特許第6768149号(P6768149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オートリブ ディベロップメント エービーの特許一覧

<>
  • 特許6768149-シートベルト用リトラクタ 図000002
  • 特許6768149-シートベルト用リトラクタ 図000003
  • 特許6768149-シートベルト用リトラクタ 図000004
  • 特許6768149-シートベルト用リトラクタ 図000005
  • 特許6768149-シートベルト用リトラクタ 図000006
  • 特許6768149-シートベルト用リトラクタ 図000007
  • 特許6768149-シートベルト用リトラクタ 図000008
  • 特許6768149-シートベルト用リトラクタ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768149
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】シートベルト用リトラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/46 20060101AFI20201005BHJP
   F16J 1/02 20060101ALI20201005BHJP
   F16J 1/01 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B60R22/46 142
   F16J1/02
   F16J1/01
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-514390(P2019-514390)
(86)(22)【出願日】2018年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2018015537
(87)【国際公開番号】WO2018198829
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2017-87994(P2017-87994)
(32)【優先日】2017年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】茂呂 一寛
(72)【発明者】
【氏名】松岡 弘樹
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126311(JP,A)
【文献】 特開2003−54363(JP,A)
【文献】 特表2013−525189(JP,A)
【文献】 特開2016−107915(JP,A)
【文献】 特開昭57−79309(JP,A)
【文献】 特開2012−116296(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0006925(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102008032371(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00−22/48
F16J 1/01
F16J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することでウェビングの巻取および巻出を行うスピンドルと、該スピンドルをウェビング巻取方向に回転させるプリテンショナとを備えるシートベルト用リトラクタにおいて、
前記プリテンショナは、
所定の経路に沿って延びていて途中に湾曲した湾曲部を含むパイプと、
前記パイプ内に収容され、前記パイプの一端から供給される所定のガスによって該パイプ内を移動する円柱状のピストンと、
前記パイプ内に収容された複数のボールであり、前記移動するピストンによって前記パイプの他端から1つずつ押し出されて前記スピンドルに回転力を与え、該スピンドルをウェビング巻取方向に回転させる複数のボールとを有し、
前記複数のボールのうち少なくとも1つは、前記スピンドルをウェビング巻取方向に回転させた後、前記ウェビングに乗員が拘束されることでウェビング巻出方向に回転する前記スピンドルによって前記パイプ内に押し戻され、
前記ピストンは、前記少なくとも1つのボールによって押され、前記湾曲部の内壁に沿って変形しながら該湾曲部を通過することを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記ピストンの移動方向の長さは、前記パイプの内径の1.4倍以上であることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記ピストンのデューロメータ硬さが、Dスケール63以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項4】
前記ピストンの曲げ強度が、350MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項5】
