特許第6768014号(P6768014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768014
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】高周波増幅器装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/193 20060101AFI20201005BHJP
   H03F 3/21 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H03F3/193
   H03F3/21
【請求項の数】24
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-568152(P2017-568152)
(86)(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公表番号】特表2018-519756(P2018-519756A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016065376
(87)【国際公開番号】WO2017001594
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年3月13日
(31)【優先権主張番号】102015212247.6
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505169226
【氏名又は名称】トゥルンプフ ヒュッティンガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Huettinger GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ グレーデ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー アルト
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル グルーナー
(72)【発明者】
【氏名】アントン ラバン
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−197749(JP,A)
【文献】 特開2003−069351(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/094737(WO,A2)
【文献】 特開平10−209642(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/037995(WO,A1)
【文献】 特開2010−225930(JP,A)
【文献】 特開平08−065059(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/032226(WO,A1)
【文献】 特表2014−522216(JP,A)
【文献】 特開平04−369272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ励起用に2MHz以上の周波数において1kW以上の出力電力を発生させるために適した高周波増幅器装置(1)において、
a.2つのLDMOSトランジスタ(S1,S2)であって、前記LDMOSトランジスタ(S1,S2)のソース端子は、それぞれアース接続点(5)と接続されており、前記LDMOSトランジスタ(S1,S2)は同じ形態で形成されていて、1つのモジュール(3)内に配置されている、2つのLDMOSトランジスタ(S1,S2)と、
b.配線板(2)であって、前記配線板(2)は、面全体にわたり金属製冷却板(25)に当接し、複数のアース接続部(8,19,21,24)を介して、アース(26)と接続可能な前記冷却板(25)と接続されており、前記配線板上にまたは前記配線板に、前記モジュール(3)が配置されている、配線板(2)と、
c.電力トランス(7)であって、前記電力トランス(7)の1次巻線(6)は、前記LDMOSトランジスタ(S1,S2)のドレイン端子と接続されている、電力トランス(7)と、
d.信号トランス(10)であって、前記信号トランス(10)の2次巻線(13)の第1の端部は、1つまたは複数の抵抗性素子(14)を介して、前記LDMOSトランジスタのうち一方のLDMOSトランジスタ(S1)のゲート端子(15)と接続されており、第2の端部は、1つまたは複数の抵抗性素子(16)を介して、前記LDMOSトランジスタのうち他方のLDMOSトランジスタ(S2)のゲート端子(17)と接続されており、前記ゲート端子(15,17)各々は、少なくとも1つの電圧制限素子(18,20,18’,20’)を介してアース(19,21)と接続されている、信号トランス(10)と、
を含む、高周波増幅器装置(1)。
【請求項2】
