特許第6768202号(P6768202)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768202
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】画像形成装置およびトナー量算出方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/409 20060101AFI20201005BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H04N1/409
   G03G21/00 370
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-172615(P2017-172615)
(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公開番号】特開2019-50459(P2019-50459A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】六尾 敏明
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】眞下 隆行
【審査官】 豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−024946(JP,A)
【文献】 特開2012−150182(JP,A)
【文献】 特開2015−145969(JP,A)
【文献】 特開2008−076819(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0220035(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間フィルター処理で、エッジ効果に対応するエッジ強調量を特定するエッジ強調量特定部と、
画像処理単位となるブロックの非ブロックエッジ画素については、前記エッジ強調量を含むトナー消費量をカウントし、前記ブロックのブロックエッジ画素については、前記エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントする第1トナーカウンターと、
前記ブロックの前記ブロックエッジ画素および前記非ブロックエッジ画素について、前記エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントする第2トナーカウンターと、
前記第1トナーカウンターのトナーカウント値と前記第2トナーカウンターのトナーカウント値との差分に基づいて前記ブロックのトナー消費量を算出するトナー消費量算出部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー消費量算出部は、前記非ブロックエッジ画素における前記第1トナーカウンターのトナーカウント値と前記第2トナーカウンターのトナーカウント値との差分に基づいて、前記ブロックエッジ画素についての前記エッジ強調量を推定して、前記トナー消費量を算出することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ブロックエッジ画素は、前記ブロックの最外殻から所定距離までの範囲の画素であり、
前記非ブロックエッジ画素は、前記ブロック内の前記ブロックエッジ画素以外の画素であり、
前記所定距離は、前記空間フィルター処理のフィルターサイズから1だけ減算した値の半分の値であること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の画像形成装置。

【請求項4】
露光装置と、
階調補正が実行されていない画像データの画素値に対応する、エッジ効果を考慮していない基本トナー量を特定する基本トナー量特定部と、
前記基本トナー量に対して、前記露光装置のレーザープロファイルに対応する第1空間フィルター処理を実行するレーザープロファイル適用部とをさらに備え、
前記エッジ強調量特定部は、前記第1空間フィルター処理前の基本トナー量または前記第1空間フィルター処理後の基本トナー量に対して第2空間フィルター処理を実行して、前記エッジ強調量を特定し、
前記第1トナーカウンターは、前記非ブロックエッジ画素については前記第1空間フィルター処理後の基本トナー量と前記エッジ強調量との和をカウントし、前記ブロックエッジ画素については前記第1空間フィルター処理前の前記基本トナー量をカウントし、
前記第2トナーカウンターは、前記ブロックエッジ画素および前記非ブロックエッジ画素の前記第1空間フィルター処理前の前記基本トナー量をカウントすること、
を特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
空間フィルター処理で、エッジ効果に対応するエッジ強調量を特定するステップと、
第1トナーカウンターで、画像処理単位となるブロックの非ブロックエッジ画素については、前記エッジ強調量を含むトナー消費量をカウントし、前記ブロックのブロックエッジ画素については、前記エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントするステップと、
