特許第6768147号(P6768147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768147
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ワークピース処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/305 20060101AFI20201005BHJP
   H01J 37/30 20060101ALI20201005BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20201005BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20201005BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H01J37/305 A
   H01J37/30 A
   H05H1/24
   H05H1/46 L
   H01L21/302 101C
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-513071(P2019-513071)
(86)(22)【出願日】2017年8月10日
(65)【公表番号】特表2019-530149(P2019-530149A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】US2017046207
(87)【国際公開番号】WO2018048566
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2019年4月18日
(31)【優先権主張番号】15/262,471
(32)【優先日】2016年9月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】グレン エフアール ギルクライスト
(72)【発明者】
【氏名】シュロン リアン
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−065434(JP,A)
【文献】 特表2012−523123(JP,A)
【文献】 特開2015−134943(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0083582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/305
H01J 37/30
H01L 21/3065
H05H 1/24
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース処理装置であって、
プラズマ発生器と、
プラズマチャンバと、
第1の開口及び第2の開口を有する抽出プレートと、
を備え、
荷電イオンが前記第1の開口を通して第1の選択抽出角度で抽出され、反応性中性粒子が前記第2の開口を通して第2の選択抽出角度で抽出され、前記第2の開口は前記第1の開口と異なっており
前記第2の開口は、荷電イオンをはね返す又は中和することにより、前記第2の開口を通過する前記荷電イオンを最小限にするサプレッサを備える、ワークピース処理装置。
【請求項2】
前記サプレッサは、前記荷電イオンをはね返すために、前記第2の開口内に配置された電気的にバイアスされる導電グリッドを備える、請求項に記載のワークピース処理装置。
【請求項3】
前記サプレッサは、前記荷電イオンをはね返すために、前記第2の開口の周囲に配置された電気的にバイアスされる導電グリッドを備える、請求項に記載のワークピース処理装置。
【請求項4】
前記サプレッサは、前記第2の開口に入る荷電イオンを、前記第2の開口から出る前に、中和する篩部を備える、請求項2に記載のワークピース処理装置。
【請求項5】
前記第2の選択抽出角度は前記抽出プレートに直角の面に対する前記第2の開口の傾きによって決定され、前記第2の選択抽出角度を中心とする前記反応性中性粒子の角度分布は前記抽出プレートを貫通する前記第2の開口の長さと前記第2の開口の高さの比として定義される前記第2の開口のアスペクト比により決定される、請求項1に記載のワークピース処理装置。
【請求項6】
前記プラズマチャンバ内にブロッカが配置され、前記第2の選択抽出角度及び前記第2の選択抽出角度を中心とする前記反応性中性粒子の角度分布は前記第2の開口の幅、前記ブロッカの幅及び前記ブロッカと前記第2の開口との間隔により決定される、請求項1に記載のワークピース処理装置。
【請求項7】
前記反応性中性粒子は前記プラズマチャンバとは別の遠隔中性種発生器内で生成され、前記プラズマチャンバから分離された中性種の経路により、前記第2の開口に運ばれる、請求項1に記載のワークピース処理装置。
【請求項8】
ワークピース処理装置であって、
プラズマ発生器と、
プラズマチャンバと、
荷電イオンと反応性中性粒子を抽出する抽出プレートと、
を備え、
前記ワークピース処理装置は、前記プラズマチャンバから前記荷電イオンを前記抽出プレートに配置された抽出開口を通して第1の選択抽出角度で抽出する第1の機構を使用するとともに、前記プラズマチャンバから前記反応性中性粒子を抽出する第2の機構を使用
前記第1の機構は、前記抽出開口に隣接するプラズマシース変調又は電界を備え、前記第2の機構は幾何学的構成の中性種チャネルを備える、ワークピース処理装置。
【請求項9】
前記中性種チャネルは前記抽出プレートに配置される、請求項に記載のワークピース処理装置。
【請求項10】
前記中性種チャネルは前記プラズマチャンバ内に前記抽出開口に近接して配置されたブロッカ内に配置される、請求項に記載のワークピース処理装置。
【請求項11】
ワークピース処理装置であって、