前記ピストンは、23℃、または−20℃でのアイゾット衝撃強さ試験で破壊強度値を有することを特徴とする請求項1または2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項6】
前記ピストンは、
円柱状の本体と、
前記本体を前記ピストンの移動方向に貫通する貫通孔と、
前記本体の前記ボール側に形成された凹んだ凹部と、
前記凹部の縁を切り欠いて形成された溝部とを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員拘束用のウェビングの巻取および巻出を行うシートベルト用リトラクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に装備されるシートベルト装置は、乗員拘束用のウェビングの巻取および巻出を行うリトラクタを備える。リトラクタとしては、回転することでウェビングの巻取および巻出を行うスピンドルと、車両緊急時にスピンドルをウェビング巻取方向に回転させるプリテンショナとを備えたもの知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなリトラクタでは、車両緊急時の初期にプリテンショナが作動する。プリテンショナは、例えば、スピンドルと一体に回転するピニオンなどの回転部材と、パイプと、パイプの一端に取り付けられ車両緊急時にガスを発生するガスジェネレータと、パイプ内に収容される1つのピストンおよび複数のボールとを有する。
【0004】
ピストンは、パイプの一端から車両緊急時に供給されるガスによってパイプ内を移動する。複数のボールは、移動するピストンによってパイプの他端から1つずつ押し出され、回転部材を回転させることで、スピンドルに回転力を与え、スピンドルをウェビング巻取方向に回転させる。これにより、車両緊急時の初期に、ウェビングの緩みを除去しウェビングに張力を付与して、乗員を確実に拘束できる。
【0005】
特許文献1には、ピストンの本体のうち、力伝達部材(ボール)と当接するボール側に拡開部を形成したプリテンショナが記載されている。ピストンの拡開部は、ピストンがボールを押圧するときパイプの内周面の方向に拡開する。特許文献1では、ピストンの拡開部の外周面がパイプの内周面により効果的に密着するので、ピストンとパイプの内周面との間のシール性が向上し、ガス圧の圧力損失を抑制でき、ガス圧をより一層効果的にピストンに作用させることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−260426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リトラクタには、プリテンショナの作動後、乗員の慣性移動などによりウェビングが引っ張られその荷重が所定値を超えると、エネルギー吸収を行いながら、ウェビングが巻き出される、いわゆるロードリミッターを備えたものがある。ロードリミッターには、トーションバーなどの捩じれ部材が含まれる。トーションバーは、スピンドル内に装着され、スピンドルの軸中心に沿って延び、軸方向の一端部がスピンドルに結合されている。
【0008】
ロードリミッターが作動すると、ウェビングの引張力は、スピンドルを介してトーションバーにウェビング巻出方向の回転力として作用するだけでなく、スピンドルを介してピニオンがボールをパイプ内に押し戻し、押し戻されたボールによってピストンをガスジェネレータ側に移動させる移動力としても作用する。このため、ウェビングの引っ張り力を受けて、トーションバーが捩れ変形するだけでなく、ピストンがパイプ内での移動に伴う抵抗力に抗しながら移動する。すなわち、ウェビングが巻き出される際、ウェビング(乗員)には、トーションバーの捩り変形に伴う荷重に加え、ピストンの移動に伴う荷重も作用し、これらの荷重がロードリミッター荷重となる。
【0009】
ここで、プリテンショナ作動後からロードリミッター作動完了後までの間、ウェビング(乗員)に作用する荷重は、安定していることが好ましいが、「再ロック」という状態が生じることがある。以下、「再ロック」について説明する。プリテンショナ作動時に、ガスジェネレータが作動し発生したガス圧によってピストンが押され、ピストンに接するボール等を介してスピンドルを回転させるプリテンショナでは、ピストンがガス圧で押圧されることによりピストンが動かず(一次ロック)、ウェビングが引き込まれた状態(巻き取られた状態)のままロードリミッターが作動するのが好ましい。しかしロードリミッター作動中に、ピストンが押されているガス内圧以上の荷重がロードリミッターにかかると、そのピストンが戻されてしまう現象が発生する。この現象が発生すると、ウェビングへの荷重が一瞬抜けて、乗員の拘束力が小さくなってしまう。そのため、ウェビングへの荷重が抜けた直後には、ロックメカ機構が作動して、スピンドルの回転を停止させる。「再ロック」とは、このような一次ロック後にウェビングへの荷重が一度抜けた後(すなわち一次ロックが解除された後)、ロックメカ機構によってスピンドルがロックされる現象をいう。再ロックが発生した場合、一例として、プリテンショナ作動後の荷重の変化速度(N/ms)において、5ms間での荷重の最高変化速度と最低変化速度との差(ウェビングへの荷重が一瞬抜けた後再ロックまでの間の差)が1000N/ms以上となるような状態を示す。つまり再ロックが発生した場合、一次ロック後にピストンが移動を始めてから再ロックまでの間、乗員はウェビングで拘束されない状態になり、衝突時の乗員拘束性能が低下してしまう。
