ユニットが集光される水中の組織の同一側面を照射するよう、配置される。発散レーザ照射を出力するともに、光バンドルを、試料から許容可能な距離に、光学テーブルに対して約45度の角度で、配置することにより、研究対象の試料/組織の所望以上の領域に対する均質な照射が確実に行われることとなる。周波数依存の蛍光イメージングがこの研究に対して選択されたため、レーザはファンクションジェネレータ(FG−3、米国イリノイ州シカゴ、Agilent、33220A)を使用して1KHz周波数で駆動される。FG−3ファンクションジェネレータのトリガ出力は、1KHzの光信号のみが観察および記録され、それにより、所望の光信号に対するシステムの感度が向上するよう、ロックイン増幅器に対する基準入力として使用される。
【0170】
試料モジュール
試料モジュールは、試料または組織のプレパラート、および色素/造影剤のプレパラートからなる。デュアルHIFU−USモジュールに関する試料プレパラートが
図26で示されており、
図26は、超音波および試料のモジュール構成を強調する、実験ブロック図の最小化バージョンを示す。Input−1:デュアルHIFUトランスデューサ(9MHzのHIFU、デュアル:HIFU−1およびHIFU−2)、Input−2:超音波トランスデューサ(UST)に対する駆動信号、UST:10MHzの超音波トランスデューサ、ST:試料(S)中に埋め込まれたシリコーンチューブ、なお1、2、および3は、チューブ1、チューブ2、およびチューブ3を表す、3D−TS:3次元平行移動台、W:デュアルHIFU−USTモジュールを浸漬するための水タンク。
【0171】
研究対象のブタ組織試料は、深さに沿って、組織試料の大きい側面の両側からおよそ5〜6mmの距離で埋め込まれた3つのシリコーンチューブ(60−011−01、米国カリフォルニア州カーピンテリア、HellixMedical)を含んだ。あらゆる2つのシリコーンチューブ間の横方向距離は、組織内でおよそ2mm離間している。デュアルHIFUは、チューブ2上に集光され、この位置に対して走査が実施される。走査の前に、US焦点およびデュアルHIFU焦点に対するチューブ2の場所が測定および記録される。US焦点およびデュアルHIFU焦点間のチューブ2位置の2D位置のこの不一致は、デュアルモダリティMATLAB処理の重ね合わせの際に考慮される必要がある。チューブ1は純粋なADP色素溶液を含み、チューブ2はICG:ADp(3:2)比の溶液からなり、チューブ3はICG色素溶液からなる。全溶液は、それぞれのシリンジを使用して、非常に低い注入速度で排出される。なお流速は約0.1インチ/時間である。
【0172】
USF造影剤物質および合成
物質:N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N−tert−ブチルアクリルアミド(TBAm)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、過硫酸アンモニウム(APS)、テトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、および、ICGは、Sigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から購入された。PluronicF98はBASF(米国ニュージャージー州フォーハムパーク)から購入された。全部の薬品は、入荷状態のまま使用した。
【0173】
USF造影剤の合成
(1)ICG・NP。ICG封入PNIPAM・NPは上述のように合成された。(2)ADP(OH)
2(底部)ナノカプセル。これらのナノカプセルは前述のように準備された。完結には、PluronicF98は50mg/mLの濃度で脱イオン化水中に溶解された。色素/TBAI(モル比=1:6)が、クロロホルム中に溶解され、30分間にわたり超音波処理状態に保たれた。次に、色素溶液は攪拌しながらPluronic水溶液中に滴下され、次に4分間にわたり超音波発生装置を用いて分散された。クロロホルムが蒸発されて、色素が、Pluronicナノカプセルの疎水性コアに封入された。自由色素は、AmiconUltra遠心濾過器(10000分子量カットオフ、米国マサチューセッツ州ビレリカ、MilliPore)を使用して除去された。
【0174】
検出モジュール
検出モジュールは3つのサブモジュール、すなわち(1)コリメーションチューブフィルタセットモジュール、(2)光センサモジュール、および、(3)ポスト光センサハードウェアモジュール、に分類される。
【0175】
(1)コリメーションチューブ(CT−2)のブロック図が
図27に示されている。