プラズマ発生器と、
プラズマチャンバと、
抽出開口を備える抽出プレートと、
前記プラズマチャンバ内に前記抽出開口に近接して配置されたブロッカと、
を備え、
前記ワークピース処理装置は、荷電イオンを前記抽出開口を通してイオンビームとして第1の選択抽出角度で抽出するためにプラズマシース変調又は電界を使用し、
反応性中性粒子は中性種チャネルを通して第2の選択抽出角度で通され、
前記反応性中性粒子が、前記プラズマチャンバから射出する前に、前記中性種チャネルを通るように、前記中性種チャネルは前記ブロッカ内に配置される、ワークピース処理装置。
【請求項12】
ワークピース処理装置であって、
プラズマ発生器と、
プラズマチャンバと、
抽出開口を備える抽出プレートと、
を備え、
前記ワークピース処理装置は、荷電イオンを前記抽出開口を通してイオンビームとして第1の選択抽出角度で抽出するためにプラズマシース変調又は電界を使用し、
反応性中性粒子は中性種チャネルを通して第2の選択抽出角度で通され、
前記中性種チャネルは前記抽出プレートに配置されている、ワークピース処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、中性イオンビームの角度制御に関し、より詳しくは有向反応性イオンエッチングプロセス用の荷電イオンビーム及び中性ビーム生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な表面トポロジー及び高い集積密度を有する先進三次元半導体構造の製造は多くの技術的課題を提示する。デバイスの限界寸法及びピッチが減少するにつれて、特徴部のアスペクト比が増大する。例えば、この傾向はワークピースの表面に深いが極めて狭いトレンチを必要とする。これらのトレンチは反応性イオンエッチング(RIE)として知られる技術を用いて生成することができる。様々なトレンチ内張り材料のトリミング及び成形は有向反応性イオンエッチング(DRIE)として知られる技術を用いて実行することができる。これらのトレンチの壁の指定部分を選択的にエッチングするために精密角度制御が使用される。イオンビームの角度制御はイオンを特定の方向に集束するように電界を操作することによって得ることができる。
【0003】
反応性イオンエッチングのエッチ速度は荷電イオンビームを反応性中性粒子で補うことによって高めることができる。しかし、反応性中性粒子は電界を用いて制御することはできない。従って、荷電イオンビームの角度は正確に制御できるが、反応性中性粒子には当てはまらない。DRIEに使用される角度は減少する(即ち、ワークピースに垂直により近くなる)ので、反応性中性粒子の角度制御の欠如はより顕著になる。反応性中性粒子はワークピース上の物質の一部分と高度に反応するが他の部分と反応しないラジカル/原子と定義される。例えば、正しいプロセス条件下で、塩素はTiNに対して高い反応速度を有するが、SiOに対して極めて低い反応速度を有する。これらの反応性中性粒子はワークピースの一部分を他の部分に影響を与えることなくエッチングするのに役立つ。ワークピースに向けられる反応性中性粒子の角度を制御することができないことはエッチングプロセスの速度を損なう可能性がある。特定の実施形態では、ワークピースに向けられる反応性中性粒子の角度を制御することができないことは、ワークピース上の指定された特徴部の実現を困難にする可能性がある。
【0004】
従って、反応性中性粒子がワークピースに向けられる角度を制御することができる装置があれば有益である。この装置は、荷電イオンがワークピースに向けられる角度も制御することができれば更に有益である。このような装置は有向反応性イオンエッチングなどの幾つかの用途に有益であり得る。
【発明の概要】
【0005】
荷電イオン及び反応性粒子の抽出角度の独立制御を可能にするワークピース処理装置を開示する。この装置は荷電イオンが通る抽出開口を有する抽出プレートを含む。荷電イオンの抽出角度を決定するためにプラズマシース変調及び電界を使用することができる。特定の実施形態では、抽出プレートは、抽出開口とは別に、反応性中性粒子を選択した抽出角度で通す1つ以上の中性種チャネルも含む。中性種チャネルの幾何学的構成によって反応性中性粒子の抽出角度が決まる。中性種チャネルは、中性種チャネルを通る荷電イオンの数を低減するためにサプレッサを含んでもよい。前記装置は有向反応性イオンエッチングなどの様々な用途に使用することができる。
【0006】
一実施形態によれば、ワークピース処理装置が開示される。このワークピース処理装置は、プラズマ発生器と、プラズマチャンバと、第1の開口及び第2の開口を有する抽出プレートとを備え、荷電イオンが第1の開口を通して第1の選択抽出角度で抽出され、反応性中性粒子が第2の開口を通して第2の選択抽出角度で抽出され、第2の開口は第1の開口とは異なる。特定の実施形態では、第2の開口は第2の開口を通過する荷電粒子を最小限にするためにサプレッサを備える。サプレッサは、電気的にバイアスされる導電グリッド、電気的にバイアスされるカップ、又は篩部としてよい。特定の実施形態では、第2の選択抽出角度は抽出プレートに直角の面に対する第2の開口の傾きによって決定される。特定の実施形態では、第2の選択抽出角度を中心とする反応性中性粒子の角度分布は抽出プレートを貫通する第2の開口の長さと第2の開口の高さの比として定義される第2の開口のアスペクト比により決定される。特定の実施形態では、ブロッカがプラズマチャンバ内に配置される。特定の実施形態では、反応性中性粒子がプラズマチャンバとは異なる遠隔中性種発生器内で生成され、第2の開口に運ばれる。
【0007】