【0010】
特許文献1に記載の技術は、ピストンのパイプに対するシール性を高め、ガス圧の圧力損失を抑制しているに過ぎず、ピストンの移動に伴う荷重を高め、ロードリミッター荷重を保持して再ロックの発生を防止する点で、改善の余地がある。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑み、一次ロックが解除される現象を防ぐことで、再ロックの発生を防止し、車両緊急時の乗員のより高い安全性を確保できるシートベルト用リトラクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかるシートベルト用リトラクタの代表的な構成は、回転することでウェビングの巻取および巻出を行うスピンドルと、スピンドルをウェビング巻取方向に回転させるプリテンショナとを備えるシートベルト用リトラクタにおいて、プリテンショナは、所定の経路に沿って延びていて途中に湾曲した湾曲部を含むパイプと、パイプ内に収容され、パイプの一端から供給される所定のガスによってパイプ内を移動する円柱状のピストンと、パイプ内に収容された複数のボールであり、移動するピストンによってパイプの他端から1つずつ押し出されてスピンドルに回転力を与え、スピンドルをウェビング巻取方向に回転させる複数のボールとを有し、複数のボールのうち少なくとも1つは、スピンドルをウェビング巻取方向に回転させた後、ウェビングに乗員が拘束されることでウェビング巻出方向に回転するスピンドルによってパイプ内に押し戻され、ピストンは、少なくとも1つのボールによって押され、湾曲部の内壁に沿って変形しながら湾曲部を通過することを特徴とする。
【0013】
シートベルト用リトラクタのプリテンショナが車両緊急時の初期に作動すると、例えばパイプの一端に取り付けられたガスジェネレータから発生したガス圧により、ピストンがパイプ内を移動し、複数のボールをパイプの他端から押し出す。押し出された複数のボールは、スピンドルと一体に回転する回転部材(ピニオンなど)を回転させて、スピンドルをウェビング巻取方向に回転させる。これにより、車両緊急時の初期に、ウェビングの緩みを除去しウェビングに張力を付与して、乗員を確実に拘束できる。
【0014】
プリテンショナの作動後、乗員の慣性移動などによりウェビングが引っ張られその荷重が所定値を超えると、ロードリミッターが作動する。すなわち、ウェビングの引張力は、スピンドルを介して捩じれ部材(トーションバーなど)にウェビング巻出方向の回転力として作用する。またスピンドルを介してピニオンがボールをパイプ内に押し戻し、押し戻されたボールによってピストンをガスジェネレータ側に移動させる移動力としても作用する。
【0015】
このため、ウェビングの引張力を受けて、トーションバーが捩れ変形するだけでなく、ピストンがパイプ内での移動に伴う抵抗力に抗しながら移動する。すなわち、ウェビングが巻き出される際、ウェビング(乗員)には、トーションバーの捩り変形に伴う荷重に加え、ピストンの移動に伴う荷重も作用し、これらの荷重がロードリミッター荷重となる。
【0016】
ここで、プリテンショナ作動後からロードリミッター作動完了後までの間、ウェビング(乗員)に作用する荷重は、最初のプリテンショナ作動のためのガス圧力が保持されて安定していることが好ましい(一次ロック)。しかし一次ロック後にロードリミッター荷重のほうがガスの保圧力より大きくなると、一次ロックが解除されてしまい、その直後にロックメカ機構が作動してスピンドルがロックされる(再ロック)。この再ロックが発生した場合、一次ロック後から再ロックまでの間、ウェビングに作用する荷重が大きく変動してしまい、乗員が不用意に移動する可能性があるばかりか、ウェビングで拘束されない状態になり、衝突時の乗員拘束性能が低下してしまう。
【0017】
そこで本発明では、パイプの湾曲部を通過するとき、湾曲部の内壁に沿って変形しながら移動するピストンを採用した。このようなピストンによれば、パイプ内壁とピストンとの間の摩擦力を大きくすることが可能となり、パイプ内での移動に伴う抵抗力を増加させることができる。このように、ピストンとパイプ内壁との間の摩擦力を大きくすることで、プリテンショナ作動後のピストンの移動を制限し、プリテンショナ作動後のウェビングに作用する荷重を高めた状態で維持することができる。その結果として、ロードリミッター荷重を保持して、一次ロック後の荷重の抜け(すなわち一次ロックの解除)を防ぐことで、再ロックの発生を防止し、車両緊急時の乗員のより高い安全性を確保できる。
【0018】
