(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768227
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】シェルアンドプレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/10 20060101AFI20201005BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20201005BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20201005BHJP
F28D 1/03 20060101ALI20201005BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20201005BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20201005BHJP
【FI】
F28F3/10
F28F3/08 311
F28D9/02
F28D1/03
F28D7/16
H01M8/04 N
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-190470(P2016-190470)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-54215(P2018-54215A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】清水 翔太
(72)【発明者】
【氏名】須賀 将吾
(72)【発明者】
【氏名】角 宗司
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−258085(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0207753(US,A1)
【文献】
特表2013−528780(JP,A)
【文献】
特開平06−257983(JP,A)
【文献】
特開2015−002093(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0059215(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/10
F28D 1/03
F28D 7/16
F28D 9/02
F28F 3/08
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル内にプレート積層体が収容されて構成され、
プレート積層体は、第一プレートと第二プレートとが、板面を前後に向けて、交互に重ね合わされて構成され、
前記各プレートには、それぞれ、板面の上下に、流体の出入口としてのノズル穴が形成されており、
隣接するプレートの内、第一プレートの前面と第二プレートの後面との間に、第一流路としての隙間が空けられると共に、この隙間の外周部を開けたまま、第一プレートと第二プレートとがノズル穴の外周部でレーザ溶接により接合されており、
隣接するプレートの内、第一プレートの後面と第二プレートの前面との間に、第二流路としての隙間が空けられると共に、この隙間の外周部を閉じるように、第一プレートと第二プレートとがプレートの外周部でレーザ溶接により接合されており、
隣接するプレートのノズル穴の外周部同士の接合は、ノズル穴の周囲が互いに近接する方向へ突出されたノズルフランジ同士の間に、ノズル穴を取り囲むようにワッシャ状のシムリングが配置された状態で、シムリングの外周部と対応した位置においてレーザ溶接されたシムリングを介してなされ、
第一流路には、第一流体が、シェルの下方から導入されて、シェルの上方へ導出され、
第二流路には、第二流体が、上方のノズル穴から導入されて、下方のノズル穴から導出される
ことを特徴とするシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記各プレートは、プレートの外周部とノズル穴の外周部を除いた箇所が、凹凸が形成された熱交換領域とされ、
隣接するプレートの前記凹凸は、第二流路において互いに当接するが、第一流路において実質的に互いに当接しない
ことを特徴とする請求項1に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項3】
第一プレートのノズルフランジの前面は、第一プレートに形成された前記凹凸の内、前方への凸部の頂点よりも前方に配置され、
第二プレートのノズルフランジの後面は、第二プレートに形成された前記凹凸の内、後方への凸部の頂点よりも後方に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記凹凸として、ヘリンボーンを備え、
隣接するプレートのヘリンボーンは、第二流路において互いに当接するが、第一流路において実質的に互いに当接しない
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項5】
前記凹凸に代えてまたはこれに加えて、第二流路には、隣接するプレート間に伝熱面拡大部材が挟み込まれており、
この伝熱面拡大部材は、フィンおよび/または金属繊維から構成される
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項6】
第一流路に通される第一流体の圧力は、第二流路に通される第二流体の圧力よりも高い
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項7】
第一プレートの後面と第二プレートの前面との間で、両プレートの外周部同士は、外方へ行くに従って、互いに近接する方向へ傾斜する傾斜部と、互いに当接する略円弧状部と、互いに離隔する外辺部とを順に備えて形成されており、前記外辺部の隙間から、前記略円弧状部同士の当接部を溶接される
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項8】
