特許第6768168号(P6768168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6768168
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ビニールハウスの温度調整構造
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20201005BHJP
   A01G 9/18 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   A01G9/24 M
   A01G9/24 R
   A01G9/18
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-98804(P2020-98804)
(22)【出願日】2020年6月5日
【審査請求日】2020年6月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】大森 道生
(72)【発明者】
【氏名】服部 将平
(72)【発明者】
【氏名】境 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 賢介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将介
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−92421(JP,A)
【文献】 特開平5−30(JP,A)
【文献】 特開平5−308857(JP,A)
【文献】 特開2001−211757(JP,A)
【文献】 実開平4−124055(JP,U)
【文献】 特開2002−330640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 − 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウスにおける温度調整構造であって、
前記ビニールハウスの内部空間のうち栽培対象の近傍周囲を取り囲むように区画された空間からなる、温調空間と、
前記温調空間に暖冷気を送り込む、空調機と、
前記温調空間内での前記暖冷気の流れを生成する、送風機と、
を少なくとも有し、
前記栽培対象が、高設栽培用の栽培ベッドに植えられており、
前記温調空間の長手方向の一端側に前記空調機を設け、
前記温調空間の長手方向の他端側に前記送風機を設け、
前記送風機が、前記温調空間のうち前記栽培ベッドよりも下方の空間において前記空調機側へと送風し、
前記温調空間のうち前記栽培ベッドよりも上方の空間では、前記空調機からの暖冷気が前記送風機側に流れて循環することを特徴とする、
ビニールハウスにおける温度調整構造。
【請求項2】
前記空調機の近傍周囲を取り囲むように区画された空間からなる、閉塞空間を更に有し、
前記閉塞空間から、前記温調空間に前記暖冷気を送り込むことを特徴とする、
請求項1に記載のビニールハウスにおける温度調整構造。
【請求項3】
前記温調空間にCOガスを送り込む、CO供給機を更に有することを特徴とする、
請求項1または2に記載のビニールハウスにおける温度調整構造。
【請求項4】
前記温調空間が、前記ビニールハウス内の地面と、前記栽培ベッドの周囲を覆うように敷設したシートによって形成されていることを特徴とする
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のビニールハウスにおける温度調整構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用のビニールハウスの室温保持をより低コストで実現するための温度調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用のビニールハウスにおける温度調整方法について、以下の特許文献に記載の技術が知られている。
特許文献1には、加温機、温度センサ、循環扇、制御装置を備えた暖房制御システムであって、温度センサを介して取得した温度情報に基づいて、加温機および循環扇を連携運転させることで、燃料コスト等の削減に寄与するとした技術が開示されている。
また、特許文献2には、砂栽培ベッドの真下に温風暖房のダクトを設置することで保温性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第564430号公報
