特許第6767905号(P6767905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6767905
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】内燃機関制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20201005BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20201005BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   F02D45/00 360A
   F02D45/00 360E
   F02M51/06 M
   F02M51/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-60936(P2017-60936)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162746(P2018-162746A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153349
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮
(72)【発明者】
【氏名】加島 隆広
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−211444(JP,A)
【文献】 特開2000−073901(JP,A)
【文献】 特開2016−176346(JP,A)
【文献】 特開2008−086119(JP,A)
【文献】 特開2016−098665(JP,A)
【文献】 特開2012−246821(JP,A)
【文献】 特開2016−223291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に適用されると共に、インジェクタのコイル抵抗値に基づいてインジェクタ温度を算出するインジェクタ温度算出部と、前記インジェクタ温度に基づいて内燃機関温度を算出する内燃機関温度算出部と、前記内燃機関温度算出部にて算出された前記内燃機関温度に基づいて前記内燃機関の運転状態を制御する運転状態制御部と、を有する内燃機関制御装置において、
前記内燃機関が冷機状態又は暖機状態にあるかを判断する冷暖機判断部と、
前記内燃機関制御装置の周囲の雰囲気温度を算出する雰囲気温度算出部と、
前記内燃機関が前記冷機状態にあると判断され、前記インジェクタ温度と前記雰囲気温度との差が第1所定値以上である場合、前記インジェクタ温度から算出された前記内燃機関温度を補正する補正部と、
を更に有すると共に、
前記内燃機関制御装置の駆動時において互いに温度差が生じる第1の位置及び第2の位置に対応してそれぞれ配置される第1温度センサ及び第2温度センサを更に有し、
前記第1の位置は、前記内燃機関制御装置の駆動時において前記内燃機関制御装置内で最も高温になる温度の領域に設定される一方で、前記第2の位置は、前記雰囲気温度に最も近くなる温度の領域に設定されており、
前記雰囲気温度算出部は、前記第1温度センサが検出する第1の温度から前記第2温度センサが検出する第2の温度を減算した第1の差分温度と前記第2の温度から前記雰囲気温度を減算した第2の差分温度との関係を予め規定したデータから、前記第1の差分温度の値に対応する前記第2の差分温度の値を求め、前記第2の温度の値から前記第2の差分温度の前記値を減算した値を前記雰囲気温度として算出し、
前記補正部は、前記内燃機関温度を補正するために、前記内燃機関温度から減算する減算量の初期値を、前記初期値と前記インジェクタ温度及び前記雰囲気温度の差との関係を予め規定したデータから、前記インジェクタ温度及び前記雰囲気温度の前記差が大きくなるほど前記初期値の絶対値が大きくなるように算出すると共に、前記減算量を、前記内燃機関の始動から時間が経過するにつれて前記減算量の絶対値が前記初期値の前記絶対値から小さくなるように算出することを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記冷暖機判断部は、前記第1の温度と前記第2の温度との差が第2所定値以下である場合、前記内燃機関が前記冷機状態にあると判断することを特徴とする請求項に記載の内燃機関制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関制御装置に関し、特に、発電機等の汎用機や自動二輪車等の車両に適用される内燃機関制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両においては、キャブレタシステムでは今後より厳しくなる排気ガス規制に対応することが困難になるため、排気ガスの低減を目的として燃料噴射システムの採用が推進されている。しかしながら、発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両の販売価格は大型自動二輪車や四輪自動車等の車両の販売と比較して安価であるために、このような販売価格を考えた場合、キャブレタシステムと比較して高コストな燃料噴射システムをそのまま発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両に採用することは困難である。このため、発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両においては、燃料噴射システムに関する部品、特にセンサ類については、コストの低減が求められている。
