(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768233
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】基材を疎水化する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/02 20060101AFI20201005BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20201005BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
C23C16/02
C23C16/24
B08B3/08 Z
【請求項の数】17
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-519671(P2019-519671)
(86)(22)【出願日】2018年4月25日
(65)【公表番号】特表2019-533763(P2019-533763A)
(43)【公表日】2019年11月21日
(86)【国際出願番号】RU2018000269
(87)【国際公開番号】WO2018199810
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年4月12日
(31)【優先権主張番号】2017114565
(32)【優先日】2017年4月26日
(33)【優先権主張国】RU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519127742
【氏名又は名称】クローズド ジョイント ストック カンパニー リサーチ−エンジニアリング センター “インコムシステム”
【氏名又は名称原語表記】CLOSED JOINT STOCK COMPANY RESEARCH−ENGINEERING CENTER INCOMSYSTEM
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】モロゾフ, ゲオルギー セルゲービッチ
(72)【発明者】
【氏名】バクセフ, ルスラン ヤキヤエビッチ
【審査官】
▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−182957(JP,A)
【文献】
特開2008−166393(JP,A)
【文献】
特開2007−053169(JP,A)
【文献】
特表2004−523903(JP,A)
【文献】
特開2001−049440(JP,A)
【文献】
特開平01−129970(JP,A)
【文献】
米国特許第06511760(US,B1)
【文献】
中国特許出願公開第104726873(CN,A)
【文献】
特開平09−166290(JP,A)
【文献】
実開平04−113399(JP,U)
【文献】
特開2008−013782(JP,A)
【文献】
特開2015−092027(JP,A)
【文献】
特開昭59−217618(JP,A)
【文献】
特開2005−133162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C16/00−16/56
H01L21/205、21/31、21/365
H01L21/469、21/86
F17C1/00−13/12
B08B3/00−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にアモルファスシリコンコーティングを設ける方法であって、
a)(i)前記基材の少なくとも1つの表面を、25℃〜35℃の温度で有機溶媒で清浄化することと、
(ii)前記清浄化の後に前記基材の前記少なくとも1つの表面を、20℃〜30℃の温度で無機酸の溶液で処理することと、
(iii)前記無機酸の前記溶液による前記処理の後に前記基材の前記少なくとも1つの表面を200〜300℃の温度で10〜30分間不活性ガス雰囲気中で乾燥して前記有機溶媒及び前記無機酸の溶液の残量を除去することと、を、上記の順に含む、前記基材の少なくとも1つの表面を準備するステップと、
b)前記基材の少なくとも1つの表面上にアモルファスシリコンを堆積させるステップと、を含み、
前記無機酸の前記溶液中の前記無機酸の濃度が1mol・L−1であり、
前記基材は金属材料製である、(ただし、前記少なくとも1つの表面が酸化珪素である場合を除く)方法。
【請求項2】
