特許第6767980号(P6767980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6767980ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法およびポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6767980
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法およびポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   C08J9/18CES
【請求項の数】17
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-535538(P2017-535538)
(86)(22)【出願日】2016年8月16日
(86)【国際出願番号】JP2016073925
(87)【国際公開番号】WO2017030124
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-162376(P2015-162376)
(32)【優先日】2015年8月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】福澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】三浦 新太郎
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−167236(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/083241(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレートが3g/10分以上20g/10分以下、融点が145℃以上165℃以下であるポリプロピレン系樹脂(I)を85〜99重量%、および、密度が0.93〜0.97g/cm、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上15g/10分以下である高密度ポリエチレン系樹脂(II)を1〜15重量%を含んでなるポリプロピレン系樹脂(X)を基材樹脂とする[(I)および(II)の合計量が100重量%]、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有し、かつ、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して親水性化合物を含有し、かつ、発泡倍率が10倍以上40倍以下であり、平均気泡径が100μm以上250μm以下、連続気泡率が0%以上10%以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
上記ポリプロピレン系樹脂(I)の上記融点が148℃以上160℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の上記融点が125℃以上135℃以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の上記融点が125℃以上130℃以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の曲げ弾性率が800MPa以上1600MPa以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
上記ポリプロピレン系樹脂(X)100重量部に対して、1種以下の上記発泡核剤を0.005重量部以上2重量部以下、含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
上記親水性化合物が、メラミン、グリセリン、ジグリセリンおよびポリエチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
メルトフローレートが3g/10分以上20g/10分以下、融点が145℃以上165℃以下であるポリプロピレン系樹脂(I)を85〜99重量%、および、密度が0.93〜0.97g/cm、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上15g/10分以下である高密度ポリエチレン系樹脂(II)を1〜15重量%を含んでなるポリプロピレン系樹脂(X)を基材樹脂とする[(I)および(II)の合計量が100重量%]、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有し、かつ、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して親水性化合物を含有し、かつ、発泡倍率が10倍以上40倍以下であり、平均気泡径が100μm以上250μm以下、連続気泡率が0%以上10%以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、水および無機ガス系発泡剤と共に上記ポリプロピレン系樹脂(X)からなるポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器の中に収容し、攪拌条件下に分散させ、分散液を得ると共に、昇温および昇圧した後、該耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に該耐圧容器の中の該分散液を放出して上記ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項9】
上記無機ガス系発泡剤が二酸化炭素であることを特徴とする、請求項8に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項10】
上記ポリプロピレン系樹脂(I)の上記融点が148℃以上160℃以下であることを特徴とする、請求項8または9に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項11】
上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の上記融点が125℃以上135℃以下であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項12】
上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の上記融点が125℃以上130℃以下であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項13】
上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の曲げ弾性率が800MPa以上1600MPa以下であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項14】
上記ポリプロピレン系樹脂(X)100重量部に対して、1種以下の上記発泡核剤を0.005重量部以上2重量部以下、含有することを特徴とする、請求項8〜13のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項15】
上記親水性化合物が、メラミン、グリセリン、ジグリセリンおよびポリエチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項8〜14のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法であって、
上記ポリプロピレン系樹脂(I)単独であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法における成形サイクルに対して、成形サイクルが5〜20%短いことを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、
密度が10g/L以上60g/L以下であり、連続気泡率が0〜10%であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法およびポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂からなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材、通い箱など様々な用途に用いられている。特に、近年では自動車用途において、環境への配慮から軽量化が推し進められており、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材などにおいて、高強度なポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を用いることで、従来と同等の強度を持たせながら軽量化する方法が採られている。
【0003】
一般に、高強度なポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得るには、曲げ弾性率の高いポリプロピレン系樹脂を選択することが好ましい。曲げ弾性率の高いポリプロピレン系樹脂は、樹脂の結晶化度および融点が高く、結晶熱量が多い傾向となる。
【0004】
しかしながら、高強度なポリプロピレン系樹脂より得られる発泡粒子の気泡径は微細化する傾向にあり、結果として、型内発泡成形体の表面性が悪化する傾向にあった。
【0005】
また、型内発泡成形体の表面性の悪化は、高発泡倍率の場合ほど顕著となり、その場合には、型内発泡成形体表面に凹凸(発泡粒子同士の粒子間に凹みが現れる現象)およびシワが発生しやすい、あるいは型内発泡成形体の面と面とが交差するエッジ部分(稜線部分)の金型転写性が悪く、エッジ部分が滑らかでなく発泡粒子の凹凸が目立つなど、表面美麗性の悪い型内発泡成形体となる問題がある。さらに、場合によっては型内発泡成形体が収縮し、寸法精度が悪くなるという問題を引き起こす場合もある。
【0006】
このような問題を回避する為に、ポリプロピレン系樹脂に対して、分子量が1000〜4000、融点100℃以上130℃以下のポリエチレンワックスを添加することにより、表面性を改良する方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかし、この方法では、ポリエチレンワックスの強度が低い為に、型内発泡成形体の機械的強度が低下する、また、型内発泡成形時の成形サイクルが長くなり、生産性が悪化するという問題があった。
【0007】
また、ポリプロピレン系樹脂に対して、分子量が1500〜25000であるポリオレフィンオリゴマーを添加することにより、表面性を改良する方法が知られている(例えば、特許文献2)。しかし、この方法では、ポリオレフィンオリゴマーの強度が低い為に、型内発泡成形体の強度が低下する、また、型内発泡成形時の成形サイクルが長くなり、生産性が悪化する問題があった。
【0008】
また、ポリプロピレン系樹脂に対して、直鎖状低密度ポリエチレンを添加することにより、表面性を改良しようとする方法も知られている(例えば、特許文献3)。しかしながら、この方法では、直鎖状低密度ポリエチレンの強度が低い為に、型内発泡成形体の機械的強度が低下する問題があった。
【0009】
また別の課題として、ポリプロピレン系樹脂50〜99重量%に対して、密度0.92〜0.97g/cm、メルトフローレート1〜20g/10分であり、特定の溶融特性を有するポリエチレン系樹脂1〜50重量%を添加することにより,気泡の大きさが均一な発泡粒子を得ようとする方法が知られている(例えば、特許文献4)。特許文献4には揮発性発泡剤として地球温暖化係数が高い有機系発泡剤に関する例示しかなく無機ガスの使用に関する記載は一切ない。有機系発泡剤は、環境負荷が高い問題があり、さらには設備の防爆化が必要となるため、設備がコスト高となる欠点を有している。さらに特許文献4によれば、実施例1、2および比較例3、4より、ポリプロピレン系樹脂に対してポリエチレンの添加量を増加させた場合の気泡径が記載されている。ポリエチレンを0.1重量%と微量に添加した場合の気泡径は690μmと巨大なものであり、型内発泡成形体の融着性等が悪いことが記載されている。ポリエチレンを20〜30重量%と多量に添加した場合の気泡径は360〜320μmと比較的大きな気泡を有し、およそ樹脂重量の半分をポリエチレンを置き換え52重量%添加した場合の気泡径は250μm程度である。250μmの気泡径を有する型内発泡成形体においては強度が悪化するという問題があった。
【0010】
また、別の課題として、フィルム用汎用品であるポリオレフィン系樹脂を型内発泡成形用として使いこなすことを目的として、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、2種以上の無機系ブロッキング防止剤を合計量として0.03重量部以上2重量部以下含有し、気泡径の大きな発泡粒子を得ようとする方法が知られている(例えば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2009−114359号(2009年05月28日公開)」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2009−084547号(2009年04月23日公開)」
【特許文献3】日本国公開特許公報「特開2008−255286号(2008年10月23日公開)」
【特許文献4】日本国公開特許公報「特開2010−275499号(2010年12月09日公開)」
【特許文献5】国際公開公報第2015/098619号(2015年7月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
