特許第6768107号(P6768107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6768107酸−酵素統合制御分解技術によってクロム含有なめし皮廃棄物からコラーゲン凝集物とコラーゲンを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768107
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】酸−酵素統合制御分解技術によってクロム含有なめし皮廃棄物からコラーゲン凝集物とコラーゲンを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/06 20060101AFI20201005BHJP
   C07K 14/78 20060101ALI20201005BHJP
   D01C 3/00 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   C12P21/06
   C07K14/78
   D01C3/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-65839(P2019-65839)
(22)【出願日】2019年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-180401(P2019-180401A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】201810310443.9
(32)【優先日】2018年4月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518427292
【氏名又は名称】シャンシー・ユニヴァーシティ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】SHAANXI UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シュエチュアン
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,メンディ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シンファ
(72)【発明者】
【氏名】リャン,チェンユン
(72)【発明者】
【氏名】ユウ,オウヤン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,マンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ズ,シン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,クィンシン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジ
(72)【発明者】
【氏名】ザン,フイジェ
(72)【発明者】
【氏名】クィアン,タオタオ
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101260420(CN,A)
【文献】 特開昭53−108154(JP,A)
【文献】 特表2011−525197(JP,A)
【文献】 特表2001−508301(JP,A)
【文献】 米国特許第05670369(US,A)
【文献】 特開2017−222633(JP,A)
【文献】 特開平05−125100(JP,A)
【文献】 BANERJEE, P. et al.,Bio-mimetic mineralization potential of collagen hydrolysate obtained from chromium tanned leather waste,Materials Science & Engineering. C. Materials for Biological Applications,2015年,Vol.49,P.338-347
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/78
C12P 21/06
C14B 1/00−99/00
C14C 1/00−99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、クロム含有なめし皮廃棄物からコラーゲンを抽出する方法。