前記基材の前記少なくとも1つの表面が28℃〜30℃の温度で清浄化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材の前記少なくとも1つの表面を前記無機酸の前記溶液で処理することが、前記基材の前記少なくとも1つの表面を活性化することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基材の前記少なくとも1つの表面が、25℃の温度で前記無機酸の前記溶液で処理される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記堆積させるステップが、前記不活性ガス雰囲気中で、600℃〜1000℃の温度で3〜240分間シリコン前駆体を分解することを含み、前記不活性ガスがキャリアガスである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
シリコン前駆体が水素化ケイ素である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記不活性ガスが、アルゴン、ヘリウム、窒素、及び、それらのうち2つ以上と水素との混合物からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
シリコン前駆体が前記不活性ガスと混合され、混合物中の前記シリコン前駆体の量が1体積%〜30体積%である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物中の前記シリコン前駆体の前記量が1体積%〜10体積%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの表面が前記基材の内部及び/又は外部表面を表す、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸、及びそれらのうち2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アモルファスシリコンを堆積する前記ステップが、前記基材の前記内部及び外部表面上で逐次的に任意の順序で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
アモルファスシリコンを堆積する前記ステップが、前記基材の前記内部及び外部表面上で同時に行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒が揮発性有機溶媒である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記有機溶媒がエタノール又はtert−ブタノールである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記シリコン前駆体を分解する前記ステップの後に得られるガス混合物が、前記不活性ガスと1:2の比で混合された後に前記キャリアガスとして再利用される、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
前記金属材料がステンレス鋼である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、アモルファスシリコン層を適用することによって、金属物品又は他の材料から作製された物品の表面を疎水化してそれらの物品を腐食から保護する方法に関する。本発明は、石油及びガス産業における品質管理システム、化学分析実験室、分析装置及びクロマトグラフの製造、市販計量ユニット、主要ガスパイプラインでガス及び液化炭化水素ガスの量及び品質を測定するシステムにおける基材を準備するための、天然ガス試料の収集及び貯蔵用のガスベアリングシステム(ガス貯蔵用容器及び供給配管)で使用することができる。
【0002】
米国特許第6,511,760号(IPC B65D 85/00、2003年1月28日公開)は、ガス貯蔵容器の内面を不動態化して腐食に対して表面を保護する方法を開示しており、この方法では、容器の内面を初めに脱水し、次いで容器を真空状態にし、水素化ケイ素を含むガスを導入し、ガス容器を圧力下で熱し、ガスを構成成分に分解し、シリコン層を容器の内面に堆積する。シリコンの堆積の継続時間を制御して、容器中のシリコンダストの形成を防ぐ。次いで容器を不活性ガスでパージして、水素化ケイ素を含むガスを除去する。この方法を、容器の全表面がシリコンで覆われるまで数回のサイクルで行う。容器を空にし、室温まで冷却する。
