(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
浴室の防水用床パンとして用いられ、且つ、浴槽が載置される載置面を備えた防水用床パンとして用いられ、前記発泡シートの前記第2面が前記載置面となるように用いられる請求項1乃至7の何れか1項に記載の複合発泡体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について説明する。
なお、以下においては、複合発泡体が浴室において用いられ、しかも、浴槽を載置するための浴槽パン(防水用床パン)として用いられる場合を例に挙げて図を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態の複合発泡体が用いられてなる防水用床パンの概略斜視図であり、
図2、
図3は当該防水用床パンの概略断面図である。
これらの図に示したように防水用床パン1は、矩形板状であり、積層構造を有している。
【0010】
本実施形態における防水用床パン1は、矩形板状の本体底壁11と、本体底壁11の四辺に沿って立設された四方の立壁12とを備える。
前記本体底壁11の上面は浴槽(図示せず)が載置される載置面となっている。
【0011】
前記防水用床パン1は、複合発泡体2によって構成されている。
本実施形態における防水用床パン1は、該防水用床パン1よりも僅かに薄い矩形板状のビーズ発泡成形体21と、該ビーズ発泡成形体21の片面全体に接着された発泡シート22との2種類の発泡体によって構成された複合発泡体2となっている。
本実施形態におけるビーズ発泡成形体21と発泡シート22とは、何れも熱可塑性樹脂製である。
【0012】
前記ビーズ発泡成形体21と前記発泡シート22とは熱融着によって接着されており、接着剤を用いることなく接着されている。
具体的には、前記複合発泡体2は、熱可塑性樹脂製のビーズ発泡成形体21と、熱可塑性樹脂製の発泡シート22とを備え、前記ビーズ発泡成形体21と前記発泡シート22とが熱融着されている複合発泡体であって、見掛け密度が40kg/m
3以上85kg/m
3以下であり、前記発泡シート22は、前記ビーズ発泡成形体に熱融着している第1面22aと、該第1面22aの反対面となる第2面22bとを備え、該第2面22bにおける表面硬度が、鉛筆硬度で2B以上である。
前記発泡シート22は、厚み方向に積層された積層構造を有し、発泡層221と非発泡層222とを備えている。
前記発泡シート22は、前記発泡層側が前記ビーズ発泡成形体21と熱融着した第1面22aとなっており、前記非発泡層側が前記第2面22bとなっている。
【0013】
複合発泡体2は、見掛け密度が40kg/m
3以上85kg/m
3以下であることにより、優れた軽量性と強度とを発揮する。
複合発泡体2の見掛け密度は、43kg/m
3以上83kg/m
3以下であることが好ましく、46kg/m
3以上81kg/m
3以下であることがより好ましい。
【0014】
前記ビーズ発泡成形体単独での見掛け密度は、ビーズ発泡成形体21の強度、軽量性、並びに、断熱性等の観点から、10kg/m
3以上150kg/m
3以下であることが好ましく、20kg/m
3以上100kg/m
3以下であることがより好ましく、30kg/m
3以上70kg/m
3以下であることが特に好ましい。
【0015】
前記発泡シート単独での見掛け密度は、100kg/m
3以上500kg/m
3以下であることが好ましく、130kg/m
3以上350kg/m
3以下であることがより好ましく、170kg/m
3以上300kg/m
3以下の範囲内であることが特に好ましい。
発泡シート22の厚みは、1mm以上5mm以下であることが好ましく、2mm以上4mm以下であることがより好ましく、2.5mm以上3.5mm以下であることが特に好ましい。
【0016】
