(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6768252
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】架橋ゴム組成物及びそれを用いたゴム製品
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20201005BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20201005BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20201005BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20201005BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20201005BHJP
C08L 61/08 20060101ALI20201005BHJP
C08L 61/28 20060101ALI20201005BHJP
C08J 5/06 20060101ALI20201005BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K5/3415
C08K3/36
C08K3/06
C08K7/02
C08L61/08
C08L61/28
C08J5/06CEQ
C08J3/24 Z
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-571369(P2019-571369)
(86)(22)【出願日】2019年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2019050120
【審査請求日】2019年12月23日
(31)【優先権主張番号】特願2019-9604(P2019-9604)
(32)【優先日】2019年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 昌宏
【審査官】
岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−223005(JP,A)
【文献】
特開2005−048112(JP,A)
【文献】
特開2018−062657(JP,A)
【文献】
特開2013−133433(JP,A)
【文献】
特開2007−083733(JP,A)
【文献】
特開2005−299823(JP,A)
【文献】
特開2016−223057(JP,A)
【文献】
特開平11−241275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/16
C08K 3/00 −13/08
C08J 3/24
C08J 5/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化ニトリルゴムを主体とするゴム成分と、ビスマレイミド化合物と、メチレンドナー化合物と、メチレンアクセプター化合物と、含水シリカと、を含有する架橋ゴム組成物であって、
前記メチレンドナー化合物が、メラミン重合物のメチル化物、ヘキサメチレンテトラミン、メラミン誘導体のうちの1種又は2種以上を含み、且つ前記メチレンアクセプター化合物が、レゾルシン系樹脂、クレゾール系樹脂、及びフェノール樹脂のうちの1種又は2種以上を含む架橋ゴム組成物。
【請求項2】
請求項1に記載された架橋ゴム組成物において、
前記ビスマレイミド化合物が、分子内に2個以上のビスマレイミド基を有する化合物を含む架橋ゴム組成物。
【請求項3】
請求項2に記載された架橋ゴム組成物において、
前記ビスマレイミド化合物が、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドを含む架橋ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記ビスマレイミド化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上10質量部以下である架橋ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記メチレンドナー化合物が、メラミン重合物のメチル化物及び/又はヘキサメチレンテトラミンを含む架橋ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記メチレンドナー化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上15質量部以下である架橋ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記メチレンドナー化合物の含有量が、前記ビスマレイミド化合物の含有量よりも多い架橋ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記メチレンアクセプター化合物が、変性レゾルシンホルムアルデヒド樹脂を含む架橋ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記メチレンアクセプター化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である架橋ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記メチレンアクセプター化合物の含有量が、前記ビスマレイミド化合物の含有量よりも多い架橋ゴム組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記メチレンアクセプター化合物の含有量が、前記メチレンドナー化合物の含有量よりも多い架橋ゴム組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記含水シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以上25質量部以下である架橋ゴム組成物。