【0003】
この方法の不利な点は、容器の初期準備段階が存在しないことであり、このことは、得られるコーティングの品質及び再現性に悪影響を及ぼし、容器を純粋な水素化ケイ素で充填することにより操作のコストが増大し、技術ラインをパージするために純粋な水素化ケイ素を使用することにより、未反応の有毒な供給原料が放出され、これは環境に悪影響を与える。
【0004】
露国特許第2079569号(IPC C23C 8/28、1997年5月20日公開)は、コーキングにさらされる反応器の内部表面及び反応器を不動態化する方法を開示しており、この方法では、アルゴン、ヘリウム、それらの混合物、窒素、水素からなる群から選択される不活性媒体中で酸素及び水を含有しない有機金属ケイ素化合物を熱分解することにより、表面コーティングが得られる。
【0005】
この方法の欠点は、反応器の内部表面の初期処理ステップが存在しないことであり、このことによりコーティングの接着力が弱くなり、剥がれてしまう。この方法により得られるコーティングは黒色で粘着性があり、これにより反応器の清浄化が難しくなる。
【0006】
米国特許出願公開第2016/0211141号(IPC H01L 21/285、2016年6月21日公開)は、基材上にアモルファスシリコン膜を堆積する装置及び方法を開示しており、ここでは、ガス状シラン、ジシラン、ジクロロシランを装置のチャンバーで分解して、基材上にアモルファスシリコン膜を堆積する。この発明によると、ガス状シラン、ジシラン、ジクロロシランは、水素及びヘリウムのうち少なくとも1つを含む大気ガスと混合される。
【0007】
更に、欧州特許出願公開第0540084号(IPC B01J 19/00、1993年5月5日公開)は、コーキングにさらされる反応管の内部表面の不動態化を、気相中でシリコン含有有機金属前駆体を熱分解することにより堆積するセラミック材料の薄い層で管の内部表面をコーティングすることによって行う方法を開示している。前記セラミック材料は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、又はそれらの混合物から本質的になる。
【0008】
上述の方法の不利な点は、基材、すなわち管の表面の初期準備段階が存在しないことであり、その結果、基材に対するコーティングの接着力が低くなり、コーティングの剥がれに関する問題が生じる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、基材を疎水化する方法であって、
a)基材の少なくとも1つの表面を、25℃〜35℃の温度で有機溶媒で清浄化することと、
基材の前記少なくとも1つの表面を、20℃〜30℃の温度で無機酸の溶液で処理することと、
基材の前記少なくとも1つの表面を不活性ガス雰囲気中で乾燥することと
を含む、基材の少なくとも1つの表面を準備するステップと、
b)基材の少なくとも1つの表面上にアモルファスシリコンを堆積させるステップと
を含む方法に関する。
【0010】
一実施形態によると、前記基材の前記少なくとも1つの表面が28℃〜30℃の温度で清浄化される方法が提案される。
【0011】
一実施形態によると、基材の少なくとも1つの表面を無機酸の溶液で処理することが、基材の少なくとも1つの表面を活性化することを含む、方法が提案される。
【0012】
一実施形態によると、基材の少なくとも1つの表面が、25℃の温度で無機酸の溶液で処理される、方法が提案される。
【0013】
一実施形態によると、基材の少なくとも1つの表面を乾燥することが200℃〜300℃の温度で行われる、方法が提案される。
【0014】
別の実施形態によると、堆積するステップが、不活性ガス雰囲気中で、600℃〜1000℃の温度で3〜240分間シリコン前駆体を分解することを含み、不活性ガスがキャリアガスである、方法が提案される。
【0015】
別の実施形態によると、シリコン前駆体が水素化ケイ素である、方法が提案される。
【0016】
更に別の実施形態によると、不活性ガスが、アルゴン、ヘリウム、窒素、及び、それらのうちの2つ以上と水素との混合物からなる群から選択される、方法が提案される。
【0017】
更に別の実施形態によると、シリコン前駆体が不活性ガスと混合され、混合物中のシリコン前駆体の量が1体積%〜30体積%、好ましくは1体積%〜10体積%である、方法が提案される。
【0018】
更に別の実施形態によると、少なくとも1つの表面が基材の内部及び/又は外部表面を表す、方法が提案される。
【0019】