別の実施形態によれば、ワークピース処理装置が開示される。このワークピース処理装置は、プラズマ発生器と、プラズマチャンバと、抽出プレートとを備え、該抽出プレートを通して荷電イオンと反応性中性粒子が抽出される。このワークピース処理装置は、荷電イオンをプラズマチャンバから抽出プレートに配置された抽出開口を通して第1の選択抽出角度で抽出するために第1の機構を使用するとともに、反応性中性粒子をプラズマチャンバから第2の選択抽出角度で抽出するために第2の機構を使用する。特定の実施形態では、第1の機構は抽出開口に隣接するプラズマシース変調又は電界を備える。特定の実施形態では、第2の機構は中性種チャネルの幾何学的構成を備える。特定の実施形態では、中性種チャネルは抽出プレートに配置される。特定の実施形態では、中性種チャネルはプラズマチャンバ内に抽出開口に近接して配置されたブロッカに配置される。
【0008】
別の実施形態によれば、ワークピース処理装置が開示される。このワークピース処理装置は、プラズマ発生器と、プラズマチャンバと、抽出開口を備える抽出プレートとを備え、前記ワークピース処理装置は、プラズマシース変調又は電界を用いて荷電イオンを前記抽出開口を通してイオンビームとして第1の選択抽出角度で抽出し、反応性中性粒子は中性種チャネルを第2の選択抽出角度で通過する。中性種チャネルは抽出プレートに配置しても、プラズマチャンバ内に抽出開口に近接して配置されたブロッカに配置してもよい。特定の実施形態では、中性種チャネルは抽出開口である。
【0009】
本開示のより良い理解のために、参照することにより本明細書に組み込まれる添付図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態によるワークピース処理装置である。
図2図1のワークピース処理装置の抽出プレートの拡大図である。
図3図3A−3Cはサプレッサを有する中性種チャネルの3つの実施形態を示す。
図4図4A−4Cはコリメータチャネルを有する中性種チャネルの実施形態を示す。
図5図5A−5Cはワークピースから見た中性種チャネルの様々な実施形態を示す。
図6図6A−6Bは調整可能な中性種チャネルを備えた一実施形態を示す。
図7図7A−7Bは図1の装置を用いて処理することができる代表的なワークピースを示す。
図8図8A−8Iはブロッカ及び抽出開口の様々な構成とその結果得られる抽出角度を示す。
図9】別の実施形態によるワークピース処理装置の抽出プレート及びブロッカの拡大図である。
図10】別の実施形態によるワークピース処理装置の抽出プレートの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、荷電イオンと反応性中性粒子がワークピース90に向けられる角度を制御するワークピース処理装置10の第1の実施形態を示す。ワークピース処理装置10は、複数のチャンバ壁32で画定されたプラズマチャンバ30を備える。
【0012】
アンテナ20がプラズマチャンバ30の外部に誘電体窓25に近接して配置される。誘電体窓25はプラズマチャンバ30を画定する壁の1つを形成してもよい。アンテナ20はRF電源27に電気的に接続され、該RF電源が交流電圧をアンテナ20に供給する。その電圧は、例えば2MHz以上の周波数としてよい。誘電体窓25及びアンテナ20はプラズマチャンバ30の一側面に示されているが、他の実施形態も可能である。例えば、アンテナ20はチャンバ壁32を取り囲んでも、プラズマチャンバ30の上面に配置してもよい。プラズマチャンバ30のチャンバ壁32はグラファイトなどの導電材料で構成してよい。これらのチャンバ壁32は、例えば抽出電源80によって、抽出電圧にバイアスしてよい。抽出電圧は、例えば、1kVとしてよいが、他の電圧も本開示の範囲の範囲に含まれる。
【0013】
ワークピース処理装置10は抽出開口35を有する抽出プレート31を含む。抽出プレート31はプラズマチャンバ30を画定する別の壁を形成してよい。抽出開口35はx方向に約320mm及びy方向に30mmとしてよいが、他の寸法も可能である。抽出プレート31はZ方向に5〜10mmの厚さを有してよいが、他の寸法も可能である。この抽出プレート31はプラズマチャンバ30の誘電体窓25とは反対側に配置してよいが、他の配置も可能である。特定の実施形態では、抽出プレート31は絶縁材料で構成してよい。例えば、抽出プレート31は石英、サファイヤ、アルミナ又は同様の絶縁材料よりなるものとしてよい。絶縁材料の使用は荷電イオンが抽出開口から射出する角度に影響を与えるプラズマシースの変調を可能にすることができる。他の実施形態では、抽出プレート31は導電材料で構成してよい。
【0014】
ブロッカ37をプラズマチャンバ30の内部に抽出開口35に近接して配置してよい。特定の実施形態では、ブロッカ37は絶縁材料で構成される。ブロッカ37はz方向に約3−5mmの寸法及びx方向に抽出開口35と同一の寸法としてよい。ブロッカ37のy方向の長さは目標抽出角度を達成するために変えることができる。
【0015】
抽出開口35のサイズ及び形状とともにブロッカ37の位置及びサイズはプラズマチャンバ30内のプラズマシースの境界を画定することができる。プラズマシースの境界はひいては荷電イオンがプラズマシースを横切って抽出開口35から射出する角度を決定する。特定の実施形態では、ブロッカ37は導電材料を含んでよい。これらの実施形態では、ブロッカ37上の導電材料は抽出開口35に近接した電界を生成するようにバイアスしてよい。電界は荷電イオンが抽出開口35から射出する角度を制御する働きもし得る。図1に示すように、プラズマチャンバ30の内部と抽出開口35との間に配置されたブロッカ37は2モード抽出角度プロファイルを生成し得る。言い換えれば、荷電イオンは抽出開口35から+θ°又は−θ°の角度で射出することができ、θはブロッカ37のサイズ及び位置、抽出開口35の幅及び抽出開口に近接した電界により決まる。
【0016】
図1はブロッカ37を示すが、他の実施形態ではブロッカは使用しない。
【0017】
