特許第6767982号(P6767982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6767982
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】回転式噴霧器タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 1/08 20060101AFI20201005BHJP
   F01D 15/06 20060101ALI20201005BHJP
   F01D 1/14 20060101ALI20201005BHJP
   B05B 3/10 20060101ALI20201005BHJP
   B05B 5/04 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   F01D1/08
   F01D15/06
   F01D1/14
   B05B3/10 B
   B05B5/04 A
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-538338(P2017-538338)
(86)(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公表番号】特表2018-508686(P2018-508686A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】EP2016000101
(87)【国際公開番号】WO2016116275
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2019年1月18日
(31)【優先権主張番号】102015000551.0
(32)【優先日】2015年1月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】クトニャック、ヨジップ
(72)【発明者】
【氏名】クルマ、ハリー
(72)【発明者】
【氏名】バイル、ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ザイツ、ベルンハルト
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0258270(US,A1)
【文献】 特開2013−245607(JP,A)
【文献】 特開2007−309190(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0164190(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/073475(WO,A1)
【文献】 特開2006−300024(JP,A)
【文献】 実開昭50−053538(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/08
F01D 15/06
F01D 1/14
B05B 3/10
B05B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)外周上にわたって分布する複数のタービンブレード(5)を有し、運転中に、回転軸(3)を中心に特定の回転方向に回転するタービンホイール(4)と、
b)前記タービンブレード(5)を収容し、且つ、外側でダクトウォール(7)により半径方向に区切られている、前記回転軸(3)を同軸に取り巻く環状のブレードダクト(6)と、
c)前記タービンホイール(4)を駆動する目的で前記回転方向の駆動空気フローを前記タービンブレード(5)に受けさせるために半径方向外側から前記ブレードダクト(6)にひらけている少なくとも1つの駆動空気ノズル(8)と
を備え、
d)前記駆動空気ノズル(8)の出口領域は、外側に弓形に曲がった凹部(11)であって、各前記タービンブレード(5)が前記凹部(11)を横切る最中に、当該タービンブレード(5)と前記凹部(11)との間に、流れ方向に狭まる収縮横断面領域を形成することなく、前記流れ方向に広がる拡大横断面領域(9)を形成するための凹部(11)を有する、
ことを特徴とする、回転式噴霧器でスプレー体であるベルプレートを駆動させるラジアルタービンとして設計された回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項2】
