特許第6768039号(P6768039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000002
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000003
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000004
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000005
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000006
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000007
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000008
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000009
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000010
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000011
  • 特許6768039-車両用電源装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768039
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20201005BHJP
   B60L 58/14 20190101ALI20201005BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20201005BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20201005BHJP
   B60K 6/22 20071001ALI20201005BHJP
   B60W 20/50 20160101ALI20201005BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20201005BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20201005BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20201005BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20201005BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20201005BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20201005BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H02J7/00 302C
   B60L58/14
   B60L3/00 S
   B60L3/00 H
   B60L1/00 L
   B60K6/22
   B60W20/50
   B60K6/485
   B60R16/03 A
   B60R16/033 B
   H02J7/00 P
   H02J7/34 B
   H02J7/02 J
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-145246(P2018-145246)
(22)【出願日】2018年8月1日
(65)【公開番号】特開2020-22291(P2020-22291A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2019年3月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 貴博
【審査官】 永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/078785(WO,A1)
【文献】 特開2015−180140(JP,A)
【文献】 特開2017−028772(JP,A)
【文献】 特開2017−118699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K6/20−6/547
B60L1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−58−40
B60R16/00−17/02
B60W10/00−50/16
B62J1/00−99/00
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用電源装置であって、
第1蓄電体と、前記第1蓄電体に接続される電気負荷と、を備える第1電源系と、
エンジンに連結される発電機と、前記発電機に接続される第2蓄電体と、を備える第2電源系と、
前記第1電源系と前記第2電源系との間に設けられ、前記第1蓄電体と前記第2蓄電体とを並列接続する通電径路と、
前記電気負荷と前記第2蓄電体とを接続するオン状態と、前記電気負荷と前記第2蓄電体とを切り離すオフ状態と、に制御されるスイッチと、
前記第2蓄電体の充電状態が第1閾値を下回る場合に、前記発電機の発電電圧を前記第2蓄電体の端子電圧よりも上げる発電制御部と、
前記発電機に異常が発生した場合に、前記スイッチをオン状態に制御してから、前記スイッチをオフ状態に制御するスイッチ制御部と、
を有し、
前記第1電源系の前記電気負荷は、前記車両の自動運転制御を実行する運転制御部を備え、
前記スイッチ制御部は、
前記自動運転制御の停止中に、前記発電機の異常発生に基づき前記スイッチをオン状態に制御した場合には、前記第2蓄電体の充電状態が前記第1閾値よりも小さな第2閾値を下回る場合に前記スイッチをオフ状態に制御し、
前記自動運転制御の実行中に、前記発電機の異常発生に基づき前記スイッチをオン状態に制御した場合には、前記第2蓄電体の充電状態が前記第2閾値よりも小さな第3閾値を下回る場合に前記スイッチをオフ状態に制御する、