樹脂融点が高く、高弾性率のポリプロピレン系樹脂を用いた場合に、型内発泡成形にて得られる成形体の表面性が悪化してしまう課題に対し、高弾性率のポリプロピレン系樹脂の特徴である良好な圧縮強度特性を損なうことなく、表面美麗、かつ型内発泡成形での成形サイクルを短くすることができるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、ポリプロピレン系樹脂を、特定の構成とすることにより、得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形体の表面美麗でかつ型内発泡成形での成形サイクルが短く、高強度な型内発泡成形体が得られることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明の一実施形態は、メルトフローレートが3g/10分以上20g/10分以下、融点が145℃以上165℃以下であるポリプロピレン系樹脂(I)を85〜99重量%、および、密度が0.93〜0.97g/cm、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上15g/10分以下である高密度ポリエチレン系樹脂(II)を1〜15重量%を含んでなるポリプロピレン系樹脂(X)を基材樹脂とする[(I)および(II)の合計量が100重量%]、ポリプロピレン系発泡粒子であって、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有し、かつ、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して親水性化合物を含有し、かつ、発泡倍率が10倍以上40倍以下であり、平均気泡径が100μm以上250μm以下、連続気泡率が0%以上10%以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、である。
【0015】
本発明の一実施形態はまた、メルトフローレートが3g/10分以上20g/10分以下、融点が145℃以上165℃以下であるポリプロピレン系樹脂(I)を85〜99重量%、および、密度が0.93〜0.97g/cm、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上15g/10分以下である高密度ポリエチレン系樹脂(II)を1〜15重量%を含んでなるポリプロピレン系樹脂(X)を基材樹脂とする[(I)および(II)の合計量が100重量%]、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有し、かつ、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して親水性化合物を含有し、かつ、発泡倍率が10倍以上40倍以下であり、平均気泡径が100μm以上250μm以下、連続気泡率が0%以上10%以下であることを特徴とする、該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、水および無機ガス系発泡剤と共に上記ポリプロピレン系樹脂(X)からなるポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器の中に収容し、攪拌条件下に分散させ、分散液を得ると共に、昇温および昇圧した後、該耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に該耐圧容器の中の該分散液を放出してポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、である。
【0016】
本発明の一実施形態はまた、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法であって、ポリプロピレン系樹脂(I)単独であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法における成形サイクルに対して、成形サイクルが5〜20%短いことを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法、である。
【0017】
本発明の一実施形態はまた、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、密度が10g/L以上60g/L以下であり、連続気泡率が0〜10%であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体、である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子によれば、ポリエチレン系樹脂の添加量が少ない場合でも型内発泡成形して得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面美麗性が向上し、成形サイクルは短縮され、高強度な型内発泡成形体が得られる。高強度な型内発泡成形体が得られることにより、部材として要求される圧縮強度を満足する成形体の重量を軽くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の、10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)より得られるDSC曲線(温度vs吸熱量)の一例であり、基材樹脂として1種のポリプロピレン系樹脂のみを用い、ポリエチレン系樹脂は添加していない場合を示している。DSC曲線は、2つの融解ピークを有し、低温側融解熱領域Qlと高温側融解熱領域Qhとの2つの融解熱量領域を有している。
図2】本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の、10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)より得られるDSC曲線(温度vs吸熱量)の一例であり、基材樹脂としてポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂(以下、PEとも称する)とを混合した場合を示している。DSC曲線は、PE添加量にもよるが、図1に対して125〜130℃付近にPE由来の3つ目のピークが出ることがある。3つの融解ピークが現れる場合は、隣り合う2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点が2点存在することになるが、このような場合は2点の内の高温側の点を点Cと定義し、低温側融解熱領域Qlと高温側融解熱領域Qhとを算出する。
図3】本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂の、10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温し、その後220℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られる、2回目昇温時のDSC曲線の一例である。基材樹脂として1種のポリプロピレン系樹脂のみを用い、ポリエチレン系樹脂は添加していない場合を示している。tmが融点である。tfは融解終了温度であり、2回目の昇温時の融解ピークの高温側のすそが、高温側でベースラインの位置に戻る時の温度である。
図4】本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂の、10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温し、その後220℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られる、2回目昇温時のDSC曲線の一例である。基材樹脂としてポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを混合した場合を示している。tmが融点である。tfは融解終了温度であり、2回目の昇温時の融解ピークの高温側のすそが、高温側でベースラインの位置に戻る時の温度である。PE添加量にもよるが、図3に対して125〜130℃付近にPE由来の3つ目のピークが出ることがある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態について、具体例を示して説明するが、本発明の一実施形態はこれに限定されるものではない。本発明の一実施形態は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の一実施形態の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0021】
また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0022】
1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、メルトフローレートが3g/10分以上20g/10分以下、融点が145℃以上165℃以下であるポリプロピレン系樹脂(I)を85〜99重量%、および、密度が0.93〜0.97g/cm、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上15g/10分以下である高密度ポリエチレン系樹脂(II)を1〜15重量%を含んでなるポリプロピレン系樹脂(X)を基材樹脂とする[(I)および(II)の合計量が100重量%]、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有し、かつ、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して親水性化合物を含有し、かつ、発泡倍率が10倍以上40倍以下であり、平均気泡径が100μm以上250μm以下、連続気泡率が0%以上10%以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子である。
【0023】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂(I)は、融点が145℃以上165℃以下と、高融点であり、従って、高強度なポリプロピレン系樹脂である。高強度なポリプロピレン系樹脂を用いることによって、高強度のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が得られるが、高強度なポリプロピレン系樹脂から得られる発泡粒子の気泡径は、一般的に、微細化する傾向にある。これは、樹脂中の結晶が発泡核として作用しており、結晶化度の高い高融点なポリプロピレン系樹脂を使用すると発泡核が増大してしまうためであると考えられる。このように、高強度なポリプロピレン系樹脂を用いてポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ようとすると、発泡粒子の気泡径が微細化し、結果として、得られる発泡粒子を型内発泡成形せいて得られる型内発泡成形体の表面性が悪化する傾向にあった。しかし、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、上記構成を有するため、発泡粒子の気泡径は微細化せず、かつ均一となり、結果として、得られる発泡粒子を型内発泡成形せいて得られる型内発泡成形体は、高強度であり、かつ、表面性が良好となる効果を奏する。
【0024】
また、本明細書において、「ポリプロピレン系樹脂発泡粒子」を、単に「発泡粒子」と称する場合がある。
【0025】
また、本明細書において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形して得られる「ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体」を、単に「型内発泡成形体」と称する場合がある。
【0026】
また、本明細書において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた「ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法」を、単に、「型内発泡成形体の製造方法」と称する場合がある。
【0027】
1−1.ポリプロピレン系樹脂(I)
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂(I)としては、発泡粒子の生産安定性、ならびに得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の強度の観点から、プロピレン、およびプロピレン以外のコモノマーを含んだポリプロピレン系ランダム共重合体が好ましい。
【0028】
上記コモノマーとしては、例えば、1−ブテン、エチレン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィン、などが挙げられる。これらのコモノマーは、単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0029】
これらコモノマーの中でも、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る際の発泡性、および、得られる発泡粒子を型内発泡成形して、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とした際の表面美麗性が優れる点から、1−ブテンおよび/またはエチレンが好ましい。さらに、後述するようにポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率を1200MPa以上1700MPa以下とすることができる点から、コモノマーとしては1−ブテンがさらに好ましい。
【0030】
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂(I)におけるコモノマー含有量の総和としては、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂(I)100重量%中、0.5重量%以上10重量%以下が好ましく、1.5重量%以上8重量%以下がより好ましく、2.5重量%以上6重量%以下がさらに好ましい。
【0031】
コモノマー総含有量が0.5重量%未満のポリプロピレン系樹脂は、融点が高くなる傾向が強く、得られる発泡粒子を型内発泡成形する際、成形圧(水蒸気加熱圧)が0.40MPa(ゲージ圧)を超えてしまい、成形が困難な場合がある。