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記含水シリカの含有量が、前記ビスマレイミド化合物の含有量よりも多い架橋ゴム組成物。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記の含水シリカの含有量が、前記メチレンドナー化合物の含有量よりも多い架橋ゴム組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記含水シリカの含有量が、前記メチレンアクセプター化合物の含有量よりも多い架橋ゴム組成物。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記ゴム成分が、架橋剤として硫黄が用いられて架橋している架橋ゴム組成物。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載された架橋ゴム組成物とRFL処理が施された繊維部材とが、前記架橋ゴム組成物に、前記RFL処理が施された繊維部材の繊維表面に形成されたRFL被膜が接するように複合したゴム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ゴム組成物及びそれを用いたゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化ニトリルゴム(以下「H−NBR」という。)をゴム成分とした架橋ゴム組成物が種々の分野で用いられている。例えば、特許文献1及び2には、歯付ベルトのベルト本体を形成する架橋ゴム組成物として、ゴム成分のH−NBRにビスマレイミド化合物及びシリカを配合したものを用いることが開示されている。また、特許文献1及び2には、歯付ベルトの歯部表面を被覆する歯布のコーティングゴムを形成する架橋ゴム組成物として、ゴム成分のH−NBRにヘキサメチレンテトラミン、レゾルシノール、及びシリカを配合したものを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−208556号公報
【特許文献2】特開平07−208558号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明は、H−NBRを主体とするゴム成分と、ビスマレイミド化合物と、メチレンドナー化合物と、メチレンアクセプター化合物と、含水シリカと、を含有する架橋ゴム組成物
であって、前記メチレンドナー化合物が、メラミン重合物のメチル化物、ヘキサメチレンテトラミン、メラミン誘導体のうちの1種又は2種以上を含み、且つ前記メチレンアクセプター化合物が、レゾルシン系樹脂、クレゾール系樹脂、及びフェノール樹脂のうちの1種又は2種以上を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】心線剥離接着力測定用の接着試験用試験片の斜視図である。
【
図2】補強布剥離接着力測定用の接着試験用試験片の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0007】
実施形態に係る架橋ゴム組成物は、H−NBRを主体とするゴム成分と、ビスマレイミド化合物と、メチレンドナー化合物と、メチレンアクセプター化合物と、含水シリカとを含有する。実施形態に係る架橋ゴム組成物は、H−NBRを主体とするゴム成分に、ビスマレイミド化合物、メチレンドナー化合物、メチレンアクセプター化合物、及び含水シリカを含むゴム配合剤が配合されて混練されることにより調製される未架橋ゴム組成物が加熱等されてゴム成分の分子間が架橋されたものである。
【0008】
実施形態に係る架橋ゴム組成物によれば、H−NBRを主体とするゴム成分と、ビスマレイミド化合物と、メチレンドナー化合物と、メチレンアクセプター化合物と、含水シリカとを含有することにより、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得ることができる。
【0009】
ゴム成分はH−NBRを主体とする。ゴム成分におけるH−NBRの含有量は50質量%よりも多く、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。H−NBR以外のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマーやクロロプレンゴム等が挙げられる。
【0010】
H−NBRの結合アクリロニトリル量は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、好ましくは30質量%以上45質量%以下、より好ましくは35質量%以上39質量%以下である。
【0011】
H−NBRのヨウ素価は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、好ましくは10mg/100mg以上60mg/100mg以下、より好ましくは25mg/100mg以上30mg/100mg以下である。
【0012】
H−NBRの100℃におけるムーニー粘度は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、好ましくは50ML
1+4(100℃)以上100ML
1+4(100℃)以下、より好ましくは70ML
1+4(100℃)以上80ML
1+4(100℃)以下である。このムーニー粘度は、JIS K6300に基づいて測定されるものである。
【0013】