前記各プレートは、略矩形状とされ、
前記シェルは、略矩形状のプレート積層体を収容する略矩形状とされると共に、プレート積層体よりも上下への延出部を備え、
シェルの下方への延出部は、下方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成されて、その下部に第一流体の入口が設けられ、
シェルの上方への延出部は、上方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成されて、その上部に第一流体の出口が設けられる
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項9】
プレート積層体に対する第二流体の出入口は、前後方向一方に配置され、
シェルに対する第一流体の出入口は、前後方向一方に偏った位置に設けられる
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項10】
燃料電池のオフガスと、そのオフガスの冷却水との熱交換に用いられ、
第一流体としての冷却水がシェルおよび第一流路に通され、第二流体としてのオフガスが第二流路に通される
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェル内にプレート積層体を収容して構成されるシェルアンドプレート式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1の
図12および
図13に開示されるように、シェル(中空容器102)内にプレート積層体(プレート重合体104)を収容して構成されるシェルアンドプレート式熱交換器(100)が知られている。このシェルアンドプレート式熱交換器(100)では、プレート積層体(104)は、多数のプレート(106)が重ね合わされて構成され、プレート相互間には、シェル(102)の内部空間(s1)に対して開かれた開放通路(A)と、閉じられた閉鎖通路(B)とが交互に形成されている。第1の熱交換流体(a)は、シェル(102)下部の入口管(108)から導入され、内部空間(s1)や開放通路(A)を介して、シェル(102)上部の出口管(110)から導出される。第2の熱交換流体(b)は、プレート積層体(104)内の閉鎖通路(B)に対し、入口管(116)から導入され、出口管(118)から導出される。
【0003】
プレート積層体を構成する円形プレート(130)は、波形凹凸(132)が形成されると共に、直径方向に対向した二箇所にノズル穴(134)が形成されている。プレート(130)の外周縁(136)と、ノズル穴(134)の内周縁(138)とは、それぞれ、波形凹凸(132)に連なった狭い環状の平坦面に形成されている。外周縁(136)の平坦面を形成する板状体と、内周縁(138)の平坦面を形成する板状体とは、波形凹凸(132)の山と谷の段差分だけ高低差が設けられている。そして、二枚のプレート(130)を互いの裏面同士を相対させて重ね合わせ、互いに当接したノズル穴(134)の内周縁(138)同士を周溶接(u)して、ペアプレート(140)を製造する。このとき、プレート(130)の外周縁(136)間は、プレート(130)に形成された波形凹凸(132)の山と谷の段差の二倍の隙間(s)を形成する。その後、多数のペアプレート(140)を重ね合わせ、各ペアプレート(140)の外周縁(136)同士を当接させ、当接面を周溶接(v)することで、プレート積層体(142)が形成される。
【0004】
以上のような構成からなるので、従来技術について、ペアプレートとその積層状態の断面を示せば、
図5のようになる。
図5では、一つのペアプレートを実線で示し、これに接合される他のプレートを二点鎖線で示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−57900号公報(段落[0004]−[0010]、
図12−13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5から明らかなとおり、プレート積層体を構成する各プレートは、プレートの表裏両面において、隣接するプレートとの間で、波形凹凸の頂部同士が互いに当接される。その際、波形凹凸の頂部同士の接点の周囲に、微小な隙間Gが形成されることになる。従って、たとえば排ガスと冷却水との熱交換器として利用する場合、特に水側の流路において、波形凹凸の頂部同士の当接部付近で、隙間腐食を生じるおそれがある。また、微小な隙間Gがあると、使用後に洗浄しても、熱交換器内に残渣が残るおそれもある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、熱交換する二流体の内の一方を通す流路において、プレート間の接点ひいては微小隙間の削減を図り、隙間腐食を防止できると共に洗浄容易なシェルアンドプレート式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、シェル内にプレート積層体が収容されて構成され、プレート積層体は、第一プレートと第二プレートとが、板面を前後に向けて、交互に重ね合わされて構成され、前記各プレートには、それぞれ、板面の上下に、流体の出入口としてのノズル穴が形成されており、隣接するプレートの内、第一プレートの前面と第二プレートの後面との間に、第一流路としての隙間が空けられると共に、この隙間の外周部を開けたまま、第一プレートと第二プレートとがノズル穴の外周部で
レーザ溶接により接合されており、隣接するプレートの内、第一プレートの後面と第二プレートの前面との間に、第二流路としての隙間が空けられると共に、この隙間の外周部を閉じるように、第一プレートと第二プレートとがプレートの外周部で
レーザ溶接により接合されており、隣接するプレートのノズル穴の外周部同士の接合は、ノズル穴の周囲が互いに近接する方向へ突出されたノズルフランジ同士
の間に、ノズル穴を取り囲むよう
にワッシャ状のシムリング
