特許第6768189号(P6768189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768189
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/037 20060101AFI20201005BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   C03B33/037
   B28D5/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-43433(P2016-43433)
(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-160064(P2017-160064A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】八木 直彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 直之
(72)【発明者】
【氏名】野口 和也
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−126779(JP,A)
【文献】 特開平11−087278(JP,A)
【文献】 特開平01−009826(JP,A)
【文献】 特開2008−100258(JP,A)
【文献】 特開2012−117943(JP,A)
【文献】 特開2014−014840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/037
B28D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めの基準となるガラス板の基準辺部が位置決めラインに倣って延びるように、前記ガラス板を位置決めする位置決め工程を含んだガラス板の製造方法であって、
前記ガラス板が、可撓性を有するガラスフィルムであり、
前記ガラス板を載置する載置台を設置し、
前記載置台上で前記ガラス板を支持する発泡樹脂シートを有し、
前記位置決めライン上の第一区間を視野に収める第一撮像手段と、前記位置決めライン上の前記第一区間とは異なる第二区間を視野に収める第二撮像手段とを用いて、
前記第一撮像手段が撮像した第一画像、及び、前記第二撮像手段が撮像した第二画像の双方に、それぞれ前記基準辺部の一部区間が映し出されるように前記発泡樹脂シートを移動させながら調節を行うことで、前記載置台上で前記ガラス板の前記位置決め工程を実行することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記第一画像および前記第二画像の各々に、前記位置決めラインに対応する位置決め目標線を表示させることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記第一画像および前記第二画像の各々について、前記位置決め目標線を境界とする両側に、前記位置決めラインに対する前記基準辺部の傾きの許容範囲を示す目印を表示させることを特徴とする請求項2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記目印が、前記位置決め目標線と平行に延びる位置決め補助線であることを特徴とする請求項3に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記第一画像と前記第二画像との間で、前記位置決め目標線同士および前記位置決め補助線同士が同一直線上に位置するように、両画像を並べて表示させることを特徴とする請求項4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記載置台における前記第一撮像手段の視野に収まる箇所、及び、前記第二撮像手段の視野に収まる箇所のそれぞれに、位置決めを補助する補助目印を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記第一撮像手段および前記第二撮像手段を前記ガラス板の表面側に配置し
前記ガラス板の表面で鏡面反射した光が、前記第一撮像手段および前記第二撮像手段にそれぞれ入光するように、光源を配置することを特徴とする請求項1〜6に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記第一撮像手段の視野と前記第二撮像手段の視野との相互間の間隔を、変更可能とすることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項9】
前記第一撮像手段の視野が固定されており、前記第二撮像手段の視野が移動可能であることを特徴とする請求項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項10】