ビーズ発泡成形体21、発泡シート22、複合発泡体2などの見掛け密度は、JIS K7222:2005に基づいて測定することができる。
【0017】
複合発泡体2は、発泡シート22が最表面側に備えられており、外表面の一部が発泡シート22の前記第2面22bによって構成されている。
複合発泡体2は、前記第2面22bに優れた表面硬度が備えられているために、当該第2面22bを浴槽が載置される載置面などとして使用することができる。
そして、複合発泡体2は、浴槽を載置する載置面として前記第2面22bを利用した場合、浴槽により加えられる局所的な応力に対する変形が生じ難くくなる。
前記第2面22bの鉛筆硬度は、B以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましく、F以上であることが特に好ましい。
該第2面22bの鉛筆硬度は、通常、6H以下である。
該鉛筆硬度は、通常、JIS K 5600−5−4「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」によって求めることができる。
【0018】
複合発泡体2の前記第2面22bの鉛筆硬度が2B以上となる目安として、前記第2面22bは、アスカーC硬度が94以上であることが好ましい。
該アスカーC硬度は、通常、市販のアスカーC硬度計を用い、日本ゴム協会規格「SRIS0101」によって求めることができ、標準状態(例えば、25℃、50%RH)において複合発泡体2の発泡シート22(非発泡層222)の表面に対して測定を行った際の瞬時値として求めることができる。
【0019】
上記のような表面硬度を発揮させる上において有利であることから、前記のように本実施形態においては発泡層221と非発泡層222とを備えた積層構造を有する発泡シート22で複合発泡体2を構成させている。
そして、発泡シート22は、複合発泡体2の軽量性及びビーズ発泡成形体21との熱融着性を考慮すると第2面側にのみ非発泡層222を有することが好ましい。
なお、要すれば、前記発泡シート22として発泡層221のみの単独構造を有するものを採用してもよい。
【0020】
本実施形態に係る前記複合発泡体2は、前記発泡シート22が熱成形体となっており、該発泡シート22は、3次元形状を有している。
【0021】
本実施形態に係る前記複合発泡体2は、前記発泡シート22に熱成形が施されている。
即ち、前記発泡シート22は、3次元形状を有する熱成形体の状態で複合発泡体2に備えられている。
本実施形態に係る前記複合発泡体2は、発泡シート22が熱成形体であることで当該発泡シート22に種々の形状を容易に付与できるだけでなく、発泡シート22の発泡倍率なども調整容易となっている。
このことによって前記複合発泡体2は、前記第2面22bの表面硬度が調整容易となっている。
【0022】
本実施形態に係る前記複合発泡体2では、前記発泡シート22の第1面と熱融着しているビーズ発泡成形体21の表面21xを構成している発泡ビーズが該表面において個々に突出した状態となっている。
即ち、前記ビーズ発泡成形体21は、表面21xに凹凸が形成されており、且つ、該凹凸の凸部が前記接着界面において前記発泡シート22に食い込んでいる。
また、前記ビーズ発泡成形体21は、前記凸部の平均高さが0.2mm以上となっている。
【0023】
ここで言う「凸部の平均高さ」は、以下のようにして求められる。
まず、
図3に模式的に示したような断面が現れるようにビーズ発泡成形体21を切断する。
なお、ビーズ発泡成形体21の切断は、できる限り発泡シート22との接着界面に対して垂直となるようにし、且つ、発泡ビーズができるだけ変形しないように注意して行う。
そして、発泡シート22との接着界面を形成している発泡ビーズの中から無作為に1つの発泡ビーズ(例えば、
図3の符号B1)を選ぶ。
次いで、この発泡ビーズB1(以下、「第1ビーズB1」ともいう)の両隣りで接着界面を形成している2つの発泡ビーズの内の一方の発泡ビーズB2(以下、「第2ビーズB2」ともいう)と他方の発泡ビーズB3(以下、「第3ビーズB3」ともいう)とをそれぞれ観察する。