【0032】
コモノマー総含有量が10重量%を超えると、得られる発泡粒子を型内発泡成形する際の水蒸気加熱圧は低下するものの、ポリプロピレン系樹脂自体の融点が低くなり、該型内発泡成形時の発泡力が高まることで成形サイクルが長くなったり、得られた型内発泡成形体の圧縮強度等の実用剛性を満足しなくなる傾向がある。型内発泡成形体の実用剛性が満足のいくものでない場合、型内発泡成形時の成形体倍率を下げる必要が生じ、この場合、成形体の軽量化が図りにくくなる。
【0033】
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂(I)のメルトフローレート(以降、「MFR」と称す)は、3g/10分以上20g/10分以下が好ましく、5g/10分以上15g/10分以下がより好ましく、6g/10分以上12g/10分以下が最も好ましい。
【0034】
ポリプロピレン系樹脂(I)のMFRが3g/10分未満の場合、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の表面美麗性が低下する傾向があり、20g/10分を超えると、該型内発泡成形時の発泡力が高まりすぎることで成形サイクルが長くなる傾向にある。
【0035】
なお、本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(I)のMFRの測定は、JIS−K7210記載のMFR測定器を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。
【0036】
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂(I)の融点としては、145℃以上165℃以下が好ましく、148℃以上160℃以下がより好ましく、148℃以上158℃以下がさらに好ましく、148℃以上155℃以下が特に好ましい。
【0037】
ここで、ポリプロピレン系樹脂(I)の融点とは、示差走査熱量計DSCを用いて、ポリプロピレン系樹脂(I)1mg以上10mg以下を、40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後220℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線における、2回目の昇温時の融解ピーク温度である。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂(I)の融点が145℃未満の場合は、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の圧縮強度が不足する傾向があり、165℃を超えると、該型内発泡成形時に成形加熱圧力が高くなり過ぎ、一般的な0.4MPa(ゲージ圧)耐圧の型内発泡成形機で成形できなくなる傾向がある。
【0039】
このようなポリプロピレン系樹脂(I)は、1種類のポリプロピレン系樹脂を単独で用いても良く、2種以上のポリプロピレン系樹脂を混合して用いても良い。混合方法としては、特に限定されないが、ブレンダー等で混合する方法、または、重合時の多段重合によりブレンドする方法が挙げられる。
【0040】
また、ポリプロピレン系樹脂を重合する際の重合触媒に特に制限はなく、チーグラーナッタ系触媒、メタロセン系触媒など、種々の触媒を用いることができる。
【0041】
1−2.高密度ポリエチレン系樹脂(II)
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(X)は、ポリプロピレン系樹脂(I)に高密度ポリエチレン系樹脂(II)を混合する。上記基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(X)は、ポリプロピレン系樹脂(I)に加えて高密度ポリエチレン系樹脂(II)を含有することによって、得られる発泡粒子の気泡径が微細化しすぎず、比較的小さな気泡径でも、圧縮強度特性を損なうことなく、表面美麗な型内発泡成形体が得られるという効果を奏する。
【0042】
本発明の一実施形態で用いられる高密度ポリエチレン系樹脂(II)の密度としては、0.93g/cm以上が好ましく、0.95g/cm以上0.97g/cm以下がより好ましい。
【0043】
高密度ポリエチレン系樹脂(II)の密度が0.93g/cm未満では、得られる発泡粒子の気泡径が不均一になる傾向があり、0.97g/cm超では、発泡粒子を得る際の発泡性が悪化する傾向がある。
【0044】
本発明の一実施形態で用いられる高密度ポリエチレン系樹脂(II)のMFRは、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の表面美麗性と該型内発泡成形時の成形サイクルとの観点から、0.1g/10分以上20g/10分以下が好ましく、0.1g/10分以上15g/10分以下がより好ましい。
【0045】
なお、高密度ポリエチレン系樹脂(II)のMFRは、JIS K7210に準拠し、荷重2160g、温度190±0.2℃、で測定した値である。
【0046】
本発明の一実施形態で用いられる高密度ポリエチレン系樹脂(II)の融点としては、特に限定されないが、125℃以上135℃以下が好ましく、125℃以上130℃以下がより好ましく、128℃以上130℃以下がさらに好ましい。
【0047】
ここで、高密度ポリエチレン系樹脂(II)の融点とは、示差走査熱量計DSCを用いて、高密度ポリエチレン系樹脂(II)1mg以上10mg以下を、40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後220℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線における、2回目の昇温時の融解ピーク温度である。
【0048】
高密度ポリエチレン系樹脂(II)の融点が125℃未満では、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の、圧縮強度等の実用剛性が低くなる傾向があり、135℃を超えると、該型内発泡成形体に対する、ポリプロピレン系樹脂(I)と高密度ポリエチレン系樹脂(II)とを混合する効果が顕著でなくなる傾向がある。
【0049】
本発明の一実施形態に係る高密度ポリエチレン系樹脂(II)の曲げ弾性率は、800MPa以上1600MPa以下であることが好ましい。
【0050】
なお、高密度ポリエチレン系樹脂(II)の曲げ弾性率は、高密度ポリエチレン系樹脂(II)を80℃にて6時間乾燥させた後、35t射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、金型温度30℃にて厚み6.4mmバー(幅12.7mm、長さ127mm)を作製して、一週間以内にASTM D790に従い曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。
【0051】
本発明の一実施形態で用いられる高密度ポリエチレン系樹脂(II)は、エチレン以外の、エチレンと共重合可能な、コモノマーを含んでいてもよい。エチレンと共重合可能な、コモノマーとしては、炭素数が3以上、18以下のα−オレフィンを用いることができ、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。これらコモノマーは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0052】
1−3.ポリプロピレン系樹脂(X)
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂(X)に含まれるポリプロピレン系樹脂(I)および高密度ポリエチレン系樹脂(II)の含有比率は、ポリプロピレン系樹脂(I)85〜99重量%および高密度ポリエチレン系樹脂(II)1〜15重量%(ポリプロピレン系樹脂(I)および高密度ポリエチレン系樹脂(II)の合計量が100重量%)であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂(I)86〜98重量%および高密度ポリエチレン系樹脂(II)2〜14重量%であることがより好ましい。
【0053】
ポリプロピレン系樹脂(X)に含まれる高密度ポリエチレン系樹脂(II)の含有比率が1重量%未満(ポリプロピレン系樹脂(I)および高密度ポリエチレン系樹脂(II)の合計量が100重量%)では、得られる発泡粒子を型内発泡成形する際の成形サイクルの短縮効果が得られ難い傾向があり、15重量%超では、得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連続気泡率が悪化し、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の強度が低下する傾向がある。
【0054】
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂(X)の曲げ弾性率は、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の強度と表面美麗性との両立の観点から、1200MPa以上1700MPa以下であることが好ましく、1200MPa以上1550MPa以下がより好ましい。
【0055】
一般に、曲げ弾性率の高いポリプロピレン系樹脂からポリプロピレン系樹脂発泡粒子を経て、型内発泡成形して得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡径が微細化されることに伴って、型内発泡成形時の発泡粒子の発泡力が低下し、融着が悪化傾向となるため、良好な型内発泡成形体を得るための型内発泡成形時の成形圧力が高くなる傾向がある。
【0056】
これに対して、本発明の一実施形態によれば、得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡径の微細化が抑制される為、成形圧力が比較的低くても発泡粒子の発泡力が低下傾向とならず、表面美麗な型内発泡成形体とすることが可能となり、さらには、型内発泡成形体の圧縮強度が高い傾向となるため、高い剛性が要求されるバンパー、および、耐久性が要求される通い箱などの用途に適する。また、本発明の一実施形態によれば、より軽量化が可能となる効果も奏する。
【0057】
ポリプロピレン系樹脂(X)の曲げ弾性率を1200MPa以上1700MPa以下とするには、ポリプロピレン系樹脂としては前述のポリプロピレン系樹脂(I)を主として用いることが好ましい。特に、コモノマーの含有量が少なく、コモノマーとして1−ブテンを含むポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0058】
なお、ポリプロピレン系樹脂(X)の曲げ弾性率は、ポリプロピレン系樹脂(X)を80℃にて6時間乾燥させた後、35t射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、金型温度30℃にて厚み6.4mmバー(幅12.7mm、長さ127mm)を作製して、一週間以内にASTM D790に従い曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。
【0059】
本明細書において、上記基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(X)の融点tmとは、図3に示すように、示差走査熱量計DSCを用いて、ポリプロピレン系樹脂1mg以上10mg以下を、40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後220℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線における、2回目の昇温時の融解ピーク温度(図3のtm)である。また、融解終了温度tfとは、2回目の昇温時の融解ピークの高温側のすそが、高温側でベースラインの位置に戻る時の温度である。
【0060】
なお、図3は、1つの融解ピークの例であるが、高密度ポリエチレン系樹脂(II)の添加量を増加させると、図4に示すように2つの融解ピークとなりやすい。
【0061】
例えば、融点130℃の高密度ポリエチレン系樹脂(II)を混合する場合、図3に示すようなポリプロピレン系樹脂(I)に由来する1つの融解ピークに加え、130℃付近に高密度ポリエチレン系樹脂(II)に由来する融解ピークが現れ、合計2つの融解ピークが現れる場合がある。
【0062】
このように、2回目の昇温時のDSC曲線において2つの融解ピークが現れる場合は、吸熱量の大きいほうの融解ピークの温度をtmとして採用すればよい。
【0063】
本発明の一実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂(X)の融点としては、145℃以上165℃以下が好ましく、148℃以上160℃以下がより好ましく、148℃以上158℃以下がさらに好ましく、148℃以上155℃以下が特に好ましい。
【0064】
ポリプロピレン系樹脂(X)の融点が145℃未満の場合は、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の圧縮強度が不足する傾向があり、165℃を超えると、該型内発泡成形時に成形加熱圧力が高くなり過ぎ、一般的な0.4MPa(ゲージ圧)耐圧の型内発泡成形機で成形できなくなる傾向がある。
【0065】
1−4.発泡核剤
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有することが好ましい。
【0066】
本発明の一実施形態で用いられる発泡核剤として、具体的には、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、ケイ酸塩、アルミナ、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、長石アパタイト、硫酸バリウム等が挙げられる。ケイ酸塩としては、例えば、タルク、ケイ酸マグネシウム、カオリン、ハロイサイト、デッカイト、ケイ酸アルミニウム、ゼオライトなどが挙げられ、1種以下の発泡核剤を含有することが好ましい。
