(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768128
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】柱状フロー・ガスのサンプリングおよび測定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20201005BHJP
A61B 5/097 20060101ALI20201005BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20201005BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20201005BHJP
A61M 16/06 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
G01N1/02 W
A61B5/097
G01N1/22 L
G01N33/497 A
A61M16/06 C
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-144373(P2019-144373)
(22)【出願日】2019年8月6日
(62)【分割の表示】特願2016-537919(P2016-537919)の分割
【原出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2020-8588(P2020-8588A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年8月6日
(31)【優先権主張番号】61/872,270
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514156105
【氏名又は名称】キャプニア, インク.
【氏名又は名称原語表記】Capnia,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ セルナ, ペドロ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォンドカ, アンソニー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ブランテ, ロバート
【審査官】
北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06799575(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0257550(US,A1)
【文献】
特表2009−545408(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0086254(US,A1)
【文献】
特表2010−502995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02
G01N 1/22
G01N 33/497
A61M 16/06
A61B 5/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気被検物を測定するための装置であって、
鼻プロングと、
インレットおよびアウトレットを備えたノーズピースと、
前記鼻プロングから前記ノーズピースのインレットまで延びる第1のフロー・チャネルと、
前記ノーズピースの内部にあり、前記ノーズピースのインレットから前記ノーズピースのアウトレットまで延びる第2のフロー・チャネルと、
前記ノーズピースのアウトレットから呼気測定システムまで延びる第3のフロー・チャネルと、を備え、前記第3のフロー・チャネルは親水性フィルタを有し、
前記第1、第2および第3のフロー・チャネルは、断面が一定のまま呼気測定システムまで延びるガス流路を形成し、前記ノーズピース内のガス流路は、呼気測定システムによる分析の前にガスの混合を生じさせないように、拡大された部分およびデッドスペース体積を有していない装置。
【請求項2】