a)前記回転式噴霧器タービン(1)は、前記タービンホイール(4)を制動する目的で前記回転方向と反対方向の制動空気フローを前記タービンブレード(5)に受けさせるために半径方向外側から前記ブレードダクト(6)にひらけている少なくとも1つの制動空気ノズル(13)を備え、
b)前記ブレードダクト(6)は、前記制動空気が半径方向に内側に向けて前記ブレードダクト(6)から出るのを防ぐ固定式フローバリア(14)により、前記制動空気ノズル(13)の向かいの内側で半径方向に区切られている、
請求項1に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項3】
a)外周上にわたって分布する複数のタービンブレード(5)を有し、運転中に、回転軸(3)を中心に特定の回転方向に回転するタービンホイール(4)と、
b)前記タービンブレード(5)を収容し、且つ、外側でダクトウォール(7)により半径方向に区切られている、前記回転軸(3)を同軸に取り巻く環状のブレードダクト(6)と、
c)前記タービンホイール(4)を駆動する目的で前記回転方向の駆動空気のフローを前記タービンブレード(5)に受けさせるために半径方向外側から前記ブレードダクト(6)にひらけている少なくとも1つの駆動空気ノズル(8)と、
d)外側では前記ブレードダクト(6)の前記ダクトウォール(7)により区切られ、内側では前記駆動空気ノズル(8)を横切る前記タービンブレード(5)により区切られている、前記駆動空気ノズル(8)の出口にある出口領域(9)と、
e)前記タービンホイール(4)を制動する目的で前記回転方向と反対方向の制動空気のフローを前記タービンブレード(5)に受けさせるために半径方向外側から前記ブレードダクト(6)にひらけている少なくとも1つの制動空気ノズル(13)と、
を備え、
f)各前記駆動空気ノズル(8)の前記出口領域(9)は、前記駆動空気ノズル(8)を横切る最中の前記タービンブレード(5)と共に回転し、流れ方向に広がる拡大横断面領域(9)であり、
g)前記ブレードダクト(6)の前記ダクトウォール(7)は、前記駆動空気ノズル(8)の前記出口領域内に、前記拡大横断面領域(9)を形成するための外側に弓形に曲がった凹部(11)を有し、
h)前記ブレードダクト(6)は、前記制動空気が半径方向に内側に向けて前記ブレードダクト(6)から出るのを防ぐ固定式フローバリア(14)により、前記制動空気ノズル(13)の向かいの内側で半径方向に区切られている、
ことを特徴とする、回転式噴霧器でスプレー体であるベルプレートを駆動させるラジアルタービンとして設計された回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項4】
前記制動空気ノズル(13)の領域にある前記フローバリア(14)は、20°以上且つ40°以下の角度にわたる外周角度で広がっている、
請求項2又は3に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項5】
前記駆動空気が前記タービンホイール(4)の開口部内の前記タービンブレード(5)を通って外側から内側に向けて半径方向に流れ得るように、前記タービンホイール(4)は少なくともその外周の一部にわたって前記半径方向に開いている、
請求項1からのいずれか1項に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項6】
前記駆動空気ノズル(8)の前記出口領域の前記拡大横断面領域(9)は、少なくとも2°、4°、又は6°の角度で前記流れ方向に広がる、
請求項1からのいずれか1項に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項7】
a)前記弓形に曲がった凹部(11)は凹面形状であり、及び/又は、
b)前記ブレードダクト(6)の前記ダクトウォール(7)内の前記弓形に曲がった凹部(11)は、15°以上且つ30°以下である角度(β)にわたって周方向に延在する、
請求項1からのいずれか1項に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項8】
各前記タービンブレード(5)は、当該タービンブレード(5)の外端が前記タービンホイール(4)の前記回転方向とは反対方向を向くように、半径方向に曲がっている、
請求項1からのいずれか1項に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項9】
各前記タービンブレード(5)は、当該タービンブレード(5)の前記外端で、その正面(10)と、前記ブレードダクト(6)の外側円形外周とが、15°以上且つ30°以下である特定角度(α)をなす、
