(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(構成)
図1には、実施形態のリニアアクチュエータ100が示されている。
図2には、リニアアクチュエータ100の斜視分解図が示されている。
図3には、リニアアクチュエータ100の断面図(軸に沿って切断した断面の図)が示されている。
【0016】
リニアアクチュエータ100は、軸方向に端面115aを有するステータヨーク115と、ステータヨーク115の内側に配置され、コイル111が巻かれたボビン113(
図4A参照)と、ステータヨーク115の端面115aに固定されたフロントプレート120と、フロントプレート120と結合したフロントハウジング150とを備え、ボビン113にはフロントプレート120に設けられた孔121(
図2,
図5A参照)に挿入されるボス部14が設けられ、フロントハウジング150にはフロントプレート120に設けられた孔123に挿入されるボス部152(
図6A及び
図6B参照)が設けられ、ボス部152の先端がステータヨーク115の端面115aに接触している構造を有する。なお、軸方向というのは、図のZ軸の方向であり、後述するシャフト140の延在方向として定義される。
【0017】
以下、リニアアクチュエータ100について詳細に説明する。
図2に示すように、リニアアクチュエータ100は、ステータ構造体110、フロントプレート120、ロータ130、シャフト140、フロントハウジング150、先端部142を有している。
【0018】
ステータ構造体110は、略円筒形状を有し、クローポール型のステッピングモータのステータ構造を有している。ステータ構造体110は、コイル111および112(
図3参照)、ボビン113および114、電磁鋼板等の軟磁性金属材料で構成されたステータヨーク115,117およびステータヨーク116および118を備え、内部の隙間に樹脂119(
図3,
図5A参照)が充填され一体化されている。ここで、ステータヨーク115と117が組となり第1のクローポール型モータのステータヨークを構成し、ステータヨーク116と118が組となり第2のクローポール型モータのステータヨークを構成する。一般にステータヨーク115と116が外ヨーク、ステータヨーク117と118が内ヨークと呼ばれる。
【0019】
コイル111は、界磁コイルを構成し、樹脂製のボビン113(
図4A参照)に巻かれている。コイル111が巻かれたボビン113は、ステータ構造体110(ステータヨーク115)の内側に収納されている。ボビン113は、樹脂を用いた射出成法により製造されており、円筒部11(
図4A参照)、円筒部11の軸方向両端の縁から径外側方向に延在したフランジ部12,13を備えている。
【0020】
一方のフランジ部12には、軸方向に突出する突状の部分である3つのボス部14が設けられている。ボス部14は、等角度間隔(120°毎)の位置に設けられている。ボス部14は、射出成形法によりボビン113と同時にボビン113の一部として形成されている。ボビン113の上部には、端子ピン125(
図3参照)を固定する穴15が形成されている。穴15に固定された端子ピン125(
図3参照)にコイル111から引き出されたリード線が接続される。
【0021】
ステータヨーク115は、外側円筒部、内側歯部、外側円筒部と内側歯部をつなぐ板状の平板リング部(この平板リング部の裏面がステータヨーク115の端面115aである)を有している。上記外側円筒部と内側歯部の間にコイル111が巻かれたボビン113が収容されている。ステータヨーク115の内側歯部は、軸方向(エンドハウジング170の方向)に延在する複数の第1の歯115b(
図3,
図5A参照)を有している。
【0022】
ステータヨーク117は、ステータヨーク115と組みとなる部材であり、板状の平板リング部、この平板リング部の内縁から軸方向に延在する複数の第2の歯117b(
図5A参照:
図3では見えていない)を備えている。
図5Aに示すように、複数の第1の歯115bと複数の第2の歯117bは、互いに逆方向に延在し、且つ、互い違いに隙間を有した状態で噛合う位置関係とされている。この点は、通常のクローポール型のモータの場合と同じである。第1の歯115bと第2の歯117bの隙間は、ステータ構造体110の内部に充填された樹脂119により埋められている。
【0023】
ボビン114も樹脂製であり、コイル112が巻かれている。ステータヨーク116と118は、ステータヨーク115の側と同様に、内周側において、複数の歯が互い違いに隙間を有した状態で噛合う位置関係の構造を有している。ステータヨーク116の歯とステータヨーク118の歯の間は、ステータ構造体110の内部に充填された樹脂119により埋められている。
