特許第6767906号(P6767906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6767906
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20201005BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20201005BHJP
   F25B 31/00 20060101ALI20201005BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20201005BHJP
【FI】
   F25B1/00 341V
   F25B1/00 351T
   F25B27/00 A
   F25B31/00 A
   F24F11/46
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-61547(P2017-61547)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162948(P2018-162948A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年12月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】中村 広孝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 秀志
(72)【発明者】
【氏名】池田 孝之
(72)【発明者】
【氏名】奥田 憲弘
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−007868(JP,A)
【文献】 特開2015−004444(JP,A)
【文献】 特開平03−122438(JP,A)
【文献】 特開2015−132412(JP,A)
【文献】 特開2013−231523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/46
F25B 27/00
F25B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタータモータによって始動されるとともに、エンジン駆動コンプレッサを駆動するエンジンと、
コンプレッサモータによって駆動される電動コンプレッサと、
前記コンプレッサモータ及び前記電動コンプレッサ以外の電動アクチュエータと、
エンジン始動タイミング毎において、前記電動コンプレッサ及び前記電動アクチュエータのうち少なくとも何れかについて、出力を低下させるか出力を維持し、当該エンジンの始動後に出力を上昇させるエンジン始動制御と、電動コンプレッサ始動タイミング毎において、前記電動アクチュエータについて、出力を低下させるか出力を維持し、当該電動コンプレッサの始動後に出力を上昇させる電動コンプレッサ始動制御と、のうち少なくとも何れかの制御を行う制御部と、
を備え
前記電動アクチュエータには、対象とする熱交換の効率を上げるための複数のファンが含まれており、
複数のファンは、対象とする熱交換が同じであり、
前記制御部は、前記エンジン始動制御及び前記電動コンプレッサ始動制御の少なくとも何れかを行う際において、前記エンジン又は前記電動コンプレッサの始動後に、少なくとも1つの前記ファンを始動させた後に、残りの1又は複数の前記ファンを始動させることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプであって、
前記制御部は、
前記エンジン始動制御を行う場合は、エンジン始動タイミングにおいて、駆動中の前記電動コンプレッサ及び前記電動アクチュエータのうち少なくとも何れかについて出力を一時的に低下させ、
前記電動コンプレッサ始動制御を行う場合は、電動コンプレッサ始動タイミングにおいて、駆動中の前記電動アクチュエータの出力を一時的に低下させることを特徴とするヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンにより駆動されるエンジン駆動コンプレッサと、コンプレッサモータにより駆動される電動コンプレッサと、を備えるヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン駆動コンプレッサと電動コンプレッサとを備えるハイブリッドタイプのヒートポンプが知られている。特許文献1及び2は、このハイブリッドタイプのヒートポンプを開示する。
【0003】
