特許第6768248号(P6768248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6768248
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20201005BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20201005BHJP
   F24F 12/00 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   A01G9/24 Q
   F24F5/00 101A
   F24F12/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-68734(P2020-68734)
(22)【出願日】2020年4月7日
【審査請求日】2020年4月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514215457
【氏名又は名称】株式会社イノベックス
(74)【代理人】
【識別番号】100160990
【弁理士】
【氏名又は名称】亀崎 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】原田 聰
(72)【発明者】
【氏名】伏見 治朗
(72)【発明者】
【氏名】福宮 健司
(72)【発明者】
【氏名】植田 旬
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−069599(JP,A)
【文献】 特開2007−263419(JP,A)
【文献】 特開2019−143934(JP,A)
【文献】 特開2017−150744(JP,A)
【文献】 特開平02−046237(JP,A)
【文献】 特開2016−023914(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0133052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 − 9/26
F24D 3/00 − 3/18
F24F 5/00
F24F 7/08 − 7/10
F24F 12/00
F25B 27/00 − 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房運転及び冷房運転を切り替えて、空間の温度の調整を行う熱交換システムであって、
前記暖房運転時に、排水が有する温熱を第1の媒体に移動させる熱交換器と、
外気が有する温熱を取り込んだり前記第1の媒体が有する温熱を外気に吐き出したりする構造の熱交換用ファンを有しており、前記暖房運転時に、前記第1の媒体が有する温熱及び外気が有する温熱を第2の媒体に移動させると共に、前記冷房運転時に、前記第1の媒体が有する温熱を外気に移動させることで該第1の媒体を冷媒にするヒートポンプと、
前記暖房運転時に、前記第2の媒体が有する温熱を前記空間内に移動させると共に、前記冷房運転時に、前記第1の媒体が有する冷熱を前記空間内に移動させるエアハンドリングユニットと、
前記暖房運転時に、ポンプの動力によって、前記ヒートポンプ及び前記エアハンドリングユニットの間で前記第2の媒体を循環させる流路と、を備え
前記冷房運転時に、前記ポンプの動力を停止することを特徴とする
熱交換システム。
【請求項2】
前記排水を一時的に蓄えるバッファタンクと、
前記バッファタンク及び前記熱交換器の間で前記排水を循環させる循環流路と、を備えていることを特徴とする
請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記バッファタンクは、
排水元から前記排水を受け入れると共に、一時的に蓄えていた前記排水を前記熱交換器に送り出すメインタンクと、
前記熱交換器との間で循環した前記排水を受け入れると共に、一時的に蓄えていた前記排水を前記メインタンクに送り出すサブタンクと、を有する二槽式であることを特徴とする
請求項2に記載の熱交換システム。
【請求項4】
ボイラーと、
前記ボイラーが発生させた温熱を前記第2の媒体に移動させる第2の熱交換器と、を備えていることを特徴とする
請求項1〜3のいずれかに記載の熱交換システム。
【請求項5】
前記空間は、農作物又は植物の栽培に用いられることを特徴とする
請求項1〜4のいずれかに記載の熱交換システム。
【請求項6】
前記排水は、工場で発生したものであることを特徴とする