図27において、L1:OB−2(光バンドル)からの光学的蛍光信号を通過させる近赤外線(NIR)平凸レンズである。LP1およびLP2:ロングパス光学フィルタであり、715LPおよび830LPは、それぞれADP溶液およびICG溶液に対するフィルタである。RG1およびRG2:吸収フィルタであり、RG680およびRG808は、それぞれADPおよびICGに対するフィルタである。IR−1:コリメートされた光信号をPMTへと通過させるかまたは拒否するかを制御するためのアイリス絞りである。IR−2:PMTの前方においてピンホールとして作用する固定開放アイリス絞りである。光学的漏出信号を最小化し、且つ、より長い光学的波長(励起波長よりも長い)の検出効率を最大化するよう構成されたカスタム構築のフィルタ−レンズ構成を使用することにより、予期に反して良好な結果が達成されたことが、驚くべきことに発見された。このフィルタ−レンズ構成は、簡便性のためにコリメーションチューブ(CT)構成と呼ばれる。光ファイババンドルが、空気に曝露されるブタ組織の表の側面上に垂直に、極めて接近して配置される。このことにより、蛍光信号の大部分が、大部分が漏出であるバックグラウンド光信号とともに、光バンドルの開放端部により収集されることが確実となる。なぜなら、その受光角が約60度であるためである。この光バンドルの、光バンドル(OB−1)の他方の端部(コリメーションチューブの試料側と呼ばれる)は、光バンドルからの発散光信号が平行化されるよう、すなわちコリメートされるよう、NIR平凸レンズ(L1)の焦点に固定される。他方の平凸レンズ(L2)は、平行な光ビームが冷却PMT(米国ニュージャージー州ブリッジウォーター、H7422−20)の開放センサ端部上に集光されるよう、反対方向に対向するコリメーションチューブの試料端部からおよそ40cmの位置に配置される。コリメーションチューブのこの端部はコリメーションチューブのPMT側と呼ばれる。ここで、コリメーションチューブは、3つのセクション(試料端部フィルタセット、中央フィルタセット、およびシャッタ)を有する。試料端部フィルタはロングパスフィルタ(LP1)である。ADP色素に対しては715nmロングパス(米国ニューヨーク州ロチェスター、Semrock、FF01−715/LP−25)が使用され、ICG色素に対しては830nmロングパス(米国ニューヨーク州ロチェスター、Semrock、BLP01−830R−25)が使用される。LP1は、サンプル端部レンズ(L1)の直後に取り付けられる。中央フィルタセットは、コリメーションチューブの中心に配置され、3つのフィルタから構成される。なお、1つのロングパスフィルタ(LP1と同一のLP2)が2つの吸収フィルタ(RG1およびRG2)間に配置されている。ゼロ開口アイリス絞り(米国ニュージャージー州ニュートン、Thorlabs、SM1D12SZ)がシャッタとして使用され、L1レンズとL2レンズとの間の距離の約2/3の位置(試料端部から測定する)に配置される。アイリス絞りのアパーチャ直径を調整/変化により、光信号は、許容または完全遮断され得る。試料側レンズ(L1)およびPMT側レンズ(L2)とともに3つのセクションの全部は、外部からの無関係な光信号が完全に拒否されるよう、チューブレンズにより接続される。したがって、コリメーションチューブのPMT側から出て来る光信号は、励起レーザ光源からの最小化された漏出、および、望ましくない周辺光信号を有する、造影剤からのフィルタ済み蛍光信号である。上述のように、予想に反して良好な結果が、上述のカスタム構築されたフィルタ−レンズ構成を使用することにより達成可能であることが、驚くべきことに発見された。特に、本明細書で記載の構造を有するコリメーションチューブを使用してフォトルミネセンス信号を検出することが、改善されたSNRを提供し得ることが発見された。特に、第1(近位)コリメーションレンズ(L1)、第2(遠位)コリメーションレンズ(L2)、および、第1コリメーションレンズと第2コリメーションレンズとの間に配置された1つまたは複数のフィルタを有するコリメーションチューブが使用され、第1コリメーションレンズが、フィルタから、および/または第2コリメーションレンズから、10cmより大きい距離または20cmより大きい距離(例えば25〜50cm、25〜40cm、または30〜40cmの距離)だけ離間されることは、有利であり得る。
【0176】
(2)冷却光電子増倍管が、内部高電圧電源を有する光センサとして使用される。この光センサの望ましい特徴は、そのスペクトル応答が、300nm〜890nmの範囲であり、熱ノイズ変動が小さく、極めて低い光信号に対してさえ、高い信号対雑音(SNR)比を有するという点である。アイリス絞りは、平凸レンズ(L2)の焦点距離における冷却PMTセンサヘッドの前方に配置され、本質的でない光信号を拒否するためのピンホール構成として動作する1mm(約20%)直径開口部に固定される。
【0177】
(3)ポスト光センサハードウェアモジュールは、低ノイズ電流前置増幅器(PreAmp、米国カリフォルニア州サニーべール、StanfordResearch、SR570)およびロックイン増幅器(LIA、米国カリフォルニア州サニーべール、StanfordResearch、SR830)から構成される。電流前置増幅器は、ハードウェアフィルタリング(6または12dBのカットオフを有する)と、ユーザ定義による(所望の)感度と、を適用する一方で、冷却PMTから出力された電流を電圧出力に変換する。励起源が1KHzにおいて変調されているために、1KHz周波数の光信号が妨げられることなく通過することが可能となるよう、感度は50nA/Vに設定される。10KHzのローパス(12dBを有する)、または3Hz〜10KHzのバンドパス(6dBを有する)が、本質的でない光信号がフィルタ除去されるよう、設定され得る。