請求項に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項10】
a)前記駆動空気ノズル(8)はラバルノズルである、及び/又は、
b)前記タービンホイール(4)はディスクを有し、前記タービンブレード(5)は前記ディスクの一面から前記ブレードダクト(6)内に軸方向に突き入れられる、
請求項1からのいずれか1項に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の回転式噴霧器タービン(1)を有する回転式噴霧器。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
回転式噴霧器タービンは、回転式噴霧器内でスプレー体(例えば、ベルプレートなど)を駆動させるためのラジアルタービンとして設計され得る。
【0002】
自動車車体部品の塗装のための現代の塗装施設では、塗料の塗布は、通常、スプレー体としてのベルプレートが80000回転毎分までの高回転速度で回転する回転式噴霧器を用いて行われる。
【0003】
ベルプレートは、通常、空気圧駆動タービンにより駆動される。この空気圧駆動タービンは、通常、タービンの回転軸に対して半径方向に配向された平面内でタービンを駆動させるための駆動空気を供給するラジアルタービンの形態である。このタイプの回転式噴霧器タービンは、例えば、特許文献1及び特許文献2などから既知である。
【0004】
典型的には、複数のタービンブレードが外周にわたって分布して回転可能なタービンホイール上に配置されており、これにより、回転式噴霧器タービンを機械的に駆動させるために、タービンブレードは、駆動空気ノズルによる駆動空気フローを受けさせられる。
【0005】
さらに、既知の回転式噴霧器タービンは、例えば、塗装運転の障害が万一起きた場合などに、回転式噴霧器タービンを急速制動することも可能である。この目的で、タービンブレードは、個別の制動ノズルによる回転方向とは反対方向の制動空気フローを受けさせられる。しかし、前述の既知の回転式噴霧器タービンは様々な点で最適ではない。
【0006】
まず、制動性能が最適ではなく、制動処理過程で、回転式噴霧器タービンがある程度の減速時間が経過して初めて停止する。
【0007】
次に、表面塗膜性能が相応に増加され得るようにするために、回転式噴霧器タービンの駆動力を増加させるという目的もある。具体的には、表面塗膜性能を増加させるために、増量した塗料フロー(単位時間当たりの塗料の量)が塗布されねばならず、これが、今度は、回転式噴霧器タービン上での機械的負荷の増大をまねき、応分に増加させた駆動力が必要となる。
【0008】
本発明の技術的背景は、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5も包含する。しかし、これらの文献は、不十分な制動力及び駆動力の問題を解決しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1384516号明細書
【特許文献2】独国特許発明第10236017号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10233199号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102010013551号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0257131号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、相応に改善された回転式噴霧器タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本発明に係る回転式噴霧器タービンにより達成される。
【0012】
本発明は、背景技術で言及した既知の回転式噴霧器タービンの欠点に関して流体力学分野で新たに得られた知見にもとづいている。
【0013】
これによれば、既知の回転式噴霧器タービンの場合の不十分な制動性能は、制動空気ノズルを介して供給される制動空気が環状に取り巻くブレード配置を通り半径方向に部分的に流れ、そして、もはや制動作用に寄与しないという事実に部分的に起因すると考えられる。換言すると、制動空気の一部が、タービンブレードの回転方向と逆側のタービンブレードの正面に衝突し、そして、タービンホイールに制動作用を発揮することが望ましい。一方、制動空気の他部は、環状に取り巻くブレード配置を通り外側から内側に流れ、そして、制動作用に寄与せず、或いは、タービンホイール上で駆動作用をさらに発揮しさえする。