請求項1〜5のいずれかに記載の熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農作物を栽培する農業用ハウス等の空間では、ボイラーの熱を利用して温度及び相対湿度を調整することがある(例えば、特許文献1参照)。一方、農作物を取り扱う工場では、排水に含まれる排熱を他の用途に有効利用することがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4203717号公報
【特許文献2】特許第6048778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、農業用ハウス等の空間では、ボイラーの燃料代が嵩むことが問題となっている。仮に、近くに工場があり、その工場からの排水に含まれる排熱を利用することを検討した場合であっても、その排熱の量が不安定であるので、ボイラーの燃料の代替として利用することは難しい。また、農業用ハウス等の空間では、農作物の成長を考慮すると、日没後の夜間温度を下げることが望まれるが、深夜になってようやく理想の温度になる。このように、農業用ハウス等の空間はそもそも温度の調整が難しい。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、排水に含まれる排熱を利用して、空間の温度の調整を安定して行う熱交換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、暖房運転及び冷房運転を切り替えて、空間の温度の調整を行う熱交換システムであって、前記暖房運転時に、排水が有する温熱を第1の媒体に移動させる熱交換器と、外気が有する温熱を取り込んだり前記第1の媒体が有する温熱を外気に吐き出したりする構造の熱交換用ファンを有しており、前記暖房運転時に、前記第1の媒体が有する温熱及び外気が有する温熱を第2の媒体に移動させると共に、前記冷房運転時に、前記第1の媒体が有する温熱を外気に移動させることで該第1の媒体を冷媒にするヒートポンプと、前記暖房運転時に、前記第2の媒体が有する温熱を前記空間内に移動させると共に、前記冷房運転時に、前記第1の媒体が有する冷熱を前記空間内に移動させるエアハンドリングユニットと、前記暖房運転時に、ポンプの動力によって、前記ヒートポンプ及び前記エアハンドリングユニットの間で第2の媒体を循環させる流路と、を備え、前記冷房運転時に、前記ポンプの動力を停止することを特徴とする熱交換システムである。
【0007】
本発明によれば、排水に含まれる排熱の量が不安定である場合であっても、排水が有する温熱と共に外気が有する温熱をヒートポンプで取り出す暖房運転をすることで、空間の温度の調整を安定して行うことができる。そして、本発明によれば、排水に含まれる排熱を利用しているので、燃料代が嵩むことはない。また、本発明によれば、ヒートポンプで温熱を外気に吐き出す冷房運転をすることで、空間の温度を下げることができる。
【0008】
(2)本発明はまた、前記排水を一時的に蓄えるバッファタンクと、前記バッファタンク及び前記熱交換器の間で前記排水を循環させる循環流路と、を備えていることを特徴とする上記(1)に記載の熱交換システムである。
【0009】
本発明によれば、排水元から受け入れる排水に含まれる排熱の量が不安定である場合であっても、その排水を一時的にバッファタンクで蓄えて排水に含まれる排熱の量を安定させるので、ヒートポンプで取り出す温熱の量をより安定させることができる。これにより、空間の温度の調整をより安定して行うことができる。また、熱交換器で温熱が奪われた排水であっても、全ての温熱が奪われることはなく、十分に温熱が残っている場合がある。本発明によれば、バッファタンク及び熱交換器の間で排水を循環させて、排水を繰り返し利用することができるので、排水に含まれる排熱を有効に活用することができる。
【0010】
(3)本発明はまた、前記バッファタンクは、排水元から前記排水を受け入れると共に、一時的に蓄えていた前記排水を前記熱交換器に送り出すメインタンクと、前記熱交換器との間で循環した前記排水を受け入れると共に、一時的に蓄えていた前記排水を前記メインタンクに送り出すサブタンクと、を有する二槽式であることを特徴とする上記(2)に記載の熱交換システムである。
【0011】
本発明によれば、二槽式のバッファタンクを備えていることで、排水元から受け入れたばかりで、かつ、熱交換器との間で一旦循環した排水と比較して温熱の量が多い排水を、優先的に熱交換器に循環させるので、ヒートポンプで取り出す温熱の量をより安定させることができる。
【0012】
(4)本発明はまた、ボイラーと、前記ボイラーが発生させた温熱を前記第2の媒体に移動させる第2の熱交換器と、を備えていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱交換システムである。