前記アース接続点(5)は、前記LDMOSトランジスタ(S1,S2)から前記冷却板(25)への熱伝達のために設計されている、
請求項1記載の高周波増幅器装置。
【請求項3】
少なくとも1つの電圧制限素子(18,18’,20,20’)は、少なくとも1つのダイオードを有しており、前記ダイオードのカソードはゲート側に、前記ダイオードのアノードはアース側に配置されている、
請求項1または2記載の高周波増幅器装置。
【請求項4】
少なくとも1つの電圧制限素子(18’,20’)は、直列に接続された複数のダイオードを有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項5】
前記ダイオードの直列接続体は、それぞれ異なるタイプの少なくとも2つのダイオードを有する、
請求項4記載の高周波増幅器装置。
【請求項6】
少なくとも1つの電圧制限素子は、直列に接続された少なくとも1つのダイオードと抵抗とを有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項7】
前記電力トランス(7)は、前記配線板(2)上にまたは固有の配線板上に配置されており、前記1次巻線(6)は、個々の前記配線板(2)上にプレーナ型で形成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項8】
前記ゲート端子(15,17)各々は、抵抗(22,23)を介してコンデンサ(30)と接続されており、前記コンデンサ(30)は、アースと接続されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項9】
前記ゲート端子(15,17)はさらに、抵抗(22,23)を介して直流電圧源(24)と接続されている、
請求項8記載の高周波増幅器装置。
【請求項10】
前記抵抗(22,23)は、1つの共通のコンデンサ(30)に接続されている、
請求項8または9記載の高周波増幅器装置。
【請求項11】
前記共通のコンデンサ(30)は、前記直流電圧源(24)に接続されており、前記直流電圧源(24)を介してゲート容量を放電可能である、
請求項9を引用する請求項10記載の高周波増幅器装置。
【請求項12】
前記抵抗(22,23)は、1kΩよりも小さい抵抗値を有しており、前記コンデンサ(30)は、1nFよりも大きい容量を有している、
請求項8記載の高周波増幅器装置。
【請求項13】
直列に接続された前記ダイオードは、前記LDMOSトランジスタ(S1,S2)の駆動周波数の4分の1周期の持続時間よりも短い逆回復時間を有する、
請求項3から6、および請求項3から6のいずれか1項を引用する請求項7から12までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項14】
当該高周波増幅器装置は、対称に構成されており、双方の前記LDMOSトランジスタ(S1,S2)に同じ構成要素が対応づけられている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項15】
前記モジュール(3)は、前記配線板(2)上にまたは前記配線板(2)に配置されていて、前記モジュール(3)は、前記冷却板(25)と熱伝導状態で接続されている前記配線板(2)を介して冷却される、
請求項1から14までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項16】
前記モジュール(3)は、1つの基板上に配置されている、
請求項1から15までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項17】
前記モジュール(3)は、1つのケーシング内に配置されている、
請求項1から16までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項18】
前記モジュール(3)の前記ケーシングは、前記配線板(2)における貫通開口部内に配置されている、
請求項17記載の高周波増幅器装置。
【請求項19】
前記モジュール(3)の接続端子は、前記配線板(2)上で接触接続されている、
請求項1から18までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項20】
前記モジュール(3)は、冷却のために銅板上に取り付けられている、
請求項1から19までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【請求項21】
前記銅板は、前記配線板(2)において前記モジュール(3)と同じ貫通開口部内に配置されている、
請求項20記載の高周波増幅器装置。
【請求項22】
前記銅板は、前記冷却板(25)に向いた前記モジュール(3)の面よりも広い面を有する、
請求項20または21記載の高周波増幅器装置。
【請求項23】
前記貫通開口部は、段状に形成されており、前記銅板および前記モジュール(3)の各面に整合されている、
請求項21または請求項21を引用する請求項22記載の高周波増幅器装置。