【0014】
そこで、本発明の一態様は、制動空気が環状に取り巻くブレード配置を通り外側から内側に流れ得ることが防止されることを提供する。この目的で、フローバリアが提供される。このフローバリアは、制動空気ノズルと向かい合った固定位置に配置されてもよく、制動空気ノズルから出る制動空気が環状に取り巻くブレード装置を通り半径方向に外側から内側に流れ得ることを防止する。フローバリアは、そして、各タービンブレードが通るブレードダクトから制動空気ノズルの領域内の制動空気が内向き方向に再び出てしまうことを防ぐ。
【0015】
フローバリアは、例えば、制動空気ノズルと向かい合ってブレードダクトの内側に配置された単純な環状に取り巻く板であってもよい。
【0016】
フローバリアは、好ましくは、固定式であり、換言すると、フローバリアは、タービンホイールと共に回転しない。
【0017】
例えば、制動空気ノズルの領域内のフローバリアが、5°−90°の角度にわたって、具体的には、例えば、30°−40°の角度にわたって(そして、より具体的には、例えば、およそ33°で)、周方向に延在することが提供されてもよい。
【0018】
これに関連して、背景技術に記載の従来の回転式噴霧器のタイプと同様に、駆動空気ノズルからの駆動空気がタービンホイールの開口部内の環状に取り巻くブレード配置を通り外側から内側に向けて半径方向に流れ得るように、タービンホイールは、その外周の一部にわたって半径方向に開いていてもよいことは言及すべきであろう。従って、フローバリアが駆動空気と最小限の範囲で衝突するために、フローバリアが制動空気ノズルの領域にわたってのみ周方向に延在することが好都合である。
【0019】
上で言及したタービンホイールの開口形態は、例えば、一面からブレードダクト内にタービンブレードが軸方向に突き入れられるディスクを有するタービンホイールにより実現されてもよい。このようにして、駆動空気がタービンブレードの環状に取り巻くブレード配置を通り外側から内側に流れることが可能となる。
【0020】
また、この代わりに、軸方向の間に各タービンブレードが配置されている2つの平行な回転ディスクをタービンホイールが有していてもよい。そして、タービンホイールは両側が閉ざされていてもよい。
【0021】
さらに、本発明は、収縮拡大フローダクトが駆動空気ノズルの出口で各駆動空気ノズルの下流に形成され、フローが亜音速状態でそこに流入するため、激しく高損失な圧縮衝撃が生じることから、既知の回転式噴霧器タービンの不十分な駆動力がある程度生じるという流体力学分野での発見にもとづいている。当該収縮拡大フローダクトは、典型的には、外側では、ブレードダクトのダクトウォールにより、内側では、各タービンブレードの取り巻いている正面により、形成される。典型的な個別のタービンブレードの急な曲率のため、駆動空気フローはまず収縮領域(タービンブレードの弓形に曲がった正面とブレードダクトのダクトウォールとの間のフロー横断面が狭くなっている場所)に流入する。駆動空気フローは次に続いて拡大領域(各タービングレードの弓形に急に曲がった正面と内壁との間のフロー横断面が広くなっている場所)に流入する。しかし、ラバルノズルに対応する上述のタイプの収縮拡大フロープロファイルは上述の破壊的圧縮衝撃のため望ましくない。
【0022】
ブレードダクトのダクトウォールと各タービンブレードとの間の個別の駆動空気ノズルの出口領域は、横断面領域が流れ方向に広くなり且つ駆動空気ノズルの出口領域を現在通過しているタービンブレードと共に回転するように、排他的に拡大するよう延びている。本発明のこの態様は、各駆動空気ノズルの下流の個別の駆動空気ノズルの出口で超音速フロー内に収縮拡大フローダクトが形成されることを標的的に防止する。そこで、本発明に係る回転式噴霧器タービンの場合、収縮横断面領域が駆動空気ノズルの下流にもうけられないことが有利である。
【0023】
拡大横断面区域は、好ましくは、タービンホイールと共に回転するラバルノズルの出力側を形成する。そして、ラバルノズルの上流部は、好ましくは、駆動空気ノズル(フローの方向に狭くなっている(収縮している))により形成される。そして、ラバルノズルは、回転式ノズル部(即ち、拡大横断面区域)及び固定式ノズル部(即ち、駆動空気ノズル)から構成されている。
【0024】
拡大横断面区域では、フローが加速され、パルスが再増加され、一方、図6の先行技術に示すように(即ち、流れ方向に狭くなる場合)、収縮横断面区域は破壊的な衝撃波を生み出すと考えられる。