【0013】
本発明によれば、排水に含まれる排熱の量が不安定である場合であっても、ボイラーが発生させた温熱を利用することで、空間の温度の調整を安定して行うことができる。そして、本発明によれば、排水に含まれる排熱を利用しているので、ボイラーが発生させた温熱だけを利用する場合と比較して、ボイラーの燃料代が嵩むことはない。
【0014】
(5)本発明はまた、前記空間は、農作物又は植物の栽培に用いられることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱交換システムである。
【0015】
本発明によれば、暖房運転及び冷房運転を切り替えることで、空間の温度の調整を安定して行うことができる。これにより、昼間に高温になった空間の夜間の温度を下げることが望まれる農作物又は植物の栽培を的確に行うことができる。
【0016】
(6)本発明はまた、前記排水は、工場で発生したものであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱交換システムである。
【0017】
本発明によれば、工場で発生した排水に含まれる排熱を有効活用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記(1)〜(6)に記載の熱交換システムによれば、排水に含まれる排熱を利用して、農業用ハウスの温度の調整を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る熱交換システムの概略図である。
図2】制御盤の構成を示すブロック図である。
図3】ヒートポンプを用いる暖房運転時の熱の流れを示す熱交換システムの概略図である。
図4】冷房運転時の熱の流れを示す熱交換システムの概略図である。
図5】ヒートポンプを用いない暖房運転時の熱の流れを示す熱交換システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る熱交換システム1について詳細に説明する。なお、暖房運転で空間Sの温度を上昇させることは、空気中に含むことが可能となる水分の量が増えるので、相対的な湿度を下げることになる。また、冷房運転で空間Sの温度を下降させることは、相対的な湿度を上げることになり、結果として積極的に結露を発生させる(除湿を行う)ことで空気中に含む実際の水分の量が減るので、絶対的な湿度を下げることになる。
【0021】
まず、図1及び図2を用いて、熱交換システム1の構成について説明する。図1は、熱交換システム1の概略図である。図2は、制御盤12の構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示す熱交換システム1は、工場で発生した排水に含まれる排熱を利用したヒートポンプシステムであり、暖房運転及び冷房運転を切り替えて、トマト等の農作物又は植物の栽培に用いられる農業用ハウス等の空間の温度の調整を行う。この熱交換システム1は、制御盤12によって統括的に制御される。すなわち、熱交換システム1は、制御盤12の制御下において動作して、その動作状況が制御盤12によって管理される。具体的に、熱交換システム1は、各所に配置された温度計や流量計の計測結果等に基づいて、各部の動作が所望する状況となるようにフィードバック制御される。
【0023】
このような熱交換システム1は、バッファタンク2と、排水用循環流路3と、第1の熱交換器4と、第1の媒体用循環流路5と、ヒートポンプ6と、第2の媒体用循環流路7と、エアハンドリングユニット8と、ボイラー9と、第3の媒体用循環流路10と、第2の熱交換器11と、制御盤12(図2参照)と、等を備えている。
【0024】
バッファタンク2は、排水元となる工場から排水を受け入れて一時的に蓄えると共に、一時的に蓄えていた排水を第1の熱交換器4に送り出す。また、バッファタンク2は、第1の熱交換器4との間で循環した排水を受け入れて一時的に蓄えると共に、一時的に蓄えていた排水を必要に応じてオーバーフローさせることで外部に送り出す。
【0025】
具体的に、バッファタンク2は、メインタンク20と、サブタンク21と、を有する二槽式である。
【0026】
メインタンク20は、排水元となる工場から排水を受け入れて一時的に蓄えると共に、一時的に蓄えていた排水を第1の熱交換器4に送り出す。また、メインタンク20は、サブタンク21から送り出された排水を受け入れて一時的に蓄えると共に、一時的に蓄えていた排水を必要に応じてオーバーフローさせることで外部に送り出す。
【0027】
サブタンク21は、第1の熱交換器4との間で循環した排水を受け入れて一時的に蓄えると共に、一時的に蓄えていた排水をオーバーフローさせることでメインタンク20に送り出す。また、サブタンク21は、一時的に蓄えていた排水を必要に応じてオーバーフローさせることで外部に送り出す。