【0024】
ステータヨーク115の端面115aには、ボビン113のボス部14が挿入され貫通する3つの孔115c(
図3参照)が設けられ、この3つの孔115cにボス部14が挿入されている。孔115cに挿入されたボス部14の先端は、孔115cからフロントハウジング150の側に突出している。
【0025】
図5Aおよび
図5Bには、ステータヨーク115(ステータ構造体110)にフロントプレート120を取りつけた状態が示されている。フロントプレート120は、金属製であり、ステータヨーク115に溶接により固定されている。
【0026】
フロントプレート120は、ステータヨーク115から軸方向に突出した3つのボス部14が嵌る3つの孔121が設けられている。3か所のボス部14が3か所の孔121に嵌ることで、ステータヨーク115に対するフロントプレート120の位置決めが行われている。
【0027】
フロントプレート120は、先端に開口122aのある固定用腕部122を3か所に備えている。固定用腕部122は、フロントプレート120とフロントハウジング150とを結合させる部材であり、フロントプレート120にフロントハウジング150を支持させる支持部として機能する。
図1に示すように、固定用腕部122を変形させてフロントハウジング150の突起151に開口122a(
図2参照)を係合させることで、フロントプレート120がフロントハウジング150に結合している。
【0028】
フロントハウジング150の斜視図を
図6Aに、正面図を
図6Bにそれぞれ示す。フロントハウジング150は、樹脂製であり、射出成形法によって形成されている。フロントハウジング150には、軸方向に突出する突状の部分である3つのボス部152が設けられている。ボス部152は、樹脂を用いた射出成形法により製造されるが、この製造時にボス部152もフロントハウジング150の一部として同時に形成される。
【0029】
ボス部152は、フロントプレート120に設けられた孔123に挿入され、孔123の内側を通過している。孔123の底の部分はステータヨーク115の軸方向の端面115aが露呈しており(
図5A参照)、ボス部152の先端がステータヨーク115の軸方向の端面115aに接触する。この構造により、フロントハウジング150とステータ構造体110との軸方向における相対位置関係が決められている。なお、ボビン113に設けられたボス部14の突出長は、その先端がフロントハウジング150と接触しない寸法に設定されている。この例で、孔121から先端が突出しない寸法にボス部14のボビン113端面からの突出長が設定されている。
【0030】
図2および
図3に示すように、ステータ構造体110の内側には、ロータ130が回転可能な状態で保持されている。ロータ130は、内側円筒部材131、内側円筒部材131の外側に固定された円筒形状のロータマグネット132、内側円筒部材131の内側に固定された内周に雌ねじ構造が形成された円筒形状の雌ねじ133を有している。ロータマグネット132は、周方向に沿って交互にNSNS・・と着磁された永久磁石である。雌ねじ133は、細長い円柱形状のシャフト140の外周に形成された雄ねじ構造141に噛合っている。
【0031】
ロータ130を構成する内側円筒部材131は、玉軸受134,135により回転自在な状態で保持されている。より詳細には、玉軸受134の外輪は、ステータヨーク116に固定されたエンドハウジング170に固定されており、玉軸受134の内輪は、ロータ130を構成する内側円筒部材131に固定されている(玉軸受134の外輪は、エンドハウジング170に接触しているが、ロータ130には接触していない)。玉軸受135の外輪は、フロントハウジング150に固定されており、玉軸受135の内輪は、ロータ130を構成する内側円筒部材131に固定されている(玉軸受135の外輪は、フロントハウジング150に接触しているが、ロータ130には接触していない)。すなわち、ロータ130は、エンドハウジング170とフロントハウジング150に対して玉軸受134,135により回転自在な状態で保持されている。
【0032】
シャフト140の先端には、先端部142がピン144によって固定されている。
図7A及び
図7Bには、出力軸となるシャフト140が示されている。シャフト140には、回り止め部材143が固定されている。回り止め部材143は、略筒形状を有し、樹脂製で射出成形によりシャフト140に一体成型により組み付けられている。シャフト140には、軸方向に垂直な方向に貫通する孔140aが設けられ、この孔140aの中に回り止め部材143を構成する樹脂143dが入り込むように、回り止め部材143が形成されている。こうすることで、簡素な構造でありながら、シャフト140に回り止め部材143が強固に固定される。