前置増幅器から出力されたフィルタ済み光信号は、(処理されるべき)入力としてロックイン増幅器に供給され、基準信号は、1KHz周波数において励起レーザを変調するために使用されたファンクションジェネレータ(FG−3)からの同期出力から取得/供給される。ロックイン増幅器の出力は、時間に対して好適/所望の1KHz周波数を有する(1KHzが基準信号としてLIAに与えられるため)光信号のみの振幅および位相の両方のデータ/情報から構成される。LIA出力は、その2つのパラメータ設定、時定数、および感度により、決定される。時定数は300ミリ秒(f=1KHzに対して1/2πf〜0.159ミリ秒より大きい)に設定され、それにより、時間に対するLIAの低速な累積応答が確保される。感度は、研究対象の組織/試料内における局所的温度変動に対する色素溶液の蛍光応答の微分である信号強度に応じて、20mV〜500mVの範囲で変動する。
【0178】
平行移動モジュール
3つのVelmex線形平行移動モータ駆動台が、設計システム(3D−TS)に対する3D走査能力を有するよう、構成される。3D−TSはコンピュータに接続され、カスタム構築されたGUI・MATLABインターフェースを使用して制御される。GUIは、3D−TSモジュールの様々な側面(例えばステップサイズ、加速度、走査速度、走査面、走査面内の走査場所の個数、その他)を制御するようプログラムされている。走査プランは、前方向(X、Y、およびZ方向)に沿った1D、2D、および3D面走査能力を含む。デュアルHIFU−USTモジュールは、組織試料内のターゲットの走査を実施するために、この3D−TSモジュール上に取り付けられる。試料台の他の全部の構成要素は、走査の実施時は比較的静止状態にある。
【0179】
実験
実験は、励起レーザ波長と、ターゲット(シリコーンチューブ)とともに使用される色素溶液に相互依存する漏出波長を最小化または拒否するための、そのフィルタセットと、に応じて、2セットの走査に分割される。これらのチューブには1〜3の番号が付されている。チューブ1はADPを含み、チューブ3はICG色素溶液を含む。チューブ2はICGおよびADPの混合物(3:2の比)を含む。HIFU−USモジュールは、試料研究に対して垂直に配置されるべきである。USおよびUSF十字焦点の焦点は、デュアルHIFUモジュールに対するUSトランスデューサの物理的制限調節により、深さに沿っておよそ1.5mmおよび横方向に沿っておよそ0.2mmの領域である。デュアルHIFU−USモジュールは、デュアルHIFUの交差焦点が、試料の中央であるチューブ2に集光されるよう、調整される。
【0180】
実験動作タイミング
パルス遅延発生器(米国カリフォルニア州サニーベール、StanfordResearch、DG645)を使用するマスタートリガ(MT)が、ファンクションジェネレータ(FG−1)およびデータ取得カード(NI−DAQ)の両方をトリガするために使用される。マスタートリガは、それぞれのゲーティングパルス列を送信するよう、ファンクションジェネレータFG−1の2つのチャンネルを起動する。FG−1のチャンネル1は、単位トリガあたり8〜16パルスを有する1Khzパルス列に設定される。1Khzパルス列の各パルスは、超音波取得のためのパルスエコー法を実装するためのパルス生成器/受信器(パルサー、米国マサチューセッツ州ウォルサム、Olympus、5077PR)に対する外部トリガとして作用する。超音波パルスエコーの取得速度およびデータ伝達が一緒に数十マイクロ秒の時間を要するため、1Khzパルス周波数(パルス間に約1マイクロ秒)は、超音波Aラインデータを取得および記録するにあたり十分である。パルサーにより受容された超音波信号(Aライン)は、パルサーによりトリガされるデジタイザ(米国テキサス州ダラス、NationalInstruments、NI−USB 5133)を使用して記録され、単位トリガあたり複数のパルスが、単一走査場所における複数のAラインを記録する。これらのAラインを平均し、それによりノイズを低減させることが実施され、各走査場所に対する結果が、コンピュータ内の所望の場所に行列ファイルとして格納される。一方、FG−1ファンクションジェネレータのチャンネル2は、デュアルHIFUを駆動するために使用されるファンクションジェネレータFG−2のゲーティング処理のために使用される。チャンネル2は、US取得が完了するために十分な時間が与えられるよう、500マイクロ秒の遅延を有するよう設定される。FG−2ファンクションジェネレータを使用することにより、使用された定義済み駆動電圧と組み合わせてFG−1を使用して、チャンネル2パルス幅の期間と、単位トリガあたりのパルス個数と、を制御することにより、デュアルHIFUは、所望の駆動パワーで「オン状態」および「オフ状態」に切り替えられることが可能である。かくして、組織または試料内の温度を管理することに関する間接的制御が達成される。
【0181】
