特許第6768088号(P6768088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 南通海星電子股▲フン▼有限公司の特許一覧 ▶ 南通海一電子有限公司の特許一覧

特許6768088低接触抵抗の低圧用アルミニウム電解コンデンサ用の電極箔のエッチング方法
<>
  • 特許6768088-低接触抵抗の低圧用アルミニウム電解コンデンサ用の電極箔のエッチング方法 図000003
  • 特許6768088-低接触抵抗の低圧用アルミニウム電解コンデンサ用の電極箔のエッチング方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768088
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】低接触抵抗の低圧用アルミニウム電解コンデンサ用の電極箔のエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20201005BHJP
   H01G 9/055 20060101ALI20201005BHJP
   H01G 9/045 20060101ALI20201005BHJP
   H01G 9/14 20060101ALI20201005BHJP
   C25F 1/04 20060101ALI20201005BHJP
   C25F 3/04 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H01G9/00 290D
   H01G9/055
   H01G9/045
   H01G9/14 A
   C25F1/04
   C25F3/04 B
   C25F3/04 D
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-566562(P2018-566562)
(86)(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公表番号】特表2019-535120(P2019-535120A)
(43)【公表日】2019年12月5日
(86)【国際出願番号】CN2018080808
(87)【国際公開番号】WO2019041797
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2018年12月14日
(31)【優先権主張番号】201710765155.8
(32)【優先日】2017年8月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518446097
【氏名又は名称】南通海星電子股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Nantong Haixing Electronics Limited Liability Company
(73)【特許権者】
【識別番号】518446101
【氏名又は名称】南通海一電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】Nantong Haiyi Electronics Co., Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】厳季新
(72)【発明者】
【氏名】陳健
(72)【発明者】
【氏名】王建中
(72)【発明者】
【氏名】趙宇飛
(72)【発明者】
【氏名】呉春春
(72)【発明者】
【氏名】冒慧敏
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−199026(JP,A)
【文献】 特開昭53−070053(JP,A)
【文献】 特開2009−105190(JP,A)
【文献】 特開2006−114541(JP,A)
【文献】 特開平11−026320(JP,A)
【文献】 特開昭58−025218(JP,A)
【文献】 特開2002−008950(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/131289(JP,A1)
【文献】 特開2002−266100(JP,A)
【文献】 特開2009−290084(JP,A)
【文献】 特開2013−004650(JP,A)
【文献】 特開平09−246112(JP,A)
【文献】 特開2000−216064(JP,A)
【文献】 特開2007−324253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/045
