(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多官能(メタ)アクリルアミドモノマー成分及び前記単官能(メタ)アクリルアミドモノマー成分の質量が、全モノマー成分の質量に対して、90質量%以上である、請求項1〜11のいずれかに記載の共重合体。
コンタクトレンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バック、血液回路、創傷被覆材、及び薬剤担体から選ばれるいずれかである、請求項13に記載の医療用具用材料。
前記湿潤剤が、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、ポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−ビニルホルムアミド、ポリ−N−ビニル(メチル)アセトアミド、ポリ−N−メチル−N−ビニル(メチル)アセトアミド、ポリ−N−ビニル−N−(メチル)プロピオンアミド、ポリ−N−ビニル−N−メチル−2−(メチル)プロピオンアミド、ポリ−N−ビニル−2−(メチル)プロピオンアミド、ポリ−N−ビニル−N,N’−ジメチルウレア、ポリN,N−ジメチルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリ−2−エチルオキサゾリン、ヘパリン、多糖類、ポリアクリロイルモルホリン、並びにそれらの混合物及び共重合体からなる群から選ばれる、請求項22に記載の組成物。
前記湿潤剤が、ポリビニルピロリドン、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ−N−メチル−N−ビニル(メチル)アセトアミド、並びにそれらの共重合体及び混合物からなる群から選ばれる、請求項22に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本発明は、アクリルアミドモノマー含有率が高く、かつ透明で低弾性率の共重合体を与える。該共重合体は、各種医療用具、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズに好適に用いられ、コンタクトレンズに特に好適である。
【0020】
本発明の共重合体は、下記(A)、(B)を含む重合原液を重合して得ることができる。
【0021】
(A)は、分子内に少なくとも1つのシロキサン結合、及び少なくとも2つの(メタ)アクリルアミド基を有する少なくとも1種の多官能(メタ)アクリルアミドモノマーであり、(B)は、少なくとも1種の単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーである。
【0022】
本発明において、シロキサン結合とは、Si−O−Si結合を表す。
【0023】
用語「レンズ」は、眼の内部又は表面に置かれる眼用用具を表す。これらの用具は、光学補正、美容増進、紫外線遮断及び可視光又はグレアの低減、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助食品の送達、診断評価若しくはモニタリング、又はそれらの任意の組合せを含む、治療効果を与え得る。用語レンズは、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ(overlay lens)、眼内挿入物(ocular insert)、光学挿入物(optical insert)を含むが、これらに限定されない。
【0024】
「多官能モノマー」とは、ラジカル重合可能な有機基を2つ以上有するモノマーを表す。
【0025】
「単官能モノマー」とは、ラジカル重合可能な有機基を1つ有するモノマーを表す。ラジカル重合可能な有機基は、(メタ)アクリルアミド基であることが好ましい。
【0026】
句「(メタ)アクリルアミド基」とは、アクリルアミド基、又はメタクリルアミド基を表す。いくつかの実施形態において、ラジカル重合可能な有機基は、アクリルアミドモノマーの重合速度が早いため、アクリルアミド基であることが、好ましい。
【0027】
本明細書において、「置換」は、ヒドロキシル、酸、エステル、エーテル、チオール、及びそれらの組み合わせを意味する。
【0028】
本明細書において、本発明における「質量部」は、多官能(メタ)アクリルアミドモノマー及び重合溶媒を除いた重合で反応可能な混合物の成分の98.8質量部を基準にした質量割合を表す。例えば、実施例1の配合において、質量部は、SiBA及びt−アミルアルコールを除いた重合で反応可能な混合成分を基準にして計算されている。
【0029】
「直鎖シリコーン」とは、下記一般式(P1)で示される構造を表す。
【0031】
R
qはケイ素原子を含まない基であり、直鎖シリコーンが直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーの場合は(メタ)アクリルアミド基を含む。R
a〜R
eは、ケイ素原子を含まない基を表し、1〜20の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、又は6〜20の炭素原子を有する置換又は非置換アリール基から独立して選ばれ、nは、1以上、1〜1000、又は1〜100の整数を表す。本発明において、モノマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)などの繰り返し単位を有する場合、繰り返し単位の数は、特に断りがない限り、分布を持ってもよい。
【0032】
本発明の共重合体に使用される多官能(メタ)アクリルアミドモノマーは、架橋成分であることができ、このような化合物は、シロキサン結合を含み、そのため、良好な機械的特性及び酸素透過性を共重合体に与える。
【0033】
用語(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルの両方を表し、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドなどの用語は、同様に解釈される。
【0034】
「反応性混合物」は、反応性成分、希釈剤(使用する場合)、開始剤、架橋剤、及び添加剤を含み、重合体形成条件に付された場合に、重合体を形成する混合成分である。「反応性成分」は、反応混合物中にあり、重合時に、化学結合、又はポリマーマトリクス中への捕捉若しくは絡み合いのいずれかを介して、重合体の永久部分になる成分である。例えば、反応性モノマー、初期重合体、及びマクロマーは、重合を介して重合体の一部となり、一方で、PVPなどの非反応性ポリマー内部湿潤剤は、捕捉を介して重合体の一部となり、相互貫入網目構造を形成する。希釈剤(使用する場合)及び脱保護剤などのあらゆる追加の加工助剤は、重合体の構造の一部にはならず、反応性成分ではない。
【0035】
「ラジカル重合可能な成分」は、ラジカル重合反応の開始条件に付されたときに重合可能である、少なくとも1つの炭素間二重結合基を含む成分を含む。重合可能な基の例として、アクリレート基、メタクリレート基、スチリル基、ビニル基、アリル基、N−ビニルラクタム基などが挙げられる。
【0036】
「非シリコーン系」モノマーは、シロキサニル基を有しないモノマーである。
【0037】
親水性モノマーとは、25℃で10質量%濃度で水と混合した場合に、透明な単層を生じるモノマーである。
【0038】
本発明の共重合体に用いられる多官能(メタ)アクリルアミドモノマーは、2つ以上の(メタ)アクリルアミド基を有す。各多官能(メタ)アクリルアミドモノマー中の(メタ)アクリルアミド基の数は、以下の範囲、2〜10個、2〜6個、2〜4個、2個から選ばれ得る。モノマー中の(メタ)アクリルアミド基の数が多すぎると、共重合体の弾性率が望ましくなく高くなることがある。
【0039】
本発明の共重合体に用いられる多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの質量平均分子量は、大きすぎると、疎水性が高くなりすぎて透明な共重合体が得られにくくなることがある。多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの好適な質量平均分子量の範囲として、約1500未満、約350〜約1500が挙げられる。多官能(メタ)アクリルアミドモノマーを多官能(メタ)アクリルアミドモノマーより親水性が高いモノマーと共重合させる場合は、多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの質量平均分子量は、約350〜約500、酸素透過性及び形状回復性を向上させたい場合は約500〜約1500であってもよい。
