特許第6768089号(P6768089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768089
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】インスリン注入セットデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20201005BHJP
   A61M 5/165 20060101ALI20201005BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   A61M5/142 522
   A61M5/165 500R
   B01J20/26 B
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-568190(P2018-568190)
(86)(22)【出願日】2017年4月21日
(65)【公表番号】特表2019-509873(P2019-509873A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】US2017028850
(87)【国際公開番号】WO2017184985
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2018年9月19日
(31)【優先権主張番号】62/326,257
(32)【優先日】2016年4月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジョン・デマリア
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・モリス・ハートマン
(72)【発明者】
【氏名】グレアム・バリー・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・コバルチック
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・マシュー・プシェニー
(72)【発明者】
【氏名】レア・シルカル
(72)【発明者】
【氏名】モニカ・リクスマン・スウィニー
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/027478(WO,A2)
【文献】 特表平11−514920(JP,A)
【文献】 特表2005−515798(JP,A)
【文献】 米国特許第03812031(US,A)
【文献】 特表2005−537893(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0265166(US,A1)
【文献】 特開2014−087644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/165
B01J 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン注入セットデバイスであって、
少なくとも1つのフェノール賦形剤を含有するインスリン製剤を受容するように構成された可撓性チューブと、
前記チューブに連結され、前記インスリン製剤を受容するように構成されたベースと、
前記ベースに連結され、前記インスリン製剤を患者に送達するように構成されたカテーテルと、
前記ベースに配置され、ベースを通してインスリン製剤を輸送するように構成された蛇行流体経路であって、複数の屈曲部を含む蛇行流体経路と、
前記蛇行流体経路に沿って配置され、当該デバイス内の前記インスリン製剤と流体連通する少なくとも1つのポリマー収着材であって、前記インスリン製剤から前記少なくとも1つのフェノール賦形剤を収着によって回収するように構成された、少なくとも1つのポリマー収着材と、を備える、インスリン注入セットデバイス。
【請求項2】
前記蛇行流体経路は、ジグザグ構成を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフェノール賦形剤は、m−クレゾールであり、前記少なくとも1つのポリマー収着材は、m−クレゾールの10%以上を回収することができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリマー収着材は、ポリマーの骨格に少なくとも1つのフェニル環を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリマー収着材は、芳香族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリマー収着材は、ポリマーの側鎖に少なくとも1つのフェニル環を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリマー収着材は、ポリ(スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン)(SEBS)コポリマーである、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記インスリン製剤が前記患者に送達される前に前記少なくとも1つのフェノール賦形剤が回収されるように、前記少なくとも1つのポリマー収着材は前記デバイスの遠位端に位置する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記チューブは、前記少なくとも1つのポリマー収着材で構築またはコーティングされている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ベースは、前記少なくとも1つのポリマー収着