第2トナーカウンターで、前記ブロックの前記ブロックエッジ画素および前記非ブロックエッジ画素について、前記エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントするステップと、
前記第1トナーカウンターのトナーカウント値と前記第2トナーカウンターのトナーカウント値との差分に基づいて前記ブロックのトナー消費量を算出するステップと、
を備えることを特徴とするトナー量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置およびトナー量算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複合機などといった電子写真方式の画像形成装置は、トナーカートリッジからトナーを取り出して画像を形成する。このような電子写真方式の画像形成装置には、トナー消費量を測定するものがある。
【0003】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体ドラムなどに静電潜像が形成される。静電潜像のドットありの箇所とドットなしの箇所との境界部分では縁端電界が生じ、必要以上にトナーが消費されてしまう。この現象は、エッジ効果と呼ばれる。このため、エッジ効果を考慮してトナー消費量を計算する方法が種々提案されている。
【0004】
ある画像形成装置では、レーザー光の露光信号に対して空間フィルター処理を行ってトナー消費量が計算される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−150182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように空間フィルター処理を使用してトナー消費量が計算される場合、空間フィルター処理のために、処理単位となるブロックの境界では、注目画素が属するブロックに隣接するブロックの画素の画素値が必要であるため、通常、隣接ブロックの画像データの読み出しが必要になり、処理時間が長くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、トナー消費量算出の処理速度が高い画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、空間フィルター処理で、エッジ効果に対応するエッジ強調量を特定するエッジ強調量特定部と、画像処理単位となるブロックの非ブロックエッジ画素については、前記エッジ強調量を含むトナー消費量をカウントし、前記ブロックのブロックエッジ画素については、前記エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントする第1トナーカウンターと、前記ブロックの前記ブロックエッジ画素および前記非ブロックエッジ画素について、前記エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントする第2トナーカウンターと、前記第1トナーカウンターのトナーカウント値と前記第2トナーカウンターのトナーカウント値との差分に基づいて前記ブロックのトナー消費量を算出するトナー消費量算出部とを備える。
【0009】
本発明に係るトナー量算出方法は、空間フィルター処理で、エッジ効果に対応するエッジ強調量を特定するステップと、第1トナーカウンターで、画像処理単位となるブロックの非ブロックエッジ画素については、前記エッジ強調量を含むトナー消費量をカウントし、前記ブロックのブロックエッジ画素については、前記エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントするステップと、第2トナーカウンターで、前記ブロックの前記ブロックエッジ画素および前記非ブロックエッジ画素について、前記エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントするステップと、前記第1トナーカウンターのトナーカウント値と前記第2トナーカウンターのトナーカウント値との差分に基づいて前記ブロックのトナー消費量を算出するステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トナー消費量算出の処理速度が高い画像形成装置が得られる。
【0011】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成の一部を示す側面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の電気的な構成の一部を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1におけるトナー量計算部23の構成を示すブロック図である。
図4図4は、画素種別を説明する図である。
図5図5は、実施の形態2におけるトナー量計算部23の構成を示すブロック図である。
図6図6は、実施の形態2におけるリミッター処理部34の動作について説明する図である。
図7図7は、実施の形態2におけるエッジ強調量特定部51の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
実施の形態1.