【0025】
この場合、ラバルノズルは、好ましくは、超音速フローを、少なくとも下流にある拡大ノズル部で、また、任意に、上流の収縮ノズル部で、生成する。これは、米国出願公開第2007/0257131号明細書などの拡散器などでの亜音速フローとは根本的に異なる。本発明によれば、超音速フローは、好ましくは、流速をさらに増加させる拡大横断面区域に進入する。
【0026】
これは、個別のタービンブレードの適切な曲率、及び、個別の駆動空気ノズルの出口領域でのブレードダクトの対応した意匠により実現される。
【0027】
本発明の例示的実施形態では、個別の駆動空気ノズルの出口領域の拡大横断面領域は、少なくとも2°、4°、又はさらに少なくとも6°の角度で流れ方向に広くなっている。
【0028】
拡大横断面領域は、5°、10°、15°、20°、又はさらに30°を超える角度にわたって周方向に延在していてもよい。
【0029】
既に上述したように、排他的拡大横断面領域は、とりわけ、ブレードダクトのダクトウォールの適切な意匠により実現され得る。そこで、本発明の例示的実施形態では、ブレードダクトのダクトウォールは、駆動空気ノズルの出口領域に、拡大横断面を形成するための外側に弓形に曲がった凹部を有する。『弓形に曲がった凹部』という表現は、この場合、拡大横断面を形成するように弓形に曲がった凹部がダクトウォールの理想的円形外周から外側に逸脱するダクトウォールの理想的円形外周に関するものと理解されたい。
【0030】
例示的実施形態では、ブレードダクトのダクトウォール内の上述の弓形に曲がった凹部は、凹面形状であり、10°−90°の角度にわたって、例えば、40°−50°の角度にわたって、周方向に延在する。ここで、重要なことに、一方の弓形に曲がった凹部、及び、他方の個別のタービンブレードの弓形に曲がった正面は、合わせて、タービンホイールの回転と共に回転する拡大横断面を形成する。
【0031】
既に簡単に上述したように、各タービンブレードは、当該タービンホイールの外端がタービンホイールの回転方向とは反対方向を向くように、半径方向に曲がっている。そして、各タービンブレードは、当該タービンブレードの外端で、その正面と、ブレードダクトの外側円形外周とが、少なくとも2°、5°、又はさらに10°の特定角度をなしていてもよい。
【0032】
本発明に係るタービンは、好ましくは、塗装施設での標準的な空気圧である6バールの空気圧を揺する圧縮空気により駆動されるよう適合されている。本発明に係る噴霧器の改善された効率により、増加された空気圧を必要とせず、6バールの標準的な空気圧によるより多くの運転(即ち、回転速度、塗料フロー速度などの異なる値)が可能となることも特筆に値する。しかし、この代わりに、タービンは8バールの空気圧を有する圧縮空気により駆動されるよう適合され得る。
【0033】
いずれの場合にせよ、本発明は、従来の噴霧器タービンと比べてより高い駆動力を可能とする。そして、これは、より速い塗料のフロー速度を可能とする。例えば、噴霧器の回転速度は、10000rpm、20000rpm、50000rpm、又は、さらに60000rmpより速くできる。さらに、噴霧器により塗布される塗料のフロー速度は、200ml/分、300ml/分、400ml/分、500ml/分、又は、さらに600ml/分より速くできる。
【0034】
本発明は本発明に係る上述の回転式噴霧器タービンを個別部品としてのみ包含するわけではないことは言及しておかねばなるまい。むしろ、本発明は、当該タイプの回転式噴霧器タービンを備える一式の回転式噴霧器も包含する。
【0035】
本発明の他の有利な改良点について、以下で、本発明の例示的実施形態の記載とともに、図面に基づきつつ、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】回転式噴霧器タービンの側面図。
図2図1の回転式噴霧器タービンの分解側面図。
図3A】タービンホイールが異なる連続した角度位置にあるときの、駆動空気ノズルの出口にある拡大横断面領域を示す模式図。
図3B】タービンホイールが異なる連続した角度位置にあるときの、駆動空気ノズルの出口にある拡大横断面領域を示す模式図。
図3C】タービンホイールが異なる連続した角度位置にあるときの、駆動空気ノズルの出口にある拡大横断面領域を示す模式図。
図3D】タービンホイールが異なる連続した角度位置にあるときの、駆動空気ノズルの出口にある拡大横断面領域を示す模式図。
図3E】タービンホイールが異なる連続した角度位置にあるときの、駆動空気ノズルの出口にある拡大横断面領域を示す模式図。