【特許文献2】実開昭52−136048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載の技術では、以下に記載する問題のうち何れか1つの問題を有する。
(1)特許文献1では、ビニールハウスの中を全体的に温度調整する前提下で燃料コストの削減を目指しているに過ぎない。
(2)特許文献2では、栽培ベッドの近くに温風を流すダクトを配置することでベッド周辺を保温することを目指しているものの、ダクトの温風で加温された周囲の空気はビニールハウス内に分散されてしまい、効率向上に限界がある。
【0005】
そこで、本発明は、農業用のビニールハウスにおいて、栽培対象周辺の温度調整をより低コストで実現するための温度調整構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、ビニールハウスにおける温度調整構造であって、前記ビニールハウスの内部空間のうち栽培対象の近傍周囲を取り囲むように区画された空間からなる、温調空間と、前記温調空間に暖冷気を送り込む、空調機と、前記温調空間内での前記暖冷気の流れを生成する、送風機と、を少なくとも有し、前記栽培対象が、高設栽培用の栽培ベッドに植えられており、前記温調空間の長手方向の一端側に前記空調機を設け、前記温調空間の長手方向の他端側に前記送風機を設け、前記送風機が、前記温調空間のうち前記栽培ベッドよりも下方の空間において前記空調機側へと送風し、前記温調空間のうち前記栽培ベッドよりも上方の空間では、前記空調機からの暖冷気が前記送風機側に流れて循環することを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記空調機の近傍周囲を取り囲むように区画された空間からなる、閉塞空間を更に有し、前記閉塞空間から、前記温調空間に前記暖冷気を送り込むことを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1発明または第2発明において、前記温調空間にCOガスを送り込む、CO供給機を更に有することを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第1発明乃至第3発明のうち何れか1つの発明において、前記温調空間が、前記ビニールハウス内の地面と、前記栽培ベッドの周囲を覆うように敷設したシートによって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を有する。
(1)温調空間自体がビニールハウス内に設置された局所的なビニールハウスとして機能し、栽培対象の育成促進のための温度調整コストを削減できる。
(2)ビニールハウスの内部空間を区画して設けるか、あるいはビニールハウスとは別に設けた閉塞空間に空調機を設置することで、空調機からの暖冷気をビニールハウス全体に分散させることとなく、温調空間に直接届けることができる。
(3)温調空間を、ビニールハウス内の地面と、栽培ベッドの周囲を覆うように敷設したシートとで構成することで、シートの開け閉めでもって、温調空間の密閉度合いを簡単に調整することができる。
(4)温調空間にCOガスを送り込むCO供給機を設けることで、ビニールハウス内に留まる作業従事者による二酸化炭素濃度増の悪影響を与えること無く、栽培対象の育成促進を図ることができる。
(5)空調機からの暖冷気を送風機で循環させることで、温調空間全体を均一に温度調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係るビニールハウスの温度調整構造を示す概略側面図。
図2】温調空間のイメージを示す概略斜視図。
図3】暖冷気の流れを示す概略側面図。
図4】実施例2に係るビニールハウスの温度調整構造を示す概略側面図。
図5】実施例3に係るビニールハウスの温度調整構造を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
<1>全体構成(図1
本発明の第1実施例について説明する。
本実施例に係るビニールハウスにおける温度調整構造は、図1に示すようにビニールハウスA内に設置した高設栽培用の栽培ベッド10と、当該栽培ベッド10に植えた栽培対象Bの近傍周囲を取り囲むように区画された空間である温調空間20と、温調空間20に暖冷気を送り込む空調機30と、前記空調機30の近傍周囲を取り囲むように区画された空間からなる閉塞空間40と、温調空間20内の暖冷気の流れを生成する送風機50とを有して構成する。
【0011】
<2>栽培ベッド(図2
栽培ベッド10は、栽培対象Bを植えておくための部材である。