ワークピース90はプラズマチャンバ30の抽出プレート31の外側に近接して配置される。いくつかの実施形態では、ワークピース90はz方向において抽出プレート31の約1cmの範囲内に位置させてよいが、他の距離も可能である。動作中、エネルギーをプラズマチャンバ30に誘導結合するためにアンテナ20がRF電源27からのRF信号で給電される。この誘導結合エネルギーはガス貯蔵容器70からガス注入口71を介して導入される供給ガスを励起し、よってプラズマを生成する。図1はアンテナを示すが、他のプラズマ発生器を本開示とともに使用してもよい。例えば、容量結合プラズマ発生器を使用してもよい。
【0018】
プラズマチャンバ30内のプラズマは抽出電源80によりチャンバ壁32に供給される電圧でバイアスしてよい。プラテン95の上に配置してよいワークピース90は抽出プレート31に近接して配置される。プラテン95はバイアス電源98により電気的にバイアスしてよい。プラズマとワークピース90との間の電位差はプラズマ9内の荷電イオンを抽出開口35を通して1つ以上のリボンイオンビームの形でワークピース90に向けて加速せしめる。言い換えれば、抽出電源80により供給される電圧がバイアス電源98により供給されるバイアス電圧より正であるとき、正イオンがワークピース90に向かって引き付けられる。従って、正イオンを引き付けるためには、チャンバ壁32を正電圧にバイアスするとともに、ワークピース90をより低い正電圧、接地電圧又は負電圧にバイアスしてよい。他の実施形態では、チャンバ壁32を接地するとともに、ワークピース90を負電圧にバイアスしてよい。さらに他の実施形態では、チャンバ壁32を負電圧にバイアスするとともに、ワークピース90をより負の電圧にバイアスしてよい。
【0019】
リボンイオンビーム60(図2参照)は、一方向(例えばx方向)に少なくともワークピース90と同じ幅としてよく、直角方向(又はy方向)にワークピース90よりずっと狭くしてよい。一実施形態では、抽出されるリボンイオンビーム60はy方向に約1mm及びx方向に約320mmとしてよい。
【0020】
更に、プラテン95及びワークピース90は、ワークピース90の異なる部分がリボンイオンビーム60に暴露されるように抽出開口35に対して平行移動させることができる。ワークピース90がリボイオンビーム60に暴露されるようにワークピース90を平行移動させるプロセスは「パス」と称する。パスはプラズマチャンバ30の位置を維持したままプラテン95及びワークピース90を平行移動させることによって実行することができる。ワークピース90が抽出開口35に対して平行移動される速度はワークピース走査速度と称することができる。特定の実施形態では、ワークピース走査速度は約100mm/秒としてよいが、他の速度を使用してもよい。別の実施形態では、ワークピース90を静止したままプラズマチャンバ30を平行移動させてもよい。他実施形態では、プラズマチャンバ30とワークピース90の両方を平行移動させてもよい。いくつかの実施形態では、ワークピース90が抽出開口35に対してy方向に一定のワークピース走査速度で移動するため、ワークピース90の全体がリボンイオンビームに同じ時間の間暴露される。
【0021】
上述したように、荷電イオンを所定の角度でワークピース90に向けるために抽出開口35が使用される。上述したように、荷電イオンが抽出開口35から射出する角度を制御するためにプラズマシースと電界が使用される。しかしながら、反応性中性粒子はこれらの機構のいずれでも制御されないため、ランダムに抽出開口を出て行く。反応性中性粒子は他の粒子又は構造と衝突するまで一直線に飛行する。例えば、反応性中性粒子はブロッカ37、抽出プレート31又は他のイオンもしくは反応性中性粒子と衝突する。ラジカルや原子等の反応性中性粒子間の衝突は再結合して典型的にはより低い反応性の分子を形成し、DRIEプロセスに事実上役に立たないものとなり得る。その結果として、ほとんどの反応性中性粒子は抽出開口を高い抽出角度で射出する。本開示を通して、抽出角度はワークピース90に垂直の平面を基準とする。従って、0°の抽出角度はワークピース90の表面に垂直の経路を示し、90°の抽出角度はワークピース90の表面に平行の経路を示す。
【0022】
反応性中性粒子の抽出角度はブロッカ37の配置及びサイズにより幾分制御することができるが、この角度制御の範囲及び精度には限界がある。
【0023】
従って、反応性中性粒子の抽出角度のより良い制御のために、1つ以上の中性種チャネル100を抽出プレート31に配置することができる。
【0024】
中性種チャネル100は抽出プレート31に、抽出開口35の両側に配置することができる。このようにすると、少なくとも2つの中性種チャネル100を、反応性中性粒子を2つの角度でワークピース90に向けるように配置することができ、該2つの角度は抽出開口35を射出する荷電イオンの二峰性分布に対応させることができる。他の実施形態では、ただ1つの中性種チャネル100を抽出プレート31に配置してもよい。
【0025】
図2は、一実施形態による抽出プレート31、ブロッカ37及びワークピース90の拡大図を示す。ブロッカ37を使用すると、荷電イオンは2つのリボンビームとして抽出開口を射出する。中性種チャネル100はプラズマチャンバ30から反応性中性粒子を中性ビーム101として射出する。中性チャネル100から射出する反応性中性粒子は中心抽出角度と角度分布とにより決まる抽出角度範囲を有する。狭い分布は反応性中性粒子の殆どが中心抽出角度に近い経路を進む。
【0026】
反応性中性粒子の中心抽出角度は中性種チャネル100の方向によって制御される。例えば、図2は、抽出開口35の方へ僅かに傾いた中性種チャネル100の各々を示す。水平中性種チャネルは0°の中心抽出角度を有し得る。中心抽出角度は中性種チャネル100が抽出プレート31に垂直の平面から傾くにつれて大きくなる。反応性中性粒子の抽出角度分布は中性種チャネル100の幾何学的構成により決定される。中性種チャネル100のz方向の寸法対y方向の寸法の比は中性種チャネル100のアスペクト比と称することができる。高いアスペクト比を有する中性種チャネル100は、低いアスペクト比を有する中性種チャネルよりも狭い抽出角度分布を有する。特定の実施形態では、アスペクト比は10より大きくしてよい。
