(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
DCブラシ付モータが備えるコンミテータには、ブラシが摺動する複数の導電部と、アーマチュアコイルの巻線(引出線)が接続されるライザと、が設けられている。ライザは、導電部から延出するとともに先端部を基端側に向けて屈曲することで形成されている。これにより、ライザは、巻線を挟み込んで係止させることができる(例えば、特許文献1から特許文献3参照)。
【0003】
ところで、ライザと巻線とは、ヒュージング(熱かしめ)により接続される。ヒュージングを行う際には、溶接用の一対の電極をライザに押し当てて一対の電極間に電流を供給することで、ジュール熱によりライザを軟化させてライザと巻線とを溶接する。
例えば、下記特許文献1に記載の構成では、コンミテータの導電部とライザとが隣接して設けられている。このため、ヒュージング時に一方の電極を導電部に押し当てる必要がある。よって、ライザだけでなく導電部も発熱して軟化し、導電部の真円度が低下するおそれがある。
【0004】
また、下記特許文献2に記載の構成では、ライザが導電部からその径方向外側に向かって突出している。このため、ヒュージング時には、一対の電極によりライザを軸方向両側から挟み込むようにして、一対の電極をライザに押し当てることができる。これにより、電極を導電部に押し当てることなくヒュージングできるので、導電部の真円度の低下を防止できる。しかしながら、このような構成では、ライザに対する軸方向両側に、ヒュージング時の一対の電極を配置するスペースが必要となる。例えばアーマチュアコアやコンミテータ本体のライザと軸方向で重なる位置に電極を配置する貫通孔を形成する必要が生じる。このため、アーマチュアコアやコンミテータ本体の強度が低下するおそれがある。
【0005】
下記特許文献3に記載の構成では、ライザは、巻線が挟み込まれて係止されるU字状に屈曲した係止部を先端部に備えるとともに、係止部よりも基端側に真直ぐに延びる部分を備えている。この真直ぐに延びる部分を一対の電極のうちの一つの電極を押し当てる箇所として利用する。これにより、ヒュージング時に一対の電極を軸方向一方側からライザの先端部と基端部とに押し当てることが可能となる。よって、アーマチュアコアやコンミテータ本体に貫通孔を設ける必要がなくなり、アーマチュアコアやコンミテータ本体の強度が低下することを防止できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3に記載された構成では、ライザに一対の電極を軸方向一方側から押し当てることができるという点では優れているが、ライザの基端部に真直ぐに延びる部分を設けることで、ライザの径方向の寸法が長くなる。これにより、ライザよりも径方向外側に配置されるコイルの巻線スペースが狭くなる場合がある。また、ライザが導電部から軸方向に延びる場合には、コンミテータの軸方向の寸法が大きくなり、モータが大型化する場合がある。したがって、特許文献3に開示された技術にあっては、ライザの長さを短くするという点で改善の余地がある。
【0008】
そこで本発明は、導電部の真円度やコンミテータ本体の剛性を確保しつつ、ライザを短くすることができるコンミテータ
、モータ
、およびモータの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンミテータは、主軸に外挿される絶縁性を有する円筒状のコンミテータ本体と、前記コンミテータ本体の外周面を覆うように周方向に並んで配置され、導電性を有する複数の導電部と、前記導電部における前記主軸の軸方向端部から前記主軸における径方向外側に沿って形成されており、巻線が接続されるライザと、を備え、前記ライザは、前記導電部における前記主軸の軸方向端部から前記径方向外側に向けて屈曲形成されて
折り返されていることにより前記巻線を係止する係止部と、前記係止部の前記周方向の側方に配置され、前記係止部と導通する非係止部と、を備える、ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、係止部と非係止部とを周方向に並べることができる。これにより、ヒュージングに用いる一対の電極を周方向に並ぶ係止部および非係止部に押し当てることができる。このため、ライザの長さを一方の電極分に対応する長さとすることが可能となる。したがって、導電部が円筒状に並ぶコンミテータにおいて、導電部の真円度やコンミテータ本体の剛性を確保しつつ、ライザを短くすることができる。
