(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水槽と、前記水槽中に回転可能に設けられたパルセータと、前記パルセータの下面に設けられポンプ機能を奏する裏羽根と、前記裏羽根からの吐出液を前記水槽中の所定の場所に吐出させる水路と、を備え、
前記裏羽根の下部には、半径方向において階段状に高さを異ならせるように段部が構成され、その下面を環状に覆う導水板が設けられており、
前記パルセータと前記導水板の間は羽根空間部であり、前記羽根空間部は、前記段部よりも半径方向の内側であって前記パルセータの回転中心側の第1羽根空間部と、前記段部よりも半径方向の外側であって前記パルセータの周辺部側の第2羽根空間部と、を備え、
前記第2羽根空間部は前記第1羽根空間部より平均縦寸法が狭小である洗濯機。
前記裏羽根は、前記パルセータの回転中心側から外側方向に向かって延伸し、回転方向における任意の一方向に凸となるように湾曲する曲線により構成されている請求項1に記載の洗濯機。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態による洗濯機を、図面を参照しながら説明する。なお、実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0008】
図1は実施形態に係る洗濯機100の概略構成を示す側面断面図である。洗濯機100の外郭を形成する本体1は、略矩形箱状を呈する外箱2と、その上面に被着されたトップカバー3とから構成される。トップカバー3には洗濯物投入口4を開閉する二つ折れの蓋5が回動可能に設けられている。本体1の内部には水槽6が設けられている。水槽6は、上側に開口部を有し、下側に水槽底部を有した有底円筒形状に形成されている。水槽6は弾性支持機構7により弾性支持されている。
【0009】
水槽6の内部には回転槽8が回転可能に設けられている。回転槽8は、上側に開口部を有し、下側に回転槽底部を有した有底円筒形状に形成されている。回転槽8の内下部には、洗い用及びすすぎ洗い用のパルセータ9が回転可能に設けられている。回転槽8の周壁部には多数の脱水用の透孔10を形成しており、上端部には例えば液体を封入したバランサ11が設けられている。
【0010】
水槽6の外底面側には、洗い及び脱水用のモータや動力の伝達切換えをするクラッチ機構などを備える駆動部12が配設されている。駆動部12のクラッチ機構によって、洗い運転時にはパルセータ9のみを回転させ、脱水運転時に回転槽8をパルセータ9と共に回転させるようにしている。
【0011】
水槽6の底部には排水口13が設けられている。排水口13には電動開閉式の排水弁14が接続されている。排水弁14には排水ホース15が接続され、水を機外に導出するように構成されている。
【0012】
排水口13にはエアトラップ16が連通されている。エアトラップ16にエアチューブなどを介して圧力式の図示しない水位センサが接続されている。これにより水槽6内の水位を検知可能としている。水槽6の上部には機外に連通して形成された溢水路17が備えられている。
【0013】
循環水路19は、回転槽8の側壁に沿って上下方向に延在するように設けられている。回転槽8には、回転槽8の側壁との間で循環水路19を形成する水路カバー20が設けられている。循環水路19の下端部はパルセータ9の裏面側方側に対向して開口することで連通している。
【0014】
パルセータ9にはその裏面に複数枚の裏羽根18が当該パルセータ9と一体に立設形成されている。この裏羽根18は回転槽8の内底部に形成された空間部である羽根空間部22に位置しており、この羽根空間部22が前記した循環水路19と連通した構成となる。裏羽根18はパルセータ9と一体的に回転することで洗い運転中にポンプとして機能する。そのポンプとして機能する裏羽根18はパルセータ9の回転に伴う遠心力により中心部分から吸い込んだ洗浄水を側方方向に吐出し、吐出された洗浄水は循環水路19内に吐出されて押し上げられ揚水される。後述するが、裏羽根18の下部には導水板40が配設されている。
【0015】
トップカバー3の前部には、操作パネル23が設けられている。この操作パネル23には、図示はしないが、各種の操作キーや表示部が設けられている。また、操作パネル23の裏側には、制御装置24が設けられている。この制御装置24は、マイクロコンピュータを主体に構成されていて、操作キーの操作と、予め備えた制御プログラムなどに基づき、洗い運転や脱水運転などの行程を自動的に制御する制御手段として機能する。
【0016】
図2はパルセータ9の上面図である。パルセータ9は、全体が合成樹脂製で、平面形状が円形をなしてベースとなる基盤30と、この基盤30上の中央部に設けられた中央凸部31と、基盤30上に前記中央凸部31を中心として放射状に延びるように突設された複数の羽根部32と、基盤30の下面すなわち裏面側に前記羽根部32と同様に放射状に設けられた複数枚の前記裏羽根18と、を一体に備えている。
【0017】