ビスマレイミド化合物は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、分子内に2個以上のビスマレイミド基を有する化合物を含むことが好ましい。かかるビスマレイミド化合物としては、例えば、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−1,2−エチレンビスマレイミド、N,N’−1,2−プロピレンビスマレイミド、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、N,N′−(4,4−ジフェニル−メタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2′−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、m−フェニレンビス(メチレン)ビスマレイミド、m−フェニレンビス(メチレン)ビスシトラコンイミド、1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド等が挙げられる。ビスマレイミド化合物は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドを含むことがより好ましい。ビスマレイミド化合物は、ゴム成分の分子にビスマレイミド基が結合した状態で存在するものを含んでいてもよく、分子内に2個以上のビスマレイミド基を有する場合には、ゴム成分の分子間を架橋した状態で存在するものを含んでいてもよい。
【0014】
実施形態に係る架橋ゴム組成物におけるビスマレイミド化合物の含有量(A)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下、より好ましくは3質量部以上7質量部以下である。
【0015】
メチレンドナー化合物としては、例えば、メラミン重合物のメチル化物、ヘキサメチレンテトラミン、メラミン誘導体等が挙げられる。メラミン誘導体としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメチロールメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサキス−(メトキシメチル)メラミン等が挙げられる。メチレンドナー化合物は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、メラミン重合物のメチル化物及び/又はヘキサメチレンテトラミンを含むことがより好ましい。
【0016】
実施形態に係る架橋ゴム組成物におけるメチレンドナー化合物の含有量(B)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上15質量部以下、より好ましくは5質量部以上8質量部以下である。
【0017】
このメチレンドナー化合物の含有量(B)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、ビスマレイミド化合物の含有量(A)よりも多いことが好ましい。メチレンドナー化合物の含有量(B)のビスマレイミド化合物の含有量(A)に対する比(B/A)は、同様の観点から、好ましくは1.1以上2.0以下、より好ましくは1.1以上1.5以下である。
【0018】
メチレンアクセプター化合物としては、例えば、フェノール、レゾルシノール、レゾルシン、クレゾール等のフェノール性水酸基を有する化合物及びその誘導体、レゾルシン系樹脂、クレゾール系樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。フェノール樹脂としては、例えば、これらのフェノール化合物及びその誘導体と、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどのアルデヒド化合物との縮合物等が挙げられる。メチレンアクセプター化合物は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、変性レゾルシンホルムアルデヒド樹脂及び/又はレゾルシンを含むことがより好ましい。
【0019】
実施形態に係る架橋ゴム組成物におけるメチレンアクセプター化合物の含有量(C)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
【0020】
このメチレンアクセプター化合物の含有量(C)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、ビスマレイミド化合物の含有量(A)よりも多いことが好ましい。メチレンアクセプター化合物の含有量(C)のビスマレイミド化合物の含有量(A)に対する比(C/A)は、同様の観点から、好ましくは1.1以上2.5以下、より好ましくは1.8以上2.2以下である。
【0021】
このメチレンアクセプター化合物の含有量(C)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、メチレンドナー化合物の含有量(B)よりも多いことが好ましい。メチレンアクセプター化合物の含有量(C)のメチレンドナー化合物の含有量(B)に対する比(C/B)は、同様の観点から、好ましくは1.1以上2.0以下、より好ましくは1.3以上1.7以下である。
【0022】
含水シリカは、沈降法によって製造される沈降シリカであって、二酸化ケイ素に水が結合した粉状の含水ケイ酸である。実施形態に係る架橋ゴム組成物における含水シリカの含有量(D)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上25質量部以下、より好ましくは10質量部以上20質量部以下である。
【0023】
この含水シリカの含有量(D)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、ビスマレイミド化合物の含有量(A)よりも多いことが好ましい。含水シリカの含有量(D)のビスマレイミド化合物の含有量(A)に対する比(D/A)は、同様の観点から、好ましくは2.5以上3.5以下、より好ましくは2.8以上3.2以下である。
【0024】