一直線に延びる切断軌道に沿って前記ガラス板を切断する切断装置により、前記ガラス板を前記基準辺部と直交する方向に切断する切断工程を実行するに際し、前記基準辺部が前記切断軌道と直交する前記位置決めラインに倣って延びるように、前記位置決め工程を実行することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項11】
前記位置決め工程の実行前に、前記ガラス板を切断して該ガラス板に相互に平行に延びる二つの辺部を形成し、
前記位置決め工程において、前記二つの辺部のうちの一方を前記基準辺部とし、
前記切断工程の実行により、前記ガラス板に前記二つの辺部と直交する方向に延びる二つの辺部を形成することを特徴とする請求項10に記載のガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の切断等を実行するに際し、ガラス板の位置決めを行う工程を含んだガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、代表的な形状のガラス板として矩形ガラス板がある。この矩形ガラス板を製造するための手法の一例としては、これの元となる母ガラス板を切断することにより、母ガラス板から矩形ガラス板を切り出す手法を挙げることができる。このような手法を採用する場合には、例えば、下記の第一〜第三の工程を実行する。
【0003】
はじめに、第一の工程として、一直線に延びる切断軌道に沿って母ガラス板を切断する切断装置により、母ガラス板を平行に二回切断することで、矩形ガラス板の四つの辺部のうち、まずは平行な二つの辺部のみを切り出す。次に、第二の工程として、切り出された二つの辺部の一方を位置決めの基準となる基準辺部とし、母ガラス板の向きを平面視で略90°転換させた後、基準辺部が切断装置の切断軌道と直交する位置決めラインに倣って延びるように、母ガラス板の位置決めを行う。最後に、第三の工程として、位置決めされた母ガラス板を切断装置で平行に二回切断することで、矩形ガラス板の残りの二つの辺部を切り出す。以上の工程により、母ガラス板から矩形ガラス板が切り出される。
【0004】
ここで、第二の工程で行う位置決めは、例えば、特許文献1に開示された方法を利用して行うことが可能である。同文献に開示された方法は、加工テーブルに載置されたガラス板の縦方向に延びる基準辺部(同文献ではエッジ)を二つの位置決めピンに当接させると共に、横方向に延びる基準辺部を一の位置決めピンに当接させることにより、ガラス板の位置決めを行う方法である。なお、同方法を第二の工程で行う位置決めに利用する場合には、二つの位置決めピンと当接する一の辺部のみを基準辺部として位置決めを行うことができる。この場合、二つの位置決めピンを通過する直線が、基準辺部が倣うべき位置決めラインとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−91126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法を利用してガラス板の位置決めを行った場合には、下記のような解決すべき問題が発生している。
【0007】
すなわち、近年、ガラス板の薄板化が急速に推進されており、フィルム状にまで薄板化されたガラス板(ガラスフィルム)が開発、製造されるに至っている。このようなガラス板は、その厚みが極めて薄いことから、僅かな外力が作用するだけで容易に撓みを生じてしまう。このため、上記の方法を利用した場合には、位置決めピンとの当接によってガラス板の基準辺部に撓み変形が発生することに起因して、位置決めラインに対する基準辺部の傾きが許容範囲を大きく逸脱してしまう問題があった。
【0008】
このような事態が発生すると、ガラス板の位置決めが実質的になされていない状態となり、上記の第一の工程で切り出した二つの辺部と、第三の工程で切り出した二つの辺部とが、直角となるように形成されず、結果として矩形ガラス板を得ること自体が不可能となる不具合が生じてしまう。このような事情から、ガラス板の厚みが極めて薄い場合も含め、ガラス板の厚みの大小を問わず、その位置決めが可能な技術の開発が期待されていた。
【0009】
上記の事情に鑑みなされた本発明は、ガラス板の厚みの大小を問わず、その位置決めを可能とすることを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、位置決めの基準となるガラス板の基準辺部が位置決めラインに倣って延びるように、ガラス板を位置決めする位置決め工程を含んだガラス板の製造方法であって、位置決めライン上の第一区間を視野に収める第一撮像手段と、位置決めライン上の第一区間とは異なる第二区間を視野に収める第二撮像手段とを用いて、第一撮像手段が撮像した第一画像、及び、第二撮像手段が撮像した第二画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間が映し出されるように調節を行うことで、位置決め工程を実行することに特徴付けられる。
【0011】