【0040】
本発明の共重合体に用いられる多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの例として、下記一般式(a1)で示されるモノマーが挙げられる。
【0042】
式(a1)中、各R
1は、水素及びメチル基から独立して選ばれる。いくつかの実施形態において、多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの重合速度を高めるために、水素が好ましい。
【0043】
各R
2は、独立して、水素、又は1〜20の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、又は6〜20の炭素原子を有する置換又は非置換アリール基を表す。前記アルキル基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。前記アルキル基の置換基は、ハロゲン(F,Cl、Br、I)基、水酸基、アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルフォニル基、フェニル基、及びナフチル基である。前記アリール基の置換基は、ハロゲン(F,Cl、Br、I)基、水酸基、アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルフォニル基、C1〜C6アルキル基、フェニル基、及びナフチル基である。R
2基の例として、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基、フェニル基、及びナフチル基が挙げられる。R
2の炭素原子の数が多すぎると、シリコーン含有量が下がり、酸素透過性が低下することがある。従って、約70、場合によっては約80バーラーを超える酸素透過性が望まれる実施形態において、R
2は、水素、若しくは1〜10の炭素原子を有する置換されていないアルキル基若しくは置換されていないアリール基、又は水素、若しくは1〜4の炭素原子を有する置換されていないアルキル基、又は水素、エチル基、若しくはメチル基から選ばれ得る。
【0044】
R
3〜R
6は、それぞれ独立に、置換されていてもよい1〜20の炭素原子を有するアルキル基、又は置換されていてもよい6〜20の炭素原子を有するアリール基を表す。前記アルキル基の置換基は、ハロゲン(F,Cl、Br、I)基、水酸基、アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルフォニル基、フェニル基、及びナフチル基である。前記アリール基の置換基は、ハロゲン(F,Cl、Br、I)基、水酸基、アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルフォニル基、C1〜C6アルキル基、フェニル基、及びナフチル基である。R
3〜R
6の炭素原子の数が多すぎると、相対的にケイ素原子の含有率が低下し、酸素透過性の低下を招くことがある。従って、約70、場合によっては約80バーラーを超える酸素透過性が望まれる実施形態において、R
3〜R
6は、(a)1〜10の炭素原子を有する置換されていないアルキル基、及び6〜10の炭素原子を有する置換されていないアリール基、(b)1〜4の炭素原子を有する置換されていないアルキル基、並びに(c)メチル基から選ばれる。
【0045】
各X
1は、独立して、置換されていてもよい1〜20の炭素原子を有する2価の有機基を表す。前記2価の有機基の置換基は、ハロゲン(F,Cl、Br、I)基、水酸基、アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルフォニル基、C1〜C6アルキル基、フェニル基、及びナフチル基である。前記2価の有機基のうち、アルキレン基及びアリーレン基が好ましい。前記アルキレン基及びアリーレン基は、分岐状であっても直鎖状であってもよい。その例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン基などが挙げられる。これらの中で、1〜10の炭素原子を有するアルキレン基が好ましく、1〜5の炭素原子を有するアルキレン基がさらに好ましい。X
1がプロピレン基である場合、低弾性率の共重合体が容易に得られ得る。
【0046】
aは1〜15の整数を表す。aの値が大きすぎると、多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの疎水性が高まり、透明な共重合体、特に反応性混合物中にポリマー湿潤剤を含む透明な共重合体の形成がより困難になることがある。従って、いくつかの実施形態において、aは、1〜5であることが好ましい。約80、いくつかの実施形態においては100バーラーを超える酸素透過性を有する共重合体が望まれる実施形態において、aは、7〜13の値を有し得る。多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの望ましい分子量として、10,000以下の分子量、約300〜約5000の重量平均分子量が挙げられる。
【0047】
多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの濃度が小さすぎると、不十分な重合によって形状と外観が損なわれることがあるので、本出願の反応性混合物中に含まれ得る低濃度の多官能(メタ)アクリルアミドモノマーは、約0.1部、より好ましくは1.0質量部、さらに好ましくは1.5質量部以上である。多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの濃度が高すぎると、得られる共重合体の弾性率が望ましくなく高いことがある。従って、多官能(メタ)アクリルアミドモノマーの濃度の上限は、約20質量部、好ましくは10質量部、より好ましくは5質量部以下である。上記の上位の範囲と下位の範囲は、任意に組み合わされ得る。
【0048】
得られる共重合体の酸素透過性は、少なくとも1種の単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーを反応性混合物中に含むことによっても高められ得る。少なくとも1種の単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーを含むことによって、得られる共重合体は、弾性率が高くならずに、酸素透過性が高くなり、追加の多官能モノマーを代わりに加えた場合も同様となる。また、直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーを用いることで、得られる重合体の形状回復性を向上できる。
【0049】
単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーは、1つの(メタ)アクリルアミド官能基、及び少なくとも1つの直鎖シリコーン基を含む。
【0050】
単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーの好適な例として、式(z)のモノマーが挙げられる。
【0052】
式中、各R
16は、水素及びメチル基から選ばれる。R
16が水素である場合、共重合体系は、より速い重合速度を示す。
【0053】
R
17は、水素、又は水酸基で置換されていてもよいC
1〜C
20アルキル基、又は水酸基で置換されていてもよいC
6〜C
20アリール基、又は下記一般式(z0)で示される基を表す。
【0055】
式(z)及び(z0)中、R
18〜R
23及びR
25〜R
30は、それぞれ独立に、置換されていてもよいC
1〜C
20アルキル基、又は置換されていてもよいC
6〜C
20アリール基を表す。R
18〜R
23及びR
25〜R
30の炭素原子の数が多すぎると、ケイ素原子の含有率が相対的に減少し、共重合体の酸素透過性の低下を招くことがある。従って、約80又は100バーラーより高い酸素透過性が望まれる実施形態において、R
18〜R
23及びR
25〜R
30は、独立して、1〜10の炭素原子を有するアルキル基、6〜10の炭素原子を有するアリール基、好ましくは1〜4の炭素原子を有するアルキル基から選ばれ、いくつかの実施形態において、R
18〜R
23及びR
25〜R
30は、メチル基である。
【0056】
X
3及びX
4は、独立して、水酸基で置換されていてもよいC1〜C20のアルキレン基から選ばれる。X
3及びX