【0027】
特定の実施形態では、中性種チャネル100は抽出開口35からy方向に10mmとしてよい。中性種チャネル100のx方向の寸法は抽出開口35のx方向の寸法にほぼ等しくしてよい。
【0028】
特定の実施形態では、反応性中性粒子のみが中性種チャネル中を通過しうるようにするが有益であり得る。これは中性種チャネル100にサプレッサを導入することによって達成することができる。
【0029】
図3A−3Cは、サプレッサを含む中性種チャネル100の種々の実施形態を示す。サプレッサは中性種チャネル100を通る荷電イオンを抑制する働きをする。特定の実施形態では、これは荷電イオンを中性種チャネル100からはね返すことによって達成される。他の実施形態では、これは中性種チャネル100に入る如何なる荷電イオンも中性化することによって達成される。
【0030】
図3Aは中性種チャネル100の一実施形態を示し、該中性種チャネル100は絶縁体210内に配置された電気的にバイアスされるグリッド200を含む。絶縁体210により、電気的にバイアスされるグリッド200を抽出プレート31から電気的に絶縁することができる。抽出プレート31が絶縁材料からなる場合には、絶縁体210は使用しなくてよい。電気的にバイアスされるグリッド200は導電材料、例えばタングステン等の金属で構成してよい。正電圧をグリッド電源220により供給することができる。この電圧は正イオンをプラズマチャンバ30の内部へはね返すように選択することができる。電気的にバイアスさるグリッド200は中性種チャネル100内のどこに配置してもよい。特定の実施形態では、電気的にバイアスされるグリッド200は、中性種チャネル100内での衝突を最小限にするために中性種チャネル100内にプラズマチャンバ30の内部に近接して配置してよい。他の実施形態は荷電イオンをプラズマチャンバ30内へはね返すために十分なバイアスで駆動されるバッフルを含んでよい。
【0031】
図3Bは中性種チャネル100の一実施形態を示し、該中性種チャネル100は絶縁体260内に配置された電気的にバイアスされるカップ250を含む。絶縁体260により、電気的にバイアスされるカップ250を抽出プレート31から電気的に絶縁することができる。抽出プレート31が絶縁材料からなる場合には、絶縁体260は使用しなくてよい。電気的にバイアスされるカップ250は導電材料、例えばタングステン等の金属で構成してよい。正電圧をグリッド電源270により供給することができる。この電圧は正イオンをプラズマチャンバ30の内部へはね返すように選択することができる。
【0032】
図3Cは中性種チャネル100の一例を示し、該中性種チャネル100は篩部240を含む。この実施形態では、篩部240はプラズマチャンバ30からの荷電イオン及び反応性粒子の入場を許すが、中性種チャネル100からワークピースの方へ出る前に荷電イオンを表面衝突により中性化せしめる。篩部240の材料は、ラジカル等の反応性中性粒子が篩部240の壁で再結合しないように選択される。プラズマチャンバに面する篩部の側面は固体とすることができ且つチャネルのアスペクト比は十分に大きくすることができ、その結果イオンはワークピースを見通せる経路がなく、篩部の先端部又は中性種チャネル100の側壁と衝突して中性化されるようにすることができる。
【0033】
図3A−3Cに示す実施形態は、図1及び図2に示す抽出プレート31とともに使用することができる。言い換えれば、抽出プレート31は抽出開口31を備え、この開口を通して荷電イオンを第1の選択抽出角度でワークピース90へ向けることができる。抽出プレート31は1つ以上の中性種チャネル100も含み、このチャネルを通して反応性中性粒子を第2の選択抽出角度でワークピース90に向けることができる。上述したように、第1の選択抽出角度はプラズマシースを変調することによって又は電界を使用することによって決定することができる。第2の選択抽出角度は中性種チャネルの幾何学的構成によって決定することができる。第1の選択抽出角度は第2の選択抽出角度と同じにしてよいが、他の実施形態も存在することに留意されたい。例えば、第1及び第2の選択角度は、荷電イオンが受ける吸引力を反応性中性粒子は受けないために異ならせてもよい。第1及び第2の選択抽出角度を決定するために異なる機構を使用することによって、これらの抽出角度は独立に制御することができる。
【0034】
いくらかの反応性中性粒子がプラズマチャンバから抽出開口35を経て射出し得ることも留意されたい。しかしながら、これらの反応性中性粒子が射出する角度は中性種チャネルから射出する反応性中性粒子と同じレベルに制御することはできない。例えば、抽出開口35から射出する反応性中性粒子は広い分布を有し、第2の選択抽出角度より大きい抽出角度を有し得る。
【0035】
従って、本開示は、プラズマ発生器と、プラズマチャンバと、荷電イオン及び反応性中性粒子を抽出する抽出プレートとを含むワークピース処理装置を開示する。該ワークピース処理装置は、プラズマチャンバから荷電イオンを第1の選択抽出角度で抽出する第1の機構と、プラズマチャンバから反応性中性粒子を第2の選択抽出角度で抽出する第2の機構を使用する。上述したように、第1の機構は抽出開口に隣接するプラズマシース変調又は電界としてよい。第2の機構は中性種チャネルの幾何学的構成としてよい。具体的には、中性種チャネル100の方向又は傾きによって中心抽出角度を決定することができるが、中性種チャネル100のアスペクト比によって抽出角度の分布を決定することができる。
【0036】