特許文献1には、エンジン駆動コンプレッサ(第1圧縮機)を用いるガスヒートポンプ調和機と、電動コンプレッサ(第2圧縮機)を用いる電気式ヒートポンプ調和機と、の出力のバランスを空調負荷に応じて決定することが記載されている。また、特許文献1には、ガスヒートポンプ調和機の効率又は寿命を重視する制御と、電気式ヒートポンプ調和機の寿命及び契約電力量(電力消費)の上昇を抑えることを重視する制御と、を切り替えることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、予め定められたスケジュールに応じて、ガスヒートポンプ調和機と電気式ヒートポンプ調和機を駆動することが記載されている。また、特許文献2には、ガスヒートポンプ調和機と電気式ヒートポンプ調和機の何れか一方のみを駆動することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−187342号公報
【特許文献2】特開2012−7867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2では、電力消費の上昇を抑えるために、ガスヒートポンプ調和機と電気式ヒートポンプ調和機の出力割合を調整することしか記載されていない。ここで、電力消費が瞬間的にのみ大きくなる場合であっても、電力消費の大きさに応じた設備又は電気契約等が必要となる。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、エンジン駆動コンプレッサと電動コンプレッサとを備えるハイブリッドタイプのヒートポンプにおいて、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止するための構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成のヒートポンプが提供される。即ち、このヒートポンプは、エンジンと、電動コンプレッサと、コンプレッサモータ及び電動コンプレッサ以外の電動アクチュエータと、制御部と、を備える。前記エンジンは、スタータモータによって始動されるとともに、エンジン駆動コンプレッサを駆動する。前記電動コンプレッサは、コンプレッサモータによって駆動される。前記制御部は、エンジン始動タイミング毎において、前記電動コンプレッサ及び前記電動アクチュエータのうち少なくとも何れかについて、出力を低下させるか出力を維持し、当該エンジンの始動後に出力を上昇させるエンジン始動制御と、電動コンプレッサ始動タイミング毎において、前記電動アクチュエータについて、出力を低下させるか出力を維持し、当該電動コンプレッサの始動後に出力を上昇させる電動コンプレッサ始動制御と、のうち少なくとも何れかの制御を行う。前記電動アクチュエータには、対象とする熱交換の効率を上げるための複数のファンが含まれている。複数のファンは、対象とする熱交換が同じである。前記制御部は、前記エンジン始動制御及び前記電動コンプレッサ始動制御の少なくとも何れかを行う際において、前記エンジン又は前記電動コンプレッサの始動後に、少なくとも1つの前記ファンを始動させた後に、残りの1又は複数の前記ファンを始動させる。
【0010】
上記の構成によれば、エンジン始動タイミング又は電動コンプレッサ始動タイミングにおいて、他の電気機器の出力を低下させたり始動を待機させたりすることにより、電力消費が一時に集中することを防止できるので、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止できる。また、複数のファンの出力を上昇させるタイミングを異ならせることで、電力消費が一時に集中することを防止できるので、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止できる。
【0011】
前記のヒートポンプにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記エンジン始動制御を行う場合は、エンジン始動タイミングにおいて、駆動中の前記電動コンプレッサ及び前記電動アクチュエータのうち少なくとも何れかについて出力を一時的に低下させる。前記電動コンプレッサ始動制御を行う場合は、電動コンプレッサ始動タイミングにおいて、駆動中の前記電動アクチュエータの出力を一時的に低下させる。
【0012】
これにより、電動コンプレッサ又は電動アクチュエータが駆動中であっても、一時的に出力を低下させることで、電力消費が一時に集中することを防止できるので、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るヒートポンプの冷媒回路図。
図2】ヒートポンプの電気的な構成を示すブロック図。
図3】電動コンプレッサが駆動していない状態でエンジンを始動させる場合のタイミングチャート。
図4】エンジンが駆動していない状態で電動コンプレッサを始動させる場合のタイミングチャート。
図5】電動コンプレッサが駆動している状態でエンジンを始動させる場合のタイミングチャート。