【0003】
ここで、例えば燃料噴射システムにおける温度センサは、内燃機関の暖機状態の検出のために用いられることが一般的である。具体的には、燃料噴射システムは、温度センサの出力に基づいて内燃機関の温度を算出し、このように算出した内燃機関の温度に基づいて内燃機関の暖機状態を検出して、点火時期及び燃料噴射の制御を行っている。このため、燃料噴射システムを採用する場合には、内燃機関に温度センサを装着する必要がある。更に、内燃機関に温度センサを設置する際には、配線用のワイヤやカプラを設置する必要がある上に、温度センサを設置する内燃機関の部位を加工する必要がある。この結果、販売価格における燃料噴射システムのコストの割合はキャブレタシステムのものと比較して高くなる。このため、特に発電機等の汎用機や小型自動二輪車等の車両において燃料噴射システムを制御する内燃機関制御装置においては、コストダウンを目的として燃料噴射システムから温度センサを省略することが求められている。
【0004】
かかる状況下で、特許文献1は、エンジン10の電子制御装置20に関し、インジェクタ15の温度とエンジン10の温度との相関に着目し、インジェクタ15の温度からエンジン10の温度を算出し、算出されたエンジン10の温度にてエンジン10を制御する構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−98665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、内燃機関が冷機状態から始動した場合、燃料噴射量が増量補正されており、更に始動直後に全開走行するとインジェクタの駆動がより増加する。これにより、インジェクタの自己発熱量が大きくなり、内燃機関の温度(内燃機関温度)との適切な相関関係を保った値以上にインジェクタの温度(インジェクタ温度)が上昇する場合が考えられる。このような状態において内燃機関温度が上昇する前に内燃機関が停止してその後すぐに再始動すると、インジェクタ温度が高いためにインジェクタ温度から推定した内燃機関温度が実際の内燃機関温度よりも高い温度となって、これらの間に乖離が生じてしまう。そして、このように推定した内燃機関温度をそのまま燃料噴射量の算出に用いると、適切な燃料噴射量よりも少ない燃料噴射量を算出してしまうために、それを適用した結果、ドライバビリティが低下することが考えられる。
【0007】
また、本発明者の検討によれば、内燃機関を始動してその暖機が完了した後に停止させると、内燃機関の発する熱によりインジェクタが暖められるため、インジェクタ温度と内燃機関温度との適切な相関関係が崩れる場合が考えられ、かかる場合にも、内燃機関の推定温度とその実際の温度との間に乖離が生じてしまう。そのため、内燃機関が完全に冷却する前の中暖機状態で内燃機関を再始動した場合にも、同様にドライバビリティが低下することが考えられる。
【0008】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、内燃機関の再始動時にインジェクタ温度が内燃機関温度との適切な相関関係を呈する値から乖離する場合であっても、インジェクタ温度から算出した内燃機関温度が実際の内燃機関温度から乖離することを抑制可能な内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するべく、本発明は、内燃機関に適用されると共に、インジェクタのコイル抵抗値に基づいてインジェクタ温度を算出するインジェクタ温度算出部と、前記インジェクタ温度に基づいて内燃機関温度を算出する内燃機関温度算出部と、前記内燃機関温度算出部にて算出された前記内燃機関温度に基づいて前記内燃機関の運転状態を制御する運転状態制御部と、を有する内燃機関制御装置において、前記内燃機関が冷機状態又は暖機状態にあるかを判断する冷暖機判断部と、前記内燃機関制御装置の周囲の雰囲気温度を算出する雰囲気温度算出部と、前記内燃機関が前記冷機状態にあると判断され、前記インジェクタ温度と前記雰囲気温度との差が第1所定値以上である場合、前記インジェクタ温度から算出された前記内燃機関温度を補正する補正部と、を更に有すると共に、前記内燃機関制御装置の駆動時において互いに温度差が生じる第1の位置及び第2の位置に対応してそれぞれ配置される第1温度センサ及び第2温度センサを更に有し、前記第1の位置は、前記内燃機関制御装置の駆動時において前記内燃機関制御装置内で最も高温になる温度の領域に設定される一方で、前記第2の位置は、前記雰囲気温度に最も近くなる温度の領域に設定されており、前記雰囲気温度算出部は、前記第1温度センサが検出する第1の温度から前記第2温度センサが検出する第2の温度を減算した第1の差分