この含水シリカの含有量(D)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、メチレンドナー化合物の含有量(B)よりも多いことが好ましい。含水シリカの含有量(D)のメチレンドナー化合物の含有量(B)に対する比(D/B)は、同様の観点から、好ましくは2.0以上3.0以下、より好ましくは2.1以上2.5以下である。
【0025】
この含水シリカの含有量(D)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、メチレンアクセプター化合物の含有量(C)よりも多いことが好ましい。含水シリカの含有量(D)のメチレンアクセプター化合物の含有量(C)に対する比(D/C)は、同様の観点から、好ましくは1.1以上2.0以下、より好ましくは1.3以上1.7以下である。
【0026】
実施形態に係る架橋ゴム組成物は、架橋剤として硫黄が用いられてゴム成分が架橋していてもよく、また、架橋剤として有機過酸化物が用いられてゴム成分が架橋していてもよく、さらに、架橋剤として硫黄及び有機過酸化物が併用されてゴム成分が架橋していてもよい。実施形態に係る架橋ゴム組成物は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、架橋剤として少なくとも硫黄が用いられてゴム成分が架橋していることが好ましい。この場合、架橋前の未架橋ゴム組成物における架橋剤の硫黄の配合量は、同様の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上5質量部以下である。
【0027】
実施形態に係る架橋ゴム組成物は、その他に、カーボンブラック、粘着剤、液状有機シラン、可塑剤、加工助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等を含有していてもよい。
【0028】
実施形態に係る架橋ゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、その含有量(E)は、RFL処理が施された繊維部材との優れた接着性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上40質量部以下、より好ましくは25質量部以上35質量部以下である。このカーボンブラックの含有量(E)は、同様の観点から、含水シリカの含有量(D)よりも多いことが好ましい。カーボンブラックの含有量(E)の含水シリカの含有量(D)に対する比(E/D)は、同様の観点から、好ましくは1.5以上2.5以下、より好ましくは1.7以上2.1以下である。
【0029】
実施形態に係る架橋ゴム組成物は、RFL処理が施された繊維部材と複合してゴム製品を構成することにより、繊維部材との優れた接着性能を得ることができる。
【0030】
繊維部材としては、実施形態に係る架橋ゴム組成物に分散される短繊維、実施形態に係る架橋ゴム組成物に埋設される心線、実施形態に係る架橋ゴム組成物に埋設又は貼設される補強布が挙げられる。ゴム製品としては、例えば、伝動ベルト、タイヤ、ホース等が挙げられる。
【0031】
RFL処理は、レゾルシン(R)及びホルマリン(F)の縮合物(RF)と、ゴムラテックス(L)とを混合したRFL水溶液に繊維部材を浸漬して引き上げた後に加熱することにより、繊維表面にRFL被膜を形成させる接着処理である。ゴムラテックス(L)としては、例えば、ビニルピリジンスチレンブタジエンゴムラテックス(Vp・SBR)、ニトリルゴムラテックス(NBR)、H−NBRラテックス、クロロプレンゴムラテックス(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス(CSM)等が挙げられる。
【0032】
繊維表面に形成されるRFL被膜の組成は、RFL水溶液の組成が反映される。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)は、例えば1/2以上1/1以下である。レゾルシン(R)及びホルマリン(F)の縮合物(RF)と、ゴムラテックス(L)の固形分との質量比(RF/L)は、例えば1/20以上1/5以下である。
【実施例】
【0033】
(接着試験用試験片)
以下の実施例及び比較例1〜4の接着試験用試験片を作製した。それぞれのゴム配合について表1にも示す。
【0034】
<実施例>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのH−NBR(Zetpol2020 日本ゼオン社製、結合アクリロニトリル量:36.2質量%、ヨウ素価:28mg/100mg、ムーニー粘度:78.0ML
1+4(100℃))を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、ビスマレイミド化合物(バルノックPM 大内新興化学工業社製、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド)5質量部、メチレンドナー化合物(スミカノール507AP 田岡化学工業社製、活性成分:65質量%)10質量部(活性成分6.5質量部)、メチレンアクセプター化合物(スミカノール620 田岡化学工業社製)10質量部、含水シリカ(ウルトラジルVN3 エボニック社製)15質量部、FEFカーボンブラック(シーストSO 東海カーボン社製)28質量部、粘着剤の脂肪族系炭化水素樹脂(クイントンA100 日本ゼオン社製)5質量部、液状有機シラン(シラノグランSI−69/GR ケトリッツ社製)3質量部、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤(アデカサイザーRS−107 ADEKA社製)7.5質量部、加工助剤のステアリン酸5質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、加硫促進剤(ノクセラーCZ−G 大内新興化学工業社製)1.5質量部、及び架橋剤の硫黄(セイミOT 日本乾溜工業社製、純度:90質量%)3.0質量部(活性成分2.7質量部)を配合して混練することにより未架橋ゴム組成物を調製した。