上記のピストンの移動方向の長さは、パイプの内径の1.4倍以上であるとよい。このように、ピストンの移動方向の長さがパイプの内径よりも十分に長いため、パイプの湾曲部を通過するとき、ピストン自体の曲げ抵抗が増加し、さらに湾曲部の内壁との接触面積も大きくなるため摩擦力も増加する。このため、ピストンの移動に伴う荷重を確実に高めて、ロードリミッター荷重を保持し、再ロックの発生を防止できる。
【0019】
上記のピストンのデューロメータ硬さが、Dスケール63以上であるとよい。このようなデューロメータ硬さであれば、パイプ内移動中のピストンの変形が制限され、ピストンとパイプ内壁との間での摩擦力を高めることができ、ピストンの移動に伴う荷重を高めて、再ロックの発生を防止できる。
【0020】
上記のピストンの曲げ強度が、350MPa以上であるとよい。このような曲げ強度であれば、パイプ内移動中のピストンの変形が制限され、ピストンとパイプ内壁との間での摩擦力を高めることができ、ピストンの移動に伴う荷重を高めて、一次ロック後の荷重の抜けを防止して、再ロックの発生を防止できる。
【0021】
上記のピストンは、23℃、または−20℃でのアイゾット衝撃強さ試験で破壊強度値を有するとよい。このようなアイゾット衝撃強さ試験で破壊強度値が計測されるものであれば、パイプ内移動中のピストンの変形が制限され、ピストンとパイプ内壁との間での摩擦力を高めることができ、ピストンの移動に伴う荷重を高めて、一次ロック後の荷重の抜けを防止して、再ロックの発生を防止できる。
【0022】
上記のピストンは、円柱状の本体と、本体をピストンの移動方向に貫通する貫通孔と、本体のボール側に形成された凹んだ凹部と、凹部の縁を切り欠いて形成された溝部とを有するとよい。このように、ピストンの本体のうち、ボールに接触する側に凹部が形成されているので、凹部とボールとが確実に接触できる。また、ガスジェネレータで発生したガスジェネレータ側のガスは、ピストンの貫通孔を通過し、さらに凹部の溝部を通って、ボール側に移動できる。このため、ガスジェネレータとピストンとの間のガス圧が高くなり過ぎることを回避し、パイプの破壊を防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一次ロックが解除される現象を防ぐことで、再ロックの発生を防止し、車両緊急時の乗員のより高い安全性を確保できるシートベルト用リトラクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態におけるシートベルト用リトラクタを備えたシートベルト装置を例示する図である。
図2図1のシートベルト用リトラクタの断面を例示する図である。
図3図2のシートベルト用リトラクタのA−A断面図である。
図4図3のプリテンショナのピストンを例示する図である。
図5図3(b)に後続するロードリミッター作動後のプリテンショナの状態を例示する図である。
図6図4のピストンのその他の例を例示する図である。
図7】本発明の実施形態と比較例とのウェビング荷重およびウェビング荷重の変化速度を比較したグラフである。
図8】本発明の実施形態のピストンと再ロックとの関係を例示するグラフである。
【符号の説明】
【0025】
100…シートベルト用リトラクタ、102…シートベルト装置、104…車両用シート、106…ウェビング、108…シートバック、110…スルーアンカ、112…ウェビングの先端部、114…アンカプレート、116…タングプレート、118…バックル、120…プリテンショナ、122…スピンドル、124…リトラクタフレーム、126、128…リトラクタフレームの一対の側板、130…トーションバー、132…トレッドヘッド、134…パイプ、136、136A…ピストン、138、138a〜138i…ボール、140…パイプの一端、142…ガスジェネレータ、144…湾曲部、146…ピニオン、148…カバー部材、150…ポケット、152…パイプの他端、154、154A…本体、156…凹部、158…縁、160…溝部、162、162A…端面、164、164A…貫通孔、166、168…パイプの内壁、170…窪み部
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態におけるシートベルト用リトラクタ(以下、リトラクタ100)を備えたシートベルト装置102を例示する図である。なお図中ではリトラクタ100を概略的に例示している。
【0028】
シートベルト装置102は、車両の左側前部座席(例えば助手席)である車両用シート104に設置された安全装置である。シートベルト装置102は、乗員拘束用のウェビング106を用いて、乗員(不図示)を車両用シート104に拘束する。
【0029】
リトラクタ100は、回転力によってウェビング106の巻取および巻出を行う装置であり、ここでは図示を省略するセンタピラーに配置されている。なお図中には、ただしリトラクタ100は、センタピラーに限られず、車両用シート104のシートバック108の後方や内部に配置してもよい。
【0030】