温度と前記第2の温度から前記雰囲気温度を減算した第2の差分温度との関係を予め規定したデータから、前記第1の差分温度の値に対応する前記第2の差分温度の値を求め、前記第2の温度の値から前記第2の差分温度の前記値を減算した値を前記雰囲気温度として算出し、前記補正部は、前記内燃機関温度を補正するために、前記内燃機関温度から減算する減算量の初期値を、前記初期値と前記インジェクタ温度及び前記雰囲気温度の差との関係を予め規定したデータから、前記インジェクタ温度及び前記雰囲気温度の前記差が大きくなるほど前記初期値の絶対値が大きくなるように算出すると共に、前記減算量を、前記内燃機関の始動から時間が経過するにつれて前記減算量の絶対値が前記初期値の前記絶対値から小さくなるように算出することを第1の局面とする。
【0011】
本発明は、第の局面に加えて、前記冷暖機判断部は、前記第1の温度と前記第2の温度との差が第2所定値以下である場合、前記内燃機関が前記冷機状態にあると判断することを第の局面とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、補正部が、内燃機関が冷機状態にあるにもかかわらず、インジェクタ温度と雰囲気温度との差が大きい場合にはインジェクタ温度だけ高温になっていると判断して、インジェクタ温度から算出された内燃機関温度を適切に補正するものであるため、内燃機関の再始動時にインジェクタ温度が内燃機関温度との適切な相関関係を呈する値から乖離する場合であっても、インジェクタ温度から算出した内燃機関温度が実際の内燃機関温度から乖離することを抑制することができる。
【0013】
また、本発明の第の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、補正部が、内燃機関の始動から時間が経過するにつれて内燃機関の実温度が上昇し、インジェクタ温度との相関関係が記憶媒体に記憶されているものに近づくことを考慮して補正量を小さくするものであるため、内燃機関温度を適切に補正することができる。
【0014】
また、本発明の第の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、冷暖機判断部は、第1温度センサが検出する第1の温度と第2温度センサが検出する第2の温度との差が第2所定値以下である場合、内燃機関が冷機状態にあると判断することで、別途内燃機関に温度センサを設けることなく、内燃機関の冷暖機状態を適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、本発明の実施形態における内燃機関制御装置の構成を示す模式図であり、図1(b)は、図1(a)中のインジェクタの構成を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態における内燃機関制御装置が適用される内燃機関が冷機状態から始動した場合において、インジェクタ温度、実エンジン温度、補正前推定エンジン温度、及び補正後推定エンジン温度の時間変化の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態における内燃機関制御装置の再始動時エンジン温度減算量算出処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、本実施形態における内燃機関制御装置の再始動時エンジン温度減算量算出処理で用いられるインジェクタ温度と雰囲気温度との差と、エンジン温度の減算量と、の関係を表すテーブルデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における内燃機関制御装置につき、詳細に説明する。
【0017】
〔内燃機関制御装置の構成〕
まず、図1を参照して、本実施形態における内燃機関制御装置の構成について説明する。本実施形態における内燃機関制御装置は、典型的には、発電機等の汎用機や自動二輪車等の車両といった内燃機関搭載体に好適に搭載されるものであるが、以下、説明の便宜上、かかる内燃機関制御装置は、自動二輪車等の車両に搭載されるものとして説明する。
【0018】
図1(a)は、本実施形態における内燃機関制御装置の構成を示す模式図であり、図1(b)は、図1(a)中のインジェクタの構成を示す模式図である。
【0019】
図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施形態における内燃機関制御装置1は、いずれも図示を省略する車両に搭載されたガソリンエンジン等の内燃機関であるエンジンの機能部品の温度に基づいてエンジンの運転状態を制御するものであり、電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)10を備えている。
【0020】