H01G 9/055
H01G 9/14
C25F 1/04
C25F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0.5wt%の水酸化ナトリウム溶液で、50℃温度で電解コンデンサ用の低圧用陽極箔を分間浸漬する工程と、
(b)工程(a)で得られる陽極箔をwt%塩酸、0.3wt%硫酸で、温度が40℃であり、電流密度が0.5A/cm2である条件で40秒処理する工程と、
(c)工程(b)で得られる陽極箔をwt%塩酸、0.3wt%硫酸で、温度が40℃である条件で40秒処理する工程と、
(d)工程(c)で得られる陽極箔を温度が45℃の水道水で40秒洗浄する工程と、
(e)工程(b)、(c、)、(d)を4回繰り返す工程と、
(f)工程(e)の処理によって得られる陽極箔をwt%塩酸、0.3wt%硫酸、0.1wt%りん酸エッチング液で穴を拡げるためにエッチングし、電流密度が0.3A/cm2であり、温度が35℃であり、正弦波として変わる5〜35Hz電源周波数で40秒低周波数でエッチングする工程と、
(g)工程(f)の処理によって得られる陽極箔をwt%塩酸、0.3wt%硫酸、0.1wt%りん酸で、温度が35℃である条件で40秒処理する工程と、
(h)工程(g)で得られる陽極箔を温度が45℃の水道水で40秒洗浄する工程と、
(i)工程(f)、(g)、(h)を8回繰り返す工程と、
(j)wt%の塩酸溶液で、温度が60℃で60秒浸漬する工程と、
(k)wt%の硝酸溶液で、温度が60℃で60秒浸漬する工程と、
(l)純水で30〜180秒洗浄した後、430℃温度で120秒アニール処理する工程とを含工程(b)、(c)、(g)におけるエッチング処理の電源としては直流、交流、直流交流交互使用のうちいずれか1項であることを特徴とする低接触抵抗の低圧用アルミニウム電解コンデンサ用の電極箔のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ用の低圧用陽極箔の電気化学エッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アルミニウム電解コンデンサ用の低圧用エッチング箔の周波数変換エッチング方法は、(1)酸液前処理、(2)穴あけエッチング、(3)穴を拡げるエッチング;(4)後処理、洗浄及びアニールである。エッチング中に用いられる電源周波数は商用周波数(50Hz)であり、エッチング後、残芯層の厚さが不均一であり、エッチング層のエッチング量が大きく、エッチングされたアルミニウム粉が十分に洗浄されないので、化成後の電極箔の接触抵抗が大きくなってしまう。それ以外に、洗浄効果が好ましくなく、不純物イオンを残留し、電極箔漏電流及びアルミニウム電解コンデンサの使用年数に影響することにもなってしまう。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、以上の課題を克服するために、洗浄効果が良く、不純物イオンが少なく、接触抵抗が低く、使用年数が長いコンデンサ用の低圧用陽極箔の電気化学エッチング方法を提供することにある。
【0004】
本発明の目的は、
(a)0.01〜5wt%の水酸化ナトリウム溶液で、20〜60℃温度で電解コンデンサ用の低圧用陽極箔を0.5〜3分間浸漬する工程と、
(b)工程(a)で得られる陽極箔を6〜12wt%塩酸、0.05〜1wt%硫酸で、温度が5〜50℃であり、電流密度が0.1〜1A/cm2である条件で10〜85秒処理する工程と、
(c)工程(b)で得られる陽極箔を6〜12wt%塩酸、0.05〜1wt%硫酸で、温度が5〜50℃である条件で10〜85秒処理する工程と、
(d)工程(c)で得られる陽極箔を温度が40〜60℃の水道水で10〜85秒洗浄する工程と、
(e)工程(b)、(c、)(d)を4回繰り返す工程と、
(f)工程(e)の処理によって得られる陽極箔を6〜12wt%塩酸、0.05〜1wt%硫酸、0.01〜1wt%りん酸エッチング液で穴を拡げるためにエッチングし、電流密度が0.1〜1A/cm2であり、温度が10〜45℃であり、正弦波として変わる5〜35Hz電源周波数で10〜85秒低周波数でエッチングする工程と、
(g)工程(f)の処理によって得られる陽極箔を6〜12wt%塩酸、0.05〜1wt%硫酸、0.01〜1wt%りん酸で、温度が10〜45℃である条件で10〜85秒処理する工程と、
(h)工程(g)で得られる陽極箔を温度が40〜60℃の水道水で10〜85秒洗浄する工程と、
(i)工程(f)、(g)、(h)を8回繰り返す工程と、
