【文献】
柿島浩徳 外,射出発泡成形における気泡生成プロセスの可視化観察,成形加工,2015年,Vol.27, No.6,p.233-239
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セルロース繊維の平均繊維径は、10μm以上、50μm以下であり、かつ前記セルロース繊維の平均繊維長は、50μm以上、1500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の発泡用樹脂組成物は、ポリオレフィンと、ポリ乳酸と、分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンと、層状ケイ酸塩と、セルロース繊維とを含み、上記ポリオレフィンは、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンを含み、樹脂組成物全体に対する含有量が25重量%以上、65重量%以下であり、上記ポリ乳酸は、樹脂組成物全体に対する含有量が3重量%以上、40重量%以下であり、上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンは、樹脂組成物全体に対する含有量が0.7重量%以上、15重量%以下であり、上記層状ケイ酸塩は、樹脂組成物全体に対する含有量が1重量%以上、40重量%以下であり、上記セルロース繊維は、樹脂組成物全体に対する含有量が1重量%以上、60重量%以下であることを特徴とする。
【0017】
ポリオレフィンとポリ乳酸とは非相溶系であるため、混合しても互いに溶解せず、界面が形成される。この界面が発泡核として作用する。上記両成分に、カルボニル基を含む変性ポリオレフィンを添加することで、上記両成分を相溶化し分散しやすくすることができる。しかしながら、ポリオレフィンとポリ乳酸とカルボニル基を含む変性ポリオレフィンとを混合しただけでは、混合時のせん断力が低いため、ポリオレフィン及びポリ乳酸の分散は不充分である。そこで、層状ケイ酸塩を添加することで、ポリオレフィンとポリ乳酸との分散性を改善し、発泡用樹脂組成物中に発泡核を高分散させることができる。更に、セルロース繊維を添加することで、ポリオレフィンとポリ乳酸との分散性を阻害することなく、低温衝撃強さが得られる。
【0018】
上記ポリオレフィンは、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンを含む。
上記ポリオレフィンは、ポリプロピレンとポリエチレンとの両方を含んでもよいし、いずれか一方を含んでもよい。
【0019】
上記ポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR)は、好ましくは5〜100g/10分、より好ましくは10〜50g/10分である。MFRは、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.2Nで測定した数値である。
【0020】
上記ポリエチレンのMFRは、好ましくは5〜100g/10分、より好ましくは10〜50g/10分である。MFRは、JIS K7210に準拠し、温度190℃、荷重21.2Nで測定した数値である。
【0021】
上記ポリオレフィンは、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンのみを含むものであってもよいが、ポリプロピレン及びポリエチレン以外の他のポリオレフィンを含んでもよい。
上記他のポリオレフィンとしては、例えば、α−オレフィンの単重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、及び、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。上記α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、及び、1−ウンデセン等の炭素数4〜12のα−オレフィンが挙げられる。
【0022】
上記ポリオレフィンの溶融粘度(220℃)は、150Pa・S以上、400Pa・S以下であることが好ましい。上記ポリオレフィンの溶融粘度のより好ましい下限は200Pa・Sであり、より好ましい上限は300Pa・Sである。溶融粘度は、例えば、株式会社島津製作所製、フローテスター CFT−500Dを用いて測定することができる。具体的には、測定対象となる樹脂を所定温度に加熱し流動化させ、キャピラリーダイ(内径φ1mm、長さ10mm)を通して、所定面圧を1MPaとしたピストンによってシリンダから押し出し、ピストンの移動量と、かかった時間により粘度特性を評価することができる。