加えて、本開示は、プラズマ発生器と、プラズマチャンバと、荷電イオン及び反応性中性粒子を抽出する抽出プレートとを含み、荷電イオンが第1の開口を通して第1の選択抽出角度で抽出され、反応性中性粒子が第2の開口を通して第2の選択抽出角度で抽出され、第2の開口は第1の開口とは異なる、処理装置を開示する。上述したように、中性種チャネルを通って出る荷電粒子の数は中性種チャネルとサプレッサを併用することによって減少させることができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、反応性中性粒子のより狭い分布を生成するのが有益であり得る。これは、コリメーションによって達成することができる。図4A−4Cは複数のコリメーティングカラムを有する中性種チャネルの実施形態を示す。図4Aは複数のコリメーティングカラム310を含む中性種チャネル300の第1の実施形態を示す。前と同様に、中性種チャネル300は抽出プレート31から絶縁するために絶縁材料330で囲んでよい。これらのコリメーティングカラム310は中性種チャネル300を多数のより小さいチャネルのアレイ又はラスタとして形成することによって生成することができる。これらのより小さいチャネルの各々は、各より小さいチャネルのz方向の厚さは不変であるがy方向の高さは縮小されるので、高いアスペクト比を有する。一実施形態では、これらのコリメーティングカラム310は電気的にバイアスされるグリッド320を中性種チャネル300の厚さに亘って延長することによって生成することができる。この電気的にバイアスされるグリッド320はグリッド電源340を用いてバイアスすることができる。特定の実施形態では、コリメーティングカラム310は中性種チャネル300のy方向のみが影響されるように生成される。他の実施形態では、コリメーティングカラム310は中性種チャネル300のx方向とy方向が影響されるように生成される。
【0038】
図4Bは複数のコリメーティングカラム360を有する中性種チャネル350の第2の実施形態を示す。前と同様に、中性種チャネル350は抽出プレート31から絶縁するために絶縁材料380で囲んでよい。この実施形態では、コリメーティングカラム360は中性種チャネル300内に複数の薄いスラット370を挿入することによって生成することができる。これらの薄いスラット370は導電材料又は絶縁材料としてよい。導電性カップ385を絶縁材料380の内壁に配置し、カップ電源390と通電してよい。特定の実施形態では、コリメーティングカラム360は、中性種チャネル350のy方向のみが影響されるように生成される。他の実施形態では、コリメーティングカラム360は、中性種チャネル350のx方向及びy方向の両方が影響されるように生成される。
【0039】
更に、図4A−4Bは、中性種チャネル及びコリメーティングカラムを抽出プレート31に垂直であるとして示すが、本開示はこの実施形態に限定されない。中性種チャネル及びコリメータチャネルは、必要に応じ、抽出プレート31に垂直の平面に対して傾けてよい。例えば、図4Cは少し上に傾けられた図4Bの中性種チャネル350を示す。カップ電源390は明瞭のため示されていないが、導電カップ385をバイアスするために使用することができる。更に、図4Bの中性種チャネル350は必要に応じ下に傾けてもよい。その傾斜角度は本開示により限定されない。
【0040】
図5A−5Cはワークピース90から見た抽出プレートの様々な実施形態を示す。図5Aは1つの抽出開口35と2つの中性種チャネル100を有する抽出プレート31を示す。抽出開口35の両側にそれぞれ1つの中性種チャネル100が配置される。中性種チャネル100は各々長方形である。中性種チャネル100はx方向において抽出開口35と同じ寸法としてよい。特定の実施形態では、中性種チャネル100はy方向において抽出開口より小さくしてよい。特定の実施形態では、中性種チャネル100は抽出開口35からy方向に約10mm離してよい。
【0041】
図5Bはワークピース90から見た抽出プレートの第2の実施形態を示す。この実施形態では、スタガード配置の中性種チャネル103が抽出開口35の両側に配置される。この構成は、より強い機械的強度を抽出プレート31に維持可能にするが、依然として十分な反応性中性粒子束をワークピース90に供給するとともに上述した指向性及びコリメーティング特性のすべてに適応する。
【0042】
図5Cはワークピース90から見た抽出プレート90の第3の実施形態を示す。この実施形態では、中性種チャネル102は図4A−4Cに関して記載したようにコリメーティングカラムを形成するように円形である。中性種チャネル102は抽出開口35の両側に配置される。この構成は、より強い機械的強度を抽出プレート31に維持可能にするが、依然として十分な反応性中性粒子束をワークピース90に供給するとともに上述した指向性及びコリメーティング特性のすべてに適応する。
【0043】
特定の実施形態では、図5A−5Cの中性種チャネルの各々は抽出開口35に向けて傾けてよい。言い換えれば、反応性中性粒子は図2に示すように抽出プレート35に向けられる。従って、反応性中性粒子はいくつかの中性種チャネルを通して+θの角度で抽出されるとともに、他の中性種チャネルを通して−θの角度で抽出され、ここでθは第2の選択抽出角度である。
【0044】
いくつかの実施形態では、選択抽出角度を変更可能にするのが望ましい。第1の選択抽出角度は、例えばプラズマチャンバ0内の電界を変化させることによって、又はブロッカ37を抽出開口35に対して移動させることによって、変更することができる。
【0045】
図6A−6Bは第2の選択抽出角度を変更するために使用し得る一実施形態を示す。この実施形態では、中性種チャネル600が回転部材610内に収容される。回転部材610は抽出プレート631に配置してよい。回転部材610はSiO,SiC,SiN,Al等の適切な材料としてよい。電気的にバイアスされるグリッド、篩部又は電気カップとし得るサプレッサを回転部材610内に配置してもよい。図6Aは、中性種チャネル600が抽出プレート631の面に直角になるように置かれた回転部材610を示す。図6B図6Aの位置に対して上向きに回転された回転部材610を示す。