材で構築またはコーティングされている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記少なくとも1つのポリマー収着材は、マイクロビーズの層、多孔質濾過膜、及びマイクロファイバの層のうちの少なくとも1つに位置する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記インスリン製剤と流体連通して前記デバイスに連結された少なくとも1つの抗炎症剤を含む薬物をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記カテーテルの外面は、前記インスリン製剤を拡散様式で前記患者に送達するように構成された複数の開口部を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
インスリン注入セットデバイスであって、
可撓性チューブと、
前記チューブに連結されたベースと、
前記ベースに連結されたカテーテルと、
少なくとも1つのフェノール賦形剤を含有するインスリン製剤を当該デバイスを通して輸送するように構成された蛇行流体経路と、
当該デバイスにわたり拡散勾配を設けるために、少なくとも前記蛇行流体経路に沿って配置された複数の収着材であって、前記インスリン製剤から前記少なくとも1つのフェノール賦形剤を収着によって回収するように構成された複数の収着材と、ここで上記拡散勾配は、少なくとも蛇行流体経路に沿ったインスリン製剤における少なくとも一つのフェノール賦形剤の濃度の勾配に相当する、
を備える、
インスリン注入セットデバイス。
【請求項15】
前記複数の収着材は、拡散勾配を設けるため、デバイスの遠位端の方へフェノール賦形剤に対する親和性を増した状態で、デバイスの近位端と遠位端との間に配置されている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
複数の収着材のうちの少なくとも1つは、ポリマーである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
複数の収着材のうちの少なくとも1つは、芳香族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)またはポリ(スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン)(SEBS)コポリマーである、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記蛇行流体経路の少なくとも一部は、前記チューブ内に位置し、前記チューブ内の複数の内部障害物によって画定される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項19】
前記蛇行流体経路の少なくとも一部は、前記ベース内に位置し、ジグザグ構成を形成するため複数の屈曲部を含む、請求項14に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年4月22日に出願された米国仮特許出願第62/326,257号に対する優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、非経口薬物送達のためのデバイス、より具体的には、持続皮下インスリン注入(CSII)のためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
CSIIは、インスリン注入セット(IIS)を使用して行うことができる。IISデバイス100の一例を図1に示す。例示的なデバイス100は、インスリン製剤を受容するようにポンプ(図示せず)のインスリンリザーバと連通する第1の近位端112と、インスリン製剤(すなわち、注入液)を送達するように患者(図示せず)と連通する第2の遠位端114とを含む。例示的なデバイス100は、第1の端部112に、インスリンリザーバと連結するように構成されたリザーバコネクタ120と、ラインセットチューブ122と、ベースコネクタ124とを含む。例示的なデバイス100は、第2の端部114に、ベースコネクタ124を受容するように構成された注入ベース130と、注入ベース130を患者の皮膚に接着するように構成された接着パッド132と、患者の皮膚に挿入されるように構成された注入カテーテル134とを含む。使用時には、インスリン製剤は、ポンプからラインセットチューブ122を通って、注入カテーテル134を通り、患者の皮下(SC)組織内に誘導される。
【0004】
IISデバイスは、サイズ、形状、外観、材料、及び他の特徴において異なり得る。一例では、注入カテーテル134を構築するために使用される材料が異なってもよい(例えば、Animas Corporationから入手可能なContact Detach(商標)Infusion Setは、鋼製の注入カテーテルを使用するのに対し、Medtronicから入手可能なMiniMed(登録商標)Quick−set(登録商標)Infusion Setは、プラスチック製の注入カテーテルを使用する)。別の例では、ラインセットチューブ122の構成が異なってもよい(例えば、Animas Corporationから入手可能なContact Detach(商標)Infusion Setは、中間の張力緩和ベースを介して一緒に連結された2セットのラインセットチューブを使用するのに対し、Medtronicから入手可能なMiniMed(登録商標)Quick−set(登録商標)Infusion Setは、単一のラインセットチューブを使用する)。
【0005】