前記第1、第2および第3のフロー・チャネルが連続的な管の一部を形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記連続的な管は、0.01インチ(0.0254センチメートル)と0.06インチ(0.1524センチメートル)との間の断面直径を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記断面直径は、0.02インチ(0.0508センチメートル)と0.04インチ(0.1016センチメートル)との間である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ノーズピースのアウトレットの反対側において前記ノーズピースに接続されたサポートをさらに備えており、前記サポートは前記第2のフロー・チャネルに流体的に接続されていない、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記サポートと前記第3のフロー・チャネルとが接続され、前記サポートと前記第3のフロー・チャネルと前記ノーズピースとがループを構成する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記サポートと前記第3のフロー・チャネルとを結合する接続部をさらに備えており、前記ループは前記接続部を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1、第2、および第3のフロー・チャネルは、直線状のガス・フロー・プロファイルがそれらを通過するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記フロー・チャネルの断面直径は、0.01インチ(0.0254センチメートル)と0.06インチ(0.1524センチメートル)との間である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記フロー・チャネルの断面直径は、0.02インチ(0.0508センチメートル)と0.04インチ(0.1016センチメートル)との間である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
呼気被検物を測定するための方法であって、
鼻プロングを患者に挿入するステップを含んでおり、
第1のフロー・チャネルは、前記鼻プロングからノーズピースのインレットまで延び、
第2のフロー・チャネルは、前記ノーズピースのインレットからノーズピースのアウトレットまで延びており、
第3のフロー・チャネルは、前記ノーズピースのアウトレットから呼気測定システムまで延びており、前記第3のフロー・チャネルは親水性フィルタを有し、
前記第1、第2および第3のフロー・チャネルは、断面が一定のまま呼気測定システムまで延びるガス流路を形成し、前記ノーズピース内のガス流路は、呼気測定システムによる分析の前にガスの混合を生じさせないように、拡大された部分およびデッドスペース体積を有しておらず、
患者から前記鼻プロング及び前記第1、第2および第3のフロー・チャネルを介して呼気サンプルを収集するステップと、
前記呼気サンプルを、前記親水性フィルタを通過させるステップと、
前記呼気サンプル中の前記呼気被検物を、前記呼気測定システムを用いて測定するステップと、を含む方法。
【請求項12】
前記第1、第2および第3のフロー・チャネルが連続的な管の一部を形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記連続的な管は、0.01インチ(0.0254センチメートル)と0.06インチ(0.1524センチメートル)との間の断面直径を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記断面直径は、0.02インチ(0.0508センチメートル)と0.04インチ(0.1016センチメートル)との間である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ノーズピースのアウトレットの反対側において前記ノーズピースに接続されたサポートをさらに備えており、前記サポートは前記第2のフロー・チャネルに流体的に接続されていない、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記サポートと前記第3のフロー・チャネルとが接続され、前記サポートと前記第3のフロー・チャネルと前記ノーズピースとがループを構成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サポートと前記第3のフロー・チャネルとを結合する接続部をさらに備えており、前記ループは前記接続部を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1、第2、および第3のフロー・チャネルは、直線状のガス・フロー・プロファイルがそれらを通過するように構成されている、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記フロー・チャネルの断面直径は、0.01インチ(0.0254