【0012】
さらに、コンミテータの径方向の寸法を小さくすることができる。これにより、ライザよりも径方向外側に配置される巻線スペースを大きく設けることが可能となる。したがって、高効率なモータを形成することが可能なコンミテータが得られる。
【0015】
本発明のモータは、上記のコンミテータと、
前記ライザに接続された前記巻線と、前記導電部に摺接するブラシと、前記巻線が巻かれたティースを有するアーマチュアコアと、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、ライザを短くできるコンミテータを備えるので、ライザが径方向外側に延出する構成の場合では、巻線スペースを大きく設けることが可能となる。したがって、高効率なモータが得られる。また、ライザが軸方向に延出する構成の場合では、コンミテータの軸方向の寸法が小さくなるので、小型なモータが得られる。
本発明のモータの製造方法は、コンミテータを有するモータの製造方法であって、前記コンミテータは、主軸に外挿される絶縁性を有する円筒または円板状のコンミテータ本体と、前記コンミテータ本体の外面を覆うように周方向に並んで配置され、導電性を有する複数の導電部と、前記導電部から前記主軸における径方向外側に
向けて屈曲形成されて折り返されていることにより巻線が接続されるライザと、を備え、前記ライザは、前記巻線を係止する係止部と、前記係止部の前記周方向の側方に配置され、前記係止部と導通する非係止部と、を備え、ヒュージング用の主電極を前記係止部に前記主軸の軸方向の一方側から押し当てる工程と、ヒュージング用の副電極を前記非係止部に前記軸方向の前記一方側から押し当てる工程と、前記主電極と前記副電極との間に電流を供給する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、係止部と非係止部とを周方向に並べることができる。これにより、ヒュージングに用いる一対の電極を周方向に並ぶ係止部および非係止部に押し当てることができる。このため、ライザの長さを一方の電極分に対応する長さとすることが可能となる。したがって、導電部が円筒状に並ぶコンミテータにおいて、導電部の真円度やコンミテータ本体の剛性を確保しつつ、ライザを短くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の減速装置付き電動モータの斜視図である。
図1に示すように、減速装置付き電動モータ1は、DCブラシ付モータとして構成された偏平形状の電動モータ部10(モータ)と、電動モータ部10の回転出力を減速して出力軸80から出力する減速機構部70と、を備えている。電動モータ部10の回転中心であるモータ軸線Lは、出力軸80の回転中心と一致している。
【0020】
減速装置付き電動モータ1は、外殻体として、モータ軸線Lと同軸に設けられるとともに両端が開口した円筒状のヨーク2と、ヨーク2の軸方向一端を塞ぐように結合されたモータカバー3と、ヨーク2の軸方向他端を塞ぐように結合された減速機カバー4と、減速機カバー4の中央開口4aを貫通する円柱状の主軸5と、を有している。ヨーク2とモータカバー3と減速機カバー4とにより囲まれた空間内部に、ほぼ全ての機構要素が収容されている。主軸5は、モータ軸線Lと同軸に配置されている。主軸5は、軸方向一端部がモータカバー3に固定されている。
【0021】
ヨーク2の一端部の内周面には、図示しないモータマグネット(永久磁石)が円筒状に配置されている。モータマグネットは、内周面に形成された6個の磁極であるN極とS極が円周方向に交互に配列されたものである。
【0022】
モータマグネットの内周側には、モータ軸線L回りに回転自在のアーマチュア20(
図2および
図3参照)が配置されている。アーマチュア20の軸方向一方側には、アーマチュア20に給電するための一対のブラシを備えた給電装置(いずれも不図示)が配置されている。
【0023】
図2は、第1実施形態のアーマチュアの平面図である。
図3は、
図2のIII−III線における断面図である。
図2および
図3に示すように、電動モータ部10の主要素であるアーマチュア20は、アーマチュアコア21と、一対のインシュレータ22,23と、アーマチュアコイル24と、コンミテータ30と、を備えている。なお、以下の説明では、軸方向におけるモータカバー3側(すなわち軸方向一方側)を上側と称し、その反対側(すなわち軸方向他方側)を下側と称して以降の説明を行う。
【0024】