図6】エンジンが駆動している状態で電動コンプレッサを始動させる場合のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1を参照して、実施形態に係るヒートポンプ1が組み込まれた建物用の空気調和器について説明する。図1は、ヒートポンプ1の冷媒回路図である。
【0017】
図1に示すように、ヒートポンプ1は、室外機10と、室内機50と、を備える。ヒートポンプ1は、室外機10の室外熱交換器22と、室内機50の室内熱交換器51と、の間で冷媒を介して熱交換を行うことで、室内機50が設置された室内の空気の温度を上昇させたり下降させたりすることができる。
【0018】
室外機10は、動力源として、エンジン12及びコンプレッサモータ15を備える。エンジン12は、ガスエンジンであり、供給されたガスを燃焼させることで動力を発生させて2つのエンジン駆動コンプレッサ13を駆動する。なお、エンジン12が駆動するエンジン駆動コンプレッサ13の数は1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。また、エンジン12の燃料はガスに限られず、例えばガソリン又は軽油であっても良い。
【0019】
コンプレッサモータ15は、供給された電力を用いて動力を発生させて1つの電動コンプレッサ16を駆動する。なお、コンプレッサモータ15は、複数の電動コンプレッサ16を駆動する構成であっても良い。このように、本実施形態のヒートポンプ1は、エンジン及び電動モータでコンプレッサを駆動するハイブリッドタイプのヒートポンプである。なお、ヒートポンプ1は、複数のエンジン12及び/又は複数のコンプレッサモータ15を備える構成であっても良い。
【0020】
エンジン駆動コンプレッサ13及び電動コンプレッサ16は、アキュムレータ11からガス状態の冷媒を吸入する。アキュムレータ11は、ガス状態の冷媒を貯留するための部材である。アキュムレータ11内では、冷媒は低温かつ低圧のガス状態である。アキュムレータ11内の冷媒は、エンジン駆動コンプレッサ13及び電動コンプレッサ16により圧縮されることで、高温かつ高圧のガス状態となる。エンジン駆動コンプレッサ13は、第1逆止弁14を介して、この冷媒をオイルセパレータ20へ吐出する。また、電動コンプレッサ16は、第2逆止弁17を介して、この冷媒をオイルセパレータ20へ吐出する。
【0021】
オイルセパレータ20は、ガス状の冷媒から、エンジン駆動コンプレッサ13及び電動コンプレッサ16用の潤滑油を分離する。この分離された潤滑油は、図略の回路によってエンジン駆動コンプレッサ13及び電動コンプレッサ16に戻される。また、オイルセパレータ20によって潤滑油が分離されたガス状の冷媒は、四方弁21へ供給される。
【0022】
四方弁21には、4つのポートが形成されており、暖房時と冷房時とで冷媒の供給先を異ならせる。初めに、暖房時の冷媒の流れについて説明する。
【0023】
暖房時において、四方弁21は、図1に実線に示すように室内熱交換器51へガス状の冷媒を供給する。室内熱交換器51では、冷媒から室内の空気へ熱を移動させる熱交換が行われる。この熱交換により、室内の空気の温度が上昇する。また、冷媒は、この熱交換により、低温かつ高圧の液状に変化する。なお、図1では、2つの室内熱交換器51を備える構成であるが、室内熱交換器51は、1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。室内熱交換器51で熱交換されて液状となった冷媒は、第3逆止弁26を経由してレシーバ23へ供給される。
【0024】
レシーバ23は、液状の冷媒を貯留するための部材である。レシーバ23へ供給された冷媒は、第4逆止弁27を経由した後に、第1膨張弁31又は第2膨張弁32を経由して、室外熱交換器22へ供給される。また、液状の冷媒は、第1膨張弁31又は第2膨張弁32を通過することにより、霧状かつ低圧となる。なお、本実施形態に係るヒートポンプ1では、2つの室外熱交換器22が設けられているが、室外熱交換器22の数は1つであっても良いし、3つ以上であってもよい。
【0025】
室外熱交換器22では、外気から冷媒へ熱を移動させる熱交換が行われる。この熱交換により、冷媒がガス状に変化する。このガス状の冷媒は、四方弁21を介してアキュムレータ11に供給される。アキュムレータ11では、ガス状の冷媒が貯留される。
【0026】
次に、冷房時の冷媒の流れについて説明する。冷房時において、四方弁21は、図1に鎖線に示すように室外熱交換器22へガス状の冷媒を供給する。室外熱交換器22では、冷媒から外気へ熱を移動させる熱交換が行われる。この熱交換により、冷媒は、低温かつ高圧の液状に変化する。室外熱交換器22で熱交換されて液状となった冷媒は、第5逆止弁28を経由してレシーバ23へ供給される。
【0027】