【請求項24】
前記配線板(2)は、多層配線板である、
請求項1から23までのいずれか1項記載の高周波増幅器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ励起用に2MHz以上の周波数において1kW以上の出力電力を発生させるために適した高周波増幅器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる装置または同様の装置は、たとえば以下の文献、すなわち、米国特許出願公開第2014/0167858号明細書(US2014/0167858A1)、米国特許出願公開第2009/0027936号明細書(US2009/0027936A1)、米国特許第6,172,383号明細書(US6,172,383B1)および米国特許第6,064,249号明細書(US6,064,249A)から公知である。
【0003】
LDMOSトランジスタは、たとえば以下の文献:Freescale Semiconductor、技術データ、RF電力LDMOSトランジスタ、文献番号:MRFE6VP61K25H Rev.4.1 2014年3月、から公知である。
【0004】
プラズマの励起に適した電力を発生させるために、トランジスタ特にLDMOSトランジスタを使用することは公知である。かかるトランジスタは、AB級の増幅器における動作のために設けられていることが多い。しかしながら、他の級の増幅器たとえばE級またはF級のためにそれらのトランジスタを使用したいときには、ゲート電圧に関してメーカの仕様の範囲を超えずにトランジスタを最大限に駆動制御するのは不可能であることが多い。ただしこのように仕様の範囲を超えると、トランジスタの故障に至るおそれがあり、および/または、トランジスタの寿命が短くなってしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0167858号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0027936号明細書
【特許文献3】米国特許第6,172,383号明細書
【特許文献4】米国特許第6,064,249号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Freescale Semiconductor、技術データ、RF電力LDMOSトランジスタ、文献番号:MRFE6VP61K25H Rev.4.1 2014年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、上述の欠点を回避することができる高周波増幅器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によればこの課題は、プラズマ励起用に2MHz以上の周波数において1kW以上の出力電力を発生させるために適した、以下の高周波増幅器装置によって解決される。すなわちこの高周波増幅器装置は、
a.2つのLDMOSトランジスタを含み、そのソース端子は、それぞれアース接続点と接続されており、これらのLDMOSトランジスタは同じ形態で形成されていて、1つのモジュール(パッケージ)内に配置されており、
b.配線板を含み、これは面全体にわたり金属製冷却板に当接し、複数のアース接続部を介して、アースと接続可能な冷却板と接続されており、この配線板上にまたはこの配線板に、モジュールが配置されており、
c.電力トランスを含み、その1次巻線は、LDMOSトランジスタのドレイン端子と接続されており、
d.信号トランスを含み、その2次巻線の第1の端部は、1つまたは複数の抵抗性素子を介して、一方のLDMOSトランジスタのゲート端子と接続されており、第2の端部は、1つまたは複数の抵抗性素子を介して、他方のLDMOSトランジスタのゲート端子と接続されており、ゲート端子各々は、少なくとも1つの電圧制限素子を介してアースと接続されている。
【0009】
このようにしてLDMOSトランジスタを、許容可能なゲート電圧を超えることなく、最大限に駆動することができる。
【0010】
電圧制限素子が設けられていることによって、信号トランスの2次巻線から到来する駆動制御信号の負のピークがアース電位になる。したがって負の電圧は、電圧制限素子における電圧降下に制限され、正のピーク電圧は高められる。このことは、LDMOSトランジスタを駆動制御するドライバのために必要とされるドライバ電力が低減されることを意味する。さらにこのことに加え、導通角が大きくされ、すなわち駆動制御信号の1周期中に一方または両方のトランジスタが導通する時間が高められ、その際、許容値を超えてピーク電圧を上昇させる必要がない。換言すれば、トランジスタが駆動制御状態にある時間を長くすることができる。直流成分が高められることから、入力信号が相対的に見て閾値電圧Uthを超えることが多くなり、したがってトランジスタはいっそう頻繁に導通状態となる。
【0011】
2つのLDMOSトランジスタを冷却板と良好に接続することにより、LDMOSトランジスタの熱負荷も低減することができ、それによって故障する確率がさらに低減される。