(1)酸脱色:前記クロム含有なめし皮廃棄物を、1.0〜5.0mol/L塩酸溶液に0.5〜3時間浸漬し;前記クロム含有なめし皮廃棄物を、水で3〜5回、pH=5〜7にまで洗浄し;前記クロム含有なめし皮廃棄物を、0.1〜1.0mol/Lシュウ酸溶液に入れる、ここで、前記シュウ酸溶液の重量は、前記クロム含有なめし皮廃棄物の乾燥重量の20〜50倍である;前記クロム含有なめし皮廃棄物と前記シュウ酸溶液との混合物をホモジナイザに移し;前記ホモジナイザ内で前記混合物を30〜50℃で5〜48時間攪拌し;前記混合物を5000〜20000Gで遠心分離して第1沈殿物を収集し;当該第1沈殿物を0.1〜1.0mol/Lシュウ酸ナトリウム溶液中に拡散させる、ここで、前記シュウ酸ナトリウム溶液の重量は、前記クロム含有なめし皮廃棄物の乾燥重量の20〜50倍である;前記第1沈殿物と前記シュウ酸ナトリウム溶液との混合物を30〜50℃で24〜120時間攪拌し;前記混合物を5000〜20000Gで遠心分離して第2沈殿物を収集する、
(2)前記第2沈殿物を、0.1〜1.0mol/L酢酸−クエン酸溶液に入れる、ここで、前記酢酸−クエン酸溶液の重量は、前記クロム含有なめし皮廃棄物の乾燥重量の20〜50倍である;前記第2沈殿物と前記酢酸−クエン酸溶液との混合物を前記ホモジナイザに移し、当該混合物を攪拌する;第1の0.1〜1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を前記混合物にpH=7.0〜7.5まで添加する;1.0mol/L硫酸アンモニウム溶液を前記混合物に添加して、10〜24時間塩析する;前記混合物を5000〜20000Gで15〜30分間遠心分離して第3沈殿物を収集し;当該第3沈殿物を第1の0.1〜1.0mol/L酢酸溶液中に拡散させる、ここで、前記酢酸溶液の重量は、前記クロム含有なめし皮廃棄物の乾燥重量の20〜50倍である;蒸留水中で10〜48時間、透析し、凍結乾燥してコラーゲン凝集物を得る、そして
(3)前記コラーゲン凝集物を切断し;前記コラーゲン凝集物を第2の0.1〜1.0mol/L酢酸溶液に入れる、ここで、前記酢酸溶液の重量は、前記コラーゲン凝集物の20〜50倍である;コラーゲン凝縮物と酢酸溶液との前記混合物にペプシンを添加する、ここで、前記ペプシンの重量は前記コラーゲン凝集物の重量の0.5%〜2%である;前記混合物を、超臨界二酸化炭素反応器中で、0〜42℃、80〜100気圧で5〜24時間反応させ;第2の0.1〜1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を前記混合物にpH=7.0〜7.5まで添加し;1.0〜1.5mol/L塩化ナトリウム溶液を添加して10〜24時間塩析し;前記混合物を、5000〜20000Gで15〜30分間遠心分離して第4沈殿物を収集し;当該第4沈殿物を0.1〜0.5mol/L酢酸溶液中で拡散し;蒸留水中で10〜48時間、透析し、凍結乾燥して前記コラーゲンを得る。
【請求項2】
前記クロム含有なめし皮廃棄物は、牛皮、羊皮もしくは豚皮から切断した物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(2)の前記酢酸−クエン酸溶液は、20:1〜2:1の酢酸−クエン酸のモル比を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記超臨界二酸化炭素反応器中での前記反応は、40〜42℃、80〜100気圧で5〜24時間行われる請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ここにその全体を参考文献として合体させる、2018年4月9日出願の中国出願第201810310443.9号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、皮革化学およびエンジニアリングの分野、より具体的には、クロム含有なめし皮廃棄物からコラーゲン凝集物およびコラーゲンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クロム含有なめし皮廃棄物は、中国において一年に300,000トン以上にのぼると推定されている。皮革産業は、より厳しい環境保護規制を受けている。クロム含有なめし皮廃棄物のリサイクルはこれまで常に皮革産業における重要な研究課題であったし、また、それは現在の皮革産業の持続可能な発展のための唯一の道でもある。なめし皮廃棄物からコラーゲンを抽出し、このコラーゲンを処理して下流側製品(たとえば、たん白質フィルタ、木材接着剤、紙、など)へと処理することは、グリーンケミストリと持続可能な発展との要件を満たす。近年、コラーゲンに関する研究の深まりととともに、クロム含有なめし皮廃棄物から調製されたコラーゲンの利用分野は大きく拡大している。