車両用電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電源装置において、
前記スイッチは、前記第2電源系に設けられる、
車両用電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用電源装置において、
前記スイッチは、前記通電径路に設けられる、
車両用電源装置。
【請求項4】
請求項1〜の何れか1項に記載の車両用電源装置において、
前記第2蓄電体の内部抵抗は、前記第1蓄電体の内部抵抗よりも小さい、
車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用電源装置には、鉛バッテリやリチウムイオンバッテリ等の蓄電体が設けられるとともに、オルタネータやISG(Integrated Starter Generator)等の発電機が設けられている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−168754号公報
【特許文献2】特開2017−99249号公報
【特許文献3】特開2017−118699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オルタネータ等の発電機に異常が発生した場合には、車両に搭載される各種制御システムの機能を維持するため、蓄電体から各種制御システムへの電力供給を継続することが必要である。しかしながら、各種制御システムに対して蓄電体から電力を供給し続けた場合には、蓄電体を過度に放電させて蓄電体を大幅に劣化させる虞がある。このように、発電機の異常に伴って蓄電体を劣化させてしまうことは、発電機の修理だけでなく蓄電体の交換も必要になることから、車両用電源装置の修理コストを増加させる要因となっていた。このため、発電機に異常が発生した場合であっても、車両用電源装置の修理コストを低減することが求められている。
【0005】
本発明の目的は、車両用電源装置の修理コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用電源装置は、車両に搭載される車両用電源装置であって、第1蓄電体と、前記第1蓄電体に接続される電気負荷と、を備える第1電源系と、エンジンに連結される発電機と、前記発電機に接続される第2蓄電体と、を備える第2電源系と、前記第1電源系と前記第2電源系との間に設けられ、前記第1蓄電体と前記第2蓄電体とを並列接続する通電径路と、前記電気負荷と前記第2蓄電体とを接続するオン状態と、前記電気負荷と前記第2蓄電体とを切り離すオフ状態と、に制御されるスイッチと、前記第2蓄電体の充電状態が第1閾値を下回る場合に、前記発電機の発電電圧を前記第2蓄電体の端子電圧よりも上げる発電制御部と、前記発電機に異常が発生した場合に、前記スイッチをオン状態に制御してから、前記スイッチをオフ状態に制御するスイッチ制御部と、を有し、前記第1電源系の前記電気負荷は、前記車両の自動運転制御を実行する運転制御部を備え、前記スイッチ制御部は、前記自動運転制御の停止中に、前記発電機の異常発生に基づき前記スイッチをオン状態に制御した場合には、前記第2蓄電体の充電状態が前記第1閾値よりも小さな第2閾値を下回る場合に前記スイッチをオフ状態に制御し、前記自動運転制御の実行中に、前記発電機の異常発生に基づき前記スイッチをオン状態に制御した場合には、前記第2蓄電体の充電状態が前記第2閾値よりも小さな第3閾値を下回る場合に前記スイッチをオフ状態に制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発電機に異常が発生した場合に、スイッチをオン状態に制御してから、スイッチをオフ状態に制御する。これにより、発電機に異常が発生した場合であっても、スイッチをオン状態に制御することで、第2蓄電体から電気負荷に電力を供給することができ、電気負荷を適切に動作させることができる。その後、スイッチをオフ状態に制御することで、第2蓄電体と電気負荷とが切り離されるため、第2蓄電体の過度な放電を抑制することができ、車両用電源装置の修理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態である車両用電源装置が搭載された車両の構成例を示す概略図である。
図2】電源回路の一例を簡単に示した回路図である。
図3】車両に設けられる制御系の一例を示すブロック図である。
図4】スタータジェネレータを燃焼発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図5】スタータジェネレータを発電休止状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図6】スタータジェネレータを回生発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図7】ISG制御部による燃焼発電状態と発電休止状態との切替状況の一例を示す図である。
図8】スタータジェネレータを力行状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図9】フェイルセーフ制御におけるスイッチの作動状況および充電状態の推移状況の一例を示すタイミングチャートである。
図10】(A)および(B)は、フェイルセーフ制御における電流供給状況の一例を示す図である。
図11】フェイルセーフ制御の実行手順の一例をフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態である車両用電源装置10が搭載された車両11の構成例を示す概略図である。図1に示すように、車両11には、エンジン12を動力源に用いたパワーユニット13が搭載されている。エンジン12のクランク軸14には、ベルト機構15を介してスタータジェネレータ(発電機)16が連結されている。また、エンジン12にはトルクコンバータ17を介して変速機構18が連結されており、変速機構18にはデファレンシャル機構19等を介して車輪20が連結されている。
【0011】
エンジン12に連結されるスタータジェネレータ16は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(Integrated Starter Generator)である。スタータジェネレータ16は、クランク軸14に駆動される発電機として機能するだけでなく、クランク軸14を駆動する電動機として機能する。例えば、アイドリングストップ制御においてエンジン12を再始動させる場合や、発進時や加速時においてエンジン12を補助する場合に、スタータジェネレータ16は力行状態に制御され、スタータジェネレータ16は電動機として機能する。