【0012】
アース接続点を、LDMOSトランジスタから冷却板まで熱を伝達するように設計することができる。このようにすれば、LDMOSトランジスタの改善された放熱が保証され、LDMOSトランジスタの熱負荷がさらに低減される。
【0013】
少なくとも1つの電圧制限素子は、少なくとも1つのダイオードを有することができ、そのカソードはゲート側に、アノードはアース側に配置されている。この措置により、駆動制御信号の負のピークが、導通状態のダイオードを介してアース電位となる。これによって駆動制御信号の負の電圧は、ダイオードにおける電圧降下に制限される。
【0014】
少なくとも1つの電圧制限素子は、直列に接続された複数のダイオードを有することができる。この措置によって、増幅器が飽和状態で駆動されるときに生じる欠点に対抗する作用を及ぼすことができる。増幅器が飽和状態で駆動されると、ゲート−バイアス電圧がいっそう上昇し、その結果、ドレイン電流もさらに上昇し、効率が低下してしまう。この場合、複数の高速なダイオードを直列に接続することができる。ここで「高速なダイオード」とは本発明の内容に即していえば、逆回復時間が4分の1周期の持続時間よりも短い、ということである。トランジスタの駆動周波数がたとえば40.68MHz(すなわち、1周期の持続時間が約25ns)であれば、これは約6nsである。したがってダイオードは、6nsまたはそれよりも短い逆回復時間を有するのが望ましい。このことが意味するのは、かかるダイオードは無視できる程度に短時間しか阻止方向で導通状態にならず、もしくは導通方向で阻止状態とはならない、ということである。
【0015】
複数のダイオードから成る直列接続体は、それぞれ異なるタイプの少なくとも2つのダイオードを有することができる。たとえばこの直列接続体は、1つの高速なダイオードと1つのツェナダイオードとを有することができる。
【0016】
少なくとも1つの電圧制限素子は、直列接続された少なくとも1つのダイオードと1つの抵抗とを有することができる。このことによっても、上述の欠点を低減することができる。好ましくは、高周波増幅器装置は対称に構成されており、つまり双方のLDMOSに同じ構成要素が対応づけられている。
【0017】
モジュールを配線基板上にまたは配線基板に配置することができる。これによってモジュールを、冷却板と熱伝導状態で接続されている配線板を介して良好に冷却することができる。モジュールを1つの基板上に配置することができる。モジュールを1つのケーシング内に配置することができる。モジュールのケーシングを、配線板における貫通開口部内に配置することができる。モジュールの接続端子を、配線板上で接触接続させることができる。モジュールを、冷却のために銅板上に取り付けることができる。この銅板は、モジュールから冷却板へ熱を伝達するために、特に熱を拡散するために、用いることができる。さらにこの銅板を、配線板においてモジュールと同じ貫通開口部内に配置することができる。銅板の面を、冷却板に向いた側のモジュールの面よりも広くすることができる。貫通開口部を段状に形成して、銅板とモジュールの各面に整合させることができる。これによって、トランジスタの寿命をさらに延ばすことができる。なぜならば、トランジスタはそれほど強く加熱されないからである。しかも、アースと接続された冷却板の近くに配置することによって、スイッチングプロセスの際に生じる大電流による妨害を、いっそう良好に抑圧することができる。
【0018】
配線板を多層配線板とすることができ、特に少なくとも1つの内層を含む多層配線板とすることができ、特に少なくとも4つの層を含む多層配線板とすることができる。1つの外層全体をアースと接続し、やはりアースと接続された冷却板にじかに取り付けて接触させることができる。
【0019】
この配線板上に、または、固有の配線板上に、電力トランスを配置することができ、1次巻線を個々の配線板上にプレーナ型で形成することができる。これによって、格別低コストの1次巻線構造が得られる。また、電力トランスの冷却も簡単に実現することができる。
【0020】
ゲート端子を、抵抗を介してコンデンサに接続することができ、さらにこのコンデンサはアースと接続されている。これらの構成部材と動作点電圧源とによって、ゲート容量を放電させることができる。この場合、抵抗は1kΩよりも小さい抵抗値を有することができ、コンデンサは1nFよりも大きい容量を有することができる。
【0021】
複数の抵抗を1つの共通のコンデンサに接続することができ、さらにこのコンデンサを動作点電圧源に接続することができる。
【0022】
本発明の本質を成す細部について示す図面を参照した本発明の実施例に関する以下の詳細な説明および特許請求の範囲から、本発明のその他の特徴および利点を読み取ることができる。それらの図面に示されている特徴は、必ずしも縮尺どおりではないことを理解されたい。また、それらの特徴は、本発明による特別な点をはっきりと見ることができるように描かれている。さらに様々な特徴をそれ自体単独で実現してもよいし、または、本発明の変形実施形態において複数の特徴を任意に組み合わせて実現してもよい。