ECU10は、車両に搭載されたバッテリBからの電力を利用して動作するものであり、波形整形回路11、サーミスタ素子12a、12b、A/D変換器13、点火回路14、駆動回路15、抵抗値検出回路16、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)17、ROM(Read−Only Memory)18、RAM(Random Access Memory)19、タイマ20、及び中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)21を備えている。かかるECU10の各構成要素は、ECU10の筐体10a内に収容される。また、典型的には、ECU10及びエンジンの周囲は、各々外気に触れており、ECU10は、エンジンの放射熱及びエンジンからの伝熱の影響を受けないようにそれから離間して配置されるものである。
【0021】
波形整形回路11は、クランク角センサ2から出力されたエンジンのクランクシャフト3の回転角に対応するクランクパルス信号を整形してデジタルパルス信号を生成する。波形整形回路11は、このように生成したデジタルパルス信号をCPU21に出力する。
【0022】
サーミスタ素子12a(サーミスタB)は、ECU10の筐体10a内で最も高温となる領域(典型的には点火回路14である発熱素子への距離が数ミリメータ程度である発熱素子に近接した領域)に配置されたチップサーミスタであり、その温度に対応した電気抵抗値を呈して、その電気抵抗値に応じた電圧を示す電気信号をA/D変換器13に出力する。なお、かかる電気信号を出力可能なものであれば、サーミスタ素子12aを熱電対等の他の温度センサに代替してもよい。
【0023】
サーミスタ素子12b(サーミスタA)は、ECU10の筐体10a内で最もECU10の筐体10a外の周囲の大気温度である雰囲気温度(外気温)、つまりエンジンの周囲の大気温度である雰囲気温度(外気温)に近くなる領域(典型的には筐体10aへの距離が数ミリメータ程度である筐体10aに近接した領域)に配置されたチップサーミスタであり、その温度に対応した電気抵抗値を呈してその電気抵抗値に応じた電圧を示す電気信号をA/D変換器13に出力する。なお、かかる電気信号を出力可能なものであれば、サーミスタ素子12bを熱電対等の他の温度センサに代替してもよい。
【0024】
A/D変換器13は、スロットル開度センサ4から出力されたエンジンのスロットルバルブの開度を示す電気信号、酸素センサ5から出力されたエンジンに吸気される大気中の酸素濃度を示す電気信号、及びサーミスタ素子12a、12bから出力された電気信号を、アナログ形態からデジタル形態に各々変換する。A/D変換器13は、このようにデジタル形態に変換したこれらの電気信号をCPU21に出力する。
【0025】
点火回路14は、CPU21からの制御信号に従ってオン/オフ制御されるトランジスタ等のスイッチング素子を備え、このスイッチング素子がオン/オフ動作することによって、図示を省略する点火プラグを介してエンジン内の燃料及び空気の混合気に点火するための2次電圧を発生する点火コイル6の動作を制御する。また、点火回路14は、典型的には半導体素子であるドライバIC(Integrated Circuit)であり、筐体10a内で発熱量が最も大きい構成要素である。
【0026】
駆動回路15は、CPU21からの制御信号に従ってオン/オフ制御されるトランジスタ等のスイッチング素子を備え、このスイッチング素子がオン/オフ動作することによって、エンジンに燃料を供給するインジェクタ7のコイル7aの通電/非通電状態を切り換える。ここで、インジェクタ7は、エンジンの図示を省略する吸気管やシリンダヘッドに装着され、エンジンから生じる熱が伝熱される。また、特に図1(b)に示すように、インジェクタ7のコイル7aの等価回路7bは、インダクタンス成分Lと電気抵抗成分Rとから成る直列回路で表される。かかるコイル7aは、インジェクタ7のソレノイド7cを電気的に駆動するための構成部品であり、コイル7aの通電状態においてソレノイド7cが動作することにより、インジェクタ7から燃料が噴出されるものである。
【0027】
抵抗値検出回路16は、インジェクタ7のコイル7aの電気抵抗成分Rに依存して変動する物理量である電気抵抗値(抵抗値)を測定し、このように測定した抵抗値を示す電気信号をCPU21に出力する。
【0028】
EEPROM17は、燃料噴射量学習値やスロットル基準位置学習値といった各種学習値に関するデータ等を記憶する。なお、このような各種学習値に関するデータ等を記憶可能なものであれば、EEPROM17をデータフラッシュ等の他の記憶媒体に代替してもよい。
【0029】
ROM18は、不揮発性の記憶装置によって構成され、後述する再始動時エンジン温度減算量算出処理用等の制御プログラム、並びにインジェクタ温度テーブルデータ、サーミスタの差分温度の相関特性線を呈するテーブルデータ、エンジン温度の減算量の初期値を規定するテーブルデータ、及びエンジン温度テーブルデータ等の各種制御データを格納している。
【0030】
RAM19は、揮発性の記憶装置によって構成され、CPU21のワーキングエリアとして機能する。
【0031】
タイマ20は、CPU21からの制御信号に従って計時処理を実行する。
【0032】