【0023】
上記ポリオレフィンは、樹脂組成物全体に対する含有量が25重量%以上、65重量%以下である。
上記ポリオレフィンの樹脂組成物全体に対する含有量が、25重量%未満であると、発泡用樹脂組成物の流動性、固化速度が低下し、成形性が悪くなり、得られる発泡成形体の発泡性、電子レンジ適性、低温衝撃強さが不充分となる。一方で、上記含有量が65重量%を超えると、得られる発泡成形体の断熱性及び低温衝撃強さが不充分となる。また、発泡用樹脂組成物と超臨界流体とを混合する場合には、発泡用樹脂組成物に超臨界流体が含浸しにくくなる。
上記ポリオレフィンの樹脂組成物全体に対する含有量の好ましい下限は30重量%、好ましい上限は50重量%である。
【0024】
上記ポリ乳酸は、L−乳酸又はD−乳酸の単重合体、L−乳酸及びD−乳酸の共重合体、又は、これらの単重合体及び/又は共重合体の混合物である。乳酸の鏡像異性体比率及び鏡像異性体が共重合する方法(ランダム、ブロック、グラフトなど)、又は、結晶核剤を添加する方法により得られた結晶性が異なるポリ乳酸を選択できる。
【0025】
上記ポリ乳酸の溶融粘度(220℃)は、150Pa・S以上、400Pa・S以下であることが好ましい。上記ポリ乳酸の溶融粘度のより好ましい下限は200Pa・Sであり、より好ましい上限は300Pa・Sである。上記ポリ乳酸の溶融粘度は、上記ポリオレフィンの溶融粘度と同様に測定することができる。
【0026】
上記ポリ乳酸は、樹脂組成物全体に対する含有量が3重量%以上、40重量%以下である。
上記ポリ乳酸の樹脂組成物全体に対する含有量が、3重量%未満であると発泡用樹脂組成物を発泡させて成形した発泡成形体の発泡性が不充分となり、40重量%を超えると発泡用樹脂組成物の流動性、固化速度が低下し、成形性が悪くなり、得られる発泡成形体の発泡性、電子レンジ適性、低温衝撃強さが不充分となる。
上記ポリ乳酸の樹脂組成物全体に対する含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は25重量%、より好ましい下限は15重量%である。
【0027】
上記ポリオレフィンの含有量と上記ポリ乳酸の含有量を上記範囲とすることで、発泡用樹脂組成物の流動性を調整し、成形性を良好にすることができる。
【0028】
上記ポリオレフィンとポリ乳酸との溶融粘度差は、200Pa・S以下であることが好ましい。本発明者らは、上記ポリオレフィンとポリ乳酸との溶融粘度差が200Pa・S以下であると、両成分が混合しやすくなること、更に、層状ケイ酸塩及びセルロース繊維を添加することで、溶融混合時のせん断力が向上し、ポリオレフィンとポリ乳酸との混合状態を良好とし、かつ、分散性を向上できることを見出した。ポリオレフィンとポリ乳酸との溶融粘度差のより好ましい上限は150Pa・Sである。
【0029】
非相溶系のポリマー同士を混合する方法としては、両成分間に化学結合を形成させる方法、又は、同一ポリマー間で架橋構造を形成させる方法等を用いることがあり、ポリ乳酸を用いて発泡成形体を得る場合には、例えば、金属錯体等の合成触媒、ラジカル発生剤等を用いて、ポリ乳酸を合成しながら混練を行う反応押出(リアクティブプロセッシング)が用いられることがある。本発明は、ポリオレフィンとポリ乳酸との界面を発泡核として作用させるものであり、ポリ乳酸を合成しながら混練を行う反応押出とは異なり樹脂組成物中に合成触媒、ラジカル発生剤等を添加する必要はない。また、本発明の発泡用樹脂組成物は、一段階の混練で充分にポリオレフィンとポリ乳酸とを分散させることができる。
なお、ポリ乳酸の反応押出の例としては、例えば、合成触媒として2−エチルへキサン酸スズを用い、酸化防止剤(例えば、チバスペシャルティケミカルズ社のイルガノックス1010)を添加してL−ラクチドとε−カプロラクトンを反応させる方法、ジクミルパーオキサイド等のラジカル発生剤を用いて、ポリ乳酸とポリエチレングリコールを反応させる方法、ラジカル発生剤を用いて、ポリ乳酸にポリカーボネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)等をグラフト重合させる方法等が挙げられる。
【0030】