センチメートル)と0.06インチ(0.1524センチメートル)との間である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フロー・チャネルの断面直径は、0.02インチ(0.0508センチメートル)と0.04インチ(0.1016センチメートル)との間である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月30日に出願された米国仮出願第61/872,270号の利益を主張しており、この仮出願の内容は全体として本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、呼気サンプルに関して行われる診断検査の分野に関し、さらに詳しくは、呼気サンプルの正確なサンプル収集と正確なサンプル測定とを行えるようにするために、呼気検査システムの気体力学と流体力学とを最適化することに関する。
【背景技術】
【0003】
呼気の一部分を分離して測定する呼気分析デバイスは、通常、使い捨ての患者インターフェースと、患者インターフェースからサンプルを引き出しそのサンプルを分析するための計器とを有する。患者から引き出される呼気は、配管、コネクタ、弁、フィルタおよびセンサなど、患者インターフェースと計器との両方における様々な構成要素を通過して移動することが必要である。しかし、呼気サンプルの異なる構成部分(たとえば、呼気と吸気との開始、中間および終端)が、異なるガス部分のカラムであって、各カラムが先行カラムの後にあり、隣接するカラムの間の境界が境界ゾーンまたは領域ではなく離散的な境界線の形態をとるようなカラムとして、システムを通過して移動することが望まれる。システムは、隣接する部分からのガスが相互に混合せず、境界領域ではなくて境界線が存在するように、設計されるべきである。これを達成するひとつの方法は、システム全体を通過する断面の狭い流体経路を有することである。しかし、一定のサンプリング流量、乱流、抗力およびそれ以外の因子など、他の競合する設計制約条件があるため、この断面の抵抗性が高すぎてはならない。適切なシステムは、狭いフロー経路チャネルに対する必要性と最終的な所望の結果を達成するための最小限の抵抗性に対する必要性とを均衡させるのである。
【0004】
システムを通過して移動する2つのガス部分の間の境界が離散的な直線であり得る場合には、関心対象であるたとえば呼気の終端などの呼気の部分が、その捕捉および隔離が可能だと仮定するならば、前端および後端が他の呼気部分で汚染され得ないことを心配することなく、その全体を理論的に測定することが可能である。もうひとつのオプションは、関心対象の部分のごく中心のみを測定すること、たとえば、その部分の冒頭の25%と終端の25%とを排除し、中間の50%のみを分析することである。これによって、境界領域のために汚染の対象となり得る前端および後端におけるサンプルの部分を用いるのを回避することになり、さらに、このタイプのシステムは、終末サンプルの中間部分から純粋な終末ガスを測定することが理論的に可能となり得る。しかし、呼気のサンプルを収集し測定するために要求されるシステムは、実質的に動的な外部および内部環境で動作するのであって、認識および制御が困難な可変の条件が存在するのであるから、可能であるならば、混合を完全に回避するのが最善である。他のガスと混合された境界を含むサンプルが測定される場合には、その結果は汚染されている可能性が高く、関心対象のガス部分よりも周囲の空気を多く含むガスと混合されているために希釈化されているか、または、逆に、調査対象のガスによって濃縮されていることになる。混合を回避することにより、調査対象であるガスに関する真実の純粋で正確な読み取りが保証される。同一の開示および原理が、息における非ガス状の被検体を含む他の被検体に適用され、さらに、臨床的な状態および症候群の宿主としての気管支樹における異なる部分からのガスからの被検体を測定することに適用される。本明細書では、終末呼気検査が、例示的目的のために用いられる。
【0005】
混合という問題に対する解決策は、以下の図面に記載されているように、システムのすべての構成部分を通じて適切な断面積を維持するために、構成要素中の流体経路において従来は用いられたことのない新規な特徴を用いることである。
本発明の目的を達成するための例示的な装置及び方法は、次の通りである。
(1)本発明の装置は、呼気被検物を測定するための装置であって、
鼻プロングと、
インレットおよびアウトレットを備えたノーズピースと、
鼻プロングからノーズピースのインレットまで延びる第1のフロー・チャネルと、