そして、第1ビーズB1と第2ビーズB2とが気泡膜を接触させている箇所の内で最も発泡シート寄りのポイントP1(以下「第1ポイントP1」ともいう)を特定する。
即ち、ビーズ発泡成形体21の表面21xにおける第1ビーズB1と第2ビーズB2との気泡膜の分離起点を特定する。
同様に、第1ビーズB1と第3ビーズB3とが気泡膜を接触させている箇所の内で最も発泡シート寄りのポイントP2(以下「第2ポイントP2」ともいう)を特定する。
そして、この第2ポイントP2と前記第1ポイントP1とを結ぶ仮想線L1から第1ビーズB1が突出している高さH(仮想線L1に対する垂直高さ)を求める。
この突出高さHを求める操作を概ね100個の発泡ビーズに対して実施し、得られた全ての突出高さの値を算術平均してビーズ発泡成形体21の凸部の平均高さを求める。
なお、突出高さHを求める操作は、ビーズ発泡成形体21の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)、或いは、光学顕微鏡などを使って写真撮影し、実際の大きさに対して概ね25倍に拡大した画像を元に実施することができる。
【0024】
前記ビーズ発泡成形体21は、「凸部の平均高さ」が高い方が発泡シート22との間に強固な接着力を発揮させる上において有利である。
一方で、前記ビーズ発泡成形体21は、「凸部の平均高さ」が過度に高いと、非発泡層222の表面22bにまで凹凸が生じるおそれがある。
従って、凸部の平均高さは、通常、発泡シート22の平均厚み以下とされ、発泡層221の平均厚み以下とされる。
また、発泡層221は、その発泡倍率を「e倍」とした場合、現厚みの「1/e」以下に圧縮することが難しい。
従って、発泡層221は、その厚みを「t(mm)」とした場合、「t/e(mm)」よりも薄く圧縮することが難しい。
言い換えれば、発泡層221の厚みの減少は、「t−t/e(mm)」以上とすることが難しい。
このようなことから“凸部の平均高さ”は、「t−t/e(mm)」以下であることが好ましい。
【0025】
「t−t/e(mm)」を“凸部の侵入可能高さ”とした場合、複合発泡体2は、“凸部の侵入可能高さ”に対する“凸部の平均高さ”の割合が、5%以上50%以下であることが好ましい。
“凸部の侵入可能高さ”に対する“凸部の平均高さ”の割合は、10%以上40%以下であることがより好ましく、12%以上30%以下であることがさらに好ましく、15%以上25%以下であることがとりわけ好ましい。
また、“凸部の平均高さ”は、発泡ビーズの平均気泡径の5%以上であることが好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が特に好ましい。
【0026】
ビーズ発泡成形体21や発泡シート22の発泡層の発泡倍率、及び、複合発泡体2の平均発泡倍率(ビーズ発泡成形体21と発泡シート22との平均発泡倍率)は、通常、真密度を見掛け密度で除して求めることができる。
真密度は、ビーズ発泡成形体21、発泡シート22、複合発泡体2などといった測定対象物を熱プレスするなどして作製した非発泡なテストピースに対し、JIS K7112:1999に規定の「A法(水中置換法)」に基づく測定を実施して求めることができる。
【0027】
発泡シート22の厚みや発泡層221の厚みは、以下のようにして求めることができる。
まず、前記の「凸部の平均高さ」を求めるのと同様にして複合発泡体を切断して断面を観察する。
そして、発泡層221との接着界面を形成している発泡ビーズの中から無作為に1つの発泡ビーズ(例えば、
図3の符号B4)を選ぶ。
そして、発泡シート22と該発泡ビーズB4(以下、「第4ビーズB4」ともいう)との界面の内、複合発泡体2の表面(発泡シート22の第2面22b)に最も近いトップの位置TLと、複合発泡体2の表面から最も離れたボトムの位置BLとを特定する。