【0012】
スタータジェネレータ16は、ステータコイルを備えたステータ21と、フィールドコイルを備えたロータ22と、を有している。また、スタータジェネレータ16には、ステータコイルやフィールドコイルの通電状態を制御するため、インバータ、レギュレータ、マイコンおよび各種センサ等からなるISGコントローラ23が設けられている。ISGコントローラ23によってフィールドコイルやステータコイルの通電状態を制御することにより、スタータジェネレータ16の発電電圧、発電トルク、力行トルク等を制御することができる。
【0013】
[電源回路]
車両用電源装置10が備える電源回路30について説明する。図2は電源回路30の一例を簡単に示した回路図である。図2に示すように、電源回路30は、スタータジェネレータ16に電気的に接続される鉛バッテリ(第1蓄電体)31と、これと並列にスタータジェネレータ16に電気的に接続されるリチウムイオンバッテリ(第2蓄電体)32と、を備えている。なお、リチウムイオンバッテリ32を積極的に放電させるため、リチウムイオンバッテリ32の端子電圧は、鉛バッテリ31の端子電圧よりも高く設計されている。また、リチウムイオンバッテリ32を積極的に充放電させるため、リチウムイオンバッテリ32の内部抵抗は、鉛バッテリ31の内部抵抗よりも小さく設計されている。
【0014】
スタータジェネレータ16の正極端子16aには正極ライン33が接続され、リチウムイオンバッテリ32の正極端子32aには正極ライン34が接続され、鉛バッテリ31の正極端子31aには正極ライン35を介して正極ライン36が接続される。これらの正極ライン33,34,36は、接続点37を介して互いに接続されている。また、スタータジェネレータ16の負極端子16bには負極ライン38が接続され、リチウムイオンバッテリ32の負極端子32bには負極ライン39が接続され、鉛バッテリ31の負極端子31bには負極ライン40が接続される。これらの負極ライン38〜40は、基準電位点41を介して互いに接続されている。
【0015】
図1に示すように、鉛バッテリ31の正極ライン35には、正極ライン42が接続されている。この正極ライン42には、各種アクチュエータや各種コントローラ等の電気機器(電気負荷)43からなる電気機器群44が接続されている。また、鉛バッテリ31の負極ライン40には、バッテリセンサ45が設けられている。バッテリセンサ45は、鉛バッテリ31の充放電状況を検出する機能を有している。鉛バッテリ31の充放電状況としては、例えば、鉛バッテリ31の充電電流、放電電流、端子電圧、充電状態SOC等が挙げられる。
【0016】
また、電源回路30には、鉛バッテリ31および電気機器43からなる第1電源系51が設けられており、リチウムイオンバッテリ32およびスタータジェネレータ16からなる第2電源系52が設けられている。そして、第1電源系51と第2電源系52との間に設けられる正極ライン(通電径路)36を介して、鉛バッテリ31とリチウムイオンバッテリ32とは互いに並列接続されている。この正極ライン36には、過大電流によって溶断する電力ヒューズ53が設けられるとともに、オン状態とオフ状態とに制御される第1スイッチSW1が設けられている。また、リチウムイオンバッテリ32の正極ライン34には、オン状態とオフ状態とに制御される第2スイッチSW2が設けられている。
【0017】
正極ライン36に設けられたスイッチSW1をオン状態に制御することにより、第1電源系51と第2電源系52とを互いに接続することができる一方、スイッチSW1をオフ状態に制御することにより、第1電源系51と第2電源系52とを互いに切り離すことができる。また、スイッチSW1をオン状態に制御することにより、電気機器43とリチウムイオンバッテリ32とを互いに接続することができる一方、スイッチSW1をオフ状態に制御することにより、電気機器43とリチウムイオンバッテリ32とを互いに切り離すことができる。
【0018】
第2電源系52に設けられたスイッチSW2をオン状態に制御することにより、スタータジェネレータ16とリチウムイオンバッテリ32とを互いに接続することができる一方、スイッチSW2をオフ状態に制御することにより、スタータジェネレータ16とリチウムイオンバッテリ32とを互いに切り離すことができる。また、スイッチSW2をオン状態に制御することにより、電気機器43とリチウムイオンバッテリ32とを互いに接続することができる一方、スイッチSW2をオフ状態に制御することにより、電気機器43とリチウムイオンバッテリ32とを互いに切り離すことができる。
【0019】
これらのスイッチSW1,SW2は、MOSFET等の半導体素子によって構成されるスイッチであっても良く、電磁力等を用いて接点を機械的に開閉させるスイッチであっても良い。また、スイッチSW1,SW2のオン状態とは、電気的に接続される通電状態や導通状態を意味しており、スイッチSW1,SW2のオフ状態とは、電気的に切断される非通電状態や遮断状態を意味している。なお、スイッチSW1,SW2は、リレーやコンタクタ等とも呼ばれている。
【0020】
図1に示すように、電源回路30には、バッテリモジュール54が設けられている。このバッテリモジュール54は、リチウムイオンバッテリ32を有するとともに、スイッチSW1,SW2を有している。また、バッテリモジュール54は、マイコンや各種センサ等からなるバッテリコントローラ55を有している。バッテリコントローラ55は、リチウムイオンバッテリ32の充電状態SOC、充電電流、放電電流、端子電圧、セル温度、内部抵抗等を監視する機能や、スイッチSW1,SW2を制御する機能を有している。なお、充電状態SOC(State Of Charge)とは、バッテリの設計容量に対する蓄電量の比率である。換言すれば、充電状態SOCとは、バッテリの満充電容量に対して残存する電気量の比率である。また、以下の説明では、リチウムイオンバッテリ32の充電状態SOCを、充電状態S_LiBとして記載する。
【0021】
[制御系]