更に別の実施形態によると、無機酸の溶液中の無機酸の濃度が1mol・L
−1である、方法が提案される。
【0020】
更に別の実施形態によると、無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸、及びそれらのうち2つ以上の混合物からなる群から選択される、方法が提案される。
【0021】
更に別の実施形態によると、アモルファスシリコンを堆積するステップが、基材の内部及び外部表面上で逐次的に任意の順序で、又は基材の内部及び外部表面上で同時に行われる、方法が提案される。
【0022】
更に別の実施形態によると、有機溶媒がエタノール又はtert−ブタノールからなる群から選択される揮発性有機溶媒である、方法が提案される。
【0023】
更に別の実施形態によると、シリコン前駆体を分解するステップの後に得られるガス混合物が、不活性ガスと1:2の比で混合された後にキャリアガスとして再利用される、方法が提案される。
【0024】
更に別の実施形態によると、基材がステンレス鋼製又はガラス製である、方法が提案される。
【0025】
本発明の技術的な目的は、機械的作用に対するコーティングの強度及び耐久性を向上させ、且つ基材の表面のより均一なコーティングを得ることを含め、コストを下げながらコーティングの品質を改善することである。更に、本発明は、高いぬれ接触角を有するコーティングを提供する。上述の改善した特徴により、ガスの湿度の測定に対する信頼性の改善が可能になる。本発明はまた、基材の表面を疎水化するプロセスの総体的な効率を増加させる。
【0026】
上述のように、基材の表面を疎水化するために使用されるコーティングの品質の改善の問題がある。本発明の発明者らはこの問題を研究したところ、表面(複数可)を有機溶媒で清浄化することと、表面(複数可)を無機酸の溶液で処理することと、表面(複数可)を不活性雰囲気ガス中で乾燥することとを含む、基材表面(複数可)を準備するステップを行うことにより、この問題が解決できることを見出した。
【0027】
表面の清浄化。
本発明の発明者らは、基材表面(複数可)を有機溶媒で処理することが、様々な種類の汚染物質、不純物、積層から基材表面(複数可)を清浄化することを可能にし、それにより、アモルファスシリコンのコーティングが、望ましくない不純物又は積層上ではなく基材の表面上に直接堆積するので、機械的作用に対するより高い耐久性及び強度に加えて、基材の表面(複数可)のより高い均一性を有するコーティングを提供することが可能になることを見出した。
【0028】
基材のより良好な表面清浄化をもたらす観点から、有機溶媒による基材の表面処理は、好ましくは25℃〜35℃の温度で10〜30分間、より好ましくは28℃〜30℃の温度で行われる。本発明の好ましい一実施形態において、有機溶媒による前記清浄化は、29℃の温度で行われる。上記温度範囲における溶媒の活性が最適であるため、有機溶媒による基材の表面処理はこれらの温度で行われる。
【0029】
清浄化ステップには、揮発性有機溶媒が好ましいこともまた見出された。このような溶媒の例は、エタノール及びtert−ブタノールである。
【0030】
このように、基材表面を上述の温度、時間範囲及び溶媒を使用して清浄化すると、より良好な表面清浄化がもたらされ、続いてこれによって、より均一で耐久性があり信頼性があるコーティングが提供される。更に、清浄化によって、無機酸の溶液による後続の処理に都合のよい表面を得ることが可能になり、このような手法で清浄化された表面では、無機酸の溶液による後続の処理の効率が高くなる。
【0031】
無機酸の溶液による表面処理。
本発明の発明者らは、基材の表面(複数可)を無機酸の溶液で処理することが、アモルファスシリコン層の後続の堆積に対する表面(複数可)の活性化をもたらすことを見出した。基材の表面のこの活性化は、第一に、表面上の酸化物の含量を減少させ、そのことが、得られるコーティングの純度を改善し、第二に、酸化物層を除去することにより、得られるコーティングの密度を上昇させ、コーティングされる基材の層中への堆積したシリコンの拡散を減少させ、第三に、表面粗さを減少させ、それによって基材の表面へのアモルファスシリコンの接着力を増加させる。
【0032】
表面活性効率を改善する観点から、表面を、無機酸の溶液で、20〜30℃の温度で30〜60分間処理することが好ましい。一実施形態において、処理は25℃の温度で行われる。
【0033】
示した清浄化プロセスに対し、1mol・L