患者の体は、注入カテーテル134の部位で炎症反応及び/または異物反応を示す場合がある。注入部位におけるこの反応は、損傷形成に対する患者の感受性、患者の関連組織リモデリング、及びインスリン製剤中のフェノール賦形剤(例えば、m−クレゾール、フェノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルバラベン、他の防腐剤、及びそれらの組み合わせ)を含む特定のインスリン製剤に対する患者の感受性を含む種々の要因に応じて患者ごとに異なり得る。M−クレゾールは、特に、炎症経路[Weber、2015]を誘導し、インビトロでヒト免疫細胞型に負の影響を及ぼし[Woodley、2016]、脂質二重層及び神経細胞膜を分解し[Paiva、2013]、タンパク質の凝集を誘導し、注入部位事象に寄与する可能性のあるタンパク質のアンフォールディングを開始する[Bis、2015;Singh、2011;Hutchings、2013]ことが示されている。
【0006】
注入部位におけるこれらの炎症反応及び/または異物反応のために、CSIIのための既知のIISデバイスは、現在、2〜3日間(2〜3d)の使用に適応されている。たとえ短い装着時間後であっても、炎症反応及び/または異物反応は、患者の注入部位の有効性を損なう場合があり、それによってインスリン取り込みが制限され、高血糖の危険性が高まり、適用可能な注入部位の使用期間が制限される。IISデバイスの装着時間が限られていることは、持続血糖測定(CGM)のための装着時間と比較して2〜7倍の相違があることを意味し、したがって、便利な完全一体型CSII/CGM人工膵臓システムを達成する上で障害をもたらす。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、患者のCSII注入部位の長期的な適用可能性を達成するように設計された1つ以上の特徴を有するIISデバイスを提供する。1つの例示的な特徴は、吸着及び/または吸収等の収着によってインスリン製剤からフェノール賦形剤(例えば、m−クレゾール、フェノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルバラベン、他の防腐剤、及びそれらの組み合わせ)を回収するように構成された収着材である。収着材は、インスリン製剤と収着材との間の曝露を増加及び/または延長するように特別に設計された流体経路に沿って配置されてもよい。別の例示的な特徴は、患者の炎症を軽減するか、または患者の炎症反応の進行を遅らせるように構成された薬物である。さらに別の例示的な特徴は、インスリン製剤を拡散様式で患者に送達するように構成された拡散型カテーテルである。
【0008】
本開示の一実施形態によれば、少なくとも1つのフェノール賦形剤を含有するインスリン製剤を受容するように構成された可撓性チューブと、チューブに連結され、インスリン製剤を受容するように構成されたベースと、ベースに連結され、インスリン製剤を患者に送達するように構成されたカテーテルと、デバイス内のインスリン製剤と流体連通する少なくとも1つのポリマー収着材であって、インスリン製剤から少なくとも1つのフェノール賦形剤を回収するように構成された少なくとも1つのポリマー収着材とを含むインスリン注入セットデバイスが開示される。
【0009】
本開示の別の実施形態によれば、可撓性チューブと、チューブに連結されたベースと、ベースに連結されたカテーテルと、少なくとも1つのフェノール賦形剤を含有するインスリン製剤をデバイスを通して輸送するように構成された蛇行流体経路と、蛇行流体経路に沿って配置された少なくとも1つの収着材であって、インスリン製剤から少なくとも1つのフェノール賦形剤を回収するように構成された少なくとも1つの収着材とを含むインスリン注入セットデバイスが開示される。
【0010】
本開示のさらに別の実施形態によれば、可撓性チューブと、チューブに連結されたベースと、ベースに連結されたカテーテルと、m−クレゾールを含有するインスリン製剤をデバイスを通して輸送するように構成された流体経路と、流体経路に沿って配置された少なくとも1つのポリマー収着材であって、m−クレゾールの10%以上を回収することができる少なくとも1つの収着材とを含むインスリン注入セットデバイスが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】既知のインスリン注入セット(IIS)デバイスの上面図である。
図2】本開示の例示的なIISデバイスの斜視図であって、デバイスは、リザーバコネクタ、ラインセットチューブ、ベースコネクタ、及び蛇行流体経路を有する注入ベースを含む。
図3図2のラインセットチューブ及びベースコネクタの上面図である。
図4図3の線4−4に沿った、図3のラインセットチューブの断面図である。
図5図2のベースコネクタを有する第2のラインセットチューブの上面図である。
図6図5の6−6線に沿った、図5の第2のラインセットチューブの断面図である。
図7図2のベースコネクタを有する第3のラインセットチューブの上面図である。
図8図2のベースコネクタを有する第4のラインセットチューブの上面図である。
図9図2のベースコネクタを有する第5のラインセットチューブの上面図である。
図10図9の線10−10に沿った、図9の第5のラインセットチューブの断面図である。
図11】患者の皮膚に適用された図2のデバイスの概略断面図であり、デバイスはまた、接着パッド及び注入カテーテルを含み、デバイスはマイクロビーズの層を含む。
図12】デバイスが多孔質濾過膜を含む、図11に類似した別の概略断面図である。
図13】デバイスがマイクロファイバの層を含む、図11に類似した別の概略断面図である。
図14】デバイスが注入カテーテル上に薬物を含む、患者の皮膚に適用された図2のデバイスの別の概略断面図である。
図15】薬物が患者内に放出される、図14に類似した別の概略断面図である。