アーマチュアコア21は、複数の鋼板を軸方向に積層することで構成されている。アーマチュアコア21は、略円環状のコア本体21aを有している。コア本体21aにおいて、複数の鋼板のうち最も上側に位置する鋼板は、他の鋼板よりも内径が大きくなるように形成されている。これにより、コア本体21aの上面には、鋼板1枚分の深さの凹部21cが形成されている。コア本体21aの中央には、円形の中心開口部21dが設けられている。中心開口部21dの内周面には、軸方向に沿って延在する係止突部21eが径方向内側に向かって複数立設されている。凹部21cにおける中心開口部21dの周囲には、複数(本実施形態では4個)のクラッチ嵌入孔21fが周方向に沿って等間隔に形成されている。クラッチ嵌入孔21fの内側には、減速機構部70に連結されるクラッチ29が嵌入されている。凹部21cの底面上には、絶縁材料により形成された円形状の絶縁板25が載置されている。絶縁板25の中心部には、アーマチュアコア21の中心開口部21dに対応する開口が形成されている。
【0025】
コア本体21aの径方向外側には、軸方向平面視略T字状のティース21bが周方向に等間隔で放射状に形成されている。ティース21bには、巻線Wが巻かれてアーマチュアコイル24が形成されている。ティース21bは、先端部に形成され、周方向に沿って延出する鍔部21btを備えている。この鍔部21btによって、ティース21bは、軸方向平面視略T字状になっている。また、隣接するティース21b間には、スロット21sがティース21bと同数個設けられている。本実施形態では、ティース21bおよびスロット21sの数は9個である。
【0026】
インシュレータは、それぞれ絶縁性樹脂で成形された上側インシュレータ22と下側インシュレータ23とに分割構成されている。そして、インシュレータは、アーマチュアコア21に装着されたとき、上側インシュレータ22と下側インシュレータ23とが、アーマチュアコア21のティース21bの先端外周面を除く凹部21cよりも径方向外側の部分のほとんどの部分を覆うことができるように、ティース21bの外形形状に合わせて形成されている。
【0027】
上側インシュレータ22と下側インシュレータ23は、同形状のものである。ここでは、上側インシュレータ22の形状について簡単に述べ、下側インシュレータ23については説明を省略する。
上側インシュレータ22の上面22aは、アーマチュアコイル24を構成する巻線Wが巻き付けられる面であり、全体にわたりフラットな面として形成されている。この上面22aの中央には、アーマチュアコア21の凹部21cを開放する円形の中央開口部22bが設けられている。
【0028】
コンミテータ30は、主軸5(
図1参照)に回転自在に支持されている。コンミテータ30は、主軸5に外挿される円筒状のコンミテータ本体31と、コンミテータ本体31の外周面を覆うように周方向に並んで配置された複数(本実施形態では9個)のセグメント33(導電部)と、各セグメント33の下端部から延びるライザ35と、を備えている。
【0029】
コンミテータ本体31は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。コンミテータ本体31は、モータ軸線Lと同軸に配置され、上端部を突出させた状態でアーマチュアコア21の中心開口部21dに圧入されている。コンミテータ本体31の下端部の外周面には、アーマチュアコア21の中心開口部21dに設けられた係止突部21eが入り込む係止溝31aが形成され、アーマチュアコア21とコンミテータ本体31との相対回転を不能としている。コンミテータ本体31の上端部の外周面は、上側を向く段差面を挟んで縮径形成され、円環状のマグネットセンサ38が外嵌されている。マグネットセンサ38は、アーマチュア20の回転数の検出等に用いられる。コンミテータ本体31の内側には、金属材料により形成された円筒状のすべり軸受39が圧入されている。すべり軸受39は、主軸5(
図1参照)に外挿されている。
【0030】
複数のセグメント33は、導電性を有する銅等の金属材料により、ブラシ(不図示)が摺接する円弧筒状に形成されている。セグメント33は、コンミテータ本体31の上端部の外周面に、ブラシ当接面を径方向外側に向けて配設されている。複数のセグメント33は、周方向に互いに絶縁された状態で、一定ピッチで並んで円筒状に配列されている。セグメント33は、ティース21bの数と同じ数だけ設けられており、ティース21bの幅方向の中心線上に位置を揃えて配置されている。
【0031】