なお、回り止め部材143を構成する材料は樹脂に限られたものではなく、例えば、
図10において後述する焼結部材であっても構わない。
【0033】
回り止め部材143の軸方向における一方側の端部が面状の端面143b(第1の面)とされており、他方側の端部が端面143cとされている。端面143b、143cは、軸方向に垂直な平面である。この構造では、端面143bが内側フランジ部154の接触面154a(第2の面)に接触することで、シャフト140がそれ以上フロントハウジング150から突出しない状態となる。端面143bに軸方向で対向する内側フランジ部154の接触面154aも軸方向に垂直な平面であり、上記の端面143bと内側フランジ部154の接触面154aとの接触は面での接触となる。
【0034】
図7Bには、シャフト140に取りつけられた状態の回り止め部材143の軸方向に垂直な断面の形状が示されている。
図8には、軸方向から見た回り止め部材143の形状が、シャフト140を回転中心とした360°以外の回転に対して非対称な形状の一例が示されている。この例における回り止め部材143の外周面は、上側曲面161、下側曲面162、上側曲面161と下側曲面162をつなぐ2つの側面163,164により構成されている。上側曲面161と下側曲面162は、曲率が異なる円筒曲面の一部であり、側面163,164は平面である。
【0035】
ここで、側面163,164と下側曲面162とは直接、側面163,164と上側曲面161とは段差を介して、それぞれつながっている。なお、下側曲面162及び上側曲面161の双方ともが側面163,164と直接つながって、側面163と側面164とが平行になっていなくても構わない。その場合には、後述する柱状空間153の内面の断面形状を、回り止め部材143の断面形状に対応した形状とすればよい。
【0036】
フロントハウジング150は、軸方向に延在する円筒部156を有し、円筒部156の内側には、シャフト140および回り止め部材143が収まる柱形状の空間である柱状空間153が設けられている。柱状空間153は、軸方向に垂直な断面が、回り止め部材143の断面形状に対応した形状に設定されている。
図9には、軸方向から見た柱状空間153の断面の形状が示されている。
図9に示すように、軸方向から見た柱状空間153の内面は、上側曲面171、下側曲面172、上側曲面171と下側曲面172をつなぐ平面である2つの側面173,174で構成されている。
【0037】
上側曲面171は、回り止め部材143の上側曲面161に摺動可能な状態で接触する、あるいは上側曲面171と上側曲面161とは、所定の間隔を隔てて離間している。下側曲面172は、回り止め部材143の下側曲面162に摺動可能な状態で接触する、あるいは上側曲面172と上側曲面162とは、所定の間隔を隔てて離間している。側面173は、回り止め部材143の側面163に摺動可能な状態で接触する。側面174は、回り止め部材143の側面164に摺動可能な状態で接触する。すなわち、回り止め部材143の寸法と柱状空間153の寸法は、回り止め部材143が柱状空間153内で回転できず、且つ、摺動しつつ軸方向に移動できる関係に設定されている。
【0038】
側面173と側面163の接触および側面174と側面164の接触の状態には、面接触となる第1の場合とそうでない第2の場合とがある。第1の場合、側面173と側面163は面接触し、両者は相対的に摺動可能な状態にある。同様に、側面174と側面164は面接触し、両者は相対的に摺動可能な状態にある。この場合、高い寸法精度が要求される。
【0039】
第2の場合、側面173と側面163の間、および側面174と側面164の間には、数μm〜数十μm幅程度の僅かな隙間が設けられ、柱状空間153に対して、回り止め部材143が移動可能な状態が実現される。この場合、回転しようとする回り止め部材143の外周面と柱状空間153の内周面とは、面の縁の部分での接触となるので、基本的に線接触となる。
【0040】
上側曲面161の曲率と下側曲面162の曲率は異なる値に設定されている。これに対応して、上側曲面171の曲率と下側曲面172の曲率も異なる。この構造では、上側曲面161と171が対向し、下側曲面162と172が対向した状態でないと、回り止め部材143が柱状空間153内に収容できない。
【0041】
