【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法を利用してガラス板の位置決めを行った場合には、下記のような解決すべき問題が発生している。
【0007】
すなわち、近年、ガラス板の薄板化が急速に推進されており、フィルム状にまで薄板化されたガラス板(ガラスフィルム)が開発、製造されるに至っている。このようなガラス板は、その厚みが極めて薄いことから、僅かな外力が作用するだけで容易に撓みを生じてしまう。このため、上記の方法を利用した場合には、位置決めピンとの当接によってガラス板の基準辺部に撓み変形が発生することに起因して、位置決めラインに対する基準辺部の傾きが許容範囲を大きく逸脱してしまう問題があった。
【0008】
このような事態が発生すると、ガラス板の位置決めが実質的になされていない状態となり、上記の第一の工程で切り出した二つの辺部と、第三の工程で切り出した二つの辺部とが、直角となるように形成されず、結果として矩形ガラス板を得ること自体が不可能となる不具合が生じてしまう。このような事情から、ガラス板の厚みが極めて薄い場合も含め、ガラス板の厚みの大小を問わず、その位置決めが可能な技術の開発が期待されていた。
【0009】
上記の事情に鑑みなされた本発明は、ガラス板の厚みの大小を問わず、その位置決めを可能とすることを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、位置決めの基準となるガラス板の基準辺部が位置決めラインに倣って延びるように、ガラス板を位置決めする位置決め工程を含んだガラス板の製造方法であって、位置決めライン上の第一区間を視野に収める第一撮像手段と、位置決めライン上の第一区間とは異なる第二区間を視野に収める第二撮像手段とを用いて、第一撮像手段が撮像した第一画像、及び、第二撮像手段が撮像した第二画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間が映し出されるように調節を行うことで、位置決め工程を実行することに特徴付けられる。
【0011】
この方法では、第一撮像手段と第二撮像手段との両撮像手段が、位置決めライン上の相互に異なる区間を視野に収めている。このことから、両撮像手段がそれぞれ撮像した第一画像および第二画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間が映し出されたならば、必然的に基準辺部が位置決めラインに倣って延びた状態にあることになり、ガラス板が位置決めされた状態にあることになる。以上のことから、両画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間が映し出されるように調節を行えば、ガラス板の位置決めが完了することになる。そして、この方法では、ガラス板を位置決めするにあたって、ガラス板の基準辺部を位置決めピン等の外物と当接させることが不要となる。そのため、ガラス板の厚みが極めて薄い場合であっても、外物との当接によって基準辺部が撓み変形を起こすような事態が必然的に起こり得ない。従って、この方法によれば、ガラス板の厚みの大小を問わず、その位置決めが可能となる。
【0012】
上記の方法において、第一画像および第二画像の各々に、位置決めラインに対応する位置決め目標線を表示させることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、両画像の各々に、位置決めラインに対応する位置決め目標線が表示されていることから、この位置決め目標線を狙って、両画像にそれぞれ映し出された基準辺部の一部区間が、位置決め目標線に倣うように調節すれば、位置決め精度を向上させることができる。
【0014】
上記の方法において、第一画像および第二画像の各々について、位置決め目標線を境界とする両側に、位置決めラインに対する基準辺部の傾きの許容範囲を示す目印を表示させることが好ましい。
【0015】
両撮像手段のそれぞれの視野について、位置決めラインに直交する方向に沿った視野の幅が広すぎる場合、両画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間が映し出されていたとしても、基準辺部が位置決めラインに対して許容範囲を超えて傾いた状態となっている虞がある。しかしながら、両画像の各々について、位置決め目標線を境界とする両側に、位置決めラインに対する基準辺部の傾きの許容範囲を示す目印を表示させれば、上記のような虞を確実に排除することができる。これは、位置決め目標線を境界とした一方側に表示された目印と、他方側に表示された目印との相互間に、基準辺部の一部区間が収まるように調節しさえすれば、基準辺部の傾きを確実に許容範囲に収めることが可能となるためである。さらに、両目印を表示させたことにより、副次的に以下のような効果をも得ることができる。すなわち、両目印の相互間に基準辺部の一部区間が収まるようにすることのみで、位置決め作業が完了するため、当該作業を効率よく行うことが可能となる。
【0016】
上記の方法において、目印が、位置決め目標線と平行に延びる位置決め補助線であることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、第一画像および第二画像の各々において、位置決めラインに対する基準辺部の傾きの許容範囲が一対の位置決め補助線として表示されることから、許容範囲を両画像上で容易に認識することができる。その結果、位置決め作業を更に効率よく行うことができる。
【0018】