(j)2〜6wt%の塩酸溶液で、温度が20〜80℃で30〜180秒浸漬する工程と、
(k)0.1〜4wt%の硝酸溶液で、温度が20〜80℃で30〜180秒浸漬する工程と、
(l)純水で30〜180秒洗浄した後、400〜460℃温度で20〜180秒アニール処理する工程とを含む低接触抵抗の低圧用アルミニウム電解コンデンサ用の電極箔のエッチング方法という技術的手段によって実現される。
【0005】
本発明は、従来の技術と比べると、
アルカリ液前処理、穴あけ及び穴を拡げるプロセスが一つずつ行われ、各ステップ後に槽液での中間処理及び温水洗浄フローが増え、穴を拡げる際に、電源の周波数を制御することによって、均一な残芯層のエッチング形状を得て、低接触抵抗を得る低周波数でのエッチング方法が実現するというメリットを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、比較例の電極箔の横断面の形状図である。
図2図2は、本発明の電極箔の横断面の形状図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、具体的な実施例を組み合わせて本発明を更に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。特記しない限り、前記方法は常例の方法である。
【0008】
実施例1
(a)電解コンデンサ用の低圧用陽極箔を0.01wt%の水酸化ナトリウム溶液に入れ、40℃の温度で3分間浸漬する。
(b)工程(a)で得られる陽極箔を6wt%塩酸、0.1wt%硫酸で、温度が30℃であり、電流密度が0.3A/cm2である条件で20秒処理する。
(c)工程(b)で得られる陽極箔を6wt%塩酸、0.1wt%硫酸で、温度が30℃の条件で20秒処理する。
(d)工程(c)で得られる陽極箔を温度が40℃の水道水で30秒洗浄する。
(e)工程(b)、(c)、(d)を4回繰り返す。
(f)工程(e)の処理によって得られる陽極箔を6wt%塩酸、0.1wt%硫酸、0.01wt%りん酸エッチング液で穴を拡げるためにエッチングし、電流密度が0.1A/cm2であり、温度が30℃であり、正弦波として変わる5〜35Hz周波数で低くから高くまで20秒低周波数でエッチングする。
(g)工程(f)の処理によって得られる陽極箔を6wt%塩酸、0.1wt%硫酸、0.01wt%りん酸で、温度が30℃である条件で20秒処理する。
(h)工程(g)で得られる陽極箔を采用温度が40℃の水道水で30秒洗浄する。
(i)工程(f)、(g)、(h)を8回繰り返す。
(j)2wt%の塩酸溶液で、温度が50℃で30秒浸漬する。
(k)0.1wt%の硝酸溶液で、温度が50℃で30秒浸漬する。
(l)純水で60秒洗浄した後、420℃の温度で150秒アニール処理する。
【0009】
実施例2
(a)電解コンデンサ用の低圧用陽極箔を0.5wt%の水酸化ナトリウム溶液に入れ、50℃温度で2分間浸漬する。
(b)工程(a)で得られる陽極箔を8wt%塩酸、0.3wt%硫酸で、温度が40℃で、電流密度が0.5A/cm2である条件で40秒処理する。
(c)工程(b)で得られる陽極箔を8wt%塩酸、0.3wt%硫酸で、温度が40℃である条件で40秒処理する。
(d)工程(c)で得られる陽極箔を温度が45℃の水道水で40秒洗浄する。
(e)工程(b)、(c)、(d)を4回繰り返す。
(f)工程(e)の処理によって得られる陽極箔を8wt%塩酸、0.3wt%硫酸、0.1wt%りん酸エッチング液で穴を拡げるためにエッチングし、電流密度が0.3A/cm2で、温度が35℃で、正弦波として変わる5〜35Hz周波数で低くから高くまで40秒低周波数でエッチングする。
(g)工程(f)の処理によって得られる陽極箔を8wt%塩酸、0.3wt%硫酸、0.1wt%りん酸で、温度が35℃である条件で40秒処理する。
(h)工程(g)で得られる陽極箔を温度が45℃の水道水で40秒洗浄する。
(i)工程(f)、(g)、(h)を8回繰り返す。
(j)3wt%の塩酸溶液で、温度が60℃で60秒浸漬する。
(k)1wt%の硝酸溶液で、温度が60℃で60秒浸漬する。
(l)純水で90秒洗浄した後、430℃温度で120秒アニール処理する。
【0010】
実施例3
(a)電解コンデンサ用の低圧用陽極箔を2wt%の水酸化ナトリウム溶液に入れ、55℃温度で1分間浸漬する。
(b)工程(a)で得られる陽極箔を10wt%塩酸、0.5wt%硫酸で、温度が45℃、電流密度が0.7A/cm2である条件で60秒処理する。
(c)工程(b)で得られる陽極箔を10wt%塩酸、0.5wt%硫酸で、温度が45℃である条件で60秒処理する。