レシーバ23へ供給された液状の冷媒は、室内熱交換器51へ供給される。室内熱交換器51では、室内の空気から冷媒へ熱を移動させる熱交換が行われる。この熱交換により、室内の空気の温度が下降する。また、冷媒は、この熱交換により、低温かつ低圧のガス状に変化する。室内熱交換器51で熱交換された冷媒は、四方弁21を介してアキュムレータ11に供給される。アキュムレータ11では、ガス状の冷媒が貯留される。
【0028】
次に、図2を参照して、ヒートポンプ1の電気的な構成について説明する。図2は、ヒートポンプ1の電気的な構成を示すブロック図である。また、以下の説明では、電気で駆動されるアクチュエータのうち、電動コンプレッサ16及びコンプレッサモータ15を除いたものを単に「電動アクチュエータ」と称することがある。
【0029】
図2に示すように、ヒートポンプ1は、メイン制御部61を備える。メイン制御部61は、CPU、RAM、及びROM等を備えたコンピュータであり、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することで、ヒートポンプ1の各部を制御する。具体的には、図2に示すように、メイン制御部61は、冷却水ポンプ12aと、スタータモータ12bと、コンプレッサモータ15と、第1ファン71〜第3ファン73と、の動作を制御する。メイン制御部61が行う具体的な動作の制御は、各部の駆動の有無を変化させること、及び、駆動時の出力を変化させることである。
【0030】
冷却水ポンプ12aは、エンジン12内に冷却水を循環させるための部品である。メイン制御部61は、エンジン12の駆動中は基本的には冷却水ポンプ12aを駆動し続ける。また、スタータモータ12bは、エンジン12を始動させるための部品である。従って、メイン制御部61は、エンジン12を始動させるタイミングでスタータモータ12bを駆動し、エンジン12の始動後はスタータモータ12bを駆動しない。なお、メイン制御部61は、シリンダに供給するガスの量等を変化させることで、エンジン12の出力を調整することもできる。
【0031】
メイン制御部61は、別のハードウェアであるモータ制御部62を介して、コンプレッサモータ15の動作を制御する。メイン制御部61は、コンプレッサモータ15の動作を制御することで、コンプレッサモータ15の駆動の有無を変化させたり、駆動時の出力を変化させたりすることができる。
【0032】
第1ファン71〜第3ファン73は、室外機10の室外熱交換器22の近傍に設けられている。第1ファン71〜第3ファン73は、外気と室外熱交換器22との熱交換の効率を上げるための部品である。従って、メイン制御部61は、ヒートポンプ1の駆動中は基本的には、第1ファン71〜第3ファン73を駆動し続ける。
【0033】
なお、本実施形態では、メイン制御部61は、室外機10の内部に配置されているが、室内機50の内部に配置されていても良いし、更に別の場所に配置されていても良い。また、本実施形態では、ヒートポンプ1毎にメイン制御部61が設けられているが、複数のヒートポンプ1を1つのメイン制御部61で制御しても良い。
【0034】
また、メイン制御部61とモータ制御部62が同じハードウェアから構成されていても良い。あるいは、メイン制御部61が別のハードウェアを介して、エンジン12及び第1ファン71〜第3ファン73を制御しても良い。
【0035】
次に、エンジン12又は電動コンプレッサ16を始動する際にメイン制御部61が各部の動作をどのように制御するかについて説明する。本実施形態の電動アクチュエータは、建物の送電線等の電力供給設備から電力が供給されている。これらの電動アクチュエータは、メイン制御部61から所定の始動信号等を受信することで、電力供給設備の電力を用いて始動する。
【0036】
初めに、図3を参照して、電動コンプレッサ16が駆動していない状態でエンジン12を始動させる場合について、説明する。図3は、この場合にメイン制御部61が行う制御を示すタイミングチャートである。
【0037】
また、図3及びそれ以降の図において、エンジン運転要求とは、エンジン12と電動コンプレッサ16の何れを優先的に駆動するか、及び、要求される空調能力等に基づいて、メイン制御部61がエンジン12を運転させるか否かを決定した結果を示す。同様に、電動運転要求とは、上記に基づいて、メイン制御部61が電動コンプレッサ16を運転させるか否かを決定した結果を示す。エンジン運転要求及び電動運転要求において、図3に示す「ON」が運転させることを示し、「OFF」が運転させないことを示す。
【0038】