この方法では、第一撮像手段と第二撮像手段との両撮像手段が、位置決めライン上の相互に異なる区間を視野に収めている。このことから、両撮像手段がそれぞれ撮像した第一画像および第二画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間が映し出されたならば、必然的に基準辺部が位置決めラインに倣って延びた状態にあることになり、ガラス板が位置決めされた状態にあることになる。以上のことから、両画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間が映し出されるように調節を行えば、ガラス板の位置決めが完了することになる。そして、この方法では、ガラス板を位置決めするにあたって、ガラス板の基準辺部を位置決めピン等の外物と当接させることが不要となる。そのため、ガラス板の厚みが極めて薄い場合であっても、外物との当接によって基準辺部が撓み変形を起こすような事態が必然的に起こり得ない。従って、この方法によれば、ガラス板の厚みの大小を問わず、その位置決めが可能となる。
【0012】
上記の方法において、第一画像および第二画像の各々に、位置決めラインに対応する位置決め目標線を表示させることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、両画像の各々に、位置決めラインに対応する位置決め目標線が表示されていることから、この位置決め目標線を狙って、両画像にそれぞれ映し出された基準辺部の一部区間が、位置決め目標線に倣うように調節すれば、位置決め精度を向上させることができる。
【0014】
上記の方法において、第一画像および第二画像の各々について、位置決め目標線を境界とする両側に、位置決めラインに対する基準辺部の傾きの許容範囲を示す目印を表示させることが好ましい。
【0015】
両撮像手段のそれぞれの視野について、位置決めラインに直交する方向に沿った視野の幅が広すぎる場合、両画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間が映し出されていたとしても、基準辺部が位置決めラインに対して許容範囲を超えて傾いた状態となっている虞がある。しかしながら、両画像の各々について、位置決め目標線を境界とする両側に、位置決めラインに対する基準辺部の傾きの許容範囲を示す目印を表示させれば、上記のような虞を確実に排除することができる。これは、位置決め目標線を境界とした一方側に表示された目印と、他方側に表示された目印との相互間に、基準辺部の一部区間が収まるように調節しさえすれば、基準辺部の傾きを確実に許容範囲に収めることが可能となるためである。さらに、両目印を表示させたことにより、副次的に以下のような効果をも得ることができる。すなわち、両目印の相互間に基準辺部の一部区間が収まるようにすることのみで、位置決め作業が完了するため、当該作業を効率よく行うことが可能となる。
【0016】
上記の方法において、目印が、位置決め目標線と平行に延びる位置決め補助線であることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、第一画像および第二画像の各々において、位置決めラインに対する基準辺部の傾きの許容範囲が一対の位置決め補助線として表示されることから、許容範囲を両画像上で容易に認識することができる。その結果、位置決め作業を更に効率よく行うことができる。
【0018】
上記の方法において、第一画像と第二画像との間で、位置決め目標線同士および位置決め補助線同士が同一直線上に位置するように、両画像を並べて表示させることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、第一画像と第二画像とを並べて表示させていることから、両画像を同時に視認しやすくなる。その上、両画像の間で位置決め目標線同士および位置決め補助線同士が同一直線上に位置しているため、位置決め目標線を境界とした一方側の位置決め補助線と他方側の位置決め補助線との相互間に、基準辺部の一部区間を収めるための調節を、両画像について同時に行う上で極めて有利となる。
【0020】
上記の方法において、ガラス板を載置する載置台を設置し、載置台における第一撮像手段の視野に収まる箇所、及び、第二撮像手段の視野に収まる箇所のそれぞれに、位置決めを補助する補助目印を設けることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、載置台において、両撮像手段のそれぞれの視野に収まる箇所に、補助目印を設けたことで、載置台に載置したガラス板の基準辺部と、両撮像手段のそれぞれの視野との相対的な位置関係を、補助目印に基づいて容易に把握することできる。これにより、基準辺部を素早く両撮像手段のそれぞれの視野に収めることが可能となり、両画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間を迅速に映し出すことができる。その結果、位置決め作業をより一層効率よく行うことが可能となる。
【0022】