そして、このトップの位置TLとボトムの位置BLとの中間点を通る仮想線L2から複合発泡体の表面までの距離T1、及び、仮想線L2から発泡層221の表面までの距離T2を求め、それぞれを当該箇所における発泡シート22の厚み(=「T1」)および発泡層221の厚み(=「T2」)とすることができる。
なお、発泡シート22の平均厚みや発泡層221の平均厚みは、先の「凸部の平均高さ」と同様に、この厚み(T1,T2)を求める操作を複数箇所において実施し、得られた全ての値を算術平均することによって求められる。
【0028】
また、発泡ビーズの平均気泡径とは、接着界面を形成している発泡ビーズの長径の平均値として求められる。
即ち、「凸部の平均高さ」や「発泡シートの厚み」を求めるのと同様に複合発泡体2の断面を観察し、発泡ビーズの輪郭線上の異なる2点を結ぶ線分の内の最も長さが長くなる線分の長さ(例えば、
図3の符号R1,R2)を求め、この長さを平均して平均気泡径とすることができる。
【0029】
ビーズ発泡成形体21としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などによって形成されたものを採用することができる。
【0030】
前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体(例えば、GPPS(スチレン単独重合体))や共重合体を挙げることができ、該スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられる。
また、前記共重合体を構成するスチレン系単量体以外の単量体としては、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸などが挙げられる。
また、前記スチレン系樹脂は、ブタジエンゴムなどのゴム成分を含むハイインパクトポリスチレン(HIPS)などであってもよい。
【0031】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂などが挙げられる。
前記ポリエステル系樹脂は、2種類以上のジオールや、2以上のジカルボンを含む変性品であってもよい。
【0032】
前記ポリカーボネート系樹脂としては、炭酸とグリコール又はビスフェノールから形成されるものを採用することができ、例えば、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン等のビスフェノールから得られる芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0033】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。
【0034】
複合発泡体2は、リサイクル時のことなどを考慮すると、前記発泡シート22と前記ビーズ発泡成形体21とを分別することなくマテリアルリサイクルできる方が好ましい。
そのような意味から、前記ビーズ発泡成形体21に含まれている樹脂と同じ種類の熱可塑性樹脂が前記発泡シート22に含まれていることが好ましい。
また、前記発泡シート22と前記ビーズ発泡成形体21との熱融着性を勘案すると、前記ビーズ発泡成形体21に含まれている樹脂と同じ種類の熱可塑性樹脂は、ビーズ発泡成形体21と接着界面を形成している部位に含まれていることが好ましく、前記発泡層22aに含まれていることが好ましい。
前記発泡シート22と前記ビーズ発泡成形体21とが共通して含有する樹脂としては、ポリスチレン系樹脂であることが好ましい。
即ち、本実施形態の複合発泡体2は、全体がポリスチレン系樹脂によって形成されていることが好ましい。
【0035】
なお、ここではこれ以上複合発泡体の形成材料に関して詳しい説明を繰り返すことはしないが、ビーズ発泡成形体21や発泡シート22には、一般的な樹脂成形品に添加されている各種の添加剤(耐候剤、抗菌剤、難燃剤、顔料、充填剤、防蟻剤、防鼠剤など)を適宜含有させうる。