【0067】
本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有させることで、型内発泡成形体の製造方法において、成形サイクルが短くなり、型内発泡成形体の寸法が良化となる効果を奏する。2種以上の発泡核剤を含有させる場合と比べて、1種以下の発泡核剤を含有させる場合は、型内発泡成形体の製造方法において、発泡核剤種による気泡核形成に差が生じないため、発生する気泡径が均一となり、成形サイクルおよび成形体寸法に、より影響を与えない。
【0068】
本発明の一実施形態における発泡核剤の含有量は、得られる発泡粒子の気泡径の均一性の観点から、ポリプロピレン系樹脂(X)100重量部に対して、0.005重量部以上2重量部以下が好ましく、0.01重量部以上1重量部以下がより好ましく、0.03重量部以上0.5重量部以下がさらに好ましい。
【0069】
1−5.添加剤
本発明の一実施形態においては、ポリプロピレン系樹脂(X)に対して、本発明の一実施形態の効果を阻害しない範囲で、着色剤、親水性化合物、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤等の添加剤を添加してもよい。
【0070】
本発明の一実施形態で用いられる着色剤としては、本発明の一実施形態の効果を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、群青、シアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料カドミウム黄、酸化クロム、酸化鉄、ペリレン系顔料、およびアンスラキノン系顔料等を用いることができる。これら着色剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0071】
これらの中でも、カーボンブラックを添加する場合、一般にポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡径は微細化する傾向にあるが、本発明の一実施形態より得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子においては、気泡径の微細化が抑制されることから、本発明の一実施形態において、カーボンブラックを添加することは、好ましい態様である。
【0072】
本発明の一実施形態におけるカーボンブラックの含有量としては、ポリプロピレン系樹脂(X)100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下が好ましく、0.5重量部以上8重量部以下がより好ましく、1重量部以上6重量部以下がさらに好ましい。
【0073】
カーボンブラックの含有量が0.1重量部未満では得られる発泡粒子に対する着色効果が低くなる傾向があり、10重量部を超えると、得られる発泡粒子の気泡径を大きくする効果が低下する傾向にある。
【0074】
本発明の一実施形態において、親水性化合物の添加は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率向上を促す効果があり、また、得られる発泡粒子の気泡径を大きくするという、本発明の一実施形態の効果が現れやすくなる点から、好ましい態様である。
【0075】
本発明の一実施形態で用いられる親水性化合物としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセリン脂肪酸エステル、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物等の吸水性有機化合物を挙げることができる。
【0076】
本発明の一実施形態における親水性化合物の含有量は、ポリプロピレン系樹脂(X)100重量部に対し、0.01重量部以上5重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上2重量部以下がより好ましい。
【0077】
親水性化合物の含有量が0.01重量部未満では、得られる発泡粒子における、発泡倍率向上効果および気泡径を大きくする効果が現れにくい傾向があり、5重量部を超えると、発泡粒子を製造する際に、ポリプロピレン系樹脂中に親水性化合物が均一に分散しにくくなる傾向がある。
【0078】
なお、難燃剤および酸化防止剤の中には、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡径を微細化する作用を有するものがある、これらを使用する場合は、本願発明の効果を大きく損ねない範囲で用いることが好ましい。
【0079】
本発明の一実施形態においては、着色剤、親水性化合物、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤等の添加剤は、ポリプロピレン系樹脂(X)に直接添加してもよいし、予めその他の樹脂に該添加剤を高濃度で含有させてマスターバッチ化しておき、該マスターバッチ樹脂をポリプロピレン系樹脂(X)に添加しても良い。
【0080】
マスターバッチ樹脂に使用される樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(X)を構成するポリプロピレン系樹脂(I)でマスターバッチ化することが最も好ましい。
【0081】
2.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、
メルトフローレートが3g/10分以上20g/10分以下、融点が145℃以上165℃以下であるポリプロピレン系樹脂(I)を85〜99重量%、および、密度が0.93〜0.97g/cm、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上15g/10分以下である高密度ポリエチレン系樹脂(II)を1〜15重量%を含んでなるポリプロピレン系樹脂(X)を基材樹脂とする[(I)および(II)の合計量が100重量%]、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有し、かつ、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して親水性化合物を含有し、かつ、発泡倍率が10倍以上40倍以下であり、平均気泡径が100μm以上250μm以下、連続気泡率が0%以上10%以下であることを特徴とする、該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、水および無機ガス系発泡剤と共に上記ポリプロピレン系樹脂(X)からなるポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器の中に収容し、攪拌条件下に分散させ、分散液を得ると共に、昇温および昇圧した後、該耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に該耐圧容器の中の該分散液を放出してポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、である。
【0082】
2−1.ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するに際しては、まず、ポリプロピレン系樹脂粒子を製造する方法が挙げられる。
【0083】
ポリプロピレン系樹脂粒子を製造する方法としては、押出機を用いる方法が挙げられる。具体的には、例えば、ポリプロピレン系樹脂(I)および高密度ポリエチレン系樹脂(II)に、必要に応じて着色剤および親水性化合物等のその他の添加剤をブレンドし、ブレンド物を押出機に投入して溶融混練し、ダイスより押出し、冷却した後、カッターにて細断することにより、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状とすることができる。あるいは、ポリプロピレン系樹脂(I)および高密度ポリエチレン系樹脂(II)を押出機に投入し、必要に応じて着色剤および親水性化合物等のその他の添加剤を押出機の途中からフィードし、押出機内で混合し、溶融混練することもできる。
【0084】
このようにして得られるポリプロピレン系樹脂(X)からなるポリプロピレン系樹脂粒子の一粒の重量としては、0.2mg/粒以上10mg/粒以下が好ましく、0.5mg/粒以上5mg/粒以下がより好ましい。
【0085】
ポリプロピレン系樹脂粒子の一粒の重量が0.2mg/粒未満では、発泡粒子を製造する際に、ハンドリング性が低下する傾向があり、10mg/粒を超えると、得られる発泡粒子を型内発泡成形する工程において細部への金型充填性が低下する傾向がある。
【0086】
2−2.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法
以上のようにして得られるポリプロピレン系樹脂粒子を用いて、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造することができる。
【0087】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する好ましい態様としては、耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子を二酸化炭素などの発泡剤と共に水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、一定時間保持した後、次いで耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に耐圧容器中の分散液を放出する発泡工程を経て得るという、水分散系でポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法が挙げられる。
【0088】
具体的には、
(1)耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子および水系分散媒、ならびに必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、撹拌しながら、必要に応じて耐圧容器内を真空引きし、1MPa(ゲージ圧)以上2MPa以下(ゲージ圧)の発泡剤を導入し、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱する。加熱することによって、耐圧容器内の圧力が約2MPa(ゲージ圧)以上5MPa以下(ゲージ圧)まで上がる。必要に応じて、発泡温度付近にて、さらに発泡剤を追加して所望の発泡圧力に調整、さらに温度調整を行った後、一定時間保持し、次いで、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出することにより、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる。なお、本明細書において「耐圧容器の内圧よりも低い圧力域」を「低圧域」と称する場合もある。
【0089】
また、別の好ましい態様としては、
(2)耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子および水系分散媒、ならびに必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、撹拌しながら、必要に応じて耐圧容器内を真空引きし、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱しながら、発泡剤を導入してもよい。その後さらに、温度調整を行った後、一定時間保持し、次いで、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出することにより、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることもできる。
【0090】
さらに、別の好ましい態様としては、
(3)耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子および水系分散媒、ならびに必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、発泡温度付近まで加熱し、さらに発泡剤を導入し、発泡温度とし、一定時間保持し、次いで、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出することにより、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることもできる。
【0091】
なお、低圧域に放出する前に、二酸化炭素、窒素、空気あるいは発泡剤として用いた物質を圧入することにより、耐圧容器内の内圧を高め、発泡時の圧力開放速度を調節し、更には、低圧域への放出中にも二酸化炭素、窒素、空気あるいは発泡剤として用いた物質を耐圧容器内に導入して圧力を制御することにより、発泡粒子の発泡倍率の調整を行うこともできる。
【0092】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率に特に制限はないが、5倍以上60倍以下が好ましい。上記発泡倍率が5倍未満では、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の軽量化が不十分となる傾向があり、60倍を超えると、該型内発泡成形体の機械的強度が実用的でなくなる傾向がある。
【0093】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は100μm以上250μm以下が好ましく、110μm以上240μm以下がより好ましく、120μm以上230μm以下がさらに好ましい。
【0094】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が100μm未満では、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面美麗性が低下する傾向があり、250μmを超えると、該発泡粒子の気泡径の均一性が低下する傾向があり、型内発泡成形体の融着性が部分的に悪化し、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面美麗性が低下する傾向がある。