上記の方法において、第一撮像手段および第二撮像手段をガラス板の表面側に配置し、且つ、ガラス板の裏面と載置台との間にガラス板よりも可視光線に対する反射率が低い低反射率部材を敷いた状態で、ガラス板の表面で鏡面反射した光が、第一撮像手段および第二撮像手段にそれぞれ入光するように、光源を配置することが好ましい。
【0023】
このようにすれば、ガラス板と低反射率部材との反射率の違いから、光源から出射した光について、ガラス板の表面で反射(鏡面反射)した後、両撮像手段のそれぞれに入光する光の量と、低反射率部材で反射した後、両撮像手段のそれぞれに入光する光の量とを比較すると、前者の方が多量となる。そのため、両画像上において、基準辺部の一部区間が相対的に明るく映し出されると共に、低反射率部材が相対的に暗く映し出される。これにより、両画像上において基準辺部の一部区間を識別しやすくなる。
【0024】
上記の方法において、低反射率部材が、発泡樹脂シートであることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、発泡樹脂が光を拡散反射させやすい素材であることから、ガラス板の表面で反射した後、両撮像手段のそれぞれに入光する光の量と、低反射率部材で反射した後、両撮像手段のそれぞれに入光する光の量とに、有意な差異を設けやすくなる。その結果、両画像上において更に基準辺部の一部区間を識別しやすくなる。また、ガラス板の裏面と載置台との間に発泡樹脂シートを敷くことで、載置台との摺動等に起因して、ガラス板の裏面が傷付くことを好適に回避することが可能となる。
【0026】
上記の方法において、第一撮像手段の視野と第二撮像手段の視野との相互間の間隔を、変更可能とすることが好ましい。
【0027】
第一画像に映し出される基準辺部の一部区間と、第二画像に映し出される基準辺部の一部区間とが、相互に離反しているほど、ガラス板は精度よく位置決めされている。換言すれば、第一撮像手段の視野と、第二撮像手段の視野との相互間の間隔が、広がっているほど、位置決め精度を向上させることができる。このことから、位置決めの対象となるガラス板のサイズが変わり、基準辺部の長さが変更されたような場合に、両視野の相互間の間隔を変更することが可能であれば、新たな基準辺部の長さに合わせて、所望の位置決め精度が得られる間隔まで、両視野の相互間の間隔を広げることができる。
【0028】
上記の方法において、一直線に延びる切断軌道に沿ってガラス板を切断する切断装置により、ガラス板を基準辺部と直交する方向に切断する切断工程を実行するに際し、基準辺部が切断軌道と直交する位置決めラインに倣って延びるように、位置決め工程を実行してもよい。
【0029】
本発明に係る方法では、ガラス板の位置決めを確実に行うことが可能である。そのため、上記の切断装置により、ガラス板を基準辺部と直交する方向に切断する切断工程を実行するに際し、上記のように位置決め工程を実行すれば、切断工程で形成される辺部と基準辺部とを、精度よく直角に形成することができる。
【0030】
上記の方法において、位置決め工程の実行前に、ガラス板を切断してガラス板に相互に平行に延びる二つの辺部を形成し、位置決め工程において、上記二つの辺部のうちの一方を基準辺部とし、切断工程の実行により、ガラス板に上記二つの辺部と直交する方向に延びる二つの辺部を形成することが好ましい。
【0031】
このようにすれば、位置決め工程の実行前に、ガラス板に相互に平行に延びる二つの辺部が形成され、また、位置決め工程の後に実行される切断工程において、上記二つの辺部と直交する方向に延びる二つの辺部が形成されることで、代表的な形状のガラス板である矩形ガラス板が得られる。このことから、本方法によれば、位置決め工程を一回のみ実行すれば、矩形ガラス板を得ることが可能である。
【0032】
上記の方法において、ガラス板が、可撓性を有するガラスフィルムであってもよい。
【0033】
本発明に係る方法によれば、ガラス板の厚みが極めて薄い場合であっても、その位置決めが可能である。このため、ガラス板が可撓性を有するガラスフィルムである場合に、本発明に係る方法を適用すれば、その効果をより有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ガラス板の厚みの大小を問わず、その位置決めが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法に用いるガラス板の製造装置を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法に用いるガラス板の製造装置を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法において、撮像された第一画像および第二画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法について、添付の図面を参照して説明する。まず、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法に用いるガラス板の製造装置の構成について説明する。
【0037】