−1の酸濃度の無機酸の水溶液を使用することが好ましいこともまた見出された。無機酸の例は、塩酸、硫酸、硝酸である。これらの酸は単独で、又はそれらのうち2つ以上の混合物で使用することができる。
【0034】
本発明者らは、これらの条件に従うことにより、基材の表面上の酸化物の濃度が低くなり且つ粗さが低くなり、それにより層の均一性を維持しながら基材の表面に対するアモルファスシリコンの層の接着力レベルが増加するため、示した温度及び時間範囲並びに示した無機酸(複数可)の示した濃度を使用して基材の表面を活性化することにより、有利な活性化が達成されることを見出した。
【0035】
表面の乾燥。
基材の表面(複数可)の乾燥は、有機溶媒による清浄化、及び無機酸の溶液による表面(複数可)の処理の後に行われる。この乾燥は、有機溶媒及び無機酸溶液の残量を除去するために必要である。
【0036】
有機溶媒及び無機酸の溶液の残量を効果的に除去する観点から、乾燥は200〜300℃の温度で10〜30分間行われるべきである。加えて、本発明者らは、示した温度及び時間範囲で乾燥することにより、活性化ステップ(無機酸の溶液で処理することによる)で得られる低い表面粗さを要求される最適条件で維持することが可能になり、それが、アモルファスシリコン層と基材表面との間の必要な接着力をもたらすことを発見した。更に、研究実施後、好ましい乾燥は不活性ガス雰囲気中で行われることが発見されたが、その理由は、従来の空気乾燥と異なり、不活性ガス流には、基材の表面上で凝縮し得る水分(これは、得られるアモルファスシリコンのコーティングの品質に望ましくない効果を有し得る)がなく、且つ不活性ガス流には酸素(これは基材と相互に作用して、得られるコーティングの品質に悪影響を及ぼす酸化物を形成し得る)がないからである。アルゴン、ヘリウム、窒素、及び、それらのうち2つ以上と水素との混合物を、不活性ガスとして使用することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、乾燥するステップに先立って、清浄化及び活性化のそれぞれのステップの間及び/又は後に実施される、基材を洗浄する1つ又は複数の操作を行ってもよい。洗浄は例えば、蒸留水で行われる。
【0038】
更に、好ましい実施形態において、乾燥は、好ましくは、シリコン前駆体用のキャリアガスとして用意されるのと同じ不活性ガス又はガスの混合物を用いて行われる。乾燥が同じ不活性ガスにより行われることで、基材は前駆体及びキャリアガスの供給混合物に迅速に適応(増感)できるようになり、これによってより平坦で均一なコーティングが確実となる。
【0039】
アモルファスシリコンの堆積。
基板の表面(複数可)上へのアモルファスシリコン層の堆積は、シリコン前駆体を不活性ガスとの混合物で基板表面(複数可)に供給し、続いて加熱によりこのシリコン前駆体が分解するステップを表す。
【0040】
シリコン前駆体は、熱分解してアモルファスシリコンを放出する任意のシリコン含有化合物であってよい。好ましくは、シリコン前駆体は水素化ケイ素である。しかしながら、この一節は、分解してアモルファスシリコンを放出する他の化合物の使用を排除しないことに留意されたい。したがって、例えば、前記水素化ケイ素は、任意選択でC
1〜C
6アルキル基、ハロゲン、アミノ基等で置換されていてもよい。一般には、シリコン前駆体を選択するときは、示したシリコン前駆体が、600℃未満の温度でアモルファスシリコンの放出と共に蒸発する条件を守るべきである。
【0041】
シリコン前駆体を選択する前述の条件は、アモルファスシリコン層の堆積に最も効果的な温度は3〜240分の堆積時間で600℃〜1000℃であることを本発明者らが見出したことの結果である。上で示したように、基材の表面上でのアモルファスシリコンの堆積は、アモルファスシリコンの前駆体の熱分解反応を表す。
【0042】
シリコン前駆体は、不活性ガス雰囲気中で基材の表面上に供給される。この場合、不活性ガスは、示したシリコン前駆体を輸送するキャリアガスとして作用する。アルゴン、ヘリウム、窒素、及び、それらのうち2つ以上と水素との混合物を、不活性ガスとして使用することができる。
【0043】
シリコン前駆体は、混合物中のシリコン前駆体の量が1体積%〜30体積%、好ましくは1体積%〜10体積%になるように、不活性ガスと混合される。シリコン前駆体の量は、特定の技術的プロセス、プロセス条件、要求される結果等に依存することに留意されたい。しかしながら、不活性ガスとの混合物中における上述の量のシリコン前駆体は、基材の表面上に供給される前駆体の大部分が分解反応により堆積するような、前駆体の最も効率的な使用をもたらすことが、本発明者らにより見出された。