4の炭素原子の数が多すぎると、単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーと親水性成分との相溶性が低下することがある。従って、単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーが重合原液との相溶性を与えることが望まれる場合、X
3及びX
4は、水酸基で置換されていてもよいC
1〜C
10アルキレン基又はC
1〜C
4アルキレン基であることが好ましい。
【0057】
k及びmは、独立して、1〜1000の整数から選ばれる。酸素透過性と親水性モノマー及び重合体の相溶性との望ましいバランスを有する重合体系は、k及びmが1〜50、2〜30、3〜12である場合に、容易に得られ得る。
【0058】
R
24〜R
31は、置換されていてもよいC
1〜C
20アルキル基、又は置換されていてもよいC
6〜C
20アリール基を表す。アルキル基の炭素数が多くなると、ケイ素原子の含有率が相対的に減少し、共重合体の酸素透過性の低下を招くことがある。従って、約80又は100バーラーより高い酸素透過性が望まれる実施形態において、1〜10の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜10の炭素原子を有するアリール基がより好ましく、1〜6の炭素原子を有するアルキル基がさらに好ましい。R
24〜R
31がメチル基である場合、特にカルボン酸が反応混合物中にモノマー又は重合体成分として含まれる場合に、重合体は、低下した安定性を示すことがある。この実施形態において、R
24及びR
31は、2〜4の炭素原子を有するアルキル基から選ばれ得る。
【0059】
約80より高い、いくつかの実施形態においては約100より高い酸素透過性を有する共重合体のために、水酸基を有しない単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーを使用することが望ましいことがある。単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーの好適な例として、下記式(Z1)〜(Z6)で示されるモノマーが挙げられる。
【0061】
式(Z4)〜(Z6)において、kは、3〜12の整数を表す。R
41は、C
1〜C
4のアルキル基を表す。
【0062】
上記式(Z1)〜(Z6)のモノマーのうち、(Z2)及び(Z3)のモノマーが、モノマーが親水性成分と共重合される場合に相溶性が容易に得られ得る点で、より好ましい。
【0063】
反応性混合物の相溶性又は得られる共重合体の透明性の向上が望まれる場合、少なくとも1つの水酸基を含む単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーが望ましいことがある。これは、共重合体を眼用レンズに用いる場合に特に利点があることがある。
【0064】
少なくとも1つの水酸基を有する単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーの好適な例として、下記一般式(a2)で示されるモノマーが挙げられる。
【0066】
式(a2)中、R
7は、水素及びメチル基から選ばれた1種である。R
7が水素である場合、共重合体系は、より速い重合速度を示す。
【0067】
R
8は、水素、又は水酸基で置換されていてもよいC
1〜C
20アルキル基、又は水酸基で置換されていてもよいC
6〜C
20アリール基を表す。いくつかの実施形態において、R
8は、水素、又は水酸基で置換されていてもよいC
1〜C
10アルキル基又はC
6〜C
10アリール基であり、別の実施形態において、R
8は、水素、又は水酸基で置換されていてもよいC
1〜C
4アルキル基である。R
8の具体的な例として、水素、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基などが挙げられる。X
2が水酸基を有する場合のR
8の好適な例は、水素である。X
2が水酸基を有していない場合のR
8の好適な例は、2,3−ジヒドロキシプロピル基である。
【0068】
R
9〜R
14は、それぞれ独立に、置換されていてもよいC
1〜C
20アルキル基、又は置換されていてもよいC
6〜C
20アリール基を表す。前記アルキル基の置換基は、ハロゲン(F,Cl、Br、I)基、水酸基、アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルフォニル基、フェニル基、及びナフチル基である。前記アリール基の置換基は、ハロゲン(F,Cl、Br、I)基、水酸基、アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルフォニル基、C1〜C6アルキル基、フェニル基、及びナフチル基である。R
9〜R
14の炭素原子の数が多すぎると、相対的にケイ素原子の体積分率が低下し、共重合体の酸素透過性の低下を招くことがある。従って、約80又は100バーラーより高い酸素透過性が望まれる実施形態において、R
9〜R
14は、独立に、C
1〜C
10のアルキル基、及びC
6〜C
10のアリール基、好ましくはC
1〜C
4のアルキル基から選ばれ、いくつかの実施形態において、R
9〜R
14は、メチル基である。
【0069】
X
2は、水酸基で置換されていてもよいC
1〜C
20のアルキレン基を表す。前記アルキレン基は、分岐状であっても直鎖状であってもよい。X
2の炭素原子の数が多すぎると、単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーと親水性成分との相溶性が低下することがある。従って、単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーが反応性混合物に相溶性を与えることが望まれる場合、X
2は、水酸基で置換されていてもよいC
1〜C
10のアルキレン基であってもよい。R
8が少なくとも1つの水酸基を含む場合のX
2の例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタレン基、オクタレン基、デシレン基、フェニレン基などが挙げられる。約100psi未満の弾性率が望まれる場合、X
2はプロピレン基であってもよい。
【0070】
水酸基置換されたR
8である場合、単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーは、少なくとも1つの水酸基を含まず、X
2は、少なくとも1つの水酸基を含んでもよい。水酸基で置換されたX
2基の例として、式(b)及び(c):
−CH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH
2CH
2− (b)
−CH
2CH(OH)CH
2− (c)
の基が挙げられる。
これらのうち、式(b)の構造は、より柔軟な重合体を与える。
【0071】
nは、1〜1000の自然数を表す。酸素透過性と親水性モノマー及び重合体の相溶性との望ましいバランスを有する重合体系は、nが1〜50、好ましくは2〜30、3〜12である場合に、容易に得られ得る。任意の好ましい上限値及び任意の好ましい下限値が、組み合わされ得る。さらに、得られる共重合体の物性の再現性を向上させるために、nは分布を持たないことが好ましい。本発明において、句「分布がない」とは、モノマーはガスクロマトグラフィー(GC)(FID分析器)を用いて測定することができ、(a)GCにより測定したときに、又は、GCを用いて測定することができない高沸点を有するモノマーについては、(b)液体クロマトグラフィー(LC)(RI分析器)により測定したときに、スペクトルの単一ピークがnの値の少なくとも80%を占めることを意味する。
【0072】
R
15は、置換されていてもよいC
1〜C
20アルキル基、又は置換されていてもよいC
6〜C
20アリール基を表す。前記アルキル基の置換基は、ハロゲン(F,Cl、Br、I)基、水酸基、アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルフォニル基、フェニル基、及びナフチル基である。前記アリール基の置換基は、ハロゲン(F,Cl、Br、I)基、水酸基、アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルフォニル基、C1〜C6アルキル基、フェニル基、及びナフチル基である。アルキル基の炭素の数が多くなると、ケイ素原子の体積分率が相対的に減少し、共重合体の酸素透過性の低下を招くことがある。従って、約80又は100バーラーより高い酸素透過性が望まれる実施形態において、1〜10の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜10の炭素原子を有するアリール基がより好ましく、1〜6の炭素原子を有するアルキル基がさらに好ましい。R