中央凸部31の裏面側中心部にはボス部33が一体に設けられていて、このボス部33にはモータ12の駆動軸12aの上端がパルセータ9の回転中心25である凹部35に嵌合されており、ボス部33にねじ36により螺着されていて、パルセータ9と駆動軸12aとは一体に回転するように取着している。
図2では、基盤30の上面に3個の羽根部32が形成されている実施形態を示しており、これら3個の羽根部32は、中央凸部31を中心としてその周りに等間隔で放射状に配置されている。
【0018】
各羽根部32は、上方から見て、径方向の中間部が、回転中心25から外側方向に向かって延伸し、時計回り方向又は反時計回り方向の任意の一方向に凸となるように、やや湾曲する曲線により構成されている。
図2においては、反時計回り方向に凸となるように、やや湾曲した曲線により構成されている例を示している。
【0019】
パルセータ9の基盤30及び中央凸部31には、上下方向に貫通し、水を透過可能な孔34が複数形成されている。基盤30上に設けられた複数の孔34は、上方から見て、羽根部32と同じ方向に湾曲して配列している。
図2においては、径方向の中間部が反時計回り方向へ凸となるように、やや湾曲して配列した例を示している。
【0020】
図3は、パルセータ9及び裏羽根18と、その下部に固定配設された導水板40を示す図である。
図4は
図3の下面図である。
図5はパルセータ9及び導水板40の分解図である。上述のように、パルセータ9の下面には裏羽根18と一体的に固定配設された導水板40が設けられている。
図4では8枚の直線状の裏羽根18が、パルセータ9の回転中心25にあるボス部33から放射線状に設けられている。
【0021】
導水板40は中心に開口部44が設けられた環状の円盤形状を呈しており、開口部44側に平板な形状を呈する第1平板部42aと、外側に平板な形状を有する第2平板部42cを備えている。更に第1平板部42aと第2平板部42cの中間部すなわち導水板40の半径方向における中間部に段部42bが設けられており、パルセータ9の裏面で階段状に高さが異なる裏羽根18に対し、その形状に合わせて導水板40の高さが異なる第1平板部42aと第2平板部42cが当接されて装着される。
【0022】
このようにしてパルセータ9に導水板40が装着された状態において導水板40はパルセータ9の裏羽根18下部の下面を環状に覆い、もってパルセータ9と導水板40の間は羽根空間部22を構成している。羽根空間部22は開口部44と連通している。羽根空間部22において、段部42bよりも回転中心25側であって、パルセータ9裏面から導水板40までの平均距離すなわち平均縦寸法が第1距離G1である領域を第1羽根空間部22aとする。羽根空間部22において、段部42bよりも外側であって、パルセータ9裏面から導水板40までの平均距離すなわち平均縦寸法が第2距離G2である領域を第2羽根空間部22bとする。換言すれば、第1平板部42aとパルセータ9との間で形成される空間が第1羽根空間部22aであり、第2平板部42cとパルセータ9との間で形成される空間が第2羽根空間部22bである。
【0023】
第2距離G2は第1距離G1より小さい。すなわち、第2羽根空間部22bは第1羽根空間部22aよりもその平均縦寸法が狭小である。
裏羽根18の下部は、導水板40がパルセータ9に装着された状態で、第1平板部42aに対応する箇所に直線部18aを、段部42bに対応する箇所に段部18bを、第2平板部42cに対応する箇所に直線部18cとなるように当接している。
【0024】
これら直線部18a、段部18b、及び直線部18cは、それぞれ、第1平板部42a、段部42b、及び第2平板部42cの形状に合致するように構成されている。このため、裏羽根18の下部の回転軌跡は、導水板40の形状に合致する。裏羽根18と導水板40は例えば接着材により一体に固定されている。
【0025】
裏羽根18がポンプとして機能する際の作用について説明する。パルセータ9が回転すると、これと一体に構成された裏羽根18も回転してポンプ作用を発現する。水槽6に貯留する水は、開口部44を通過して回転する裏羽根18により汲み上げられ羽根空間部22に移動する。また、水槽6底部であってパルセータ9の上側にも水が存在する場合は、水は孔34を通過して羽根空間部22に移動する。
【0026】
羽根空間部22に移動した水は、裏羽根18の回転作用によって発生する遠心力により外側方向に移送される。すなわち、水は第1羽根空間部22aから第2羽根空間部22bに移動する。ここで、裏羽根18の下方は、裏羽根18の下部の下面を環状に覆うように一体的に固定されて設けられた導水板40により閉塞された状態にあるため、裏羽根18のポンプ作用によって発現した水圧は羽根空間部22外に拡散することなく無駄なく羽根空間部22内の水に作用する。
【0027】
また、第2羽根空間部22bは第1羽根空間部22aよりもその平均縦寸法が狭小である。従って、第2羽根空間部22bすなわちパルセータ9端部に近い周辺部では、更に水圧が高くなるため、水はより勢いよく外側方向に移送され、より勢いを増して、羽根空間部22に連通する循環水路19に吐出される。循環水路19に吐出された水は循環水路19の上方に押し上げられて移動し、循環水路19上部に設けられた吐出口26から水槽6内の所定の場所に吐出される。