【0036】
このような複合発泡体2は表面硬度に優れるとともに、軽量性に優れ、全体の機械的強度にも優れる。
複合発泡体2は、特に防水用床パン1として用いられる場合、本体底壁11に浴槽が載置されるため、浴槽の荷重に耐えうる強度が必要であり、表面硬度が高くても、全体の機械的強度のバランスがとれていなければ、表面シートが圧縮により凹んだり、過度な集中荷重により破損するおそれがある。
以上により、複合発泡体2は表面硬度とともに十分な圧縮強度を有することが好ましい。
複合発泡体2の圧縮特性を考慮するのにあたっては、荷重に対して圧縮されても荷重の開放により元に戻る弾性領域内で考慮することが重要である。
また実際の圧縮作用は全体ではなく、局所的に作用する場合が多い。
この時、複合発泡体2の表面に配された発泡シート22が面方向に荷重を分散することで、変形を防止し得る。
このような圧縮作用を評価する試験方法としては、局部圧縮による試験方法が好ましい。
具体的な試験方法は実施例にて後述するが、
図4を参照して説明すると、円柱状の突子Pxを有する治具PBに対し十分に広い受圧面を有する試験片Sにより、圧縮試験を行った場合の降伏点による複合発泡体2の圧縮強度は、0.7MPa以上が好ましく、0.8MPa以上がより好ましく、0.9MPa以上が特に好ましい。
表面硬度とともに圧縮特性に優れることで、複合発泡体2には優れた曲げ特性が発揮され得る。
さらに、発泡シート22とビーズ発泡成形体21ともその界面において凸部を形成していることも優れた曲げ特性の発揮に寄与し得る。
また、複合発泡体2は、表面を構成する発泡シート22に非発泡層222と発泡層221とを備えることで発泡層221の緩衝効果によって、万が一、表層部分が損傷しても亀裂がビーズ発泡成形体との界面部分まで到達するのを抑制し、損傷の軽減や漏水に繋がるのを抑制し得る。
【0037】
本実施形態の複合発泡体2は、例えば、熱可塑性樹脂製の発泡性樹脂ビーズが型内成形されてビーズ発泡成形体が作製される成形型を用いて作製することができる。
具体的には、複合発泡体は、下記の(X)、(Y)に示した工程を実施して作製することができる。
(X)前記発泡性樹脂ビーズとともに熱可塑性樹脂製の発泡シートを前記成形型内に収容させる収容工程。
(Y)前記収容工程後に成形型内に加熱媒体を導入して発泡性樹脂ビーズを発泡させ、該発泡性樹脂ビーズによってビーズ発泡成形体を形成させるとともに前記ビーズ発泡成形体と前記発泡シートとを熱融着させて複合発泡体を作製する成形工程。
上記のように本実施形態の複合発泡体は、従来のビーズ発泡成形体の作製方法と同様の方法で作製可能であり、簡単な工程によって作製可能なものである。
【0038】
本実施形態の複合発泡体の作製方法では、該成形工程において、見掛け密度が40kg/m
3以上85kg/m
3以下の前記複合発泡体を作製する。
さらに、前記成形工程では、前記発泡シートが、前記ビーズ発泡成形体に熱融着している第1面と、該第1面の反対面となる第2面とを備え、該第2面における表面硬度が、鉛筆硬度で2B以上である前記複合発泡体を作製する。
【0039】
本実施形態の複合発泡体の作製方法では、平坦形状を有する発泡シートに熱成形を実施して3次元形状に賦形する熱成形工程を前記収容工程の前に実施し、前記収容工程では、前記熱成形で3次元形状に賦形された前記発泡シートを前記成形型内に収容させ、前記成形工程では、前記熱成形で3次元形状に賦形された前記発泡シートと前記ビーズ発泡成形体とが熱融着された複合発泡体を作製することが好ましい。
【0040】
以下に、各工程について説明する。
まず、前記発泡シートの作製方法について説明する。
前記発泡シート22としては、例えば、樹脂を発泡剤とともに押出機で溶融混練され、得られた溶融混練物が押出機に装着したサーキュラーダイやフラットダイから押出発泡されて作製されたものを採用することができる。