上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンは、例えば、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、又は、不飽和カルボン酸の無水物を付加反応することによって得られるものが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、及び、イタコン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えば、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、及び、フマル酸モノメチルエステル等が挙げられる。不飽和カルボン酸の無水物としては、例えば、無水イタコン酸、及び、無水マレイン酸等が挙げられる。上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、グリシジルメタクリレート変性ポリオレフィン等が挙げられる。上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンは、オレフィンとビニルモノマーとの共重合体であってもよい。オレフィンとビニルモノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、及び、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸を表す。ただし、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニルを重合して得られる化合物は、分解して臭気を発するため、特に、発泡用樹脂組成物を食品用容器、日用品、家庭用電化製品等に用いる場合には適さない。
【0032】
上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンのMFRは、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.3〜50g/10分である。MFRは、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.2Nで測定した数値である。
【0033】
上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンは、樹脂組成物全体に対する含有量が0.7重量%以上、15重量%以下である。
上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンの樹脂組成物全体に対する含有量が上記範囲であると、非相溶系である上記ポリオレフィンと上記ポリ乳酸との間に界面を形成し、両成分の分散性を向上させることができる。上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンの樹脂組成物全体に対する含有量が、0.7重量%未満であるとポリオレフィンとポリ乳酸との間に形成される界面の面積が小さくなるために、得られる発泡成形体の発泡性が低下し、電子レンジ適性が不充分となる。一方で、上記含有量が15重量%を超えると、臭気の発生、着色、成形性の悪化、又は、吸水率の増大が引き起こされる。上記分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィンの樹脂組成物全体に対する含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は10重量%である。
【0034】
上記層状ケイ酸塩としては、例えば、パイロフィライト、タルク、カオリン(カオリナイト)、モンモリロナイト、魚眼石、マーガライト、プレナイト、又は、マイカ(雲母)等が挙げられ、特に、タルク、カオリン、モンモリロナイト、又は、マイカ(雲母)が好適に用いられる。上記層状ケイ酸塩は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記層状ケイ酸塩は、樹脂組成物全体に対する含有量が1重量%以上、40重量%以下である。
上記層状ケイ酸塩の樹脂組成物全体に対する含有量が、1重量%未満であると混合時のせん断力を向上させる効果が充分に得られないため、ポリオレフィンとポリ乳酸とを充分に分散させることができず、得られる発泡成形体の発泡性が不充分となる。一方、上記含有量が40重量%を超えると、発泡用樹脂組成物の成形性の低下に加え、得られる発泡成形体の発泡性、電子レンジ適性、低温衝撃強さが不充分となる。
上記層状ケイ酸塩の樹脂組成物全体に対する含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は25重量%である。
【0036】