【0095】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連続気泡率は、0%以上10%以下が好ましく、0%以上9%以下がより好ましい。
【0096】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連続気泡率が10%超では、得られる発泡粒子を型内発泡成形する際に発泡粒子が収縮しやすくなる傾向となるため、得られた型内発泡成形体の表面美麗性が悪化し、また、圧縮強度が低下する傾向がある。
【0097】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、10℃/分の昇温速度で昇温した示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、高密度ポリエチレン(II)の配合量に従い、図1に示すように、2つの融解ピークを有し、低温側融解熱量(Ql)と高温側融解熱量(Qh)との少なくとも2つの融解熱量を有する場合、または、図2に示すように、ポリプロピレン系樹脂(I)由来の2つの融解ピークに加え、130℃付近に高密度ポリエチレン系樹脂(II)に由来する融解ピークが現れ、合計3つの融解ピークが現れる場合がある。
【0098】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、前述の水分散系でのポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法において、発泡温度(発泡時の耐圧容器内温度)を適切な値に適宜調整し、一定時間保持することにより容易に得られる。
【0099】
すなわち、発泡温度としては、通常、基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(X)の融点tmおよび、融解終了温度tfを用いて表すと、80℃以上tf(℃)未満が好ましい。
【0100】
80℃未満ではポリプロピレン系樹脂(X)が殆ど軟化していないので、発泡粒子を製造する際、発泡せず、tf(℃)以上ではポリプロピレン系樹脂(X)が溶融してしまい、発泡粒子を製造する際、耐圧容器内で塊化してしまう傾向となる。
【0101】
選択する発泡剤によってポリプロピレン系樹脂の軟化を促進させる可塑化効果が異なるため、好ましい発泡温度の範囲が異なる。二酸化炭素を使用する場合を例にとれば、tm−10(℃)以上tf(℃)未満が好ましく、tm−8(℃)以上tf(℃)未満がより好ましく、tm−5(℃)以上tf−2(℃)以下の温度がさらに好ましい。
【0102】
また、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、発泡時の耐圧容器内温度で保持する時間としては、ポリプロピレン系樹脂の結晶状態の制御ならびに生産サイクルの観点から、1分以上120分以下が好ましく、5分以上60分以内がより好ましい。
【0103】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の全融解熱量(Q)、低温側融解熱量(Ql)および高温側融解熱量(Qh)を、次のように定義する(図1、および図2を参照)。
【0104】
低温側融解熱量(Ql)および高温側融解熱量(Qh)の和である全融解熱量(Q=Ql+Qh)とは、得られるDSC曲線において、温度80℃での吸熱量(点A)から、高温側融解が終了する温度での吸熱量(点B)を結ぶ線分ABを引き、線分ABとDSC曲線とで囲まれた部分である。
【0105】
DSC曲線の低温側融解熱量(Ql)および高温側融解熱量(Qh)の2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点を点Cとし、点Cから線分ABへ垂直に上げて交わる点を点Dとした時、線分ADと線分CDとDSC曲線とで囲まれた部分が、低温側融解熱量(Ql)であり、線分BDと線分CDとDSC曲線とで囲まれた部分が高温側融解熱量(Qh)である。
【0106】
なお、図2に示すように3つの融解ピークが現れる場合は、隣り合う2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点が2点存在することになるが、このような場合は2点の内の高温側の点を点Cとする。
【0107】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子において、高温側融解熱量(Qh)の比率[={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)](以下、「高温熱量比」と称する場合がある)の値としては、10%以上50%以下であり、より好ましくは15%以上40%以下であり、さらに好ましくは、15%以上30%以下である。
【0108】
高温熱量比が10%未満の場合、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の圧縮強度が低く実用剛性が低下する傾向がある。また、高温熱量比が50%を超える場合は、該型内発泡成形体の圧縮強度が高くなるが、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡力が低すぎ、型内発泡成形体全体が融着不良となる、あるいは、融着させるために高い成形圧が必要となる傾向がある。また、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径も小さくなる傾向がある。
【0109】
高温熱量比は、例えば、発泡粒子を製造する際の、上記耐圧容器内温度での保持時間(所望の耐圧容器内温度に達した後から発泡するまでの保持時間)、発泡温度(発泡時の温度であり、上記耐圧容器内温度と同じである場合または異なる場合がある)、発泡圧力(発泡時の圧力)等により適宜調整することができる。一般的には、保持時間を長くする、発泡温度を低くする、および/または、発泡圧力を低くすることにより、高温熱量比あるいは高温側融解ピーク熱量が大きくなる傾向がある。
【0110】
以上のことから、保持時間、発泡温度、発泡圧力を系統的に適宜変化させた実験を何回か試行することにより、所望の高温側融解熱量の比率となる条件を容易に見出すことができる。なお、発泡圧力の調節は、発泡剤の量により調節することができる。
【0111】
本発明の一実施形態において、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる耐圧容器には、特に制限はなく、発泡粒子製造時における容器内圧力、および容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えば、オートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0112】
本発明の一実施形態で用いられる水系分散媒としては、排水の環境負荷の観点から、水のみを用いることが好ましいが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等を水に添加した分散媒も使用できる。なお、本発明の一実施形態において親水性化合物を含有させる場合、水系分散媒中の水も発泡剤として作用し、得られる発泡粒子の発泡倍率向上に寄与する。
【0113】
本発明の一実施形態においては、水系分散媒は、ポリプロピレン系樹脂粒子の水系分散媒中での分散性を良好なものにするために、通常、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して、100重量部以上500重量部以下使用するのが好ましい。
【0114】
本発明の一実施形態で用いられる発泡剤としては、空気、窒素、二酸化炭素、水等の無機系発泡剤が挙げられる。
【0115】
無機系発泡剤は、有機系発泡剤と比べて、地球温暖化係数が低く環境負荷が低いという利点があり、さらには設備の防爆化も必要としないため、設備に関するコストが安くなる利点も有している。また、無機系発泡剤のなかでも、適度に可塑化効果が高くポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る際の発泡性を向上させやすい点から、特に二酸化炭素を用いることが望ましい。
【0116】
また、上記した水分散系を用いてポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法において、二酸化炭素および/または水を含む無機系発泡剤、特に二酸化炭素を含む無機系発泡剤を用いる場合は、一般的には、飽和炭化水素類を用いる場合に比べて平均気泡径が小さくなりやすい。しかし、本発明の一実施形態によれば、発泡剤として二酸化炭素および/または水を含む無機系発泡剤を使用して平均気泡径が従来の飽和炭化水素類を用いる場合に比べて比較的小さくなるような場合でも、型内発泡成形体の表面美麗性を向上させやすくなり、本発明の一実施形態の効果が現れやすいことから無機系発泡剤を使用することは好ましい態様である。
【0117】
本発明の一実施形態においては、水系分散媒中、ポリプロピレン系樹脂粒子同士の合着を防止するために、分散剤、分散助剤を使用することが好ましい。
【0118】
本発明の一実施形態で用いられる分散剤として、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー等の無機系分散剤が例示できる。これらは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0119】
本発明の一実施形態で用いられる分散助剤として、カルボン酸塩型、アルキルスルホン酸塩、n−パラフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型等の陰イオン界面活性剤を挙げることができる。これらは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0120】
これらの中でも、分散剤として、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、硫酸バリウムまたはカオリンよりなる群から選ばれる少なくとも一種、および分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダを併用することが好ましい。
また、分散剤および分散助剤の使用量は、その種類、ならびに用いるポリプロピレン系樹脂粒子の種類および使用量によって異なるが、通常、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して、分散剤0.2重量部以上3重量部以下であることが好ましく、分散助剤0.001重量部以上0.1重量部以下であることが好ましい。
【0121】
以上のように、ポリプロピレン系樹脂粒子からポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る工程を「一段発泡工程」と称する場合があり、このようにして得たポリプロピレン樹脂発泡粒子を「一段発泡粒子」と称する場合がある。
【0122】
一段発泡粒子は、製造する際の発泡剤の種類にも依るが、得られる一段発泡粒子の発泡倍率が10倍に達しない場合がある。このような場合には、一段発泡粒子に、無機ガス(例えば、空気、窒素、二酸化炭素、等)を含浸して内圧を付与した後、特定の圧力の水蒸気と接触させることにより、一段発泡粒子よりも発泡倍率が向上したポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる。
【0123】
このように、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子をさらに発泡させてより発泡倍率の高いポリプロピレン系樹脂発泡粒子とする工程を、「二段発泡工程」と称する場合がある。そして、このような二段発泡工程を経て得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を「二段発泡粒子」と称する場合がある。
【0124】
本発明の一実施形態において、二段発泡工程における水蒸気の圧力は、二段発泡粒子の発泡倍率を考慮した上で、0.04MPa(ゲージ圧)以上0.25MPa(ゲージ圧)以下に調整することが好ましく、0.05MPa(ゲージ圧)以上0.15MPa(ゲージ圧)以下に調製することがより好ましい。
【0125】
二段発泡工程における水蒸気の圧力が0.04MPa(ゲージ圧)未満では、得られる二段発泡粒子の発泡倍率が向上しにくい傾向があり、0.25MPa(ゲージ圧)を超えると、得られる二段発泡粒子同士が合着してしまい、その後の型内発泡成形に供することができなくなる傾向がある。
【0126】
一段発泡粒子に含浸する無機ガスの内圧、すなわち、発泡粒子内圧(絶対圧)は、二段発泡粒子の発泡倍率および二段発泡工程の水蒸気圧力を考慮して適宜変化させることが望ましいが、0.2MPa以上(絶対圧)0.6MPa以下(絶対圧)であることが好ましい。
【0127】
上記発泡粒子内圧(絶対圧)が0.2MPa(絶対圧)未満では、発泡倍率を向上させるために高い圧力の水蒸気が必要となり、二段発泡粒子が合着する傾向にある。また、上記発泡粒子内圧(絶対圧)が0.6MPa(絶対圧)を超えると、二段発泡粒子が連泡化する傾向があり、このような場合、得られる発泡粒子を型内発泡成形して得られる型内発泡成形体の圧縮強度等の剛性が低下する傾向がある。
【0128】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、一段発泡工程を経て製造される一段発泡粒子であってもよく、あるいは、二段発泡工程を経て製造される二段発泡粒子であってもよい。
【0129】
また、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、一段発泡工程を含んでもよく、あるいは、一段発泡工程に加えて二段発泡工程を含んでもよい。
【0130】