が配置された状態で、シムリングの外周部と対応した位置においてレーザ溶接されたシムリングを介してなされ、第一流路には、第一流体が、シェルの下方から導入されて、シェルの上方へ導出され、第二流路には、第二流体が、上方のノズル穴から導入されて、下方のノズル穴から導出されることを特徴とするシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、プレート積層体の第一流路を通される第一流体と、プレート積層体の第二流路を通される第二流体とを、混ぜることなく熱交換することができる。第一流路において、隣接するプレートは、ノズル穴の外周部同士を接合されるが、ノズル穴の周囲が互いに近接する方向へ突出されたノズルフランジ同士
の間に、ノズル穴を取り囲むよう
にワッシャ状のシムリング
が配置された状態で、シムリングの外周部と対応した位置においてレーザ溶接されたシムリングを介して接合される。これにより、第一流路の幅(プレート間の隙間)を比較的大きく確保でき、プレート間の接点を削減することができる。プレート間の接点を削減することで、第一流路での隙間腐食を防止できると共に、使用後の洗浄を容易に確実に図ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記各プレートは、プレートの外周部とノズル穴の外周部を除いた箇所が、凹凸が形成された熱交換領域とされ、隣接するプレートの前記凹凸は、第二流路において互いに当接するが、第一流路において実質的に互いに当接しないことを特徴とする請求項1に記載のシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、隣接するプレートの熱交換領域に形成された凹凸は、実質的に、第二流路においてのみ互いに当接し、第一流路では互いに当接しない。これにより、第一流路でのプレート間の接点を削減することができ、第一流路での隙間腐食を防止できると共に、使用後の洗浄を容易に確実に図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、第一プレートのノズルフランジの前面は、第一プレートに形成された前記凹凸の内、前方への凸部の頂点よりも前方に配置され、第二プレートのノズルフランジの後面は、第二プレートに形成された前記凹凸の内、後方への凸部の頂点よりも後方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、第一流路を形成する側において、隣接するプレートのノズルフランジは、熱交換領域の凹凸よりも突出して形成されている。そのため、ノズルフランジ同士を突き合せて(さらには所望によりシムリングを介して)接合した状態では、隣接するプレートの熱交換領域の凹凸同士が接触せず、第一流路でのプレート間の接点を削減することができる。プレート間の接点を削減することで、第一流路での隙間腐食を防止できると共に、使用後の洗浄を容易に確実に図ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記凹凸として、ヘリンボーンを備え、隣接するプレートのヘリンボーンは、第二流路において互いに当接するが、第一流路において実質的に互いに当接しないことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、隣接するプレートの熱交換領域に形成されたヘリンボーンは、実質的に、第二流路においてのみ互いに当接し、第一流路では互いに当接しない。これにより、第一流路でのプレート間の接点を削減することができ、第一流路での隙間腐食を防止できると共に、使用後の洗浄を容易に確実に図ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記凹凸に代えてまたはこれに加えて、第二流路には、隣接するプレート間に伝熱面拡大部材が挟み込まれており、この伝熱面拡大部材は、フィンおよび/または金属繊維から構成されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、プレート自体に凹凸を形成することに代えてまたはこれに加えて、第二流路には、隣接するプレート間に伝熱面拡大部材として、フィンおよび/または金属繊維が挟み込まれる。これにより、第二流路における伝熱性能を確保することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、第一流路に通される第一流体の圧力は、第二流路に通される第二流体の圧力よりも高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、第一流路に通される第一流体の圧力が、第二流路に通される第二流体の圧力よりも高いので、隣接するプレートの熱交換領域の凹凸が第一流路で当接していなくても、第二流路で当接されることで、各プレートの変形(熱交換流体の圧力による変形)を有効に防止することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、第一プレートの後面と第二プレートの前面との間で、両プレートの外周部同士は、外方へ行くに従って、互いに近接する方向へ傾斜する傾斜部と、互いに当接する略円弧状部と、互いに離隔する外辺部とを順に備えて形成されており、前記外辺部の隙間から、前記略円弧状部同士の当接部を溶接されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、隣接するプレートの外周部同士の接合は、略円弧状部同士を当接して、外周側から溶接することで行われる。これにより、プレートの外周部同士の接合部(外周側)に微小な隙間が残ることが防止され、隙間腐食を有効に防止することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、前記各プレートは、略矩形状とされ、前記シェルは、略矩形状のプレート積層体を収容する略矩形状とされると共に、プレート積層体よりも上下への延出部を備え、シェルの下方への延出部は、下方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成されて、その下部に第一流体の入口が設けられ、シェルの上方への延出部は、上方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成されて、その上部に第一流体の出口が設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0023】