上記セルロース繊維は、木材、古紙のリサイクル等から得られる天然植物由来の繊維であり、人体に対する影響が少なく、生分解性であるため、環境負荷の少ない材料である。上記セルロース繊維を添加することで、低温衝撃強さを向上させることができる。セルロース繊維は、合成繊維や無機繊維と比較して、繊維が柔軟であり、かつ、繊維径が不均一である。また、セルロース繊維の中にも空間が存在する。そのため、セルロース繊維同士が絡み合うと、発泡用樹脂組成物中に比較的柔軟な(変形しやすい)空間を形成しやすいと考えられる。ポリオレフィンとポリ乳酸との間に形成される界面に加え、セルロース繊維により形成される空間に接する界面も、発泡核としての効果があると考えられる。このような発泡用樹脂組成物を発泡させると、ポリオレフィンとポリ乳酸との高分散化によって得られた微細な気泡の周りを、比較的柔軟なセルロース繊維が囲むことで低温衝撃強さに優れた発泡成形体が得られると考えられる。
【0037】
上記セルロース繊維の平均繊維径は、10μm以上、50μm以下であることが好ましい。
上記平均繊維径が10μm未満であると、得られる発泡成形体の低温衝撃強さが不充分となることがある。一方、上記平均繊維径が50μmを超えると、得られる発泡成形体の発泡性が低下することがある。上記セルロース繊維の平均繊維長は、50μm以上、1500μm以下であることが好ましい。上記平均繊維長が50μm未満であると、得られる発泡成形体の低温衝撃強さが不充分となることがある。一方、上記平均繊維長が1500μmを超えると、発泡用樹脂組成物の成形性が低下することがある。上記平均繊維径のより好ましい下限は15μmであり、より好ましい上限は25μmである。上記平均繊維長のより好ましい下限は200μmであり、より好ましい上限は1200μmである。上記平均繊維径及び平均繊維長は、例えば、(走査型電子顕微鏡(SEM))により測定することができる。
【0038】
また、上述のように、発泡用樹脂組成物中に空間を形成するためには、ある程度の繊維径、繊維長を有することが好ましい。例えば、ナノサイズのセルロース繊維では、発泡用樹脂組成物中での分散が困難であり、成形性の低下ならびに充分な発泡性が得られないことがある。
【0039】
上記セルロース繊維は、樹脂組成物全体に対する含有量が1重量%以上、60重量%以下である。
上記セルロース繊維の樹脂組成物全体に対する含有量が1重量%未満であると、得られる発泡成形体の断熱性、低温衝撃強さが不充分となる。一方、上記含有量が60重量%を超えると、発泡用樹脂組成物の流動性、成形性が悪くなり、得られる発泡成形体の発泡性、低温衝撃強さが不充分となる。また、セルロース繊維により形成される空間が、発泡成形体が有する発泡粒子径より大きくなるため、低温衝撃強さが低下すると考えられる。上記セルロース繊維の樹脂組成物全体に対する含有量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は45重量%である。
【0040】
上記樹脂組成物は、層状ケイ酸塩及びセルロース繊維以外のフィラーを含有してもよい。無機材料から構成されるフィラーとしては、例えば、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウム等)、グラファイト、カーボンブラック、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、炭酸カルシウム、シリカ、シリカゲル、ゼオライト、窒化ホウ素、アルミナ等を用いることができる。有機材料から構成されるフィラーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、超高分子量ポリエチレン、電子線架橋型ポリエチレン、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、炭化ケイ素、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等を用いることができる。層状ケイ酸塩及びセルロース繊維以外のフィラーの配合量は特に限定されないが、例えば、樹脂組成物全体に対して10重量%を超えない範囲とされる。
【0041】
本発明の発泡用樹脂組成物の製法は特に限定されるものではないが、公知の方法を用いることができる。例えば、単軸又は多軸の各種押出機により各成分の混合物を溶融混練する方法が挙げられる。なかでも、せん断力が高いため、多軸の押出機を用いることが好ましい。発泡用樹脂組成物は、各成分を一括で混練することができ、多段階で混練しなくても、充分にポリオレフィンとポリ乳酸とを分散させることができる。
【0042】