15がメチル基である場合、特にカルボン酸が反応混合物中にモノマー又は重合体成分として含まれる場合に、重合体は、低下した安定性を示すことがある。この実施形態において、R
15は、C
2〜C
4アルキル基から選ばれ得る。
【0073】
単官能直鎖シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーが親水性成分と疎水性成分の両方を含む系へ相溶性を与えるように選ばれる場合、R
8及びX
2のうち少なくとも一方は、少なくとも1つの水酸基を有する。
【0074】
本発明の反応性混合物中に用いられる単官能シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーの最小量は、約30質量部、40質量部であり、いくつかの実施形態において、49質量部である。単官能シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーが指定した量より少ない量で存在する場合、得られる共重合体の酸素透過性が不十分であることがある。単官能シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーの量が多すぎると、得られる共重合体の親水性が望ましくないことがある。従って、単官能シリコーン(メタ)アクリルアミドモノマーの上限量は、98質量部、80質量部、いくつかの実施形態において65質量部である。上記の上位の範囲と下位の範囲は、任意に組み合わされ得る。
【0075】
少なくとも約10重量%の水、いくつかの実施形態において少なくとも約20%の水を含む共重合体が望まれる場合、本発明の反応混合物は、少なくとも1種の親水性モノマーを含む。
【0076】
好適な親水性モノマーの例は、コンタクトレンズ分野で公知であり、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド(以下、DMAと呼ぶ)、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドモノマー;2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどの(メタ)アクリレートモノマー;N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミド;N−2−ヒドロキシエチルビニルカルバメートなどのN−ビニルカルバメート、N−カルボキシ−カルボキシ−β−アラニンなどのN−ビニルエステル;親水性N−ビニルカーボネート;メタクリル酸、アクリル酸;反応性ポリエチレンポリオール、親水性オキサゾロンモノマー、親水性オキサゾリンモノマー、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの中で、重合速度が向上する点で(メタ)アクリルアミドモノマーが好ましい。いくつかの実施形態において、アクリルアミドモノマーがより好ましく、DMAが最も好ましい。
【0077】
用いられる親水性モノマーの量が多すぎる場合、酸素透過性が低下するが、少なすぎる場合、得られる共重合体が硬くなりすぎるので、本実施形態における親水性モノマーの量は、重合原液中のモノマー及び重合体成分を基準にして、約1〜約50質量%であり、約10〜約40質量%であることがより好ましく、15〜35質量%であることが最も好ましい。下限値は、約1質量%、約10質量%、及び約15質量%である。上限値は、約50質量%、約40質量%、及び約35質量%である。任意の上限値及び任意の下限値が、組み合わされ得る。
【0078】
得られる共重合体の透明性を高めたい場合は、分子内に2つ以上の水酸基を有し、シロキサニル基を有しない(メタ)アクリルアミドモノマーを、反応混合物中に親水性モノマーの他に含んでもよい。これらの複数の水酸基を含む(メタ)アクリルアミドモノマーは、反応混合物中の全て又は一部の親水性モノマーと代わってもよい。複数の水酸基を含む(メタ)アクリルアミドモノマーの好適な例として、下記一般式(d1)〜(d4)で示されるモノマーが挙げられる。
【0080】
式(d1)〜(d4)中、R
16は、それぞれ独立に、水素又はメチル基を表す。いくつかの実施形態において、より重合速度を向上させる点から、好ましいのは水素であることがある。また、これらのモノマーのうち、得られる共重合体の透明性の点で最も好ましいのは式(d1)で表されるモノマーである。
【0081】
(メタ)アクリルアミド官能基以外の反応性官能基を有するモノマーの含有量が少なく、全体の重合速度が向上し、かつ共重合成分の重合速度が揃うことにより、均一な組成の共重合体が得られることが好ましい。(メタ)アクリルアミド官能基を有するラジカル重合可能な成分の質量パーセントは、ラジカル重合可能な全成分の質量に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上が最も好ましい。
【0082】
本発明の共重合体が重合により得られる場合、少なくとも1種の開始剤が添加されてもよい。好適な開始剤として、熱開始剤及び光開始剤が挙げられる。熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有する熱重合開始剤を選んで使用する。一般的には10時間半減期温度が40℃〜120℃のアゾ系開始剤及び過酸化物系開始剤が好適である。熱開始剤の好適な例として、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、過炭酸イソプロピル、アゾビスイソブチロニトリルなどの過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
【0083】
一実施形態において、本発明の反応混合物は、少なくとも1種の光開始剤を含む。光開始剤の使用は、約30分未満、約20分未満、いくつかの実施形態において約15分未満の望ましい硬化時間(実質的に完全な硬化に達する時間)を与える。光開始剤としては、カルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、及び金属塩などを挙げることができる。好適な光開始剤系として、芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及び第三級アミン+ジケトン、それらの混合物などが挙げられる。光開始剤の具体的な例は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニループロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア819)、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、及びカンファーキノンとエチル 4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートの組み合わせである。市販の可視光開始剤系として、イルガキュア819、イルガキュア1700、イルガキュア1800、イルガキュア1850(全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)及びルシリンTPO開始剤(BASF社から入手可能)が挙げられる。市販の紫外線光開始剤として、ダロキュア1173及びダロキュア2959(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社)が挙げられる。使用しても良いこれら及びその他の光開始剤は、本明細書の一部を構成するものとして援用される、Volume III, Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization, 2
nd Edition by J. V. Crivello & K. Dietliker; edited by G. Bradley; John Wiley and Sons; New York; 1998に開示されている。開始剤は、反応混合物中で、反応混合物の光重合を開始するために有効な量、例えば、100部の反応性モノマー当り約0.1〜約2重量部、いくつかの実施形態において、100部の反応性モノマー当り約0.1〜約1重量部で使用される。
【0084】