CPU21は、ECU10全体の動作を制御する。本実施形態では、CPU21は、ROM18内に格納されている制御プログラムを実行することにより、インジェクタ温度算出部21a、エンジン温度算出部21b、運転状態制御部21c、冷暖機判断部21d、雰囲気温度算出部21e、及び補正部21fとして機能する。ここで、インジェクタ温度算出部21aは、インジェクタ7のコイル7aの抵抗値に対応するインジェクタ7の温度(インジェクタ温度)を算出する。エンジン温度算出部21bは、インジェクタ温度算出部21aによって算出されたインジェクタ温度に基づいてエンジンの温度(エンジン温度)を算出する。運転状態制御部21cは、エンジン温度算出部21bによって算出されたエンジン温度に基づいて点火回路14及び駆動回路15を制御することによってエンジンの運転状態を制御する。冷暖機判断部21dは、エンジンが冷機状態又は暖機状態にあるかを判断する。雰囲気温度算出部21eは、ECU10の筐体10a外の周囲の大気温度である雰囲気温度(外気温)、つまりエンジンの周囲の雰囲気温度(外気温)を算出する。また、補正部21fは、冷暖機判断部21dによってエンジンが冷機状態にあると判断され、インジェクタ温度算出部21aによって算出されたインジェクタ温度と雰囲気温度算出部21eによって算出された雰囲気温度との差が所定値(第1所定値)以上である場合、エンジン温度算出部21bによって算出されたエンジン温度を補正する。
【0033】
なお、エンジンの機能部品の温度としては、その測定の簡便性等の観点からインジェクタ温度が好適な例として挙げられるが、エンジンの機能部品としては、エンジン温度に対応した抵抗値が測定できるものであればその他の機能備品を用いることができ、その機能備品の温度を、エンジンの機能部品の温度として用いてもよい。また、インジェクタ温度が相関を有するエンジン温度を取得する際には、エンジンの点火プラグ座の温度が実際のエンジン内部の温度に近いことを考慮して、エンジンの点火プラグ座の温度を実測し、これをエンジン温度とし取得することが簡便である。
【0034】
次に、図2を参照して、インジェクタ温度に基づいてエンジン温度を算出する場合に考慮すべき、その算出したエンジン温度(補正前推定エンジン温度)と実際のエンジン温度(実エンジン温度)との間に発生する可能性がある乖離について説明する。
【0035】
図2は、本実施形態における内燃機関制御装置1が適用されるエンジンが冷機状態から始動した場合において、インジェクタ温度L1、実エンジン温度L2、補正後推定エンジン温度L3(波線で示す)、及び補正前推定エンジン温度L4の時間変化の一例を示す図である。
【0036】
図2に示すように、エンジンが冷機状態から始動した場合(時刻t=t0)、燃料噴射量は増量補正されるためにインジェクタ7の駆動が増加し、更に、この始動直後に全開走行するとインジェクタ7の駆動がより増加する。これにより、インジェクタ7の自己発熱量が大きくなり、実エンジン温度L2との適切な相関関係を呈する値以上にインジェクタ温度L1が上昇する可能性がある。このような状態においてエンジンの暖機が完了する前にエンジンが停止(時刻t=t1)して、その後すぐにエンジンが再始動(時刻t=t2)すると、インジェクタ温度L1が適切な相関関係を呈する値よりも高いためにインジェクタ温度L1から推定したエンジン温度(補正前推定エンジン温度L4)が実エンジン温度L2よりも高い温度となってしまい、これらの間に乖離が生じる。そして、このように推定したエンジン温度(補正前推定エンジン温度L4)をそのまま燃料噴射量の算出に用いると、適切な燃料噴射量よりも少なくなるためにドライバビリティが低下してしまう。
【0037】
そこで、本実施形態における内燃機関制御装置1は、以下に示す再始動時エンジン温度減算量処理を実行することによって、インジェクタ温度L1と雰囲気温度TAとの差が所定値(第1所定値)以上である場合、インジェクタ温度L1から算出されたエンジン温度(補正前推定エンジン温度L4)を補正後推定エンジン温度L3に補正する。これにより、エンジンの再始動時にインジェクタ温度L1が実エンジン温度L2との適切な相関関係を呈する値以上に上昇していても、インジェクタ温度L1から算出したエンジン温度(補正後推定エンジン温度L3)が実エンジン温度L2から乖離してしまうことを抑制することができる。なお、エンジンの再始動時にインジェクタ温度L1が実エンジン温度L2との適切な相関関係を呈する値から乖離する典型例は、このようなエンジンの暖機完了前にエンジンが停止した直後にエンジンが再始動される場合の他に、エンジンが停止した後に完全に冷機状態に入る前の中暖機状態でエンジンが再始動される場合が挙げられる。
【0038】
以下、更に、図3及び図4をも参照して、本実施形態における再始動時エンジン温度減算量を実行する際の内燃機関制御装置1の動作について、より具体的に説明する。なお、ここでは、エンジンの暖機完了前にエンジンが停止した直後にエンジンが再始動される場合を想定する。
【0039】
〔再始動時エンジン温度減算量算出処理〕
図3は、本発明の実施形態における内燃機関制御装置1の再始動時エンジン温度減算量算出処理の流れを示すフローチャートである。また、図4は、かかる再始動時エンジン温度減算量算出処理で用いられるインジェクタ温度(INJ温)と雰囲気温度との差と、エンジン温度の減算量と、の関係を表すテーブルデータの一例を示す図である。
【0040】