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成の一部を示す側面図である。この画像形成装置は、プリンター、ファクシミリ装置、複写機、複合機などといった電子写真方式の印刷機能を有する装置である。
【0016】
この実施の形態の画像形成装置は、タンデム方式のカラー現像装置を有する。このカラー現像装置は、感光体ドラム1a〜1d、露光装置2および現像ユニット3a〜3dを有する。感光体ドラム1a〜1dは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色の感光体である。
【0017】
露光装置2a〜2dは、感光体ドラム1a〜1dへレーザー光を走査しつつ照射して静電潜像を形成する装置である。レーザー光は、感光体ドラム1a〜1dの回転方向(副走査方向)に垂直な方向(主走査方向)に走査される。露光装置2a〜2dは、レーザー光の光源であるレーザーダイオード、およびそのレーザー光を感光体ドラム1a〜1dへ導く光学素子(レンズ、ミラー、ポリゴンミラーなど)を含むレーザースキャニングユニットを有する。
【0018】
さらに、感光体ドラム1a〜1dの周囲には、スコロトロン等の帯電器、クリーニング装置、除電器などが配置されている。クリーニング装置は、1次転写後に、感光体ドラム1a〜1d上の残留トナーを除去し、除電器は、1次転写後に、感光体ドラム1a〜1dを除電する。
【0019】
現像ユニット3a〜3dは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のトナーがそれぞれ充填されるトナーカートリッジと、トナーカートリッジ内のトナーホッパーから搬送されてくるトナーを感光体ドラム1a〜1dへ付着させる現像器とを有し、そのトナーを感光体ドラム1a〜1d上の静電潜像に付着させてトナー画像を形成する。
【0020】
感光体ドラム1aおよび現像ユニット3aにより、マゼンタの現像が行われ、感光体ドラム1bおよび現像ユニット3bにより、シアンの現像が行われ、感光体ドラム1cおよび現像ユニット3cにより、イエローの現像が行われ、感光体ドラム1dおよび現像ユニット3dにより、ブラックの現像が行われる。
【0021】
中間転写ベルト4は、感光体ドラム1a〜1dに接触し、感光体ドラム1a〜1d上のトナー画像を1次転写される環状の像担持体(中間転写体)である。中間転写ベルト4は、駆動ローラー5に張架され、駆動ローラー5からの駆動力によって、感光体ドラム1dとの接触位置から感光体ドラム1aとの接触位置への方向へ周回していく。
【0022】
転写ローラー6は、搬送されてくる用紙を中間転写ベルト4に接触させ、中間転写ベルト4上のトナー画像を用紙に2次転写する。なお、トナー画像を転写された用紙は、定着器9へ搬送され、トナー画像が用紙へ定着される。
【0023】
ローラー7は、クリーニングブラシを有し、クリーニングブラシを中間転写ベルト4に接触させ、用紙へのトナー画像の転写後に中間転写ベルト4に残ったトナーを除去する。
【0024】
センサー8は、中間転写ベルト4に光線を照射し、中間転写ベルト4の表面またはその表面上のトナーパターンからの反射光を検出する。例えば、センサー8は、トナー階調調整(階調補正の非線形特性の調整)の際に、中間転写ベルト4の所定の領域に光線を照射し光線の反射光を検出し、その光量に応じた電気信号を出力する。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の電気的な構成の一部を示すブロック図である。この画像形成装置は、プリントエンジン11、およびコントローラー12を有する。
【0026】
図2において、プリントエンジン11は、図1に示す電子写真プロセスや用紙搬送の駆動系および露光装置2a〜2dを制御する回路である。プリントエンジン11は、コントローラー12からの画像データに従って印刷を実行する。例えば、用紙搬送の駆動系は、印刷用紙の給紙、上述の現像装置および定着器9への印刷用紙の搬送、印刷用紙の印刷完了後の排紙などを行うローラー等を駆動するモーターなどである。例えば、電子写真プロセスの駆動系は、感光体ドラム1a〜1d、中間転写ベルト4などを駆動するモーターや、露光装置2a〜2dのレーザースキャニング用モーターなどである。
【0027】
プリントエンジン11は、コントローラー12からの画像データに基づいて露光信号を生成する。露光信号は、コントローラー12からの画像データに基づき、各画素について、光を照射するか否かおよび照射時間を示す。プリントエンジン11は、この露光信号で露光装置2a〜2dを動作させる。
【0028】
コントローラー12は、階調補正部21、スクリーン処理部22、トナー量計算部23、および制御部24を備える。階調補正部21は、画像データに対して階調補正を行う。スクリーン処理部22は、階調補正後の画像データに対してスクリーン処理を行う。コントローラー12は、階調補正、スクリーン処理などの画像処理後の各色についての画像データをプリントエンジン11に供給する。トナー量計算部23は、階調補正前の画像データに基づいてトナー消費量を計算する。
【0029】
図3は、実施の形態1におけるトナー量計算部23の構成を示すブロック図である。
【0030】