【0004】
現在、クロム含有なめし皮廃棄物からのコラーゲンの抽出には、まず、そのクロム含有なめし皮廃棄物の脱色が必要である。この脱色は、酸法、アルカリ法、酸化法、酵素法などが含まれる。一般的に使用されている方法は、酸法およびアルカリ法である。酸法の場合、脱色時間が長く、脱色効率は低い。アルカリ法の場合、脱色効率は高いが、形成されるクロム含有スラッジによって二次汚染が生じ、コラーゲン構造がダメージを受ける。酸法、アルカリ法、酵素法など、脱色後に廃棄物残滓からコラーゲンを抽出するための多くの方法がある。これらの方法は単体または組み合わせで使用することができる。皮革産業において、アルカリ法と酵素法との組み合わせが使用されてきたが、アルカリ法によってコラーゲン構造に大きなダメージが生じ、小分子量のコラーゲンしか得られない。したがって、クロム含有なめし皮廃棄物からコラーゲンを抽出する方法には、低脱色効率や得られるコラーゲンの低い分子量(分子量2000ダルトン未満)といった問題が未だに存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロム含有なめし皮廃棄物からコラーゲンを抽出することの上述した問題に鑑みて、本発明は、強酸処理、機械的均質化、勾配酸方法によるインサイチュ(in-situ)脱色、弱酸処理、機械的拡散、精製、およびその他の手段を含む方法を構成する。この方法は、脱色時間を大幅に短縮し、脱色効率を改善する。そして、本方法は、反応媒体として、超臨界CO流体を使用して超臨界反応器中でコラーゲン凝集物を(基材として)反応させることを含む。従来の方法と比較して、この方法によって得られるコラーゲンは、天然コラーゲンの構造と性質を保持しており、様々な用途に使用できる。このコラーゲンは、また、分子量が大きく、純度が高く、抽出率も高い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施例において、本発明は、クロム含有なめし皮廃棄物からコラーゲンを抽出する方法を提供する。当該方法は、以下の工程を含む。
(1)酸脱色:これは、クロム含有なめし皮廃棄物を、1.0〜5.0mol/L塩酸溶液に0.5〜3時間浸漬し;クロム含有なめし皮廃棄物を、水で3〜5回、pH=5〜7になるまで洗浄し;クロム含有なめし皮廃棄物を、0.1〜1.0mol/Lシュウ酸溶液に入れる、ここで、シュウ酸溶液の重量は、クロム含有なめし皮廃棄物の乾燥重量の20〜50倍である;クロム含有なめし皮廃棄物とシュウ酸溶液との混合物をホモジナイザに移し;ホモジナイザ内で混合物を30〜50℃で5〜48時間攪拌し;混合物を5000〜20000Gで遠心分離して第1沈殿物を収集し;当該第1沈殿物を0.1〜1.0mol/Lシュウ酸ナトリウム溶液中に拡散させる、ここで、シュウ酸ナトリウム溶液の重量は、クロム含有なめし皮廃棄物の乾燥重量の20〜50倍である;第1沈殿物とシュウ酸ナトリウム溶液との混合物を30〜50℃で24〜120時間攪拌し;混合物を500020000Gで遠心分離して第2沈殿物を収集する;
(2)第2沈殿物を、0.1〜1.0mol/L酢酸−クエン酸溶液に入れる、ここで、酢酸−クエン酸溶液の重量は、クロム含有なめし皮廃棄物の乾燥重量の20〜50倍である;第2沈殿物と酢酸−クエン酸溶液との混合物をホモジナイザに移し、当該混合物を攪拌する;第1の0.1〜1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物にpH=7.0〜7.5になるまで添加する;1.0mol/L硫酸アンモニウム溶液を混合物に添加して、10〜24時間塩析する;混合物を5000〜20000Gで15〜30分間遠心分離して第3沈殿物を収集し;当該第3沈殿物を第1の0.1〜1.0mol/L酢酸溶液中に拡散させる、ここで、酢酸溶液の重量は、クロム含有なめし皮廃棄物の乾燥重量の20〜50倍である;蒸留水中で10〜48時間、透析し、凍結乾燥してコラーゲン凝集物を得る、そして