図1及び図2に示すガラス板の製造装置1は、可撓性を有するガラスフィルム2(例えば、厚みが300μm以下)の位置決めの基準となる基準辺部2aが、位置決めライン3に倣って延びるように、ガラスフィルム2を位置決めする位置決め工程と、位置決めしたガラスフィルム2を切断する切断工程とを実行するための装置である。
【0038】
ガラス板の製造装置1は、ガラスフィルム2を載置する載置台4と、位置決めライン3上の第一区間3aを視野5aに収める第一撮像手段としての第一カメラ5と、位置決めライン3上の第二区間3bを視野6aに収める第二撮像手段としての第二カメラ6と、両カメラ5,6がそれぞれ撮像した第一画像7および第二画像8を表示する表示装置9と、切断予定線10に沿ってガラスフィルム2を切断する切断装置11と、ガラスフィルム2の基準辺部2aを照らす光12を出射する第一光源13および第二光源14とを、主たる構成要素として備えている。なお、本実施形態における位置決めライン3とは、載置台4に形成された支持面4aに沿って切断予定線10と直交する方向に延びる仮想的なラインである。
【0039】
第一カメラ5と第二カメラ6との両カメラ5,6は、位置決めライン3上の相互に異なる区間を視野に収めており、第一カメラ5が視野5aに収める第一区間3aと、第二カメラ6が視野6aに収める第二区間3bとは、相互に離間している。なお、両視野5a,6aは、その広さが相互に等しくなっている。また、両視野5a,6aは、それぞれ位置決めライン3を境界とする両側に均等に跨っている。
【0040】
第一カメラ5は、ガラスフィルム2の表面2b側(上面側)で定点に固定された状態で設置されており、その視野5aが固定されている。つまり、第一区間3aは、位置決めライン3上において、その所在位置が定まっている。第二カメラ6は、第一カメラ5と同様に、ガラスフィルム2の表面2b側に設置されているが、第一カメラ5とは異なり、位置決めライン3と平行に移動させることが可能となっている。そして、第二カメラ6は、自身の移動に伴って、その視野6aを位置決めライン3に沿って移動させる構成となっている。これにより、両視野5a,6aの相互間の間隔Sを変更することが可能であると共に、第二カメラ6の移動に伴って、位置決めライン3上における第二区間3bの所在位置を変更することが可能となっている。両カメラ5,6の各々は、その光軸がガラスフィルム2の表面2bに対して傾斜する姿勢を取っている。また、第二カメラ6は、その姿勢を維持した状態で、位置決めライン3と平行に移動させることが可能となっている。
【0041】
切断装置11は、切断予定線10上にレーザー照射による局所加熱部と、冷媒噴射による局所冷却部とを隣接させて形成し、両部の温度差に起因して発生する熱応力により、基準辺部2aに形成した初期クラックを進展させることで、漸次に切断部15を形成するレーザー割断を実行する装置である。この切断装置11は、位置決めライン3と直交する方向に一直線に延びる切断軌道に沿ってガラスフィルム2を切断することが可能となっている。なお、切断装置11としては、レーザー溶断を実行する装置や、折割を実行する装置を使用してもよい。
【0042】
第一光源13および第二光源14は、ガラスフィルム2の表面2b側に配置されると共に、位置決めライン3を挟んで、それぞれ第一カメラ5および第二カメラ6と対向するように配置されている。第二光源14は、位置決めライン3と平行に移動が可能となっており、第二カメラ6を移動させた場合に、当該第二カメラ6と対向する位置まで移動させることができる。両光源13,14の各々は、その光軸がガラスフィルム2の表面2bに対して、両カメラ5,6とは逆向きに傾斜する姿勢を取っており、両光源13,14は、それぞれ位置決めライン3を指向している。そして、両光源13,14は、自身から出射した光12が、ガラスフィルム2の表面2bで鏡面反射(正反射)した後、それぞれ第一カメラ5および第二カメラ6に入光するように、光12を出射する構成とされている。なお、両光源13,14としては、例えば、LEDの平板照明灯を用いることができる。
【0043】
載置台4に形成された支持面4aには、低反射率部材としての発泡樹脂シート16が敷かれており、載置台4は発泡樹脂シート16を介してガラスフィルム2を裏面2c側(下面側)から支持する。この発泡樹脂シート16は、ガラスフィルム2よりも一回り大きく形成されており、発泡樹脂シート16の外周端の全周が、ガラスフィルム2の外周端から食み出した状態となっている。また、発泡樹脂シート16は、ガラスフィルム2よりも可視光線に対する反射率が低く、第一光源13および第二光源14から出射した光12を拡散反射(乱反射)させやすい発泡樹脂で構成されている。これにより、第一画像7上および第二画像8上に、基準辺部2aの一部区間2aa,2abと発泡樹脂シート16との両者が映し出された際に、基準辺部2aが相対的に明るく映し出され、発泡樹脂シート16が相対的に暗く映し出されるようにし、両画像7,8上で基準辺部2aを識別しやすくしている。
【0044】