本発明の共重合体が重合により得られる場合、重合溶媒が使用されてもよい。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。これらの例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノールなどの各種アルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶媒であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。本発明に有用な他の希釈剤は、本明細書の一部を構成するものとして援用される、米国特許第6,020,445号に開示されている。これらの中で、アルコール系溶媒及びグリコールエーテル系溶媒は、得られた共重合体中から溶媒を水による洗浄で容易に除去できる点で好ましい。
【0085】
本発明の共重合体は、単独で所望の形状に成型して使用してもよく、他の材料と混合してから成型してもよい。また、本発明の共重合体を、成型品の表面にコーティングしてもよい。
【0086】
本発明の共重合体の用途としては、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バック、血液回路、創傷被覆材及び各種の薬剤担体などが挙げられるが、本発明の共重合体は、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレー、角膜オンレーなどの眼用レンズに特に好適に用いられ、コンタクトレンズに最も好適である。
【0087】
本発明の共重合体を成型して眼用レンズとして用いる場合、その重合方法、成形方法としては次の方法を使用してもよい。共重合体を丸棒や板状に成形し、これを切削加工、旋盤加工などによって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、及びスピンキャスト法がある。
【0088】
一例として、本発明の共重合体からなる眼用レンズをモールド重合法により得る場合について、次に説明する。
【0089】
反応性混合組成物をレンズ形状を有する2つのモールド半体(two molds halves)間に形成された空隙に充填する。そして、光重合又は熱重合を行って該組成物をレンズ形状に賦型する。モールドは、樹脂、ガラス、セラミックス、金属などで製作されていてもよいが、光重合の場合は光学的に透明な素材が用いられ、通常は樹脂又はガラスが使用される。続いて、充填したモールドは、可視光、紫外光、又はこれらの組み合わせを照射されるか、オーブンや液槽に入れられ加熱されて、反応性混合物を重合する。また、光重合の前又は後に熱重合を実施するなど、光重合を熱重合と併用してもよい。光重合の場合、光源の波長は、開始剤の活性化波長に基づいて選ばれる。熱重合を行う場合には、23℃付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めていく条件が、重合体の光学的な均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
【0090】
本発明の共重合体は、種々の方法で改質処理を行うことができる。用途が眼用レンズであり、かつ内部に親水性重合体を含まない場合は、表面の水濡れ性を向上させる改質処理を行ってもよい。
【0091】
具体的な改質方法としては、電磁波(光を含む)照射、プラズマ照射、蒸着及びスパッタリングなどのケミカルベーパーデポジション処理、加熱、塩基処理、酸処理、その他適当な表面処理剤の使用、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0092】
塩基処理又は酸処理の一例としては、成型品を塩基性又は酸性溶液に接触させる方法、成型品を塩基性又は酸性ガスに接触させる方法などが挙げられる。それより具体的な方法としては、例えば塩基性又は酸性溶液に成型品を浸漬する方法、成型品に塩基性若しくは酸性溶液、又は塩基性若しくは酸性ガスを噴霧する方法、成型品に塩基性又は酸性溶液をヘラ又は刷毛で塗布する方法、成型品に塩基性又は酸性溶液を適用するスピンコート法やディップコート法などを挙げることができる。最も簡便に大きな改質効果が得られる方法は、成型品を塩基性又は酸性溶液に浸漬する方法である。
【0093】
共重合体を塩基性又は酸性溶液に浸漬する際の温度は、特に限定されないが、通常−50℃〜300℃程度の範囲内である。作業性を考えれば、該温度は、−10℃〜150℃、又は5℃〜60℃の範囲内にあってもよい。
【0094】
共重合体を塩基性又は酸性溶液に浸漬する時間については、温度によっても最適時間は変化するが、一般には100時間以内、24時間以内、12時間以内、又は4時間以内である。接触時間が長すぎると、作業性及び生産性が悪くなるばかりでなく、酸素透過性の低下や機械的特性の低下などの悪影響がある。
【0095】
塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、各種炭酸塩、各種ホウ酸塩、各種リン酸塩、アンモニア、各種アンモニウム塩、各種アミン類、及びポリエチレンイミン、ポリビニルアミンなどの高分子量塩基などが使用可能である。これらの中では、低価格であること及び処理効果が大きいことから、アルカリ金属水酸化物が最も好ましい。
【0096】
酸としては、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸などの各種無機酸、酢酸、ギ酸、安息香酸、フェノールなどの各種有機酸、及びポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸などの各種高分子量酸が使用可能である。これらの中では、処理効果が大きく他の特性への悪影響がないことから、高分子量酸が最も好ましい。
【0097】
塩基性又は酸性溶液の溶媒としては、無機、有機の各種溶媒を使用してもよい。溶媒として、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒などが挙げられる。中でも、経済性、取り扱いの簡便さ、及び化学的安定性などの点で水が最も好ましい。溶媒としては、2種類以上の物質の混合物も使用可能である。
【0098】
本発明において使用される塩基性又は酸性溶液は、塩基性又は酸性物質及び溶媒以外の成分を含んでもよい。
【0099】
共重合体は、塩基処理又は酸処理の後、洗浄により塩基性又は酸性物質を除くことができる。
【0100】
洗浄溶媒として、無機、有機の各種溶媒を使用してもよい。溶媒として、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、及びフッ素系溶媒などが挙げられる。
【0101】
洗浄溶媒としては、2種類以上の溶媒の混合物を使用することもできる。洗浄溶媒は、溶媒以外の成分、例えば無機塩類、界面活性剤、及び洗浄剤を含有してもよい。少なくとも約50%、75%、又は90%の水を含む水性洗浄溶媒を使用してもよい。
【0102】
以上のような改質処理は、共重合体全体に対して行ってもよく、例えば表面のみに行うなど共重合体の一部に行ってもよい。表面のみに改質処理を行った場合には、共重合体全体の性質を大きく変えることなく、表面の水濡れ性のみを向上させることができる。
【0103】
本発明の共重合体の含水率は、20重量%以上が望ましく、25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。含水率が多すぎると、物品が、使用時に、コンタクトレンズなどの物品から、乾燥する場合がある。これらの実施形態において、その他の成分に依存して、含水率は、75重量%未満、約60重量未満であることが望ましい場合がある。これらの範囲は、任意の組み合わせで組み合わせられてもよい。
【0104】
ここで、含水率は、
[((湿潤状態での質量)−(乾燥状態での質量))/(湿潤状態での質量)]×100
により与えられる。
【0105】
本明細書において、湿潤状態とは、サンプルを室温(23℃)の純水あるいはホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した後の状態を意味する。湿潤状態での物性の測定は、サンプルを純水中又はホウ酸緩衝液中から取り出した後、可及的速やかに実施される。
【0106】
本明細書において、乾燥状態とは、真空乾燥器で40℃で、16時間以上乾燥した後の状態を意味する。
【0107】
本発明の共重合体のヤング弾性率は、用途が眼用レンズ、特にソフトコンタクトレンズの場合、良好な装用感を得るためには、約150psi以下、約110psi以下、約100psi以下、95psi以下である。
【0108】