(3)コラーゲン凝集物を切断し;コラーゲン凝集物を第2の0.1〜1.0mol/L酢酸溶液に入れる、ここで、酢酸溶液の重量は、コラーゲン凝集物の20〜50倍である;コラーゲン凝縮物と酢酸溶液との混合物にペプシンを添加する、ここで、ペプシンの重量はコラーゲン凝集物の重量の0.5〜2%である;混合物を、超臨界二酸化炭素反応器中で、40〜42℃、80〜100気圧で5〜24時間反応させ;第2の0.1〜1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物にpH=7.0〜7.5になるまで添加し;1.0〜1.5mol/L塩化ナトリウム溶液を添加して10〜24時間塩析し;混合物を、5000〜20000Gで15〜30分間遠心分離して第4沈殿物を収集し;当該第4沈殿物を0.1〜0.5mol/L酢酸溶液中で拡散し;蒸留水中で10〜48時間、透析し、凍結乾燥してコラーゲンを得る。
【0007】
別の実施例において、クロム含有なめし皮廃棄物は、牛皮、羊皮もしくは豚皮から切断した物である。
【0008】
別の実施例において、工程(2)の酢酸−クエン酸溶液は、20:1〜2:1の酢酸−クエン酸のモル比を有する。
【0009】
別実施例において、超臨界二酸化炭素反応器中での反応は、40〜42℃、80〜100気圧で5〜24時間行われる。
【0010】
従来の方法と比較して、本発明の方法には以下の利点がある。
【0011】
(1)本発明の方法は、強酸処理、機械的均質化、勾配酸方法によるインサイチュ(in-situ)脱色、を含む。これは脱色時間を大幅に短縮し、脱色効率を改善する。
【0012】
(2)本発明の方法によって調製されるコラーゲン凝集物は、コラーゲンファイバおよびコラーゲンファイバ束からなり、天然コラーゲンの構造および性質を保持している。コラーゲンは、優れた物理的特性、熱安定性、生体活性、および生分解性を有する。
【0013】
(3)本発明の方法は、酸−酵素法を使用して、超臨界CO流体反応媒体中で、コラーゲン凝集物を超臨界流体反応器内で反応させることを含む。これによって、コラーゲンの高純度と高抽出率とを同時には達成することができなかったという技術的問題を効果的に解決した。
【0014】
(4)本発明の方法によって調製されたコラーゲンは、天然コラーゲンの構造と性質を保持しており、従来方法によって調製された物よりも大きな分子量(10,000ダルトン以上)を有する。当該コラーゲンは多様な用途で使用することができる。
【0015】
コラーゲンの天然構造、コラーゲンの分子量は、従来方法によって調製されたコラーゲンよりも大きく(コラーゲンの分子量は10K以上である)、その総合性能はより優れており、用途範囲はより広い。
【0016】
なお、一般的記載と以下の詳細記載とは例示的、説明的なものであって、請求されている本発明の更なる説明を提供することを意図するものであると理解される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
その具体例が添付の図面に図示されている本発明の実施例について以下詳細に説明する。
【0018】
〔実施例1〕
(1)酸インサイチュ脱色:200gのクロム含有なめし皮廃棄物を1.0mol/L塩酸溶液中に1時間浸漬し、水で5回、pH=6.7になるまで洗浄した。クロム含有なめし皮廃棄物を、5Lの0.5mol/Lシュウ酸溶液に入れた。クロム含有なめし皮廃棄物とシュウ酸溶液との混合物をホモジナイザに移し、40℃で48時間攪拌した。混合物を5000Gで遠心分離し、沈殿物を収集した。沈殿物を5Lの1.0mol/Lシュウ酸ナトリウム溶液中に拡散させた。沈殿物とシュウ酸ナトリウム溶液との混合物を30℃で48時間攪拌し、20000Gで遠心分離し、沈殿物を収集した。
【0019】
(2)工程(1)の沈殿物を、4Lの0.2mol/L酢酸−クエン酸(10:1のモル比)中に入れ、第2沈殿物と酢酸−クエン酸の混合物をホモジナイザに写し、低温(たとえば0℃)で攪拌した。1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物に添加し混合物のpHを7.0に調節した。混合物に1.0mol/L硫酸アンモニウム溶液を添加し、混合物を10時間塩析した。混合物を20000Gで30分間遠心分離し、沈殿物を収集した。沈殿物を、4Lの0.1mol/L酢酸溶液中に拡散し、蒸留水中で10時間透析し、凍結乾燥してコラーゲン凝集物を得た。
【0020】