上記の方法において、第一画像と第二画像との間で、位置決め目標線同士および位置決め補助線同士が同一直線上に位置するように、両画像を並べて表示させることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、第一画像と第二画像とを並べて表示させていることから、両画像を同時に視認しやすくなる。その上、両画像の間で位置決め目標線同士および位置決め補助線同士が同一直線上に位置しているため、位置決め目標線を境界とした一方側の位置決め補助線と他方側の位置決め補助線との相互間に、基準辺部の一部区間を収めるための調節を、両画像について同時に行う上で極めて有利となる。
【0020】
上記の方法において、ガラス板を載置する載置台を設置し、載置台における第一撮像手段の視野に収まる箇所、及び、第二撮像手段の視野に収まる箇所のそれぞれに、位置決めを補助する補助目印を設けることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、載置台において、両撮像手段のそれぞれの視野に収まる箇所に、補助目印を設けたことで、載置台に載置したガラス板の基準辺部と、両撮像手段のそれぞれの視野との相対的な位置関係を、補助目印に基づいて容易に把握することできる。これにより、基準辺部を素早く両撮像手段のそれぞれの視野に収めることが可能となり、両画像の双方に、それぞれ基準辺部の一部区間を迅速に映し出すことができる。その結果、位置決め作業をより一層効率よく行うことが可能となる。
【0022】
上記の方法において、第一撮像手段および第二撮像手段をガラス板の表面側に配置し、且つ、ガラス板の裏面と載置台との間にガラス板よりも可視光線に対する反射率が低い低反射率部材を敷いた状態で、ガラス板の表面で鏡面反射した光が、第一撮像手段および第二撮像手段にそれぞれ入光するように、光源を配置することが好ましい。
【0023】
このようにすれば、ガラス板と低反射率部材との反射率の違いから、光源から出射した光について、ガラス板の表面で反射(鏡面反射)した後、両撮像手段のそれぞれに入光する光の量と、低反射率部材で反射した後、両撮像手段のそれぞれに入光する光の量とを比較すると、前者の方が多量となる。そのため、両画像上において、基準辺部の一部区間が相対的に明るく映し出されると共に、低反射率部材が相対的に暗く映し出される。これにより、両画像上において基準辺部の一部区間を識別しやすくなる。
【0024】
上記の方法において、低反射率部材が、発泡樹脂シートであることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、発泡樹脂が光を拡散反射させやすい素材であることから、ガラス板の表面で反射した後、両撮像手段のそれぞれに入光する光の量と、低反射率部材で反射した後、両撮像手段のそれぞれに入光する光の量とに、有意な差異を設けやすくなる。その結果、両画像上において更に基準辺部の一部区間を識別しやすくなる。また、ガラス板の裏面と載置台との間に発泡樹脂シートを敷くことで、載置台との摺動等に起因して、ガラス板の裏面が傷付くことを好適に回避することが可能となる。
【0026】
上記の方法において、第一撮像手段の視野と第二撮像手段の視野との相互間の間隔を、変更可能とすることが好ましい。
【0027】
第一画像に映し出される基準辺部の一部区間と、第二画像に映し出される基準辺部の一部区間とが、相互に離反しているほど、ガラス板は精度よく位置決めされている。換言すれば、第一撮像手段の視野と、第二撮像手段の視野との相互間の間隔が、広がっているほど、位置決め精度を向上させることができる。このことから、位置決めの対象となるガラス板のサイズが変わり、基準辺部の長さが変更されたような場合に、両視野の相互間の間隔を変更することが可能であれば、新たな基準辺部の長さに合わせて、所望の位置決め精度が得られる間隔まで、両視野の相互間の間隔を広げることができる。
【0028】
上記の方法において、一直線に延びる切断軌道に沿ってガラス板を切断する切断装置により、ガラス板を基準辺部と直交する方向に切断する切断工程を実行するに際し、基準辺部が切断軌道と直交する位置決めラインに倣って延びるように、位置決め工程を実行してもよい。
【0029】
本発明に係る方法では、ガラス板の位置決めを確実に行うことが可能である。そのため、上記の切断装置により、ガラス板を基準辺部と直交する方向に切断する切断工程を実行するに際し、上記のように位置決め工程を実行すれば、切断工程で形成される辺部と基準辺部とを、精度よく直角に形成することができる。
【0030】
上記の方法において、位置決め工程の実行前に、ガラス板を切断してガラス板に相互に平行に延びる二つの辺部を形成し、位置決め工程において、上記二つの辺部のうちの一方を基準辺部とし、切断工程の実行により、ガラス板に上記二つの辺部と直交する方向に延びる二つの辺部を形成することが好ましい。
【0031】
このようにすれば、位置決め工程の実行前に、ガラス板に相互に平行に延びる二つの辺部が形成され、また、位置決め工程の後に実行される切断工程において、上記二つの辺部と直交する方向に延びる二つの辺部が形成されることで、代表的な形状のガラス板である矩形ガラス板が得られる。このことから、本方法によれば、位置決め工程を一回のみ実行すれば、矩形ガラス板を得ることが可能である。
【0032】
上記の方法において、ガラス板が、可撓性を有するガラスフィルムであってもよい。
【0033】
本発明に係る方法によれば、ガラス板の厚みが極めて薄い場合であっても、その位置決めが可能である。このため、ガラス板が可撓性を有するガラスフィルムである場合に、本発明に係る方法を適用すれば、その効果をより有効に活用することができる。