図3に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り換えられてCPU21が稼働したタイミングにてその動作が開始となる内燃機関制御装置で、燃料噴射量を算出する処理の1つとして実行される再始動時エンジン温度減算量算出処理のフローチャートである。燃料噴射量算出処理が再始動時エンジン温度減算量算出処理に進むと、ステップS1の処理が実行される。かかる再始動時エンジン温度減算量算出処理は、車両のイグニッションスイッチがオン状態でCPU21が稼働している間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0041】
ステップS1の処理では、補正部21fが、インジェクタ温度算出済みフラグを参照する等して、インジェクタ温度(INJ温度)を算出済みであるか否かを判別する。判別の結果、インジェクタ温度を算出済みである場合(ステップS1:Yes)、インジェクタ温度算出部21aは再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップS2の処理に進める。一方、インジェクタ温度を算出済みでない場合には(ステップS1:No)、インジェクタ温度算出部21aは、今回の一連の再始動時エンジン温度減算量算出処理を終了する。
【0042】
ここで、インジェクタ温度は、典型的には、抵抗値検出回路16を介して検出されたインジェクタ7の抵抗値(INJ抵抗値)に対応して、インジェクタ温度算出部21aにより算出されるものである。この際、インジェクタ温度算出部21aは、例えば、ROM18内に予め記憶されているインジェクタ7の抵抗値とインジェクタ温度の値との関係を示すインジェクタ温度テーブルから、このように検出したインジェクタ7の抵抗値に対応するインジェクタ温度の値を検索することにより、インジェクタ温度を算出すればよい。
【0043】
ステップS2の処理では、補正部21fが、減算量初期値算出済フラグがオン状態であるか否かを判別することにより、エンジン温度を補正するための補正量としての減算量(負値)の初期値を算出済みであるか否かを判別する。判別の結果、減算量初期値算出済フラグがオン状態である場合(ステップS2:Yes)、補正部21fは、減算量の初期値を算出済みであると判断し、再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップS8の処理に進める。一方、減算量初期値算出済フラグがオン状態でない場合には(ステップS2:No)、補正部21fは、減算量の初期値を算出済みでないと判断し、再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップS3の処理に進める。
【0044】
ステップS3の処理では、冷暖機判断部21dが、サーミスタ素子12a(サーミスタA)の検出温度T1とサーミスタ素子12b(サーミスタB)の検出温度T2との差が第2所定値以下であるか否かを判別する。判別の結果、差が第2所定値以下である場合(ステップS3:Yes)、冷暖機判断部21dは、エンジンは冷機状態にあると判断し、再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップS4の処理に進める。一方、差が第2所定値以下でない場合には(ステップS3:No)、冷暖機判断部21dは、エンジンは暖機状態にあると判断し、再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップS6の処理に進める。
【0045】
ステップS4の処理では、まず、雰囲気温度算出部21eが、ECU10の筐体10a外の周囲の大気温度である雰囲気温度(外気温)を算出する。そして、補正部21fが、インジェクタ温度と雰囲気温度との差が第1所定値以上であるか否かを判別する。判別の結果、差が第1所定値以上である場合(ステップS4:Yes)、補正部21fは、インジェクタ温度と雰囲気温度との乖離が生じていると判断し、再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップS5の処理に進める。一方、差が第1所定値以上でない場合には(ステップS4:No)、冷暖機判断部21dは、インジェクタ温度と雰囲気温度との乖離は生じていないと判断し、再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップS6の処理に進める。
【0046】
ここで、雰囲気温度算出部21eが雰囲気温度を算出する際には、典型的には、まず、サーミスタ素子12aの検出温度T1からサーミスタ素子12bの検出温度T2を減算した第1の差分温度ΔT12と、サーミスタ素子12bの検出温度T2から雰囲気温度Taを減算した第2の差分温度ΔT2aとの関係を予め規定した相関特性線を示すテーブルデータをROM18中に予め記憶させて用意する。ここで、第1の差分温度ΔT12は、基本的には点火回路14の発熱量、即ちECU10の発熱量に対応するものである。また、第2の差分温度ΔT2aは、点火回路14の発熱量の影響等でサーミスタ素子12bの検出温度T2がエンジンの雰囲気温度Taから相違する場合があることを考慮し、サーミスタ素子12bの検出温度T2とエンジンの雰囲気温度Taとの差分温度に対応するものである。
【0047】