図3は車両11に設けられる制御系の一例を示すブロック図である。図3に示すように、車両11は、前述したISGコントローラ23やバッテリコントローラ55を有するだけでなく、エンジン12を制御するエンジンコントローラ60や、変速機構18を制御するミッションコントローラ61を有している。また、車両11は、車輪を制動するブレーキアクチュエータ65を制御するブレーキコントローラ62や、車輪を操舵するステアリングアクチュエータ66を制御するステアリングコントローラ63を有している。さらに、車両11は、各コントローラ23,55,60〜63を統括して制御するメインコントローラ64を有している。これらのコントローラ23,55,60〜64は、マイコン等によって構成されるとともに、CANやLIN等の車載ネットワーク67を介して互いに通信自在に接続されている。また、各コントローラ23,55,60〜64は、鉛バッテリ31等からの電力を用いて起動されている。つまり、各コントローラ23,55,60〜64は、第1電源系51を構成する電気機器43の1つとして設けられている。
【0022】
車両用電源装置10の一部を構成するメインコントローラ64は、パワーユニット13や電源回路30等を制御する機能を有している。メインコントローラ64は、スタータジェネレータ16を制御するISG制御部(発電制御部)70、スイッチSW1,SW2を制御するスイッチ制御部71、エンジン12を制御するエンジン制御部72、および自動運転制御を実行する運転制御部73等を有している。前述したように、メインコントローラ64は電気機器43の1つであることから、メインコントローラ64が備える各種制御部70〜73も電気機器43の1つとして機能している。なお、メインコントローラ64は、ISGコントローラ23を介してスタータジェネレータ16を制御し、バッテリコントローラ55を介してスイッチSW1,SW2を制御し、エンジンコントローラ60を介してエンジン12を制御する。また、メインコントローラ64は、後述する自動運転制御を実行する際に、ミッションコントローラ61を介して変速機構18を制御し、ブレーキコントローラ62を介してブレーキアクチュエータ65を制御し、ステアリングコントローラ63を介してステアリングアクチュエータ66を制御する。
【0023】
自動運転制御を実行するため、メインコントローラ64には、車両前方を撮像するフロントカメラ80、車両後方の障害物を検出する後側方レーダ81等が接続されている。メインコントローラ64の運転制御部73は、カメラ80やレーダ81等の情報に基づいて車両周辺の状況を監視するとともに、周辺状況に応じて車両11の操舵や加減速を自動的に制御する。つまり、運転制御部73は、車両周辺状況に応じて各種コントローラに制御信号を出力し、エンジン12、変速機構18、ブレーキアクチュエータ65およびステアリングアクチュエータ66等を制御する。
【0024】
また、メインコントローラ64の運転制御部73が実行する自動運転制御には、運転操作の一部を自動的に行う運転支援制御も含まれる。このような運転支援制御として、例えば、先行車両に追従しながら加減速走行を行うアダプティブクルーズコントロールがあり、走行車線を逸脱させないように車輪を操舵する車線維持制御があり、車両前方の障害物に接近した場合に車輪を制動する自動ブレーキ制御がある。なお、前述の説明では、フロントカメラ80を用いて車両前方の周辺状況を検出し、後側方レーダ81を用いて車両後方の周辺状況を検出しているが、これに限られることはなく、例えば、レーダを用いて車両前方の周辺状況を検出し、カメラを用いて車両後方の周辺状況を検出しても良い。
【0025】
[スタータジェネレータ発電制御]
続いて、スタータジェネレータ16の発電制御について説明する。メインコントローラ64のISG制御部70は、ISGコントローラ23に制御信号を出力し、スタータジェネレータ16を発電状態に制御する。例えば、ISG制御部70は、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが低下すると、スタータジェネレータ16の発電電圧を上げて燃焼発電状態に制御する一方、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが上昇すると、スタータジェネレータ16の発電電圧を下げて発電休止状態に制御する。
【0026】
図4はスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。なお、スタータジェネレータ16の燃焼発電状態とは、エンジン動力によってスタータジェネレータ16を発電させる状態、つまりエンジン内で燃料を燃焼させてスタータジェネレータ16を発電させる状態である。例えば、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが所定値を下回る場合には、リチウムイオンバッテリ32を充電するため、エンジン動力によってスタータジェネレータ16を発電させる。このように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が、鉛バッテリ31およびリチウムイオンバッテリ32の端子電圧よりも上げられる。これにより、図4に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ32、電気機器群44および鉛バッテリ31等に対して電流が供給され、リチウムイオンバッテリ32や鉛バッテリ31が緩やかに充電される。
【0027】
図5はスタータジェネレータ16を発電休止状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。例えば、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが所定値を上回る場合には、リチウムイオンバッテリ32を積極的に放電させるため、エンジン動力を用いたスタータジェネレータ16の発電が休止される。このように、スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が、鉛バッテリ31およびリチウムイオンバッテリ32の端子電圧よりも下げられる。これにより、図5に黒塗りの矢印で示すように、リチウムイオンバッテリ32から電気機器群44に電流が供給されるため、スタータジェネレータ16の発電を停止させることができ、エンジン負荷を軽減することができる。なお、発電休止状態におけるスタータジェネレータ16の発電電圧としては、リチウムイオンバッテリ32を放電させる発電電圧であれば良い。例えば、スタータジェネレータ16の発電電圧を0Vに制御しても良く、スタータジェネレータ16の発電電圧を0Vよりも高く制御しても良い。