仮に、各プレートを円形状にして、その板面を前後に向けたプレート積層体を円筒状のシェル内に収容し、そのシェルの上下両端部(円筒面の最上部と最下部)に第一流体の出入口を設けた場合、第一流体は、プレート積層体の第一流路において、前記出入口を結ぶ中央部において流速が速くなり、左右方向外側へ行くに従って流速が遅くなる。また、円筒状のシェル内にプレート積層体が適合するようはめ込まれると、シェル内に導入された第一流体は、やはり前記出入口を結ぶ中央部を通りやすく、プレート積層体の第一流路全体(言い換えればプレート全面)に均一に分流されない。ところが、請求項8に記載の発明によれば、各プレートおよびシェルを略矩形状とすると共に、シェルはプレート積層体よりも下方への延出部を備え、その延出部は下方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成(逆に言えば上方へ行くに従って広がるよう形成)されて、その下部に第一流体の入口が設けられる。従って、シェルの下部から導入された第一流体は、プレート積層体の第一流路に均一に分流され、プレートの左右方向の位置に関わらず均一な流速で流される。さらに、シェルはプレート積層体よりも上方への延出部を備え、その延出部は上方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成されて、その上部に第一流体の出口が設けられる。従って、第一流体が気泡を含む液体の場合でも、気泡を確実に熱交換器外へ導出することができる。これにより、熱交換器内での腐食を防止することもできる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、プレート積層体に対する第二流体の出入口は、前後方向一方に配置され、シェルに対する第一流体の出入口は、前後方向一方に偏った位置に設けられることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、プレート積層体に対する第二流体の出入口と、シェルに対する第一流体の出入口とが、同じ側に寄せて構成される。これにより、第一流体と第二流体との熱交換を円滑に図ることができる。たとえば、第二流体としての高温ガスを、第一流体としての冷却水と熱交換して冷却しようとする際、プレート積層体への高温ガスの入口部が高温となるが、この高温部に寄せて冷却水を流すことができるので、高温ガスの温度を下げやすく、局所的な沸騰や、応力腐食割れを防止することができる。
【0026】
さらに、請求項10に記載の発明は、燃料電池のオフガスと、そのオフガスの冷却水との熱交換に用いられ、第一流体としての冷却水がシェルおよび第一流路に通され、第二流体としてのオフガスが第二流路に通されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器である。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、燃料電池のオフガスと冷却水とを熱交換して、オフガスの冷却と冷却水の加温とを図ることができる。オフガスの冷却により、オフガス中の水分を凝縮させれば、その凝縮水を燃料電池へ戻して、水自立を図ることができる。また、オフガスの熱を冷却水の加温に用いて、熱回収を図ることができる。なお、冷却水は、プレート間の接点を削減した第一流路に通されるので、隙間腐食を防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、熱交換する二流体の内の一方を通す流路において、プレート間の接点ひいては微小隙間の削減を図り、隙間腐食を防止できると共に洗浄容易なシェルアンドプレート式熱交換器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施例のシェルアンドプレート式熱交換器を示す概略正面図である。
【
図2】
図1のシェルアンドプレート式熱交換器の側面視の縦断面図である。
【
図4】
図1のシェルアンドプレート式熱交換器のプレート積層体を構成する二種類のプレートの一例を示す概略図である。
【
図5】従来技術のプレート積層状態を示す概略断面図であり、ペアプレートとその積層状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1から
図3は、本発明の一実施例のシェルアンドプレート式熱交換器1を示す概略図であり、
図1は正面図、
図2は側面視の縦断面図、
図3は
図2の右上の一部拡大図である。なお、以下の説明では、
図1を正面ととらえ、
図1における長手方向を上下方向、
図1における短手方向を左右方向、
図1における紙面直交方向を前後方向(手前側つまり
図2の右側を前方)とする。
【0032】
本実施例のシェルアンドプレート式熱交換器1は、中空容器状のシェル2と、このシェル2内に収容されるプレート積層体3とを備える。
【0033】
シェル2は、詳細は後述するが、本実施例では略矩形の箱状とされ、プレート積層体3よりも上下への延出部2a,2bを備える。各延出部2a,2bは、上下方向外側へ行くに従って左右方向幅寸法が小さくなるように、略台形状に形成されている。具体的には、上方延出部2aは、上方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成されており、下方延出部2bは、下方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成されている。
【0034】
プレート積層体3は、第一プレート4と第二プレート5とが、板面を前後に向けて、交互に複数枚(典型的には四枚以上)重ね合わされて構成される。各プレート4,5は、板面の上下に、流体の出入口としてのノズル穴6,7が形成された金属板(典型的にはステンレス板)から構成される。なお、各プレート4,5を構成する金属板として、好ましくは、厚さ1mm以下の薄板が用いられ、より好ましくは、厚さ0.2〜0.5mm(本実施例では0.3mm)の薄板が用いられる。