エンジン運転要求及び電動運転要求の両方がOFFである場合、図3に示す電動アクチュエータは、何れも駆動されていない。その後、エンジン運転要求がONになった後に、メイン制御部61は、初めに第1ファン71を始動する。メイン制御部61は、第1ファン71の始動の完了後、つまり第1ファン71の出力が一定になった後に、第2ファン72を始動する。同様に、メイン制御部61は、第2ファン72の始動の完了後、第3ファン73を始動する。次に、メイン制御部61は、第3ファン73の始動の完了後、冷却水ポンプ12aを始動する。一般的に電動アクチュエータは、始動時に大きな電力消費が大きい。従って、本実施形態のように、第1ファン71〜第3ファン73及び冷却水ポンプ12aの始動のタイミングを異ならせることで、電力消費が一時に集中することを防止できるので、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止できる。
【0039】
その後、メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73及び冷却水ポンプ12aの駆動を一斉に停止する。電動アクチュエータの駆動の停止時には電力消費の問題は生じないため、メイン制御部61は、これらの電動アクチュエータの駆動を一斉に停止する。メイン制御部61は、これらの電動アクチュエータの駆動の停止の完了後に、スタータモータ12bを駆動する。
【0040】
スタータモータ12bは、短時間の駆動のみが想定されている。本実施形態では、スタータモータ12bを駆動してもエンジン12が始動しない場合、メイン制御部61は、再度スタータモータ12bを駆動する。図3では、スタータモータ12bを3回駆動してエンジン12の始動に成功した例が示されている。なお、本実施形態では、エンジン運転要求がOFFからONになってエンジン12の始動に関連する処理が開始した後であって、エンジン12が実際に始動するまでのタイミングを「エンジン始動タイミング」と称する(図3を参照)。
【0041】
エンジン12の始動後、メイン制御部61は、上記と同様に、第1ファン71〜第3ファン73及び冷却水ポンプ12aを順番に始動する。このように、本実施形態では、メイン制御部61は、エンジン始動タイミングにおいて、第1ファン71〜第3ファン73及び冷却水ポンプ12aの駆動を停止することで出力を一時的に0まで低下させ、エンジン12の始動後に出力を上昇させる(エンジン始動制御)。スタータモータ12bの駆動には大きな電力が必要となるため、このエンジン始動制御を行うことにより、電力消費が一時に集中することを防止できるので、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止できる。
【0042】
また、エンジン始動タイミングにおける第1ファン71〜第3ファン73の出力は、エンジン12の始動後の第1ファン71〜第3ファン73の出力よりも小さい。これにより、仮に第1ファン71〜第3ファン73の出力が0となる前にスタータモータ12bが駆動された場合においても、電力消費が一時に集中することを防止できるので、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止できる。
【0043】
また、本実施形態のエンジン始動制御は、エンジン始動タイミングにおいて、電動アクチュエータの出力を下げる処理を行い、エンジン12の始動後に、電動アクチュエータの出力を上げて元に戻す。これに代えて、エンジン始動タイミングにおいて、電動アクチュエータの出力を0の状態で維持し(即ち始動を待機し)、エンジン12の始動後に電動アクチュエータの出力を上昇させて始動させる構成であっても良い。
【0044】
このように、本実施形態では、電動コンプレッサ16が駆動していない状態でのエンジン始動制御の対象が、第1ファン71〜第3ファン73、及び、冷却水ポンプ12aである。言い換えれば、エンジン始動制御の対象は、ヒートポンプ1の駆動時に駆動される電動アクチュエータと、エンジン12の駆動時に駆動される電動アクチュエータである。なお、この状態のエンジン始動制御の対象として、電動コンプレッサ16の駆動時に駆動される電動アクチュエータを含めても良い。
【0045】
次に、図4を参照して、エンジン12が駆動していない状態で電動コンプレッサ16を始動させる場合について、説明する。図4は、この場合にメイン制御部61が行う制御を示すタイミングチャートである。
【0046】
電動運転要求がOFFからONになった場合、メイン制御部61は、図3と同様に、第1ファン71〜第3ファン73を順番に、かつ、通常時よりも小さい出力となるように始動する。ここで、電動アクチュエータの通常時の出力とは、エンジン始動制御又は電動コンプレッサ始動制御等の電動アクチュエータの出力を抑える処理を行わない場合に設定される出力である。例えば、各電動アクチュエータの出力は、センサの検出値等に応じて目標値が設定されるが、その目標値の出力が通常時の出力である。あるいは、センサの検出値を用いずに電動アクチュエータの出力を一定にして駆動し続ける場合は、その出力が通常時の出力である。なお、冷却水ポンプ12aは、電動コンプレッサ16の駆動中に駆動する必要がないため、始動されない。