図16】注入カテーテルが単一の送達開口部を含む、患者の皮膚に適用された図2のデバイスの別の概略断面図である。
図17】注入カテーテルが複数の送達開口部を含む、図16に類似した別の概略断面図である。
図18】インスリン製剤が第1の収着材に曝露されたときのm−クレゾールの収着を経時的に示すチャートである。
図19】インスリン製剤が第2の収着材に曝露されたときのm−クレゾールの収着を経時的に示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の上述及び他の特徴及び利点、ならびにそれらを達成する手法は、本発明の実施形態の以下の説明を添付の図面と併せて参照することによってより明らかになり、またよりよく理解されるであろう。
【0013】
対応する参照文字は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。本明細書に記載される例証は、本発明の例示的な実施形態を例示し、そのような例証は、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0014】
本開示の例示的なIISデバイス200を図2に示す。デバイス200は、図1のデバイス100に類似しており、以下に説明される以外は、同様の部分を示す同様の参照番号が付されている。デバイス200は、その第1の近位端212に、インスリンリザーバ(図示せず)と連結するように構成されたリザーバコネクタ220と、可撓性ラインセットチューブ222と、雄バックル部の形状のベースコネクタ224とを含む。デバイス200は、その第2の遠位端214に、ベースコネクタ224を受容するように構成された雌バックル部の形状の注入ベース230と、注入ベース230を患者の皮膚S(図11)に接着するように構成された接着パッド232(図11)と、患者の皮膚Sに挿入されるように構成された注入カテーテル234(図11)とを含む。使用時には、インスリン製剤は、ポンプからラインセットチューブ222を通って、注入カテーテル234(図11)を通り、患者の皮下(SC)組織内に誘導される(図11)。
【0015】
デバイス200は、CSII注入部位の長期的な適用可能性を達成するように設計された種々の特徴を含むことができる。結果として、注入部位は、3日、5日、7日、またはそれ以上長く、例えば、約7日〜14日持続することが可能であり、それによってインスリンの無駄を削減し、瘢痕を減少させ、完全一体型人工膵臓システムの週に1回または隔週に1回の交換時間枠を可能にし得る。これらの特徴を以下に個別に説明するが、これらの特徴は、個別にまたは組み合わせて使用され得ることを理解されたい。
【0016】
以下の開示はIISプラットフォームに焦点を当てているが、本明細書に記載される原理は、ポリペプチド送達、より一般的には非経口薬物送達の分野において幅広い適用性を有する。
【0017】
1.収着材
デバイス200の第1の例示的な特徴は、図2に示すように、1つ以上の収着材240を含む。収着材240は、インスリン製剤がデバイス200を通って移動する際にインスリン製剤と接触し、SC組織への送達(図11)の前に、吸着及び/または吸収等の収着によってインスリン製剤からフェノール賦形剤(例えば、m−クレゾール、フェノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルバラベン、他の防腐剤、及びそれらの組み合わせ)を回収するように構成される。
【0018】
収着材240は、吸着及び/または吸収等の収着によって、有機フェノール賦形剤、特にm−クレゾールを引き寄せて回収するための高い有機親和性を有し得る。接触するとほんの数秒または数分以内に収着が起こる場合もある。収着は経時的に増加し得る。例えば、1時間の曝露時間後、収着材240は、絶縁配合物中に最初に存在するm−クレゾールの5%、10%、15%、20%、25%、または30%超を回収することが可能であり得る。ある特定の実施形態では、収着材240は、1時間の曝露時間後に、m−クレゾールの60%、65%、70%、75%、または80%超を回収することが可能であり得る。収着はまた、収着材240の表面積及び/または体積が増加するにつれて増加し得る。特定の例は、後述のセクション4(実施例1及び2)に提供される。
【0019】
例示的な収着材240は、ポリマー構造の骨格に少なくとも1つのフェニル環を有するポリマーを含む。1つの特定の実施形態では、収着材240は、下の式(I)に示すように、ポリマー構造の骨格に2つ以上のフェニル環を含む。式(I)に基づくそのようなポリマー構造の例として、芳香族ポリウレタン(PU)(例えば、Covestro AGから入手可能な芳香族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)であるTexin(登録商標)285)及びポリスルホンが挙げられる。
【0020】
【0021】
他の例示的な収着材240は、下の式(II)に示すように、ポリマー構造の側鎖に少なくとも1つのフェニル環を有するポリマーを含む。式(II)に基づくそのようなポリマー構造の例として、ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、及びポリスチレンが挙げられる。
【0022】
【0023】
上記ポリマーは、ブロックコポリマーまたはランダムコポリマーを形成するために共重合されてもよい。例えば、上記ポリスチレンを共重合して、ポリ(スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン)(SEBS)コポリマー(例えば、HEXPOLTPEから入手可能なMediprene(登録商標)500450M)、またはポリスチレン:SEBSブロックコポリマーを形成することができる。
【0024】