【0028】
排水用循環流路3は、第1のポンプP1の動力によって、バッファタンク2及び第1の熱交換器4の間で排水を循環させる循環流路として機能する。具体的に、排水用循環流路3は、バッファタンク2が有するメインタンク20から第1の熱交換器4を経由して、バッファタンク2が有するサブタンク21に戻る流路である。この排水用循環流路3は、並列して複数(例えば2つ)配置されており、熱交換システム1の運転に必要な能力に応じた数を機能させる。
【0029】
暖房運転時における第1の熱交換器4は、排水用循環流路3を循環する排水が有する温熱を、第1の媒体用循環流路5を循環する不凍液等の第1の媒体に移動させる。この第1の熱交換器4は、並列して複数(例えば2つ)配置されており、熱交換システム1の運転に必要な能力に応じた数を機能させる。
【0030】
暖房運転時における第1の媒体用循環流路5は、第2のポンプP2の動力によって、第1の熱交換器4及びヒートポンプ6の間で第1の媒体を循環させる。冷房運転時における第1の媒体用循環流路5は、第2のポンプP2の動力によって、第1の熱交換器4、ヒートポンプ6及びエアハンドリングユニット8の間で第1の媒体を循環させる。
【0031】
具体的に、第1の媒体用循環流路5は、第1の熱交換器4から直接ヒートポンプ6を経由して第1の熱交換器4に戻る流路5aと、第1の熱交換器4からエアハンドリングユニット8、ヒートポンプ6の順に経由して第1の熱交換器4に戻る流路5bと、に分岐しており、切替弁である第1の弁V1の切替えによって流路5a,5bが切り替えられる。この第1の媒体用流路5は、並列して複数(例えば2つ)配置されており、熱交換システム1の運転に必要な能力に応じた数を機能させる。なお、流路5bには、逆止弁である第2の弁V2が配置されており、第1の媒体の逆流が防止されている。
【0032】
暖房運転時におけるヒートポンプ6は、第1の媒体用流路5を循環する第1の媒体が有する温熱及び外気が有する温熱をかき集め、第2の媒体用流路7を循環する不凍液等の第2の媒体に移動させる。冷房運転時におけるヒートポンプ6は、第1の媒体用流路5を循環する第1の媒体が有する温熱を外気に移動させることで、当該第1の媒体を冷媒にする。
【0033】
ヒートポンプ6は、熱交換用ファン6aを有しており、外気が有する温熱を取り込んだり第1の媒体が有する温熱を外気に吐き出したりする構造を採用している。このヒートポンプ6は、並列して複数(例えば2つ)配置されており、熱交換システム1の運転に必要な能力に応じた数を機能させる。
【0034】
ヒートポンプ6を用いる暖房運転時における第2の媒体用循環流路7は、第3のポンプP3の動力によって、ヒートポンプ6、第2の熱交換器11及びエアハンドリングユニット8の間で第2の媒体を循環させる。ヒートポンプ6を用いない暖房運転時における第2の媒体用循環流路7は、第3のポンプP3の動力によって、第2の熱交換器11及びエアハンドリングユニット8の間で第2の媒体を循環させる。
【0035】
具体的に、第2の媒体用循環流路7は、エアハンドリングユニット8からヒートポンプ6、第2の熱交換器11の順に経由してエアハンドリングユニット8に戻る流路7aと、エアハンドリングユニット8から直接第2の熱交換器11を経由してエアハンドリングユニット8に戻る流路7bと、に分岐しており、第3の弁V3及び第4の弁V4の開閉によって流路7a,7bが切り替えられる。なお、流路7aには、逆止弁である第5の弁V5が配置されており、第2の媒体の逆流が防止されている。また、流路7aには、第6の弁V6が配置されており、当該第6の弁V6の開閉によって、熱交換システム1の暖房運転に必要な能力に応じた数のヒートポンプ6に対して第2の媒体を循環させる。
【0036】
暖房運転時におけるエアハンドリングユニット8は、第2の媒体用循環流路7を循環する第2の媒体が有する温熱を空間S内に移動させる。冷房運転時におけるエアハンドリングユニット8は、第1の媒体用循環流路5を循環する第1の媒体が有する冷熱を空間S内に移動させる。
【0037】
エアハンドリングユニット8は、循環ファン8aを有しており、第2の媒体用循環流路7を循環する第2の媒体が有する温熱、又は第1の媒体用循環流路5を循環する第1の媒体が有する冷熱を空間Sに吐き出す構造を採用している。このエアハンドリングユニット8は、空間Sの大きさや熱交換システム1の運転に必要な能力に応じて、直列して複数(例えば3つ)配置されている。
【0038】
ボイラー9は、燃料を用いて水を加熱し高温の湯または高温かつ高圧の蒸気を発生させる。すなわち、ボイラー9は、燃料を用いて温熱を発生させる。このボイラー9は、発生させた温熱を第3の媒体用循環流路10を循環する不凍液等の第3の媒体に移動させる。