ウェビング106は、リトラクタ100から巻き出され、センタピラー上方などの車室側面上部に取り付けられたスルーアンカ110に挿通されて下方へ折り返されている。スルーアンカ110で折り返されたウェビング106の先端部112には、車体下方に取付けられたアンカプレート114が縫合されている。また、折り返されたウェビング106は、タングプレート116に挿通されている。さらに車両用シート104の車室中央側には、バックル118が配置されている。
【0031】
このようなシートベルト装置102では、車両用シート104に着座した乗員がタングプレート116を把持し、タングプレート116をバックル118に装着することで、ウェビング106によって、乗員の身体が拘束される。
【0032】
図2は、図1のリトラクタ100の断面を例示する図である。図3は、図2のリトラクタ100のA−A断面図である。図3(a)、図3(b)は、車両緊急時におけるリトラクタ100のプリテンショナ120の作動前後の状態をそれぞれ例示している。
【0033】
リトラクタ100は、図2に示すように、回転することでウェビングの巻取および巻出を行うスピンドル122と、車両緊急時にスピンドル122をウェビング巻取方向に回転させるプリテンショナ120とを備える。スピンドル122は、リトラクタフレーム124の一対の側板126、128に回転可能に支持されている。
【0034】
スピンドル122内には、捩じり部材であるトーションバー130が装着されている。トーションバー130は、図2に示すように、スピンドル122の軸に沿って延びていて、軸方向の一端部がスピンドル122に結合されていて、他端部がトレッドヘッド132に結合されている。トーションバー130は、設定以上の荷重がウェビングに加わった際にエネルギーを吸収しながらウェビングを繰り出すロードリミッター機構(後述)に含まれる。
【0035】
リトラクタフレーム124の側板126には、プリテンショナ120と図示しない巻取ばね装置とが取り付けられている。リトラクタフレーム124の側板128には、図示しない車両加速度検出手段やウェビング巻出加速度検出手段等のセンサと、ロック手段が設けられている。なおロック手段は、車両緊急時にトレッドヘッド132をリトラクタフレーム124に係合させることで、ウェビングの巻出方向の回転を阻止する。
【0036】
プリテンショナ120は、図3に示すように、所定の経路に沿って延びるパイプ134と、パイプ134内に収容された円柱状のピストン136および金属製の複数のボール138とを有する。パイプ134は、その一端140に車両緊急時にガスを発生するガスジェネレータ142が取り付けられていて、途中に湾曲した湾曲部144を含んでいる。
【0037】
ピストン136は、図3(a)に示すプリテンショナ120の作動前には、パイプ134の一端140に取り付けられたガスジェネレータ142付近に配置されている。また複数のボール138のうちボール138aが、ピストン136の最も近い位置に配置されている。
【0038】
プリテンション120はさらに、回転部材としてのピニオン146と、パイプ134を覆うカバー部材148(図2参照)とを有する。ピニオン146は、スピンドル122とスプライン嵌合により常時結合されていて、スピンドル122と一体に回転する。また、ピニオン146の外周には、ボール138を収容する半球状のポケット150が円周方向に複数設けられている。カバー部材148は、パイプ134を覆うことで、パイプ134の形状を規制している。
【0039】
図3(a)に示すプリテンショナ120の作動前には、複数のボール138のうちボール138b、138cは、予めピニオン146のポケット150に収容されている。またボール138cは、パイプ134の他端152付近に位置するボール138dに接触している。さらに、ボール138dに後続するボール138eからボール138aは、図3(a)に示すように互いに接触した状態でパイプ134に収容されている。
【0040】
そして車両緊急時にガスジェネレータ142が作動して、ガスがパイプ134内に供給されると、ピストン136は、図3(b)に示すように、発生したガスの圧力によって押圧されパイプ134内を移動する。図3(b)に示すピストン136は、ボール138aに接触しながら複数のボール138をピストン136の他端152に向かって押し出して、パイプ134の湾曲部144を通過した位置まで移動している。
【0041】
ピストン136がハイプ134内を移動することで、複数のボール138は、ピストン136によってパイプ134の他端152から1つずつ押し出される。押し出されたボール138は、ピニオン146を回転させることで、スピンドル122に回転力を与え、スピンドル122をウェビング巻取方向(図中、矢印B)に回転させる。なおピニオン136を回転させた後のボール138は、ピニオン136のポケット150から離脱して、図示しない所定のボール集積エリアに集積される。このようにして、リトラクタ100では、車両緊急時の初期にプリテンショナ120が作動することにより、ウェビングの緩みを除去しウェビングに張力を付与して、乗員を確実に拘束できる。
【0042】