他の例示的な収着材240は、ナイロン66(例えばSolvay Engineering Plasticsから入手可能なTechnyl(登録商標)A 205F)、エチレンビニルアルコール(EVOH)(例えばKuraray Co.,Ltd.から入手可能なEVAL(商標)F171)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(塩化ビニリデン)(PVDC)、ポリイソプレン、ブチルゴム、クロロブチルゴム、及びポリプロピレン(PP)(例えば、Formosa Plasticsから入手可能なFormolene(登録商標)3435E)を含んでもよい。
【0025】
さらに他の例示的な収着材240は、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(例えば、Dow Corning Corporationから入手可能なSYLGARD(登録商標)184、NuSil Technologyから入手可能なMED−6755、Dow Corning Corporationから入手可能なXIAMETER(登録商標)RSN樹脂)等のシリコーンを含んでもよい。
【0026】
デバイス200への収着材240の適用は異なり得る。ある特定の実施形態では、デバイス200は、収着材240で一部または全部が構成されてもよい。例えば、デバイス200は、TPUで一部または全部が構成されてもよい。他の実施形態では、収着材240は、デバイス200の下にある表面上に適用(例えば、コーティング、裏打ち、オーバーモールド)されてもよい。例えば、スチレンと1つ以上のポリオレフィン(例えば、SEBS)とを含むブロックコポリマーを、デバイス200の下にある表面上に適用することができる。他の実施形態では、収着材240は、デバイス200に搭載された濾過機構上に適用されてもよい。収着材240の種々の適用を以下に例示する。
【0027】
デバイス200上の収着材240の位置もまた異なり得る。ある特定の実施形態では、また図2に示すように、インスリン製剤が患者に送達される直前または寸前にインスリン製剤が収着材240と接触するように、収着材240は、デバイス200の遠位端214に、より具体的には、注入ベース230を通してインスリン製剤を輸送する流体経路250内に位置する。この構成は、インスリン製剤の完全性及び安定性を維持し、インスリン沈殿及び流路閉塞の危険性を最小限に抑えることができる。追加的または代替的に、収着材240は、デバイス200のラインセットチューブ222及び/またはベースコネクタ224等の、デバイス200の遠位端214に位置してもよい。一例では、デバイス200の近位端212(例えば、ラインセットチューブ222)は、フェノール賦形剤に対する比較的低い親和性を有する第1の収着材240を含んでもよく、デバイス200の遠位端214(例えば、注入ベース230)は、フェノール賦形剤に対して比較的高い親和性を有する第2の収着材240を含んでもよく、これにより、インスリン製剤からフェノール賦形剤を引き出すデバイス200にわたる拡散勾配を形成する。拡散勾配はまた、デバイス200の要素(例えば、ラインセットチューブ222)を、フェノール賦形剤に対する親和性が増加する2つの異なる収着材240と同時押出することによっても形成され得る。収着材240の種々の位置を以下に例示する。
【0028】
本開示の例示的な実施形態によれば、デバイス200は、デバイス200を通してインスリン製剤を輸送する1つ以上の改良された流体経路を含んでもよく、インスリン製剤と吸着剤240との間の表面積接触、体積接触、及び/または曝露時間を増加させるように設計される。例えば、収着材240を含む表面積は(例えば、細長く)増加させることができ、かつ/または収着材240を含む体積は、標準的な流体経路に対して、例えば、約5倍、10倍、15倍、20倍、またはそれ以上増加させることができる(例えば、厚くすることができる)。インスリン製剤と収着材240との間の曝露時間は、対応する増加を有し得る。インスリン製剤が患者に送達される速度に応じて、デバイス200は、数秒程度の短い及び数時間程度の長い総滞留時間を有するように設計することができる。基礎用量(例えば、0.75単位/時間)を投与される患者の場合、デバイス200は、例えば、約23分〜約10時間以上の総滞留時間を有するように設計することができる。ボーラス用量(例えば、2単位/時間)を投与される患者の場合、デバイス200は、例えば、約8秒〜約4分以上の総滞留時間を有するように設計することができる。他の実施形態では、流体経路は未改良のままであり得るが、なおも収着材240との十分な接触を達成する。
【0029】
図2に示す実施形態では、注入ベース230の流体経路250は、収着材240を収容するように大きな表面積を有する内面251によって画定される。図2において、この大きな表面積は、複数の屈曲部または湾曲部252を有する注入ベース230を通って、長く、曲がりくねった、蛇行する流体経路250を形成することによって達成される(図11)。例えば、表面251上に複数の内部障害物(例えば、フィンガー)(図示せず)を配置することによって、この大きな表面積を達成することも、本開示の範囲内である。注入ベース230のサイズ及び形状に応じて、流体経路250内の屈曲部252の数は、例えば、約5ヶ所の屈曲部、10ヶ所の屈曲部、15ヶ所の屈曲部、20ヶ所の屈曲部、またはそれ以上のように異なり得る。各屈曲部252の位置もまた異なり得る。図2において、流体経路250は、屈曲部252が注入ベース230の対向する左側部及び右側部に位置するジグザグ構成を有するが、屈曲部252が注入ベース230の対向する前端部及び後端部、ならびに/または注入ベース230の対向する上面及び底面に位置することもまた本開示の範囲内である。