なお、本発明の一実施形態におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子としては、スチレンをポリプロピレン系樹脂粒子に含浸、重合させる工程を経て得られるスチレン改質ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は除外するものである。理由は定かではないが、スチレン改質ポリプロピレン系樹脂発泡粒子において本発明の一実施形態の効果は、顕著には発現されない。
【0131】
3.ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体およびポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、1.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、において記載されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて、後述するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法によって得られる、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であることが好ましい。
【0132】
また、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、2.ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、において記載された方法によって製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて、後述するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法によって得られる、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であることが好ましい。
【0133】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、従来から知られている型内発泡成形法により、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とすることができる。
型内発泡成形法としては、例えば、
イ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を無機ガス、例えば空気、窒素、または二酸化炭素等で加圧処理してポリプロピレン系樹脂発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定の内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、
ロ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法、
ハ)特に前処理することなくポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、などの方法を利用し得る。
【0134】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法では、成形サイクルが短い、すなわち後述する実施例において詳しく説明される成形サイクル短縮率の値が大きいことが好ましい。本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法における成形サイクル短縮率は、特に限定されないが、6%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、8%以上であることがさらに好ましく、10%以上であることが特に好ましい。本発明の一実施形態に係る成形サイクル短縮率の上限は、得られる型内発泡成形体の表面美麗性および成形体寸法等が良好である限り、特に限定されない。
【0135】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形体寸法は、後述する実施例において詳しく説明される、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の収縮率によって、表される。本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の収縮率は、型内発泡成形体の利用上の観点から、0%以上2.6%未満であることが好ましく、0%以上2.3%未満であることがより好ましく、0%以上2%未満であることがさらに好ましい。
【0136】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度は、10g/L以上60g/L以下が好ましく、11g/L以上59g/L以下がより好ましい。
【0137】
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度が10g/L以上の場合、得られる型内発泡成形体の軽量化が満足のいくものとなる効果を奏し、60g/L以下の場合、該型内発泡成形体の圧縮強度などの機械的強度が実用的となる効果を奏する。
【0138】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の圧縮強度は、後述する実施例において詳しく説明される50%歪時圧縮強度によって、表される。本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の50%歪時圧縮強度は、型内発泡成形体の利用上の観点から、0.22MPa以上であることが好ましく、0.23MPa以上であることがより好ましく、0.24MPa以上であることがさらに好ましい。本発明の一実施形態に係る50%歪時圧縮強度の上限は、型内発泡成形体の表面美麗性および成形体寸法等が良好である限り、特に限定されない。
【0139】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の連続気泡率は、特に限定されないが、型内発泡成形体の表面美麗性と強度との観点から、0%以上10%以下であることが好ましい。
【0140】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材、通い箱など様々な用途に用いることが可能である。
【0141】
以上のように、本発明の一実施形態によれば、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡径の微細化が抑制されるため、型内発泡成形体の製造方法において、成形圧力が比較的低くても発泡粒子の発泡力が低下傾向とならず、表面美麗性に優れたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を製造することが可能である。
【0142】
また、曲げ弾性率が1200MPa以上1700MPa以下、より好ましくは1200MPa以上1550MPa以下のポリプロピレン系樹脂(X)を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子から得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、圧縮強度が高い傾向となり、高い剛性が要求されるバンパー、および、耐久性が要求される通い箱などの用途に適し、また、より軽量化も可能となる。
【0143】
本発明は、以下のように構成されることもできる。
[1] メルトフローレートが3g/10分以上20g/10分以下、融点が145℃以上165℃以下であるポリプロピレン系樹脂(I)を85〜99重量%、および、密度が0.93〜0.97g/cm、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上15g/10分以下である高密度ポリエチレン系樹脂(II)を1〜15重量%を含んでなるポリプロピレン系樹脂(X)を基材樹脂とする[(I)および(II)の合計量が100重量%]、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有し、かつ、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して親水性化合物を含有し、かつ、発泡倍率が10倍以上40倍以下であり、平均気泡径が100μm以上250μm以下、連続気泡率が0%以上10%以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[2] 上記ポリプロピレン系樹脂(I)の上記融点が148℃以上160℃以下であることを特徴とする、[1]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[3] 上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の上記融点が125℃以上135℃以下であることを特徴とする、[1]または[2]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[4] 上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の上記融点が125℃以上130℃以下であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[5] 上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の曲げ弾性率が800MPa以上1600MPa以下であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[6] 上記ポリプロピレン系樹脂(X)100重量部に対して、1種以下の上記発泡核剤を0.005重量部以上2重量部以下、含有することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[7] 上記親水性化合物が、メラミン、グリセリン、ジグリセリンおよびポリエチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[8] メルトフローレートが3g/10分以上20g/10分以下、融点が145℃以上165℃以下であるポリプロピレン系樹脂(I)を85〜99重量%、および、密度が0.93〜0.97g/cm、かつ、メルトフローレートが0.1g/10分以上15g/10分以下である高密度ポリエチレン系樹脂(II)を1〜15重量%を含んでなるポリプロピレン系樹脂(X)を基材樹脂とする[(I)および(II)の合計量が100重量%]、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して1種以下の発泡核剤を含有し、かつ、該ポリプロピレン系樹脂(X)に対して親水性化合物を含有し、かつ、発泡倍率が10倍以上40倍以下であり、平均気泡径が100μm以上250μm以下、連続気泡率が0%以上10%以下であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、水および無機ガス系発泡剤と共に上記ポリプロピレン系樹脂(X)からなるポリプロピレン系樹脂粒子を耐圧容器の中に収容し、攪拌条件下に分散させ、分散液を得ると共に、昇温および昇圧した後、該耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に該耐圧容器の中の該分散液を放出して上記ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[9] 上記無機ガス系発泡剤が二酸化炭素であることを特徴とする、[8]記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[10] 上記ポリプロピレン系樹脂(I)の上記融点が148℃以上160℃以下であることを特徴とする、[8]または[9]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[11] 上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の上記融点が125℃以上135℃以下であることを特徴とする、[8]〜[10]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[12] 上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の上記融点が125℃以上130℃以下であることを特徴とする、[8]〜[11]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[13] 上記高密度ポリエチレン系樹脂(II)の曲げ弾性率が800MPa以上1600MPa以下であることを特徴とする、[8]〜[12]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[14] 上記ポリプロピレン系樹脂(X)100重量部に対して、1種以下の上記発泡核剤を0.005重量部以上2重量部以下、含有することを特徴とする、[8]〜[13]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[15] 上記親水性化合物が、メラミン、グリセリン、ジグリセリンおよびポリエチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする、[8]〜[14]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[16] [1]〜[7]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法であって、上記ポリプロピレン系樹脂(I)単独であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法における成形サイクルに対して、成形サイクルが5〜20%短いことを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法。