マスタートリガは、その取得を開始するようNI−DAQもトリガし、遅延は導入されない。それにより、マスタートリガの開始から光信号(USF信号)が取得される。この研究に関して、NI−DAQカードの2つのチャンネルは、マスタートリガからのトリガ時における、PMT−前置増幅器出力信号(変調された蛍光信号出力)と、LIA出力(1KHz周波数の感度振幅信号出力)と、を記録するようプログラムされる。光信号取得の典型的な期間は、LIAが300ミリ秒時定数を有するよう設定されている場合、約4〜6秒である。取得が記録され、MATLABを使用して行列変数に格納されると、ソフトウェアパルストリガが生成される。このパルストリガは、次の場所荷移動するようVelmex3D平行移動台をトリガするために、出力NI−DAQポートにより、送出される。DAQ取得期間(約4〜6秒)と、次の走査場所への平行移動の期間(2秒よりも短い)と、の合計が、マスタートリガ間の期間を超えることがないよう、注意すべきである。したがってこの研究に対して、マスタートリガは0.1Hz周波数(約10秒)に設定される。(光学的USF信号に対する)NI−DAQの、および(超音波信号に対する)データデジタイザの、データ伝達は顕著に速いため、マスタートリガ間の期間が、任意の2つの走査場所間の期間を決定し、それにより、システムの走査および取得の期間全体を決定する。
【0182】
データ処理
USF画像処理
超音波切り替え可能蛍光イメージングは、周波数領域蛍光イメージング技術を使用して実施される。係るイメージング技術では、励起レーザ光源は所望の(1KHz正弦波)波形で変調され、検出される蛍光も、励起源変調周波数で変調するであろう。このように、1KHz蛍光信号のみが処理されるべき望ましい信号であり、他の全部の光信号は拒否され得る。検出される蛍光信号は、冷却PMTを使用して記録され、蛍光信号に対する感度および特異度を増加させるために、LIAに提供される。したがって、検出される蛍光は、PMTおよびLIAから出力される2つの出力信号を有する。両方の信号は、NI−DAQ取得モジュールの2つのチャンネルにより記録される。
【0183】
組織試料内のターゲットは、0.36mmの内径(ID)および0.61mmの外径(OD)を有するシリコーンチューブである。色素溶液は停滞を回避するためにシリンジポンプを使用して毎時0.01インチの低流速で循環される。
【0184】
LIA出力−最大振幅対初期ベースライン振幅
ソースセクションで記載したように、LIAモジュールは、LIAの感度および特異度を決定する2つの主要なパラメータ設定を有する。なお、このパラメータ設定とは(1)時定数および(2)感度である。時定数は1KHz変調光信号に対して300ミリ秒に設定される。このことは、時間に対して1KHz振幅信号を変化させることに対するより低速な累積応答を、LIAに与える。その結果として、信号対バックグラウンド比は、より高くなる。Ni−DAQデータ取得モジュールの開始と、USF信号を生成するデュアルHIFUモジュールの開始と、の間にも0.5秒の遅延が存在する。したがって初期データ取得のおよそ約0.5秒間は、USF信号を有さず、したがってベースラインまたはバックグラウンド信号として使用され得る。USFデータは、デュアルHIFU駆動(「オン状態」)の期間(約250マイクロ秒)に応じて、約4〜6秒間にわたり記録される。このデュアルHIFU駆動期間は、研究対象の試料または組織内で温度が誘導される期間を間接的に制御する。デュアルHIFUが駆動される期間および振幅(デュアルHIFUに供給されるパワーに対応する)の組み合わせが組織内の温度上昇を決定することに注目すべきである。デュアルHIFUが活性化される期間、または「オン状態」である期間に対して徐々に温度が上昇し、デュアルHIFUが不活性化されると、または「オフ状態」に切り替えられると温度が徐々に低下する点も、考慮すべきである。HIFUに誘導される蛍光信号の増加および減少の比率は異なり、後者の場合では、より低速である。温度上昇のこの比率および変化量も、それにより蛍光応答も、組織の本質的な物理的特性および熱的特性と、デュアルHIFUの機械的仕様および電気的仕様と、に依存する。
【0185】
LIAに対する基準信号は、1KHzパルス信号であるファンクションジェネレータ(FG−3)の同期信号から提供される。感度は、研究に対して使用される造影剤イメージング色素溶液(それぞれICGおよびADP)に応じて、20mvまたは200mvに設定される。LIA出力振幅信号の最大値と、最初の0.5秒のベースラインと、の間の差異が、誘導されたピーク温度変動に直接的に対応するUSF信号変動であると考えられる。したがって、走査場所におけるピーク温度に対応する絶対的な蛍光信号強度が記録され、この処理は他の走査場所に対して反復される。したがって2D画像が生成される。なお生成された2D画像のグレースケール強度値は、考慮対象の組織または試料内の物理的場所に対するUSF信号のピーク温度に対応する。
【0186】
その対応する入力および基準信号を有するLIAの位相感受性の検出出力は、次のように与えられる。
【数3】
【0187】
信号はV
sigsin(ωrt+θ
sig)である。式中、V
sigは信号振幅であり、ωrは信号周波数であり、θ
sigは信号の位相であり、その一方で、基準信号は、V
Lsin(ωLt+θ
ref)である。式中、V
Lは基準振幅であり、ωrは基準信号周波数であり、θ
refは基準信号の位相である。
【0188】
特徴抽出
