【実施例1】
【0010】
<1>全体構成(
図1)
本発明の第1実施例について説明する。
本実施例に係るビニールハウスにおける温度調整構造は、
図1に示すようにビニールハウスA内に設置した高設栽培用の栽培ベッド10と、当該栽培ベッド10に植えた栽培対象Bの近傍周囲を取り囲むように区画された空間である温調空間20と、温調空間20に暖冷気を送り込む空調機30と、前記空調機30の近傍周囲を取り囲むように区画された空間からなる閉塞空間40と、温調空間20内の暖冷気の流れを生成する送風機50とを有して構成する。
【0011】
<2>栽培ベッド(
図2)
栽培ベッド10は、栽培対象Bを植えておくための部材である。
本発明では、
図2に示すように上部を開口した箱形の栽培ベッド10を用いる。
この栽培ベッド10をビニールハウスA内に適宜設置した架台11に載置し、栽培ベッド10に収容した砂や養液などの培地12に栽培対象を植えることで高設栽培が可能な構成としている。
【0012】
<3>温調空間(
図1、
図2)
温調空間20は、栽培対象Bの周囲を望ましい温度環境に維持するための空間である。
温調空間20は、前記ビニールハウスAの内部空間A1のうち、栽培対象Bの近傍周囲の空間を取り囲むように区画して構成する。
温調空間20の形成するための構造や方法は特段限定しない。
本実施例では、
図1に示すように、温調空間20を、ビニールハウスA内の地面と、前記栽培ベッド10の周囲を覆うように敷設したシート21とで形成している。
【0013】
<3.1>シート(
図2)
シート21は、温調空間20を区画するための部材である。
シート21は空気を通さない部材であることが好ましく、かつ可撓性を有する部材、例えばビニールシートなどを用いることができる。
このシート21を、前記栽培ベッド10に所定間隔を空けて取り付けたアーチ状の支柱材に対し、クリップなどを用いて脱着自在に取り付ける。
シート21に透明の部材を用いると、栽培ベッド10内部を視認できたり、日光の取り込みを許容できたりする点で好適である。
シート21は、複数の栽培ベッド10を長手方向に並べてある一列のベッド群の全長をまかなう一部材で構成してもよいし、前記一列のベッド群に対し複数のシート21を連続配置して構成してもよい。前者の場合は、一列のベッド群に対し、シート21の取り付け作業および取り外し作業が一手順で完結する点で好適であり、後者の場合は、一列のベッド群に対し部分的にシート21を取り外して、栽培対象Bの様子の確認作業や、温調空間20とビニールハウスA内のその余の空間との間を通気する作業を行う場合に好適である。
【0014】
<3.2>温調空間の機能(
図1)
上記の通り形成された温調空間20は、それ自体がビニールハウスA内に設置された局所的なビニールハウスAとして機能する。
なお、温調空間20は、完全に密閉された空間であることを要するものではなく、シート21の裾部と地面との間に隙間が形成されているような態様を本発明から除外するものではない。
【0015】
<4>空調機(
図1)
空調機30は、暖冷気を生成するための装置である。
空調機30は、暖房機能および冷房機能のうち少なくとも何れか一方の機能を有すればよく、エアコン、ボイラー、ストーブ、保温器その他の暖冷房装置が含まれる。
本実施例では、空調機30を、後述する閉塞空間40の中に設置している。
なお、空調機30に送風機能が無い場合には、生成した暖冷気を温調空間20に送るためのファンを別途設けておいても良い。
【0016】
<5>閉塞空間(
図1)
閉塞空間40は、空調機30の近傍周囲を取り囲むように区画された空間である。
閉塞空間40は、ビニールハウスA内の作業空間の全てに連通する構成とはせず、前記した温調空間20と連通するように構成する。
この閉塞空間40の中の空調機30から出力した暖冷気を前記温調空間20に送り出していくことで、栽培ベッド10の周囲を所定の温度に調整する。
なお、本発明における閉塞空間40における「閉塞」とは、完全な密閉状態を意図するものではなく、作業員の出入口、空調機30に必要な吸排気口、閉塞空間40と連通する温調空間20の構築時に僅かに形成される隙間などからの暖冷気の漏れは許容した上での、実質的な閉塞を意図するものである。
本実施例では、閉塞空間40を、温調空間20の長手方向一端側に接続するように設けている。
【0017】
<6>送風機(
図1)
送風機50は、温調空間20内の暖冷気の流れを制御するための装置である。