上記発泡用樹脂組成物を発泡させて成形することで、発泡成形体が得られる。上記発泡用樹脂組成物は、層状ケイ酸塩及びセルロース繊維を添加し、ポリオレフィンとポリ乳酸との分散性が向上されていることから、これを発泡させて得られた発泡成形体の内部には、微細な気泡を均一に存在させることができる。このため、上記発泡成形体は、耐熱性、断熱性、強度及び軽量性に優れている。更に、所定量のセルロース繊維を含有することで、優れた低温衝撃強さを有する。
【0043】
上記発泡成形体は、発泡成形体の表面にランダムな模様、色彩又は文字等を施す場合、上記発泡用樹脂組成物に顔料フィラー、カラーマスターバッチ等を添加することできる。
【0044】
上記発泡成形体は、食品用容器、日用品、及び、家庭用電化製品に好適に用いられる。上記発泡成形体は、優れた耐熱性を有し、JIS S 2029の7.4耐熱性試験(表示耐熱温度120℃)、7.10電子レンジ高周波適正性試験、及び、7.11電子レンジ耐久性試験に適合する。また、優れた断熱性を有する。更に、優れた低温衝撃強さを有し、JIS K 7110のアイゾット衝撃試験に適合する。そのため、上記発泡成形体からなる食品用容器は、電子レンジによる加熱又は調理に用いることができ、かつ、冷蔵保管も可能である。耐熱性に優れ、高温下でも変形し難く、低温下でも衝撃強さを有するため、特に、食品用容器に好適に用いることができる。
【0045】
上記発泡成形体は、上記発泡用樹脂組成物と超臨界流体とを混合して発泡させたものであることが好ましい。上記発泡用樹脂組成物は、互いに溶解しないポリオレフィンとポリ乳酸との高分散化によって形成された微細な界面を有する。また、セルロース繊維同士が絡み合うことで、上記発泡用樹脂組成物に微細な空間と、上記空間に接する界面が形成されている。そのため、超臨界流体を用いた発泡において上記界面が発泡起点となり、発泡成形体の内部に微細な気泡を均一に存在させることができ、耐熱性、強度を維持しながら軽量化等の特性が充分に発揮される。更に、所定量のセルロース繊維を含有することで、優れた低温衝撃強さを有する。上記超臨界流体としては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、及び、ヘリウム等の不活性ガスの超臨界流体が挙げられる。なかでも、二酸化炭素、又は、窒素の超臨界流体が好ましく、窒素の超臨界流体がより好ましい。
【0046】
上記超臨界流体を用いた発泡成形体の製造方法は、まず、溶解した発泡用樹脂組成物に高圧力下で超臨界流体を注入し攪拌することで、発泡用樹脂組成物と超臨界流体との単一相溶解物を得る。次に、減圧することで、単一相溶解物中の超臨界流体が気体へ相転移するため、気泡が発生する。発泡起点が均一に多数存在する場合には、微細な発泡粒子を多数含む発泡成形体となる。これにより、発泡用樹脂組成物が発泡し、微細な発泡粒子を有する発泡成形体が得られる。
【0047】
上記発泡成形体は、上記発泡用樹脂組成物を射出成形して得られたことが好ましい。特に、上記発泡成形体は、上記発泡用樹脂組成物に超臨界流体を含浸しながら射出成形を行なう方法(以後、超臨界射出成形ともいう。)により得られたことが好ましい。上記発泡用樹脂組成物は、超臨界射出成形により、上記発泡成形体を精密な形状、及び、多彩な形状に加工することができる。中でも、超臨界射出成形において、金型の空洞部分(キャビティ)内に上記発泡用樹脂組成物を溶融した状態で充填した後、冷却固化が進行する前に金型の一部を動かすことによってキャビティを強制的に広げ急激な圧力減少を引き起こす方法(以後、コアバック法)により発泡させることが好ましく、コアバック法を用いることにより、発泡量を大幅に増大させることができる。
【0048】
図1は、本発明の発泡成形体の断面模式図である。本発明の発泡用樹脂組成物と超臨界流体とを混合し、その後射出成形して発泡させることで、
図1に示した発泡成形体10が得られる。発泡成形体10は、発泡層12の両面にスキン層(外皮層)11を有する。発泡層12は、均一な発泡粒子を有する領域をいい、スキン層11は、発泡成形体の表面側に発泡粒子が形成されていない領域をいう。発泡成形体10は、表面がスキン層11であるため、発泡成形体10の強度を高くすることができ、また、表面を平滑にすることができる。更に、中心部分が発泡層12であるため、軽量化できるだけではなく、熱が伝わり難くなるため、発泡成形体10の耐熱性及び断熱性が向上する。
【0049】