2D・USF画像が生成されると、信号対バックグラウンドノイズ比が比較的低い値であることがただちに観察された。USF画像のSNRを高めるため、カスタマイズされた特徴抽出アルゴリズムが採用される。特徴抽出アルゴリズムは、2つの部分(相関行列の生成、および、べき関数を使用するグレースケールマッピング)に分類される。処理された相関行列を元の2DUSF画像に乗算すると、所望の特徴が改善され、それによりUSF画像(処理済みUSF画像と呼ばれる)のSNRが向上する。
【0189】
相関行列の生成
組織試料に梅これまたチューブ内のICG色素またはADP色素の蛍光信号の典型的な動的応答は基準信号であると考えられる。一般的なMATLAB相関関数が、USF画像内の全走査点のうちの各走査点に対応する全信号のうちの各信号に適用されると、−1〜1の範囲の相関値が得られる。ここで、負の相関値は基準信号に対する逆の関係に対応し、0は相関性が存在しないことに対応し、正の相関値は基準信号に対する高い相関性に対応する。相関関数は、次の相互相関式により支配される。
【数4】
式中R(X,Y)はX(t)およびY(t)信号系列の相互相関係数であり、X(t)は入力信号であり、Y(t)は基準信号であり、Nは信号サンプルサイズである。
【0190】
グレースケールマッピング
オリジナルのUSF・2D画像の相関行列または相関画像が形成されると、特徴抽出アルゴリズムが2D相関画像上に実装される。特徴抽出アルゴリズムは次のべき乗公式により支配される。
【数5】
式中、P
out(i,j)は出力ピクセル値であり、P
in(i,j)は相関行列値であり、aおよびbは定数である。「b」に対して、より高い値(通常は1000〜100000。aは1に等しい)を選択することにより、より高い強度値を有する画像の特徴はさらに高くなり、それにより、より低い強度値はさらに低く抑えられ得る。一般に画像のダイナミックグレースケールは、さらに大きくなる。この処理はグレースケールマッピングと呼ばれる。このことにより、相関性がないグレースケール値、相関性がゼロであるグレースケール値、またはある程度まで相関性が低いグレースケール値が完全に抑えられ、それにより高い相関性を有する強度/グレースケール値が強調されることが確実となる。
【0191】
処理済みUSF画像:処理済み相関行列のオリジナルUSF画像への適用
グレースケールマッピングが施された相関行列が生成されて、この相関行列がオリジナルのUSF・2D画像に乗算されると、USF・2D画像は処理済みUSF画像となり、その結果として生成されたこの処理済みUSF画像は、高濃度の蛍光領域が強調表示されるという特徴を有する。
【0192】
上述のアルゴリズムは、2D・USF画像を生成し、高い蛍光濃度の領域を強調表示するための、段階的アプローチである。オリジナルのUSF・2D画像強度が直接的に処理されるのではなく、それに代わって相関行列USF・2D画像が処理されることに注意すべきである。それにより、オリジナルのUSF・2D画像強度は、ピクセルごとに、処理済みUSF画像を処理済み相関行列を除算することにより、処理済みUSF・2D画像から回復または再計算され得る。
【0193】
US画像処理
デジタイザは、その高いサンプリングレート(最高サンプリングレートは100MS/秒である)に対する超音波Aライン信号を記録するために使用される。デジタイザはMATLABを使用することにより制御される。MATLABにより、デジタイザは、トリガに対する20マイクロ秒の遅延後に60マイクロ秒のデータを記録するよう設定される。このことにより、USTの表面および水からの高エコー振幅信号を含むUSエコー信号の最初の20マイクロ秒は、確実に拒否される。水中の平均超音波速度が1480毎秒メートルであるとすると、60マイクロ秒の記録は、およそ4.4cmの深さの情報が記録されることに対応する。
【0194】
AラインからBモードへの画像生成
各走査点におけるAラインが記録され、座標情報(例えば、絶対位置、および軸方向ならびに横方向の両方に沿った走査点間の距離など)とともに格納される記録されたAラインは振幅エコー情報を有するため、ベースラインシフトを除去した後に上方エンベロープ情報に変換される。各深さに沿って、Aラインのエンベロープ(エンベロープUS信号と呼ばれる)は、行列において列方向に積み重ねられ、次に、これが2D画像として格納される。これは、Bモード画像または輝度モードUS画像を意味する。Bモード画像または輝度モードUS画像では、グレースケール強度値は、より高い音響インピーダンス不整合境界面に対応し、それにより、ROIの構造的情報が強調される。
【0195】
2D深度走査(XZ走査)に対しては、各ラインの各走査点が1DエンベロープUS信号を有するため、生成されるBモード画像の個数は深度走査ラインの本数に等しいことに注意すべきである。観察される必要があるBモードの選択については、以下のUSFおよびUS画像の重ね合わせのセクションで詳細に説明する。
【0196】
カスタマイズされたテンプレート照合アルゴリズムによるチューブ位置抽出