【0047】
メイン制御部61は、第3ファン73の始動が完了した後に、電動コンプレッサ16の始動を開始する。図4に示すように、メイン制御部61は、電動コンプレッサ16の出力を段階的に上昇させる。本実施形態では、電動運転要求がOFFからONになって電動コンプレッサ16の始動に関連する処理が開始した後であって、電動コンプレッサ16が目標の出力となるまでのタイミングを「電動コンプレッサ始動タイミング」と称する。従って、電動コンプレッサ16の出力を段階的に大きくして目標の出力にする場合は、目標の出力になることで電動コンプレッサ16の始動が完了したと捉える。ここで、目標の出力とは、電動コンプレッサ16を始動する際の目標の出力を指し、電動コンプレッサ16の始動後に周囲の状況及び各種の要求等に基づいて変更された目標の出力を指す訳ではない。
【0048】
メイン制御部61は、第3ファン73の始動が完了した後に、第1ファン71〜第3ファン73の出力を維持しつつ、電動コンプレッサ16の出力を0から第1出力値まで上昇させる。第1出力値は、電動コンプレッサ16の出力を段階的に上昇させて目標の出力(第2出力値)にする際の途中の値である。従って、第1出力値は、電動コンプレッサ16の目標の出力である第2出力値よりも小さい。メイン制御部61は、電動コンプレッサ16の出力を第1出力値まで到達させた後に、電動コンプレッサ16の出力を第1出力値に維持しつつ、第1ファン71〜第3ファン73を同時に、通常時の出力まで上昇させる。メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73の出力が通常時の出力となった後に、電動コンプレッサ16の出力を目標の出力まで上昇させる。
【0049】
電動コンプレッサ16を始動するために必要な電力は、スタータモータ12bを駆動するために必要な電力よりも小さい。そのため、電動コンプレッサ16の始動タイミングにおいては、電動コンプレッサ16の出力を0から上昇させる際においても、メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73を駆動させている。ただし、電動コンプレッサ始動タイミングにおける、第1ファン71〜第3ファン73の出力は通常時より小さい。このように、電動コンプレッサ始動タイミングにおいて、電動アクチュエータの出力を通常時よりも低くすることで、電力消費が一時に集中することを防止できるので、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止できる。
【0050】
次に、図5を参照して、電動コンプレッサ16が駆動している状態でエンジン12を始動させる場合について、説明する。図5は、この場合にメイン制御部61が行う制御を示すタイミングチャートである。
【0051】
エンジン運転要求がONになる前の状態における、各部の駆動状態は、図4の電動コンプレッサ16の始動後と同じである。この状態から、エンジン運転要求がONになることで、メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73の駆動を停止すると同時に、電動コンプレッサ16の出力を低下させる。メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73の駆動の停止、及び、電動コンプレッサ16の出力の低下が完了した後に、スタータモータ12bを駆動する。ただし、メイン制御部61は、エンジン運転要求がONになった後、第1ファン71〜第3ファン73の一部又は全部の出力を所定の出力値(≠0)まで低下させてもよい。
【0052】
スタータモータ12bを駆動することでエンジン12が始動した後に、メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73の出力を同時に、通常時に出力に戻す。メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73の全てについて出力が通常時の出力に戻った後に、電動コンプレッサ16の出力を、エンジン運転要求がONになった直後の出力である、直近の目標の出力まで戻す。
【0053】
このように、本実施形態では、メイン制御部61は、エンジン始動タイミングにおいて、第1ファン71〜第3ファン73の駆動を停止することで第1ファン71〜第3ファン73の出力を一時的に0まで低下させるとともに、電動コンプレッサ16の出力を一時的に所定の値まで低下させ、エンジン12の始動後に出力を上昇させる(エンジン始動制御)。
【0054】