フロントハウジング150からは、柱状空間153の一部を構成する円筒部156が延在しており、円筒部156の先端には内側フランジ部154が形成されている。内側フランジ部154の中心には孔が設けられ、この孔から出力軸であるシャフト140が外部に突出している。柱状空間153の一端側(
図3の左側)は、内側フランジ部154で定義され、他端側(
図3の右側)は、玉軸受135が収容される軸受収容空間135aで定義されている。軸受収容空間135aには、フロントハウジング150に形成された溝155が形成されている。この溝155は、玉軸受135の内輪の端面(
図3の左側)が、フロントハウジング150に接触しないように、フロントハウジング150に形成されている。先端部142の外側方向(
図3の左方向)への稼働範囲は、回り止め部材143が柱状空間153の内側フランジ部154に当たる事で決まり、内側方向(
図3の右方向)への可動範囲は、先端部142が柱状空間153の内側フランジ部154に当たる事で決まる。
【0042】
(動作)
コイル111と112に電流を流すと、ステータヨーク115とステータヨーク117の歯の間、すなわち
図5Aにおける複数の第1の歯115bと複数の第2の歯117bの間に周方向の成分を有する磁界が発生する。また、同様にステータヨーク116とステータヨーク118の歯の間に周方向の成分を有する磁界が発生する。そして上記の駆動電流の正負を特定のタイミングで切り替えると上記の磁界の向きが周期的に切り替わり、ロータマグネット132を回転させる駆動力が発生する。
【0043】
上記の駆動力によりロータ130と雌ねじ133が一体となって回転する。ここで、シャフト140は回り止め部材143によって回転できず、他方で軸方向には移動可能であるので、雌ねじ133が回転することで、雌ねじ133と噛み合った雄ねじ構造141を有するシャフト140は、軸方向に進退する。シャフト140の移動方向は、ロータ130の回転方向によって決まる。シャフト140が軸方向に動くことで、先端部142が軸方向に動く。
【0044】
(特徴的な構造1)
リニアアクチュエータ100は、フロントハウジング150と、フロントハウジング150に回転可能な状態で保持され、内側に雌ねじ133を有した筒形状のロータ130と、雌ねじ133と噛み合った雄ねじ構造を外周に備えたシャフト140と、フロントハウジング150に設けられた軸方向に延在する柱状空間153に納められ、フロントハウジング150に対して回転できず、且つ、柱状空間153の内部を軸方向(Z軸方向)に摺動可能であり、シャフト140に固定された回り止め部材143とを備え、フロントハウジング150には、回り止め部材143の軸方向における端面143bが接触可能な接触面154aが設けられ、シャフト140の突出が最大となった状態で、回り止め部材143の軸方向における端面143bがフロントハウジング150の接触面154aに面接触する。
【0045】
上記構造では、シャフト140が最大伸長時に回り止め部材143とフロントハウジング150の内側フランジ部154とが面接触するので、接触部分の摩耗や変形の発生が抑制される。なお、本実施形態の構造では、回り止め部材143と内側フランジ部154との間の耐久性を上げるためのワッシャは不要であるが、当該ワッシャの利用を排除するものではない。
【0046】
(特徴的な構造2)
回り止め部材143は、全体として筒形状を有し、この筒形状の外周面が柱状空間153の内周面に対して相対的に摺動可能な状態とされ、軸方向から見た回り止め部材143の形状は、シャフト140を回転中心とした360°の回転に対して対称で、360°以外の回転に対して非対称な形状を有する。特に、前記回り止め部材143の外周面は、第1の曲率を有する上側曲面161と、上側曲面161と曲率が異なる第2の曲率を有する下側曲面162と、上側曲面161と下側曲面162とを直接乃至段差を介してつなぐ2つの平面163,164とにより構成されている。
【0047】
上記の構造では、シャフト140の軸方向への進退時に回り止め部材143の外周面と、円筒部156の内周面(柱状空間153の内周面)とが接触し、この状態で回り止め部材143が円筒部156の内周面に対して摺動する。この際の接触は、面接触または線接触であり、当該摺動の際に、特定の部分に強い力が加わることがなく、円筒部156の内周面および回り止め部材143の一方または両方に摩耗が生じ難い。このため、円筒部156と回り止め部材143の間の摩耗に起因する隙間が生じ難い。この隙間が生じると、僅かであるが回り止め部材143の回転が許容され、リニアアクチュエータとしての精度が低下する。しかしながら、上記構成によれば、上記の隙間の発生が抑制されるので、精度の低下が抑えられる。