図3F】タービンホイールが異なる連続した角度位置にあるときの、駆動空気ノズルの出口にある拡大横断面領域を示す模式図。
図4】拡大横断面領域の詳細図。
図5】制動空気ノズルの向かいにあるフローバリアを示す横断面図。
図6】従来技術の場合の破壊的収縮拡大横断面領域の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1及び2を参照して、本発明に係るベルプレートを駆動するための回転式噴霧器タービン1を示す。回転式噴霧器タービン1はベルプレートシャフト2にねじ止めされており、ベルプレートシャフト2は運転中に回転軸3を中心に回転する。
【0038】
ベルプレートシャフト2はタービンホイール4を支えている、即ち、タービンホイール4はベルプレートシャフト2上に取り付けられている。外周にわたって分布し、タービンホイール4から軸方向に突き出るように、多数のタービンブレード5がタービンホイール4に付随しており、例えば、タービンブレード5はタービンホイール4の側面に形成される。タービンホイール4は周囲の縁に向けて延びる円形ディスク17を示している。タービンブレード5は、軸3に対して半径方向に延びており、円形ディスク17の周りに環状に間隔をおいて配置されている。この場合、個別のタービンブレード5はブレードダクト6(図3A−5に示す)内に突き出ており、外側で環状に取り巻くダクトウォール7により区切られている。
【0039】
回転式噴霧器タービン1の筐体16は、図1及び2に示すように幾つかの筐体部を有する。回転式噴霧器タービン1は、第1端部品25、ノズルリング26、ディスタンスリング27、及び第2端部品28を含んでいる。筐体内に収容されたときにベルプレートシャフト2が軸3を中心に回転できるように、第1及び第2端部品25、28、ノズルリング26、及びディスタンスリング27は、例えば、固定ピン30などにより、ベルプレートシャフト2の周りに軸方向及び半径方向に連結され、回転式噴霧器タービン1のための筐体組立体を形成する(図1)。タービンホイール4が中で回転する円筒状タービンチャンバ25をノズルリング26の内部が形成するように、ノズルリング26は図5に示すようにタービンホイール4を囲む。
【0040】
図3A−3F及び4から見て取ることができるように、複数の駆動空気ノズル8が外側からブレードダクト6内に出ている。空気ノズル8はノズルリング26内に画定される。ノズルリング26は任意の適切な数の空気ノズル8を画定してもよいことは理解されるべきだろう。各駆動空気ノズル8は、タービンホイール4を回転させるために、図3A−5に示す矢印の方向に、実質的に接線方向に、駆動空気フローを放出する。この場合、駆動空気ノズル8の出口領域で、駆動空気はまず拡大横断面領域9を通過して流れる。
【0041】
拡大横断面領域9は、内側は現在通過しているタービンブレード5の弓形に曲がった正面10により、外側はダクトウォール7内の弓形に曲がった凹部11により形成されている。そして、拡大横断面領域9は、各駆動空気ノズル8の出口領域をそれぞれ現在通過しているタービンブレード5と共に回転方向に回転する。
【0042】
しかし、背景技術で記載した既知の回転式噴霧器とは対照的に、高損失圧縮衝撃をまねくおそれがあるので、個別の駆動空気ノズル8の出口にはラバルノズルと同様の収縮拡大横断面領域は形成されない。そして、こうした破壊的収縮拡大横断面領域がないため、有利なことに、本発明に係る回転式噴霧器タービン1の駆動力の増加がもたらされる。
【0043】
図2を再び参照するが、一組のピン30が、第1及び第2端部品25、28、ノズルリング26、及びディスタンスリング27内に画定された開口を通って、これらの部品を共に組み立てた状態で固定し、第1及び第2端部品25、28、ノズルリング26、及びディスタンスリング27の互いへの側方移動を防ぐために、延びていてもよい。
【0044】
環状中間チャンバ12が、取付状態で開口を覆うように、ディスタンスリング27により覆われている。
【0045】
固定されているノズル自体はラバルノズルである。これは、最も狭い横断面までフローを音速に加速する収縮チャネルを特徴とする。最も狭い横断面からは、当該チャネルは拡大し、これにより、超音速への加速が行われる。筐体とブレードとの間の拡大チャネルはフローが超音速で進入する際の超音速ノズルである。筐体と回転ブレードとの間のこの拡大チャネルはラバルノズルの延長部とみることもできる。
【0046】