[17] [1]〜[7]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、密度が10g/L以上60g/L以下であり、連続気泡率が0〜10%であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
【実施例】
【0144】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明の一実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明の一実施形態はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0145】
実施例および比較例において、使用した物質は、以下のとおりである。
●ポリプロピレン系樹脂A[ポリプロピレン系樹脂メーカー試作品:プロピレン−エチレンランダム共重合体、コモノマーとしてのエチレン含有量2.5重量%、MFR8g/10分、融点151℃]
●ポリプロピレン系樹脂B[ポリプロピレン系樹脂メーカー試作品:プロピレン−1−ブテン−エチレンランダム共重合体、コモノマーとしての1−ブテン含有量3.3重量%、コモノマーとしてのエチレン含有量1.1重量%、MFR9g/10分、融点148℃]
●ポリプロピレン系樹脂C[ポリプロピレン系樹脂メーカー試作品:ホモポリプロピレン、MFR8g/10分、融点163℃]
なお、ポリプロピレン系樹脂A、B、Cの共重合組成の定量は次のように測定した。
【0146】
ポリプロピレン系樹脂(約1g)に、キシレン50gを加えて120℃で加熱溶解し、高温遠心分離(国産遠心機製、H175)を用いて、12000rpm×30分の条件にて、不溶分と可溶分とに分別した。得られた可溶分を冷却後、遠心分離(12000rpm×30分)により、不溶分を得た。得られた不溶分50mgに、オルトジクロロベンゼン−dを0.4g加え、100℃で加熱溶融させて、98℃にて13C−MNR測定[VARIAN製、INOVA AS600]を行い、1−ブテン、エチレンの共重合組成の定量を行った。
●高密度ポリエチレン樹脂A[ポリエチレン系樹脂メーカー試作品:MFR5g/10分、融点130℃、密度0.953g/cm
●高密度ポリエチレン樹脂B[ポリエチレン系樹脂メーカー試作品:MFR7g/10分、融点133℃、密度0.963g/cm
●高密度ポリエチレン樹脂C[ポリエチレン系樹脂メーカー試作品:MFR3g/10分、融点135℃、密度0.968g/cm
●高密度ポリエチレン樹脂D[ポリエチレン系樹脂メーカー試作品:MFR0.3g/10分、融点126℃、密度0.944g/cm
●直鎖状低密度ポリエチレン樹脂[ポリエチレン系樹脂メーカー試作品:MFR2g/10分、融点121℃、密度0.925g/cm
●タルク[林化成(株)製]:タルカンパウダーPK−S
●ポリエチレングリコール:ライオン株式会社製、PEG#300
●カーボンブラック:三菱化学(株)製、MCF88(平均粒径18nm)
なお、実施例および比較例における評価は、次の方法により行なった。
【0147】
(ポリプロピレン系樹脂の融点測定)
ポリプロピレン系樹脂(X)の融点tmの測定は、示差走査熱量計DSC[セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型]を用いて、ポリプロピレン系樹脂5〜6mgを、10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温して樹脂粒子を融解し、その後10℃/minの降温速度で220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度として求められる値とした(図3図4のtm参照)。なお、2回目の昇温時のDSC曲線において2つの融解ピークが現れる場合は、吸熱量の大きいほうの融解ピークの温度をtmとした。
【0148】
(ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂粒子、の曲げ弾性率)
上述した高密度ポリエチレン系樹脂もしくは直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、または得られたポリプロピレン系樹脂(X)を、80℃にて6時間乾燥させた後、35t射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、金型温度30℃にて厚み6.4mmバー(幅12.7mm、長さ127mm)を作製して、一週間以内にASTM D790に準拠して曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。
【0149】
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の高温熱量比の算出)
高温熱量比[={Qh/(Ql+Qh)}×100(%)]の測定は、セイコーインスツルメンツ(株)製のDSC6200型示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する際に得られるDSC曲線(図1図2参照)から、算出した。
【0150】
図1に示す通り、低温側融解熱量(Ql)および高温側融解熱量(Qh)の和である全融解熱量(Q=Ql+Qh)とは、得られるDSC曲線において、温度80℃での吸熱量(点A)から、高温側融解が終了する温度での吸熱量(点B)を結ぶ線分ABを引き、線分ABとDSC曲線とで囲まれた部分である。
【0151】
DSC曲線の低温側融解熱量および高温側融解熱量の2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点を点Cとし、点Cから線分ABへ垂直に上げて交わる点をDとした時、線分ADと線分CDとDSC曲線とで囲まれた部分が、低温側融解熱量(Ql)であり、線分BDと線分CDとDSC曲線とで囲まれた部分が高温側融解熱量(Qh)である。
【0152】
なお、図2のように、3つの融解ピークが現れる場合は、2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点が2点存在することになるが、このような場合は2点の内の高温側の点を点Cとした。
【0153】
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡膜が破壊されないように充分注意して発泡粒子のほぼ中央を切断し、その切断面をマイクロスコープ[キーエンス製:VHXデジタルマイクロスコープ]を用いて観察した。
【0154】
マイクロスコープでの観察写真において、表層部を除く切断面内部に長さ1000μmに相当する線分を引き、該線分が通る気泡数nを測定し、気泡径を1000/n(μm)で算出した。同様の操作を10個の発泡粒子で行い、それぞれ算出した気泡径の平均値を、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径とした。
【0155】
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連続気泡率)
得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子に対して、空気比較式比重計[東京サイエンス(株)製、モデル1000]を用いて、ASTM D2856−87の手順C(PROSEDURE C)に記載の方法に準拠して、体積Vc(cm)を測定した。
次いで、Vcを測定後のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の全量を、エタノールの入ったメスシリンダー中に沈め、メスシリンダーの水位上昇分(水没法)から、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の見かけ上の体積Va(cm)を求めた。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連続気泡率は、下記の式によって算出した。
連続気泡率(%)=(Va−Vc)×100/Va
(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率)
得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子3g以上10g以下程度を取り、60℃で6時間乾燥した後、23℃、湿度50%の室内で状態調節し、重量w(g)を測定後、水没法にて体積v(cm)を測定し、発泡粒子の真比重ρb=w/vを求め、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子の密度ρrとの比から発泡倍率K=ρr/ρbを求めた。
なお、以下に示す実施例および比較例においては、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子(ポリプロピレン系樹脂粒子)の密度ρrは、いずれも0.9g/cmとした。
【0156】
(ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形性評価)
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形性は、型内発泡成形体の表面美麗性(平面部)、表面美麗性(エッジ部)、および成形体寸法に加えて、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法における最低成形圧力(ゲージ圧)、および、成形サイクル短縮率も含む。
【0157】
ポリプロピレン発泡成形機[ダイセン株式会社製、KD−345]を用い、縦300mm×横400mm×厚み50mmの金型内に、予めポリプロピレン系樹脂発泡粒子内部の空気圧力が表1記載の内圧になるように調整した発泡粒子を充填し、厚み方向に10%圧縮して加熱成形させることにより、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は1時間室温で放置した後、75℃の恒温室内で3時間養生乾燥を行い、再び室温に取出してから室温で24時間放置した後、融着性、表面美麗性評価、成形体寸法評価、成形体密度測定および50%歪時圧縮強度測定を行った。
【0158】
なお、型内発泡成形体の製造方法において、両面加熱工程の成形圧力(水蒸気圧力)を0.01MPaずつ変化させて成形し、下記に示す<融着性>評価で「良好」あるいは「優秀」となる型内発泡成形体が得られる最も低い成形圧力を最低成形圧力とし、その最低成形圧力で成形した型内発泡成形体について下記に示す表面美麗性評価、成形体寸法評価、成形体密度測定および50%歪時圧縮強度測定を行った。
【0159】
<融着性>
得られた型内発泡成形体の厚み方向にカッターで深さ5mmの切り込みを入れた後、手で裂き、破断面を目視観察して、発泡粒子界面ではなく、発泡粒子内部が破断している割合を求めて、以下の基準にて、融着性を判定した。
優秀:発泡粒子内部破断の割合が80%以上。
良好:発泡粒子内部破断の割合が60%以上80%未満。
失格:発泡粒子内部破断の割合が60%未満(融着度合いが低いため、破断面に現れる発泡粒子界面割合が40%以上)。
【0160】
<表面美麗性(平面部)>
得られた型内発泡成形体の縦300mm×横400mm面を目視観察し、以下の基準にて、表面美麗性を判定した。表面美麗性の粒間(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子間の粒間)については、型内発泡成形体の中央部表面50mm四方に存在する個数を目視で数えて判定した。
非常に優秀◎:粒間が0〜2個であり、表面凹凸が目立たず、シワおよび収縮もなく美麗である。
優秀○:粒間が3〜5個であり、表面凹凸が目立たず、シワおよび収縮もなく美麗である。
失格×:粒間が6個以上、もしくは表面凹凸、収縮あるいはシワが若干見られる。
【0161】
<表面美麗性(エッジ部)>
得られた型内発泡成形体の縦300mm×横400mmの面と面とが交差するエッジ部分(稜線部分)を目視観察し、以下の基準にて、表面美麗性を判定した。表面美麗性の粒間(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子間の粒間)については、型内発泡成形体の縦方向、および横方向のエッジ部分(稜線部分)に存在する凸凹の個数を目視で数えて判定した。
優秀○:型内発泡成形体の面と面との交差するエッジ部分(稜線部分)においてポリプロピレン系樹脂発泡粒子に起因する凹凸が0〜5個であり、きれいな稜線が得られており金型転写性が良好である。また、エッジ部分を指でこすっても発泡粒子は剥がれ落ちることが無い。
失格×:エッジ部分(稜線部分)においてポリプロピレン系樹脂発泡粒子に起因する凹凸が6個以上と目立ち、金型転写性が悪い。
【0162】
<成形サイクル短縮率>
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法における成形サイクル時間を、成形開始から成形体を離型する成形終了までの時間とする。高密度ポリエチレン系樹脂(II)を含まず、ポリプロピレン系樹脂(I)のみを基材樹脂とし、発泡剤として二酸化炭素を使用して得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法における、成形サイクル時間[T(秒)]に対して、ポリプロピレン系樹脂(I)に加えて、所定量の高密度ポリエチレン系樹脂(II)を含むポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とし、発泡剤として二酸化炭素を使用して得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の製造方法における、成形サイクル時間[T(秒)]を比較し、次式で成形サイクル短縮率を求めた。
成形サイクル短縮率(%)=(T―T)/T×100
成形サイクルに関しては、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の金型内への充填を開始した時点を成形開始とし、蒸気を金型内に送りこむことで加熱し、次に成形体を水冷し、プランク金型の表面に取付けた面圧計で0.05MPaまで面圧が低下したタイミングで型開し、離型が完了した時点を、成形終了とし、成形開始から成形終了までの時間とし、蒸気の加熱圧は最低成形圧力での比較を行った。