発泡シートを作製する際の発泡剤としては、例えば、プロパン、i−ブタン、n−ブタン、i−ペンタン、n−ペンタンなどの脂肪族炭化水素、N
2、CO
2、水、アルコール類などが挙げられる。
前記発泡シートの非発泡層は、上記のようにして発泡層単層のシートを一旦作製し、この発泡層単層のシートに樹脂フィルムを熱ラミネートする方法や、発泡層単層のシート上にTダイを使って溶融樹脂をフィルム状に押出して積層する方法(押出ラミネート)などによって形成することができる。
前記非発泡層は、発泡層とともに共押出する方法によって形成させてもよい。
【0041】
上記のような押出発泡に際しては、押出直後の発泡シートの表面に対して空冷を実施しつつ押出発泡を実施することで、発泡シートの表面に見掛け密度の高い(発泡倍率の低い)スキン層を形成させてもよい。
該スキン層は、発泡シートの厚み方向中央部よりも低発泡で平均気泡径も小さい。
そのため、スキン層の形成された側が前記第2面側となるように複合発泡体を作製することでより一層表面硬度に優れた複合発泡体を得ることができる。
【0042】
押出発泡によって作製された平坦形状を有する発泡シートに対しては、真空成形、圧空成形、真空−圧空成形、プレス成形などといった熱成形を施して3次元形状を付与することができる。
この熱成形では、成形型を使って発泡シートへの賦形が行われる前に、発泡シートを加熱して当該発泡シートを変形容易な軟化状態にするための予備加熱工程が実施される。
前記予備加熱工程では、気泡膜中に含まれている発泡剤が気泡膜中に放出されて気泡が膨化するとともに気泡膜中に新たな微小気泡が形成される。
このことで熱成形後の熱成形体は、熱成形前の発泡シートに比べて軽量性に優れたものになる。
前記熱成形においては、前記第2面22bとなる側を成形型で素早く冷却して過度な発泡が生じることを抑制する上においては、前記第2面22bとなる側を成形型の成形面に当接させることが好ましい。
また、このことにより熱成形体の第1面側が第2面側に比べて発泡倍率が高くなり、第1面側の熱容量が第2面側に比べて低くなるためにビーズ発泡成形体との熱融着に有利となる。
但し、成形型の成形面にはエアを逃がすためのキリ孔が設けられていることが多く、真空成形においても圧空成形においてもキリ孔に入り込んだ樹脂によって成形体に微小な突起が形成され易い。
このような微小な突起が形成されると鉛筆硬度の試験結果に悪影響が生じるおそれがある。
このような点を考慮すると前記熱成形においては、前記第1面22aとなる側を成形型に当接させることが好ましい。
このように、発泡シートを熱成形してから複合発泡体を形成させることで、単に複雑な形状を形成することが容易になるばかりでなく複合発泡体の表面性状を所望の状態に調整し易くなるという効果を奏する。
【0043】
該発泡シートとともに複合発泡体を形成するビーズ発泡成形体としては、一般的なビーズ発泡成形体の形成に利用される発泡性樹脂ビーズを用いて形成されたものを採用することができる。
即ち、本実施形態のビーズ発泡成形体の形成には、樹脂ビーズに発泡剤を含有させた発泡性樹脂ビーズを用いることができる。
前記発泡剤としては、例えば、物理発泡剤や、熱分解型の化学発泡剤などが挙げられる。
前記物理発泡剤としては、プロパン、i−ブタン、n−ブタン、i−ペンタン、n−ペンタンなどの脂肪族炭化水素、N
2、CO
2、水、アルコール類などが挙げられる。
【0044】
本実施形態の複合発泡体の作製方法における前記成形工程は、発泡シートと発泡性樹脂ビーズとを収容した成形型内に前記物理発泡剤の沸点以上の温度の気体(熱風、過熱水蒸気など)を加熱媒体として導入させる方法によって実施できる。
この成形工程では、それぞれの発泡性樹脂ビーズは、加熱されて体積膨張し、その膨張力によって互いに熱融着するとともに発泡シートに対しても熱融着することになる。