ノーズピースの内部にあり、ノーズピースのインレットからノーズピースのアウトレットまで延びる第2のフロー・チャネルであって、その断面がノーズピースのインレットとノーズピースのアウトレットとの間で実質的に一定である、第2のフロー・チャネルと、
ノーズピースのアウトレットから呼気測定システムまで延びる第3のフロー・チャネルと、を備える装置である。
(2)前記装置において、さらに、すべての3つのフロー・チャネルが連続的な管の一部を形成しても良い。
(3)前記装置において、さらに、連続的な管は、0.01インチと0.06インチとの間の断面直径を有しても良い。
(4)前記装置において、さらに、断面直径は、0.02インチと0.04インチとの間であっても良い。
(5)前記装置は、ノーズピースのアウトレットの反対側においてノーズピースに接続されたサポートをさらに備えており、サポートは第2のフロー・チャネルに流体的に接続されていなくても良い。
(6)前記装置において、さらに、サポートと第3のチャネルとが接続され、サポートと第3のチャネルとノーズピースとがループを構成しても良い。
(7)前記装置は、サポートと第3のチャネルとを結合する接続部をさらに備えており、ループは接続部を含んでも良い。
(8)前記装置において、また、第1、第2、および第3のフロー・チャネルは、直線状のガス・フロー・プロファイルがそれらを通過するように構成されていても良い。
(9)前記装置において、また、フロー・チャネルの断面直径は、0.01インチと0.06インチとの間であっても良い。
(10)前記装置において、さらに、フロー・チャネルの断面直径は、0.02インチと0.04インチとの間であっても良い。
(11)本発明の方法は、呼気被検物を測定するための方法であって、
鼻プロングを患者に挿入するステップを含んでおり、
第1のフロー・チャネルは、鼻プロングからノーズピースのインレットまで延び、
第2のフロー・チャネルは、ノーズピースのインレットからノーズピースのアウトレットまで延びており、第2のフロー・チャネルの断面がノーズピースのインレットとノーズピースのアウトレットとの間で実質的に一定であり、
第3のフロー・チャネルは、ノーズピースのアウトレットから呼気測定システムまで延びる方法である。
(12)前記方法において、さらに、すべての3つのフロー・チャネルが連続的な管の一部を形成していても良い。
(13)前記方法において、さらに、連続的な管は、0.01インチと0.06インチとの間の断面直径を有していても良い。
(14)前記方法において、さらに、断面直径は、0.02インチと0.04インチとの間であっても良い。
(15)前記方法において、また、ノーズピースのアウトレットの反対側においてノーズピースに接続されたサポートをさらに備えており、サポートは第2のフロー・チャネルに流体的に接続されていなくても良い。
(16)前記方法において、さらに、サポートと第3のチャネルとが接続され、サポートと第3のチャネルとノーズピースとがループを構成していても良い。
(17)前記方法において、さらに、サポートと第3のチャネルとを結合する接続部をさらに備えており、ループは接続部を含んでも良い。
(18)前記方法において、また、第1、第2、および第3のフロー・チャネルは、直線状のガス・フロー・プロファイルがそれらを通過するように構成されていても良い。
(19)前記方法において、さらに、フロー・チャネルの断面直径は、0.01インチと0.06インチとの間であっても良い。
(20)前記方法において、さらに、フロー・チャネルの断面直径は、0.02インチと0.04インチとの間であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1a】計器と着脱可能な態様で取り付けることができる患者インターフェースとを含む概略的な全体図であり、患者ガス・サンプル収集経路がアクティブになっているシステムを示す。
【
図1b】計器と着脱可能な態様で取り付けることができる患者インターフェースとを含む概略的な全体図であり、周囲ガスおよびガス分析経路がアクティブになっているシステムを示す。
【
図2】
図1に示された患者インターフェースの詳細Aを通過して移動する呼吸ガスの部分の概略図である。
【
図3】呼気からのガスを測定する時刻との関係で呼気被検物センサからの信号応答を記載するグラフであり、従来技術に対する実施形態の測定精度の改善を示す。
【
図4】呼気測定のために従来技術による患者インターフェースで用いられるフィルタの断面図である。
【
図5】呼気の部分が通過して流れる
図4のフィルタの図解であり、フィルタを通過する理論的に一様なフロー・プロファイルを示しているが、現実的には、そのようなものは存在しない。
【
図6】呼気の部分が通過して流れる