【0039】
第3の媒体用循環流路10は、第4のポンプP4の動力によって、ボイラー9及び第2の熱交換器11の間で第3の媒体を循環させる。
【0040】
第2の熱交換器11は、ボイラー9が発生させた温熱を、第2の媒体用循環流路7を循環する第2の媒体に移動させる。具体的に、第2の熱交換器11は、第3の媒体用循環流路10を循環する第3の媒体が有する温熱を、第2の媒体用循環流路7を循環する第2の媒体に移動させる。
【0041】
図2に示す制御盤12は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理手段(図示省略)と、処理プログラムを格納したHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の補助記憶手段(図示省略)と、演算処理手段が処理プログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)といった主記憶手段(図示省略)と、を備えている。
【0042】
制御盤12が備えている演算処理手段(図示省略)は、処理プログラムを実行することによって、通信部120、判定部121及び制御部122として機能する。
【0043】
通信部120は、熱交換システム1の各部との間で信号を送受信する。判定部121は、熱交換システム1の各部から受信した信号に基づいて各種判定を行うことで、熱交換システム1の各部の運転状況を決定すると共に、判定結果を信号にして制御部122に入力する。制御部122は、判定部121から入力された信号に基づく制御信号を、熱交換システム1の各部に入力し、それぞれの運転状況を制御する。
【0044】
次に、図3を用いて、ヒートポンプ6を用いる暖房運転時における熱交換システム1の熱の流れを説明する。図3は、ヒートポンプ6を用いる暖房運転時の熱の流れを示す熱交換システム1の概略図である。
【0045】
図3に示すように、熱交換システム1では、工場で発生した排熱を有する排水を、バッファタンク2で受け入れて一時的に蓄える。バッファタンク2で一時的に蓄えられている排水を、排水用循環流路3を用いて第1の熱交換器4との間で循環させる。第1の熱交換器4において、排水用循環流路3を循環する排水が有する温熱を、第1の媒体用循環流路5の流路5aを循環する第1の媒体に移動させる。第1の熱交換器4で温熱を受け取った第1の媒体を、第1の媒体用循環流路5の流路5aを用いてヒートポンプ6との間で循環させる。ヒートポンプ6において、第1の媒体用循環流路5の流路5aを循環する第1の媒体が有する温熱及び外気が有する温熱をかき集め、第2の媒体用循環流路7の流路7aを循環する第2の媒体に移動させる。ヒートポンプ6で温熱を受け取った第2の媒体を、第2の媒体用循環流路7の流路7aを用いてエアハンドリングユニット8との間で循環させる。エアハンドリングユニット8において、第2の媒体用循環流路7の流路7aを循環する第2の媒体が有する温熱を、空間S内に移動させる。
【0046】
なお、図示は省略するが、図3に示す場合において、ボイラー9を併用するようにしてもよい。この場合、ボイラー9で発生させた温熱を、第3の媒体用循環流路10を循環する第3の媒体に移動させる。ボイラー9で温熱を受け取った第3の媒体を、第3の媒体用循環流路10を用いて第2の熱交換器11との間で循環させる。第2の熱交換器11において、第3の媒体用循環流路10を循環する第3の媒体が有する温熱を、既にヒートポンプ6で温熱を受け取っていて第2の媒体用循環流路7の流路7aを循環する第2の媒体に移動させる。
【0047】
次に、図4を用いて、冷房運転時における熱交換システム1の熱の流れを説明する。図4は、冷房運転時の熱の流れを示す熱交換システム1の概略図である。
【0048】
図4に示すように、熱交換システム1では、ヒートポンプ6において、第1の媒体用循環流路5の流路5bを循環する第1の媒体が有する温熱を外気に吐き出すことで、第1の媒体を冷媒にする。ヒートポンプ6で冷媒となった第1の媒体を、第1の媒体用循環流路5の流路5bを用いてエアハンドリングユニット8との間で循環させる。エアハンドリングユニット8において、第1の媒体用循環流路5の流路5bを循環する第1の媒体が有する冷熱を、空間S内に移動させる。
【0049】
次に、図5を用いて、ヒートポンプ6を用いない暖房運転時における熱交換システム1の熱の流れを説明する。図5は、ヒートポンプ6を用いない暖房運転時の熱の流れを示す熱交換システム1の概略図である。
【0050】