図4は、図3のプリテンショナ120のピストン136を例示する図である。図4(a)は、ピストン136の斜視図である。図4(b)、図4(c)は、図3(a)、図3(b)に示す状態のピストン136を拡大してそれぞれ示す図である。
【0043】
ピストン136は、図4(a)に示すように、円柱状の本体154を有する。本体154のうち、ボール138aに接するボール側には、凹んだ凹部156が形成されている。また凹部156は、縁158を切り欠いて形成された溝部160を有する。図4(b)に示すように、本体154のうち、ガスジェネレータ142に対向するガスジェネレータ側は、平坦な端面162となっている。
【0044】
さらにピストン136は、本体154の貫通する貫通孔164を有する。貫通孔164は、図4(b)に示すように、本体154のガスジェネレータ側からボール側あるいはボール側からガスジェネレータ側に向かう方向すなわちピストン136の移動方向に沿って、本体154を貫通している。
【0045】
一例として、ここでピストン136の移動方向の長さLaは、14mmであり、パイプ134の内径Lbは10mmである。つまり、ピストン136の移動方向の長さLaは、パイプ134の内径Lbの1.4倍となっていて、パイプ134の内径Lbよりも十分に長くなっている。さらに図4(b)に示すように、ピストン136の内径は、パイプ134の内径Lbよりもわずかに大きくなっている。
【0046】
図4(c)に示すピストン136の位置は、図3(b)に示すプリテンショナ作動後の位置である。プリテンショナ120の作動後では、図3(b)に示すように、ピストン136に押し出された複数のボール138のうちボール138f、138gがピニオン146のポケット150に収容されている。また、ボール138gは、パイプ134の他端152付近に位置するボール138hに接触している。ボール138hは、後続するボール138iに接触している。さらにボール138iは、ピストン136に直接接触しているボール138aに接触している。
【0047】
このように、プリテンショナ作動後、プリテンショナ120内には、ボール138a、138f〜138iが残留した状態となっている。リトラクタ100では、図3(b)に示すプリテンショナ120の作動後の状態で、乗員の慣性移動などによりウェビングが引っ張られその荷重(引張力)が所定値を超えると、ロードリミッターが作動する。
【0048】
図5は、図3(b)に後続するロードリミッター作動後のプリテンショナ120の状態を例示する図である。この状態では、ガスジェネレータ142によって発生したガスによる内圧によってピストン136が押されて(保持されて)いる。そして、プリテンショナ120では、このピストン136を押圧するガス圧力と、ピストン136とパイプ134との間の摩擦力とによって、ボール138がガスジェネレータ142側に容易には戻らない状態、すなわち「一次ロック」されている状態となっている。ロードリミッターが作動すると、ウェビングの引張力は、スピンドル122を介してトーションバー130(図2参照)にウェビング巻出方向(図中、矢印C)の回転力として作用する。さらには、ウェビングの引張力は、スピンドル122を介してピニオン146がボール138(ここでは、ボール138a、138f〜138i)をパイプ134内に押し戻して、押し戻されたボール138によってピストン136をガスジェネレータ側に移動させる移動力としても作用する。
【0049】
このため、ロードリミッター作動時には、ウェビングの引張力を受けて、トーションバー130が捩れ変形し、さらにピストン136がパイプ134内での移動に伴う抵抗力に抗しながら移動することになる。つまり、ウェビングが巻き出される際、ウェビング(乗員)には、トーションバー130の捩り変形に伴う荷重に加え、ピストン136の移動に伴う荷重も作用し、これらの荷重がロードリミッター荷重となる。
【0050】
ここで、プリテンショナ作動後からロードリミッター作動完了後までの間、ウェビング(乗員)に作用する荷重は、安定していることが好ましい(一次ロック)。しかし一次ロック後にロードリミッター荷重のほうがガスの保圧力より大きくなると、一次ロックが解除されてしまい、その直後にロックメカ機構が作動してスピンドルがロックされる。これを「再ロック」という。この再ロックが発生した場合、例えば、プリテンショナ作動後の荷重の変化速度(N/ms)において、5ms間での荷重の最高変化速度と最低変化速度との差が1000N/ms以上の状態となることがある。つまり、再ロックが発生した場合、一次ロック後から再ロック完了までの間、ウェビングに作用する荷重が大きく変動してしまい、乗員が不用意に移動する可能性があるばかりか、ウェビングで拘束されない状態になり、衝突時の乗員拘束性能が低下してしまう。
【0051】
そこで本実施形態では、ピストン136の移動に伴う荷重を高めて、ロードリミッター荷重を保持することで、一次ロックが解除される現象を防ぐことで、再ロックの発生を防止する構成を採用した。すなわちピストン136は、その移動方向の長さLaが図4(b)に示したようにパイプ134の内径Lbよりも十分に長く、その内径がパイプの内径Lbよりもわずかに大きくなっている。
【0052】