図4のフィルタの図解であり、従来技術を用いた場合に現実に生じるように、容積の膨張に起因して他の部分との混合が生じている。
【
図7】同心円状の親水性フィルタとフローに垂直な疎水性フィルタとを含む新規なフィルタの側方断面図である。
【
図8】曲がったフロー・チャネル・フィルタ・カートリッジの直線部分に配置された軸方向に直線状の同心円フィルタを含む新規なフィルタの側方断面図である。
【
図9】患者インターフェースの患者端におけるノーズピースの破線を含む前面図であり、この部分の全体を通じて、ガス・フロー・チャネルのサイズが一定であることを示す。
【
図10】従来型の鼻カニューレ・デバイスの従来技術によるノーズピースの等角図でありノーズピースに接続された管と比較すると、この部分の全体を通じて、ガス・フロー・チャネルが膨張している様子を示す。
【
図11】計器の概略図であり、ガス・フロー経路におけるデッドスペースがゼロであるピンチャ弁を示す。
【
図12】計器の概略図であり、患者インターフェース接続部と被検物センサとの間の、弁を含まないガス・フロー経路を示す。
【
図13】患者から引き出されたガスを2つの経路に分割する空気力学システムの概略図であり、一方の経路は呼吸信号を測定するためのものであり、他方の経路は呼気において対象となる被検物の量を測定するためのものであって、後者の経路は、インレット弁以外には弁を含まない。
【
図14】システムが呼吸信号センサ経路をフラッシュするときの
図13のシステムの図示である。
【
図15】システムが被検物測定経路のバイパス経路をフラッシュするときの
図13のシステムの図示である。
【
図16】システムが被検物であるガス・サンプルを被検物経路から被検物センサに移動させているときの
図13のシステムの図示である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1(
図1a,
図1b)には、患者インターフェースCと計器Mとを含む、システムの全体が記載されている。記載されている場合には患者インターフェースは鼻カニューレであるが、経口カニューレ、気管カニューレ、気管支カニューレ、マウスピース、メインストリーム収集アダプタ、マスクおよびそれ以外など、他のタイプの患者インターフェースとサンプリング・カニューレとを用いることも可能である。カニューレは、ノーズピースNPと、鼻プロングPと、一方の側の流体流路管T1と、このカニューレを顔に対して保持することを助けるための他方の側の非流路管T2と、計器Mに接続するためのコネクタCとを含む。コネクタは、これが存在しない場合には計器とセンサとを害し得る患者からの湿気とバクテリアとをフィルタリングするための1つまたは複数のフィルタF1を含む。計器は、カニューレ取付けのためのインレット・コネクタC2と、周囲インレットambからのガスと患者インレットPtからのガスとの間で切り換えるためのインレット弁V1と、周囲インレットにおけるフィルタF2と、患者からのガスの呼吸パターンを照会するための呼吸パターン・センサS1と、分析されることになるサンプルを含むためのサンプル管10と、それぞれがサンプル管に至るインレットおよびアウトレット弁V2およびV3と、サンプル管におけるガス・サンプルを迂回するように他のガスの方向を変更させるためのバイパス管12と、サンプル管におけるガスをガス組成センサS2にプッシュするためのプッシュ管14と、サンプルを患者から引き出し、オプションとしてサンプルをガス組成センサにプッシュするためのポンプPと、ポンプから生じる微粒子からシステムを保護するためのポンプ・アウトレット・フィルタF3と、ガス組成センサS2と、ポンプが患者からサンプルを引き出しているのか、それともサンプルをガス組成センサにプッシュしているのかを制御するための弁V4とを含む。計器は、動作のためのバッテリBと、制御機能とそれ以外の機能とのためのマイクロプロセッサuPと、ユーザ・インターフェースUIとを含み得る。
【0008】
図1aでは、ガスが患者から集められているときの計器のガス流路「a」が示されているが、サンプル管10を満たす経路「a」であるか、または、サンプル管10をバイパスする経路「aa」であるかのいずれかである。
図1bには、サンプルがガス組成センサに至るように迂回されているガス流路「b」が示されている。
【0009】
図2には、管部分T3からのサンプリング経路の断面が、