カスタマイズされたテンプレート照合アルゴリズムは、相関法に基づいて開発されたものである。超音波(US)Bモード画像におけるチューブ構造は、その寸法がシリコーンチューブの断面直径(OD=0.64mm)と0.4mmとの合計となり、それによりチューブ全体が確実に考慮されるテンプレートとして、選択される。次にオリジナルのUS・Bモード画像およびテンプレートをMATLABのビルトイン関数「normxcorr2」に与えると、相関行列が生成される。次に、0.7の相関値におけるカットオフを有する閾値化が適用されると、負、ゼロ、またはより低い相関値がゼロに抑えられる。したがって生成された処理済み相関行例は、考慮対象の組織試料内に埋め込まれた3本のチューブの位置に対応する3つの領域を含む。
【0197】
デュアルモダリティイメージング:USF画像のUS画像上への重ね合わせ
処理済みUSF画像のオリジナルのUS・Bモード画像上への直接的重ね合わせ
処理済みUSF・2D画像は、透明性を使用するが軽微な変更を有する、画像重ね合わせの直接的方法を使用して、グレースケール化されたUS・Bモード画像上にカラー画像として重ね合わせるために使用される。重ね合わせコードは、処理済みUSF画像強度値と、透明性の度合いと、の制御閾値化を有するよう、変更される。制御閾値化は、USF画像における末尾部を最小化または除去し、より高濃度蛍光領域を示すために、2つの方法に分類される。
【0198】
方法1:処理済みUSF画像のこの方法で使用される定義された閾値化は、0〜1の範囲のカットオフにより決定される。この値は画像における最高強度のパーセンテージを決定する(1は、画像全体の最高強度の100パーセントである)。したがって閾値カットオフより大きいパーセンテージの強度の全体が、バックグラウンドUS・Bモードグレースケール画像上に重ね合わされる。
【0199】
方法2:処理済みUSF画像に対して、カスタム生成された形態学的アルゴリズムが、閾値方法を使用して実装される。閾値化の同様の処理が実装されるが、より小さいカットオフ値を有する。このようにして得られたUSF画像は、分離された2値画像形成濃度領域に変換される。領域の中で最大の2つのエリアが選択され、分離された領域の残りは除去または拒否される。このように生成された処理済み2値画像はマスクのように作用し、次に、処理済みUSF画像に対して乗算される。このようにしてUSF画像の末尾部が顕著に低減され、より高濃度の蛍光領域が強調される。
【0200】
観察
2つ以上のターゲット(本研究では、ICGまたはADPのいずれかの色素溶液で充填されたシリコーンチューブ)を有する処理済みUSF画像に対する形態学的操作は、チューブの位置と一致しない領域をもたらすこともあった。理論に拘束されることを意図するものではないが、2つの隣接するチューブの末尾領域が互いに対して近接するかまたは重なり合い、その結果、高濃度領域のエリアよりも大きいエリアが形成される場合があると考えられる。したがって上記のアルゴリズムは、偶然に、これらの末尾重ね合わせ領域を、USF画像における最大の2つの領域のうちの1つであると選択する。この懸念事項は、蛍光濃度領域がチューブの位置に基づいて選択されるなら、克服され得る。
【0201】
US案内USF画像重ね合わせ:USF画像の高濃度領域の強調表示
US・Bモード画像に対してテンプレート照合アルゴリズムを実装することにより、チューブの位置または領域がもたらされた。このように得られた処理された相関済みUS・Bモード画像は2値画像に変換される。US・Bモード相関行列のこの2値画像は基準画像として使用され、USF画像の2値画像は、カスタム開発されたMATLAB関数に対する入力画像として使用される。この関数は、入力画像と基準画像との間で互いに交差する領域を選択し、交差しない他の領域は除外または拒否する。このようにして得られた2値画像は、処理済みUSF画像に対して乗算するために使用される。このように、チューブ位置に配置されるUSF蛍光濃度領域が、選択され、次に、重ね合わせ画像プログラムにおいて使用される。
【0202】
画像重ね合わせプログラムの追加的変更は、2つの処理済みUSF・2D画像を、グレースケール化されてはいるが異なる色を有するUS・Bモード画像上に組み込むこと、を含む。このカラーコーディングは、イメージング時にチューブにおいて使用された異なる色素容器を区別することを支援する。赤色カラーコーディングはICG試料を示し、緑色カラーはチューブ内に分散されたADP試料に関するものである。黄色の第3カラーは、チューブが2つの色素溶液(ICGおよびADP)の混合物で充填されていることを示す、共通の重なり合うエリアを有する2つの重ね合わされた画像の領域を強調するために使用される。
【0203】
結果および考察
単一ターゲットのためのUSFイメージング
ブタ組織試料実験内で埋め込まれた単一ターゲット(単一チューブ)に対して、予備実験に対して使用されたブタ組織の厚さは約4〜5mmであり、使用された色素溶液はADPであり、ターゲットシリコーンチューブの仕様は以下の通りである。ID:0.31mmおよびOD:0.64mm。
【0204】