【0028】
前述したように、メインコントローラ64のISG制御部70は、充電状態S_LiBに基づきスタータジェネレータ16を燃焼発電状態や発電休止状態に制御しているが、車両減速時には多くの運動エネルギーを回収して燃費性能を高めることが求められる。そこで、車両減速時には、スタータジェネレータ16の発電電圧が引き上げられ、スタータジェネレータ16は回生発電状態に制御される。これにより、スタータジェネレータ16の発電電力を増加させることができるため、運動エネルギーを積極的に電気エネルギーに変換して回収することができ、車両11のエネルギー効率を高めて燃費性能を向上させることができる。このような回生発電を実行するか否かについては、アクセルペダルやブレーキペダルの操作状況等に基づき決定される。つまり、アクセルペダルの踏み込みが解除される減速走行時や、ブレーキペダルが踏み込まれる減速走行時には、スタータジェネレータ16が回生発電状態に制御される。
【0029】
ここで、図6はスタータジェネレータ16を回生発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する際には、前述した燃焼発電状態よりもスタータジェネレータ16の発電電圧が上げられる。これにより、図6に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ32や鉛バッテリ31に対して大きな電流が供給されるため、リチウムイオンバッテリ32や鉛バッテリ31は急速に充電される。また、リチウムイオンバッテリ32の内部抵抗は、鉛バッテリ31の内部抵抗よりも小さいことから、発電電流の大部分はリチウムイオンバッテリ32に供給される。
【0030】
なお、図4図6に示すように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態、回生発電状態および発電休止状態に制御する際に、スイッチSW1,SW2はオン状態に保持されている。つまり、車両用電源装置10においては、スイッチSW1,SW2の切替制御を行うことなく、スタータジェネレータ16の発電電圧を制御するだけで、リチウムイオンバッテリ32の充放電を制御することが可能である。これにより、簡単にリチウムイオンバッテリ32の充放電を制御することができるだけでなく、スイッチSW1,SW2の耐久性を向上させることができる。
【0031】
次いで、スタータジェネレータ16における燃焼発電状態と発電休止状態との切り替えについて説明する。前述したように、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが低下すると、スタータジェネレータ16は燃焼発電状態に切り替えられる。このスタータジェネレータ16の燃焼発電状態においては、発電電圧がリチウムイオンバッテリ32の端子電圧よりも上げられ、リチウムイオンバッテリ32が充電される。一方、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが上昇すると、スタータジェネレータ16は発電休止状態に切り替えられる。このスタータジェネレータ16の発電休止状態においては、発電電圧がリチウムイオンバッテリ32の端子電圧よりも下げられ、リチウムイオンバッテリ32の放電が促される。
【0032】
ここで、図7はISG制御部70による燃焼発電状態と発電休止状態との切替状況の一例を示す図である。図7に符号a1で示すように、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが、所定の発電閾値S1aを下回る場合には、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。そして、充電によってリチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが、所定の休止閾値S1bまで上昇すると(符号a2)、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。続いて、放電によってリチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが、発電閾値S1aまで低下すると(符号a3)、再びスタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。その後、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが休止閾値S1bまで上昇すると(符号a4)、再びスタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。
【0033】
すなわち、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが発電閾値(第1閾値)S1aを下回る場合には、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。このスタータジェネレータ16の燃焼発電状態は、上昇する充電状態S_LiBが休止閾値S1bに到達するまで継続される。一方、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが休止閾値S1bを上回る場合には、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。このスタータジェネレータ16の発電休止状態は、低下する充電状態S_LiBが発電閾値S1aに到達するまで継続される。
【0034】
このように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態と発電休止状態とに制御することにより、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBを、発電閾値S1aや休止閾値S1bの近傍に留めておくことができる。つまり、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBを下げて満充電状態を回避することにより、リチウムイオンバッテリ32の空き容量αを確保することができ、減速走行時の回生機会を逃すことなくスタータジェネレータ16を回生発電状態に制御することができる。すなわち、図7に一点鎖線(符号b1,b2)で示すように、回生機会を逃すことなくスタータジェネレータ16を回生発電状態に制御することができるため、多くの電力を回収して車両11のエネルギー効率を高めることができる。