(3)工程(2)のコラーゲン凝集物を細片に切断し、2Lの0.1mol/L酢酸溶液に入れた。コラーゲン凝集物の重量の0.5%のペプシンを、コラーゲン凝集物と酢酸溶液との混合物に添加した。次に、この混合物を超臨界二酸化炭素反応器に移した。反応媒体として超臨界CO流体を添加し、その混合物を42℃、85気圧で24時間反応させた。反応完了後、1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物に添加してpHを7.0に調節した。次に、1.0mol/L塩化ナトリウム溶液を混合物に添加し、混合物を10時間、塩析した。混合物を5000Gで30分間遠心分離して、沈殿物を収集した。当該沈殿物を、3Lの0.5mol/L酢酸溶液中に拡散させた。pH調節、塩析、遠心分離、および拡散の諸工程を、1回反復した。混合物を、蒸留水中で48時間透析し、凍結乾燥して76gのコラーゲン、38%の収率を得た。当該コラーゲンの分子量の範囲は、11.3K〜50.6Kダルトンであり、中間分子量は35.2Kダルトンである。
【0021】
〔実施例2〕
(1)酸インサイチュ脱色:200gのクロム含有なめし皮廃棄物を1.0mol/L塩酸溶液中に1時間浸漬し、水で5回、pH=6.7になるまで洗浄した。クロム含有なめし皮廃棄物を、5Lの0.5mol/Lシュウ酸溶液に入れた。クロム含有なめし皮廃棄物とシュウ酸溶液との混合物をホモジナイザに移し、40℃で48時間攪拌した。混合物を、10000Gで遠心分離し、沈殿物を収集した。沈殿物を5Lの1.0mol/Lシュウ酸ナトリウム溶液中に拡散させた。沈殿物とシュウ酸ナトリウム溶液との混合物を50℃で48時間攪拌し、20000Gで遠心分離し、沈殿物を収集した。
【0022】
(2)工程(1)の沈殿物を、5Lの0.5mol/L酢酸−クエン酸(10:1のモル比)中に入れ、第2沈殿物と酢酸−クエン酸の混合物をホモジナイザに移し、低温(たとえば0℃)で攪拌した。0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物に添加し、混合物のpHを7.0に調節した。混合物に0.5mol/L硫酸アンモニウム溶液を添加し、混合物を10時間塩析した。混合物を10000Gで30分間遠心分離し、沈殿物を収集した。沈殿物を、5Lの0.5mol/L酢酸溶液中に拡散し、蒸留水中で10時間透析し、凍結乾燥してコラーゲン凝集物を得た。
【0023】
(3)工程(2)のコラーゲン凝集物を細片に切断し、3Lの0.1mol/L酢酸溶液に入れた。コラーゲン凝集物の重量の2%のペプシンを、コラーゲン凝集物と酢酸溶液との混合物に添加した。次に、この混合物を超臨界二酸化炭素反応器に移した。反応媒体として超臨界CO流体を添加し、その混合物を40℃、80気圧で12時間反応させた。反応完了後、0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物に添加してpHを7.0に調節した。次に、1.0mol/L塩化ナトリウム溶液を混合物に添加し、混合物を10時間、塩析した。混合物を5000Gで30分間遠心分離して、沈殿物を収集した。当該沈殿物を、3Lの0.1mol/L酢酸溶液中に拡散させた。pH調節、塩析、遠心分離、および拡散の諸工程を、1回反復した。混合物を、蒸留水中で48時間透析し、凍結乾燥して82gのコラーゲン、41%の収率を得た。当該コラーゲンの分子量の範囲は、15.7K〜40.3Kダルトンであり、中間分子量は31.7Kダルトンである。
【0024】
〔実施例3〕
(1)酸インサイチュ脱色:200gのクロム含有なめし皮廃棄物を1.0mol/L塩酸溶液中に1時間浸漬し、水で5回、pH=6.7になるまで洗浄した。クロム含有なめし皮廃棄物を、5Lの0.5mol/Lシュウ酸溶液に入れた。クロム含有なめし皮廃棄物とシュウ酸溶液との混合物をホモジナイザに移し、40℃で48時間攪拌した。混合物を、10000Gで遠心分離し、沈殿物を収集した。沈殿物を5Lの1.0mol/Lシュウ酸ナトリウム溶液中に拡散させた。沈殿物とシュウ酸ナトリウム溶液との混合物を50℃で24時間攪拌し、20000Gで遠心分離し、沈殿物を収集した。
【0025】
(2)工程(1)の沈殿物を、5Lの0.5mol/L酢酸−クエン酸(10:1のモル比)中に入れ、第2沈殿物と酢酸−クエン酸の混合物をホモジナイザに移し、低温(たとえば0℃)で攪拌した。0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物に添加し、混合物のpHを7.0に調節した。混合物に0.5mol/L硫酸アンモニウム溶液を添加し、混合物を10時間塩析した。混合物を10000Gで30分間遠心分離し、沈殿物を収集した。沈殿物を、5Lの0.5mol/L酢酸溶液中に拡散し、蒸留水中で10時間透析し、凍結乾燥してコラーゲン凝集物を得た。