送風機50は、温調空間20内の温度ムラを防止するために、暖冷気を循環させるべく、所定の位置に設置する。
送風機50は、サーキュレーターや工場扇、換気扇などを用いる事ができる。
本実施例では、複数の栽培ベッド10を長手方向に並べてある一列のベッド群の周囲に形成された温調空間20の内部において、前記閉塞空間40を設けた端部側と反対側の端部であって、かつ栽培ベッド10の下部に形成された空間へと送風可能な高さに送風機50を設けている。
【0018】
<7>使用イメージ(
図2,3)
次に、
図2,
図3を参照しながら、本発明に係る温度調整構造の使用イメージについて説明する。
【0019】
<7.1>使用状態(
図3)
送風機50の稼働によって温調空間20内における栽培ベッド10よりも下方の領域は、送風機50から閉塞空間40側へと空気が流れる。
この空気の流れに伴い、温調空間20の長手方向他端側では、栽培ベッド10の上部側から下部側へと折り返すように空気が流れる。
上記の流れによって、温調空間20の上部側では、温調空間20の長手方向一端側から他端側へと空気の流れができ、閉塞空間40に出力された暖冷気は、温調空間20の上部側の開口部へと流れる。また、温調空間20の下部側は、送風機50による空気の流れでもって、暖冷気の流れが逆流することを防止している。
【0020】
<7.2>非使用時(
図2)
温調空間20内の温度が過度に上昇または低下している場合や、夜間など温度調整の必要性に乏しい場合には、
図2で示したように、シート21の側部を下から捲りロール状に巻き取るなどして開放しておけば、温調空間20とビニールハウスA内のその余の空間との間を連通させて換気することができる。
【実施例2】
【0021】
[CO
2供給機の追加](
図4)
本発明の第2実施例について、
図4を参照しながら説明する。
本発明では、温調空間20にCO
2ガスを送り込む、CO
2供給機60を設けてもよい。なお、
図4では、CO
2供給機60を空調機30と同一空間に設置しているが、本発明では上記の設置例に限定するものではない。
CO
2供給機60は、炭酸ガス発生機や光合成促進機とも呼ばれる公知の装置を用いることができる。
また、本発明において空調機30とCO
2供給機60とは別体の装置であることを限定するものではなく、一体化した装置を用いても良い。
また、空調機30として用いるボイラーの燃焼で排出された排気ガスに含まれるCO
2を流用してもよい。
このCO
2供給機60からCO
2ガスを温調空間20内に送り込むことで、温調空間20内の二酸化炭素濃度を高めることができる。
また、温調空間20内は、ビニールハウスA内のその余の空間から区画されているため、作業従事者が歩き回るその他の空間内の二酸化炭素濃度が高くなりにくく、息苦しさ、倦怠感、頭痛などの人体に対する影響も発生しない。
その結果、作業従事者の人体に悪影響を生じさせることなく、温調空間20内の二酸化炭素濃度を光合成の促進が期待できる望ましい値にまで高めることができ、栽培対象Bの成長を促進させることができる。
【実施例3】
【0022】
[土耕栽培での適用例](
図5)
本発明の第3実施例について、
図5を参照しながら説明する。
本発明に係る温度調整構造は、いわゆる土耕栽培、すなわち栽培対象がビニールハウス内の地面に植えられている場合にも適用することができる。
図5に示す概略平面図では、一つのビニールハウスA内において、直線状に延びる畝Cを複数列配置しており、この畝C毎に温調空間20を形成している。
温調空間20は畝Cを跨ぐように配置したアーチ状の支柱材と、当該支柱材を骨組として畝の近傍周囲を覆うように敷設したシートでもって構成することができる。
温調空間20の長手方向一端側は、空調機30を設置している閉塞空間40に接続している。
また、温調空間20の長手方向他端側には、換気扇からなる送風機50を設けつつ、ビニールハウスA内に別途設けたダクト70を接続している。
各温調空間20に接続したダクト70の出口は閉塞空間40へと繋がり、温調空間20を通った暖冷気は、送風機50によってダクトへと送られ、閉塞空間40へと循環する。
また、
図5に図示しないが、実施例2で説明した暖冷気の流路の途上に、CO
2供給機を追加してもよい。
当該構成によっても、畝の周りに設けた温調空間自体がビニールハウス内に設置された局所的なビニールハウスとして機能し、栽培対象の育成促進のための温度調整コストを削減することができる。