【0035】
[スタータジェネレータ力行制御]
続いて、スタータジェネレータ16の力行制御について説明する。メインコントローラ64のISG制御部70は、例えば、アイドリングストップ制御においてエンジン12を再始動させる場合に、スタータジェネレータ16を力行状態に制御する。ここで、図8はスタータジェネレータ16を力行状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。図8に示すように、アイドリングストップ制御におけるエンジン再始動時に、スタータジェネレータ16を力行状態に制御する際には、スイッチSW1がオン状態からオフ状態に切り替えられる。これにより、リチウムイオンバッテリ32からスタータジェネレータ16に大電流が供給される場合であっても、電気機器群44に対する瞬間的な電圧低下を防止することができ、電気機器群44等を正常に機能させることができる。
【0036】
なお、図8に示した例では、スタータジェネレータ16を力行状態に制御する際に、スイッチSW1をオフ状態に切り替えているが、これに限られることはなく、スイッチSW1をオン状態に保持したままスタータジェネレータ16を力行状態に制御しても良い。例えば、発進時や加速時にエンジン12を補助するモータアシスト制御においては、前述したエンジン再始動時に比べてスタータジェネレータ16の消費電力が小さいため、スタータジェネレータ16の力行時にはスイッチSW1がオン状態に保持される。このように、消費電力の小さなモータアシスト制御においては、スイッチSW1をオン状態に保持したとしても、鉛バッテリ31からスタータジェネレータ16に大電流が流れることはなく、電気機器群44の電源電圧を安定させることができる。
【0037】
[フェイルセーフ制御]
続いて、車両用電源装置10によって実行されるフェイルセーフ制御について説明する。前述したように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態や回生発電状態に制御することにより、スタータジェネレータ16から電源回路30に電力が供給さるため、電源回路30内の電気機器群44を適切に動作させることができる。ここで、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合、つまりスタータジェネレータ16が発電不能に陥った場合には、スタータジェネレータ16からの電力供給が遮断されるため、電気機器群44を適切に動作させることが困難になる。これらの電気機器群44には、各種コントローラや各種アクチュエータが含まれるため、スタータジェネレータ16に異常が発生することは、前述した自動運転等の各種制御システムを停止させてしまう要因であった。
【0038】
そこで、車両用電源装置10のメインコントローラ64は、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合に、所定時間に渡って電気機器群44に対する電力供給を継続し、各種制御システムを適切に停止させるフェイルセーフ制御を実行する。ここで、図3に示すように、メインコントローラ64には、フェイルセーフ制御を実行するフェイルセーフ制御部74、およびスタータジェネレータ16の異常を検出する異常検出部75が設けられている。なお、異常検出部75は、スタータジェネレータ16の発電電圧や発電電流、リチウムイオンバッテリ32の端子電圧や充放電電流、鉛バッテリ31の端子電圧や充放電電流、ISGコントローラ23から送信される異常情報等に基づいて、スタータジェネレータ16が発電不能になる異常状態を検出する。
【0039】
ここで、図9はフェイルセーフ制御におけるスイッチSW1,SW2の作動状況および充電状態S_LiBの推移状況の一例を示すタイミングチャートである。また、図10(A)および(B)は、フェイルセーフ制御における電流供給状況の一例を示す図である。なお、図10(A)および(B)において、黒塗りの矢印は電流の供給状況を示す矢印である。
【0040】
まず、図9に時刻t1で示すように、スタータジェネレータ16の燃焼発電状態においては、双方のスイッチSW1,SW2がオン状態に制御され(符号a1,b1)、発電するスタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ32が充電される。これにより、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBは徐々に上昇する(符号c1)。このスタータジェネレータ16の燃焼発電状態から、時刻t2で示すように、スタータジェネレータ16に異常が発生すると(符号d1)、双方のスイッチSW1,SW2がオン状態のまま保持される(符号a2,b2)。つまり、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合には、スイッチSW1,SW2をオン状態に保持することにより、リチウムイオンバッテリ32と電気機器群44との接続状態が維持される。
【0041】
これにより、図10(A)に示すように、リチウムイオンバッテリ32から電気機器群44に電力が供給されるため、スタータジェネレータ16からの電力供給は停止するものの、電気機器群44を適切に動作させることができる。すなわち、自動運転等の各種制御システムが直ちに停止することはなく、各種制御システムの作動状態を維持することができるため、各種制御システムの信頼性を高めることができる。なお、図10(A)に示すように、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合には、電気機器群44にリチウムイオンバッテリ32と鉛バッテリ31との双方が接続されるが、リチウムイオンバッテリ32の内部抵抗は鉛バッテリ31の内部抵抗よりも小さいことから、電気機器群44の消費電力の多くはリチウムイオンバッテリ32から供給される。
【0042】