【0026】
(3)工程(2)からのコラーゲン凝集物を細片に切断し、3Lの0.1mol/L酢酸溶液に入れた。コラーゲン凝集物の重量の1.5%のペプシンを、コラーゲン凝集物と酢酸溶液との混合物に添加した。次に、この混合物を超臨界二酸化炭素反応器に移した。
反応媒体として超臨界CO流体を添加し、その混合物を41℃、90気圧で12時間反応させた。反応完了後、0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物に添加してpHを7.0に調節した。次に、1.0mol/L塩化ナトリウム溶液を混合物に添加し、混合物を10時間、塩析した。混合物を5000Gで30分間遠心分離して、沈殿物を収集した。当該沈殿物を、3Lの0.5mol/L酢酸溶液中に拡散させた。pH調節、塩析、遠心分離、および拡散の諸工程を、1回反復した。混合物を、蒸留水中で36時間透析し、凍結乾燥して88.8gのコラーゲン、39.6%の収率を得た。当該コラーゲンの分子量の範囲は、22.1K〜49.0Kダルトンであり、中間分子量は34.6Kダルトンである。
【0027】
〔実施例4〕
a.コラーゲン抽出に影響する要素に基づいて、単一要素実験を設計した。クロム含有率とコラーゲン抽出率とを測定することによって、脱色における酸処理(ホモジナイザ内、シュウ酸溶液)の最適時間は25時間であった。その結果を表1に示す。
【0028】
表1:コラーゲンのクロム含有量および抽出率
【表1】
【0029】
b.コラーゲン抽出の単一要因を最適化することによって、クロム含有なめし皮廃棄物からコラーゲンを抽出する、以下の工程を含む、最適方法が得られた。
【0030】
(1)酸インサイチュ脱色:200gのクロム含有なめし皮廃棄物を1.0mol/L塩酸溶液中に1時間浸漬し、水で5回、pH=6.7になるまで洗浄した。クロム含有なめし皮廃棄物を、5Lの0.5mol/Lシュウ酸溶液に入れた。クロム含有なめし皮廃棄物とシュウ酸溶液との混合物をホモジナイザに移し、40℃で25時間攪拌した。混合物を、10000Gで遠心分離し、沈殿物を収集した。沈殿物を5Lの1.0mol/Lシュウ酸ナトリウム溶液中に拡散させた。沈殿物とシュウ酸ナトリウム溶液との混合物を50℃で24時間攪拌し、20000Gで遠心分離し、沈殿物を収集した。
【0031】
(2)工程(1)の沈殿物を、5Lの0.5mol/L酢酸−クエン酸(20:1のモル比)中に入れ、第2沈殿物と酢酸−クエン酸の混合物をホモジナイザに移し、低温(たとえば0℃)で攪拌した。0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物に添加し、混合物のpHを7.0に調節した。混合物に0.5mol/L硫酸アンモニウム溶液を添加し、混合物を10時間塩析した。混合物を10000Gで30分間遠心分離し、沈殿物を収集した。沈殿物を、5Lの0.5mol/L酢酸溶液中に拡散し、蒸留水中で10時間透析し、凍結乾燥してコラーゲン凝集物を得た。
【0032】
(3)工程(2)のコラーゲン凝集物を細片に切断し、3Lの0.1mol/L酢酸溶液に入れた。コラーゲン凝集物の重量の1.5%のペプシンを、コラーゲン凝集物と酢酸溶液との混合物に添加した。次に、この混合物を超臨界二酸化炭素反応器に移した。反応媒体として超臨界CO流体を添加し、その混合物を41℃、90気圧で12時間反応させた。反応完了後、0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液を混合物に添加してpHを7.0に調節した。次に、1.0mol/L塩化ナトリウム溶液を混合物に添加し、混合物を10時間、塩析した。混合物を5000Gで30分間遠心分離して、沈殿物を収集した。当該沈殿物を、3Lの0.5mol/L酢酸溶液中に拡散させた。pH調節、塩析、遠心分離、および拡散の諸工程を1回、反復した。混合物を、蒸留水中で36時間透析し、凍結乾燥して79.1gのコラーゲン、44.4%の収率を得た。当該コラーゲンの分子量の範囲は、19.3K〜48.8Kダルトンであり、中間分子量は32.7Kダルトンである。
【0033】
本発明の要旨または範囲から逸脱することなく、本発明において様々な改変および変更を行うことが可能であることが当業者にとって明白であろう。したがって、本発明は、それらが添付の請求項の範囲およびそれらの均等物に含まれる限りにおいて本発明のその様な改変および変更をカバーするものであることが意図される。