各駆動空気ノズル8の下流には、弓形に曲がった凹部11が、それぞれ、15°−30°の角度βにわたって周方向に延在している。具体的には、図4に示すように、駆動空気ノズル8は、ダクトウォール7の外周に沿って、即ち、ダクトウォール7の円弧に沿って、間隔をおいて配置されている縁部32及び端部33を含む。縁部32から端部33へ空気ノズル8を越えたダクトウォール7の外周の経路(即ち、ダクトウォール7の理想的外周)は、図4の参照番号12に一致する。角度βは経路12に沿って縁部32から端部33へと広がる。図4に示す角度βは例示であり、角度βが上述のように15°−30°の間であってもよいことは理解されるべきだろう。
【0047】
図4を続けて参照するが、各タービンブレード5の正面10は、それぞれ、その外側の自由端部33で、ダクトウォール7の外周の経路12と15°−30°の角度αをなしている。具体的には、自由端部33でタービンブレード5の正面10の接線34を図4に示す。角度αは、図4に示すように、正面10の接線34とダクトウォール7の外周の経路12との間の角度として定義される。
【0048】
図5を参照するが、制動空気ノズル13は、タービンブレード5に作業空気のフローを受けさせるために、ブレードダクト6にひらけており、制動空気フローはタービンホイール4の回転方向と反対方向を向いている。
【0049】
この場合、制動空気ノズル13からの制動空気が、環状に取り巻くブレード配置を通り半径方向に単に流れ、内側で再びブレードダクト6から出てしまうことを防ぐフローバリア14がブレードダクト6の内側に据えられている。特に、図2を参照すると、フローバリア14は、ディスタンスリング27に固定されており、タービンホイール4に向けて軸方向に延在している。組立時に、例えば、図1に示すように、フローバリア14は、タービンブレード5及びブレードダクト6の半径方向内側にある。こうして、制動空気ノズル13から出る制動空気が、ブレードダクト6内に保持され、そして、より著しく効率的なやり方でタービンホイール4の制動に寄与することとなる。
【0050】
フローバリア14は、20°−40°の角度(一例として、33°の角度が好ましい)にわたって周方向に延在していてもよい。
【0051】
最後に、図6は、比較用に、従来の回転式噴霧器タービンの場合の駆動空気ノズル8の出口領域を示す。この図から読み取ることができるように、拡大横断面領域9の上流には、まず、収縮横断面領域15がある。そして、収縮横断面領域15は連続する拡大横断面領域9と共にラバルノズルと同様のノズルを形成するが、このノズルは望ましくない圧縮衝撃をまねき、これにより、回転式噴霧器タービンの駆動力が低下する。
【0052】
本発明は本願明細書の例示的記載に限定されるわけではないことは理解されるべきだろう。むしろ、本発明の原理に従い無数の変形例と修正例が可能である。
【0053】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2015年1月20日に出願された独国特許出願第102015000551.0号の優先権の利益を主張する。当該出願の内容を参照により本明細書で援用する。
【0054】
[付記]
[付記1]
a)外周上にわたって分布する複数のタービンブレード(5)を有し、運転中に、回転軸(3)を中心に特定の回転方向に回転するタービンホイール(4)と、
b)前記タービンブレード(5)を収容し、且つ、外側でダクトウォール(7)により半径方向に区切られている、前記回転軸(3)を同軸に取り巻く環状のブレードダクト(6)と、
c)前記タービンホイール(4)を制動する目的で前記回転方向と反対方向の制動空気フローを前記タービンブレード(5)に受けさせるために半径方向外側から前記ブレードダクト(6)にひらけている少なくとも1つの制動空気ノズル(13)と、
d)前記タービンホイール(4)を駆動する目的で前記回転方向の駆動空気フローを前記タービンブレード(5)に受けさせるために半径方向外側から前記ブレードダクト(6)にひらけている少なくとも1つの駆動空気ノズル(8)と、
e)外側では前記ブレードダクト(6)の前記ダクトウォール(7)により区切られ、内側では前記駆動空気ノズル(8)を横切る前記タービンブレード(5)により区切られている、前記駆動空気ノズル(8)の出口にある出口領域(9)と、
を備え、
f)前記ブレードダクト(6)は、前記制動空気が半径方向に内側に向けて前記ブレードダクト(6)から出るのを防ぐ固定式フローバリア(14)により、前記制動空気ノズル(13)の向かいの内側で半径方向に区切られており、及び/又は、
g)各前記駆動空気ノズル(8)の前記出口領域(9)は、前記駆動空気ノズル(8)を横切る最中の前記タービンブレード(5)と共に回転し、流れ方向に広がる拡大横断面領域(9)である、