トナー量計算部23は、基本トナー量特定部31、レーザープロファイル適用部32、エッジ強調量特定部33、リミッター処理部34、ゲイン制御部35、加算部36、クランプ処理部37、セレクター部38、トナーカウンター39,40、およびカウンター補正部41を備える。
【0031】
基本トナー量特定部31は、階調補正が実行されていない画像データの画素値に対応する、エッジ効果を考慮していない基本トナー量を特定する。
【0032】
例えば、実験で、エッジ効果の影響を受けない比較的大きいパッチの内部領域を使用して、画素値と実際のトナー濃度(つまり、トナー消費量)との対応関係を測定し、基本トナー量特定部31は、その対応関係を示す変換データ(ルックアップテーブル、変換式データなど)を有し、その変換データに基づいて、印刷対象の画像における画素値に対応する基本トナー量を特定する。
【0033】
なお、スクリーン処理部22が複数種別のスクリーン(線数などが異なる複数のスクリーン)を使用可能である場合、基本トナー量特定部31は、その複数のスクリーン種別に対応する複数セットの変換データ(ルックアップテーブル、変換式データなど)を有し、スクリーン処理部22により選択されているスクリーン種別に対応する変換データで基本トナー量を特定する。
【0034】
レーザープロファイル適用部32は、上述の基本トナー量に対して、露光装置2a〜2dのレーザープロファイル(つまり、露光に使用するレーザー光の空間的強度分布)に対応する第1空間フィルター処理を実行する。
【0035】
ここでは、レーザープロファイル適用部32は、主走査方向と副走査方向とで互いに独立したガウシアンフィルターを使用して、第1空間フィルター処理を実行する。主走査方向および副走査方向の各ガウシアンフィルターは、レーザープロファイルに対応した分散値を有する。つまり、第1空間フィルター処理では、主走査方向および副走査方向のうちの一方のフィルター処理が実行された後、そのフィルター処理結果に対して主走査方向および副走査方向のうちの他方のフィルター処理が実行される。具体的には、各フィルター処理において、注目画素およびフィルターサイズに対応する周辺画素の画素値とフィルター係数との積和が、注目画素についての第1空間フィルター処理結果として計算される。
【0036】
エッジ強調量特定部33は、空間フィルター処理で、エッジ効果に対応するエッジ強調量を特定する。具体的には、エッジ強調量特定部33は、第1空間フィルター処理前の基本トナー量または第1空間フィルター処理後の基本トナー量(実施の形態1では第1空間フィルター処理後の基本トナー量)に対して第2空間フィルター処理を実行して、エッジ効果に対応するエッジ強調量を特定する。
【0037】
エッジ強調量特定部33は、画像処理単位となるブロック内の画素から順番に注目画素を選択し、注目画素のエッジ強調量を特定する。その際に、例えば、エッジ強調量特定部33は、(a)注目画素からの距離の2乗に反比例するフィルター係数を有するフィルターを使用して、第1空間フィルター処理後の基本トナー量に対して第2空間フィルター処理を実行し、(b)第2空間フィルター処理により得られた値と注目画素の基本トナー量の値との差をエッジ強調量とする。
【0038】
あるいは、例えば、エッジ強調量特定部33は、(a)アンシャープマスクフィルターを使用して、第1空間フィルター処理後の基本トナー量に対して第2空間フィルター処理を実行し、(b)第2空間フィルター処理により得られた値と注目画素の基本トナー量の値との差をエッジ強調量とする。なお、アンシャープマスクフィルターは、例えば、ガウシアンフィルターで実現される。また、ここでは、エッジ強調量特定部33は、主走査方向と副走査方向とで互いに独立したアンシャープマスクフィルターを使用して、第2空間フィルター処理を実行する。主走査方向および副走査方向の各アンシャープマスクフィルターは、主走査方向および副走査方向のエッジ効果の強度特性に応じた分散値を有する。つまり、第2空間フィルター処理では、主走査方向および副走査方向のうちの一方のフィルター処理が実行された後、そのフィルター処理結果に対して主走査方向および副走査方向のうちの他方のフィルター処理が実行される。
【0039】
なお、具体的には、各フィルター処理において、注目画素およびフィルターサイズに対応する周辺画素の画素値とフィルター係数との積和が、注目画素についての第2空間フィルター処理結果として計算される。
【0040】
リミッター処理部34は、第1空間フィルター処理後の基本トナー量に対応する上限値以下にエッジ強調量を制限する。具体的には、リミッター処理部34は、第1空間フィルター処理後の基本トナー量に応じた閾値を特定し、特定されたエッジ強調量がその閾値を超える場合には、エッジ強調量をその閾値とする。
【0041】
リミッター処理部34は、第1空間フィルター処理後の基本トナー量が大きいほど、上述の上限値(つまり、上述の閾値)を高く設定する。リミッター処理部34は、1次式などの変換式やルックアップテーブルなどで第1空間フィルター処理後の基本トナー量から上述の閾値を特定する。
【0042】
エッジ強調量特定部33の第2空間フィルター処理に使用されるフィルターの種別によっては、細線のエッジ部分のエッジ強調量が、本来のエッジ効果によるトナー量の増加分に比べて大きくなってしまうので、リミッター処理部34は、そのような場合には、エッジ強調量の上限値を設けることで、エッジ強調量の誤差を小さくしている。
【0043】