【0028】
図6に、パルセータ9及び裏羽根18の変形例を示す。
図6は裏羽根18dが一体に構成されたパルセータ9の下面図である。上述の
図4に示されたパルセータ9の複数の裏羽根18は、パルセータ9の回転中心25から外周方向に放射線状に延伸した直線状の形状として構成され、これら裏羽根18が所定間隔で配列された一例として例示されたものである。
【0029】
これに対して、
図6に示された複数の裏羽根18dは、径方向の中間部が、回転中心25から外側方向に向かって延伸し、時計回り方向又は反時計回り方向の任意の一方向に凸となるように、やや湾曲する曲線により構成されて、これら裏羽根18が放射線状に所定間隔で配列されている。
図6においては、裏羽根18dは、下方から見て、径方向の中間部が、反時計回り方向に凸となるように、やや湾曲した曲線により構成されている例を示している。隣接する裏羽根18dの間には、複数の孔34が、裏羽根18dに重ならない位置に配置されている。複数の孔34は、回転中心25から外側方向に向かって、径方向の中間部が時計回り方向又は反時計回り方向の任意の一方向、
図6では反時計回り方向に凸となり、やや湾曲する曲線となるように配列されている。
【0030】
実施形態に係る洗濯機100によれば以下の効果を奏する。
実施形態に係る洗濯機100は、パルセータ9の下部に設けられポンプ機能を奏する裏羽根18(羽根)と、裏羽根18から吐出される水を水槽6中の所定の場所に吐出させる循環水路19(水路)を備え、裏羽根18の下部には、導水板40が設けられている。この構成により、裏羽根18のポンプ効率を向上させることができるため、パルセータの回転数を上げなくてもポンプ流量を増やすことが可能となる。従って、裏羽根18のポンプ作用により循環水路19から水槽6に吐出され循環される水すなわち洗浄水を増量させることができる。このため、衣類により多くの洗浄水を供給することができるため、洗浄ムラを低減し、洗浄性能を向上させることができる。
【0031】
実施形態に係る洗濯機100によれば、裏羽根18dは、パルセータ9の回転中心25側から外側方向に向かって任意の一方向に凸となるように湾曲する曲線により構成されている。パルセータ9には水を透過可能な複数の孔34が設けられており、この複数の孔34の列は、前記裏羽根18dの曲線と同じ方向に湾曲し、隣接する裏羽根18dの間であって裏羽根18dに重ならない位置に配列されている。
【0032】
この構成により、水の乱流が減少して水の抵抗が低減され、羽根空間部22内の水(流体)の流れを滑らかにして、吐出させる水の流量すなわちポンプ流量を増加させることができる。すなわち、羽根空間部22から放射方向に吐出される水流は羽根空間部内においても回転方向に凸となる曲線状の流れとなるが、その際に裏羽根が直線状であるとそれら形状の差の部分で乱流や剥離が発生し流れに対する抵抗となる。これに対し、裏羽根が水流に沿った曲線状であれば乱流が生じにくくなり、流れに対する抵抗も減らすことができる。また、孔34を透過する水が裏羽根18dにより妨げられないため、この面においてもポンプ流量を減少させることがない。
【0033】
実施形態に係る洗濯機100によれば、パルセータ9と導水板40の間は羽根空間部22であり、羽根空間部22は、パルセータ9の回転中心25側の第1羽根空間部22aと、周辺部側の第2羽根空間部22bを備え、第2羽根空間部22bは第1羽根空間部22aより平均縦寸法が狭小である。
【0034】
この構成により、第2羽根空間部22bすなわちパルセータ9の外周部に近づくにつれて水圧が高くなるため、水はより勢いよく外側方向に移送され、より勢いを増して、羽根空間部22に連通する循環水路19に吐出され、より多くの水すなわち洗浄水が循環水路19内を揚水され、水槽6内に吐出される。これにより、パルセータ9の回転数を上げなくても、ポンプ流量が増加し、水槽6に吐出され循環される洗浄水を増量させることができる。このため、衣類により多くの洗浄水を供給することができ、洗浄ムラを低減し、洗浄性能を向上させることができる。
【0035】
上記実施形態において、裏羽根18dの湾曲する方向は時計回り方向に凸となってもよいし、その反対方向に凸となっていてもよい。また、この場合は、複数の孔34の配列もこれに合わせて湾曲して配列するようにすればよい。
【0036】
また、導水板40にドーナツ状の開口部44を設けた例を示したが、これに限らない。例えば、導水板40の中央部に小孔を複数設け、これを開口部44としてもよい。開口部44を小孔により構成した場合には、小孔がフィルターとして機能するため、例えばコインなどの大きなものが羽根空間部22に入り込み、裏羽根18に傷をつけたりすることがない。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。