本実施形態においては、発泡シートに対して事前に熱成形が施されていることから熱成形体となった発泡シートは、熱成形前の発泡シートに比べて厚みが増大し、発泡倍率も向上している。
そのため、本実施形態の複合発泡体の作製方法においては、熱成形をしていない発泡シートを使って複合発泡体を形成するのに比べて発泡性樹脂ビーズの膨張力を発泡シートとの界面に強く作用させることができる。
したがって、本実施形態においては、発泡シートとの界面において発泡ビーズが発泡シート側に食い込んだ状態の複合発泡体を容易に作製することができる。
【0045】
この成形工程前の前記収容工程では、前記発泡シートは、第2面側を成形面に当接させるように成形型に収容させることが好ましい。
そして、前記成形工程前においては前記成形型を加熱状態にさせて発泡シートの第2面側を加熱しておくことが好ましい。
この場合、発泡性樹脂ビーズの膨張力を利用して、前記発泡シートの発泡層の内、前記第2面側を選択的に圧縮させることができる。
即ち、上記のような態様においては、表面硬度と表面平滑性とに優れた複合発泡体が得られ易くなる。
【0046】
上記のように本実施形態において作製される複合発泡体は、浴槽パン(防水用床パン)として利用されるのに好適なものではあるが、本発明の複合発泡体は、その用途が浴槽パンなどに限定されるものではない。
本発明の複合発泡体は、例えば、自動車の内装材(インストルメントパネル、ドアパネル、シートバックパネル、サンバイザー等)、家具(机、椅子、戸棚、ドア等)、看板、容器、緩衝材などにも利用可能である。
さらに、本発明の複合発泡体は、上記に例示した特定の態様に対し、用途を変更するだけでなく各種の変更を加え得る。
即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(複合発泡体の作製)
表1に示すような発泡シートとビーズ発泡成形体とを用いて
図1に示すような防水用床パン形状で本体底壁部分の総厚みが72.5mmの複合発泡体を作製した。
なお、発泡シートは、発泡層と非発泡層とを備えたものを用いた。
発泡シートやビーズ発泡成形体の詳細については表1に示した通りである。
発泡シートの形成材料については、表1に略号で示した通りである。
なお、略号の意味は以下の通りである。
・HIPS:ゴム成分を含むハイインパクトポリスチレン樹脂
・PP/HIPS:ポリプロピレン樹脂フィルムとハイインパクトポリスチレン樹脂フィルムとのドライラミネート品(該ドライラミネート品は、HIPS側をビーズ発泡成形体に接着させるように使用した。)
また、ビーズ発泡成形体の形成材料についての略号の意味は以下の通りである。
ビーズ発泡成形体の形成材料については、表1に略号で示す。
なお、略号の意味は以下の通りである。
・PS:スチレン単独重合体(GPPS)
【0049】
この発泡シートとビーズ発泡成形体とによる複合発泡体の各種特性値も表1に示した通りである。なお、各種特性値は、すべて複合発泡体の本体底壁部分を使用したものである。
【0050】
作製した複合発泡体に対しては、発泡シート及びビーズ発泡成形体の各々について見掛け密度を求めるとともに複合発泡体全体としての見掛け密度を求めた。
また、複合発泡体に対しては、発泡シート側の表面における表面硬度(アスカーC硬度、鉛筆硬度)、圧縮特性(降伏強度、降伏歪み、圧縮弾性率)、及び、曲げ特性(破断強度、破断歪み、曲げ弾性率)を測定した。
なお、鉛筆硬度についての表中での「<2B」との表記は評価結果が2B未満(3B以下)であったことを表している。
【0051】
<アスカーC硬度>
複合発泡体のアスカーC硬度は、日本ゴム協会規格「SRIS0101」に準拠して測定し、無作為に10箇所を測定した測定値の最小値と最大値の範囲で示した。
【0052】
<鉛筆硬度>
複合発泡体の鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に準拠して測定し、発泡シート表面に目視で塑性変形(凹み)と凝集破壊(擦り傷)がいずれも生じない最大硬度で示した。