【0163】
成形サイクル短縮率の値が大きいほど、生産性に優れていることを示している。
<成形体寸法>
得られた型内発泡成形体の縦寸法を測定して、金型寸法(縦400mm)に対する型内発泡成形体の収縮率を求めて、成形体寸法の評価指標とした。
収縮率(%)=(400(mm)−縦寸法(mm))/400(mm)×100
◎:収縮率が2%以下である。
○:収縮率が2%以上2.3%未満である。
△:収縮率が2.3%以上2.6%未満である。
×:収縮率が2.6%以上である。
【0164】
(型内発泡成形体の品質評価)
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の品質は、成形体密度、50%歪時圧縮強度、および連続気泡率を含む。
【0165】
<成形体密度>
型内発泡成形体のほぼ中央から、縦50mm×横50mm×厚み25mmのテストピースを切り出した。但し、型内発泡成形体厚み方向の表層を含むおおむね12.5mmずつを切り落とし、厚み25mmのテストピースとした。テストピースの重量W(g)を測定し、テストピースの縦、横、厚み寸法をノギスで測定し体積V(cm)を算出し、成形体密度をW/Vにて求める。但し、単位がg/Lとなるように換算した。
【0166】
<50%歪時圧縮強度>
成形体密度を測定したテストピースを用い、NDZ−Z0504に準拠し、引張圧縮試験機[ミネベア製、TGシリーズ]を用いて、10mm/分の速度で圧縮した際の50%圧縮時の圧縮応力を測定した。
【0167】
(型内発泡成形体の連続気泡率)
得られた型内発泡成形体に対して、型内発泡成形体のほぼ中央から、縦25mm×横25mm×厚み35mmのテストピースを切り出し、切り出したテストピースを、空気比較式比重計[東京サイエンス(株)製、モデル1000]を用いて、ASTM D2856−87の手順C(PROSEDURE C)に記載の方法に準拠して、体積Vc(cm)を測定した。
次いで、Vcを測定後の型内発泡成形体の全体を、エタノールの入ったメスシリンダー中に沈め、メスシリンダーの水位上昇分(水没法)から、型内発泡成形体の見かけ上の体積Va(cm)を求めた。
型内発泡成形体の連続気泡率は、下記の式によって算出した。
連続気泡率(%)=(Va−Vc)×100/Va
(実施例1)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]
ポリプロピレン系樹脂(I)としてポリプロピレン系樹脂Aを95重量部、高密度ポリエチレン系樹脂(II)として高密度ポリエチレン樹脂Aを5重量部、親水性化合物としてポリエチレングリコールを0.5重量部、および発泡核剤としてタルク0.05重量部を混合した。得られた混合物を、二軸押出機[(株)オーエヌ機械製、TEK45]を用いて、樹脂温度220℃にて溶融混練し、押出されたストランドを長さ2mの水槽で水冷後、切断して、ポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。また、このポリプロピレン系樹脂粒子を用いて、前述の通り曲げ弾性率を評価し、ポリプロピレン系樹脂(X)の曲げ弾性率として表1に記載した。
【0168】
[一段発泡粒子の作製]
内容量10Lの耐圧容器中に、得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部、水300重量部、分散剤としてのパウダー状塩基性第3リン酸カルシウム1.5重量部および分散助剤としてのn−パラフィンスルホン酸ソーダ0.06重量部、ならびに発泡剤として二酸化炭素7.5重量部を仕込み、攪拌しながら、表1に示す発泡温度まで昇温し、10分間保持した後、二酸化炭素を追加圧入して、表1に示す発泡圧力に調整し、30分間保持した。
その後、二酸化炭素を圧入しながら容器内温、圧力を一定に保持しつつ、耐圧容器下部のバルブを開いて、水系分散媒を開孔径3.6mmφのオリフィス板を通して、大気圧下に放出することによってポリプロピレン系樹脂発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。得られた一段発泡粒子に関して、高温熱量比、平均気泡径、連続気泡率、および発泡倍率の測定を行った。その結果を、表1に示す。
【0169】
[型内発泡成形体の作製]
得られた一段発泡粒子を耐圧容器内に投入し、加圧空気を含浸させ、あらかじめ表1記載の発泡粒子内圧になるように調整したポリプロピレン系樹脂発泡粒子をクラッキング5mmの状態で縦300mm×横400mm×厚み50mmの金型内に充填し、厚み方向に10%圧縮して加熱成形させることにより、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。この際、金型に充填し、完全に型閉した後、まず0.1MPa(ゲージ圧)の水蒸気で金型内の空気を追い出し(予備加熱工程)、その後、予め調べておいた最低成形圧力の加熱蒸気を用いて10秒間加熱成形(両面加熱工程)させることにより、型内発泡成形体を得た。予備加熱工程は10秒、一方加熱工程は2秒、逆一方加熱工程は2秒、両面加熱工程は上記の通り10秒とした。
【0170】
成形サイクル短縮率、表面美麗性、成形体寸法、成形体密度および50%歪時圧縮強度測定の結果を表1に示す。
【0171】
(実施例2)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、ポリプロピレン系樹脂(I)と高密度ポリエチレン系樹脂(II)との混合比率を90/10に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0172】
(実施例3)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、ポリプロピレン系樹脂(I)をポリプロピレン樹脂Bに変更した以外は、実施例2と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0173】
(実施例4)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、ポリプロピレン系樹脂(I)としてポリプロピレン樹脂Aおよびポリプロピレン系樹脂Cを用い、ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン系樹脂Cと高密度ポリエチレン系樹脂Aとの混合比率を80/10/10となるポリプロピレン系樹脂(X)(tm155℃、MFR=8g/10min)とした以外は、実施例2と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0174】
(実施例5)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、高密度ポリエチレン系樹脂(II)を高密度ポリエチレン系樹脂Bに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0175】
(実施例6)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、高密度ポリエチレン系樹脂(II)を高密度ポリエチレン系樹脂Cに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0176】
(実施例7)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、さらに、カーボンブラックを5重量部追加した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0177】
(実施例8)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、高密度ポリエチレン系樹脂(II)を高密度ポリエチレン系樹脂Dに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0178】
(実施例9)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、発泡核剤であるタルクの使用量を0.10重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0179】
(実施例10)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、発泡核剤であるタルクの使用量を0重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0180】
(実施例11)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、発泡核剤をシリカ0.05重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0181】
(比較例1)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、ポリプロピレン系樹脂(I)と高密度ポリエチレン系樹脂(II)との混合比率を100/0(すなわち、ポリプロピレン系樹脂A100重量部)に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0182】
(比較例2)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、ポリプロピレン系樹脂(I)と高密度ポリエチレン系樹脂(II)との混合比率を80/20に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0183】
(比較例3)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、高密度ポリエチレン系樹脂(II)の代わりに直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を使用した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0184】
(比較例4)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、ポリプロピレン系樹脂(I)と高密度ポリエチレン系樹脂(II)との混合比率を100/0(すなわち、ポリプロピレン系樹脂B100重量部)に変更した以外は、実施例3と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0185】
(比較例5)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、さらに、カーボンブラックを5重量部追加した以外は、比較例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0186】
(比較例6)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、発泡剤を二酸化炭素からイソブタンに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0187】
(比較例7)
[ポリプロピレン系樹脂粒子の作製]において、発泡核剤をタルク0.05重量部とシリカ0.05重量部とに変更した以外は、実施例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系型内発泡成形体を得た。製造条件および評価結果を、表1に示す。
【0188】
【表1】
【0189】
実施例1では、高密度ポリエチレン樹脂(II)を5重量%部含む基材樹脂(ポリプロピレン系樹脂(X))を用いている。実施例1から得られた型内発泡成形体は、高い圧縮強度を有することに加え、比較例1の高密度ポリエチレン樹脂(II)を含まない場合に比べて、表面が美麗であり、成形サイクルは7%短縮しており、本発明の一実施形態の効果が確認できた。
【0190】
同様に、実施例2に関しても、高密度ポリエチレン樹脂(II)を10重量%部含む基材樹脂(ポリプロピレン系樹脂(X))を用いたことによって、成形サイクル短縮率は14%となり、実施例1に対して更に成形サイクルが短くなった。また、得られた型内発泡成形体の表面が美麗であり、かつ圧縮強度が高いことも確認できた。ポリプロピレン系樹脂(I)の組成を変更した実施例3および実施例4に関しても同様の効果が認められた。
【0191】
実施例5,6、8に関しても高密度ポリエチレン(II)の種類を変更した上で、高密度ポリエチレン(II)を5重量%部添加した場合でも、同様の効果が認められた。
【0192】
実施例7について、カーボンブラック5重量%部含有させた場合でも、表面美麗性が認められた。
【0193】
実施例9、10について、発泡核剤であるタルクの使用量を0.10重量部および0重量部に変更した場合でも、同様の効果が認められた。
【0194】
実施例11について、発泡核剤としてシリカ0.05重量部を含有させた場合でも、同様の効果が認められた。
【0195】
比較例2では、高密度ポリエチレン樹脂(II)を20重量%と過剰に含む基材樹脂(ポリプロピレン系樹脂(X))を用いたことによって、得られた型内発泡成形体の表面美麗性が悪化し、かつ圧縮強度は低下する結果となった。
【0196】
比較例3では、高密度ポリエチレン(II)の代わりに、直鎖上低密度ポリエチレンを含有させた基材樹脂を使用した結果、平均気泡径が微細となり、表面美麗性が非常に悪化する結果となった。
【0197】
比較例4、5では、高密度ポリエチレンを含まない結果、表面美麗性の改善がなされていない結果となった。
【0198】
比較例6では、発泡剤としてイソブタンを使用した結果、平均気泡径が粗大となり、型内発泡成形体の製造方法において、成形体の融着性が局所的に悪化し、エッジ部に部分的欠けが発生し、表面美麗性が悪化する結果となった。
【0199】
比較例7では、発泡核剤としてタルク0.05重量部、かつシリカ0.05重量部を含有させた結果、得られた型内発泡成形体の表面美麗性については良好な結果であったが、成形サイクル、および成形体寸法性では悪化する結果となった。
図1
図2
図3
図4