ライザ35は、銅等の金属材料により形成された、アーマチュアコイル24の引出線(巻線W)を接続するフッキング部分である。ライザ35は、セグメント33の下端部と連なり、アーマチュアコア21の凹部21cの底面上に絶縁板25を挟んで載置されている。これにより、ライザ35とアーマチュアコア21との短絡が防止されている。ライザ35は、巻線Wを係止可能に設けられた係止部36と、係止部36の周方向の側方に配置され、係止部36と導通する非係止部37と、を備えている。
【0032】
係止部36は、セグメント33の下端縁における周方向の中心部分から、径方向外側に向かって延出している。換言すれば、ティース21bおよび係止部36は、ティース21bの幅方向の中心線と係止部36の幅方向の中心線とが径方向に沿う同一直線上に位置するように配置されている。係止部36は、先端面が基端部に近接して対向するように、U字状に上側に折り返されている。
【0033】
非係止部37は、係止部36の径方向の中間部分から、周方向の一方側に向かって、絶縁板25の上面に沿って延出している。非係止部37は、周方向の一方側に隣り合うライザ35に接触しない長さとなるように形成されている。
【0034】
図4は、第1実施形態のセグメントおよびライザの形成方法を説明する図である。
図4に示すように、複数のセグメント33およびライザ35は、最初に金属板60をプレス加工することで、図中2点鎖線で示す複数のセグメント33およびライザ35が一体化した状態の金属片を形成する。この際、非係止部37は、隣り合う係止部36同士の間に形成されるので、金属板における従来であれば廃棄される部分を有効に使うことが可能となり、金属材料の使用量を削減できる。
【0035】
次いで、ライザ35をセグメント33に対して略直角に屈曲させるとともに、係止部36をU字状に屈曲させた後、複数のセグメント33が一体化した部分をコンミテータ本体31の外周面に沿わせるように円筒状に曲げ加工する。次いで、金属片に対して、セグメント33間を軸方向に沿って切削加工することで、周方向に互いに絶縁された複数のセグメント33を形成できる。
【0036】
上述したアーマチュア20では、巻線Wは、ヒュージングによりコンミテータ30のライザ35に固定されている。より詳細に、
図2および
図3に示すように、ヒュージングは、ライザ35の係止部36に巻線Wの引出線を係止させた状態で、ヒュージング用の主電極51を係止部36に上側から押し当てて加圧する。また、ヒュージング用の副電極52を非係止部37に上側から押し当てる。この状態で、主電極51と副電極52との間に電流を供給する。これにより、ライザ35は発熱して軟化し、主電極51の加圧力により係止部36と巻線Wとが密着して溶接される。
【0037】
以上の説明のように、本実施形態の電動モータ部10は、ヨーク2と、モータマグネット(不図示)と、アーマチュア20と、を含んでいる。そして、電動モータ部10は、モータマグネットの磁極数が6個、アーマチュア20のスロット21sが9個、コンミテータ30のセグメント33が9個のいわゆる6極9スロット9セグメントの集中巻き直流モータとして構成されている。
【0038】
図1に示すように、減速機構部70は、ヨーク2の内側におけるアーマチュア20よりも下側(軸方向他方側)に配置されている。減速機構部70は、ハイポサイクロイド減速装置として構成され、上述したクラッチ29(
図3参照)に連結されることにより、アーマチュア20の回転に伴って出力軸80を回転させる。出力軸80は、外周面にギヤを備える円筒状に形成されている。出力軸80は、減速機カバー4の中央開口4aに挿通されるとともに、主軸5に外挿されている。出力軸80と中央開口4aおよび主軸5それぞれとの間には、Oリング6,7が配置されている。
【0039】
このように、本実施形態のコンミテータ30によれば、係止部36と非係止部37とを周方向に並べることができる。これにより、ヒュージングに用いる主電極51および副電極52を周方向に並ぶ係止部36および非係止部37に押し当てることができる。このため、ライザ35の長さを係止部36に押し当てる主電極51分に対応する長さとすることが可能となる。したがって、セグメント33が円筒状に並ぶコンミテータ30において、ライザ35を短くすることができる。
【0040】
また、ライザ35が、ヒュージング時に主電極51および副電極52を押し当てる係止部36および非係止部37を備えるので、ヒュージング時のセグメント33への伝熱を抑制することができる。これにより、セグメント33のブラシ当接面の真円度が低下することを防止できる。
【0041】