蛇行流体経路250を画定する表面251は、真直ぐな(例えば、線形の)経路を画定する標準的な表面よりも大きな、例えば、約5倍大きい、10倍大きい、15倍大きい、20倍大きい、またはそれ以上の表面積を有することができる。この実施形態では、図2の例示的な流体経路250を画定する表面251は、約150mm〜約750mmの総表面積を有することができる。また、インスリン製剤が蛇行流体経路250を通って移動するために必要な時間は、真直ぐな(例えば、線形の)経路を通って移動するために必要な時間よりも長い場合があり、例えば、約5倍長い、10倍長い、15倍長い、20倍長い、またはそれ以上長い場合がある。表面251上に収着材240を含めることにより、注入ベース230の流体経路250を通って移動するインスリン製剤は、収着材240への曝露の増加及び/または延長を経験し、インスリン製剤からのフェノール賦形剤の収着及び除去を高めることができる。
【0030】
図3及び図4に示す実施形態では、ラインセットチューブ222の流体経路260は、収着材240を収容するように大きな表面積を有する内面261によって画定される。図3及び図4において、この大きな表面積は、複数の内部障害物、具体的には左側フィンガー264L及び右側フィンガー264Rを表面261上に配置することによって達成される。この実施形態では、図3及び図4の例示的な流体経路260を画定する表面261(フィンガー264L、264Rを含む)は、約0.6インチ〜約2インチの総表面積を有することができる。対向する対になったフィンガー264L、264Rは、ベースコネクタ224の近くに示されるように、長手方向に互いにずれていてもよく、それによって屈曲部または湾曲部262を有する蛇行流体経路260を形成することができる。追加的にまたは代替的に、対向する対になったフィンガー264L、264Rは、図4に示すように、長手方向に互いに整列してもよく、それによって流体経路260内の狭い断面の非円形領域(例えば、フィンガー264L、264Rを有する領域)及び流体経路260の広い断面の領域(例えば、いずれのフィンガー264L、264Rも有しない領域)を形成することができる。フィンガー264L、264R上に及び/または表面261の残りの部分上に収着材240を含めることにより、ラインセットチューブ222の流体経路260を通って移動するインスリン製剤は、収着材240への曝露の増加及び/または延長を経験し、インスリン製剤からのフェノール賦形剤の収着及び除去を高めることができる。
【0031】
図5及び6に示す実施形態では、ラインセットチューブ222’の流体経路260’は、収着材240を収容するように大きな表面積を有する内面261’によって画定される。図6において、この大きな表面積は、複数の内部延長部、具体的には三角形のフィンガー266’を表面261’の周囲に配置して、非円形の星形の流体経路260’を形成することによって達成される。この実施形態では、図5及び図6の例示的な流体経路260’を画定する表面261’(フィンガー266’を含む)は、約7インチ〜約15インチの総表面積を有することができる。各フィンガー266’は、ラインセットチューブ222’の全長に延在してもよいか、または個別のフィンガー266’がラインセットチューブ222’の長さに沿って配置されてもよい。各フィンガー266’がラインセットチューブ222’にわたって螺旋状の経路をたどり、そうすることで経路260’も螺旋状の経路をたどることもまた、本開示の範囲内である。フィンガー266’上に及び/または表面261’の残りの部分に収着材240を含めることにより、ラインセットチューブ222’の流体経路260’を通って移動するインスリン製剤は、収着材240への曝露の増加及び/または延長を経験し、インスリン製剤からのフェノール賦形剤の収着及び除去を高めることができる。
【0032】
図7及び図8に示す実施形態では、ラインセットチューブ222’’の流体経路260’’は、収着材240を収容するように大きな表面積を有する内面261’’によって画定される。図7において、この大きな表面積は、複数の内部障害物、具体的には穴269’’を有する円形のディスク268’’を流体経路260’’内に配置することによって達成される。この実施形態では、図7の例示的な流体経路260’’を画定する表面261’’(ディスク268’’を含む)は、約0.6インチ〜約2インチの総表面積を有することができる。隣接するディスク268’’の穴269’’は、流体経路260’’の蛇行する性質を高めるために、互いにずれて配置されてもよい。図8において、この大きな表面積は、複数の内部星形パドル270’’を流体経路260’’内に配置することによって達成される。この実施形態では、図8の例示的な流体経路260’’を画定する表面261’’(パドル270’’を含む)は、約0.6インチ〜約2インチの総表面積を有することができる。隣接するパドル270’’は、流体経路260’’の蛇行する性質を高めるために、互いにずれて配置されてもよい。ディスク268’’、パドル270’’、及び/または各表面261’’の残りの部分上に収着材240を含めることにより、ラインセットチューブ222’’の流体経路260’’を通って移動するインスリン製剤は、収着材240への曝露の増加及び/または延長を経験し、インスリン製剤からのフェノール賦形剤の収着及び除去を高めることができる。
【0033】