電動運転要求がONの状態でエンジン12が始動する場合(図5)において、メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73を順番に始動する制御を行っても良い。逆に、電動運転要求がOFFの状態でエンジン12が始動する場合(図3)において、メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73を一斉に始動する制御を行っても良い。
【0055】
このように、本実施形態では、電動コンプレッサ16が駆動している状態でのエンジン始動制御の対象は、第1ファン71〜第3ファン73、及び、電動コンプレッサ16であるが、エンジン始動制御の対象として、第1ファン71〜第3ファン73を外しても良いし、別の電動アクチュエータを加えても良いし、電動コンプレッサ16を外しても良い。
【0056】
次に、図6を参照して、エンジン12が駆動している状態で電動コンプレッサ16を始動させる場合について、説明する。図6は、この場合にメイン制御部61が行う制御を示すタイミングチャートである。
【0057】
電動運転要求がOFFの状態における、各部の駆動状態は、図3のエンジン12の始動後と同じである。この状態から、電動運転要求がONになることで、メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73の駆動を一斉に停止して出力を0にする。なお、冷却水ポンプ12aについては、必要な電力が第1ファン71〜第3ファン73よりも小さく、影響が小さいため、通常時と同じ出力を維持する。
【0058】
メイン制御部61は、第1ファン71〜第3ファン73の全ての駆動を停止した後に、電動コンプレッサ16の出力を上昇させる。このとき、図4と異なり、電動コンプレッサ16を段階的ではなく、目標の出力まで一度に上昇させる。メイン制御部61は、電動コンプレッサ16の出力が目標の出力まで上昇した後に、第1ファン71〜第3ファン73を順番に始動して通常時に出力まで上昇させる。
【0059】
このように、本実施形態では、メイン制御部61は、電動コンプレッサ始動タイミングにおいて、第1ファン71〜第3ファン73の駆動を停止することで出力を一時的に0まで低下させ、電動コンプレッサ16の始動後に出力を上昇させる(電動コンプレッサ始動制御)。これにより、必要な電力が大きくなる、電動コンプレッサ16の始動時において、第1ファン71〜第3ファン73が停止しているため、電力消費が一時に集中することを防止できるので、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止できる。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態のヒートポンプ1は、エンジン12と、電動コンプレッサ16と、コンプレッサモータ15及び電動コンプレッサ16以外の電動アクチュエータと、メイン制御部61と、を備える。エンジン12は、スタータモータ12bによって始動されるとともに、エンジン駆動コンプレッサ13を駆動する。電動コンプレッサ16は、コンプレッサモータによって駆動される。メイン制御部61は、エンジン始動タイミングにおいて、電動コンプレッサ16及び電動アクチュエータのうち少なくとも何れかについて、出力を低下させるか出力を維持し、当該エンジン12の始動後に出力を上昇させるエンジン始動制御と、電動コンプレッサ16の始動タイミングにおいて、電動アクチュエータについて、出力を低下させるか出力を維持し、当該電動コンプレッサ16の始動後に出力を上昇させる電動コンプレッサ始動制御と、の制御を行う。
【0061】
上記の構成によれば、エンジン始動タイミング又は電動コンプレッサ始動タイミングにおいて、電動アクチュエータ及び/又は電動コンプレッサ16の出力を低下させたり出力を通常時よりも低く維持したりすることにより、電力消費が一時に集中することを防止できるので、瞬間的な電力消費を抑えることができる。一般に、電力消費が瞬間的にしか大きくならない場合であっても、電力消費の大きさに応じた設備が必要となる。また、電気契約は、比較的短い期間(例えば数分から1時間程度)の最大の電力に応じて契約電力が定められることがある。従って、本実施形態のヒートポンプ1のように、電力消費が瞬間的に大きくなることを防止するだけで、電力コストを大幅に削減することができる。
【0062】
また、本実施形態のヒートポンプ1において、エンジン始動制御を行う場合は、エンジン始動タイミングにおいて、駆動中の電動コンプレッサ16及び電動アクチュエータのうち少なくとも何れかについて出力を一時的に低下させる。電動コンプレッサ始動制御を行う場合は、電動コンプレッサ16の始動タイミングにおいて、駆動中の電動アクチュエータの出力を一時的に低下させる。
【0063】
これにより、電動コンプレッサ16又は電動アクチュエータが駆動中であっても、一時的に出力を低下させることで、電力消費が一時に集中することを防止できるので、瞬間的な電力消費を抑えることができる。