なお、リミッター処理部34は、必要に応じて設けられ、エッジ強調量特定部33により特定されるエッジ強調量の特性によってはリミッター処理部34は不要である。例えば、注目画素からの距離の2乗に反比例するフィルター係数を有するフィルターを使用する第1空間フィルター処理の場合、リミッター処理部34は不要である。
【0044】
ゲイン制御部35は、第1空間フィルター処理後の基本トナー量に応じた係数をエッジ強調量に乗算し、乗算結果をエッジ強調量として、エッジ強調量のゲインを制御する。これにより、第1空間フィルター処理後の基本トナー量の値に応じたエッジ強調量が非線形特性となる場合でも、ゲイン制御部35で、そのような非線形特性に対応するゲインに調整される。
【0045】
例えば、実験でエッジ強調量を測定し、そのエッジ強調量に基づいて、第1空間フィルター処理後の基本トナー量と、エッジ効果に応じたゲインとの間の対応関係を特定し、ゲイン制御部35は、その対応関係を示す変換データ(ルックアップテーブル、変換式データなど)を有し、その変換データに基づいて、上述の係数を特定する。
【0046】
なお、スクリーン処理部22が複数種別のスクリーン(線数などが異なる複数のスクリーン)を使用可能である場合、ゲイン制御部35は、その複数のスクリーン種別に対応して、第1空間フィルター処理後の基本トナー量と係数との対応関係を示す複数セットの変換データ(ルックアップテーブル、変換式データなど)を有し、その複数のスクリーン種別のうち、スクリーン処理部22により選択されているスクリーン種別に対応する変換データで、上述の係数を特定する。
【0047】
なお、ゲイン制御部35は、必要に応じて設けられ、エッジ強調量特定部33により特定されるエッジ強調量の特性によってはゲイン制御部35は不要である。
【0048】
加算部36は、第1空間フィルター処理後の基本トナー量とエッジ強調量との和をトナー消費量として計算する。
【0049】
クランプ処理部37は、加算部36の出力であるトナー消費量が所定の上限値を超える場合には、そのトナー消費量の値を、その上限値とし、加算部36の出力であるトナー消費量が所定の下限値未満である場合には、そのトナー消費量の値を、その下限値とする。なお、クランプ処理部37は、必要に応じて設けられ、加算部36の出力値の範囲によっては、クランプ処理部37は不要である。
【0050】
セレクター部38は、画素種別に応じて、クランプ処理部37を介して供給されるトナー消費量と基本トナー量とのいずれかを選択し、選択したものをトナーカウンター39へ出力する。
【0051】
図4は、画素種別を説明する図である。各画素は、画像処理単位となるブロックのエッジ付近の画素(図4においてハッチされている画素、以下、ブロックエッジ画素という)とそれ以外の画素(図4においてハッチされていない画素、以下、非ブロックエッジ画素という)とのいずれかの画素属性を有する。この画素属性は、例えば、画素の座標値から特定される。
【0052】
ブロックエッジ画素の範囲は、ブロックの最外殻から所定距離までの範囲であり、第1空間フィルター処理および第2空間フィルター処理に使用されるフィルターのサイズに応じて設定される。つまり、フィルターサイズが(2n+1)画素である場合、ブロックエッジからn画素の範囲が、ブロックエッジ画素とされる。例えばフィルターサイズが5画素(主走査方向および副走査方向における画素数)である場合、図4に示すように、ブロックエッジから2画素の範囲が、ブロックエッジ画素とされる。なお、非ブロックエッジ画素は、ブロック内のブロックエッジ画素以外の画素である。
【0053】
トナーカウンター39は、第1空間フィルター処理後の基本トナー量とエッジ強調量との和をトナー消費量としてカウントする。トナーカウンター40は、基本トナー量をカウントする。つまり、トナーカウンター39は、画像処理単位となるブロックの非ブロックエッジ画素については、エッジ強調量を含むトナー消費量をカウントし、そのブロックのブロックエッジ画素については、エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントし、トナーカウンター40は、ブロックエッジ画素および非ブロックエッジ画素について、エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントする。
【0054】
この実施の形態では、クランプ処理部37を介して供給されるトナー消費量と基本トナー量とのいずれかがセレクター部38によって選択されるため、具体的には、トナーカウンター39は、画像処理単位となるブロックのブロックエッジ画素については第1空間フィルター処理後の基本トナー量とエッジ強調量との和をカウントし、ブロックの非ブロックエッジ画素については第1空間フィルター処理前の基本トナー量をカウントする。一方、トナーカウンター40は、ブロックのブロックエッジ画素および非ブロックエッジ画素の第1空間フィルター処理前の基本トナー量をカウントする。
【0055】
カウンター補正部41は、トナーカウンター39のトナーカウント値とトナーカウンター40のトナーカウント値との差分に基づいて当該ブロックのトナー消費量を算出する。この実施の形態では、カウンター補正部41は、さらに、算出したトナー消費量で、トナーカウンター39のトナー消費量を補正する。
【0056】