【0035】
図4は、本実施例の第一プレート4と第二プレート5との一例を示す概略図である。各プレート4,5は、同一寸法の略矩形の金属板から構成され、板面には、ノズル穴6,7の他、適宜の凹凸がプレス加工されて構成される。
【0036】
第一プレート4は、左右方向中央部の上下に、平坦な円形状のノズルフランジ8が設けられ、そのノズルフランジ8の中央部に円形状のノズル穴6が貫通形成されている。第一プレート4は、プレートの外周部とノズル穴6の外周部(つまりノズルフランジ8)とを除いた箇所が、実質的な熱交換領域とされ、この熱交換領域の一部または全部には、適宜の凹凸が形成されている。この凹凸の形状は、特に問わないが、本実施例ではヘリンボーン9とされている。具体的には、
図4の正面視で略逆V字形状に、凹凸が等間隔に形成されており、その各凹凸は断面略半円形状(各凹部または各凸部の延出方向と直交した断面で見た場合に略半円形状)とされている。よって、
図3に示すように、熱交換領域の断面は所定の波形となる。なお、熱交換領域の凹凸の内、前方への膨出部(つまり凸部)を、前方への凸部9a、後方への膨出部(つまり凹部)を、後方への凸部9bということがある。
【0037】
第一プレート4の外周部10(10a〜10c)は、本実施例では、
図3に示すように、外方へ行くに従って後方へ傾斜する傾斜部10aを介して、後方へ凸の略半円状の略円弧状部10bが連接され、その外側には平坦な(つまりプレート面と略平行な)外辺部10cが連接されている。外辺部10cは、略円弧状部10bの後方への頂点よりも、若干前方に配置されている。また、略円弧状部10bの後方への頂点は、ヘリンボーン9の後方への凸部9bの頂点と同一平面に配置されている。一方、ノズルフランジ8の前面は、図示例では、ヘリンボーン9の前方への凸部9aの頂点よりも若干(図示例では0.5mm)前方に配置されているが、場合により(後述するシムリング11を用いる場合)、ヘリンボーン9の前方への凸部9aの頂点と同一平面に配置されてもよい。
【0038】
第二プレート5も、基本的には、第一プレート4と同様の構成である。第一プレート4および第二プレート5として、同一構成のプレートを用いつつ、第一プレート4に対し第二プレート5を180度反転させて(言い換えれば短辺まわりに裏返して)用いることができる。
【0039】
具体的には、第二プレート5は、左右方向中央部の上下に、平坦な円形状のノズルフランジ12が設けられ、そのノズルフランジ12の中央部に円形状のノズル穴7が貫通形成されている。第二プレート5は、プレートの外周部とノズル穴7の外周部(つまりノズルフランジ12)とを除いた箇所が、実質的な熱交換領域とされ、この熱交換領域の一部または全部には、適宜の凹凸が形成されている。この凹凸の形状は、特に問わないが、本実施例ではヘリンボーン13とされている。具体的には、
図4の正面視で略V字形状に、凹凸が等間隔に形成されており、その各凹凸は断面略半円形状(各凹部または各凸部の延出方向と直交した断面で見た場合に略半円形状)とされている。よって、
図3に示すように、熱交換領域の断面は所定の波形となる。なお、熱交換領域の凹凸の内、前方への膨出部(つまり凸部)を、前方への凸部13a、後方への膨出部(つまり凹部)を、後方への凸部13bということがある。
【0040】
第二プレート5の外周部14(14a〜14c)は、本実施例では、
図3に示すように、外方へ行くに従って前方へ傾斜する傾斜部14aを介して、前方へ凸の略半円状の略円弧状部14bが連接され、その外側には平坦な(つまりプレート面と略平行な)外辺部14cが連接されている。外辺部14cは、略円弧状部14bの前方への頂点よりも、若干後方に配置されている。また、略円弧状部14bの前方への頂点は、ヘリンボーン13の前方への凸部13aの頂点と同一平面に配置されている。一方、ノズルフランジ12の後面は、図示例では、ヘリンボーン13の後方への凸部13bの頂点よりも若干(図示例では0.5mm)後方に配置されているが、場合により(後述するシムリング11を用いる場合)、ヘリンボーン13の後方への凸部13bの頂点と同一平面に配置されてもよい。
【0041】
隣接するプレート4,5の内、第一プレート4の前面と第二プレート5の後面との間に、第一流路15としての隙間が空けられると共に、この隙間の外周部を開けたまま、第一プレート4と第二プレート5とがノズル穴6,7の外周部(つまりノズルフランジ8,12)で接合される。前述したように、第一プレート4のノズルフランジ8がヘリンボーン9(9a)の頂点よりも前方に配置されると共に、第二プレート5のノズルフランジ12がヘリンボーン13(13b)の頂点よりも後方に配置される場合、両プレート4,5のノズルフランジ8,12同士を重ね合わせて接合すればよい。但し、各ノズルフランジ8,12をヘリンボーン9(9a),13(13b)の頂点よりも突出させることに代えてまたはそれに加えて、ノズルフランジ8,12同士をワッシャ状のシムリング11を介して重ね合わせて接合してもよい。
【0042】
図3に示すように、シムリング11は、金属製(たとえばステンレス製であり好ましくは各プレート4,5と同一材料)の円環状の板材であり、内外径はノズルフランジ8,12の内外径と対応して形成されている。つまり、シムリング11の内径はノズル穴6,7の直径と対応しており、シムリング11はノズルフランジ8,12およびノズル穴6,7と同心に配置される。なお、シムリング11の厚さ(
図3での左右方向寸法)は、適宜に設定されるが、本実施例では1.5mmとされている。本実施例では、第一プレート4と第二プレート5とは、ノズルフランジ8,12間にシムリング11を介した状態で一体化される。その際、本実施例では、シムリング11の外周部と対応した位置において、レーザ溶接により、両プレート4,5およびシムリング11が一体的に接合される。
【0043】