図1に示された患者インターフェースから示されている。患者から引き出されつつあるガスの異なる部分がカニューレ54を通過して移動する様子が示されている。観察され得るように、異なる部分の間は、混合状態にある転移ゾーンではなくて、印の付された描写がなされている。呼気のセグメントは、境界における相互の混合が最小限または無視可能であるように、離散的なパケットとして移動している。これは、いくつかの実施形態によって可能になるガス・フローの振る舞いであり、この振る舞いは、患者の呼気の一定部分においてガスを測定するのに用いられる呼気分析システムにおいて望ましいものである。サンプリング経路の直径または有効直径は、典型的には0.010から0.080インチであり、好ましくは0.020から0.060インチであり、最も好ましくは0.030から0.040インチである。これらの直径または有効直径は、システム全体を通じて維持され、最小限のフロー抵抗性と流路における柱状フローの反混合の振る舞いとの競合する要件を均衡させるように選択される。
【0010】
図3には、垂直軸に振幅を取り、水平軸に1つの呼吸周期を取って、1回の呼吸のガス組成がグラフ化されている。このグラフは、従来技術を用いたガス組成測定といくつかの実施形態を用いたガス組成測定との2つの場合を示す。従来技術では、測定されたガス組成の振幅が、本明細書に記載されているいくつかの実施形態の振幅と比較して低いのであるが、その理由は、従来技術による例では、ガス・サンプルが、システム全体を通じて様々なデッドスペース体積を通過することによって、希釈されるからである。本開示を表す曲線では、ガス・サンプルが混合されず、汚染されず純粋に維持され、したがって、正確な診断評価のためにセンサ信号が真のガス組成と相関され得るので、信号振幅が、その最大電位に到達する。
【0011】
図4から
図6は、たとえば、従来技術において用いられるフィルタなど、ガス・サンプリング経路におけるあるコンポーネントの一例の断面を記載している。この例では、フィルタは、システムに過剰なデッドスペースを追加して、ガスが混合することを許容するため、結果的に、
図3に示された従来技術によるガス組成曲線を生じる。湿気とバクテリアとをフィルタリングするためには、ガス分析システムにおいて、フィルタが要求されることがあり得る。
図4は、フィルタ120のインレット側のガス経路管T3と、ディスク・タイプ・フィルタであるフィルタ要素121と、フィルタのアウトレット側のガス経路コンジットとを示している。
図5に示されるように、フィルタのインレット側にあるガス・サンプリング経路は、端と端とが相互に隣接する呼気の異なる部分を含む。ガスは、たとえば呼気の開始112、呼気の終末114および吸気110という、離散的なパケットとして移動する。ガスは、フィルタに入り、フィルタのより大きな断面フロー・プロファイルに膨張するが、さらに、直線状のフロー・プロファイルを有するフィルタを通過して移動し、
図5のフィルタ部分に示されている複数のガス部分の間の離散的な境界を維持する、と考えられ得るかも知れない。しかし、現実には、このようなことは生じない。そうではなく、
図6に示されるように、複数のガス部分は、患者のガスがフィルタに入る前にフィルタに存在したベースライン・ガスと混合することに加えて、フィルタにおいて相互に混合する。現実に生じる実際のガス混合は、次の通りである。ガスは、直線状のフロー・プロファイルとしてフィルタを通過して移動するのではなく、非直線状のプロファイルとして移動するのであって、それにより、フィルタの内部において呼気の複数の異なる部分がガス130を相互に混合するに至る。結果的には、フィルタのアウトレット側では、異なる複数のガス部分の間の境界が曖昧になり、異なる複数のガス部分の間には、混合が生じたガス・ゾーンが存在し、終末前のガスが汚染され(132)、終末ガスが汚染される(134)ことになる。さらに、一定のシステム動力学および寸法の条件の下では、フィルタ容積が、呼気ガスの一定の部分に対して大きすぎる場合もあり得る。たとえば、ガスの関心対象である部分が0.Xmlであり、フィルタ容積がX.0である場合には、ガスの関心対象である部分はフィルタ容積の10%を占めるに過ぎず、拡散とそれ以外のガス混合原理とによって、他のガスと混合する可能性が生じる。動的である優勢な状態に応じて、関心対象であるガス部分の全体が、希釈され、濃縮され、または他のガスにより汚染され得る。
【0012】
図7は、患者からの湿気とバクテリアとをフィルタリングによって除去するための、低デッドスペースのフィルタリング・システムを示す。この例では、フィルタは、システムにデッドスペースを追加することがないため、ガスが混合することを防止し、結果的に、