(d)工程(c)で得られる陽極箔を温度が50℃の水道水で60秒洗浄する。
(e)工程(b)、(c)、(d)を4回繰り返す。
(f)工程(e)の処理によって得られる陽極箔を10wt%塩酸、0.5wt%硫酸、0.5wt%りん酸エッチング液で穴を拡げるエッチングし、電流密度が0.4A/cm2で、温度が40℃で、正弦波として変わる5〜35Hz周波数で低くから高くまで60秒低周波数でエッチングする。
(g)工程(f)の処理によって得られる陽極箔を10wt%塩酸、0.5wt%硫酸、0.5wt%りん酸で、温度が40℃である条件で60秒処理する。
(h)工程(g)で得られる陽極箔を温度が50℃の水道水で60秒洗浄する。
(i)工程(f)、(g)、(h)を8回繰り返す。
(j)4wt%の塩酸溶液で、温度が70℃で90秒浸漬する。
(k)2wt%の硝酸溶液で、温度が70℃で90秒浸漬する。
(l)純水で120秒洗浄した後、440℃温度で90秒アニール処理する。
【0011】
実施例4
(a)4wt%の水酸化ナトリウム溶液で、60℃温度で電解コンデンサ用の低圧用陽極箔を0.5分間浸漬する。
(b)工程(a)で得られる陽極箔を12wt%塩酸、0.8wt%硫酸で、温度が50℃、電流密度が0.9A/cm2である条件で80秒処理する。
(c)工程(b)で得られる陽極箔を12wt%塩酸、0.8wt%硫酸で、温度が50℃である条件で80秒処理する。
(d)工程(c)で得られる陽極箔を温度が55℃の水道水で40秒洗浄する。
(e)工程(b)、(c)、(d)を4回繰り返す。
(f)工程(e)の処理によって得られる陽極箔を12wt%塩酸、0.8wt%硫酸、0.8wt%りん酸エッチング液で穴を拡げるためにエッチングし、電流密度が0.5A/cm2で、温度が45℃で、正弦波として変わる5〜35Hz周波数で低くから高くまで80秒低周波数でエッチングする。
(g)工程(f)の処理によって得られる陽極箔を12wt%塩酸、0.8wt%硫酸、0.8wt%りん酸で、温度が45℃である条件で80秒処理する。
(h)工程(g)で得られる陽極箔を温度が80℃の水道水で40秒洗浄する。
(i)工程(f)、(g)、(h)を8回繰り返す。
(j)5wt%の塩酸溶液で、温度が80℃で120秒浸漬する。
(k)3wt%の硝酸溶液で、温度が55℃で120秒浸漬する。
(l)純水で150秒洗浄した後、450℃温度で60秒アニール処理する。
【0012】
比較例(従来のエッチングプロセス)
(a)0.05wt%のりん酸溶液で、60℃温度で電解コンデンサ用の低圧用陽極箔を1分間浸漬する。
(b)工程(a)で得られる陽極箔を8wt%塩酸、0.5wt%硫酸で、温度が50℃、電流密度が0.3A/cm2である条件で3分間処理する。
(c)工程(b)の処理によって得られる陽極箔を8wt%塩酸、0.5wt%硫酸エッチング液で穴を拡げるためにエッチングし、電流密度が0.3A/cm2で、温度が50℃で、正弦波として変わる50Hz電源周波数で4分間電気化学エッチングする。
(d)工程(c)の処理によって得られる陽極箔を1wt%の硝酸溶液で、温度が70℃で60秒浸漬する。
(e)純水で60秒洗浄した後、420℃温度で60秒アニール処理する。
【0013】
本発明によるエッチング電極箔を、従来のプロセスによるエッチング電極箔が生産ラインで化成された後、対比したデータの結果は以下の通りである(化成条件:アジピン酸アンモニウム槽液、Vfe=21V)。
【0014】
【0015】
対比結果から、本発明エッチングプロセスによるエッチング電極箔は化成後、接触抵抗が顕著に低下し、従来のエッチングプロセスに比べると、40%を超えて低下することがわかる。
【0016】
本発明は、アルカリ液前処理、穴あけ及び穴を拡げるプロセスを一つずつ行い、各ステップ後に槽液による中間処理及び温水洗浄フローが増えることによって、穴を拡げる際に、電源周波数を制御することによって、均一な残芯層エッチング形状を得る。
【0017】
出願人は又、本発明は上記実施例によって本発明の実現方法及び装置構造を説明するが、本発明は上記実施形態に限定されず、即ち、本発明は上記方法及び構造によって実現されなければならないことを意味しない。所属技術分野の技術者は、本発明に対するいかなる改善、本発明に用いられる実現方法の及び工程に対する添加、実施形態の選択等がいずれも本発明の保護範囲と開示の範囲内に落ちることがわかるべきである。
【0018】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明と近似する構造及びその方法によって本発明の目的を実現する全ての手段はいずれも本発明の保護範囲内にある。
図1
図2