その際、カウンター補正部41は、非ブロックエッジ画素におけるトナーカウンター39のトナーカウント値とトナーカウンター40のトナーカウント値との差分に基づいて、ブロックエッジ画素についてのエッジ強調量を推定して、ブロックのトナー消費量を算出する。なお、この実施の形態では、ブロックエッジ画素については、トナーカウンター39のカウント値とトナーカウンター40のカウント値は同一になるので、ブロック全体についてのトナーカウンター39のカウント値とトナーカウンター40のカウント値との差分が、非ブロックエッジ画素におけるトナーカウンター39のトナーカウント値とトナーカウンター40のトナーカウント値との差分となる。
【0057】
具体的には、カウンター補正部41は、ブロックエッジ画素数N1と非ブロックエッジ画素数N2との比、およびトナーカウンター40のカウント値(つまり、エッジ効果を考慮していない基本トナー量のカウント値)に基づいて、ブロックのトナー消費量を算出し、その算出したトナー消費量に、トナーカウンター39のトナー消費量を補正する。つまり、トナーカウンター40のカウント値をTC1とトナーカウンター39のカウント値をTC2とすると、カウンター補正部41は、トナーカウンター39のカウント値TC2を、TC2+(TC2−TC1)×(N1/N2)に補正する。
【0058】
さらに、トナー量計算部23は、そのトナー消費量からトナーカートリッジ内のトナー残量を計算するようにしてもよい。また、トナー量計算部23は、トナー消費量の積算値やトナー残量を、図示せぬ操作パネルに表示させたり、トナー残量が少なくなったときに警告メッセージを図示せぬ操作パネルに表示させたりする。
【0059】
また、制御部24は、コントローラー12における各種処理を制御する。例えば、制御部24は、スクリーン処理部22に対して、使用すべきスクリーンのスクリーン種別を指定したり、スクリーン処理部22により選択されているスクリーン種別を、基本トナー量特定部31およびゲイン制御部35に通知したりする。また、制御部24は、注目画素の画素属性がブロックエッジ画素および非ブロックエッジ画素のどちらであるかを示す画素属性データをセレクター部38に供給する。
【0060】
次に、実施の形態1に係る画像形成装置の動作について説明する。
【0061】
プリントエンジン11は、コントローラー12から画像データを供給されると、その画像データに基づいて露光信号を生成する。その露光信号は露光装置2a〜2dに供給され、露光装置2a〜2dは、その露光信号に基づいて感光体ドラム1a〜1dに光を照射して静電潜像を形成する。
【0062】
一方、コントローラー12は、階調補正前の画像データ(例えばCMYKデータ)に基づいて、各トナー色についてのトナー消費量を計算する。
【0063】
まず、コントローラー12では、基本トナー量特定部31は、階調補正前の画像データから、各画素についての基本トナー量を特定する。次に、レーザープロファイル適用部32は、レーザープロファイルに応じた第1空間フィルター処理を実行する。
【0064】
そして、実施の形態1では、エッジ強調量特定部33は、各画素について、第1空間フィルター処理後の基本トナー量に対して第2空間フィルター処理を実行してエッジ強調量を特定する。エッジ強調量は、リミッター処理部34およびゲイン制御部35を介して加算部36に供給される。そして、第1空間フィルター処理後の基本トナー量およびエッジ強調量の和が加算部36により計算され、クランプ処理部37を介してセレクター部38に供給される。
【0065】
セレクター部38において、非ブロックエッジ画素については、第1空間フィルター処理後の基本トナー量およびエッジ強調量の和が選択され、ブロックエッジ画素については、基本トナー量が選択されて、トナーカウンター39に供給される。
【0066】
そして、処理対象となるブロック内のすべての画素についてのトナー消費量が計算され、トナーカウンター39が、それらの画素のトナー消費量の総和(上述のTC2)を計算する。他方、トナーカウンター40は、すべての画素についての基本トナー量の総和(上述のTC1)を計算する。その後、カウンター補正部41は、上述のようにして、このブロックのトナー消費量TC2を上述のように補正する。
【0067】
以上のように、上記実施の形態1によれば、エッジ強調量特定部33は、空間フィルター処理で、エッジ効果に対応するエッジ強調量を特定する。トナーカウンター39は、画像処理単位となるブロックの非ブロックエッジ画素については、エッジ強調量を含むトナー消費量をカウントし、ブロックエッジ画素については、エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントする。他方、トナーカウンター40は、ブロックエッジ画素および非ブロックエッジ画素について、エッジ強調量を含まないトナー消費量をカウントする。カウンター補正部41は、トナーカウンター39のトナーカウント値とトナーカウンター40のトナーカウント値との差分に基づいてブロックのトナー消費量を算出する。
【0068】
これにより、ブロックエッジ画素については空間フィルター処理を実行せずに済み、ブロックエッジ画素についてのトナー消費量のカウントのために隣接ブロックの画素値を使用しないので、隣接ブロックの画素値を参照せずに済み、トナー消費量算出の処理速度が高くなる。
【0069】
実施の形態2.