また、スタータジェネレータ16からの電力供給が遮断された状態のもとで、リチウムイオンバッテリ32から電気機器群44に電力が供給されるため、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBは徐々に低下する。ところで、リチウムイオンバッテリ32を過度に放電させることは、リチウムイオンバッテリ32を大幅に劣化させる要因であることから、リチウムイオンバッテリ32の過放電を防止することが重要である。そこで、図9に時刻t3で示すように、メインコントローラ64は、放電するリチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが、発電閾値(第1閾値)S1aよりも小さな下限閾値(第2閾値)S2まで低下すると、スイッチSW2をオフ状態に切り替える(符号b3)。
【0043】
このように、スイッチSW2をオフ状態に制御することにより、図10(B)に示すように、電気機器群44からリチウムイオンバッテリ32が切り離されるため、リチウムイオンバッテリ32の放電を停止させることができ、リチウムイオンバッテリ32の過放電を防止することができる。また、充電状態S_LiBと比較判定される下限閾値S2は、フェイルセーフ制御が実行された場合であっても、リチウムイオンバッテリ32を大幅に劣化させることのない閾値、つまりリチウムイオンバッテリ32の交換を必要としない閾値に設定される。なお、電気機器群44からリチウムイオンバッテリ32が切り離された場合であっても、電気機器群44には鉛バッテリ31から電力が供給されることから、所定時間に渡って電気機器群44を適切に動作させることができる。
【0044】
これまで説明したように、メインコントローラ64は、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合に、スイッチSW2オン状態に制御してから、スイッチSW2をオフ状態に制御する。つまり、メインコントローラ64は、スタータジェネレータ16の異常発生に基づきスイッチSW2オン状態に制御してから、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが下限閾値S2を下回る場合にスイッチSW2をオフ状態に制御する。これにより、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合であっても、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが下限閾値S2を下回るまでは、リチウムイオンバッテリ32から電気機器群44に電力が供給される。すなわち、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合であっても、リチウムイオンバッテリ32の過放電を防止しながら電気機器群44に電力を供給することができ、車両11の各種制御システムを適切に動作させることができる。
【0045】
前述したように、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合であっても、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが下限閾値S2に到達するまでは、電気機器群44に対する電力供給を継続することができ、車両11の各種制御システムを適切に動作させることができる。そこで、メインコントローラ64は、図9に時刻t2で示すように、スタータジェネレータ16に異常が発生すると(符号d1)、自動運転等の各種制御システムを通常モードから退避モードに切り替える(符号e1)。ここで、各種制御システムの退避モードとは、各種制御システムを適切に停止させるための制御モードである。例えば、自動運転制御が実行されている場合には、通常モードから退避モードに移行することにより、警告音等による自動運転の解除予告が行われ、操舵や加減速等の自動運転が段階的に解除される。これにより、メインコントローラ64の運転制御部73が主導する自動運転状況から、乗員に対して運転権限を適切に委譲することができる。また、例えば、ステアリング操作のアシスト制御が実行されている場合には、通常モードから退避モードに移行することにより、警告音等によるアシスト制御の解除予告が行われ、ステアリングアクチュエータ66のアシスト力が段階的に下げられる。これにより、乗員に違和感を与えることなく、ステアリング操作のアシスト制御を解除することができる。
【0046】
続いて、前述したフェイルセーフ制御の実行手順をフローチャートに沿って説明する。図11はフェイルセーフ制御の実行手順の一例をフローチャートである。図11に示すように、ステップS10では、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBに基づいて、スタータジェネレータ16の発電制御が実行される。つまり、スタータジェネレータ16の正常時においては、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが発電閾値(第1閾値)S1aを下回る場合に、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。これにより、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBは、発電閾値S1a(例えば30%)を上回るように制御される。
【0047】
続くステップS11では、スタータジェネレータ16に異常が発生しているか否かが判定される。ステップS11において、スタータジェネレータ16に異常が発生していると判定された場合には、ステップS12に進み、スイッチSW1,SW2がオン状態に制御され、ステップS13に進み、各種制御システムに関し、通常モードから退避モードへの移行が指示される。これにより、リチウムイオンバッテリ32から電気機器群44に電力を供給することで各種制御システムの動作を維持するとともに、各種制御システムを適切に停止させるための退避モードが実行される。
【0048】
次いで、ステップS14では、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが下限閾値(第2閾値)S2を下回るか否かが判定される。ステップS14において、充電状態S_LiBが下限閾値S2(例えば15%)を下回ると判定された場合には、ステップS15に進み、スイッチSW2がオン状態からオフ状態に切り替えられ、ルーチンを抜ける。一方、ステップS14において、充電状態S_LiBが下限閾値S2以上であると判定された場合には、ステップS12に進み、スイッチSW1,SW2がオン状態のまま保持され、ステップS13に進み、各種制御システムの退避モードが実行される。