生成された2D・USF画像は温度変動に関する情報を含み、かくしてUSF画像内の蛍光領域は、デュアルHIFUの焦点エリア内に誘導された温度の直接的な結果である。したがって、組織内の単一チューブのデュアルHIFU超音波処理に対する蛍光応答は、USF画像内の十字形状の蛍光領域を有することが示される。この領域は2つの区分:(a)十字中心領域および(b)末尾領域、を有することが示されている。十字中心領域は色素溶液を有するチューブの位置に形成され、末尾領域は、デュアルHIFUモジュールのそれぞれの個々のHIFUの焦点エリアの先端である。
【0205】
十字中心領域は、4つの末尾部と較べると、比較的高い蛍光強度を有することが示される。この観察は、デュアルHIFUの2つの焦点領域の結合部において個々のHIFUの圧力が比較的大きい(建設的干渉を有する)ため、十字中心領域がより高い温度変動を有し、中心領域から焦点領域の主要軸に沿って頂点へと移動するにしたがって、比較的より小さくなる、という仮説と一致する。
【0206】
単一HIFU−USF研究では、同様のターゲット領域の蛍光領域のFWHMは、HIFUの圧力領域のFWHMと、色素溶液が分散されたターゲット領域(シリコーンチューブ)の断面と、の畳み込みであることが観察されている。このデュアルHIFU−USF研究では、蛍光領域のFWHMは、以前の研究(FWHMが深さに沿って約4〜6mmであり、横方向に沿って1.2〜1.5mmである)と比較して、深さ方向および横方向の両方に沿って約1〜1.2mmに相当に低減されることが明らかに観察され得る。したがってデュアルHIFUまたはUSFイメージングを使用することにより、USFイメージングの軸方向解像度が大きくなることが見られ得る。1つの事例では、軸方向に沿った解像度がこのように7.66mmから1.5mmに低減されたことが結論された。
【0207】
3つのターゲットを有するUSFイメージング
より厚い(約10〜12mmの厚さ)ブタ組織試料内の一連の同様のターゲット(シリコーンチューブ)のUSF画像はUS画像とともに得られた。特に、BモードUS画像は3つのターゲットの形状および位置に関する構造的情報を与え、USF画像は、シリコーンチューブ内に分散された色素溶液の濃度に比例する、根底をなす生理学的情報を与える。複数ターゲット実験に対して、3本のチューブが考慮され、試料準備セクションで論じられるように配列される。ここで表される結果は、その対応するADPフィルタセット(830LP、ロングパスフィルタ+RG780、吸収フィルタ)とともに808nmレーザ励起を使用した。ADPベースのUSF画像のSNRが顕著に高いため、特徴抽出アルゴリズム(相関プラスグレースケールマッピング)は適用されず、したがってオリジナルの未処理データが重ね合わせに使用される。ICGの場合、特徴抽出アルゴリズムが、ICGベースのUSF画像の低濃度領域を強調表示するために適用される。
【0208】
そのADP溶液が808nmレーザ光源により励起されないため、チューブ1が蛍光をまったく示さなかったことが観察された。一方、チューブ2およびチューブ3は、デュアルHIFU超音波処理に応答して蛍光を示し、それにより、USF現象の発生が示された。面積および蛍光強度レベルは、ICG濃度がチューブ3における未混合ICG溶液と比較してチューブ2(ICG:ADPが約3:2)において異なるという事実により、チューブ2およびチューブ3から異なる。蛍光の濃度クラスタは、BモードUS画像におけるチューブの位置において正確に重ね合わされ、それにより、それぞれのチューブ内で808nmの感光性溶液、ICG色素溶液の存在が、さらに確認される。重ね合わされたUSF画像は、蛍光の2つの異なる濃度エリア/領域を示した。チューブの位置から離間した蛍光領域は末尾領域と呼ばれ、チューブ位置の上方の高濃度領域は十字中心領域と呼ばれる。選択された閾値カットオフに応じて、末尾領域は、より小さい値に対して支配的となり、より大きい値に対して非支配的になる。しかしより大きいカットオフは、画像において最高濃度の蛍光のみが表示されるが、周囲の情報が失われてしまうことを示唆する。蛍光末尾領域情報を最小化する一方でUSF画像の最大情報を保存することが必要である。これを達成するために、チューブ位置に近接するかまたはチューブ位置上方にあるこれらの領域を選択するための形態学的操作が実行される。
【0209】
形態学的操作を使用して処理されたUSFイメージング
形態学的操作は、USF画像を2値画像に変換し、次に、US・Bモードチューブ位置と重なる2値画像のこれらの領域を選択することを含む。形態学的操作の利点は、低閾値カットオフが選択可能であることである。USF画像に対する係る操作が、さらに低い蛍光強度領域を有したとしても、これらの全領域は後に除去または拒否され、それにより、USF蛍光情報の大部分が維持されるであろう。
【0210】
処理済みUSF画像の2値画像がいくつかの領域からなることは明らかである。観察により、小さい領域の大部分が、低い蛍光強度値からなるUSF信号の末尾領域に属すると推論され得る。したがって、処理済みUSF画像において明らかでない低蛍光末尾領域が2値画像では明らかであり、大部分が十字中心区域であるUSF画像の高濃度領域を得るために、後に除去され得ることが、観察され得る。2つの簡略化された方法が、所望のUSF十字中心領域を選択するために、用いられる。第1の方法は、2値画像上における2つの最大領域を選択することであり、第2の方法は、所望の領域を選択するために、BモードUS画像からチューブの位置を使用することである。