また、ライザ35は、セグメント33の下端部から径方向外側に延出しているので、コンミテータ30の径方向の寸法を小さくすることができる。これにより、ライザ35よりも径方向外側に配置されるアーマチュアコイル24の巻線スペースを大きく設けることが可能となる。したがって、高効率な電動モータ部10を形成することが可能なコンミテータ30が得られる。
【0042】
また、ライザ35がセグメント33の下端部から径方向外側に延出する構成において、係止部36と非係止部37とが周方向に並ぶので、一対の電極によりライザ35を挟み込むことなくヒュージングすることができる。これにより、ライザ35に対する軸方向の一方側(本実施形態では上側)のみに、ヒュージング時の主電極51および副電極52を配置するスペースを設ければよく、例えばアーマチュアコア21に電極を配置する貫通孔を形成する必要がなくなる。したがって、アーマチュアコア21の強度が低下することを防止して剛性を確保できる。
【0043】
そして、本実施形態の電動モータ部10は、ライザ35を短くできるコンミテータ30を備えるので、アーマチュアコイル24の巻線スペースを大きく設けることが可能となる。したがって、高効率な電動モータ部10が得られる。
【0044】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態のアーマチュアの平面図である。
図6は、
図5のVI−VI線における断面図である。
図2および
図3に示す第1実施形態では、複数のセグメント33が円弧筒状に形成されて円筒状に並んでいる。これに対して
図5および
図6に示す第2実施形態では、複数のセグメント133が扇状に形成されて円環板状に並んでいる点で、第1実施形態と異なっている。なお、
図1から
図3に示す第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図5および
図6に示すように、アーマチュア120は、アーマチュアコア121と、上側と下側のインシュレータ122,123と、アーマチュアコイル24と、コンミテータ130と、を備えている。
【0046】
アーマチュアコア121は、複数の同一形状の鋼板を軸方向に積層することで構成されている。アーマチュアコア121は、略円環状のコア本体121aを有している。コア本体121aの中央には、円形の中心開口部121dが設けられている。コア本体121aにおける中心開口部121dの周囲には、複数(本実施形態では3個)の嵌入孔121eが周方向に沿って等間隔に形成されている。嵌入孔121eには、後述するコンミテータ本体131の突部131cが嵌入されている。コア本体121aの径方向外側には、巻線Wが巻かれた軸方向平面視略T字状のティース121bが周方向に等間隔で放射状に形成されている。
【0047】
インシュレータは、それぞれ絶縁性樹脂で成形された上側インシュレータ122と下側インシュレータ123とに分割構成されている。そして、インシュレータは、アーマチュアコア121に装着されたとき、上側インシュレータ122と下側インシュレータ123とが、アーマチュアコア121のティース121bの先端外周面を除く嵌入孔121eよりも径方向外側の部分のほとんどの部分を覆うことができるように、ティース121bの外形形状に合わせて形成されている。
【0048】
コンミテータ130は、主軸5(
図1参照)に外挿される円板状のコンミテータ本体131と、コンミテータ本体131の上側を向く主面(上面)を覆うように周方向に並んで配置された複数(本実施形態では9個)のセグメント133(導電部)と、各セグメント133の外周部から延びるライザ135と、を備えている。
【0049】
コンミテータ本体131は、絶縁性を有する樹脂材料により形成され、コア本体121aの上側を向く主面(上面)上にモータ軸線Lと同軸に配置さている。コンミテータ本体131の中央には、円形の中心開口部131aが設けられている。中心開口部131aは、モータ軸線Lと同軸かつ、アーマチュアコア121の中心開口部121dと同径に形成されている。コンミテータ本体131の内周部には、軸方向上側に向かって延びる円筒状の筒部131bが立設されている。筒部131bの内周面は、コンミテータ本体131の内周面と面一になっている。筒部131bには、円環状のマグネットセンサ138が外嵌されている。
【0050】