図9及び図10に示す実施形態では、ラインセットチューブ222’’’の流体経路260’’’は、収着材240を収容するように大きな表面積を有する内面261’’’によって画定される。図10において、この大きな表面積は、複数の内壁、具体的には円形壁272’’’をラインセットチューブ222’’’内に配置して、流体経路260’’’を複数の個々の流体経路260A’’’、260B’’’等に分割することによって達成される。この実施形態では、図9及び図10の例示的な流体経路260’’’を画定する表面261’’’(壁272’’’’を含む)は、約1.3インチ〜約4.6インチの総表面積を有することができる。一実施形態では、インスリン製剤は、周囲の円形壁272’’’にごく近接した単一の流体経路(例えば、流体経路260A’’’)を通って移動することができる。別の実施形態では、インスリン製剤がジグザグ構成の複数の相互接続された流体経路(例えば、流体経路260A’’’、260B’’’等)を通って前後に移動するように、流体経路がラインセットチューブ222’’’の端部で相互接続されてもよい。内壁272’’’及び/または表面261’’’の残りの部分上に収着材240を含めることにより、ラインセットチューブ222’’’を通って移動するインスリン製剤は、収着材240への曝露の増加及び/または延長を経験し、インスリン製剤からのフェノール賦形剤の収着及び除去を高めることができる。
【0034】
別の実施形態では、デバイス200は、インスリン製剤を長期間保持するように構成された、拡張された流体ウェル(図示せず)を含むことができる。ウェルは、例えば、デバイス200のラインセットチューブ222、ベースコネクタ224、及び/または注入ベース230の流体経路に沿って位置してもよい。ウェルを画定する表面は、上述したように、収着材240を含むことができる。
【0035】
本開示の別の例示的な実施形態によれば、デバイス200は、インスリン製剤と収着剤240との間の表面積接触、体積接触、及び/または曝露時間を増加させるように構成された、収着材240の1つ以上の濾過機構を含むことができる。濾過機構は、例えば、デバイス200のラインセットチューブ222、ベースコネクタ224、及び/または注入ベース230の流体経路に沿って位置してもよい。他の実施形態では、デバイス200は濾過機構を欠き得るが、なおも収着剤240との十分な接触を達成する。
【0036】
図11に示す実施形態では、ベースコネクタ224及び/または注入ベース230は、マイクロビーズ280の層を含む。マイクロビーズ280自体及び/またはデバイス200の内壁上に収着材240を含めることにより、マイクロビーズ280を通って移動するインスリン製剤は、収着材240への曝露の増加及び/または延長を経験し、インスリン製剤からのフェノール賦形剤の収着及び除去を高めることができる。
【0037】
図12に示す実施形態では、ベースコネクタ224及び/または注入ベース230は、多孔質濾過膜282を含む。膜282は、本質的に繊維質であってもよく、織物または不織であってもよい。膜282自体及び/またはデバイス200の内壁上に収着材240を含めることにより、膜282を通って移動するインスリン製剤は、収着材240への曝露の増加及び/または延長を経験し、インスリン製剤からのフェノール賦形剤の収着及び除去を高めることができる。
【0038】
図13に示す実施形態では、デバイス200のベースコネクタ224及び/または注入ベース230は、マイクロファイバ284の層を含む。マイクロファイバ284自体及び/またはデバイス200の内壁上に収着材240を含めることにより、マイクロファイバ284を通って移動するインスリン製剤は、収着材240への曝露の増加及び/または延長を経験し、インスリン製剤からのフェノール賦形剤の収着及び除去を高めることができる。
【0039】
2.薬物
デバイス200の第2の例示的な特徴は、図14に示すように、炎症を軽減するか、または炎症反応の進行を遅らせるように構成された薬物290を含む。薬物290は、デバイス200の流体経路に沿って位置してもよく、患者への送達のためにデバイス200を通って移動するインスリン製剤中への放出及び溶解のために構成され得る。
【0040】
薬物290は、1つ以上の抗炎症剤を含み得る。例示的な抗炎症剤は、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、アスピリン、プルンバギン、プルメリシン、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサラート、スリンダク、トルメチン、ラパマイシン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ヘパリン、シロリムス、及びパクリタキセルを含む。
【0041】
薬物290はまた、他の治療剤を単独で、または抗炎症剤と組み合わせて含むことができる。例示的な治療剤は、例えば、チロシンキナーゼの阻害剤(例えば、マシチニブ)、マトリセルラータンパク質トロンボスポンジン2(TSP2)の阻害剤、結合組織成長因子(CTGF)を含む線維症刺激性サイトカインの阻害剤、インテグリンファミリーメンバーの受容体の阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)、抗菌剤(例えば銀)及び拡散促進剤(例えば、ヒアルロニダーゼ)を含む。1つの特定の例では、薬物290は、抗炎症剤デキサメタゾンと組み合わせて治療剤VEGFを含むが、他の組み合わせもまた企図される。
【0042】
薬物290を1つ以上のポリマーと組み合わせてブレンドまたはマトリックスを形成することができ、それによってフィルムまたはコーティング特性を改善し、溶解性または溶出特性を改善し、かつ/または患者のSC組織への薬物290の溶出に持続放出効果を付与することができる。例示的なポリマーは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、アルギン酸塩、(ポリ)ホスホリルクロリン、及び(ポリ)エステルアミドを含む。
【0043】