このため、ピストン136は、ロードリミッター作動開始直後、図4(c)に示すように、押し戻されたボール138aによって移動力を受けて、パイプ134の湾曲部144の内壁166、168との大きな接触面積を保ちつつ、内壁166、168に密着した状態で変形する。さらにピストン136は、内壁166、168に沿って全体的に曲がりながら移動し、パイプ134の湾曲部144を通過して図5に示す位置まで押し戻される。これによって、ピストン136は、ロードリミッター作動時において、図4(c)に示す位置から図5に示す位置までパイプ134内を移動し湾曲部144を通過するとき、湾曲部144の内壁166、168との間で摩擦力が大きくなり、当該内壁166、168から大きな垂直抗力Fa、Fbを受け、さらに曲げ抵抗Fc、Fdも増加することになる。
【0053】
したがって、リトラクタ100によれば、パイプ134内でのピストン136の移動に伴う荷重を高めることができ、ロードリミッター荷重を保持して、一次ロックが解除される現象を防ぐことで、再ロックの発生を防止し、車両緊急時の乗員のより高い安全性を確保できる。なおピストン136の移動方向の長さが長い分、ボール138の数を減らしてガスジェネレータ142の燃焼室の初期容積を合わせることになるため、ボール138の数を減らした分、コスト削減を図ることもできる。また、ピストン136は、既存のピストンに対して長さを変更することが実現できるため、追加部品なども不要であり、各種リトラクタに適用できる。さらにピストン136の長さが変更されているため、既存のピストンとの識別も容易である。
【0054】
またリトラクタ100では、ピストン136の本体154のボール側に凹部156が形成されているので、凹部156とボール138とが確実に接触できる。従ってピストン136がガスで押されている状態において、大量のガスがボール138のある側のパイプ134内に移動することを、ボール138によって防止可能となる。一方、ガスジェネレータ142で発生したガスの一部は、ピストン136の貫通孔164を通過し、さらに凹部156の溝部160を通って、ボール側に移動できる。したがって、リトラクタ100では、ガスジェネレータ142とピストン136との間のガス圧が高くなり過ぎることを回避し、パイプ134の破壊を防止できる。
【0055】
図6は、図4のピストン136のその他の例を例示する図である。図中では、その他の例のピストン136Aを図4に示すピストン136と対応させて示している。ピストン136Aは、その移動方向の長さLc(図6(b)参照)がピストン136の移動方向の長さLaよりも短く、さらに材料を変更している点、本体154Aのガスジェネレータ側の端面162Aに窪み部170が形成されている点で、ピストン136と異なっている。なお図6(b)に示すように、ピストン136Aの内径は、パイプ134の内径Lbよりもわずかに大きくなっている。
【0056】
ピストン136Aの材料は、ロードリミッター作動時のピストン136Aの移動に伴う荷重を高めて再ロックの発生を防止するという観点から、デューロメータ硬さ、曲げ強度、アイソッド衝撃強さを基準にそれぞれ選定している。なおここでのデューロメータ硬さは、測定条件をデューロメータ、試験方法をJIS K7125、単位をDスケールとした際の表面硬さである。アイソッド衝撃強さは、測定条件を23℃あるいは−20℃、試験方法をASTM D256、単位をJ/mノッチとした際のアイソッド衝撃強さ試験で得られる。
【0057】
ピストン136Aは、ロードリミッター作動開始直後、図6(c)に示すように、押し戻されたボール138aによって移動力を受けて、パイプ134の湾曲部144の内壁166、168に密着した状態で変形しつつ、内壁166、168に沿って曲がりながら移動し、パイプ134の湾曲部144を通過する。
【0058】
このため、ピストン136Aは、ロードリミッター作動時において、図6(c)に示す位置からパイプ134内を移動し湾曲部144を通過するとき、湾曲部144の内壁166、168から大きな垂直抗力Fa、Fbを受け、さらに曲げ抵抗Fc、Fdも受ける。そこで、ピストン136Aの材料として、曲げ抵抗Fc、Fdが増加するものを選定することで、結果的に、ロードリミッター作動時のピストン136Aの移動に伴う荷重を高めることができる。
【0059】
ピストン136Aの材料は、デューロメータ硬さがDスケール63以上のもの(図8(b)参照)、または、曲げ強度が350MPa以上であるものであれば、ピストン136Aの移動に伴う荷重を高めて、再ロックの発生を防止できる。
【0060】
さらにピストン136Aの材料は、23℃、または−20℃でのアイゾット衝撃強さ試験で破壊強度値が測定されるものであればよい。なおピストン136Aの材料としては、破壊強度値に限らず、測定値が観測されるものであれば適宜の材料を選択してよい(ただし測定値が得られない材料は、本発明には含まれない)。一例として、結晶層(ハードセグメント)と非晶層(ソフトセグメント)とのブロック共重合体であるハイトレル(登録商標)という材料を選定することで、ピストン136Aの移動に伴う荷重を高めて、再ロックの発生を防止できる。