【0044】
基材の表面上でアモルファスシリコンを堆積するとき、この表面は基材の内部及び/又は外部表面を表してもよい。アモルファスシリコンの層を分解するステップは、内部及び/又は外部表面上で同時に、並びに逐次的に任意の順序での両方で行うことができる。有機溶媒による清浄化及び無機酸の溶液による処理の上述のステップも、外部及び内部表面上の両方で同時に、並びに逐次的に任意の順序で行うことができる。
【0045】
堆積ステップの後、すなわちシリコン前駆体の分解の後に得られるガスの混合物は、キャリアガスとして再利用し基材上に供給することが可能であり、前記ガス混合物は、基材に供給する前に不活性ガスと1:2の比で混合される。このように、堆積のステップの後に得られるガス混合物は、不活性ガスと混合され、続いてシリコン前駆体と混合され、次いで再び基材に供給される。ガス混合物を示した比(堆積後のガスの混合物対不活性ガスの比 1:2)でこのように再利用することにより、全体の堆積効率を増加させることが可能であり、この比で実質的に全ての前駆体が使用される、すなわちこの比で、分解後に残留した未反応のシリコン前駆体のほとんど全てが、基材の表面上に堆積する。更に、この再利用によりプロセスを合理的に行うことが可能になり、それによって表面をコーティングする操作のコストが減少し、望ましくない放出物が減少することに留意されたい。
【0046】
示した堆積ステップを数段階で行って、要求される厚さのアモルファスシリコン層を得ることができ、前述の堆積ステップ同士の間、基材を不活性ガス流でパージできることに留意されたい。好ましくは、アモルファスシリコン層の厚さは100〜2000nmである。
【0047】
基材の材料は、まったく限定されない。したがって、材料は、鉄、チタン、アルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼等の金属材料、ガラス製、セラミックス製材料であってもよい。好ましい実施形態において、基材材料はステンレス鋼又はガラスである。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
基材は、ステンレス鋼パイプであった。パイプの内側部及び外部表面をエタノールで29℃の温度で10分間清浄化し、次いで両方の表面を蒸留水で洗浄した。次に、パイプの表面をHNO
3の1M溶液で25℃の温度で30分間処理し、次いで再び蒸留水で洗浄した。次いでパイプの表面を気体窒素流で200℃の温度で乾燥した。清浄化した乾燥パイプを疎水化用装置に導入し、ガス状混合物をパイプの内側部に供給するための対応する管に接続し、ガス状混合物をパイプの外部表面に供給するための対応する管に接続した。水素化ケイ素を含むガス状混合物並びにアルゴン及びヘリウムの混合物を、20体積%の水素化ケイ素の量で、管の内側部及びパイプの外部表面に供給した。ガス状混合物の供給を、バルブの調節によって調節した。ガス混合物の安定フローモードに到達した後、誘導加熱器を作動させ、誘導加熱によりパイプ表面を600℃に加熱した。パイプをこの温度で約5分間エージングした。5分後、パイプの内側部及びパイプの外部表面をアルゴン及びヘリウム流でパージした。このプロセスを4回繰り返して、400nmのコーティング厚さとした。
【0049】
(実施例2)
エージング後のガスの混合物を、不活性ガス(アルゴン及びヘリウムの混合物)と1:2の「不活性ガス:水素化ケイ素」の比で混合し、更なる量の水素化ケイ素と混合した後に、再びパイプ内部分及び外部表面上に導いたことを除き、プロセスを実施例1と同様の手法で行った。
【0050】
(実施例3)
堆積を、初めにパイプの内側部、次いでパイプの外部表面上で行ったことを除き、プロセスを実施例1と同様の手法で行った。
【0051】
実施例において得られたコーティングは、シリンダーの表面の水及び水溶液によるぬれ性を大きく減少させた。更に、得られたアモルファスシリコン層の表面は、良好な均一性及び高い耐久性を有した。
【0052】
提案された本発明は、保護コーティング層の品質を改善するものであり、石油及びガス産業における品質管理システム、市販計量ユニット、化学分析実験室、分析装置及びクロマトグラフの製造、主要ガスパイプラインでのガス及び液化炭化水素ガスの量及び品質の測定システムにおいて天然ガスをサンプリングするとき、天然ガスの試料を貯蔵するための容器の準備用装置、及びガス供給パイプラインの準備用装置に応用することができる。