本発明の共重合体の伸度(引張破断伸度)は、高ければ共重合体が破れにくくなることから、通常、約250%以上、約270%以上、又は約300%以上である。
【0109】
引張弾性率及び伸度は、以下の方法を使用して湿潤状態のサンプルにて測定される。サンプルを、最小部分の幅が5mmである−1.00レンズの中心から切り出し、次に、引張試験機を用いて、100mm/分の速度、25℃の温度で、サンプルが切断するまで引張する。サンプルの初期のゲージ長(Lo)及び切断時のサンプルの長さ(Lf)を測定する。各組成物の12の試験片を測定し、平均を記録する。引張係数を、応力/ひずみ曲線の初期の直線部分で測定し、引張破断伸度の%は、[(Lf−Lo)/Lo]×100である。
【0110】
本発明において、「配合安定性」が低いとは、架橋剤の量がわずかに変わると(0.1質量部の変化)、例えば、約11psiより大きい弾性率の変化、又は40%の引張破断伸度の変化といったように、弾性率及び引張破断伸度などの機械的特性が大きく変わることを意味する。配合安定性が低い共重合体は、低い機械的特性の再現性を示し、従って、コンタクトレンズなどの医療用具の商業生産には適さない。
【0111】
配合安定性が高い本発明の共重合体は、架橋剤の弾性率/質量部の傾きの絶対値(以下、SMC値と呼ぶ)が90以下、70以下、又は50以下である。
【0112】
あるいは、本発明の配合安定性が高い共重合体は、共重合体の架橋剤の引張破断伸度/質量部の傾きの絶対値(以下、SEC値と呼ぶ)により特徴づけられる場合がある。望ましいSEC値として、220以下、200以下、又は150以下が挙げられる。
【0113】
望ましいSMC値及びSEC値を有する共重合体を与える成分範囲の例を以下の表1に表す。
【0115】
上記の成分の質量部の合計は、98.8質量部である。
【0116】
上記の配合は、1つ以上の重合溶媒、及び、1つ以上の架橋剤、薬剤、抗菌性化合物、色素と様々な波長の光にさらされたときに色を可逆的に変える、又は光を反射する化合物とを含む共重合性又は非重合性染料、ラジカル重合可能な少なくとも1つの基を含んでいてもよいポリマー湿潤剤、離型剤、反応性着色料(tint)、顔料、それらの組み合わせなどを含む任意選択成分も含んでもよい。
【0117】
本発明の共重合体の前進接触角は、用途が眼用レンズの場合は、約70°以下、約60°以下、又は50°以下であってもよい。動的接触角は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルにて、ホウ酸緩衝液に対して測定される。
【0118】
本発明の共重合体の酸素透過性に関して、酸素透過係数は、約70×10
−11(cm
2/秒)mL O
2/(mL・hPa)より大きくてもよい。酸素透過係数は、純水による湿潤状態のサンプルにて測定される。
【0119】
本発明の共重合体の透明性に関して、用途が眼用レンズの場合は、該眼用レンズの含水状態での全光線透過率は、約85%以上、約88%以上、約91%以上である。
【0120】
本発明の共重合体の目視観察による透明性は、以下の実施例に記載の評価方法の場合、評価基準A〜Dのうち、A又はBが好ましく、Aがより好ましい。
【0121】
本発明の共重合体の目視観察による形状は、以下の実施例に記載の評価方法の場合、評価基準A〜Cのうち、A又はBが好ましく、Aがより好ましい。
【0122】
本発明の共重合体は、医療用具用材料として好適であり、より具体的には、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バック、血液回路、創傷被覆材、及び各種の薬剤担体などの医療用具、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適である。
【実施例】
【0123】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0124】
測定方法
本明細書において、ホウ酸緩衝液とは、特表2004−517163号公報の実施例1中に記載の「塩溶液」を表す。
【0125】
具体的には、ホウ酸緩衝液は、塩化ナトリウム8.48g、ホウ酸9.26g、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム十水和物)1.0g、及びエチレンジアミン四酢酸0.10gを純水に溶かして1000mLの体積とすることによって調製した水溶液である。
【0126】
(1)全光線透過率
SMカラーコンピュータ(型式SM-7-CH、スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。レンズ状サンプルの水分を軽く拭き取り、光路上にサンプルをセットして測定を行った。ABCデジマチックインジケータ(ID-C112、株式会社ミツトヨ製)を用いて厚みを測定し、厚みが0.14〜0.15mmであるサンプルを測定に用いた。
【0127】
(2)引張弾性率、引張伸度(破断伸度)
(ホウ酸緩衝液中の)湿潤状態のサンプルを用いて測定した。コンタクトレンズ形状のサンプルから打抜型を用いて幅(最小部分)5mm、長さ14mm、厚さ0.2mmの試験片を切り出した。該試験片を用い、オリエンテック社製のRTG-1210型試験機(ロードセルUR-10N-D型)を用いて25℃で引張試験を実施した。引張速度は100mm/分で、グリップ間の距離(初期)は5mmであった。また、フィルム形状のサンプルの場合は、5mm×20mm×0.1mm程度のサイズの試験片を用いて、同様の方法で測定した。
【0128】
(3)含水率
コンタクトレンズ形状の試験片を使用した。試験片をホウ酸緩衝液に浸漬して23℃に温度調整された室内で24時間以上おいて含水させた後、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア株式会社製「キムワイプ」(登録商標))で拭き取って質量(Ww)を測定した。その後、該試験片を真空乾燥器で40℃で、16時間乾燥させ、質量(Wd)を測定した。次式にて含水率を求めた。含水率(質量%)=100×(Ww−Wd)/Ww
【0129】
(4)動的接触角
ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルにて測定した。動的接触角として、フィルム状に成型したサンプルから切り出した5mm×10mm×0.1mm程度のサイズのフィルム状の試験片、又はコンタクトレンズ状サンプルから切り出した幅5mmの短冊状試験片を使用し、ホウ酸緩衝液に対する前進時の動的接触角を25℃で測定した。浸漬速度は0.1mm/秒、浸漬深さは7mmであった。
【0130】
(5)応力ゼロ時間
ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルにて測定した。レンズ中央付近から幅5mm、長さ約1.5cmの短冊状サンプルを切り出し、株式会社サン科学製レオメータCR-500DXを用いて測定した。幅を5mmに設定したチャックにサンプルを取り付け、速度100mm/分で5mmの距離引っ張った後、同速度で初期長(5mm)までサンプルを戻した。該測定を3回繰り返した。2回目の初期長までサンプルを戻す途中の応力がゼロになった時点から、3回目の引っ張りを開始した後の応力がかかり始める(ゼロではなくなる)時点までの時間の長さを求め、応力ゼロ時間とした。応力ゼロ時間が短いほどシリコーンハイドロゲルの形状回復性が良好であることを示し、応力ゼロ時間は、2秒以下が好ましく、1.5秒以下がより好ましく、1.2秒以下が最も好ましい。
【0131】
(6)透明性
湿潤状態(ホウ酸緩衝液)のサンプルの透明性を目視観察し、下記の基準で評価した。
A:濁りがなく透明。
B:AとCの中間程度の白濁。
C:若干濁りがあり半透明。
D:白濁があり透明性が全くない。
【0132】
(7)形状
ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルの形状を目視観察し、下記の基準で評価した。
A:歪みがなく、形状良好。
B:AとCの中間程度の歪みがある。
C:歪みがあり、形状不良。
【0133】
(8)SMC値
グラフに、300psi未満である少なくとも2つの弾性率のデータ点(psi)を、架橋剤の質量部に対してプロットする。2つのデータ点がプロットされている場合は、2つのデータ点間に直線を引き、3つ以上のデータ点がプロットされている場合は、最小二乗平均法により直線を引く。データ点の数は、2〜4が好ましく、3がより好ましい数である。直線の傾きの絶対値がSMC値である。
【0134】
(9)SEC値