ここで、両画像7,8上で基準辺部2aをより識別しやすくするため、ガラスフィルム2の反射率を基準として、発泡樹脂シート16の反射率を50%以下とすることが好ましい。また、両画像7,8上で更に基準辺部2aを識別しやすくするため、発泡樹脂シート16のみでなく、載置台4についても、ガラスフィルム2よりも可視光線に対する反射率を低くすることが好ましい。さらに、第一光源13および第二光源14からそれぞれ出射した光12について、ガラスフィルム2の表面2bに対する入射角θ1および反射角θ2を小さくするほど、第一光源13から第一カメラ5まで、及び、第二光源14から第二カメラ6までの平面的な設置範囲を狭くしやすく、省スペース化を図りやすくなる。このため、入射角θ1および反射角θ2の大きさは、30°以下とすることが好ましく、10°以下とすることがより好ましい。
【0045】
載置台4には、位置決めを補助するための補助目印として、複数のピン17が相互に間隔を空けて埋設されており、複数のピン17は位置決めライン3と平行な直線に沿って並んでいる。また、複数のピン17は、第一カメラ5の視野5aおよび第二カメラ6の視野6aの各々に、少なくとも一本のピン17が収まるように、相互間の間隔が調節されている。これにより、ピン17に基づいて、ガラスフィルム2の基準辺部2aと、両カメラ5,6の各々の視野5a,6aとの相対的な位置関係を把握しやすくしている。
【0046】
図3に示すように、表示装置9は、第一カメラ5が撮像した第一画像7を拡大して表示する第一モニター18と、第二カメラ6が撮像した第二画像8を拡大して表示する第二モニター19とが、並列に並べられることで構成されている。なお、両画像7,8は、相互に同一な大きさとなるように表示されている。また、両画像7,8における拡大の倍率は相互に等しくなっており、両画像7,8の間で縮尺が等しくなっている。
【0047】
第一画像7および第二画像8のそれぞれには、位置決めライン3に対応する位置決め目標線20と、位置決め目標線20を境界とする両側に均等に跨った矩形の枠21とが表示されている。枠21には、位置決め目標線20と平行に延びる一対の位置決め補助線21a,21aが含まれている。なお、両画像7,8を平面視した場合、両画像7,8の間で、位置決め目標線20同士および位置決め補助線21a同士は、同一直線上に位置している。
【0048】
位置決め目標線20は、基準辺部2aの全長が位置決めライン3と完全に重なるように、理想的にガラスフィルム2が位置決めされた場合に、両画像7,8の双方において、映し出された基準辺部2aの一部区間2aa,2abと完全に重なる線である。一方、位置決め補助線21aは、位置決めライン3に対する基準辺部2aの傾きの許容範囲を示す目印となる線である。詳述すると、両画像7,8の少なくとも一方において、映し出された基準辺部2aの一部区間2aa(2ab)と、位置決め補助線21aとが交差している場合、或いは、基準辺部2aの一部区間2aa(2ab)が、枠21の外側を通過している場合には、位置決めライン3に対する基準辺部2aの傾きが許容範囲を超えていることを示している。なお、一対の位置決め補助線21a,21aの相互間の間隔Dは、要求される位置決めの精度に合わせて任意に設定することが可能である。そして、間隔Dを狭くするほど、位置決めの精度を向上させることができる。
【0049】
以下、上記のガラス板の製造装置1を用いて、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法を実行する態様について説明する。ここでは、矩形ガラスフィルムを製造する場合を例に挙げて説明する。
【0050】
最初に、位置決め工程の実行前に、載置台4に載置したガラスフィルム2を切断装置11によって平行に二回切断することにより、相互に平行に延びる二つの辺部をガラスフィルム2に形成する。これにより、最終的に得られる矩形ガラスフィルムの四つの辺部のうち、まずは平行な二つの辺部のみを切り出す。
【0051】
次に、切り出した二つの辺部の一方を、位置決めの基準となるガラスフィルム2の基準辺部2aとして決定する。そして、載置台4上でガラスフィルム2の向きを平面視で略90°転換させた後、基準辺部2aが切断装置11の切断軌道と直交する位置決めライン3に倣って延びるように、ガラスフィルム2を位置決めする位置決め工程を実行する。
【0052】
位置決め工程においては、はじめに、第二カメラ6を位置決めライン3と平行に移動させることで、基準辺部2aの全長の長短に合わせて、第一カメラ5の視野5aと第二カメラ6の視野6aとの相互間の間隔Sを調節する。ここで、位置決めの精度を向上させることを目的として、間隔Sは、基準辺部2aの全長を超えない範囲で可及的に広げることが好ましい。
【0053】
間隔Sの調節が完了すると、位置決め作業を行う作業者が、載置台4に埋設された複数のピン17に対して基準辺部2aが接近するように、ガラスフィルム2を移動させる。これにより、基準辺部2aが第一カメラ5の視野5a、及び、第二カメラ6の視野6aに接近していく。この作業は、第一モニター18に表示された第一画像7、及び、第二モニター19に表示された第二画像8の双方に、それぞれ基準辺部2aの一部区間2aa,2abが映し出されるまで継続される。ここで、ガラスフィルム2の移動や、上述した向きの転換は、当該ガラスフィルム2を支持する発泡樹脂シート16ごと行っている。