図5に示すように、ボイラー9で発生させた温熱を、第3の媒体用循環流路10を循環する第3の媒体に移動させる。ボイラー9で温熱を受け取った第3の媒体を、第3の媒体用循環流路10を用いて第2の熱交換器11との間で循環させる。第2の熱交換器11において、第3の媒体用循環流路10を循環する第3の媒体が有する温熱を、第2の媒体用循環流路7の流路7bを循環する第2の媒体に移動させる。第2の熱交換器11で温熱を受け取った第2の媒体を、第2の媒体用循環流路7の流路7bを用いてエアハンドリングユニット8との間で循環させる。エアハンドリングユニット8において、第2の媒体用循環流路7の流路7bを循環する第2の媒体が有する温熱を、空間S内に移動させる。
【0051】
このように、熱交換システム1によれば、排水に含まれる排熱の量が不安定である場合であっても、排水が有する温熱と共に外気が有する温熱をヒートポンプ6で取り出す暖房運転をすることで、空間Sの温度の調整を安定して行うことができる。そして、熱交換システム1によれば、排水に含まれる排熱を利用しているので、燃料代が嵩むことはない。また、熱交換システム1によれば、ヒートポンプ6で温熱を外気に吐き出す冷房運転をすることで、空間S内の温度を下げることができる。
【0052】
また、熱交換システム1によれば、排水元から受け入れる排水に含まれる排熱の量が不安定である場合であっても、その排水を一時的にバッファタンク2で蓄えて排水に含まれる排熱の量を安定させるので、ヒートポンプ6で取り出す温熱の量をより安定させることができる。これにより、空間Sの温度の調整をより安定して行うことができる。また、第1の熱交換器4で温熱が奪われた排水であっても、全ての温熱が奪われることはなく、十分に温熱が残っている場合がある。熱交換システム1によれば、バッファタンク2及び第1の熱交換器4の間で排水を循環させて、排水を繰り返し利用することができるので、排水に含まれる排熱を有効に活用することができる。
【0053】
また、熱交換システム1によれば、二槽式のバッファタンク2を備えていることで、排水元から受け入れたばかりで、かつ、第1の熱交換器4との間で一旦循環した排水と比較して温熱の量が多い排水を、優先的に第1の熱交換器4に循環させるので、ヒートポンプ6で取り出す温熱の量をより安定させることができる。
【0054】
また、熱交換システム1によれば、排水に含まれる排熱の量が不安定である場合であっても、ボイラー9が発生させた温熱を利用することで、空間Sの温度の調整を安定して行うことができる。そして、熱交換システム1によれば、排水に含まれる排熱を利用しているので、ボイラー9が発生させた温熱だけを利用する場合と比較して、ボイラー9の燃料代が嵩むことはない。
【0055】
また、熱交換システム1によれば、暖房運転及び冷房運転を切り替えることで、空間Sの温度の調整を安定して行うことができる。これにより、昼間に高温になった空間Sの夜間の温度を下げることが望まれる農作物又は植物の栽培を的確に行うことができる。
【0056】
また、熱交換システム1によれば、工場で発生した排水に含まれる排熱を有効活用することができる。
【0057】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 熱交換システム
2 バッファタンク
20 メインタンク
21 サブタンク
3 排水用循環流路(循環流路)
4 第1の熱交換器(熱交換器)
5 第1の媒体用循環流路
5a,5b 流路
6 ヒートポンプ
6a 熱交換用ファン
7 第2の媒体用循環流路
7a,7b 流路
8 エアハンドリングユニット
8a 循環ファン
9 ボイラー
10 第3の媒体用循環流路
11 第2の熱交換器
12 制御盤
120 通信部
121 判定部
122 制御部
P1 第1のポンプ
P2 第2のポンプ
P3 第3のポンプ
P4 第4のポンプ
V1 第1の弁
V2 第2の弁
V3 第3の弁
V4 第4の弁
V5 第5の弁
V6 第6の弁
S 空間
【要約】
【課題】排水に含まれる排熱を利用して、空間の温度の調整を安定して行う熱交換システムを提供する。
【解決手段】熱交換システム1は、暖房運転及び冷房運転を切り替えて、空間Sの温度の調整を行う。この熱交換システム1は、暖房運転時に、排水が有する温熱を第1の媒体に移動させる第1の熱交換器4と、暖房運転時に、第1の媒体が有する温熱及び外気が有する温熱を第2の媒体に移動させると共に、冷房運転時に、第1の媒体が有する温熱を外気に移動させることで該第1の媒体を冷媒にするヒートポンプ6と、暖房運転時に、第2の媒体が有する温熱を空間S内に移動させると共に、冷房運転時に、第1の媒体が有する冷熱を空間S内に移動させるエアハンドリングユニット8と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5