グラフに、50%より高い引張破断伸度の少なくとも2つのデータ点(%)を、架橋剤の質量部に対してプロットする。2つのデータ点がプロットされている場合は、2つのデータ点間に直線を引き、3つ以上のデータ点がプロットされている場合は、最小二乗平均法により直線を引く。データ点の数は、2〜4が好ましく、3がより好ましい数である。直線の傾きの絶対値がSEC値である。
【0135】
<合成例>
合成例1
200mL三口フラスコに信越化学工業株式会社製1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルシロキサン2g(8.0mmol、製品名LS-7430)、トリエチルアミン1.62g(16mmol)、酢酸エチル50mLをそれぞれ計量し混合した。滴下ロートにアクリル酸クロライド1.45g(16mmol)、酢酸エチル50mLを計量し混合した。フラスコをアイスソルトバス中にセットし、混合物を−5〜0℃で、2時間30分かけて滴下した。滴下終了時間を起点としてガスクロマトグラフィーで反応を追跡した。0時間の反応時間で原料シロキサンのピーク消失が観察されたため、反応を終了させた。桐山ロート(有限会社桐山製作所)を用いたろ過により、反応で析出した沈殿物を酢酸エチルで洗浄しながら除去した。ろ液をロータリーエバポレーターを使用し、30℃に温度コントロールした水浴中で約10分かけて濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製し(カラム溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(1/3)混合溶媒(v/v))、下記式(S1)で表される二官能アクリルアミド(SiBA)を得た。
【0136】
【化9】
【0137】
合成例2
200mL三口フラスコに信越化学工業株式会社製アミノ変性シリコーンオイル5g(5.8mmol、両末端型、製品名:KF-8010、官能基当量430g/mol)、トリエチルアミン1.17g(11.6mmol)、酢酸エチル60mLをそれぞれ計量し混合した。滴下ロートにアクリル酸クロライド1.05g(11.6mmol)、酢酸エチル60mLを計量し混合した。フラスコをアイスソルトバス中にセットし、混合物を−5〜0℃で、3時間かけて滴下した。その後、混合物を0℃〜5℃で3時間撹拌した。析出した沈殿物をろ過により、酢酸エチルで洗浄しながら除去した。酢酸エチルをロータリーエバポレーターにより5分かけて留去した。得られた混合溶液にヘキサンを加え、混合物を純水100mL×2、炭酸水素ナトリウム水溶液100mL×2、飽和塩化ナトリウム水溶液100mL×2の順で計6回分液洗浄した。分液洗浄によって得られた有機層が中性であることをpH試験紙で確認し、有機層を三角フラスコに移した。この有機層に無水硫酸ナトリウムを適量加えて脱水し、ろ過により無水硫酸ナトリウムを除去した後、ロータリーエバポレーターを使用し、30℃に温度コントロールした水浴中で約10分かけて有機層を濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製し(カラム溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(1/1,1/3)混合溶媒(v/v))、下記式(S2)で表される二官能アクリルアミド(SiBA1000)を得た。
【0138】
【化10】
【0139】
ここで、式(S2)中のnは自然数であり、化合物の平均分子量は約1000であった。
【0140】
合成例3
200mL三口フラスコに和光純薬工業株式会社製1,3−プロパンジアミン2g(27mmol)、トリエチルアミン6.01g(59.4mmol)、酢酸エチル30mLをそれぞれ計量し混合した。滴下ロートにアクリル酸クロライド5.38g(59.4mmol)、酢酸エチル30mLを計量し混合した。フラスコをアイスソルトバス中にセットし、混合物を−5〜0℃で、3時間30分かけて滴下した。滴下終了時点を起点としてGCで反応を追跡した。3時間の反応時間で1,3−プロパンジアミンのピークがほぼ消失していたため、反応を終了させた。桐山ロートを用いたろ過により、沈殿物を酢酸エチルで洗浄しながら除去した。ろ液に3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエンを加え、ロータリーエバポレーターを使用し、30℃に温度コントロールした水浴中で約20分かけて混合物を濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製し(カラム溶媒:エタノール/酢酸エチル(1/20,1/10)混合溶媒(v/v))、下記式(L1)で表される二官能アクリルアミド(C3)を得た。
【0141】
【化11】
【0142】
合成例4
200mL三口フラスコに和光純薬工業株式会社製1,5−ジアミノペンタン2g(19.6mmol)、トリエチルアミン4.35g(43.0mmol)、酢酸エチル50mL、及びIPA10mLをそれぞれ計量し混合した。滴下ロートにアクリル酸クロライド3.89g(43.0mmol)、酢酸エチル40mLを計量し混合した。フラスコをアイスソルトバス中にセットし、混合物を−5〜0℃で、1時間20分かけて滴下した。滴下終了時間を起点としてGCで反応を追跡した。4時間の反応時間で1,5−ジアミンペンタンのピークがほぼ消失していたため、反応を終了させた。桐山ロートを用いたろ過により、沈殿物を酢酸エチルで洗浄しながら除去した。ろ液に3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエンを加え、ロータリーエバポレーターを使用し、30℃に温度コントロールした水浴中で約20分かけて混合物を濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製し(カラム溶媒:エタノール/酢酸エチル(1/20,1/10)混合溶媒(v/v))、下記式(L2)で表される二官能アクリルアミド(C5)を得た。
【0143】
【化12】
【0144】
合成例5
200mL三口フラスコに東京化成工業株式会社製N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン2g(13.9mmol)、トリエチルアミン2.81g(27.8mmol)、酢酸エチル30mLをそれぞれ計量し混合した。滴下ロートにアクリル酸クロライド2.52g(27.8mmol)、酢酸エチル50mLを計量し混合した。フラスコをアイスソルトバス中にセットし、混合物を−5〜0℃で、2時間30分かけて滴下した。滴下終了時間を起点としてGCで反応を追跡した。4時間の反応時間でN,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミンのピークがほぼ消失していたため、反応を終了させた。桐山ロートを用いたろ過により、沈殿物を酢酸エチルで洗浄しながら除去した。ろ液に3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエンを加え、ロータリーエバポレーターを使用し、30℃に温度コントロールした水浴中で約20分かけて混合物を濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製し(カラム溶媒:クロロホルム/酢酸エチル(30/1,20/1,10/1,5/1)混合溶媒(v/v))、下記式(M1)で表される二官能アクリルアミド(Me−C6)を得た。
【0145】
【化13】
【0146】
合成例6
200mL三口フラスコにSigma-Aldrich社製N,N’−ジメチル−1,8−オクタンジアミン0.8g(4.64mmol)、トリエチルアミン1.01g(10mmol)、酢酸エチル50mLをそれぞれ計量し混合した。滴下ロートにアクリル酸クロライド0.91g(10mmol)、酢酸エチル50mLを計量し混合した。フラスコをアイスソルトバス中にセットし、混合物を−5〜0℃で、1時間かけて滴下した。滴下終了時間を起点としてGCで反応を追跡した。0時間の反応時間でN,N’−ジメチル−1,8−オクタンジアミンのピーク消失が観察されたため、反応を終了させた。桐山ロートを用いたろ過により、沈殿物を酢酸エチルで洗浄しながら除去した。ろ液に3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエンを加え、ロータリーエバポレーターを使用し、30℃に温度コントロールした水浴中で約10分かけて混合物を濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製し(カラム溶媒:エタノール/酢酸エチル(1/20,1/10)混合溶媒(v/v))、下記式(M2)で表される二官能アクリルアミド(Me−C8)を得た。