本発明では、図2に示すように上部を開口した箱形の栽培ベッド10を用いる。
この栽培ベッド10をビニールハウスA内に適宜設置した架台11に載置し、栽培ベッド10に収容した砂や養液などの培地12に栽培対象を植えることで高設栽培が可能な構成としている。
【0012】
<3>温調空間(図1図2
温調空間20は、栽培対象Bの周囲を望ましい温度環境に維持するための空間である。
温調空間20は、前記ビニールハウスAの内部空間A1のうち、栽培対象Bの近傍周囲の空間を取り囲むように区画して構成する。
温調空間20の形成するための構造や方法は特段限定しない。
本実施例では、図1に示すように、温調空間20を、ビニールハウスA内の地面と、前記栽培ベッド10の周囲を覆うように敷設したシート21とで形成している。
【0013】
<3.1>シート(図2
シート21は、温調空間20を区画するための部材である。
シート21は空気を通さない部材であることが好ましく、かつ可撓性を有する部材、例えばビニールシートなどを用いることができる。
このシート21を、前記栽培ベッド10に所定間隔を空けて取り付けたアーチ状の支柱材に対し、クリップなどを用いて脱着自在に取り付ける。
シート21に透明の部材を用いると、栽培ベッド10内部を視認できたり、日光の取り込みを許容できたりする点で好適である。
シート21は、複数の栽培ベッド10を長手方向に並べてある一列のベッド群の全長をまかなう一部材で構成してもよいし、前記一列のベッド群に対し複数のシート21を連続配置して構成してもよい。前者の場合は、一列のベッド群に対し、シート21の取り付け作業および取り外し作業が一手順で完結する点で好適であり、後者の場合は、一列のベッド群に対し部分的にシート21を取り外して、栽培対象Bの様子の確認作業や、温調空間20とビニールハウスA内のその余の空間との間を通気する作業を行う場合に好適である。
【0014】
<3.2>温調空間の機能(図1
上記の通り形成された温調空間20は、それ自体がビニールハウスA内に設置された局所的なビニールハウスAとして機能する。
なお、温調空間20は、完全に密閉された空間であることを要するものではなく、シート21の裾部と地面との間に隙間が形成されているような態様を本発明から除外するものではない。
【0015】
<4>空調機(図1
空調機30は、暖冷気を生成するための装置である。
空調機30は、暖房機能および冷房機能のうち少なくとも何れか一方の機能を有すればよく、エアコン、ボイラー、ストーブ、保温器その他の暖冷房装置が含まれる。
本実施例では、空調機30を、後述する閉塞空間40の中に設置している。
なお、空調機30に送風機能が無い場合には、生成した暖冷気を温調空間20に送るためのファンを別途設けておいても良い。
【0016】
<5>閉塞空間(図1
閉塞空間40は、空調機30の近傍周囲を取り囲むように区画された空間である。
閉塞空間40は、ビニールハウスA内の作業空間の全てに連通する構成とはせず、前記した温調空間20と連通するように構成する。
この閉塞空間40の中の空調機30から出力した暖冷気を前記温調空間20に送り出していくことで、栽培ベッド10の周囲を所定の温度に調整する。
なお、本発明における閉塞空間40における「閉塞」とは、完全な密閉状態を意図するものではなく、作業員の出入口、空調機30に必要な吸排気口、閉塞空間40と連通する温調空間20の構築時に僅かに形成される隙間などからの暖冷気の漏れは許容した上での、実質的な閉塞を意図するものである。
本実施例では、閉塞空間40を、温調空間20の長手方向一端側に接続するように設けている。
【0017】
<6>送風機(図1
送風機50は、温調空間20内の暖冷気の流れを制御するための装置である。
送風機50は、温調空間20内の温度ムラを防止するために、暖冷気を循環させるべく、所定の位置に設置する。
送風機50は、サーキュレーターや工場扇、換気扇などを用いる事ができる。
本実施例では、複数の栽培ベッド10を長手方向に並べてある一列のベッド群の周囲に形成された温調空間20の内部において、前記閉塞空間40を設けた端部側と反対側の端部であって、かつ栽培ベッド10の下部に形成された空間へと送風可能な高さに送風機50を設けている。
【0018】
<7>使用イメージ(図2,3)
次に、図2図3を参照しながら、本発明に係る温度調整構造の使用イメージについて説明する。
【0019】
<7.1>使用状態(図3
送風機50の稼働によって温調空間20内における栽培ベッド10よりも下方の領域は、送風機50から閉塞空間40側へと空気が流れる。
この空気の流れに伴い、温調空間20の長手方向他端側では、栽培ベッド10の上部側から下部側へと折り返すように空気が流れる。