ついで、雰囲気温度算出部21eは、第1の差分温度ΔT12を算出し、相関特性線を示すテーブルデータを検索することにより、第1の差分温度ΔT12の値に対応する第2の差分温度ΔT2aの値を求めればよい。そして、サーミスタ素子12bの検出温度T2から第2の差分温度ΔT2aを減算した値をエンジンの雰囲気温度Taとして算出すればよい。これにより、ECU10の発熱量の影響を排除して実用上の精度のよいエンジンの雰囲気温度Taを算出することができる。但し、ECU10の発熱量の影響を実用上無視し得る場合には、雰囲気温度算出部21eは、サーミスタ素子12bのみを用いて、その検出温度からエンジンの雰囲気温度を算出してもよく、また、エンジンの雰囲気温度を検出する別途のセンサが存在する場合には、その検出温度からエンジンの雰囲気温度を算出してもよい。
【0048】
ステップS5の処理では、補正部21fが、インジェクタ温度と雰囲気温度との差からエンジン温度の減算量の初期値を算出する。具体的には、補正部21fは、図4に示すようなテーブルデータからインジェクタ温度と雰囲気温度との差に対応するエンジン温度の減算量を減算量の初期値として検索する。なお、図4に示すテーブルデータでは、減算量は負の値であり、インジェクタ温度と雰囲気温度との差が0であるときに減算量を0とし、それらの差が大きくなるほど、減算量の絶対値が大きくなるように設定されている。これにより、ステップS5の処理は完了し、再始動時エンジン温度減算量算出処理はステップS7の処理に進む。
【0049】
ステップS6の処理では、補正部21fが、エンジン温度の減算量の初期値をゼロに設定する。これにより、ステップS6の処理は完了し、再始動時エンジン温度減算量算出処理はステップS7の処理に進む。
【0050】
ステップS7処理では、補正部21fが、エンジン温度の減算量の初期値を算出済みであるか否かを示す減算量初期値算出済フラグをオン状態に設定する。これにより、ステップS7の処理は完了し、再始動時エンジン温度減算量算出処理はステップS8の処理に進む。
【0051】
ステップS8の処理では、補正部21fが、減算量算出終了フラグがオン状態であるか否かを判別することにより、エンジン温度の減算量の算出処理が終了しているか否かを判別する。判別の結果、減算量算出終了フラグがオン状態である場合(ステップS8:Yes)、補正部21fは、エンジン温度の減算量の算出処理は終了していると判断し、今回の一連の再始動時エンジン温度減算量算出処理を終了する。一方、減算量算出終了フラグがオン状態でない場合には(ステップS2:No)、補正部21fは、エンジン温度の減算量の算出処理は終了していないと判断し、再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップS9の処理に進める。
【0052】
ステップS9の処理では、補正部21fが、タイマ20のカウント値がゼロ以下であるか否かを判別することにより、前回の減算量の算出処理から所定時間が経過したか否かを判別する。判別の結果、タイマ20のカウント値がゼロ以下である場合(ステップS9:Yes)、補正部21fは、前回の減算量の算出処理から所定時間が経過したと判断し、再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップS10の処理に進める。一方、タイマ20のカウント値がゼロ以下でない場合には(ステップS9:No)、補正部21fは、前回の減算量の算出処理から所定時間が経過していないと判断し、今回の一連の再始動時エンジン温度減算量算出処理を終了する。
【0053】
ステップS10の処理では、補正部21fが、タイマ20のカウント値をリセットする。これにより、ステップS10の処理は完了し、再始動時エンジン温度減算量算出処理はステップS11の処理に進む。
【0054】
ステップS11の処理では、補正部21fが、現在のエンジン温度の減算量に所定値を加算することにより、減算量の絶対値を減少させる。これにより、ステップS11の処理は完了し、再始動時エンジン温度減算量算出処理はステップS12の処理に進む。
【0055】
ステップS12の処理では、補正部21fが、減算量がゼロ以上であるか否かを判別する。判別の結果、減算量がゼロ以上である場合(ステップS12:Yes)、補正部21fは、再始動時エンジン温度減算量算出処理をステップ13の処理に進める。一方、減算量がゼロ以上でない場合には(ステップS12:No)、補正部21fは、今回の一連の再始動時エンジン温度減算量算出処理を終了する。
【0056】
ステップS13の処理では、補正部21fが、エンジン温度の減算量をゼロに設定する。これにより、ステップS13の処理は完了し、再始動時エンジン温度減算量算出処理はステップS14の処理に進む。
【0057】
ステップS14の処理では、補正部21fが、減算量算出終了フラグをオン状態に設定する。これにより、ステップS14の処理は完了し、今回の一連の再始動時エンジン温度減算量算出処理は終了する。
【0058】