【0035】
ゴムラテックス(L)がVp・SBRラテックス、レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)が1/1.5、及びレゾルシン(R)及びホルマリン(F)の縮合物(RF)と、ゴムラテックス(L)の固形分との質量比(RF/L)が1/10であるRFL水溶液を作製した。このRFL水溶液に3本のEガラスのガラス繊維のストランドを束ねたものを浸漬して引き上げた後に加熱し、それを一方向に撚って下撚り糸とし、その下撚り糸を13本集めて下撚り糸とは反対方向に撚り合わせることにより3/13構成の心線径が1.2mmの心線を調製した。
【0036】
ゴムラテックス(L)がNBRラテックス、レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)が1/1.5、及びレゾルシン(R)及びホルマリン(F)の縮合物(RF)と、ゴムラテックス(L)の固形分との質量比(RF/L)が1/10であるRFL水溶液を作製した。このRFL水溶液にポリアミド繊維製の2/2構成の綾織り織布を浸漬して引き上げた後に加熱することにより補強布を調製した。
【0037】
上記未架橋ゴム組成物、心線、及び補強布を用い、
図1に示すように、補強布13の上に、間隔をおかずに複数本の心線12を並行に敷き詰め、その上に未架橋ゴム組成物を架橋させた板状の架橋ゴム組成物11を一体に設けた長さが150mm及び幅が25mmの心線剥離接着力測定用の接着試験用試験片10Aを作製した。
【0038】
上記未架橋ゴム組成物及び補強布を用い、
図2に示すように、補強布13の上に未架橋ゴム組成物を架橋させた板状の架橋ゴム組成物11を一体に設けた長さが150mm及び幅が25mmの補強布剥離接着力測定用の接着試験用試験片10Bを作製した。
【0039】
これらの接着試験用試験片10A及びBを実施例とした。
【0040】
<比較例1>
ビスマレイミド化合物、メチレンドナー化合物、及びメチレンアクセプター化合物を配合せず、FEFカーボンブラックの配合量をゴム成分100質量部に対して46質量部としたことを除いて実施例と同様の操作により未架橋ゴム組成物を調製した。そして、それを用いて実施例と同様の接着試験用試験片を作製し、それを比較例1とした。
【0041】
<比較例2>
メチレンドナー化合物及びメチレンアクセプター化合物を配合せず、FEFカーボンブラックの配合量をゴム成分100質量部に対して44質量部とした未架橋ゴム組成物を調製したことを除いて実施例と同様の操作により未架橋ゴム組成物を調製した。そして、それを用いて実施例と同様の接着試験用試験片を作製し、それを比較例2とした。
【0042】
<比較例3>
ビスマレイミド化合物を配合せず、FEFカーボンブラックの配合量をゴム成分100質量部に対して30質量部としたことを除いて実施例と同様の操作により未架橋ゴム組成物を調製した。そして、それを用いて実施例と同様の接着試験用試験片を作製し、それを比較例3とした。
【0043】
<比較例4>
ビスマレイミド化合物を配合せず、メチレンドナー化合物、メチレンアクセプター化合物、及びFEFカーボンブラックの配合量を、ゴム成分100質量部に対してそれぞれ20質量部、20質量部(活性成分:13質量部)、及び20質量部としたことを除いて実施例と同様の操作により未架橋ゴム組成物を調製した。そして、それを用いて実施例と同様の接着試験用試験片を作製し、それを比較例4とした。
【0044】
【表1】
【0045】
(試験方法)
<心線剥離接着力測定>
実施例及び比較例1〜4のそれぞれの心線剥離接着力測定用の接着試験用試験片10Aについて、万能引張試験機を用い、試験雰囲気温度25℃の下、JIS K6256−1:2013に準じ、幅25mm分の心線12及び補強布13を50mm/minの速度で剥離し、そのときの剥離強さの中央値を心線剥離接着力とした。また、剥離した心線12表面の破壊状態、つまり、ゴムの付着の有無を目視観察で評価した。次いで、試験雰囲気温度100℃として同様の試験を行った。
【0046】
<補強布剥離接着力測定>
実施例及び比較例1〜4のそれぞれの補強布剥離接着力測定用の接着試験用試験片10Bについて、万能引張試験機を用い、試験雰囲気温度25℃の下、JIS K6256−1:2013に準じ、幅25mm分の補強布13を50mm/minの速度で剥離し、そのときの剥離強さの中央値を補強布剥離接着力とした。次いで、試験雰囲気温度100℃として同様の試験を行った。
【0047】
(試験結果)
試験結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2によれば、実施例は、25℃及び100℃のいずれの試験雰囲気温度においても、心線剥離接着力及び補強布剥離接着力が比較例1〜4よりも高いことが分かる。
【0050】
また、実施例では、25℃及び100℃のいずれの試験雰囲気温度においても、心線の剥離表面にゴムの付着が有り、したがって、ゴム凝集破壊であった。これに対し、比較例1〜4では、25℃の試験雰囲気温度においては、ゴムの付着が有ったものも含まれるが、100℃の試験雰囲気温度においては、ゴムの付着が無い乃至僅かに有る程度であった。
【0051】
これらのことから、実施例は、比較例1〜4よりも、RFL処理が施された繊維部材の心線及び補強布との優れた接着性を得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、架橋ゴム組成物及びそれを用いたゴム製品の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0053】
10A,10B 接着試験用試験片
11 架橋ゴム組成物
12 心線
13 補強布
【要約】
架橋ゴム組成物は、水素化ニトリルゴムを主体とするゴム成分と、ビスマレイミド化合物と、メチレンドナー化合物と、メチレンアクセプター化合物と、含水シリカとを含有する。