上記発泡成形体の厚さは、0.2〜3.0mmであることが好ましい。上記発泡成形体の厚さが0.2mm未満であると、発泡しないことがあり、3.0mmを超えると表面に凹凸が生じ、外観を損なうことがある。本発明の発泡用樹脂組成物によれば、従来の発泡用樹脂組成物よりも発泡性及び成形性に優れるので、従来よりも薄くしても、実用上充分な耐熱性、断熱性及び強度が確保された発泡成形体を製造することができる。なお、発泡成形体をコアバック法により成形する場合には、上記発泡成形体の厚さは、コアバック前のキャビティの厚さである。
【0050】
上記発泡層は、発泡成形体の断面を観察した場合に、発泡層の1mm×1mmの範囲に発泡粒子を100個以上有することが好ましく、任意に選択した100個の発泡粒子の平均粒子径が100μm以下であることが好ましい。発泡粒子の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)で行うことができ、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−4800等を用いることができる。
【0051】
上記発泡用樹脂組成物と上記超臨界流体とを混合すること、及び、上記発泡用樹脂組成物を発泡させて成形することは、例えば、射出成形機と超臨界流体発生機とが連結された装置を用いて行うことができる。射出成形機と超臨界流体発生機とが連結された装置としては、例えば、MuCell射出成形機(MuCellはTrexel.Co.,Ltd.の登録商標)等が挙げられる。
【0052】
図2は、発泡成形体の作製に使用する成形装置の一例を説明するための模式図である。
図2に示すように、成形装置20は、材料を投入するホッパ21、スクリュ23を備えたシリンダ22、ノズル24を備える射出成形機に、注入制御部27を介してボンベ25及び超臨界流体発生部26が接続されている。
【0053】
製法の具体例としては、まず、上記ポリオレフィン、ポリ乳酸、分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィン、層状ケイ酸塩、及び、セルロース繊維を200℃以上の設定温度とした二軸押出機で溶融混合させ、ペレット状の発泡用樹脂組成物を作製する。次に、得られた上記ペレット状の発泡用樹脂組成物をホッパ21に投入し、一般的な射出成形の手順に従ってスクリュ23を回転させ上記ペレット状の発泡用樹脂組成物を溶解及び計量する。ペレット状の発泡用樹脂組成物の溶解及び計量中に、ボンベ25及び超臨界流体発生部26に接続された注入制御部27を介して、シリンダ22内に超臨界流体を注入し、スクリュ23を回転させることで、発泡用樹脂組成物の溶融物に超臨界流体を混合及び含浸することで、単一相溶解物とする。計量された上記単一相溶解物をスクリュ23でノズル24側に搬送し、設定温度が110℃以下の金型28に射出する。金型内での圧力損失により、超臨界流体は臨界圧力に達した時点で気体への相転移が引き起こされ気泡が発生する。更に、上記単一相溶解物を金型28に射出する際に、キャビティを広げることで金型内での圧力減少を加速させ発泡量を増大させる方法もある。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について実施例を掲げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
(配合原料)
下記の実施例及び比較例において、発泡用樹脂組成物を調製するために使用した配合原料を表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例1)
ポリオレフィンとしてポリプロピレン35重量%、ポリ乳酸5重量%、分子内にカルボニル基を含む変性ポリオレフィン2重量%、層状ケイ酸塩としてタルク3重量%、及び、セルロース繊維55重量%をドライブレンドし、二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30)を使って温度設定220℃で混練し、ペレット状の発泡用樹脂組成物を得た。得られた発泡用樹脂組成物は、ポリ乳酸の粒子がポリプロピレン中に分散した樹脂組成物であった。
【0058】
次に、得られたペレット状の発泡用樹脂組成物を、超臨界発生装置を搭載した射出成形機(東芝機械社製)に投入し、シリンダ温度220℃で発泡用樹脂組成物を溶解させながら超臨界流体を含浸させた。超臨界流体には窒素の超臨界流体を使用し、充填量を0.3重量%、充填圧力16MPaとした。なお、超臨界流体の充填量(単位:重量%)は、下記式(1)で計算することができる。
[(超臨界流体の流量×超臨界流体の流入時間×換算係数27.8)÷発泡用樹脂組成物の重量]×100 (1)
【0059】