ことを特徴とする、回転式噴霧器でスプレー体、特に、ベルプレートを駆動させるラジアルタービンとして設計された回転式噴霧器タービン(1)。
【0055】
[付記2]
前記制動空気ノズル(13)の領域にある前記フローバリア(14)は、5°、10°、20°、若しくは30°超の、及び/又は、90°、70°、50°、若しくは40°未満の角度にわたる外周角度で広がっている、
付記1に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【0056】
[付記3]
前記駆動空気が前記タービンホイール(4)の開口部内の前記タービンブレード(5)を通って外側から内側に向けて半径方向に流れ得るように、前記タービンホイール(4)は少なくともその外周の一部にわたって前記半径方向に開いている、
付記1又は2に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【0057】
[付記4]
各前記駆動空気ノズル(8)の前記出口領域は、前記拡大横断面領域(9)の上流に、前記制動空気ノズル(8)を現在横切る最中の前記タービンブレード(5)と共に回転し、流れ方向に狭くなる収縮横断面領域(15)を有さない、
付記1から3のいずれか1つに記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【0058】
[付記5]
前記駆動空気ノズル(8)の前記出口領域の前記拡大横断面領域(9)は、少なくとも2°、4°、又は6°の角度で前記流れ方向に広がる、
付記1から4のいずれか1つに記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【0059】
[付記6]
a)前記ブレードダクト(6)の前記ダクトウォール(7)は、前記駆動空気ノズル(8)の前記出口領域内に、前記拡大横断面(9)を形成するための外側に弓形に曲がった凹部(11)を有する、及び/又は、
b)前記弓形に曲がった凹部(11)は凹面形状であり、及び/又は、
c)前記ブレードダクト(6)の前記ダクトウォール(7)内の前記弓形に曲がった凹部(11)は、少なくとも10°、20°、30°、又は40°であり且つ多くとも90°、70°、60°、又は50°である角度(β)にわたって周方向に延在する、
付記1から5のいずれか1つに記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【0060】
[付記7]
各前記タービンブレード(5)は、当該タービンブレード(5)の外端が前記タービンホイール(4)の前記回転方向とは反対方向を向くように、半径方向に曲がっている、
付記1から6のいずれか1つに記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【0061】
[付記8]
各前記タービンブレード(5)は、当該タービンブレード(5)の前記外端で、その正面(10)と、前記ブレードダクト(6)の外側円形外周とが、少なくとも2°、5°、又は10°の特定角度(α)をなす、
付記7に記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【0062】
[付記9]
a)前記駆動空気ノズル(8)はラバルノズルである、及び/又は、
b)前記タービンホイール(4)はディスクを有し、前記タービンブレード(5)は前記ディスクの一面から前記ブレードダクト(6)内に軸方向に突き入れられる、
付記1から8のいずれか1つに記載の回転式噴霧器タービン(1)。
【0063】
[付記10]
付記1から9のいずれか1つに記載の回転式噴霧器タービン(1)を有する回転式噴霧器。
【符号の説明】
【0064】
1 回転式噴霧器タービン
2 ベルプレートシャフト
3 ベルプレートシャフトの回転軸
4 タービンホイール
5 タービンブレード
6 ブレードダクト
7 ブレードダクトのダクトウォール
8 駆動空気ノズル
9 拡大横断面領域
10 タービンブレードの正面
11 ダクトウォール内の弓形に曲がった凹部
12 弓形に曲がった凹部がない場合の理想的円形外周
13 制動空気ノズル
14 フローバリア
15 収縮横断面領域
16 筐体
17 円形ディスク
25 第1端部品
26 ノズルリング
27 ディスタンスリング
28 第2端部品
32 縁部
33 端部
34 接線
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6