【0046】
本開示は別個の中性種チャネルの使用を開示するが、他の実施形態も可能である。例えば、ブロッカと抽出開口は反応性中性粒子に対して所望の抽出角度を達成するように設計される。図8A−8Iは複数の構成を示す。これらの構成において、抽出プレート831の抽出開口835の幅及びブロッカ837と抽出開口835との間隔が変更される。これらの構成において、抽出開口835の幅とブロッカ837の幅は関連する。抽出開口835の幅が狭くなるにつれて、ブロッカ837の幅も減少する。これらの構成はブロッカ837と抽出開口835との間隔が大きくなるにつれて右に移動して示されている。抽出開口835の幅は下方に移動するにつれて減少する。
【0047】
図8Aにおいて、プラズマ源内の固定点に対する平均抽出角度は50.8°であり、抽出角度の分布は43.3°〜58.2°であることが分かった。従って、拡がりは約14.9°である。
【0048】
図8Bに移動すると、ブロッカ837と抽出開口との間隔が増大される。これは平均抽出角度を49°に減少させ、抽出角度の分布は35.7°〜62.2°になる。従って、拡がりは約26.5°である。
【0049】
図8Cに移動すると、ブロッカ837と抽出開口との間隔が再び増大される。これは平均抽出角度を42.2°に減少させ、抽出角度の分布は35.7°〜62.2°になる。従って、拡がりは約32.6°である。
【0050】
従って、一般的に、ブロッカ837と抽出開口835との間隔が増大するにつれて、平均抽出角度が減少するが、角拡散が増大する。
【0051】
図8Dに示す構成において、ブロッカと抽出開口との間隔は図8Aと同一であるが、抽出開口835及びブロッカ837の幅が減少される。その結果、平均抽出角度は45.3度になり、抽出角度の分布は35.5°〜55.1°になる。従って、角拡散は約19.6°になる。
【0052】
図8Gへと下へ移動すると、抽出開口835及びブッカーの幅が図8Dに対して再び減少される。その結果、平均抽出角度は32.7°になり、抽出角度の分布は30.1°〜35.3°になる。従って、角拡散は約5.2°になる。
【0053】
従って、一般的に、抽出開口835の幅が減少するにつれて、平均抽出角度が減少し、角拡散が減少する。
【0054】
従って、抽出開口835の幅及びブロッカ837と抽出開口835との間隔の操作は反応性中性粒子の抽出角度を制御する別の機構を提供する。個別の中性種チャネルと同様に、反応性中性粒子の抽出角度は概して視線光学により決定されるため、この実施形態は開口の物理的構成に依存する。言い換えれば、反応性中性粒子は一般的にプラズマチャンバから抽出プレート831の外部までクリアな(視界を遮るもののない)経路である経路に沿って進む。従って、抽出開口835の幅及びブロッカ837と抽出開口835との間隔を操作することによって、反応性中性粒子の抽出角度を制御することができる。
【0055】
更に、抽出開口835の幅と独立のブロッカ837の幅の変更は反応性中性粒子の抽出角度を制御する別の機構を提供する。
【0056】
図8A−8Iにおいて、上述したように、荷電イオンの抽出角度はプラズマシースの形状と抽出開口835の近くの電界とによって決定される。従って、荷電イオンの抽出角度および反応性中性粒子の抽出角度は2つの異なる機構を用いて制御される。
【0057】
別の実施形態では、図8A−8Iに示すブロッカ837と抽出開口835は中性種の抽出のみに使用してよい。この実施形態では、ブロッカ837はプラズマ中に発生された正のイオンをはね返すために正電位でバイアスしてよい。更に、この実施形態では、抽出開口835は図2に示す中性種チャネルと同様にしてよい。従って、抽出開口835は中性種を第2の選択抽出角度で射出する経路として作用する。この実施形態では、図1に示すブロッカ37及び抽出開口35を使用することもできる。言い換えれば、2つのブロッカをプラズマチャンバ30内に配置することができる。ブロッカ37は、荷電イオンを抽出開口35を通して第1の選択抽出角度で抽出するようにプラズマシースを操作するのに役立つ。ブロッカ837は、反応性中性粒子が第2の選択抽出角度で抽出されるように抽出開口835を通る反応性中性粒子のための経路を提供するのに役立つ。更に、ブロッカ837及び抽出開口835は反応性中性粒子の二峰性抽出を可能にするため、いくつかの実施形態ではたった1つの中性種チャネルが使用される。
【0058】
図1図2及び図5A−Cは抽出プレート31に配置された中性種チャネル100の使用を示している。これらの中性種チャネル100は反応性中性粒子を所望のパスに導く働きをする。しかしながら、中性種チャネルは他の場所に配置することもできる。図9は抽出プレート931及びブロッカ937を示す。図2に示したように、荷電イオンはリボンビーム60として抽出開口935を射出する。しかしながら、この実施形態では、中性種チャネル900はブロッカ937内に配置される。前実施形態と同様に、中性種チャネル900の幾何学形状は抽出開口935からの反応性中性粒子の抽出角度を決定する働きをする。更に、上述したように、ブロッカ937内の中性種チャネル900はサプレッサ、例えば図3A−3Cに示されるいずれか、を含んでもよい。加えて、ブロッカ937内に配置された中性種チャネル900は、図4A−4Cの実施形態に示されるように、平行にしてもよい。
【0059】