超臨界流体を含浸させた発泡用樹脂組成物を、射出速度100mm/秒、スクリュ背圧15MPaの条件で、金型内のキャビティに注入した。金型としては、縦80mm、横80mm、厚さ2mmの板形の金型を用い、金型温度は60℃とした。
【0060】
得られた発泡成形体は、
図1に示したように、発泡層の両面にスキン層を有する発泡成形体であった。
【0061】
(実施例2〜14及び比較例1〜8)
各配合原料の配合量を表2に示した量に変更した以外は、実施例1と同様にして発泡用樹脂組成物及び発泡成形体を作製した。表2には、各配合原料の発泡用樹脂組成物全体に対する含有量を記載した。
【0062】
【表2】
【0063】
(発泡用樹脂組成物及び発泡成形体の評価)
実施例及び比較例で作製した発泡用樹脂組成物について、(1)分散性及び(2)成形性を評価した。また、実施例及び比較例で作製した発泡成形体について、(3)発泡性、(4)電子レンジ適性、(5)断熱性及び(6)低温衝撃強さを評価した。結果を表3に示した。
【0064】
(1)発泡用樹脂組成物の分散性
発泡用樹脂組成物を、偏光顕微鏡(カールツァイス株式会社製、Axio Imager A1m Pol Axio Cam MRc5)で観察し、ポリオレフィンとポリ乳酸との分散状態を確認した。
分散性の評価は、ポリ乳酸粒子の平均粒子径が10μm以下である場合を○とし、ポリ乳酸粒子の平均粒子径が10μmより大きい場合を×とした。
【0065】
(2)発泡用樹脂組成物の成形性
発泡用樹脂組成物の成形性は、超臨界発泡射出成形を行い、射出成形時の流動性、及び、射出成形後の冷却固化性で評価した。射出成形時の流動性及び射出成形後の冷却固化性がよい場合を○、射出成形時の流動性又は射出成形後の冷却固化性のいずれかが悪い場合を×とした。
射出成形時の流動性の評価は、発泡用樹脂組成物を射出圧力100MPa以下で20回射出し、未充填が確認されなかった場合に流動性がよいと判断し、未充填が1回以上確認された場合に流動性が悪いと判断した。射出成形後の冷却固化性の評価は、60℃に設定した金型で1分間冷却し、発泡成形体を金型から取り出す際に目視で変形を確認し、変形が確認されなかった場合に冷却固化性がよい、変形が確認された場合に冷却固化性が悪いと判断した。なお、流動性の評価及び冷却固化性の評価には共に、縦80mm、横80mm、厚さ2mmの板形状の金型を用いた。
【0066】
(3)発泡成形体の発泡性
発泡成形体の断面を、SEM(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)で観察し、発泡層における発泡粒子の状態を確認した。
発泡性の評価は、発泡成形体を断面から観察し、発泡層の縦1mm、横1mmの範囲に、発泡粒子が100個以上存在し、かつ、任意に選択した100個の発泡粒子の平均粒子径が100μm以下である場合を○、発泡粒子の平均粒子径が100μmより大きい場合を×とした。
【0067】
(4)発泡成形体の電子レンジ適性
発泡成形体の電子レンジ適性は、JIS S2029の7.4耐熱性試験(表示耐熱温度120℃)、7.10電子レンジ高周波適正性試験、及び、7.11電子レンジ耐久性試験に準拠した方法で試験を行った。いずれの試験にも適合した場合を○、いずれかの試験に適合しなかった場合を×とした。
【0068】
(5)発泡成形体の断熱性
発泡成形体に、黒体スプレー(タスコシャパン株式会社製、THI−1B)を吹き付けた後、黒体スプレーに含まれる溶剤を室内で12時間以上、24時間以下の条件で乾燥し、板状発泡成形体の片面が黒く着色された測定用試料を作成した。二重壁を有する断熱容器に300mLの沸騰した熱水を入れ、上記測定用試料の黒色面が上向きになるように浮かせ、3分間放置した。3分間放置後に、反射率を0.94に調整した赤外放射温度計(日本アビオニクス社製、TVS−200)を用いて、上記黒色面の表面温度を測定した。表面温度が50℃以下であった場合を◎、50℃より高く65℃以下であった場合を○、65℃より高かった場合を×とした。
【0069】
(6)発泡成形体の低温衝撃強さ
JIS K 7110のアイゾット衝撃試験に準拠し、縦80mm、横80mm、厚さ2mmの発泡成形体から、
図3に示したように、試験片を切り出した。
図3は、アイゾット衝撃試験に用いた試験片の斜視図である。試験片は、長さL80mm、幅b2mm、厚さh10mm、ノッチ部の残り厚さh
N8mmであった。得られた試験片を0℃に設定した恒温器に入れて、60分間放置した。その後、試験片を恒温器から取り出し、衝撃試験を行った。低温衝撃強さの評価は、測定した低温衝撃強さが10kJ/m
2以上で◎、3kJ/m
2以上、10kJ/m
2未満であれば○、3kJ/m
2未満であれば×とした。
【0070】
【表3】