各プレート4,5について、ヘリンボーン9,13の頂点(ノズルフランジ8,12側への凸部9a,13bの頂点)が配置される面に対するノズルフランジ8,12の突出量、および/または、シムリング11の厚さは、両プレート4,5のノズルフランジ8,12同士を接合した状態で、両プレート4,5のヘリンボーン9,13同士が当接せず、しかも隙間腐食を防止できる寸法以上(好ましくは0.5mm以上)の隙間を空けることができるように設定される。図示例の場合、隣接するプレート4,5のノズルフランジ8,12同士を、シムリング11を介して接合した状態で、隣接するプレート4,5のヘリンボーン9,13同士の最小隙間(第一プレート4の前方への凸部9aの頂点と第二プレート5の後方への凸部13bの頂点との隙間)は、好ましくは2〜3mm(本実施例では2.5mm)とされる。
【0044】
このようにして第一プレート4の前面と第二プレート5の後面とがノズルフランジ8,12で接合された状態では、両プレート4,5間はノズルフランジ8,12以外では基本的には当接せず、第一流路15としての隙間を空けられる。そして、このようにしてノズルフランジ8,12間で接合されたペアプレート同士を、重ね合わせて外周部10,14で接合することで、プレート積層体3が構成される。
【0045】
すなわち、
図3に示すように、第一プレート4の後面と第二プレート5の前面とを重ねわせると、両プレート4,5は、ヘリンボーン9,13同士が当接すると共に、外周部の略円弧状部10b,14b同士が当接する。第一プレート4の後面と第二プレート5の前面との間で、両プレート4,5の外周部同士は、外方へ行くに従って、傾斜部10a,14aにて互いに近接する方向へ傾斜して、略円弧状部10b,14bで互いに当接した後、外辺部10c,14cにおいて互いに離隔して配置される。そして、本実施例では、その外辺部10c,14c間の隙間から、略円弧状部10b,14b同士の当接部をプレート4,5の外周側からレーザ溶接される。この場合、プレート4,5間の外周部には、隙間腐食を起こすほどの微小な隙間(たとえば0.5mm未満の隙間)が生じない。但し、場合により、略円弧状部10b,14b同士の当接部を、プレート4,5の板面方向から重ね溶接するなどしてもよい。いずれにしても、隣接するプレート4,5の内、第一プレート4の後面と第二プレート5の前面との間に、ヘリンボーン9,13同士は当接されつつも、第二流路16としての隙間が空けられると共に、この隙間の外周部を閉じるように、第一プレート4と第二プレート5とがプレートの外周部10,14で接合される。
【0046】
ところで、本実施例では、プレート積層体3の内、最も前方に配置される第一プレート4の前面には第一端板17が設けられ、最も後方に配置される第二プレート5の後面には第二端板18が設けられる。各端板17,18は、各プレート4,5と同じかそれよりも一回り大きな略矩形状の板材であり、各プレート4,5よりも十分厚い平板状に形成されている。
【0047】
図2に示すように、前後の端板17,18には、各プレート4,5の上下のノズル穴6,7と対応した位置に、貫通穴17a,18aが形成されている。
図2および
図3に示すように、第一端板17は、貫通穴17aの周囲が短円筒状に後方へ突出されており、その短円筒状の突出部17bが、最も前方の第一プレート4のノズルフランジ8に接合される。同様に、第二端板18は、貫通穴18aの周囲が短円筒状に前方へ突出されており、その短円筒状の突出部18bが、最も後方の第二プレート5のノズルフランジ12に接合される。いずれの場合も、本実施例では、各端板17,18の短円筒状の突出部17b,18bには、その外周部と対応した位置において、プレート4,5がレーザ溶接にて接合される。そして、このようにして端板17,18が設けられたプレート4,5は、前述したとおり、隣接するプレート5,4と、外周部14,10においてレーザ溶接される。
【0048】
このようにして前後に端板17,18が設けられたプレート積層体3は、シェル2に取り付けられる。シェル2は、正面視略矩形状で前後へ開口した筒状の枠材19を備える。但し、枠材19の上下両端部は、上下方向外側への延出部(2a,2b)を有し、その延出部は、上下方向外側へ行くに従って左右方向幅寸法が小さくなるように、略台形状に形成されている。そして、枠材19の前後の開口部の内、上下両端部は、予め略台形状板20が溶接されて閉じられている。これにより、枠材19には、正面視中央部に、略矩形状の開口部が前後へ開口して残される。そこで、この開口部に、前後に端板17,18が設けられたプレート積層体3がはめ込まれて固定される。その際、前後の端板17,18の周囲が、シェル2の枠材19や略台形状板20の長辺と溶接される。このようにして、シェル2内にプレート積層体3が収容されたシェルアンドプレート式熱交換器1が構成される。本実施例では、プレート積層体3の前後に配置した端板17,18が、シェル2の一部を兼ねることになる。なお、各端板17,18には、所望により、熱交換器の設置時に利用する取付金具21が設けられる。
【0049】
シェル2には、第一流体を導入および導出するために、第一入口管22および第一出口管23が設けられる一方、プレート積層体3には、第二流体を導入および導出するために、第二入口管24および第二出口管25が設けられる。
【0050】
第一入口管22は、シェル2(ひいてはプレート積層体3の第一流路15)への第一流体の入口管であり、シェル2の下端部に接続される。図示例では、シェル2の下方への延出部2bの下面に、第一入口管22の上端部が接続され、この第一入口管22はシェル2内と連通する。
【0051】
第一出口管23は、シェル2(ひいてはプレート積層体3の第一流路15)からの第一流体の出口管であり、シェル2の上端部に接続される。図示例では、シェル2の上方への延出部2aの上面に、第一出口管23の下端部が接続され、この第一出口管23はシェル2内と連通する。
【0052】
第一端板17には、上方の貫通穴17aにエルボ状の第二入口管24が接続される一方、下方の貫通穴17aにエルボ状の第二出口管25が接続される。なお、第二端板18の上下の貫通穴18aは、図示しない蓋材で閉じられる。
【0053】
第二入口管24は、プレート積層体3の第二流路16への第二流体の入口管であり、先端部が第一端板17に固定され、基端部にはフランジ24aが設けられる。このフランジ24aを介して、第二入口管24に第二流体の導入管を接続することができる。第二入口管24の内穴は、第一端板17の貫通穴17aや各プレート4,5のノズル穴6,7と対応した大きさであり、互いに連通する。なお、第二入口管24の中途には、所望により、やや小径のセンサ取付管24bが分岐して設けられる。シェルアンドプレート式熱交換器1の使用時、センサ取付管24bにたとえば温度センサを設ければ、第二流路16への第二流体の入口温度を監視することができる。