【0064】
また、本実施形態のヒートポンプ1において、電動アクチュエータには、熱交換を行うための第1ファン71〜第3ファン73が含まれている。メイン制御部61は、エンジン始動制御及び電動コンプレッサ始動制御の少なくとも何れかを行う際において、エンジン12又は電動コンプレッサ16の始動後に、第1ファン71の出力を上昇させた後に、第2ファン72の出力を上昇させ、次に、第3ファン73の出力を上昇させる。
【0065】
これにより、複数のファンの出力を上昇させるタイミングを異ならせることで、電力消費が一時に集中することを防止できるので、瞬間的な電力消費を一層抑えることができる。
【0066】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0067】
電動コンプレッサ16が駆動していない状態でエンジン12を始動させる場合(図3)において、エンジン始動タイミングで第1ファン71〜第3ファン73、及び、冷却水ポンプ12a等の電動アクチュエータを始動する処理を省略できる。この場合、これらの電動アクチュエータは、エンジン始動タイミングにおいて、出力を0で維持し、エンジン12の始動後に出力を上昇させることとなる(エンジン始動制御)。
【0068】
エンジン12が駆動していない状態で電動コンプレッサ16を始動させる場合(図4)において、電動コンプレッサ始動タイミングにおいて、図3と同様に、第1ファン71〜第3ファン73等の電動アクチュエータの出力を一時的に上昇させた後に低下させ、電動コンプレッサ16の始動後に電動アクチュエータの出力を上昇させても良い(電動コンプレッサ始動制御)。また、電動コンプレッサ始動タイミングにおいて、出力を0で維持し、電動コンプレッサ16の始動後に出力を上昇させても良い。
【0069】
電動コンプレッサ16が駆動している状態でエンジン12を始動させる場合(図5)において、電動コンプレッサ16の駆動時に駆動される電動アクチュエータがある場合、エンジン始動タイミングにおいて、この電動アクチュエータの出力を0で維持するか、出力を低下させて、エンジン12の始動後に出力を上昇させても良い。また、電動コンプレッサ16の始動時に出力を段階的に上昇させても良い。また、電動コンプレッサ16の出力を、電動アクチュエータよりも前に上昇させても良い。
【0070】
エンジン12が駆動している状態で電動コンプレッサ16を始動させる場合(図6)において、エンジン始動タイミングにおいて、冷却水ポンプ12aの出力を一時的に0にするか、又は通常時よりも小さい所定の出力値(≠0)まで低下させても良い。
【0071】
上記実施形態では、エンジン始動制御及び電動コンプレッサ始動制御において、電動アクチュエータの出力を0まで低下させるが(図3図5、及び図6)、0ではない値まで出力を低下させても良い。また、上記実施形態では、エンジン始動制御において、電動コンプレッサ16の出力を0ではない値まで出力を低下させるが(図5)、電動コンプレッサ16の出力を0まで低下させても良い。この場合、電動コンプレッサ16が再び始動されることとなるので、その際に、再度電動コンプレッサ始動制御を行っても良い。
【0072】
上記実施形態では、第1ファン71〜第3ファン73を1つずつ始動する例を説明したが(図3図4、及び図6)、最初に第1ファン71及び第2ファン72を同時に始動し、その後に第3ファン73を始動しても良いし、最初に第1ファン71を始動し、その後に第2ファン72及び第3ファン73を同時に始動しても良い。また、ファンの個数によっては、複数ずつ始動しても良い。
【0073】
上記実施形態で説明した電動アクチュエータは一例であり、別の電動アクチュエータに対して、エンジン始動制御及び電動コンプレッサ始動制御の少なくとも一方を行うことができる。別の電動アクチュエータとしては、例えば、ヒートポンプ1の各部を温めるヒータを挙げることができる。
【0074】
上記実施形態のヒートポンプ1は、エンジン始動制御と電動コンプレッサ始動制御の両方を行うが、一方のみを行う構成であっても良い。
【0075】
上記実施形態では、ヒートポンプ1を空気調和器に適用する例について説明したが、別の構成に適用することもできる。例えば、ヒートポンプ1は、冷凍器又は給湯器等に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 ヒートポンプ
10 室外機
12 エンジン
13 エンジン駆動コンプレッサ
15 コンプレッサモータ
16 電動コンプレッサ
12a 冷却水ポンプ(電動アクチュエータ)
61 メイン制御部(制御部)
71 第1ファン(電動アクチュエータ)
72 第2ファン(電動アクチュエータ)
73 第3ファン(電動アクチュエータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6