【0053】
<圧縮特性>
複合発泡体の圧縮特性は、以下のようにして測定した。
まず、得られた複合発泡体から縦横60mmで厚みが複合発泡体の総厚みとなる扁平な矩形板状の測定用試料Sを切り出した。
直径29mmの円柱状の突子Pxを有する治具PBをテンシロン万能試験機のクロスヘッド(図示せず)にロードセル(図示せず)を介して装着し、該治具PBの真下に略水平な天面を有する支持台FBをセットした。
なお、前記治具PBは、突子Pxの突出方向が下向きとなるようにクロスヘッドの下方に装着した。
前記測定用試料Sは、発泡シート側の面S1が上面側となるように支持台FBに搭載した。
測定用試料Sを搭載した支持台FBは、クロスヘッドを下降させた際に突子Pxが測定用試料Sの中心位置に当接するように位置させた。
クロスヘッドを下降させ、測定用試料Sの上方にセットした治具PBを1mm/minの速度で下降させた。
突子Pxが測定用試料Sの上面に当接した後も同じ速度でクロスヘッドを下降させ、測定用試料Sから治具PBに加えられる反発応力をロードセルで測定した。
【0054】
試験装置:テンシロン万能試験機 UCT−10T((株)オリエンテック製)
試料:60(幅)×60(長さ)×72.5(総厚み)(単位はmm)
加圧面のサイズ:試料の中心箇所 直径30mm
試験方向:複合発泡体の発泡シートの面より加圧
試験速度:1mm/min
試験片状態調節・試験環境:23±2℃、RH50±5%、24時間以上
【0055】
複合発泡体の圧縮強度、圧縮歪み、圧縮弾性率は、前述の圧縮試験により得られた「応力−歪み曲線」(
図5参照)で示した降伏点における圧縮強度と圧縮歪みを求め、降伏点以前の弾性領域の傾きから圧縮弾性率を求めた。
降伏点は明確な降伏を示さず、屈曲する場合は、その変曲点を降伏点として算出した。
なお、これらの測定は、複合発泡体から2方向(MD、TD)が直角になるように切り出した測定試料に対して実施した。
次に、圧縮試験より得られた降伏強度、及び、弾性率を複合発泡体の見掛け密度に対して比較プロットした。(
図6、7参照)
【0056】
<曲げ特性>
複合発泡体の曲げ特性は、以下のようにして測定した。
複合発泡体の曲げ強度、曲げ歪み、及び曲げ弾性率は、JIS K7221−2:2006(硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第2部:曲げ特性の求め方)に準拠して測定した。
なお、これらの測定は、複合発泡体から2方向(MD、TD)に沿って切り出した測定試料に対して実施した。
具体的には、下記条件で測定された「応力−歪み曲線」から曲げ強度(破断点)、曲げ歪み(破断点)と曲げ弾性率とを算出した。
そして、2方向(MD、TD)の測定結果を平均し、平均値を複合発泡体の「曲げ強度」、「曲げ歪み」及び「曲げ弾性率」とした。
【0057】
(測定条件)
試験装置:テンシロン万能試験機 UCT−10T((株)オリエンテック製)
試料:30(幅)×300(長さ)×72.5(総厚み)(単位はmm)
支点間距離:250mm
試験方向:複合発泡体の発泡シートの面を加圧くさびと接触
試験速度:20mm/min
先端治具:加圧くさび・・・10R 支持台・・・10R
試験片状態調節・試験環境:23±2℃、RH50±5%、24時間以上
【0058】
次に、曲げ試験より得られた曲げ強度、及び、曲げ弾性率を複合発泡体の見掛け密度に対して比較プロットした。(
図8、9参照)
【0059】
<表面外観の評価方法>
複合発泡体の表面外観は、目視にて行い、発泡シート表面に発泡ビーズ由来の表面凹凸が確認された場合を「有」、確認されなかった場合を「無」と判定した。
【0060】
【表1】
【0061】
以上の評価結果からも本発明によれば軽量で優れた表面硬度を有し、防水用床パンなどに適した部材が提供されることがわかる。