【0054】
第二出口管25は、プレート積層体3の第二流路16からの第二流体の出口管であり、基端部が第一端板17に固定され、先端部にはフランジ25aが設けられる。このフランジ25aを介して、第二出口管25に第二流体の導出管を接続することができる。第二出口管25の内穴は、第一端板17の貫通穴17aや各プレート4,5のノズル穴6,7と対応した大きさであり、互いに連通する。なお、第二出口管25の中途には、所望により、分岐管25bが分岐して設けられる。図示例では、分岐管25bは、下方へ延出して設けられる。この場合、シェルアンドプレート式熱交換器1の使用時、プレート積層体3での熱交換により生じたドレンの排出管として、分岐管25bを利用することができる。
【0055】
前述したように、プレート積層体3には、第一プレート4の前面と第二プレート5の後面との間に、第一流路15としての隙間が空けられると共に、この隙間はプレート4,5の外周側へ開口しており、シェル2の内部空間と連通する。そして、シェル2の内部空間に対し、第一入口管22と第一出口管23とが接続されている。
【0056】
また、プレート積層体3には、第一プレート4の後面と第二プレート5の前面との間に、第二流路16としての隙間が空けられると共に、この隙間はプレート4,5の外周部で閉鎖されており、シェル2の内部空間とは連通しない。そして、第二流路16に対し、第二入口管24と第二出口管25とが接続されている。
【0057】
本実施例では、第一流路15には、第一流体が、シェル2の下方から導入されて、シェル2の上方へ導出される。また、第二流路16には、第二流体が、上方のノズル穴6,7から導入されて、下方のノズル穴6,7から導出される。第一流体および第二流体は特に問わないが、一方が水である場合、後述するように隙間腐食防止の観点から、水は第一流路15に通すことが好ましい。
【0058】
第一流体と第二流体とは、プレート積層体3において混ざることなく熱交換される。第一流体が水(典型的には水道水またはその軟化水)であっても、第一流路15では、隣接するプレート4,5のヘリンボーン9,13同士が当接せず所定以上離隔して配置されるので、隙間腐食を生じるおそれがない。また、各プレート4,5の外周部10,14における溶接箇所においても、略円弧状部10b,14b同士の当接部を外周側から溶接することで、プレート4,5の外周部10,14同士の接合部に微小な隙間が残ることが防止され、隙間腐食を有効に防止することができる。
【0059】
また、各プレート4,5の熱交換領域の凹凸(図示例ではヘリンボーン9,13)同士は、実質的に、第二流路16においてのみ互いに当接し、第一流路15においては互いに当接しないので、隙間腐食の防止だけでなく、洗浄後の残渣も残りにくい。さらに、熱交換器の使用中、スケールの付着などによる流路閉塞も起こりにくい。
【0060】
なお、第一流路15に通される第一流体の圧力は、第二流路16に通される第二流体の圧力よりも高いことが望ましい。これにより、隣接するプレート4,5の熱交換領域の凹凸(ヘリンボーン9,13)が第一流路15で当接していなくても、第二流路16で当接されることで、各プレート4,5の変形を有効に防止することができる。
【0061】
各プレート4,5およびシェル2を略矩形状とすると共に、シェル2はプレート積層体3よりも下方への延出部2bを備え、その延出部2bは下方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成されて、その下部に第一流体の入口(第一入口管22)が設けられる。つまり、シェル2の下端部には、プレート積層体3の下端部との間に、空間が空けられると共に、その空間は、上方へ行くに従って広がるよう形成される。従って、シェル2の下部から導入された第一流体は、プレート積層体3の第一流路15に均一に分流され、プレート4,5の左右方向の位置に関わらず均一な流速で流される。さらに、シェル2はプレート積層体3よりも上方への延出部2aを備え、その延出部2aは上方へ行くに従って左右方向幅寸法を小さく形成されて、その上部に第一流体の出口(第一出口管23)が設けられる。従って、第一流体が気泡を含む液体の場合でも、気泡を確実に熱交換器1外へ導出することができる。熱交換器1内でのエアの滞留部をなくすことで、熱交換器1内での腐食を防止することができる。
【0062】
ところで、
図2に示すように、プレート積層体3に対する第二流体の出入口としての第二入口管24および第二出口管25は、前方に配置される一方、シェル2に対する第一流体の出入口としての第一入口管22および第一出口管23は、同じく前方に偏った位置に設けられるのが好ましい。つまり、プレート積層体3に対する第二流体の出入口と、シェル2に対する第一流体の出入口とが、同じ側(前後方向一方)に寄せて構成されるのがよい。これにより、第一流体と第二流体との熱交換を円滑に図ることができる。たとえば、第二流体としての高温ガスを、第一流体としての冷却水と熱交換して冷却しようとする際、プレート積層体3への高温ガスの入口部が高温となるが、この高温部に寄せて冷却水を流すことができるので、高温ガスの温度を下げやすく、局所的な沸騰や、応力腐食割れを防止することができる。
【0063】
本実施例のシェルアンドプレート式熱交換器1の好適な使用例として、シェルアンドプレート式熱交換器1を、燃料電池システムにおけるオフガス(排ガス)と冷却水との熱交換に用いることができる。たとえば、特願2016−142943号として開示した燃料電池システムにおけるオフガス熱交換器の他、従来公知の各種のオフガス熱交換器として利用することができる。その場合、第一流体としての冷却水は、第一入口管22からシェル2内へ導入され、プレート積層体3の第一流路15を介して、第一出口管23から導出される。また、第二流体としてのオフガスは、第二入口管24から導入され、プレート積層体3内の第二流路16を介して、第二出口管25から導出される。