【0054】
第一画像7および第二画像8の双方に、それぞれ基準辺部2aの一部区間2aa,2abが映し出されると、作業者は、両画像7,8の双方において、基準辺部2aの一部区間2aa,2abが、位置決め補助線21aと交差せずに枠21の内側を通過した状態となるように、第一モニター18および第二モニター19の双方を見ながら、ガラスフィルム2の位置を調節する。この調節が完了すると位置決め工程が完了し、位置決めライン3に対する基準辺部2aの傾きが許容範囲内に収まった状態で、ガラスフィルム2が位置決めされる。
【0055】
最後に、切断工程の実行に伴って、位置決めされたガラスフィルム2を切断装置11で平行に二回切断することで、矩形ガラスフィルムの残りの二つの辺部を切り出す。この切断工程が完了することにより、矩形ガラスフィルムが得られる。
【0056】
以下、上記のガラス板の製造方法による主たる作用・効果について説明する。
【0057】
上記のガラス板の製造方法では、ガラスフィルム2を位置決めするにあたって、ガラスフィルム2の基準辺部2aを外物と当接させることが不要となる。そのため、位置決めの対象が厚みの極めて薄いガラスフィルム2であっても、外物との当接に起因して基準辺部2aが撓み変形を起こすような事態が必然的に起こり得ない。従って、この方法によれば、ガラス板の厚みの大小を問わず、その位置決めが可能となる。
【0058】
ここで、本発明に係るガラス板の製造方法は、上記の実施形態で説明した態様に限定されるものではない。上記の実施形態では、作業者によってガラスフィルムの位置決めを行っているが、上記のガラス板の製造装置を下記のような構成とし、当該装置に位置決めを行わせてもよい。例えば、載置台を位置決めラインに沿う方向と、当該方向に直交する方向とに移動が可能な構成とすると共に、上下に延びる軸線を中心に自転が可能な構成とし、載置台の移動および自転に伴って、これに載置されたガラスフィルムを移動させて位置決めを行ってもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、ガラスフィルムの位置決めを行うにあたり、第一画像および第二画像の各々に枠を表示させると共に、両画像にそれぞれ映し出された基準辺部の一部区間が、枠に含まれた位置決め補助線と交差せずに枠の内側を通過するように調節を行っている。しかしながら、この限りではなく、第一画像自体および第二画像自体が、枠の役割を果たすようにすることもできる。すなわち、両画像の外周輪郭のうち、位置決めラインと平行に延びる直線部分を、位置決め補助線として機能させることで、第一画像自体および第二画像自体が、枠の役割を果たすことが可能である。この場合、位置決めの精度を向上させるため、第一カメラの視野および第二カメラの視野は、可及的に狭くすることが好ましい。
【0060】
さらに、上記の実施形態では、第一光源および第二光源から出射した光を、ガラスフィルムの表面で鏡面反射させた後、第一カメラおよび第二カメラにそれぞれ入光させているが、この限りではない。例えば、両光源と両カメラとのうち、一方をガラスフィルムの表面側に配置すると共に、他方をガラスフィルムの裏面側に配置した上で、両光源のそれぞれから出射した光が、ガラスフィルムを透過した後、両カメラの各々に入光するようにしてもよい。具体例としては、以下のような形態を挙げることができる。すなわち、上記の実施形態における両光源を載置台の下方に配置すると共に、載置台に穴を形成する。そして、穴を通過した光がガラスフィルムの裏面に入光し、ガラスフィルムを透過した後、両カメラの各々に入光する形態とすることが可能である。この形態を採用する場合には、ガラスフィルムの外周端のうち、少なくとも基準辺部が発泡樹脂シートの外周端から食み出すようにすることが好ましい。
【0061】
加えて、本発明に係るガラス板の製造方法は、可撓性を有するガラスフィルムのような薄板ガラスのみでなく、可撓性の無い厚みの大きいガラス板の製造にも適用できることは勿論である。また、発明に係るガラス板の製造方法では、位置決め工程の実行後に、必ずしも切断工程を実行する必要はない。そのため、位置決め工程を実行した後、位置決めされたガラス板に対して切断以外の処理、例えば、端面(辺部)の加工等を施すような場合についても、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
2 ガラスフィルム
2a 基準辺部
2aa 基準辺部の一部区間
2ab 基準辺部の一部区間
2b 表面
2c 裏面
3 位置決めライン
3a 第一区間
3b 第二区間
4 載置台
5 第一カメラ
5a 第一カメラの視野
6 第二カメラ
6a 第二カメラの視野
7 第一画像
8 第二画像
11 切断装置
12 光
13 第一光源
14 第二光源
16 発泡樹脂シート
17 ピン
20 位置決め目標線
21a 位置決め補助線
S 間隔
図1
図2
図3