【0070】
図5は、実施の形態2におけるトナー量計算部23の構成を示すブロック図である。実施の形態2では、エッジ強調量特定部33の代わりに、エッジ強調量特定部51が使用される。エッジ強調量特定部51は、(a)ガウシアン差分フィルター(DoG(Difference of Gaussian)フィルター)を使用して、第1空間フィルター処理前の基本トナー量に対して第2空間フィルター処理を実行し、(b)第2空間フィルター処理により得られた値をエッジ強調量とする。なお、具体的には、第2空間フィルター処理において、注目画素およびフィルターサイズに対応する周辺画素の画素値とフィルター係数との積和が、注目画素についての第2空間フィルター処理結果として計算される。
【0071】
図6は、実施の形態2におけるリミッター処理部34の動作について説明する図である。図6に示すように、1ドット幅の細線の場合、実際の電界強度分布に比べ、DoGフィルターのピークが高くなる。そのため、上述のように、上述の閾値(つまり、上述の上限値)は、細線のエッジ部分でのエッジ強調量のピークより低く設定されている。したがって、その閾値によって、エッジ強調量が制限されることで誤差が小さくなる。
【0072】
なお、上述のガウシアン差分フィルターでは、互いに分散値の異なる2つのガウシアンフィルターが使用され、それらのガウシアンフィルターの出力値の差分が、ガウシアン差分フィルターの出力値とされる。
【0073】
図7は、実施の形態2におけるエッジ強調量特定部51の一例を示すブロック図である。レーザープロファイル適用部32が、ガウシアンフィルターを使用して第1空間フィルター処理を実行する場合、図7に示すように、エッジ強調量特定部51は、レーザープロファイル適用部32のガウシアンフィルターとは異なる分散値のガウシアンフィルター61と、減算器62とを備え、上述のガウシアン差分フィルターが、レーザープロファイル適用部32のガウシアンフィルター、エッジ強調量特定部51のガウシアンフィルター61、および減算器62で構成されるようにしてもよい。つまり、エッジ強調量特定部51は、ガウシアン差分フィルターにおける2つのガウシアンフィルターのうちの分散値の大きいガウシアンフィルター61のみを備え、レーザープロファイル適用部32のガウシアンフィルターを、ガウシアン差分フィルターにおける2つのガウシアンフィルターのうちの分散値の小さいガウシアンフィルターとして兼用するようにしてもよい。その場合、減算器62によるガウシアンフィルター61の出力値とレーザープロファイル適用部32の出力値との差分が、エッジ強調量特定部51の出力値とされる。
【0074】
なお、実施の形態2に係る画像形成装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0075】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0076】
例えば、上記実施の形態に係る画像形成装置は、カラー画像形成装置であるが、モノクロ画像形成装置でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えば、電子写真方式の画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
2a〜2d 露光装置
31 基本トナー量特定部
32 レーザープロファイル適用部
33,51 エッジ強調量特定部
39 トナーカウンター(第1トナーカウンターの一例)
40 トナーカウンター(第2トナーカウンターの一例)
41 カウンター補正部(トナー消費量算出部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7