【0064】
この場合、シェルアンドプレート式熱交換器1において、燃料電池のオフガスと冷却水とを熱交換して、オフガスの冷却と冷却水の加温とを図ることができる。オフガスの冷却により、オフガス中の水分を凝縮させ、その凝縮水を、第二出口管25の分岐管25bから燃料電池へ戻して、水自立(外部からの補給水なしに燃料電池の運転)を図ることができる。なお、この凝縮水は、多少の炭酸ガスを含むものの、基本的には純水であるため、第二流路16を腐食させるおそれは低い。一方、オフガスの熱を冷却水の加温に用いて、熱回収を図ることができる。冷却水は、プレート4,5間の接点を削減した第一流路15に通されるので、冷却水(給湯用水)が塩化物イオンや硫酸イオンなどの腐食性イオンを含んでいても隙間腐食を防止することができる。
【0065】
本発明のシェルアンドプレート式熱交換器1は、前記実施例(変形例を含む)の構成に限らず適宜変更可能である。特に、次のような構成を備えれば、その他の構成は適宜に変更可能である。すなわち、(a)隣接するプレート4,5の内、第一プレート4の前面と第二プレート5の後面との間に、第一流路15としての隙間が空けられると共に、この隙間の外周部を開けたまま、第一プレート4と第二プレート5とがノズル穴6,7の外周部で接合されており、(b)隣接するプレート4,5の内、第一プレート4の後面と第二プレート5の前面との間に、第二流路16としての隙間が空けられると共に、この隙間の外周部を閉じるように、第一プレート4と第二プレート5とがプレートの外周部10,14で接合されており、(c)隣接するプレート4,5のノズル穴6,7の外周部同士の接合は、ノズル穴6,7の周囲が互いに近接する方向へ突出されたノズルフランジ8,12同士を突き合せされるか、および/または、ノズル穴6,7を取り囲むよう配置されるワッシャ状のシムリング11を介してなされるのであれば、これ以外の構成は適宜に変更可能である。
【0066】
特に、各プレート4,5の熱交換領域に形成する凹凸は、前記実施例の構成に限らない。つまり、前記実施例では、熱交換領域にヘリンボーン9,13を設けたが、このヘリンボーン9,13の形状を変えてもよい他、ヘリンボーン9,13に代えてまたはそれに加えて、たとえばディンプルのような略半球状の凹凸を付けるなど、凹凸の形状、位置、個数などは、適宜に変更可能である。その場合でも、隣接するプレート4,5の凹凸は、第二流路16において互いに当接するが、第一流路15において互いに当接しないのが望ましい。
【0067】
但し、第一流路15の隙間を適正に維持するために、たとえば数点においてのみ、第一流路15においても、隣接するプレート4,5の凹凸を互いに当接させてもよい。たとえば、第一プレート4には、前方へ凸の略半球状のディンプルを突出させる一方、第二プレート5には、後方へ凸の略半球状のディンプルを突出させて、熱交換領域内のたとえば1〜5ヶ所程度で、ディンプルの頂点同士を互いに当接させてもよい。この場合でも、熱交換領域の凹凸について、第一流路15における接触面積は、第二流路16での接触面積よりも十分少ない面積となり、実質的に当接しないということができる。
【0068】
また、熱交換領域にヘリンボーン9,13のような凹凸を形成することに代えてまたはこれに加えて、第二流路16には、隣接するプレート4,5間に伝熱面拡大部材を挟み込んでもよい。伝熱面拡大部材は、フィンおよび/または金属繊維から構成される。この内、フィンとは、典型的には、横断面波形に形成された金属板である。フィンや金属繊維などを第二流路16に挟み込む場合、その設置箇所において、各プレート4,5は平板状に形成されていてもよいし、凹凸が形成されていてもよい。一方、第一流路15には、隙間腐食防止の観点から、このような伝熱面拡大部材は設けられないのがよい。
【0069】
また、隣接するプレート4,5の外周部10,14の形状や溶接箇所も、適宜に変更可能である。たとえば、各プレート4,5の外周部を、ノズルフランジ8,12と段差を持った平板状として、隣接するプレート4,5の外周部の平板状部同士を重ね合わせて、板面において重ね溶接したり、外周縁部でへり溶接したりしてもよい。
【0070】
さらに、前記実施例では、第一流路15には、下方から上方へ第一流体を通し、第二流路16には、上方から下方へ第二流体を通したが、場合によりこれとは逆に利用してもよい。すなわち、第一流路15には、上方から下方へ第一流体を通し、第二流路16には、下方から上方へ第二流体を通してもよい。いずれにしても、シェル2には、第一上部管(前記実施例でいう第一出口管23)および第一下部管(前記実施例でいう第一入口管22)が設けられる一方、プレート積層体3には、第二上部管(前記実施例でいう第二入口管24)および第二下部管(前記実施例でいう第二出口管25)が設けられる。
【0071】
その他、ノズル穴6,7の個数や配置は、適宜に変更可能である。また、前記実施例では、プレート4,5間の接合にはレーザ溶接による貫通溶接を行ったが、非貫通溶接や、その他の溶接などを行ってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 シェルアンドプレート式熱交換器
2 シェル(2a:上方延出部、2b:下方延出部)
3 プレート積層体
4 第一プレート
5 第二プレート
6 (第一プレートの)ノズル穴
7 (第二プレートの)ノズル穴
8 (第一プレートの)ノズルフランジ
9 (第一プレートの)ヘリンボーン(9a:前方への凸部、9b:後方への凸部)
10 (第一プレートの)外周部(10a:傾斜部、10b:略円弧状部、10c:外辺部)
11 シムリング
12 (第二プレートの)ノズルフランジ
13 (第二プレートの)ヘリンボーン(13a:前方への凸部、13b:後方への凸部)
14 (第二プレートの)外周部(14a:傾斜部、14b:略円弧状部、14c:外辺部)
15 第一流路
16 第二流路
17 第一端板(17a:貫通穴、17b:突出部)
18 第二端板(18a:貫通穴、18b:突出部)
19 枠材
20 略台形状板
21 取付金具
22 第一入口管
23 第一出口管
24 第二入口管(24a:フランジ、24b:センサ取付管)
25 第二出口管(25a:フランジ、25b:分岐管)