【0023】
概略的に示された図面には本発明の実施例が示されており、以下の記載においてそれらの実施例について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による高周波増幅器装置の第1の実施形態を示す図である。
図2】本発明による高周波増幅器装置の第2の実施形態を示す図である。
図3】本発明の作用を説明するために2つの異なる電圧推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には、高周波増幅器装置1の第1の実施形態が示されている。高周波増幅器装置1は配線板2を含み、この配線板2上にモジュール3が配置されている。モジュール3は、2つのLDMOSトランジスタS1,S2を有しており、これらのトランジスタは同じ形態で形成されていて、それらのソース端子がそれぞれアース接続点5と接続されている。LDMOSトランジスタS1,S2のドレイン端子はそれぞれ、電力トランス7の1次巻線6の一方の端部と接続されている。電力トランス7の2次巻線4の一方の端部はアース8と接続されており、他方の端部は高周波出力端9と接続されている。高周波増幅器装置1はさらに信号トランス10を有しており、この信号トランス10は、高周波入力端12と接続された1次巻線11を有している。信号トランス10の2次巻線13の一方の端部は、抵抗性素子14特に抵抗を介して、LDMOSトランジスタS1のゲート端子15と接続されている。2次巻線13の他方の端部は、抵抗性素子16特に抵抗を介して、LDMOSトランジスタS2のゲート端子17と接続されている。したがって抵抗性素子14,16および2次巻線13は、直列に接続されている。信号トランス10も、電力トランス7と同様に配線板2上に配置されている。
【0026】
ゲート端子15は、電圧制限素子18を介してアース19と接続されており、ここでは電圧制限素子18はダイオードとして形成されている。この場合、ダイオードのカソードがゲート側に、アノードがアース側に配置されている。相応にゲート端子17は、電圧制限素子20を介して同様にアース21と接続されており、ここでも電圧制限素子20はダイオードとして形成されている。この措置によって、ゲート端子15,17の駆動制御信号の電圧シフト(振幅シフト)を行うことができる。
【0027】
さらにゲート端子15,17は、抵抗22,23を介して直流電圧源24すなわち動作点電圧源と接続されている。したがって図1の実施例によればLDMOSトランジスタS1,S2の駆動制御信号を発生させるドライバ回路には、高周波入力端12、信号トランス10、抵抗性素子14,16、電圧制限素子18,20、抵抗22,23および直流電圧源24が含まれている。
【0028】
配線板2は、面全体にわたり冷却板25上に載置されており、この冷却板25はアース26とも接続可能である。特に配線板2は、複数のアース接続部8,19,21,27を介して、冷却板25と接続されている。アース接続点5は、LDMOSトランジスタS1,S2から冷却板25へ向かう熱伝導のためのアース接続点を成している。
【0029】
図2には、高周波増幅器装置1’の選択的な実施形態が示されている。この図において、図1と一致する素子には同じ参照符号が付されている。高周波増幅器装置1’の相違点は、電圧制限素子18’がこの場合には直列に接続された2つのダイオードを有することである。電圧制限素子20’も相応に形成されている。
【0030】
さらに別の相違点は、抵抗22,23がコンデンサ30と接続されており、さらにこのコンデンサ30がアース27と接続されていることである。接続端子31には、直流電圧源(動作点電圧源)が接続されている。
【0031】
図3には、ゲート端子15,17に駆動制御信号として加わる複数の電圧推移が、時間軸上に示されている。この場合、電圧制限素子18もしくは18’が設けられていないときには、電圧推移100がゲート端子15に加わり、電圧制限素子20もしくは20’が設けられていないときには、電圧推移101が相応にゲート端子17に加わる。電圧制限素子18,18’,20,20’の作用を、電圧推移102,103から読み取ることができ、ここでは電圧推移102,103の負のピークは、電圧制限素子18,18’,20,20’の電圧にほぼ制限されており、特に1つまたは複数のダイオードにおいて降下する電圧に制限されている。総じて、電圧制限素子18,18’,20,20’が用いられるときにゲート端子15,17に加わる電圧推移102,103の電圧が、いっそう高い電圧値にシフトされている。特にこの場合、ゲート端子15,17の駆動制御信号の正のピーク電圧が高められ、負のピークが電圧制限素子18,18’,20,20’の電圧降下たとえばダイオードにおける電圧降下に制限される。これにより、必要とされるドライバ電力すなわち高周波入力端12における高周波信号の電力が低減される。ゲート電圧が低くなることから、LDMOSトランジスタS1,S2が故障するリスクが低減される。
図1
図2
図3