【0048】
例えば、側面173と側面163の間、および側面174と側面164の間の状態が面接触または面接触とみなせる場合、接触面積が大きいので、上述した円筒部156の内周面および回り止め部材143の一方または両方に摩耗が生じ難い。
【0049】
また、側面173と側面163の間、および側面174と側面164の間に隙間が設けられている場合、側面173と側面163および側面174と側面164とは基本的に線接触となるが、従来のストップピンによるハウジング内側への点による接触に比較すれば、接触面積は大きく、円筒部156の内周面および回り止め部材143の一方または両方における摩耗が抑えられる。
【0050】
(特徴的な構造3)
回り止め部材143は、樹脂により構成され、シャフト140には、軸に垂直な方向に貫通した孔140aが設けられ、回り止め部材143を構成する樹脂が孔140aの内部に充填された状態で、回り止め部材143がシャフト140に固定され、孔140aの向きと回り止め部材143の非対称な形状とに特定の関係がある。
【0051】
軸方向から見た回り止め部材143の形状が上下非対称であるので、柱状空間153への挿入時における回り止め部材143の上下(Y軸)方向の向きが一義的に決まる。つまり、回り止め部材143は、上下でひっくり返して(軸回りに180°回転させて)柱状空間153に挿入することはできない。すなわち、シャフト140を柱状空間153へ挿入する際に、予め決められた方向とは異なる方向にシャフト140が柱状空間153に挿入されてしまうという心配がない。
【0052】
仮に、シャフト140に取りつけた状態で回り止め部材143を上下でひっくり返して柱状空間153に挿入できる場合、雄ねじ構造141のねじ山半ピッチ分のずれが生じる。つまり、組み立て方によっては、ねじ山半ピッチ分の設定誤差が生じる。0.1mm単位といった精密な制御が要求される場合、上記の設定誤差が無視できない。
図8の構造では、柱状空間153に挿入する際の上下の方向の向きが一義的に決まるので、上記のねじ山半ピッチ分の設定誤差が生じる問題が生じない。また、上記非対称な形状は、孔の向きで決まるので、孔の向きにより、このシャフトの回転位置が決まり、組み立て時の誤差の発生が抑えられる。
【0053】
(特徴的な構造4)
回り止め部材143がフロントハウジング150(内側フランジ部154)の接触面154aに接触した状態において、シャフト140における回り止め部材143の位置と、雄ねじ構造141と雌ねじ133における歯の噛合い位置との関係が特定の関係に設定されている。
【0054】
上述したように、回り止め部材143を取り付けたシャフト140の軸回りの回転位置が一義的であるので、回り止め部材143がフロントハウジング150の接触面154aに接触した状態において、雄ねじ構造141と雌ねじ133における歯の噛合い位置と軸方向における回り止め部材143の位置の関係を精密に決めることができる。
【0055】
上記の優位性を具体的な例を挙げて説明する。本発明の基本構造を有するリニアアクチュエータの位置決め精度を追求した形態として、先端部142が特定の位置にある場合に、ステータヨークの歯(115b、117b)とロータマグネット132の磁極の位置を一致させた構造とする形態がある。この場合、各部の設計パラメータを調整し、組み上げた際に上記の条件が満たされるようにする。
【0056】
この際、回り止め部材143の上下をひっくり返しても、つまり180°回転させても柱状空間153に挿入できると、上記の設定に雄ネジ構造141のネジ山半ピッチ分の設定誤差が生じる。つまり、同じ製造条件であっても、位置決め精度に雄ネジ構造141のネジ山半ピッチ分の差があるものが含まれてしまう。
【0057】
これに対して、本実施形態の回り止め部材143を取り付けたシャフト140の軸回りの回転位置が一義的である構造では、上記ネジ山半ピッチ分の差が生じず、高い位置決め精度を持った製品が製造できる。
【0058】
(その他)
図10には、シャフト140に回り止め部材160をピン161により固定した構造の例が示されている。ここで、回り止め部材160の外形形状は、回り止め部材143と同じである。回り止め部材160を構成する材料は、焼結部材である。
【0059】
シャフト140を回転中心とした360°以外の回転に対して非対称な形状としては、台形や、三角形、五角形、七角形等の奇数角形(正多角形を除く)等が挙げられる。また、円、楕円、正多角形等のように図形自体が回転対称性を有していても、シャフト140が中心からずれた位置を貫通していれば、360°以外の回転に対して非対称な形状に相当する。