【0147】
【化14】
【0148】
合成例7
200mL三口フラスコにAcros Organics社製1,8−ビス(メチルアミノ)−3,6−ジオキサオクタン1g(5.67mmol)、トリエチルアミン1.15g(11.34mmol)、酢酸エチル15mLをそれぞれ計量し混合した。滴下ロートにアクリル酸クロライド1.03g(11.34mmol)、酢酸エチル15mLを計量し混合した。フラスコをアイスソルトバス中にセットし、混合物を−5〜0℃で、1時間かけて滴下した。滴下終了時間を起点としてGCで反応を追跡した。1時間の反応時間で1,8−ビス(メチルアミノ)−3,6−ジオキサオクタンのピークがほぼ消失していたため、反応を終了させた。桐山ロートを用いたろ過により、沈殿物を酢酸エチルで洗浄しながら除去した。ろ液に3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエンを加え、ロータリーエバポレーターを使用し、30℃に温度コントロールした水浴中で約10分かけて混合物を濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製し(カラム溶媒:エタノール/酢酸エチル(1/3,1/5)混合溶媒(v/v))、下記式(M3)で表される二官能アクリルアミド(Me−3G)を得た。
【0149】
【化15】
【0150】
実施例1
合成例1で得られた二官能アクリルアミドSiBA(0.016g、2.0質量部)、下記式(X1)で表される単官能直鎖シリコーンアクリルアミドモノマー
【0151】
【化16】
【0152】
(0.462g、56.06重量部)、DMA(0.208g、25.27重量部)、下記式(H1)で表される非シリコーン系アクリルアミドモノマー
【0153】
【化17】
【0154】
(0.058g、7重量部)、ポリビニルピロリドン(PVP K90、0.066g、8質量部)、紫外線吸収剤2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(0.018g、2.22質量部)、t−アミルアルコール(TAA、0.681g)、光開始剤イルガキュア819(0.002g、0.25質量部)を混合し撹拌した。得られたモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。窒素雰囲気下のグローブボックス中で、レンズ形状を有する透明樹脂(フロントカーブ側:ZEONOR、ベースカーブ側:ポリプロピレン)製モールドの空隙にモノマー混合物を充填し、光照射(Philips TL 03、1.6mW/cm
2、15分間)して光重合させることによりレンズを得た。得られたレンズを、70%(体積比)2−プロパノール(IPA)水溶液に23℃で70分間浸漬することにより、モールドからのレンズの剥離、及び残存モノマーなどの不純物の抽出を行った。レンズを水中に10分間浸漬後、5mLバイアル瓶中のホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬し、該バイアル瓶をオートクレーブに入れ、120℃で30分間煮沸した。
【0155】
得られたレンズ状サンプルの全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、応力ゼロ時間は表1の通りであり、低弾性率で良く伸びるレンズが得られた。
【0156】
【表2】
【0157】
実施例2〜3
組成を表1の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表1の通りであった。
【0158】
実施例4
二官能アクリルアミドモノマーとして、合成例1で得られたSiBAの代わりに合成例2で得られたSiBA1000を用い、組成を表1の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表1の通りであった。
【0159】
実施例5〜6
組成を表1の通りに変える以外は実施例4と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表1の通りであった。
【0160】
比較例1
二官能アクリルアミドモノマーとして、合成例1で得られたSiBAの代わりに合成例3で得られたC3を用い、組成を表1の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表1の通りであった。
【0161】
比較例2〜3
組成を表1の通りに変える以外は比較例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表1の通りであった。
【0162】
比較例4
二官能アクリルアミドモノマーとして、合成例1で得られたSiBAの代わりに合成例4で得られたC5を用い、組成を表1の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表1の通りであった。
【0163】
比較例5〜6
組成を表1の通りに変える以外は比較例4と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表1の通りであった。
【0164】
比較例7
二官能アクリルアミドモノマーとして、合成例1で得られたSiBAの代わりに合成例5で得られたMe−C6を用い、組成を表2の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表1の通りであった。
【0165】
比較例8〜9
組成を表2の通りに変える以外は比較例7と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表1の通りであった。
【0166】
比較例10
二官能アクリルアミドモノマーとして、合成例1で得られたSiBAの代わりに合成例6で得られたMe−C8を用い、組成を表2の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表2の通りであった。
【0167】
【表3】
【0168】
比較例11〜13
組成を表2の通りに変える以外は比較例10と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表2の通りであった。
【0169】
比較例14
二官能アクリルアミドモノマーとして、合成例1で得られたSiBAの代わりに合成例7で得られたMe−3Gを用い、組成を表2の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表2の通りであった。
【0170】
比較例15〜16
組成を表2の通りに変える以外は比較例14と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表2の通りであった。
【0171】
比較例17
下記式(Y1)で表されるモノマー
【0172】
【化18】
【0173】
を、二官能アクリルアミドモノマーとして合成例1で得られたSiBAの代わりに用い、組成を表2の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表2の通りであった。
【0174】
比較例18
下記式(Y2)で表されるモノマー
【0175】
【化19】
【0176】
を、二官能アクリルアミドモノマーとして合成例1で得られたSiBAの代わりに用い、組成を表2の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表2の通りであった。
【0177】
比較例19
組成を表2の通りに変える以外は比較例18と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたレンズ状サンプルの外観、全光線透過率、含水率、弾性率、伸度、及び応力ゼロ時間は、表2の通りであった。
【0178】
比較例20
下記式(Y3)で表されるモノマー
【0179】
【化20】
【0180】
を、二官能アクリルアミドモノマーとして合成例1で得られたSiBAの代わりに用い、組成を表2の通りに変える以外は実施例1と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたサンプルの物性は表2に示す通りであった。
【0181】
比較例21〜22
組成を表2の通りに変える以外は比較例20と同様の重合を行い、レンズ状サンプルを得た。得られたサンプルの物性は表2に示す通りであった。