以上の開示及び図は、荷電イオンを発生する同じプラズマチャンバから反応性中性粒子が抽出される実施形態を記載している。しかしながら、他の実施形態も可能である。例えば、図10は別の実施形態を示す。この実施形態では、中性種チャネル100は中性種経路1010と連通する。これらの中性種経路1010は1つ以上の遠隔中性種発生器1000と連通する。特定の実施形態では、遠隔中性種発生器1000はプラズマ発生器又は他の適切な装置とし得る。この場合、反応性中性粒子は中性種経路1010に沿って中性種チャネル100に運ばれ、そこで反応性中性粒子はワークピース90に向けられる。言い換えれば、図10の中性種チャネルはプラズマチャンバ30から分離されている。この実施形態は、長寿命又は準安定の反応性中性種を使用する実施形態に有益である。例えば、この機構を用いてフッ素原子を中性種チャネル100に送達することができる。更に、図10図2の変更例として示されるが、遠隔中性種発生器1000は他の図に示される構成のいずれかとともに使用することができることを理解されたい。
【0060】
開示の装置は多くの可能な用途を有する。1つの特定の用途では、開示の装置は有向反応性イオンエッチング(DRIE)を実行するために使用される。この用途では、荷電イオンも反応性中性粒子も選択抽出角度でワークピースに向けて供給される。これらの選択抽出角度は、材料、特にトレンチ内に配置された材料、のエッチングを可能にする。図7Aはエッチングされるワークピース700を示す。ワークピース700は複数のトレンチ710を有し、各トレンチは側壁711及び底面712を有する。ワークピースは任意の適切な材料、例えば、限定されないが、結晶シリコン、非晶質シリコン、多結晶シリコン及び二酸化シリコン等としてよい。各トレンチ710の側壁711は、例えば、窒化シリコン、二酸化ハフニウム等の誘電体713としてよい1つ以上の膜で被覆してよい。ワークピース700の表面も、例えばコバルト、タングステン、アルミニウム、銅又は窒化チタン等のライナー714で共形被覆される。特定の実施形態では、上面上のライナー714及び側壁711上の特定の深さまでのライナー714を除去するのが有益である。
【0061】
幾つかの実施形態では、ライナー714の除去は荷電イオンと反応性中性粒子の両方でワークピースを叩くことによって達成される。特定の実施形態では、荷電イオン及び反応性中性粒子は、例えばCl,CF,CHF、CHF,C,Br,BBr,HBr又はI等のハロゲンベースの供給ガスを用いて生成することができる。他の実施形態では、荷電イオン及び反応性中性粒子は、O,H,又はNHを含む供給ガスを用いて生成することもできる。処理中、上記の種の1つ以上とし得る供給ガスがプラズマチャンバ30に導入される。RF電力がRF電源27によりアンテナ20に供給される。荷電イオン(例えばCl)も反応性中性粒子(例えばCl)も含むプラズマが生成される。
【0062】
一つの非限定的例では、各トレンチ700は100mmの深さを有し、ライナー714の上部20mmのみが除去される。加えて、ライナー714は上面715からも除去する必要がある。側壁711からライナー714の上部を除去するために、図7Aに示すように、荷電イオン及び反応性中性粒子はワークピース700を角度Φで叩く。これらのイオン及び反応性中性粒子がワークピースを叩く角度がΦより大きい場合には、側壁711上のライナー714は適正なレベルまでエッチングされない。より大きい角度(即ちより水平に近い角度)では、隣接するトレンチの上面が側壁711を叩くイオン及び中性粒子を遮るので、側壁711はあまりエッチングされない。
【0063】
図7A−7Bは処理中のワークピース700を示す。これらの図において、ワークピース700はワークピース処理装置10に対して左方へ移動する。従って、図の左側のトレンチ710はエッチングされているが、右側のトレンチ710はまだライナー714で覆われている。
【0064】
図7Aは、側壁711から適切な量のライナー714をエッチングするために使用される角度Φ1を示す。この角度は、ピッチ(即ち、隣接するトレンチ間の間隔)とトレンチのアスペクト比と除去すべきライナー714の量の関数である。図7Aで使用される角度Φは比較的大きい。図7B図7Aのものより遥かに狭い間隔で配置されたトレンチを有するワークピース700を示す。その結果として、側壁711から適切な量のライナー714をエッチングするために使用する角度ΦはΦより遥かに小さくなる。本明細書に開示する装置は、中性種チャネルの使用によってこの所望の角度を反応性中性粒子に対して生成することができる。
【0065】
本願の上述した実施形態は多くの利点を有する。第1に、有向反応性イオンエッチングを荷電イオンと反応性中性粒子の両方が荷電表面に接触するときより効果的で効率的にすることができる。従来の技術を用いて行うことはできない形で中性種チャネルを使用することによって反応性中性粒子の抽出角度を精密に制御することができる。この精密な抽出角度制御は高密度実装特徴部のエッチングを可能にする。実際には、特定の実施形態では、反応性中性粒子を所望の位置に精密に指向させることによってトレンチの側壁のエッチング時間を一桁以上減少させることができる。
【0066】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載された実施形態に加えて、本発明の他の様々な実施形態および変更は、前述の記載および添付図面から当業者には明らかであろう。したがって、このような他の実施形態および変更は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、本発明は、特定の環境における特定の目的のための特定の実装の文脈にて本明細書中で説明したけれども、当業者は、本実施形態の有用性はそれらに限定されるものでなく、本実施形態は任意の数の環境における任意の数の目的のために有益に実装し得ることを認識するであろう。従って、以下に記載する特許請求の範囲は本明細書に記載された本発明の全範囲及び精神に鑑みて解釈しなければならない。
図1
図2
図3A-3C】
図4A-4C】
図5A-5C】
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10