【0049】
このように、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合には、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが下限閾値S2を下回るまで、リチウムイオンバッテリ32からの電力供給によって各種制御システムの動作が維持されるとともに、各種制御システムを適切に停止させるための退避モードが実行される。そして、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが下限閾値S2を下回った場合には、スイッチSW2をオフ状態に切り替えることにより、電気機器群44からリチウムイオンバッテリ32が切り離される。これにより、リチウムイオンバッテリ32の過放電を防止することができ、リチウムイオンバッテリ32の交換を回避することができるため、車両用電源装置10の修理コストを低減することができる。
【0050】
また、前述の説明では、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが下限閾値S2を下回った場合に、第2電源系52に設けられたスイッチSW2をオフ状態に切り替え、電気機器群44からリチウムイオンバッテリ32を切り離しているが、これに限られることはない。すなわち、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが下限閾値S2を下回った場合に、スイッチSW2をオン状態に保持したまま、正極ライン36に設けられたスイッチSW1をオフ状態に切り替えても良い。このように、スイッチSW1をオフ状態に切り替えた場合であっても、電気機器群44からリチウムイオンバッテリ32を切り離すことができるため、リチウムイオンバッテリ32の過放電を防止することができる。なお、リチウムイオンバッテリ32の充電状態S_LiBが下限閾値S2を下回った場合に、スイッチSW1,SW2の一方をオフ状態に切り替えるだけでなく、スイッチSW1,SW2の双方をオフ状態に切り替えても良い。
【0051】
また、前述の説明では、充電状態S_LiBと比較する下限閾値として、1つの下限閾値S2を設定しているが、これに限られることはなく、複数の下限閾値を設定しても良い。例えば、図9に示すように、充電状態S_LiBと比較される下限閾値として、下限閾値S2と、下限閾値S2よりも小さな下限閾値(第3閾値)S3を設定しても良い。このように、複数の下限閾値S2,S3を設定した場合には、各種制御システムの作動状況に応じて、充電状態S_LiBと比較する下限閾値S2,S3を分けることが可能である。例えば、自動運転制御の停止中にスタータジェネレータ16に異常が発生した場合には、充電状態S_LiBが上方の下限閾値S2と比較される一方、自動運転制御の実行中にスタータジェネレータ16に異常が発生した場合には、充電状態S_LiBが下方の下限閾値S3と比較される。
【0052】
すなわち、図9に示すように、自動運転制御が停止している状態のもとで、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合には、充電状態S_LiBが下限閾値S2(例えば15%)を下回るタイミング(時刻t3,符号c2)で、スイッチSW2がオフ状態に切り替えられる(符号b3)。一方、自動運転制御が実行されている状態のもとで、スタータジェネレータ16に異常が発生した場合には、充電状態S_LiBが下限閾値S3(例えば10%)を下回るタイミング(時刻t4,符号c3)で、スイッチSW2がオフ状態に切り替えられる(符号b4)。これにより、自動運転制御が実行されている場合には、電気機器群44からリチウムイオンバッテリ32が切り離されるまでの時間を延ばすことができ、退避モードの実行時間を確保してより適切に自動運転制御を停止させることができる。一方、自動運転制御が停止されている場合には、充電状態S_LiBの低下を抑制することができ、リチウムイオンバッテリ32の劣化を防止することができる。
【0053】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、スタータジェネレータ16の異常発生に基づきスイッチSW2をオン状態に制御してから、充電状態S_LiBが下限閾値S2を下回る場合にスイッチSW2をオフ状態に制御しているが、これに限られることはない。例えば、スタータジェネレータ16の異常発生に基づきスイッチSW2をオン状態に制御してから、所定の設定時間が経過した場合にスイッチSW2をオフ状態に制御しても良い。また、前述の説明では、発電機としてスタータジェネレータ16を採用しているが、これに限られることはなく、発電機としてオルタネータを採用しても良い。
【0054】
また、前述の説明では、第1蓄電体として鉛バッテリ31を用いているが、これに限られることはなく、第1蓄電体として他の種類のバッテリやキャパシタを用いても良い。また、第2蓄電体としてリチウムイオンバッテリ32を用いているが、これに限られることはなく、第2蓄電体として他の種類のバッテリやキャパシタを用いても良い。また、図1および図2に示した例では、リチウムイオンバッテリ32の正極ライン34にスイッチSW2を設けているが、これに限られることはない。例えば、図2に一点鎖線で示すように、リチウムイオンバッテリ32の負極ライン39にスイッチSW2を設けても良い。また、前述の説明では、メインコントローラ64に、各種制御部70〜75を設けているが、これに限られることはない。他のコントローラに、各種制御部70〜75の一部や全部を設けても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用電源装置
11 車両
12 エンジン
16 スタータジェネレータ(発電機)
31 鉛バッテリ(第1蓄電体)
32 リチウムイオンバッテリ(第2蓄電体)
36 正極ライン(通電径路)
43 電気機器(電気負荷)
51 第1電源系
52 第2電源系
70 ISG制御部(発電制御部)
71 スイッチ制御部
73 運転制御部
SW1 第1スイッチ(スイッチ)
SW2 第2スイッチ(スイッチ)
S_LiB 充電状態
S1a 発電閾値(第1閾値)
S2 下限閾値(第2閾値)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11