デバイス200への薬物290の適用は異なり得る。ある特定の実施形態では、薬物290は、デバイス200に直接組み込まれてもよい(例えば、埋め込まれてもよい)。他の実施形態では、薬物290は、デバイス200の下にある表面上に適用(例えば、コーティング)されてもよい。他の実施形態では、薬物290は、デバイス200に搭載された濾過機構上に適用されてもよい。
【0044】
デバイス200上の薬物290の位置もまた異なり得る。上述のように、薬物290は、デバイス200の流体経路に沿って位置してもよい。より具体的には、薬物290は、デバイス200のラインセットチューブ222の内側、ベースコネクタ224の内側、注入ベース230の内側、注入カテーテル234の内側、及び/または注入カテーテル234の外側に位置してもよい。図14に示す実施形態では、例えば、薬物290は、外面235を実質的に覆うように注入カテーテル234の外面235上にコーティングされる。図15において、薬物290は、デバイス200を通って移動するインスリン製剤とともに患者のSC組織中に分散し、それによって患者の炎症応答の程度または速度を低減することができる。
【0045】
3.分散型カテーテル
デバイス200の第3の例示的な特徴は、図17に示すように、分散注入カテーテル234’を含む。分散注入カテーテル234’は、インスリン製剤(及びその中に溶解した任意のフェノール賦形剤及び/または薬物290)を、より大きな体積にわたってより拡散した様式で送達するように設計されてもよく、それによってSC組織の傷害をより大きな体積にわたって分布させ、局所的な影響を最小限に抑える。例えば、図16に示すように、単一の位置で(例えば、最遠位端214で)注入カテーテル234から出るのではなく、図17に示すように、インスリン製剤は、外面235’にわたって分布する複数の開口部236’を通って分散注入カテーテル234’から出ることができる。図17の分散注入カテーテル234’は、複数の開口部236’に通じる複数の別個のまたは相互接続された内部通路(図示せず)を有するスポンジ状構造を有することができる。
【0046】
4.実施例
【実施例1】
【0047】
SEBSを用いたm−クレゾールの収着
各試料がインスリン製剤に浸漬された収着材を含む、複数の試料を調製した。各収着材は、450mmの表面積及び375mmの体積を有する成型されたMediprene(登録商標)500450M SEBS構造体であり、表面積対体積の比は1.2mm−1であった。各インスリン製剤は、Eli Lilly and Companyから入手可能なHumalog(登録商標)U−100インスリンリスプロ製剤1mLであった。2分間、4分間、15分間、25分間、60分間、90分間、180分間、6時間、9時間、12時間、24時間、2日間、4日間、6日間、8日間、または10日(240時間)の所定の浸漬時間後、SEBS収着材をそのインスリン製剤から除去した。次いで、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて各インスリン製剤のm−クレゾール濃度を測定した。
【0048】
その結果を図18に示すが、これは、SEBS収着材に曝露されたときに、インスリン製剤中のm−クレゾール濃度が対照試料と比較して経時的に減少したことを示している。1時間後、m−クレゾール濃度は約3.4mg/mLから約0.9mg/mLに減少したが、これは74%の減少を意味する。240時間後、m−クレゾール濃度は約0.3mg/mLに減少したが、これは全体として91%の減少を意味する。
【0049】
SEBS収着材の追加試料を調製し、同様の方法で試験した。収着の結果は、SEBS収着材の表面積及び体積の両方によって影響を受けたことから、m−クレゾールが表面吸着及びバルク吸収の両方によって回収され得ることが示唆される。例えば、追加試料のうちの2つは、上記試料よりも小さい表面積、具体的には82mm及び165mmを有していた。1時間後、これらのより小さい試料は、上記のより大きい試料よりも少ないm−クレゾールを回収し、具体的には82mmサイズの試料では19%の収着、165mmの試料では34%の収着であった。
【実施例2】
【0050】
TPUを用いたm−クレゾールの収着
実施例1を繰り返したが、収着材としてTexin(登録商標)285TPUを用いた。その結果を図19に示すが、これは、TPU収着材に曝露されたときに、インスリン製剤中のm−クレゾール濃度が対照試料と比較して経時的に減少したことを示している。1時間後、m−クレゾール濃度は約3.3mg/mLから約0.9mg/mLに減少したが、これは73%の減少を意味する。240時間後、m−クレゾール濃度は約0.1mg/mLに低下したが、これは97%の減少を意味する。
【0051】
TPU収着材の追加試料を調製し、同様の方法で試験した。収着の結果は、SEBS収着材の表面積及び体積の両方によって影響を受けたことから、m−クレゾールが表面吸着及びバルク吸収の両方によって回収され得ることが示唆される。例えば、追加試料のうちの1つは、上記試料よりも小さい表面積、具体的には150mmを有していた。1時間後、このより小さい試料は、上記のより大きい試料よりも少ないm−クレゾールを回収し、具体的には29%の収着であった。
【0052】
本発明は例示的な設計を有するものとして記載されてきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内でさらに修正されてもよい。したがって、本出願は、本発明の一般的原理を用いた本発明の任意の変形、使用、または適応を包含することが意図される。さらに、本出願は、本発明が関連し、かつ添付の特許請求の範囲の制限内に入る、当該技術分野における既知のまたは慣習的な実施内に含まれる本開示からのそのような逸脱を包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19