【0211】
方法1:簡略化された形態学的方法
この選択方法は、2値画像における全領域を別個にそれ自身の2値画像のそれぞれに分割することを含み、各領域内の面積も計算する。次に、これらの領域は、面積に応じて、ソートされる。最大の2つの領域と、それらのそれぞれの2値画像と、が選択され、互いに加算され、これらの残りはただ無視される。結果として生成された2値画像またはマスクは、ICG溶液で充填された2つのチューブ位置において正確に配置された2つの領域のみを含む。これらの2値画像が区分的にUSF画像と乗算されると、US・Bモード画像上に重ね合わされる。全般的形態学的方法の1つの欠点は、最大の2つの領域のうちの一方がチューブの位置と重なり合わない可能性が存在することである。このシナリオは、2つの隣接するチューブの末尾領域が重なり合って、チューブ2の蛍光十字中心領域よりも大きい領域を形成するとき、観察される。したがって、USF蛍光領域選択に対してチューブの位置を組み込む変更が必要である。
【0212】
方法2:USに支援された形態学的操作方法
US画像のデータ処理セクションで説明したテンプレート照合アルゴリズムを使用することにより、ターゲットチューブの位置を正確に得ることが可能である。次にこの画像は、オリジナルUSF画像のサイズに修正され、次に、2値画像に変換される。結果的に生成された2値US処理済み画像は、所望の対象領域を選択するための形態学的操作アルゴリズムに対する基準画像として使用される。領域の選択は、2値US処理済み画像と2値USF処理済み画像との間の交差領域を単に見出すことにより、なされる。
【0213】
デュアルモダリティイメージングの実現:
処理のブタ組織試料に対して、2セットのデータが記録される。第1セットのデータは、ADPフィルタセット(715LP+RG695)を用いる671nmレーザ励起を有し、第2セットデータは、ICGフィルタセット(830LP+RG780)を用いる808nmレーザ励起を有する。実験モジュールの残りは変更されない。上述の画像処理はADP・USFデータセットにも適用され、それにより、同様の結果が得られた。以下のセクションでは、US・Bモード画像上に重ね合わされたICGおよびADP・USF処理済み画像に関する。2セットのUSFイメージングに対してデュアルHIFU・USTモジュールおよびブタ組織試料の位置を変化させないよう細心の注意が払われた。両方のUSF画像が正規化され、0.5の閾値が両方のUSF画像に適用される。
【0214】
ADP蛍光濃度領域がICG領域と比較して限定されたものであることが観察された。このことは、温度変化に対するADPの蛍光応答(感度)がICGと比較して高いものであるため、理解可能である。このことと、正規化されたUSF画像の両方に同一の閾値が適用されるという事実と、が組み合わされると、蛍光領域は、ICGと比較してADPで充填されたチューブの場合、大きく制約される。チューブ2がICGおよびADPの混合物(3:2の比)を含むことに注目すべきである。全蛍光領域はそれぞれのチューブ位置と完全に重なり合う。チューブ2の場合、2つの処理済みUSF画像が正確に重なり合うにもかかわらず、両方のUSF画像からの蛍光強度を強調表示するという根底をなす概念が過小評価される。したがって、2つのUSF処理済み画像の共通エリアを選択し、チューブ2がICGおよびADP溶液の配合物で充填されているという概念を強調表示するために異なる色を割り当てるための他の簡単な形態学的操作が、用いられる。
【0215】
変更画像重ね合わせアルゴリズムと組み合わされたUSFおよびUSがデュアルモダリティイメージングは、両方のUSF処理済み2値画像の共通エリアを使用する概念を実現する。これはチューブ2の位置における十字中心蛍光領域の大部分(90%を超える)を含む。組み合わされたUSF画像(P
combined(i,j))の強度レベルは、次の式で示されるように、それぞれのピクセル位置におけるそれぞれの重み付けられた強度の積の和により計算される。
【数6】
【0216】
組み合わされた重み付けられた蛍光強度が計算されると、その蛍光強度は2つのカラーUSF画像上に重ね合わされる。2つのUSF画像の共通エリアは、それぞれのUSF画像においてゼロにされるか、または除去され、その一方で、第3の組み合わされた重み付けられたUSF画像により重ね合わされることに、注意すべきである。
【0217】
加えて、以前の実験と同様の複数の奥行き面走査が実施され、この奥行き面走査を一緒に積み重ねると、3次元データが形成され、この3次元データは、後に任意の所望の面において閲覧され得る。所与の関心対象の領域の3Dプロファイルを、任意の所望の角度または面において、超音波およびUSFイメージングのデュアルモダリティを使用して、このようにキャプチャおよび可視化することが可能である。
【0218】
本発明の様々な実施形態について、様々な目的を満足させることに関して説明してきた。これらの実施形態が本発明の原理を単に例示するものであることを理解すべきである。本発明の多数の変更例および改変例が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に容易に明らかとなることであろう。