図6に示すように、コンミテータ本体131の下側を向く主面(下面)には、アーマチュアコア121の嵌入孔121eに入り込む突部131cが、嵌入孔121eに対応して複数(本実施形態では3個)立設されている。突部131cは、嵌入孔121eに対応した形状に形成され、下端部がアーマチュアコア121よりも下側に突出している。突部131cの下端面には、凹部131dが形成されている。コンミテータ本体131の内側には、金属材料により形成された円筒状のすべり軸受39が圧入されている。すべり軸受39は、コンミテータ本体131の内側からアーマチュアコア121の中心開口部121dに亘って配置されている。すべり軸受39は、主軸5(
図1参照)に外挿されている。
【0051】
図5および
図6に示すように、複数のセグメント133は、導電性を有する銅等の金属材料により、ブラシ(不図示)が摺接する扇状に形成されている。セグメント133は、コンミテータ本体131の上面上に、マグネットセンサ138に対して間隔をあけた状態で、平面状のブラシ当接面を上側に向けて配設されている。複数のセグメント133は、周方向に互いに絶縁された状態で、一定ピッチで並んで円環状に配列されている。セグメント133は、ティース121bの数と同じ数だけ設けられており、ティース121bの幅方向の中心線上に位置を揃えて配置されている。
【0052】
ライザ135は、各セグメント133の外周部から径方向外側に扇状に延出している。ライザ135は、巻線Wを係止可能に設けられた係止部136と、係止部136の周方向の両側方に配置され、係止部136と導通する非係止部137と、を備えている。
【0053】
係止部136は、セグメント133の外周縁における周方向の中心部分から、径方向に沿って延出している。係止部136は、先端面が基端部に近接して対向するように、U字状に上側に折り返されている。
非係止部137は、係止部136のうちコンミテータ本体131の上面に沿って延びる部分から、周方向両側に向かってコンミテータ本体131の上面に沿って延出している。非係止部137は、セグメント133の外周縁と連なっている。
【0054】
このように、本実施形態のコンミテータ130によれば、係止部136と非係止部137とを周方向に並べることができる。これにより、ヒュージングに用いる主電極51および副電極52を周方向に並ぶ係止部136および非係止部137に押し当てることができる。このため、ライザ135の長さを係止部136に押し当てる主電極51分に対応する長さとすることが可能となる。したがって、セグメント133が円板状のコンミテータ本体131の主面上に配置されたコンミテータ130において、ライザ135を短くすることができる。
【0055】
また、ライザ135がセグメント133の外周縁から径方向外側に延出する構成において、係止部136と非係止部137とが周方向に並ぶので、一対の電極によりライザ135を挟み込むことなくヒュージングすることができる。これにより、ライザ135に対する軸方向の一方側(本実施形態では上側)のみに、ヒュージング時の主電極51および副電極52を配置するスペースを設ければよく、例えばコンミテータ本体131に電極を配置する貫通孔を形成する必要がなくなる。したがって、コンミテータ本体131の強度が低下することを防止して剛性を確保できる。
【0056】
そして、電動モータ部10が本実施形態のライザ135を短くできるコンミテータ130を備える構成とすることで、コンミテータ130の軸方向の寸法が小さくなるので、小型な電動モータ部10とすることができる。
【0057】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記第1実施形態では、各ライザ35において非係止部37が係止部36の周方向一方側に配置されているが、これに限定されず、例えば周方向に並ぶライザ35において、係止部36に対する非係止部の位置が互い違いとなるように配置されていてもよい。また、非係止部が係止部36から周方向の両側に向かって延出していてもよい。
【0058】
また、上記第2実施形態では、非係止部137がセグメント133の外周縁と連なっているが、これに限定されず、第1実施形態と同様に、係止部136の径方向の中間部分から延出し、セグメント133の外周縁から離間していてもよい。これにより、ヒュージング時のセグメント133への伝熱をより効果的に抑制することができる。
【0059】
また、上記各実施形態では、ライザ35,135は、セグメント33,133から径方向外側に延出しているが、これに限定されず、ライザはセグメントから軸方向に沿って延出していてもよい。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。