なお、補正部21fは、エンジン温度算出部21bによって算出されたエンジン温度に、以上のように算出される減算量を加算することによって、エンジン温度を補正することにより、図2に示す補正後推定エンジン温度L3を算出することになる。また、エンジン温度算出部21bがエンジン温度(図2に示す補正前推定エンジン温度L4)を算出する際には、典型的には、まず、インジェクタ温度算出部21aにより算出されたインジェクタ温度を、雰囲気温度算出部21eにより算出された雰囲気温度で補正する。ついで、エンジン温度算出部21bは、このように補正されたインジェクタ温度の値とエンジン温度の値との関係を規定してROM18内に予め記憶されているエンジン温度テーブルデータを検索することにより、このように補正されたインジェクタ温度に対応するエンジン温度を算出すればよい。これにより、エンジンの雰囲気温度の相違による不要な影響を排除した態様では、エンジンの温度を算出することができる。但し、エンジンの雰囲気温度の相違を実用上無視し得る場合には、雰囲気温度算出部21eにより算出された雰囲気温度での補正を省略して、インジェクタ温度算出部21aにより算出されたインジェクタ温度からエンジン温度を算出してもよい。
【0059】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における内燃機関制御装置1では、補正部21fが、エンジンが冷機状態にあると判断され、インジェクタ温度と雰囲気温度との差が第1所定値以上である場合、インジェクタ温度から算出されたエンジン温度を補正する構成を有するので、エンジンが冷機状態にあるにもかかわらず、インジェクタ温度と雰囲気温度との差が大きい場合にはインジェクタ温度だけ高温になっていると判断して、インジェクタ温度から算出されたエンジン温度を補正することができ、エンジンの再始動時にインジェクタ温度がエンジン温度との適切な相関関係を呈する値から乖離する場合であっても、インジェクタ温度から算出したエンジン温度が実際のエンジン温度から乖離することを抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、補正部21fが、エンジン温度を補正するための補正量の初期値を、インジェクタ温度と雰囲気温度との差に対する相対関係から算出すると共に、エンジンの始動から時間が経過するにつれて補正量を小さくする構成を有するので、エンジンの実温度が上昇し、インジェクタ温度との相関関係がROM18に記憶されているものに近づくことを考慮して補正量を小さくすることができ、エンジン温度を適切に補正することができる。
【0061】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、内燃機関制御装置1の駆動時において互いに温度差が生じる第1及び第2の位置に対応してそれぞれ配置されるサーミスタ素子12a及びサーミスタ素子12bを用いて、冷暖機判断部21dは、サーミスタ素子12aの検出温度T1とサーミスタ素子12bの検出温度T2との差が第2所定値以下である場合、エンジンが冷機状態にあると判断する構成を有するものであるため、別途エンジンに温度センサを設けることなく、エンジンの冷暖機状態を適切に判断することができる。
【0062】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0063】
例えば、本実施形態では、インジェクタ温度に対応するエンジン温度として、エンジンの点火プラグ座の温度を用いているが、これに限定するものではなく、例えば、エンジン冷却水温やシリンダー壁温等を用いてもよい。
【0064】
また、本実施形態における図3のステップS5の処理で言及した、インジェクタ温度と雰囲気温度との差に対応するエンジン温度の減算量のテーブルデータには、負値を用いているが、それに限らず正値を用いてもよい。減算量が負値の場合には、基本の燃料噴射量に減算量を加算していたが、減算量が正値の場合には、基本の燃料噴射量から減算量を減算することになる。
【0065】
また、本実施形態の構成は、単気筒エンジンのみならず多気筒エンジンに用いてもよい。その場合には、多気筒エンジンの各気筒のインジェクタのコイル抵抗値からその気筒の温度を推定し、各気筒の温度に合わせてその気筒の燃料噴射量等を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明は、内燃機関の再始動時にインジェクタ温度が内燃機関温度との適切な相関関係を呈する値から乖離する場合であっても、インジェクタ温度から算出した内燃機関温度が実際の内燃機関温度から乖離することを抑制可能な内燃機関制御装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から発電機等の汎用機や自動二輪車等の車両の内燃機関制御装置に広く適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0067】
1…内燃機関制御装置
2…クランク角センサ
3…クランクシャフト
4…スロットル開度センサ
5…酸素センサ
6…点火コイル
7…インジェクタ
7a…コイル
7b…コイルの等価回路
7c…ソレノイド
10…ECU
10a…筐体
11…波形整形回路
12a、12b…サーミスタ素子
13…A/D変換器
14…点火回路
15…駆動回路
16…抵抗値検出回路
17…EEPROM
18…ROM
19…RAM
20…タイマ
21…CPU
B…バッテリ
図1
図2
図3
図4