上記の流れによって、温調空間20の上部側では、温調空間20の長手方向一端側から他端側へと空気の流れができ、閉塞空間40に出力された暖冷気は、温調空間20の上部側の開口部へと流れる。また、温調空間20の下部側は、送風機50による空気の流れでもって、暖冷気の流れが逆流することを防止している。
【0020】
<7.2>非使用時(図2
温調空間20内の温度が過度に上昇または低下している場合や、夜間など温度調整の必要性に乏しい場合には、図2で示したように、シート21の側部を下から捲りロール状に巻き取るなどして開放しておけば、温調空間20とビニールハウスA内のその余の空間との間を連通させて換気することができる。
【実施例2】
【0021】
[CO供給機の追加](図4
本発明の第2実施例について、図4を参照しながら説明する。
本発明では、温調空間20にCOガスを送り込む、CO供給機60を設けてもよい。なお、図4では、CO供給機60を空調機30と同一空間に設置しているが、本発明では上記の設置例に限定するものではない。
CO供給機60は、炭酸ガス発生機や光合成促進機とも呼ばれる公知の装置を用いることができる。
また、本発明において空調機30とCO供給機60とは別体の装置であることを限定するものではなく、一体化した装置を用いても良い。
また、空調機30として用いるボイラーの燃焼で排出された排気ガスに含まれるCOを流用してもよい。
このCO供給機60からCOガスを温調空間20内に送り込むことで、温調空間20内の二酸化炭素濃度を高めることができる。
また、温調空間20内は、ビニールハウスA内のその余の空間から区画されているため、作業従事者が歩き回るその他の空間内の二酸化炭素濃度が高くなりにくく、息苦しさ、倦怠感、頭痛などの人体に対する影響も発生しない。
その結果、作業従事者の人体に悪影響を生じさせることなく、温調空間20内の二酸化炭素濃度を光合成の促進が期待できる望ましい値にまで高めることができ、栽培対象Bの成長を促進させることができる。
【実施例3】
【0022】
[土耕栽培での適用例](図5
本発明の第3実施例について、図5を参照しながら説明する。
本発明に係る温度調整構造は、いわゆる土耕栽培、すなわち栽培対象がビニールハウス内の地面に植えられている場合にも適用することができる。
図5に示す概略平面図では、一つのビニールハウスA内において、直線状に延びる畝Cを複数列配置しており、この畝C毎に温調空間20を形成している。
温調空間20は畝Cを跨ぐように配置したアーチ状の支柱材と、当該支柱材を骨組として畝の近傍周囲を覆うように敷設したシートでもって構成することができる。
温調空間20の長手方向一端側は、空調機30を設置している閉塞空間40に接続している。
また、温調空間20の長手方向他端側には、換気扇からなる送風機50を設けつつ、ビニールハウスA内に別途設けたダクト70を接続している。
各温調空間20に接続したダクト70の出口は閉塞空間40へと繋がり、温調空間20を通った暖冷気は、送風機50によってダクトへと送られ、閉塞空間40へと循環する。
また、図5に図示しないが、実施例2で説明した暖冷気の流路の途上に、CO供給機を追加してもよい。
当該構成によっても、畝の周りに設けた温調空間自体がビニールハウス内に設置された局所的なビニールハウスとして機能し、栽培対象の育成促進のための温度調整コストを削減することができる。
【実施例4】
【0023】
[閉塞空間の省略](図示せず)
本発明では、閉塞空間40を設けない構成とすることもできる(図示せず)。
例えば、空調機30がダクト出力である場合、このダクトと温調空間20とを接続させれば、空調機30からの暖冷気を直接温調空間20に送り込むこともできる。
【符号の説明】
【0024】
10:栽培ベッド
11:架台
12:培地
20:温調空間
21:シート
30:空調機
40:閉塞空間
50:送風機
60:CO供給機
70:ダクト
A:ビニールハウス
A1:内部空間
B:栽培対象
C:畝
【要約】
【課題】栽培対象周辺の温度調整をより低コストで実現すること。
【解決手段】ビニールハウスにおける温度調整構造であって、ビニールハウスAの内部空間A1のうち栽培対象Bの近傍周囲を取り囲むように区画された空間からなる温調空間20と、温調空間20に暖冷気を送り込む空調機30を設ける。温調空間20自体をビニールハウスA内に設置した局所的なビニールハウスとして機能させることで、栽培対象Bの育成促進のための温度調整コストを削減できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5