図3に示されたガス組成曲線に示されている従来技術に対する改善を生じさせる。管状の親水性フィルタ60は、カニューレ・コネクタC1のフィルタ・ハウジング50の内部のガス流路の内壁の上に、同心円状に配置され得る。フィルタ60は、接着剤58を用いて取り付けることができ、歪み解放管56の助けによりカニューレ管54と結合され得る。また、フィルタ上に湿気が集積することを防止し、バクテリアをフィルタリングによって除去するために、第2段の疎水性フィルタ62を用いることができ、流路において流路と実質的に垂直に配置され得る。複数のフィルタを組み合わせることにより、バクテリアがフィルタを通過することを防止するのであるが、その理由は、水蒸気が懸濁液から濃縮して、フィルタ領域の壁部に沿って集積する微粒子水を形成するからである。バクテリアは微粒子水に付着し、したがって、第2段のフィルタを通過して移動することはない。したがって、第2段のフィルタは、バクテリアをフィルタリングするのに通常用いられるよりもより大きなミクロンの気孔サイズであることが可能である。たとえば、バクテリアをフィルタリングで除去するのに通常用いられる0.2ミクロンのものではなくて、1から5ミクロンのフィルタで十分であろう。0.2ミクロンのフィルタは、混合を防止するのに必要とされる小さなガス・フロー・チャネルにおいて用いられる場合には、実質的に高いフロー抵抗性を生じさせ得るため、システムによって用いられるポンプの圧力ヘッドの等級を実質的に上昇させ得るのであって、さもなければ、空気を患者から引き出すことが、より困難になる。第2段のフィルタは、また、計器とセンサとに対して有害であり得るアルデヒド類やケトン類などのガスのような、より大きな分子をフィルタリングによって除去するようにも機能する。この湿気フィルタ構成は、流路から、0.001mlの水を抽出し蓄積することが可能であり得るのであって、これにより、5時間に及ぶ動作の間、患者からの湿気をフィルタリングによって除去する能力が提供される。サンプリング・カニューレのマシン端に配置されると、呼気ガスが患者からフィルタまで移動する時点までに、ほとんどの水粒子および分子はカニューレの壁部に接触し、表面の特性に応じて、壁部に沿ってカニューレの残りの長さを移動することにより、水は、管状フィルタに到達する時点までに、壁部に沿って存在して、フィルタによって容易に吸収される。さらに、フィルタの長さは、水粒子または分子がガス流の中に存在している場合に、飛行時間によって、それらがフィルタ領域から出る前にフィルタ媒体に確実に接触するようなものであり得る。
【0013】
図8は、直線湿気フィルタ80の代替例を記載しており、この代替例では、ガス流路が1つまたは複数の曲げまたは方向転換82をするように設計されている。同心円状の親水性フィルタ要素60を、フィルタ80の直線部分に配置することができる。これらの曲げにより、水粒子もしくは分子または蒸気が、曲がった領域において流路壁上に衝突することが促進され、それにより、水が親水性フィルタ媒体と接触する可能性が最大化される。このフィルタ構成は、システムに追加的なフロー抵抗性を追加せず、不必要なデッドスペースを追加することもなく、しかし、効果的な湿気フィルタリングを提供する。
【0014】
図9は、鼻サンプリング・カニューレの患者端におけるノーズピースNPを記載しており、流路管T1がノーズピースの一端に取り付けられ、鼻プロングPと連通し、非流路管T2がノーズピースの他端に取り付けられ、このアセンブリが患者の顔に固定されることを助けている。プロングを鼻の下に位置決めすることを助け、カニューレを固定する管を患者の顔に結合するために、適合的なノーズピース部分NPが含まれている。流路管と鼻プロングとは、正しい内径の管の隣接する部分であり得る。適合的なノーズピースは、管の隣接部分の大きな曲率を許容し、クッション性と心地よさとを提供して、ねじれおよび障害を回避するように、球根状である。ガス流路の断面は、一定のままであり、拡大された部分やデッドスペース容積を有しておらず、したがって、混合を生じさせる振る舞いはどのようなものでも回避させる。
【0015】
図9に示されたノーズピースとは対照的に、
図10は、従来技術において一般的であるノーズピースを記載している。この従来技術によるノーズピースと、関連する管および鼻プロング・アセンブリとは、流路においてデッドスペース容積を有する。フィルタの例において説明されたように、この容積により、測定の対象になっている呼気ガスの部分に混合と汚染とが生じ得る。対照的に、
図9は、このデッドスペースが完全に回避された設計である。
【0016】