【0061】
したがって、ピストン136Aによれば、パイプ134内での移動に伴う荷重を高めることができ、ロードリミッター荷重を保持して、再ロックの発生を防止し、車両緊急時の乗員の安全性を確保できる。また、ピストン136Aは、本体154Aのガスジェネレータ側に窪み部170が形成されているので、ガスジェネレータ142によるガス圧をピストン136Aに十分に作用させることができる。なお本体154Aには貫通孔164Aが形成されているので、ガスジェネレータ142とピストン136Aとの間のガス圧が高くなり過ぎることを回避できる(図5の場合と同様である)。さらにピストン136Aは、既存のピストンに対して材料を変更することで実現できるため、追加部品なども不要であり、各種リトラクタに適用できる。
【0062】
図7は、本発明の実施形態と比較例とのウェビング荷重およびウェビング荷重の変化速度を比較したグラフである。図7(a)では、横軸を時間(ms)、縦軸をウェビング荷重(N)とした。図7(b)では、横軸を時間(ms)、縦軸をウェビング荷重の変化速度(N/ms)とした。なお各グラフでは、本実施形態を実線、比較例を点線で示している。本実施形態としては、ピストン136、136Aを用いている。比較例としては、ピストンの移動方向の長さを長くしていない既存の材料からなるピストンを用いている。
【0063】
図7(a)、図7(b)に示す各グラフは、車両緊急時のプリテンショナ作動後からロードリミッター作動完了後までの間でのウェビング荷重の変化、ウェビング荷重の変化速度の変化をそれぞれ示している。
【0064】
図7(a)のグラフに示されるように、本実施形態では、80−100(ms)の間でウェビング荷重が5000−6000(N)の間で安定している。一方、比較例では、ウェビング荷重が4000−7000(N)まで大きく変化している。さらに比較例のウェビング荷重の変化速度は、図7(b)のグラフに示されるように、1000(N/ms)を超え、−1000(N/ms)を下回っている。
【0065】
したがって、比較例のピストンを用いた場合には再ロックが発生し、本実施形態のピストン136、136Aを用いた場合には、再ロックが発生しないことが確認できる。
【0066】
図8は、本発明の実施形態のピストン136、136Aと再ロックとの関係を例示するグラフである。図8(a)では、横軸をピストン136の移動方向の長さ(mm)、縦軸をウェビング荷重の変化速度(N/ms)とした。なおピストン136が移動するパイプ134の内径は10mmとしている。図8(b)では、横軸をデューロメータ硬さ(Dスケール)、縦軸をウェビング荷重の変化速度(N/ms)としている。各グラフは、車両緊急時のプリテンショナ作動後からロードリミッター作動完了後までの間でのウェビング荷重の変化速度の変化をそれぞれ示している。
【0067】
図8(a)のグラフに示されるように、ピストンの移動方向の長さが、14mm、16mm、18mmであれば、ウェビング荷重の変化速度は1000(N)未満となっている。一方、ピストンの移動方向の長さが、14mm未満、ここでは8mm、10mm、12mmであるとき、ウェビング荷重の変化速度が3500(N/ms)付近となり、1000(N/ms)を超えている。
【0068】
したがって、図8(a)のグラフに示されるように、パイプ134の内径が10mmであるとき、ピストン136の移動方向の長さが14mm以上であれば、すなわちパイプ134の内径の1.4倍以上であれば、再ロックが発生しないことが確認できる。
【0069】
図8(b)のグラフに示されるように、ピストン136Aのデューロメータ硬さが、63、72であれば、ウェビング荷重の変化速度は1000(N)未満となっている。一方、ピストンのデューロメータ硬さが、63mm未満、ここでは47、55であるとき、ウェビング荷重の変化速度が3000(N/ms)付近となり、1000(N/ms)を超えている。
【0070】
したがって、図8(b)のグラフに示されるように、ピストンの移動方向の長さを長くしない場合であっても、ピストン136Aのデューロメータ硬さがDスケール63以上であれば、再ロックが発生しないことが確認できる。
【0071】
このように、本実施形態におけるリトラクタ100では、ロードリミッター作動時のピストン136、136Aの移動に伴う荷重を高めるという観点から、ピストン136の移動方向の長さを長くする、あるいは、ピストン136Aの材料を選定することで、再ロックの発生を防止し、車両緊急時の乗員の安全性を確保できる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
また、上記実施形態においては本発明にかかるシートベルト用リトラクタを自動車に適用した例を説明したが、自動車以外にも航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、乗員拘束用のウェビングの巻取および巻出を行うシートベルト用リトラクタに利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8