図11は、インレット・ガスを患者ガスから周囲ガスに切り換えるための制御弁が、何らかの量のデッドスペースを本来的に有する3方ソレノイド弁ではなく、デッドスペースを有しない1対のピンチ・スタイル弁である代替的な計器を記載している。患者からのガスはコネクタC2から入り、周囲のガスは周囲インレット・フィルタF2を経由して入り、入って来るガスは、ポンプPによって引かれ、センサS3を通過して移動する。ピンチャ弁V1aおよびV1bは、利用可能なインレット経路の1つをピンチして閉じるように、協働して動作する。弁V1aは、周囲インレット経路を閉鎖する閉じられた状態で示されており、弁V1bは、システムが患者からの空気を引き入れることを可能にするように、開いている。所望の狭い断面の管IDが弁V1bを通過することによって、ガス経路におけるデッドスペースが原因でガスが混合し汚染状態になる可能性は存在しない。ピンチ用の弁はシステムの体積を追加するものではないが、他方で、ガスが弁機構の内部的な作用部を通過するように移動するほとんどのソレノイド弁の設計は、システムに対していくらかの量のデッドスペースを追加することになり、それは、この臨床における応用では、混合に起因する理由により、精度を低下させ得る。
【0017】
さらに、
図11は、別の構成を記載しており、この構成では、センサS3が、(1)測定のために受け入れ可能な呼気を見つけ目標とするのに用いられる呼吸パターンの測定と、(2)問題となっているガスのガス組成分析という2つの機能を果たす。この場合、センサは、たとえば0.2秒以内など、比較的迅速にガスに応答することができる高速センサである。この構成では、別個のガス組成センサに後で転送するために所望のガス部分を他の部分から分離させる必要がない。
図12には代替的な構成が記載されており、この構成では、システムは周囲ガス・サンプリング経路を含んでおらず、したがって、患者ガスと周囲ガスとの間で切り換えを行う制御弁が要求されないので、弁におけるデッドスペースに関連したガスの混合の潜在性が回避される。
【0018】
図13から
図16は、分割フロー設計と称される、ガスの相互混合を回避する最小限のデッドスペースの設計のための代替的な構成を記載している。患者からの入来フローは、2つの経路に分割される。下側の経路は、弁VCと呼気パターン・センサS1とを通過し、T字管T4とポンプと弁V3とを通過して、排気に至る。上側の経路は、呼気パターン・センサS1を迂回し、サンプル収集弁への弁V1に至るか、または、V1とサンプル収集管とを迂回してT字管T2を経由して弁V2に至り、また、ポンプを通過し、弁V3を通過して排気に至るか、のいずれかである。この構成は、呼気パターン・センサが、気体を混合させる潜在性を有する実質的に十分なデッドスペースを有するタイプである場合に、便利である。上側および下側の経路の抵抗値、速度および移動距離は、所望のガス・サンプルの開始および終末がV1に到達する時間がセンサS1を通過して移動するサンプルのタイミングに基づいて正確に予測可能であるように、慎重に均衡が取られ、理解され、制御される。結果的に測定されることになるサンプルの流路に存在する弁V4と弁V1とは、弁のデッドスペースに起因する混合を回避するために、ソレノイド弁ではなくピンチャ弁であり得るということに注意すべきである。
図13は、呼気サンプル取得の間のシステムを図示しており、捕捉され分析されることが望まれる呼気ガスの部分が概略的に示されている。ガスのこの部分は、YコネクタY1において、下側の経路を移動する部分と上側の経路を移動する部分との2つの部分に分岐する。両方の部分が、本来的に、測定されることが意図されている同じ濃度の被検物を有する。下側の経路では、サンプルは、弁とセンサS2とによって希釈されることがあり得るが、それは関心対象ではない。下側の経路は、上側の経路におけるサンプルのタイミングを理解するためだけに、用いられている。
【0019】
図14においては、ガスの所望のサンプルが、弁V1と弁V2との間のサンプル管の中に入れられ、いったんサンプルが配置されると、これらの弁のポート制御を切り換えることによって、そこに隔離される。次に、サンプルが汚染されないよう、周囲インレットが、残存する患者ガスをシステムの下側経路から流すために、解放されることがあり得る。
図15では、上側経路とバイパス管とが、サンプルの汚染のどのような可能性も回避するために、周囲の空気によって流される。次に、
図16に示されているように、サンプルは、分析のために、弁V1と弁V2との間にあるその保持位置からセンサS2に、転換され得る。
【0020】
説明された実施形態において、この空気力学システムが、別個の呼吸パターン・センサと別個の呼気被検物組成センサとを備えることがあり得る、ということに注意すべきであるが、実施形態においては、これらの2つの機能は同一のセンサによって処理され得ると考えられる。測定が望まれるガスの部分は、ガスの終末部分、ガスの深い肺胞サンプル、ガスの下側の空路サンプル、ガスの中間の空路サンプル、またはガスの上側の空路サンプルであり得る。本発明において説明されたシステムは、呼気中の様々な被検物を測定し、モニタリングし、推定し、または評価するために用いられ得るのであり、さらに、様々な疾病、不調、症候群を評価または診断するために用いられ得る。